この夏は、どこへ旅をするのか。 今年も「青春18きっぷ」の販売が始まっている(発売期間:7月1日~8月31日、利用期間:7月20日~9月10日)。 北は北海道から南は九州まで、JR全線の普通列車が乗り放題になる、お得な切符。料金は1万1,850円。一回あたり2,370円で、一日乗り放題になる計算だ。 「青春18きっぷ」とは名がついているものの、最近は、いつまでも青春を忘れないオッサンの利用も当たり前である。筆者もご多分に漏れず、シーズンのたびにワクワクしていたら、すっかりオッサンになってしまったワケだが。 実のところ、全線普通車が乗り放題とはいえ、利用できる区間は随分と寂しくなってしまった。長野新幹線の開通によって、信越本線の横川以降長野までの区間が一部廃止の上、第三セクターのしなの鉄道に移行。さらに、北陸新幹線の開通で、ごっそりと利用できる区間が削減されてしまったり……。 とはいえ、利用できない区間を別料金を払って通過するか。あるいは、迂回するかなどを考えるのも旅行の醍醐味なのだとポジティブに考えよう。 この「青春18きっぷ」、極端な利用の仕方をすれば、一日でかなり遠方まで行くことが可能だ。東京駅を4時41分始発でスタートすれば、その日のうち(正確には翌日0時04分)に、小倉駅まで到達することが可能。乗車時間は長いが、乗り換えはタイトである。東京都を出て10分以上の乗り換え時間があるのは、大垣駅で11分、姫路駅で16分、糸崎駅で25分の3回。逆に小田原駅では1分、米原駅では3分の乗り換え時間なので、休む暇もない。大垣駅でギリギリ駅弁を買って、姫路駅で名物の駅そばを啜る時間があるかないかというところか。 逆に北へ向かおうと考えた場合、上野駅を5時10分に出発すれば青森駅に22時50分に到着することができる。こちらの場合、新庄駅では56分、大館駅では78分と、乗り継ぎのための長い待ち時間があるという具合だ。 こんな限界に挑戦する旅行も、一度は楽しいけれども二度、三度とはやりたくないもの。そこで長年「青春18きっぷ」を愛好するベテラン勢に聞くと、オススメなのは一度に5回ぶっ通しではなく、2度に分けて近場を旅行するということ。 「各駅停車で耐えることができる時間内で、ちょっと遠いところを探すのがポイントです」(ベテランユーザー) そこでオススメされたのが、まず長野方面への利用。例えば、長野方面であれば温泉地もある下諏訪駅は、東京からだと普通運賃で3,672円。「青春18きっぷ」を使えば、ちょっとよいところに泊まっても、なかなかオトク感がありそうだ。乗車時間も3時間程度。同じ路線を走る特急「あずさ」に比べると時間はかかるが、我慢できる範疇である。 また、途中の甲府駅から乗り換えて、こんな機会でもなければ永遠に乗ることもなさそうな身延線を楽しむという方法も。 ほかの方面でも考えてみたが、伊豆の温泉地に向かおうと思うと、JRは伊東線の伊東駅まで。その先に向かうには別料金が必要。伊東までは東京から2,268円なのでビミョーに損してしまう。軽井沢で避暑をと考えれば、信越本線(名前倒れ)の群馬県側の終点・横川駅までは同じく2,268円。ここから軽井沢行きのバスは500円なので、やはり損をする。 東京を中心に見た場合、やはり手軽かつ、非日常を味わうには中央本線経由で長野方面へと向かうのが適している様子。どこか遠くへ行きたいと思うけど、お金がないと嘆いている諸君。時刻表を広げれば、存外に短時間で到達することのできる見たこともない土地が待っているはずだ。 (文=昼間たかし)※イメージ画像
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この「青春」って味わいたいか? 松本市「旧制高等学校記念館」に行ってみた!
JRが発売する「青春18きっぷ」。この春の期間も、いよいよ10日までとなった。学生ならいざしらず、社会人になると、鉄道旅行を楽しむ時間を確保するには、己の才覚をフルに発揮せねばならぬところ。紀行作家の宮脇俊三は、作品も一流だけれど編集者としても一流、中央公論社の常務にまでなったわけで、社会人としても一流。その文章を読んでいると、土日に旅行に出かけて、月曜日の朝に東京駅に到着、そのまま出社ということも記されている。なるほど、旅を趣味にするには体力も必須か。
さて、いくら日本が一極集中の進んだ国だからといって、東京で得られる情報ばかりではない。なので、旅行はネタ探しの一環。そこで、「青春18きっぷ」を手に得た面白ネタを記していくことにする。
3月某日、筆者は長野県の松本駅に降り立った。松本市は、南信地方の大都会。ちょうど休日だったのか、中央本線の各駅停車は、家族連れや若者たちで混雑していた。松本市までは新宿から特急で約2時間半と、東京からはかなりの距離のある街。にもかかわらず、都会の香りはあり、文化レベルも高い不思議な場所だ(ちなみに、オタクショップは駅前に)。
加えて妙なのは、単ににぎやかな街というわけでなく、文化レベルも高いということ。象徴的なのは、松本市の目抜き通りに位置する松本市美術館である。主に、この地域にゆかりのある芸術家の作品を展示しているのだが、目玉は、玄関脇に展示されている草間彌生の作品「幻の華」。草間彌生といえば、一般にはちょっとアレな感じの現代美術家と認識されていると思うのだが、その作品を「どうだ!」とばかりに展示する、この美術館は懐が深い!
この妙な文化レベルの高さを生み出した要因となっていたのが、おそらく旧制高校の存在だ。この街に存在した旧制松本高等学校は、作家・北杜夫をはじめとした多くの人材を輩出した高校だ。その校舎の一部は今でも現役で使われ、「旧制高等学校記念館」という博物館もある。普段から「寮歌」を愛唱する筆者として、これは訪れるしかないスポット。さっそく足を運ぶことにした。
まずやってきたのは、かつての旧制松本高等学校の本館。現在は文化会館や図書館として使用されているそうで、保存状態は良好だ。東京だったら、“スペースを有効活用する”という触れ込みで、こうした建物でも保存せずに取り壊されかねないところ。それを、現在でも全室を博物館などにするのではなく、現役の建物として使用しているのだから、松本市はすごい。本館で当時を再現する形で公開されているのは、教室と校長室の部分。当然ながら、机も椅子もすべてが木製である。古ぼけた木の独特の感触が、古き良き時代を感じさせてやまない。
さて、本館の隣にあるのが、この探訪の目的である「旧制高等学校記念館」だ。ここは、全国にあった旧制高等学校の資料を収集し展示する施設。かつて使われていた、旗、書、当時の教科書から答案までさまざまなものを展示している。戦前の教育システムでは、旧制高等学校は入学した時点で、もはやエリート確定。大学は選ばなければどこかに入学できるし、学生にもかかわらず社会的地位も高い。

さらに、原則的に全寮制だったこともあり、そこには独特の文化が生まれた。今でもそれを懐かしむ風潮は強く、さまざまな創作にも生かされているわけだが、この記念館は文字通り「あの頃は楽しかったなあ~」が展示のスタンスなのだ。

ゆえに、フツーの博物館と呼ばれる施設に比べて、ちょっと妙な感じが。それが如実に現れているのが、展示の説明文だ。通常の博物館ならば、無機質な感じで「これは○○年に撮影された写真で、○○をしている姿である~」と、わかりやすく説明するだろう。でも、ここはちょっと違う。
当時の寮で撮影された写真には「常識や不潔を超越し、カオスの中に沈潜呻吟してこそ青春であるとする若者の部屋である」との説明文が。さらに、ほかの説明文を見ると「店構えは粗末だが、おやじの気風が気に入った」など、個人の感想も。かと思えば「憂愁を秘めた麗人佐々木きみは、三高生の共同幻想の女性、いや生身の女性であったのか」……うーん、この説明文を書いた主は、喫茶店のウェイトレスに袖にされた悔しさを長い人生で、ずっと引きずっていたのか?


こうした展示をたどっていき、「青春の思い出」が最高潮に達するのは、当時の学生寮の一室を再現した展示だ。畳にせんべい布団の部屋はとても住み心地はよいと思うのだが、問題は壁に書かれた青春のほとばしりだ。うーん、現代の若者がこんなところで過ごしたら何日持つだろうか。プライバシーの概念なんか皆無っぽいから、筆者は即日逃亡しそうだ。ぶっちゃけ、過去から現代まで、「旧制高校=青春=最高!」という意識を持つ人も多いけれど、その逆もしかり。エリート意識ばかりを肥大させた欠陥だらけの教育システムという見方もある。

ともあれ「青春」を大義名分にして、やりたい放題ができたのはうらやましい限り。誰もが進学と就職で頭がいっぱいの現代では、こんな無茶な青春なんてあり得ないのだから。ミュージアムショップには、これまた旧制高校グッズがたくさん売られているので、自宅に帰ってからも、無軌道な青春が味わえるぞ。
(取材・文=昼間たかし)
るるぶ信州’12
パワーチャージ!

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・今年こそ出かけよう! 黒部の秘境を貫く「高熱隧道」見学ツアー
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・ファン狂喜乱舞モノ!? 藤子・F・不二雄ミュージアムに行ってきた

ここが市の名所! う~ん、すごいセンスだ。

本館は古いけど現役。隣の記念館は単なるビル。

内装もほとんどそのまま。この時代が好きな人にはたまらない。

この椅子で授業を受けていたら、確実にお尻が痛くなりそうだな。

この窓の外には、どんな青春の光景があったのだろうか。

旧制高校に関するあらゆる物品が展示されている。

「外見に惑わされない精神=バンカラ」。単に汚いだけか?

この上から目線。「お前とは身分が違う」と言いたいのか?

おそらく故人だろうけど。展示で名前晒し上げなんて……。

この問題、解けた人は編集部までご連絡を。

この部屋に住みたい! とは決して思わない。
この「青春」って味わいたいか? 松本市「旧制高等学校記念館」に行ってみた!
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さて、いくら日本が一極集中の進んだ国だからといって、東京で得られる情報ばかりではない。なので、旅行はネタ探しの一環。そこで、「青春18きっぷ」を手に得た面白ネタを記していくことにする。
3月某日、筆者は長野県の松本駅に降り立った。松本市は、南信地方の大都会。ちょうど休日だったのか、中央本線の各駅停車は、家族連れや若者たちで混雑していた。松本市までは新宿から特急で約2時間半と、東京からはかなりの距離のある街。にもかかわらず、都会の香りはあり、文化レベルも高い不思議な場所だ(ちなみに、オタクショップは駅前に)。
加えて妙なのは、単ににぎやかな街というわけでなく、文化レベルも高いということ。象徴的なのは、松本市の目抜き通りに位置する松本市美術館である。主に、この地域にゆかりのある芸術家の作品を展示しているのだが、目玉は、玄関脇に展示されている草間彌生の作品「幻の華」。草間彌生といえば、一般にはちょっとアレな感じの現代美術家と認識されていると思うのだが、その作品を「どうだ!」とばかりに展示する、この美術館は懐が深い!
この妙な文化レベルの高さを生み出した要因となっていたのが、おそらく旧制高校の存在だ。この街に存在した旧制松本高等学校は、作家・北杜夫をはじめとした多くの人材を輩出した高校だ。その校舎の一部は今でも現役で使われ、「旧制高等学校記念館」という博物館もある。普段から「寮歌」を愛唱する筆者として、これは訪れるしかないスポット。さっそく足を運ぶことにした。
まずやってきたのは、かつての旧制松本高等学校の本館。現在は文化会館や図書館として使用されているそうで、保存状態は良好だ。東京だったら、“スペースを有効活用する”という触れ込みで、こうした建物でも保存せずに取り壊されかねないところ。それを、現在でも全室を博物館などにするのではなく、現役の建物として使用しているのだから、松本市はすごい。本館で当時を再現する形で公開されているのは、教室と校長室の部分。当然ながら、机も椅子もすべてが木製である。古ぼけた木の独特の感触が、古き良き時代を感じさせてやまない。
さて、本館の隣にあるのが、この探訪の目的である「旧制高等学校記念館」だ。ここは、全国にあった旧制高等学校の資料を収集し展示する施設。かつて使われていた、旗、書、当時の教科書から答案までさまざまなものを展示している。戦前の教育システムでは、旧制高等学校は入学した時点で、もはやエリート確定。大学は選ばなければどこかに入学できるし、学生にもかかわらず社会的地位も高い。

さらに、原則的に全寮制だったこともあり、そこには独特の文化が生まれた。今でもそれを懐かしむ風潮は強く、さまざまな創作にも生かされているわけだが、この記念館は文字通り「あの頃は楽しかったなあ~」が展示のスタンスなのだ。

ゆえに、フツーの博物館と呼ばれる施設に比べて、ちょっと妙な感じが。それが如実に現れているのが、展示の説明文だ。通常の博物館ならば、無機質な感じで「これは○○年に撮影された写真で、○○をしている姿である~」と、わかりやすく説明するだろう。でも、ここはちょっと違う。
当時の寮で撮影された写真には「常識や不潔を超越し、カオスの中に沈潜呻吟してこそ青春であるとする若者の部屋である」との説明文が。さらに、ほかの説明文を見ると「店構えは粗末だが、おやじの気風が気に入った」など、個人の感想も。かと思えば「憂愁を秘めた麗人佐々木きみは、三高生の共同幻想の女性、いや生身の女性であったのか」……うーん、この説明文を書いた主は、喫茶店のウェイトレスに袖にされた悔しさを長い人生で、ずっと引きずっていたのか?


こうした展示をたどっていき、「青春の思い出」が最高潮に達するのは、当時の学生寮の一室を再現した展示だ。畳にせんべい布団の部屋はとても住み心地はよいと思うのだが、問題は壁に書かれた青春のほとばしりだ。うーん、現代の若者がこんなところで過ごしたら何日持つだろうか。プライバシーの概念なんか皆無っぽいから、筆者は即日逃亡しそうだ。ぶっちゃけ、過去から現代まで、「旧制高校=青春=最高!」という意識を持つ人も多いけれど、その逆もしかり。エリート意識ばかりを肥大させた欠陥だらけの教育システムという見方もある。

ともあれ「青春」を大義名分にして、やりたい放題ができたのはうらやましい限り。誰もが進学と就職で頭がいっぱいの現代では、こんな無茶な青春なんてあり得ないのだから。ミュージアムショップには、これまた旧制高校グッズがたくさん売られているので、自宅に帰ってからも、無軌道な青春が味わえるぞ。
(取材・文=昼間たかし)
るるぶ信州’12
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本館は古いけど現役。隣の記念館は単なるビル。

内装もほとんどそのまま。この時代が好きな人にはたまらない。

この椅子で授業を受けていたら、確実にお尻が痛くなりそうだな。

この窓の外には、どんな青春の光景があったのだろうか。

旧制高校に関するあらゆる物品が展示されている。

「外見に惑わされない精神=バンカラ」。単に汚いだけか?

この上から目線。「お前とは身分が違う」と言いたいのか?

おそらく故人だろうけど。展示で名前晒し上げなんて……。

この問題、解けた人は編集部までご連絡を。

この部屋に住みたい! とは決して思わない。


