
『逃げるは恥だが役に立つ』(講談社)
2016年もいよいよ年の瀬ですが、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)というドラマがとんでもなく話題になりましたね。海野つなみ先生による同名マンガが原作となるこのドラマは、ガッキーこと新垣結衣主演の契約結婚をテーマにした作品です。
特筆すべきは、星野源演じる津崎平匡が36歳にして童貞。さらに、石田ゆり子演じる土屋百合は50代にして処女という、かつてないほどに高齢童貞&処女がクールな存在として持ち上げられている、まさに“神ってる”作品なのです。
そんなわけで今回は、30代童貞がちょっとカッコイイものとなりつつある、この『逃げ恥』ブームに乗じて、「恋ダンス」はないが「濃い童貞」が出てくる、ガッキーはいないがエロガキならいる、そんな世界を描く珠玉の「童貞マンガ」をご紹介したいと思います。

『ルノアール兄弟の愛した大童貞』(講談社)
■『ルノアール兄弟の愛した大童貞』
最初にご紹介するのは『ルノアール兄弟の愛した大童貞』という作品。タイトルが長いので、通称「大童貞」と呼ばれています。
主人公は、土毛智樹(どげ・ともき)という年齢不詳のおっさん。頭にはサンバイザー、白のランニングに白ブリーフ、そして裸足という、いつ警察に職質されてもおかしくないいでたちのこの男ですが、実は江戸時代より受け継がれてきた童貞の中の童貞である称号「大童貞」を継ぐ、第12代大童貞なのです。
土毛は、夢見る3人の中学生(童貞)、植草・錦織・東山たちに日々、童貞道のなんたるかを説き、時には江戸時代の発明家であり、初代大童貞、ドゲレツ斎の考案した驚くべき発明品を次々と披露します。言うなれば、童貞版『キテレツ大百科』ですな。
例えば「元禄名器物語」は、大名行列の際にも人目をはばからずシコれることを目的として作られた、鼓(つづみ)そっくりの形のオナホールです。
「スーパー個室弁慶」は、 人の目を気にせずにシコれるよう、時空のはざまに行ける装置(見た目は、『ドラえもん』のタイムマシーンそのまんま)。
「童貞粥」は 究極の童貞米「シコヒカリ」を水飴で煮たもの。水飴で煮たお粥って、すごいまずそうですね……。
そのほかにも「童貞幕府」だの「征夷大童貞」だのと、かつて聞いたことのない斬新な童貞ワードのオンパレードで、中身はないのにテンションだけは異様に高いアッパー系童貞マンガの代表格といった趣となっています。

『Gのサムライ』(リイド社)
■『Gのサムライ』
『Gのサムライ』はいま一番危険なマンガ家、田中圭一先生による、清く明るく、それでいてどうしようもなくお下品な童貞マンガです。
若くして無人島に島流しの刑に処された、武士の品場諸朝(しなば・もろとも)と公家の服上院魔手麻呂(ふくじょういん・ましゅまろ)が、童貞を捨てる日を夢見て無人島で奮闘する物語なのですが、いかんせん無人島が舞台なので、童貞を捨てる・捨てない以前に女性がいません。
その有り余る性欲で女体を追い求めるあまり、島に生息する野生のサルの足、ヤシの実の果肉、熊の舌、そしてエイなどに股間が触れただけで射精してしまう2人。やっと女性とエッチができたと思ったら、化けたタヌキだったりとか、もはや童貞マンガなのか獣姦マンガなのかよくわからない様相で、いずれにしてもサイテーです(褒め言葉)。ちなみに作品タイトルの「G」は「自慰」とかけてます。たぶん。

『漫画ルポ 中年童貞』(リイド社)
■『漫画ルポ 中年童貞』
『漫画ルポ 中年童貞』は文字通りルポ形式で、現代における中年童貞の実態を克明にマンガで描いた、実に生々しい作品。
介護職員(44)、妄想に生きる高学歴(34)、ネトウヨ(44)、シェアハウスに住むアニメオタク(32)……などなど、いろいろなタイプの中年童貞が紹介されていますが、すべて実在する人物がモデル。しかもほとんど全員、人格崩壊レベルで性格が悪いという、童貞をこじらせた末路の悲惨さが克明に描かれており、戦慄が走ります。
彼らのほとんどがコミュ障だったり、プライドが異常に高く、自分の非を認めなかったり、処女信仰が強かったり、メンタルを病んでいたり……などの共通する特徴があるようです。同じ30代でも、『逃げ恥』に出てくるイケメン童貞とは随分違うんですが、どうやらこれが中年童貞の現実(リアル)のようです。
「44歳で童貞だけど、将来…いつか必ずこの俺のことをすべて受け入れてくれる女性が現れるはずだ!!」
「女性や性に対してまじめで一途で純粋だから…オレは今まで童貞だったんだ!!」
こんな中年童貞の叫びが虚しくこだまするシーン。涙なしでは読めません。同世代の僕にとっては、人生一歩踏み外したら、あっち側に行っていたのかもしれないと思わされる嫌なリアルさがあり、身につまされる作品です。

『どうてい』(ぶんか社)
■『どうてい』
最後にご紹介するのは『どうてい』という作品。タイトルがひらがなになっただけでもインパクトがすごいのですが、単行本の表紙からもビンビンに童貞感が伝わってきます。なんというか、ほかの作品とは醸し出すオーラが桁違いです。昭和の作品ならではのすごみを感じます。
主人公は河島永悟という高校生。永悟の恋人の「クミ」が担任の教師に犯され、ショックで自殺してしまいます。怒りのあまりにその担任を刺してしまった永悟。東京での忌まわしい事件を忘れるべく、北海道での高校生活に新天地を求めます。そこでまたいろんな女と出会っては苦悶する、というストーリーです。
北海道の親戚の家に引き取られた永悟は、いとこの優子ちゃんに惚れられたり、なぜか永悟の忌まわしい過去を知っている女、奥村美和子に誘惑されたりと、なにげに結構モテモテです。彼女らとエッチをするチャンスは十分にあるのですが、そのたびに死んでしまった元恋人「クミ」の遺影が脳裏をよぎり、手が出せず。常に苦悩し、悶々とし続けるというダウナー系童貞マンガで、なんというか救いようがない感じがすごいです。
主人公の永悟はおそらく童貞なのですが、インパクトのあるタイトルのわりには、作品中ではあまり「童貞」というキーワードが出てきません。美和子に誘惑された時に手が出せず、「君ィ童貞!?」ってののしられたシーンぐらいでしか出てきません。そういう意味では、表紙オチ感が強い童貞マンガでもあります。
というわけで、『逃げ恥』便乗企画、読めば読むほど煩悩が蓄積する童貞マンガ4作品をご紹介しました。年末にこんなの読んだら、悶々として、落ち着いて年が越せなさそう、なんて思う方もいるかもしれませんが、ご安心ください。蓄積された煩悩は、除夜の鐘により、キレイさっぱり浄化されることでしょう。
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<
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