同人誌は著作権侵害? 回避は簡単なのになぜ事件化&泥沼化するのか?

 サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。 ■「Business Journal」人気記事(一部抜粋) 吉野家、牛丼並盛り280円へ値下げ 他社の値下げに追随で、価格競争再燃の可能性も 4月15日がXデー!?  北朝鮮暴発で奇襲攻撃や化学テロの懸念も… 「IkeGami」線は「IG」!? 駅ナンバリングって知ってる? 不思議な法則を東急線に直撃してみた ■特にオススメ記事はこちら! 同人誌は著作権侵害? 回避は簡単なのになぜ事件化&泥沼化するのか? - Business Journal(4月10日)  こんにちは。江端智一です。  前回前々回と、少女マンガのキャンディキャンディにまつわる事件から二次的著作物の権利関係を整理し、同人誌の著作権問題をキャラクターの観点から、マンガやアニメなどの原作、元ネタがある創作物の成人向けパロディを記載した同人誌=「薄い本」を引き合いに出しつつ説明させていただきました。  その目的は、創作を保護する法律や規制が、別の創作を妨げることもあり、ある種の創作活動は、「その気になれば、いつでも、どこからでも潰され得る」というリアルな現状を理解していただくことでした。それがたとえ、趣味として自分のホームページで開示しているだけでも、また、自腹を切って自分で印刷して無料で配布していても、違法行為であることから免れることはできないのです。  例外があるとすれば、自分の机の引き出しの中に隠し続けているあなたの「秘密のノート」での創作活動などになります(具体的には、「著作権法第2章第3節第5款に記載 著作権の制限」の行為に限られます)。  さて、最初にお断りしておきますが、本コラムでは、別段の定めがない限り、「他人の著作物に依拠して創作された著作物のうち、当該他人の許諾を得ていないもの」を「同人誌’」と記載致します。また、今回のコラムでは「著作者」と「著作権者」という用語が何度も登場しますので、このコラムのイラストの例を使って、簡単にご説明致します。
筆者提供
 このイラストを実際の絵として完成させたのは小学4年生の娘(次女)ですが、その図案を創作したのは私です。この場合、このイラストは、「娘(次女)」と「私」の共同著作物となり、この二人が共同著作者となります。一般的に、著作者=著作権者となりますので、この段階では、二人とも著作権者(共同著作権者)になります。  しかし、万が一、娘(次女)が、「Business Journalなんかに、私のイラストを使われるのはイヤー!」と泣き叫んだら掲載ができなくなります。ですので、私は、娘(次女)の著作権の持ち分を、対価(600円)を払って譲渡してもらっています。  この結果、権利関係は以下のようになります。 ・著作者:娘(次女)と私の二人。著作者は(たとえ100万円払おうとも)変更できない。 ・著作権者:私だけ  この「600円」の支払いをもって、私は、このコラムとイラストの両方の著作権を専有している状態になり、ここで、私は単独でBusiness Journalに対して、Web公開の許諾ができるようになるわけです。 ●解決の「方法」は簡単である 「同人誌’」事件に見られる侵害行為を回避する方法は、びっくりするほどに簡単です。  その答えは、「『著作者』と『著作権者』の二人(多くの場合、同一人物)から許諾を得ればよい」のです。  次のような感じです。 「あなたのマンガをベースとして、あなたのマンガのキャラクターを登場させた『成人向け同人誌’』をつくりました。ぜひご覧ください。そして、これを使って、同人誌即売会で販売する許可をください」 「無償で許諾をいただければうれしいですが、もし駄目なら収益の50%を差し出します。何卒、何卒、よろしくお願いします」  これで、著作者(マンガ家)と、著作権者(マンガ家、まれに出版社)の許諾を得れば、「同人誌’」ではなくなり、それが成人向けであろうが何であろうが、天下御免で、正々堂々と販売して、収益を得ることができます。  このような手続を行っている以上、100%合法行為なので、国家権力といえども手を出すことはできません(成人向け同人誌の問題は、公序良俗の問題もパスする必要がありますが、今回は割愛します)。  この「手続」をサボっているから、問題となってしまうのです。 ●ところが、解決の「手続」はまったく簡単ではない  しかし、こんな「交渉の手続」が簡単にできるのであれば、そもそも、「同人誌’」をめぐる裁判など、我が国ではひとつも起こっていないはずです。  第一に、著作者または著作権者(マンガ家)にアクセスする方法がわからない。マンガの巻末に住所や電話番号でも記載されていればよいのですが、そんなことは滅多にありませんし、すべてのマンガ家が、ツイッターやメールを使っているわけでもないでしょう。  加えて、「成人向け同人誌’」の販売を、著作者が許諾するだろうか、という問題があります。自分が精魂注いでつくり上げたキャラクターや世界観を、そんなふうに使われることを「ああ、いいよ」と許してくれる著作者がいたら、私は心底「すごい度量だ」と思います。 ●「同人誌’」の著作権侵害が事件化しにくい理由  著作者、または著作権者が権利行使を決意すれば、「同人誌’」を叩き潰すことなどは造作もなく、差止の仮処分(確定判決の前に、裁判所が決定する暫定的処置)などは、即時に認められるように思います。  では、著作者らは、なぜそのような権利行使を実行に移さないのか?  私は、2つ理由があると考えています。 【理由その1】 「同人誌’」の存在が、必ずしも不利益といえない場合があるため。「同人誌’」が、著作物の宣伝広告の効果を発揮してくれる場合があるからです。また、そのような「寛容な態度」でマンガに好感を持ってもらえるという巧妙な計算もあるでしょう。 【理由その2】 「同人誌’」の創作者を告発するコストが高いため。裁判手続は金も時間もかかります。損害賠償の裁判となれば、著作権者の損害額を算定しなければならないのですが、これが恐ろしく難しい。「同人誌’」の販売の規模によっては、損害額2万円、裁判費用200万円などという話はザラです(略式手続<刑事訴訟法470条>で有罪確定した「ポケモン同人誌事件」は例外中の例外です)。  なお、ツイッターにマンガの主人公の顔を使っている人は、許諾を得ていない限りすべて複製権の侵害被疑者ですが、では、その被害額はいくら? 提訴する相手を特定できるか? となることを考えれば、訴訟なんて手続は、とてもコストに見合わなくてやっていられないのです。つまり、コストの観点から、著作者または著作権者は、権利行使を「留保」していることになります。  このほか、多くの場合は、差止の警告をされれば、「同人誌’」の製作者は直ちに販売の中止に応じて、事件になりにくいという性質もあります。また、「同人誌’」を含め、同人誌ビジネスは基本的に儲からないので、儲からないところへ損害賠償を請求してもメリットがないという理由もあります。 ●著作権事件が泥沼化する理由  確かに、著作権侵害は事件化(裁判等)しにくいですが、ひとたび事件化した場合、和解に至るケースのほうが少ないように思います。  私は、これまでの「同人誌’」を含む著作権侵害訴訟の判例を、一通り眺めてきましたが、訴訟に至るか否かを決定づける要因は、「金(カネ)」より「怒り」の要素が大きいように思えます。人間はいったん「怒り」のモードに入ったら、「金」の問題など吹き飛びます。  私は、以前、「初音ミク」の技術編コラムで、「このキャラクターを創成する立場であれば、間違いなくキャラクターに『愛』が込められていくのは当然のことです」と記載したことがありますが、これを逆方向から述べてみれば、「このキャラクターを『汚(けが)す』者であれば、間違いなくその者に『殺意』が込められていくのは当然のことです」となるのは自然な帰結です。なぜなら、自分の著作物は(それが二次的な著作物であったとしても)、自分の大切な「宝物」、自分が育てた「子供」のようなものだからです。  例えば、私は自分のコラムに添付しているイラストが「成人向け同人誌’」に使われた日には(どのように使えるのか想像もつかないですが)、差止の警告を出す決断をするのに3秒、そして警告が無視されたら、たとえ刑事告訴になろうとも、最後まで闘うだろうという確信があります。 ●N次著作の面倒くささ  さて、これまでは「他人の著作に依拠して創作された創作物」の関係についてのみお話ししました。これが、二次的著作(第28条)、翻案等(第27条)、または複製(第21条)に該当するかはケースバイケースですが、本コラムでは、これら「他人の著作に依拠して創作された創作物」を便宜的に「二次的な著作物」と呼ぶこととします。  しかし、単純な「二次的な著作物」であれば、それは著作権者との関係を調整すれば足りますが、大抵の場合、著作物とはそんな単純な構成をしていないのです。これが最近、よく聞くようになった用語「N次著作」です。  ここで一度、「N次著作」と言われているものを、例題を使って整理してみましょう。
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 まず、私、江端智一が「『初音ミク』主演映画」に触発されて、その映画のストーリーに依拠した小説「ミクミク物語」を創作したとしましょう。私が、この小説を、引き出しの奥にしまいこんで、時々取り出しては『私って、なんて才能があるのだろう』と自分の作品に、自分一人で涙するのであれば、別に何もする必要がありません。  しかし、これを自分のホームページに公開するとなれば話は別です。対価を得ている/得ていないは問題にはなりません(何度も繰り返しますが、この点は重要です。無償ならばなんでも許されるというのは、完璧な勘違いです)。この場合、私は、まず映画の著作権者(上図では三次著作権者)に、自分のホームページへの公開の許諾を得なければなりません。なぜなら、私は小説の著作者、著作権者ではありますが、同時に、映画の著作権者もまた、私の作品に対して著作権(翻案権)を持っているからです。  さらに、この映画が、二次著作権者のつくった楽曲を使っていて、さらに、私も私の小説の中でその歌詞を使っているなら、二次著作権者の許諾も必要となります。 そして言うまでもなく、私の小説の中に登場する「初音ミク」は、一次著作の「初音ミク」の画像、または二次著作の「初音ミク」を演じた映像に依拠することになるので、当然に「初音ミク」の画像の権利を所有している、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社(以下、クリプトン社という)の許諾も必要です。 「創作する」というだけでも大変なのに、上記の例では、私は3人の権利者に頭を下げて、そして必要なら対価を払って許諾を得なければなりません。N次創作物をつくり出すことを、単に個人(の机の引き出しの中のノート)で楽しむのであれば、誰の許諾もいりません。しかし、それを世の中に出したいと思った瞬間から、果てしない「お願いツアー」に出発しなければならないのです。 (文=江端智一) ※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。 ※後編へ続く。 ■おすすめ記事 吉野家、牛丼並盛り280円へ値下げ 他社の値下げに追随で、価格競争再燃の可能性も 4月15日がXデー!?  北朝鮮暴発で奇襲攻撃や化学テロの懸念も… 「IkeGami」線は「IG」!? 駅ナンバリングって知ってる? 不思議な法則を東急線に直撃してみた 浜崎あゆみ、久々のメディア出演で苦悩や私生活を語る「外に出るのが恐かったことも」 テレ朝はヒット番組量産システムで視聴率トップへ、フジは遺産頼みで3位転落?

“違法な”同人誌はなぜ放置されている? 600億円市場に突然警察介入の可能性も…

 サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。 ■「Business Journal」人気記事(一部抜粋) 元恋人からわいせつ画像で脅迫、10人に1人が経験?危険な専用投稿サイトも 西武HDへ敵対的TOBか サーベラス、上場阻止狙い今週にも…株価つり上げ画策か 冷たい(?)楽天ECコンサルをフル活用して売上を増やす術 ■特にオススメ記事はこちら! “違法な”同人誌はなぜ放置されている? 600億円市場に突然警察介入の可能性も… - Business Journal(3月10日)
画像は筆者提供
【前回記事はこちら】 『あの名作マンガはなぜ買えない? 創作者に“ものすごい”力を許す著作権の常識』  前回記事では、少女マンガ『キャンディ・キャンディ』にまつわる事件(「キャンディキャンディ事件」)やボーカロイド「初音ミク」などを通じて、創作者が保有する著作権の強さについて紹介させていただきました。  前回の繰り返しになりますが、いわゆる「キャンディキャンディ事件」とは、以下のようなものです。 ・作画者のいがらしゆみこさん(以下、マンガ家のいがらしさん)が、原作で原案者の水木杏子さん(以下、原作者の水木さん)の許諾を得ることなく、キャンディキャンディの主人公・キャンディのキャラクターでビジネス始めたことに端を発する事件で、このビジネスに対して、原作者の水木さんが、二次的著作物の著作権侵害の訴訟を起こした。 ・キャンディキャンディのストーリーが、水木さん原作、いがらしさん作画による著作物であることには、両者とも争いはありません。 ・しかし、マンガ家のいがらしさんは、キャンディのキャラクターを描いただけの絵(便宜的に、「カット絵」といいます)は、上記の二次的著作物ではないと主張します。カット絵ではストーリーは描かれていないので、水木さんの原作は使っていないことになる、という理由によると考えられます。マンガ家のいがらしさんは、上記の「カット絵」については、マンガ家のいがらしさんのみに著作権があり、原作者の水木さんには著作権はないと、著作権侵害を否認しました。 ・判決は、原作者の水木さんの全面勝訴。裁判所は、「カット絵」も水木さんの二次的著作物であることを認定し、「カット絵」に関しても、水木さんの許諾なくビジネスはできないとして、地裁・高裁・最高裁とパーフェクト勝訴し、2001年10月に最高裁で結審して、判決は確定しました。ちなみに「確定判決」とは、よほどの理由(新しい証拠が見つかった等)がなければ、ひっくり返らず、他の裁判もこの判断に従うことになるという、事実上の法律に相当する絶対的な判決を言います)  判決理由【註1】の概要は、以下のとおりです(筆者要約)。 (1)キャンディキャンディは、水木さんの原作の二次的著作物と認める。従って、二次的著作物にも、原作者の権利が及ぶとされている著作権法第28条が適用される。 (2)著作権法28条に照らせば、マンガ家のいがらしさんが持つ権利については、すべて同様に原作者の水木さんも持つと解釈される(そもそも、キャンディキャンディに関して、マンガ家いがらしさん“だけ”が持っている権利は存在しない)。 (3)なぜ著作権法第28条が、そのように規定しているかというと、このようなケースを個別判断していたら権利関係が著しく不安定になるし(=訴訟をいくつやっても足りない)、そもそも原作に依存しない二次的著作物というものは観念できない(=そのような著作物はない)。  というものでした。  さて、この判決について、私は妻に、「この判決、法律的には妥当と思うけど、直感的にどう思う?」と尋ねてみたところ、以下のように答えてくれました。 ・「カット絵」だけが、原作と完全に切り離されて成立して、マンガ家にだけ権利があるという主張は、変だと思う。 ・この作品(キャンディキャンディ)に限って言えば、「原作があってマンガが成立した」と言えるけど、その逆、「マンガがあったから原作が成立した」とは言えないように思う。 ・マンガ家のいがらしさんの描く絵は文句なしに素晴らしい。しかし、いがらしさんの絵ではなくても、「キャンディキャンディ」は十分に成立したと思える。それほどに、原作の世界観は、圧倒的で、すごかったから。  以下に、私の所感も追加します。 ・私は、高校の時に、友人のアニメ作成に付き合ったことがあります。キャラクターを考え出して、その場面の背景を描きつつ、キャラクターの表情や動作を具体的に絵として落として、所定の期日までに納品することが、どれほど大変で、命を削るような過酷な作業であるか、容易に想像することができます。 ・こんなすさまじい地獄の中で画をつくってきた人が、マンガの「カット絵」一つですら、原作者の許諾を得なければビジネスすることができない、というのは確かに理不尽であるようにも思えます。 ・しかし、それと同時に、マンガ家のいがらしさんは、それだけの画力があるのだから、キャンディキャンディ以外のマンガでもビジネスはできるはず、とも考えられます。 ・逆に言えば、キャンディキャンディ以外のコンテンツではビジネスが成立しないのであれば、キャンディキャンディの世界観こそが「最大の売り」になっているという事実を、逆説的に証明してしまっている、と思えます。 ・このように考えていくと、「『カット絵』はマンガ家だけに著作権がある」という考え方を採るのは、仮に著作権法第28条のことを全部忘れてみたとしても、やっぱり難しいように思えます。 ●同人誌は二次的著作物なのか?  さて、ここまで読んでいただいて、青ざめている方もいるのではないかと思っています。  というのは、今、「初音ミク」や同人誌などのいわゆるサブカルチャーの著作物は、「二次的著作物」と認定されるものが多いと思われるからです。 「初音ミク」に関する二次的著作物については、次の機会に取り上げるとして、今回は、同人誌を作っている方々を例に、説明させていただきます。  ここで提示する問題提起は、「同人誌は、本当に二次的著作物なのか?」ということです。  同人誌の事件で有名なものに「ドラえもん最終話同人誌問題」というものがあります。これは、ドラえもん最終話を、原作者でない人が同人誌に発表、販売していた事件です。 少し話はそれますが、この同人誌、「これ以外の最終回は考えられない」というくらいの大変に素晴らしい作品で、中学二年生の長女に、この作品を見せながら著作権の講義をしていたのですが、私の解説なんぞには最初から耳を貸さず、「ドラえもんの最終回はこれに決めようよ」と言い出すほどです。  この事件は、著作権者である小学館が侵害警告をして、同人誌の作成者も損害賠償に応じたことで、訴訟に至らずに終結しました。  では一体どのような内容の警告が行われたのか、想像してみたいと思います。  まず一つには、「ドラえもんの二次的著作物を、我々(小学館)に許可を得ることなく、制作、販売するのは、やめろ」というものが考えられます。  しかし、前述のように、私は、「同人誌 = 二次的著作物」とは言えないのではないかと考えています。  同人誌をつくられている方は、当然、原作のアニメやマンガの雰囲気や世界観を反映させながらも、「独自のストーリー」をつくっているはずです。これを、原作品を変形させたり脚色させたりした二次的著作物であると主張するのは、ちょっと無理があるように思います。  しかし、「ストーリーは違うかもしれないけど、アニメやマンガのキャラクターを、そのまま使っているじゃないか」との反論もあるかもしれません。  ところが、最高裁判所が「キャラクターには著作物性はない」と判示しているのです【註1】。判決文の中で、「キャラクターというものは、登場人物の人格とも言うべき抽象的概念であって、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したもの(著作権法2条1項1号)ではない」と述べています。  私は、この判決文の意味がわからず、何度も読み直し、以下のように解釈しました。  例えば、「ドラえもん」を一度も見たことがない人に、「ドラえもん」というキャラクターを言葉、または文章で伝えようと考えた場合、「22世紀の未来から、のび太を助けるためにやってきたネコ型ロボット」と説明されると思います。これは、「設定」ではありますが「思想又は感情を創作的に表現したもの」ではないです。  もう少し具体的に考えてみましょう。  例えば、私(江端)を題材とした「江端物語」という架空の創作をする場合に、その物語には、当然私を模したキャラクターが登場することになります。しかし、その私のキャラクターは「思想又は感情を創作的に表現したもの」にはならないでしょう。 ●キャラクターの「設定」と「絵」の違い  さて、これを整理してみますと、  (1)同人誌のストーリーにはオリジナル性があり、原作をコピーしたものではない  (2)同人誌に登場するキャラクター(の設定)には著作性はない ということになります。  二次的著作物とは、乱暴にいうと「原著作物を『取り込んだ』著作物」を指すのですから、「同人誌=二次的著作物」の理屈を導くのは無理ではないか、と思うのです。 「え! 同人誌は、二次的著作物じゃないの? それでは、著作権侵害にはならないね!  やったー!」と思われるかもしれませんが、残念ながらそうではなく、もっと悪い結論が導き出せるのです。  確かに、キャラクターの「設定」には著作権は発生しないかもしれませんが、キャラクターを「絵」にしたものには、当然に著作権が発生します(絵画の著作物)。例えば、「ドラえもん」であれば、これまで連載が続いてきたドラえもんのすべてのポーズ、動き、表情に、著作物性が認められます。  では、同人誌をつくっている人は、何をしていることになるか?  アニメやマンガの原作の絵を「切り取って」「貼りつけて」いる、すなわち、原作を「コピー&ペースト(コピペ)」して同人誌をつくっている、と解釈されます。  するとどうなるか? 二次的著作物の認定などという面倒なことはふっとばして、ダイレクトに複製権侵害(第21条)が成立してしまいます。つまり「同人誌=二次的著作物」ではなく、「同人誌=違法コピー物」で、アウトです。直撃です。  原作者や版権元から差し止め(やめろ!)、損害賠償(金払え!)と言われるだけでなく、国家までもがしゃしゃり出て、お仕置き(刑事罰)をしてくる可能性があります。具体的には、「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処し、またはこれらを併科する(著作権法119条1項)」という、民法の中でもかなり厳しい内容となっています。 ●同人誌の逃げ道とは?  では、同人誌は複製権侵害から、どうやっても逃れようがないのでしょうか?  私は、同人誌の中でも、ある特定の分野に限っては、「逃げ道」があると考えているのです。 「薄い本」です。 「薄い本」とは、マンガやアニメなどの、原作、元ネタがある創作物のパロディを記載した同人誌であって、主に性的な娯楽要素を扱う分野の同人誌、いわゆる「エロ同人本」をいいます。  唯一、複製権侵害を免れる方法があるとすれば、「アニメやマンガのキャラクターの絵を使っているが、原作のコピーであるとは絶対に言えないような絵だけで構成されている」と主張できればよいはずです。理論立てとしては、次のような感じになるでしょうか。 【Step.1】  アニメやマンガのキャラクターが、「あんな淫らなことしている絵」や、「こんなイヤらしいことしている絵」は、原作には絶対に登場しない。 【Step.2】  従って、原作のどの絵をどのように切り取ってコピペしても、私が創作したこの「薄い本」のようにエゲつなく、下品で、スケベで、エロい作品には、断じてならない。 【Step.3】  以上より、複製権侵害は否定される。 と言い張れば、裁判で勝つ可能性に一条の光を見いだすことはできるはずです。  しかし、キャラクターの顔を似せない「薄い本」に商品価値はあるか疑問がありますし、また、弁護士は、「あんな淫らなことしている絵」や、「こんなイヤらしいことしている絵」を証拠として、裁判官や陪審員に開示しながら、あなたを弁護することになりますが、はたして、その仕事、引き受けてくれるでしょうか。 ●コミケ会場が封鎖される日  それにしても、同人誌が、複製権侵害を構成すると判断される可能性は相当に高いのに、「1ミリたりとも、絶対にそのような侵害を見過ごさない」という絶対的な決意で取り組んでいるのは、私の知る限り、灰かぶり姫のお城で、ネズミの着ぐるみが踊り狂う千葉県にあるアミューズメント施設を運営する法人だけです。  不思議に思って、ちょっと調べてみたのですが、同人誌を取り扱う市場は、媒体で300億円弱、流通形態で300億円強、合計600億円市場といわれているらしいです。この600億円市場を吹き飛ばすことは、出版業界にとっても、本意ではないのかもしれません。また、国も、コンテンツ産業立国を目指すという国家的な政策から、警察権力の介入を差し控えているだけかもしれません。  しかし、私は、コミックマーケット(いわゆる、コミケ)の会場が、警察によって封鎖され、同人誌がすべて押収されるという未来が、絶対に来ないとは断言できないと思っています。 ●ここから本題  さて、今回、キャンディキャンディ事件から、二次的著作物の権利関係を整理し、同人誌の著作権問題を、キャラクターの観点から「薄い本」とからませて説明させていただきました。  実は、ここまでが前置きとなり、ここから本題に入ります。  今回のコラム執筆の動機は、初音ミクパッケージを販売している、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社が作成した、ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)の、以下の3行を読んだ時点からスタートしています。 「ピアプロ・キャラクター・ライセンス 第2条(著作権法その他適用法との関係) 1.当社キャラクターは、著作権法その他の適用法令によって保護されます」  あれ、「キャラクターを保護」? キャラクターって、著作権上の保護対象ではないと、判示されていますが、これは一体どういうこと? という疑問から始まりました。  次回では、これまで3回連続で掲載させていただいた「初音ミク」について、法律面からのアプローチを試みたいと思います。また、N次著作の意味と、上記のピアプロ・キャラクター・ライセンスについても、具体的に書きたいと思います。 (文=江端智一) ※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。 【註1】最高裁判決(平成9年7月17日)「ポパイネクタイ事件」 ■おすすめ記事 元恋人からわいせつ画像で脅迫、10人に1人が経験?危険な専用投稿サイトも 西武HDへ敵対的TOBか サーベラス、上場阻止狙い今週にも…株価つり上げ画策か 冷たい(?)楽天ECコンサルをフル活用して売上を増やす術 心が折れない人になるための3つの方法 モデル・西山茉希、早乙女と復縁との一部報道について「ない」と所属事務所へ報告

次回は99.5回目!? 老舗同人誌即売会MGMがいよいよ100回目の開催へ王手!

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 コミケに次ぐ、日本で2番目に古い同人誌即売会MGM(まんが ギャラリー&マーケット)。6月10日、その99回目となる「MGM99」を開催し、いよいよ次回は記念すべき100回目の開催……と思いきや、次回は「MGM99.5」となることに。  コミックマーケットから分離独立する形で1980年から始まったMGMは、二次創作ジャンルが肥大化する同人誌即売会に背を向けて、創作系を中心にして開催されている。現在では、極めて独自色が際立つ即売会だ。今年1月に5年ぶりに開催された「MGM98」では、69サークルが参加。6月の「MGM99」では62サークルが参加と、規模は小さいながらも、70年代からの同人誌文化を知る人々も多数参加している。  「MGM99」では、いよいよ次回は100回目と参加者も考えていたのだが、会場で配布されたチラシで告知されたのは「MGM99.5」だったのだ。  「MGM99.5」の開催にあたっては、会場の都合などさまざまあるが、根本的には記念すべき100回目を盛り上げるためだ。告知チラシでは「MGM100に新刊で参加したくなるMGM」を宣言し、「次回MGM100を目前にして、前夜祭というか、初めての企画でMGM100準備編をやります」としている。つまり、この99.5回目を利用して、参加者にも100回目を記念碑的な即売会に位置付けるためのアイデアや企画を準備してほしいというのが、主催者の狙いなのだ。  開催日は9月1日、会場の都合で15時から19時30分までという、即売会にはおおよそあり得ない時間設定に。しかも翌日には、創作系同人誌即売会の大手である「コミティア」も予定されている。果たして、参加者が2日間続けてイベントを楽しもう! となるか、あるいは「コミティアがあるからMGMはいいや」となるかが気になるところだ。  毎回、即売会終了後には参加者全員で意見交換会、その後は打ち上げという流れになっており、極めて参加者同士のコミュニケーションの機会が多いのがMGMの特徴だ。単に同人誌を売り買いするだけ、あるいは買った同人誌を家に帰って読むのだけが楽しみ、といったサイクルから脱却したいなら、ぜひ参加してみるべきである。  ほかの同人誌即売会にはない、新たな発見があるはずだ。 (取材・文=昼間 たかし)

参加者の意識が問われる時! 存続危機のガタケット会場で意見交換会開催

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意見交換会は予定時間を大幅に超過し、3時間
あまりにも及んで激論が交わされた。
 老舗同人誌即売会・ガタケット(新潟県)主催の「ガタケット121」が4月29日、新潟市産業振興センターで開催された。ガタケットは今年3月末、地域経済の低迷や東日本大震災の影響に加え、会場日程の問題により存続の危機にあることを発表。この時点で、参加サークルが募集スペースの半数にも満たない500~550サークルという厳しい状況だったが、危機を知った多くの人々が参加意思を表明。直接参加860サークル、委託参加183サークルを迎えての開催となった当日を取材した。  ガタケット121の開幕に先立ち、代表の坂田文彦氏は、今回参加してくれた人々へ向けて感謝の言葉を告げる。「ありがとうございました」と繰り返しながら、深々と頭を垂れ涙ぐむ坂田氏に、スタッフはそっとティッシュペーパーを差し出す。開場予定時刻を超過し10分あまり続いた坂田氏のあいさつに対して、会場からは「サカタ! サカタ!」とコールが響き渡り、拍手が送られた。
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開会のあいさつで早くも涙する坂田氏。
 筆者も、ガタケットを訪れるのは、かれこれ4年ぶりのこと。危機的状況にあると聞いていただけに、どれだけ大変なことになっているのかと心配していた。しかし、一般参加者が入場してくると各々のサークルスペースはにぎわい始め、会場の一角に設けられたDJブースの周囲には踊りの輪もできあがっていく。確かに、サークル参加の減少により存続の危機にはあるものの、ガタケットを楽しみにしている人々が減ってはいないことは間違いないようだ。  それがとくに印象づけられたのは、通称「昼の儀式」だ。これは、毎回正午になると、アニメ『宇宙大帝ゴッドシグマ』のテーマ曲が流れ、サビの部分で参加者全員が拍手で調子をとる習慣だ。音楽が鳴り始めると、サークルも一般参加者もコスプレイヤーも揃ってスタンバイを始める。中には早くも踊り始めている人の姿もあるではないか。30年あまりにわたって続いてきたこのイベントが、新潟に「文化」として定着していることは異論を挟む余地がない。また、友人と再会して会話を楽しんでいる人の姿も多く見かけた。ガタケットは、単に同人誌を売り買いするだけではない「場」としての役割を果たしているのだ。 ■サークル参加費を3,000円にはできない  今回、イベント以上に注目したのは、筆者もパネリストとして招かれた(注:自腹)、閉会後の意見交換会だ。この席上、坂田氏は詰めかけた参加者に対して、経営状態を包み隠すことなく説明した。 「イベントの売り上げは3年前に5,600万円あったものが、前回3,600万円まで落ち込みました。ガタケットSHOP(画材販売、コピー、印刷などを提供する常設店舗)の売り上げも、5,000万円から4,000万円まで落ち込みました。13名の常勤スタッフには、3年前から経理をすべて公開しています。また昨年7月からは全員の給与明細を見せ、個々人の業務内容に応じて給与の削減も行っています」
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存続の危機が叫ばれる一方で、多くの
人々がこの日を心待ちにしていることも
明らかなのだ。
 経営努力を続けている坂田氏だが、年6回開催されるガタケットと、ガタケットSHOPは、地元の若い世代にとって同人誌あるいは漫画文化に触れる最初のステップとしての機能も果たしてきた。それゆえに、不採算な部分をカットしたり値上げをすることも容易ではない。坂田氏は経営者として必要以上に利益を追求してこなかったことを自省しつつも、参加のハードルを上げることを懸念する。 「ガタケットは、なんでサークル参加費が2,600円なのか? と問われることもあります。しかし、中高生が参加しにくくなることを考えると、3,000円にはしたくないんです」  参加者からの問いかけに丁寧に答える坂田氏だが、中でも注目されたのは、新潟市長が記者会見でガタケットの支援を考えていると報道された件だ。対して坂田氏は、 「市の発表には驚きましたが、あくまで“支援を検討するように示唆”という、すごく遠い話です」  やはり、行政に頼るのではなく、参加者も含めて考えなければ解決の道筋は立てられない。実は、ガタケットがこうした意見交換会を開催するのは、これまでなかったことだ。その理由は、撤収作業の時に坂田氏自身もフォークリフトを運転したりしなければならないので、時間の調整が困難だったから。今回の意見交換会を皮切りに、参加者が主体的に考える流れが広がっていくことを望んでやまない。ただ残念に感じたのは、ガタケットというイベント自体、中高生と女性が多いイベントにも関わらず、意見交換会の参加者の多くが「ベテラン参加者」だったこと。これからを担う世代も含めて、ガタケットの未来を考える「場」を創造せねばならない。 (取材・文=昼間たかし)

参加者の意識が問われる時! 存続危機のガタケット会場で意見交換会開催

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意見交換会は予定時間を大幅に超過し、3時間
あまりにも及んで激論が交わされた。
 老舗同人誌即売会・ガタケット(新潟県)主催の「ガタケット121」が4月29日、新潟市産業振興センターで開催された。ガタケットは今年3月末、地域経済の低迷や東日本大震災の影響に加え、会場日程の問題により存続の危機にあることを発表。この時点で、参加サークルが募集スペースの半数にも満たない500~550サークルという厳しい状況だったが、危機を知った多くの人々が参加意思を表明。直接参加860サークル、委託参加183サークルを迎えての開催となった当日を取材した。  ガタケット121の開幕に先立ち、代表の坂田文彦氏は、今回参加してくれた人々へ向けて感謝の言葉を告げる。「ありがとうございました」と繰り返しながら、深々と頭を垂れ涙ぐむ坂田氏に、スタッフはそっとティッシュペーパーを差し出す。開場予定時刻を超過し10分あまり続いた坂田氏のあいさつに対して、会場からは「サカタ! サカタ!」とコールが響き渡り、拍手が送られた。
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開会のあいさつで早くも涙する坂田氏。
 筆者も、ガタケットを訪れるのは、かれこれ4年ぶりのこと。危機的状況にあると聞いていただけに、どれだけ大変なことになっているのかと心配していた。しかし、一般参加者が入場してくると各々のサークルスペースはにぎわい始め、会場の一角に設けられたDJブースの周囲には踊りの輪もできあがっていく。確かに、サークル参加の減少により存続の危機にはあるものの、ガタケットを楽しみにしている人々が減ってはいないことは間違いないようだ。  それがとくに印象づけられたのは、通称「昼の儀式」だ。これは、毎回正午になると、アニメ『宇宙大帝ゴッドシグマ』のテーマ曲が流れ、サビの部分で参加者全員が拍手で調子をとる習慣だ。音楽が鳴り始めると、サークルも一般参加者もコスプレイヤーも揃ってスタンバイを始める。中には早くも踊り始めている人の姿もあるではないか。30年あまりにわたって続いてきたこのイベントが、新潟に「文化」として定着していることは異論を挟む余地がない。また、友人と再会して会話を楽しんでいる人の姿も多く見かけた。ガタケットは、単に同人誌を売り買いするだけではない「場」としての役割を果たしているのだ。 ■サークル参加費を3,000円にはできない  今回、イベント以上に注目したのは、筆者もパネリストとして招かれた(注:自腹)、閉会後の意見交換会だ。この席上、坂田氏は詰めかけた参加者に対して、経営状態を包み隠すことなく説明した。 「イベントの売り上げは3年前に5,600万円あったものが、前回3,600万円まで落ち込みました。ガタケットSHOP(画材販売、コピー、印刷などを提供する常設店舗)の売り上げも、5,000万円から4,000万円まで落ち込みました。13名の常勤スタッフには、3年前から経理をすべて公開しています。また昨年7月からは全員の給与明細を見せ、個々人の業務内容に応じて給与の削減も行っています」
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存続の危機が叫ばれる一方で、多くの
人々がこの日を心待ちにしていることも
明らかなのだ。
 経営努力を続けている坂田氏だが、年6回開催されるガタケットと、ガタケットSHOPは、地元の若い世代にとって同人誌あるいは漫画文化に触れる最初のステップとしての機能も果たしてきた。それゆえに、不採算な部分をカットしたり値上げをすることも容易ではない。坂田氏は経営者として必要以上に利益を追求してこなかったことを自省しつつも、参加のハードルを上げることを懸念する。 「ガタケットは、なんでサークル参加費が2,600円なのか? と問われることもあります。しかし、中高生が参加しにくくなることを考えると、3,000円にはしたくないんです」  参加者からの問いかけに丁寧に答える坂田氏だが、中でも注目されたのは、新潟市長が記者会見でガタケットの支援を考えていると報道された件だ。対して坂田氏は、 「市の発表には驚きましたが、あくまで“支援を検討するように示唆”という、すごく遠い話です」  やはり、行政に頼るのではなく、参加者も含めて考えなければ解決の道筋は立てられない。実は、ガタケットがこうした意見交換会を開催するのは、これまでなかったことだ。その理由は、撤収作業の時に坂田氏自身もフォークリフトを運転したりしなければならないので、時間の調整が困難だったから。今回の意見交換会を皮切りに、参加者が主体的に考える流れが広がっていくことを望んでやまない。ただ残念に感じたのは、ガタケットというイベント自体、中高生と女性が多いイベントにも関わらず、意見交換会の参加者の多くが「ベテラン参加者」だったこと。これからを担う世代も含めて、ガタケットの未来を考える「場」を創造せねばならない。 (取材・文=昼間たかし)

早くも「漢」が立ち上がった――老舗同人誌即売会・ガタケット存続の危機を救え!

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あのガタケットが危ないって!?
 新潟県で1983年以来続く、全国でも指折りの老舗同人誌即売会・ガタケットが存続の危機に陥っている。新潟県は、全国でも珍しい自治体の主催による「にいがたマンガ大賞」が行われており、応募作の表現の豊かさは全国的にも注目を集めている。新潟にそうした豊かな文化が育った背景に、主催団体にも名を連ねるガタケットの存在があることは間違いない。また、イベントを運営するガタケット事務局代表の坂田文彦氏(マンガ大賞実行委員会の副会長でもある)は、同人誌即売会の唯一の全国組織である「全国同人誌即売会連絡会」の発起人にも名を連ね、同会の連絡先はガタケット事務局になっている。  筆者も拙著『マンガ論争』(マイクロマガジン社)シリーズの共著者・永山薫氏と共に何度か訪問しているし、坂田氏にも幾度も取材を行っている。理念もあり、地域に根ざしたイベントであることは間違いないし、坂田氏の冷めることのない熱気にも触れている。そんなガタケットが存続の危機とは! 「寝耳に水」とは、まさにこういうこと。さっそく、坂田氏に話を聞くことに。  いきなり携帯に電話して取材を試みた筆者に、坂田氏は丁寧に対応してくれた。やはり、もっとも気になるのは、危機に至った経緯だ。  坂田氏によれば、原因は2007年の新潟県中越沖地震までさかのぼるという。この地震に加え水害があったことで、この年のガタケット来場者は減少した。さらに、2つの災害から立ち直っていない08年には、リーマンショックによって新潟県内の経済状況もかなり悪化した。このことはいまだに尾を引いていて、上越・中越地域からの来場者が、ごっそりと減ってしまったのだという。  リーマンショックによって、それまで無借金経営だったガタケットは、銀行からの借り入れを行う。そこに追い打ちをかけるように襲ったのが、昨年の東日本大震災だ。直接的な被害はなかったものの、震災直後の3月21日に予定されていた「ガタケット114」は中止となる。これによって、資金繰りがかなり困難になったという。ガタケットは例年、年6回の開催だ。うち、ひとつが中止になるということは、実質、2カ月分の運転資金が吹き飛んでしまうといってよい。  こうした状況の中で、坂田氏は公式サイトに「サークルの皆さんヘ」と題した文章を発表。この中で、坂田氏は「ここ数年の参加サークル数でこのまま推移していくとなると、ガタケットの運営維持は向こう1年以内に行き詰まります」と記す。これに加え、例年のスケジュールならば5月半ばから5月末に予定されていた開催日が、会場の都合で4月29日にせざるを得なかったことも述べている。翌30日は、東京で大規模な同人誌即売会が開催される予定もあり、参加サークル数は危うい。そうした状況を述べた上で坂田氏は「事ここに至り、参加者の皆さんのお力添えをお願いしなければならない状況となり、ガタケットの深刻な現状をありのままにお伝えさせて頂く事としました。もし皆さんが今後のガタケットの存続を願い、ご協力を頂けるのであれば、不都合の多い日程である事は十二分に承知していますが、どうか『ガタケット121』へのサークル参加をお願い致します」と呼びかける。  坂田氏は。ガタケットの危機的状況を、公にした理由を次のように語る。 「ガタケットもコミックマーケットと同じく古い歴史を持ち、運営スタッフ、サークル、一般参加者が一体になって作ってきたイベントです。ですから、運営状況が深刻になっていることは伝えなくてはならないと判断したんです。新潟市にも、こうした発表を行っても市に不都合はないか確認した上での発表です。参加者と一緒になって、これからどうすべきかを考えたいと思っています」  この危機に、いち早く立ち上がったのが同人誌専門印刷会社「有限会社ねこのしっぽ」の内田朋紀社長だ。内田氏は、即座にTwitterで「ねこのしっぽを利用したことがあるお客様でこれから4/29開催のガタケット121にサークル参加をしたいと考えている方は当社経由で参加申込をして頂けましたら即売会参加費を当社が負担します。2600円と微々たる支援ですが是非よろしくお願いします」とツイートした。内田氏は話す。 「(坂田氏は)“お気持ちだけいただきます”とおっしゃいましたが、何かしら支援したいと思っています。ガタケットは首都圏でも少なくなった、誰でも気軽に足を運ぶことができるオールジャンルの同人誌即売会です。今回だけでなく、今後も支援をしていかなければならないと思いますが、せっかくの機会ですので多くの参加者に足を運んでほしいと思っています」  詳細は3月30日に同社サイトに公開された。ちなみに、過去に利用したことがある人ならば、今回は同社へ同人誌の印刷を申し込まなくてもよい。なんとも太っ腹な支援だ。  新潟に豊かな漫画文化の土壌を育てたガタケットは、さまざまな点で魅力の尽きないイベントだ(コスプレイヤーにストッキング着用必須の規制がない点も含む)。直接参加が難しい人には、委託参加(同人誌の販売を運営に委託すること)という方法もある。でも、ぜひ一度は訪れて昼の儀式(正午になるとアニメ『宇宙大帝ゴッドシグマ』のテーマ曲が流れ、サビの部分で、参加者が拍手で音頭を取る)も味わってほしいぞ。 (取材・文=昼間たかし) ●ガタケット公式サイト <http://gataket.com/> ●有限会社ねこのしっぽ <http://www.shippo.co.jp/neko/> 
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