
撮影=後藤秀二
幼少期の壮絶ないじめ体験、美容外科での成功を手にした後の医師免許停止処分、100億円という莫大な借金……濃密すぎる人生を歩んできた高須クリニック院長、高須克弥氏。そのすべてをつづった『筋と義理を通せば人生はうまくいく』(宝島社)の出版を記念し、高須氏に“タニマチ”としての生き方を伺うはずが……事態は風雲急を告げる。インタビュー冒頭で、パートナーである西原理恵子氏が合流という僥倖。さらに取材中、某テレビ局と高須氏との間にトラブル勃発! 闘い続ける男、高須克弥の荒ぶりを目撃した。
――今まで何冊も本は出されていますが、“自伝”は今回初めてなんですね。
高須 自分のことって、恥ずかしいじゃないですか。だけど、もう70になるからね。確かノムさん(野村克也氏)も、70歳のパーティーをやった頃が一番輝いてた。サッチー(野村沙知代氏)もそうだったなぁ。あ、デヴィ夫人は今も元気いいか。でも、だいたいの人が70過ぎると急に老け込んじゃうのよ。人間って、老ける時はガクッと老けて、その後バタッと死んじゃうから。僕もいつ死んじゃうか分からないから、その前にいろいろと誤解を解いておいたほうがいいなと思ったのね。
――デヴィ夫人、以前日刊サイゾーでもインタビューさせてもらいましたが(
記事参照)、70歳でイルカに乗ったり、そりゃもうお元気でした。
高須 デヴィ夫人とサッチーはいいライバルだと僕は思ってる。うちの息子の結婚式にね、デヴィ夫人とサッチーと両方呼んだの。同じテーブルにしたら、ずっとにらみ合ってた。それで、サッチーのほうが「私帰る!」って席を立ったら、デヴィ夫人それから上機嫌(笑)。
――同じテーブルとは、また……。
高須 そう? でもさ、結婚式とか葬式とかって、呉越同舟じゃない? だから「なんであんなのと一緒にするのよ?」とか言わないと思ってたの。それもあって、この前開いた僕の誕生日パーティーの時は、二人が会わないように、一人はバルコニーで、一人は一階下のテーブルで、死角になるようにしたよ。二人とも最後までいたよ。そうだ、あの時は浅香光代もいたんだった。ミッチーはあっという間に帰ったけど(笑)。
――役者がそろった!
高須 だって、仲悪いっていっても、それが売り物の人たちもいるでしょう。曙とボブ・サップなんて、本当はめちゃめちゃ仲いいんだもん。だから、ミッチーもサッチーもデヴィ夫人も、そういう芸なのかと思ったら「う~ん」っていうにらみ合い。本気だったんだよね。
――先生は、その真ん中にいらっしゃるんですね。
高須 僕はどっちの味方でもないんですよ。でも「敵と仲良くするヤツは敵」って、みんな思うんだよね。全方位外交は、友情ではなかなか難しい。
――友情では全方位外交を取る一方で、社会とはとことん闘うというのが先生のスタンスですよね。本にも書かれている、税務署との10年戦争もかなり壮絶でした。
高須 法律的にしっかりやれば、僕は無罪なんですよ。脱税っていうのは、そもそもウソの申告書を書くってことなんです。でも、僕は申告書を自分で(サインと捺印)書いてない。後から聞いたんだけどね、税務署は裁判やっている間は何やっても来ないんだって。やりたい放題なんだって。それ知らなくて、すっごい真面目に申告してた! 税務署は自分たちが「脱税だ!」って乗り込んでいったら、ほとんどの人たちは言うこと聞くと思ってんの。それが「そうは思わん! 最高裁まで闘っちゃる」って言われたら、担当者はその後、その件に何年もかかりっきりになるから出世できないらしい。それについては、悪いことしたなって思ってます。

――先生の「筋通し」人生に関しては、西原先生が書かれた扉のマンガがすべてを物語っているのではないかと思います。西原先生の「古っ」というコメントが(笑)。
高須 あ、今日サイバラそこにいますよ。呼んでくる?
――ええ? 本当ですか?
高須 面白いから呼んでこよう。
西原 あ、どうも。
高須 あなたが書いてくれたマンガのこと、今すごく褒めてたのよ。
西原 なんかすみません……(笑)。
高須 サイバラも同じ信念なんですよ。「負けた」って言うまでは、負けじゃない。本にも書いたけど「勝ち負けをつけない教育」とか、本当にバカじゃないのかなと思いますよ。だってやっぱりさ、勝ち負けがあるから向上心が生まれるんじゃない。負けるから、また勝つチャンスも出てくるんですよ。
――勝ち負けをつけないというのは、「勝つ」ことのみならず「負ける」チャンスさえ奪われているということなんですね。
高須 僕ね、中国ドラマの『項羽と劉邦』が好きでね。サイバラは「このドラマ、ただ怒鳴り合ってるだけじゃん」って怒ってたけどね。だけど違うの。いつも負けてばっかりだった劉邦が、最後の最後で項羽に勝って漢王朝を立てるんだよ。
西原 ずっと口げんかしてるんですよ、三国志の人たち。うざいって。
――(笑)。ずっと負けていたからこそ、「勝ち」に価値が出てくると。
高須 戦争はいけないって、みんな言うじゃない。負けたらいかんのですよ。だって、勝つ戦争の時は、全員賛成してたんだもん。
――戦争に関しては、どんなご意見をお持ちですか?
高須 う~ん。友達がやっつけられてたら手助けするのが「義理」だと思うし、自分が理不尽に攻められてやっつけられてたら、抵抗する権利はあると思うのね。ケガするのが嫌だから戦わないって、バカだと思う。絶対抵抗しないって、それはいじめだもん。いじめられてるヤツって抵抗しないから。包丁持って振り回してるヤツのところには、いじめに来ないでしょ。
――「昔はこんなヒドイいじめはなかった」とよく言われますが、先生の本を読むと、昔のいじめも相当ヒドイものですよね。
高須 昔のほうが、もっと暴力的だったと思う。特に、農村のいじめなんかすごいですよ。江戸時代から「村八分」っていってね。そもそも“仲間じゃないヤツ”をいじめるわけだから、農民ばっかりのところに医者の家の白いブタのガキがいたら、そりゃいじめますよ。サイバラのマンガにも描いてあるな。「一番憎いものは、家にピアノがある医者の家の小太りのガキ」って。俺のことじゃん(笑)。
西原 そうそう(笑)。
高須 この前、50年振りに同窓会やったんだけど、いじめっ子のほうはすっかり忘れてるんだよ。年食ってくると、だんだんボケちゃってね。嫌なことから順番に忘れていくから、幼い頃の思い出はすべて美しいの。んなことないのよ。子どもの時から嫌なことはたくさんあったはずなのよ。だけど、平気で「子どもの頃に戻りたいね~」とか言ってくる。

――「昔は良かった」という話は、つまり……
高須 老人になったっていうこと。古い嫌なメモリーが落ちちゃって、選ばれたいいメモリーが残ってるってだけ。
――いじめと対峙する上で、一番大事なことはなんでしょうか?
高須 精神的に負けないことよ。肉体的には敵わなくても、決して負けは認めない。いつも闘争心を持つこと。自殺するくらいだったら、いじめたヤツに一服盛ってやったほうが気分がいいと思うんだけどね(笑)。でも「こいつは一服盛るかもしれない」と思われるようなヤツだったら、いじめられないか。
――いじめや偏見などの“外圧”と闘いながら、儲けたお金は寄付やボランティアに使う、「タニマチ」という生き方もこの本の大きなテーマですが、先生が支援を決める際のポイントはどんなところでしょうか。
高須 「誰も目をつけていない」かつ「僕が支援したら伸びるんじゃないかな」って思うことかな。基本的には嫌われてる人、ちょっと落ち目の人、いま不遇をかこってる人、そういう人ほどタニマチ心が燃える。すごく幸せになっちゃうとね……今の安藤美姫なんて、全然そういう気持ちが湧かないね。勝手にやれって感じ。
――本には「頑張る嫌われ者を応援したい」と書かれていましたね。
高須 別にもう彼女は嫌われてないしね。あんまり頑張ってなくても、仕事できてるじゃん。だから、そうなるまでの手助けができればって思うんですよ。それで目的は達成してる。
――いま応援したい人は?
高須 ダライ・ラマには全力投球してます。ダライ・ラマとは本当に仲良し。チべタン・チルドレン・ヴィレッジっていう、中国から逃げてきた孤児たちを収容する学校があるんだけど、そこに寄付したの。お礼にダライ・ラマ法王庁から招待状が来てる。僕のほうのスケジュールがキツくて、なかなか行けないんだけど。
――逆に「こういうヤツは応援したくない」と思うのは、どんなタイプですか?
高須 今回ね、「小保方晴子さん(への支援は)どうですか?」って結構言われたんですよ。でも、即答で「NO」。あの人はパッと見て、食わせもんだって分かったもん。勘がいいのよ、その辺は。要するに、「ウソつき」と「ズル」はダメ。
――例の会見でも、核心部分は何も話してなかったですしね。
高須 「コピペ」とか「写真のすり替え」とか聞いた時点で、あぁダメだなと。研究の根底が揺らいでいるから、僕としては関わり合いたくない。でも、あの時は世論の半分くらいは「小保方さんは悪くない」だったよね。
――「かわいいんだから許してやれ」という(笑)。
高須 それはみんな素人だからですよ。論文の出だしでウソをついた人を、信用できないでしょ? 土台が揺らいだら、その上にどんな立派な建物立てても、すぐ崩壊しちゃう。ナインティナインのラジオで岡村(隆史)くんに「院長、応援してあげたらどうですか?」って提案されたから、逆に「君なら応援してもいい」って言って番組(オールナイトニッポン)のスポンサーになったよ。小保方に支援するくらいなら、君たちの番組を応援するって。

――ドラマ『明日ママがいない』(日本テレビ系)をめぐる騒動ではスポンサーを名乗り出たにもかかわらず、売名行為と言われたり。
高須 みんな足並みそろえて「高須を入れるな」って(笑)。
――オイシイとこを持っていかれたくない、という嫉妬でしょうか。
高須 分からないなぁ。でも、日テレのメンツなのかね。スポット(番組や時間帯の指定なしに放送されるCM)でもPT(番組中に番組提供の広告主以外のCMを放送すること)でも全部買ってやるからって言ったんだけど、日テレは頑として売らないと。そうそう、テレビでいうと今ね、すごいモメそうなヤツがあるのよ。
――なんですか?
高須 僕ね、某T○Sで毎週土曜よる9時54分から『スッ○ン!』っていうミニ番組やってるの。博報堂仕切りで。ちょっとマンネリ化してきたから、テコ入れしようと思って「もっと面白くやれよ」って、僕としてはハッパかけてたんですよ。もちろん、スポンサーは続けるつもりでね。それが、ついさっき代理店から「高須さんより800万円高く○○○商事が買ってくれるって言うから、そこに売っていいものかどうかT○Sが検討してる」って連絡が来たの! バッカじゃねーか! 人のものを勝手にオークションにかけるようなことしたら、大問題ですよ。
――それは明らかな契約違反じゃ……
高須 僕も「そんなことができるのか!?」って言ったら、「T○Sのローカルルールで“空白の一日”っていうのがありまして……」って。江川(卓)かよ!!
――空白の一日……?
高須 正義はいくつもあっちゃいけないんですよ。今度T○Sで面白そうな番組があったら「800万円余計に出すからあれを売ってくれ。“空白の一日”があるんだろ」って言うからな(笑)。中小企業だと思ってバカにしおって!
――どうして先生は良きことをしているのに、このような憂き目にあうのでしょう。
高須 最近ちょっと思うんだけどね、もしかして僕は笹川良一さんの代わりにされてるのかなって。叩きやすい対象っていうのが、誰でもいるんじゃないのかな。叩きやすいのかもしれない、僕は。叩いてもこたえないし。
――でも、それって社会的ないじめじゃないですか。
高須 いじめそのものですよ。普通だったら「すみませんでした」って言って、長いものに巻かれるじゃない? 僕は、長いものは切りつけてやるの。
――先生としては、正しいお金の使い方をしているだけなんですよね。
高須 お金っていうのは血液みたいなもんだから、一カ所に滞らせるとロクなことないのよ。血圧上がるし。血液は循環させるべきもの。自分の血液なんだから、好きなところに供給すればいいんですよ。それは血液の持ち主の正当な権利。たくさん税金持っていくんだったらそれなりに尊敬するとか、それこそ“貴族院議員”にするとかさ(笑)。なんかしろよと。いっぱい稼いでいっぱい税金払ってるヤツが悪者、みたいに言われるのが頭に来るの。
――今日のお話で、タニマチとしての先生の揺るぎない価値観が少し分かったような気がします。
高須 なんでもそうだと思うんだけど、「正直に生きる」っていうことだよね。義理っていうのもそう。いっぺん口に出して約束したことは、何があっても守るっていうのが「義理」。それを、正義をいくつも作ってT○Sみたいなことやられたら、世の中が全部ひっくり返っちゃう。
――この本をT○Sの方に差し上げたいですね。
高須 僕がどんな攻撃をされようと堂々と生きていられるのは、少なくとも僕が義理と筋を通した人たちは僕の味方だから。長いスパンで見ていると、義理と筋を欠いたヤツは潰れます。いざという時に誰も助けてくれないからね。オイルショック、バブル、リーマンも乗り越えて、本当にそう思いますよ。
……取材後、代理店からT○Sが正式に高須クリニックスポンサー枠の番組を○○○商事に売ることが決定したとの連絡が入った。「これで面白くなるな」と、新たなる敵に闘志を燃やす高須院長だった。
(取材・文=西澤千央)