『逃げ恥』だけじゃない! 読めば読むほど煩悩が蓄積する「童貞マンガ」特集

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『逃げるは恥だが役に立つ』(講談社)
 2016年もいよいよ年の瀬ですが、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)というドラマがとんでもなく話題になりましたね。海野つなみ先生による同名マンガが原作となるこのドラマは、ガッキーこと新垣結衣主演の契約結婚をテーマにした作品です。  特筆すべきは、星野源演じる津崎平匡が36歳にして童貞。さらに、石田ゆり子演じる土屋百合は50代にして処女という、かつてないほどに高齢童貞&処女がクールな存在として持ち上げられている、まさに“神ってる”作品なのです。  そんなわけで今回は、30代童貞がちょっとカッコイイものとなりつつある、この『逃げ恥』ブームに乗じて、「恋ダンス」はないが「濃い童貞」が出てくる、ガッキーはいないがエロガキならいる、そんな世界を描く珠玉の「童貞マンガ」をご紹介したいと思います。
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『ルノアール兄弟の愛した大童貞』(講談社)
■『ルノアール兄弟の愛した大童貞』  最初にご紹介するのは『ルノアール兄弟の愛した大童貞』という作品。タイトルが長いので、通称「大童貞」と呼ばれています。  主人公は、土毛智樹(どげ・ともき)という年齢不詳のおっさん。頭にはサンバイザー、白のランニングに白ブリーフ、そして裸足という、いつ警察に職質されてもおかしくないいでたちのこの男ですが、実は江戸時代より受け継がれてきた童貞の中の童貞である称号「大童貞」を継ぐ、第12代大童貞なのです。 土毛は、夢見る3人の中学生(童貞)、植草・錦織・東山たちに日々、童貞道のなんたるかを説き、時には江戸時代の発明家であり、初代大童貞、ドゲレツ斎の考案した驚くべき発明品を次々と披露します。言うなれば、童貞版『キテレツ大百科』ですな。  例えば「元禄名器物語」は、大名行列の際にも人目をはばからずシコれることを目的として作られた、鼓(つづみ)そっくりの形のオナホールです。 「スーパー個室弁慶」は、 人の目を気にせずにシコれるよう、時空のはざまに行ける装置(見た目は、『ドラえもん』のタイムマシーンそのまんま)。 「童貞粥」は 究極の童貞米「シコヒカリ」を水飴で煮たもの。水飴で煮たお粥って、すごいまずそうですね……。  そのほかにも「童貞幕府」だの「征夷大童貞」だのと、かつて聞いたことのない斬新な童貞ワードのオンパレードで、中身はないのにテンションだけは異様に高いアッパー系童貞マンガの代表格といった趣となっています。
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『Gのサムライ』(リイド社)
■『Gのサムライ』 『Gのサムライ』はいま一番危険なマンガ家、田中圭一先生による、清く明るく、それでいてどうしようもなくお下品な童貞マンガです。  若くして無人島に島流しの刑に処された、武士の品場諸朝(しなば・もろとも)と公家の服上院魔手麻呂(ふくじょういん・ましゅまろ)が、童貞を捨てる日を夢見て無人島で奮闘する物語なのですが、いかんせん無人島が舞台なので、童貞を捨てる・捨てない以前に女性がいません。  その有り余る性欲で女体を追い求めるあまり、島に生息する野生のサルの足、ヤシの実の果肉、熊の舌、そしてエイなどに股間が触れただけで射精してしまう2人。やっと女性とエッチができたと思ったら、化けたタヌキだったりとか、もはや童貞マンガなのか獣姦マンガなのかよくわからない様相で、いずれにしてもサイテーです(褒め言葉)。ちなみに作品タイトルの「G」は「自慰」とかけてます。たぶん。
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『漫画ルポ 中年童貞』(リイド社)
■『漫画ルポ 中年童貞』 『漫画ルポ 中年童貞』は文字通りルポ形式で、現代における中年童貞の実態を克明にマンガで描いた、実に生々しい作品。  介護職員(44)、妄想に生きる高学歴(34)、ネトウヨ(44)、シェアハウスに住むアニメオタク(32)……などなど、いろいろなタイプの中年童貞が紹介されていますが、すべて実在する人物がモデル。しかもほとんど全員、人格崩壊レベルで性格が悪いという、童貞をこじらせた末路の悲惨さが克明に描かれており、戦慄が走ります。  彼らのほとんどがコミュ障だったり、プライドが異常に高く、自分の非を認めなかったり、処女信仰が強かったり、メンタルを病んでいたり……などの共通する特徴があるようです。同じ30代でも、『逃げ恥』に出てくるイケメン童貞とは随分違うんですが、どうやらこれが中年童貞の現実(リアル)のようです。 「44歳で童貞だけど、将来…いつか必ずこの俺のことをすべて受け入れてくれる女性が現れるはずだ!!」 「女性や性に対してまじめで一途で純粋だから…オレは今まで童貞だったんだ!!」  こんな中年童貞の叫びが虚しくこだまするシーン。涙なしでは読めません。同世代の僕にとっては、人生一歩踏み外したら、あっち側に行っていたのかもしれないと思わされる嫌なリアルさがあり、身につまされる作品です。
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『どうてい』(ぶんか社)
■『どうてい』  最後にご紹介するのは『どうてい』という作品。タイトルがひらがなになっただけでもインパクトがすごいのですが、単行本の表紙からもビンビンに童貞感が伝わってきます。なんというか、ほかの作品とは醸し出すオーラが桁違いです。昭和の作品ならではのすごみを感じます。  主人公は河島永悟という高校生。永悟の恋人の「クミ」が担任の教師に犯され、ショックで自殺してしまいます。怒りのあまりにその担任を刺してしまった永悟。東京での忌まわしい事件を忘れるべく、北海道での高校生活に新天地を求めます。そこでまたいろんな女と出会っては苦悶する、というストーリーです。  北海道の親戚の家に引き取られた永悟は、いとこの優子ちゃんに惚れられたり、なぜか永悟の忌まわしい過去を知っている女、奥村美和子に誘惑されたりと、なにげに結構モテモテです。彼女らとエッチをするチャンスは十分にあるのですが、そのたびに死んでしまった元恋人「クミ」の遺影が脳裏をよぎり、手が出せず。常に苦悩し、悶々とし続けるというダウナー系童貞マンガで、なんというか救いようがない感じがすごいです。  主人公の永悟はおそらく童貞なのですが、インパクトのあるタイトルのわりには、作品中ではあまり「童貞」というキーワードが出てきません。美和子に誘惑された時に手が出せず、「君ィ童貞!?」ってののしられたシーンぐらいでしか出てきません。そういう意味では、表紙オチ感が強い童貞マンガでもあります。  というわけで、『逃げ恥』便乗企画、読めば読むほど煩悩が蓄積する童貞マンガ4作品をご紹介しました。年末にこんなの読んだら、悶々として、落ち着いて年が越せなさそう、なんて思う方もいるかもしれませんが、ご安心ください。蓄積された煩悩は、除夜の鐘により、キレイさっぱり浄化されることでしょう。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

トランプもビックリ!? 「もし日本に大統領がいたら……」な過激マンガ『日本国大統領 桜坂満太郎』

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『日本国大統領桜坂満太郎 16』(吉田健二/新潮社)
 11月8日に行われた米国大統領選でまさかのドナルド・トランプ氏が当選し、第45代大統領に就任することになりました。世界中が一斉にズコー! ってなった、歴史的な瞬間でしたね。いずれにせよ、日本にとっては相手がトランプだろうが、花札だろうが、ご機嫌を取っておかなきゃいけないのがつらいところです。  ところで、アメリカに限らず、良くも悪くも世界で話題を巻き起こすヤツらって、やっぱり大統領なんですよ。フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領しかり、韓国の朴槿恵大統領しかりです。実際、飲み会でも「よっ、大統領!」とはよく言いますが、「よっ、首相!」とか「よっ、総理大臣!」とかはあんまり言わないですよね。首相だと、なんか今ひとつパンチが弱いんでしょうか。  そんなわけで、「もし日本に大統領がいたら……」という、実に安直かつダイナミックな発想をしてしまったマンガをご紹介しましょう。その名も『日本国大統領 桜坂満太郎』です。  本作は、近未来の日本を描いたストーリーとなっています。中国と北朝鮮の工作員が共謀し、国会議事堂を小型核爆弾で爆破。国会議員の大半が死亡し、日本は一気に無政府状態となります。そこで立ち上がったのが、都知事の桜坂満太郎というわけです。  桜坂は自衛隊をフル活用して、侵略してくる中国軍や朝鮮軍を撃退。アメリカには頼らない真の独立国家として再構築を目指すという、右か左かでいったらバリバリの右寄りマンガです。「日本国大統領」なんてタイトルなので、壮大なスケールの政界マンガかと思いきや、ほぼテロと戦争しかない内容となっています。  普通に考えると「日本には天皇制があるんだから、大統領制は無理なんじゃ?」とか、「自衛隊で他国を攻撃とか、いやいや憲法第9条はどうなのよ?」といったツッコミを入れたくなる話ですが、そこはご安心ください。このマンガでは、その辺のデリケートな部分を完全シャットアウト! 設定上、都合の悪いことには触れなくていいのが、マンガの便利なところですよね。  とにかく、このマンガ、今までの日本では考えられない事態がバンバン起こります。 ・北朝鮮が韓国を占領し、北朝鮮メインで朝鮮半島統一。 ・朝鮮軍と中国軍が九州を占領。傀儡政権「九州国」を設立。 ・東京は中国軍に占領され、日本全土もほぼ中国の占領下に。 ・中国は日本にミサイルを撃ち込みまくり、台湾は中国にミサイルを撃ち込みまくり。 ・中国では反乱が起きて中国共産党が崩壊。中華連邦共和国となる。 などなど……。  そして、これらの諸悪の根源はすべて中国です。しかも、味方のはずのアメリカは、やれ「軍事衛星が故障した」だの、「日米安保は無効になった」だのと言って、ちっとも日本を助けてくれません。まるで熟年離婚した夫婦のような冷たさ。  このマンガのすごいところは、日本の新しいリーダー、桜坂による即断即決の政治判断。ズバッと決めて、ズバッと解決。実に男らしいのですが、その結果……バンバン人が死んでいきます。  例えば、中国が操るテロリスト集団に襲撃され、桜坂が取り囲まれるシーン。銃口を突きつけられ、まさに死の一歩手前というところで、テロリストのリーダーに取引を持ちかけられます。 「どうだね? 桜坂さん……オレの話に乗らないか?」 「断る!!」  さすが、即断即決の男です。しかしその直後、テロリストが報復としてお台場のフジテレビ社屋を爆破。局員たち1万人以上が死亡します。そこは即断即決じゃなく、もうちょっとのらりくらりと引っ張れよ……。  そんなこんなで、九州も東京も東北も中国の手に落ち、国民が殺されまくる中、唯一、中国の手が伸びていない北海道に逃げ延びる桜坂なのですが、ここから奇跡の逆転劇が始まり、再び日本を奪還、真の独立国家を宣言するというすさまじいストーリーで、やってることはトランプ氏よりもドゥテルテ大統領よりも、はるかに過激です。    ちなみに、タイトルは『日本国大統領 桜坂満太郎』なのですが、作品中の立場はずっと都知事です。最後の最後に、北海道で独立宣言した時にようやっと大統領になるわけですが、考えてみたら都知事なのに自衛隊を指揮したり、北海道で独立宣言したりと、ツッコミどころが豊富すぎます。  というわけで、かなりぶっ飛んでいる近未来日本マンガをご紹介しました。今までだったらこんな荒唐無稽な話、あり得ないだろうと思うところですが、トランプ政権では日米関係や世界情勢がどう転ぶか、予測不能な状況です。もしかしたら、このマンガに描かれていたことが現実になるかも……。そんな状況の今だからこそ、読んでみる価値のある作品といえます。  実は、このマンガより前に『日本国初代大統領 桜木健一郎』という、タイトルも内容もよく似た作品が存在していました。どちらの作品も原案・監修者が日高義樹氏で、いわば兄弟作のような関係です。どんだけ「桜」が好きなんだよって感じですが、気になる方は併せて読んでみるといいかもしれません。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

見た目も性格もブスなのに、気になって仕方ない!『トモちゃんはすごいブス』

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『トモちゃんはすごいブス』(双葉社)
「ジャケ買い」という言葉があります。予備知識なしで、CDのジャケットや本の表紙を見ただけで買ってしまうというアレですが、今回は思わず「タイトル買い」してしまいたくなる作品をご紹介しましょう。  その名も『トモちゃんはすごいブス』。ものすごくストレートに女子を誹謗していますね。こんなタイトルなのに、単行本の表紙が美少女というところもミステリアス。一体どんなドブスが出てくるのか、気になって気になって、悩んだ挙げ句げに、つい手に取ってしまう……そんな作品です。 『トモちゃんはすごいブス』の作者は森下裕美先生。森下先生といえば、アザラシのゴマちゃんでおなじみの『少年アシベ』のような、ほのぼのした作品をイメージする人も多いのではないでしょうか。『トモちゃんはすごいブス』も絵柄は森下先生らしくかわいらしいのですが、内容はドス黒く、登場人物はことごとくメンタルを病んでおり、ゴマちゃんが黒ゴマちゃんになってしまうレベルのダークな話になっています。  主人公は「河口チコ」という20歳の女の子。物語は、チコちゃんの唯一の肉親だった父親の葬式シーンから始まります。その後、中学の頃からずっと引きこもりで生活力のない自分に絶望して、自殺を思い立つチコちゃん。……いきなり暗い話ですね。  疲れ切って、自宅でいつのまにか寝てしまっていたチコちゃんが目を覚ますと「ごっついオバケ」のような顔をした謎の女が朝食を作ってくれていました。  このオバケのような顔をしたすごいブス女が、白鳥朋美こと「トモちゃん」です。トモちゃんはチコちゃんの父親と生前に携帯サイトを通じて知り合い、「チコちゃんと仲良くしてくれ」と頼まれていたとのこと。なんだか、いろいろとうさんくさい登場の仕方です。 「アタシが助けてあげるから、今日から一緒に生活しましょう」  突然チコちゃんの前に現れたトモちゃんは、半ば強引に、抜け殻のような状態のチコちゃんが自立できるようにいろいろとサポートしてくれます。これはまさに、のび太君に対するドラえもんのようなポジションといえます。言うなれば「ブスえもん」です。  しかし、チコちゃんのダメさ加減はハンパではなく、スカウトされたキャバクラの仕事は1日でクビ。ビル清掃の仕事も、ハードすぎて、すぐにへたり込んでしまいます。そんなこんなで、仕事がどんどん限定されていく中、車谷という青年に出会います。車谷はボランティアで風俗の仕事を斡旋しているという謎の青年で、チコちゃんは車谷に言われるがまま、いろいろと怪しげなバイトにチャレンジしていきます。  最初はビデオ屋の店員です。ただし、ミニスカポリスや幼稚園児のコスプレをして、高いところにあるビデオを脚立に乗って取ってあげないといけません。なんで脚立に乗らされるのか……エッチな深夜番組を見て育った男性諸君なら、おわかりですよね?  その後は、セクシードレスを着てリング上で女同士が闘うキャットファイトをしたり、AKB48風の格好をして独身の男の家に上がり、セクシーダンスのバイトしたりするのですが、とうとうデリヘルまで行き着きます。  このまま世間知らずの女の子がだまされて、最後にはソープに沈められる『闇金ウシジマくん』のような話になってしまうのかと思いきや、トモちゃんが最後の一線は超えないようにしっかりサポートしていたのです。  ちなみに車谷は、お金に困っている女の子にボランティアで仕事を斡旋してあげており、一見すると善人のようですが、実は女の子たちを盗聴・盗撮している変態クズ野郎なのです。  そのほかにも主要キャラクターで、日比歯科の日比陽介先生というキャラクターがいます。歯科医でお金持ち、優しくて腕が良くてイケメンという、誰が見ても完璧な男子です。トモちゃんは、日比先生とチコちゃんをくっつけて玉の輿に乗らせようと画策するのですが、日比先生はむしろブス女のトモちゃんに興味津々。トモちゃんを縄で縛って襲いたい、という願望を持っていました。実は、日比先生は相手を縄で縛らないとエッチができないという、性奴隷大好き変態クズ野郎だったのです。  そんなわけで、登場人物がみんな何かしらの心の闇を抱えている作品ですが、なんといっても本作品の最大の謎は、ブス女・トモちゃんの正体です。トモちゃんの情報は秘密のベールに包まれているものの、作品後半に行くに従って少しずつ明らかになっていきます。チコちゃんをかいがいしく助けようとする真の目的や、トモちゃんの本名(白鳥朋美は偽名)、そして…… 「アタシは生きている限り、罰を受けないといけないの……」 「アタシは悪人で罪人なの、そしていずれそれに相応しい人生の幕引きをするわ……」 などと言いだすほどに重い十字架を背負っていることなど、そのミステリアスな魅力にくぎ付けにさせられます。あんなにブスで性格が悪いのに、彼女の真の姿が気になって仕方がない。読んでいるうちに、なんとも不思議な感情が芽生えてくるのです。  というわけで、『トモちゃんはすごいブス』、最初はつかみどころのない、病んだ人ばっかり出てくるひどい話だなと感じるかもしれませんが、最終巻まで読むと、これ映画化してもいいんじゃない? というような感動的なラストが待っています。きっかけは「タイトル買い」だったとしても、読み始めた以上はすべての謎が解けるラストまで読みきらないもったいない、そんな奥深い作品です。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

見た目も性格もブスなのに、気になって仕方ない!『トモちゃんはすごいブス』

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『トモちゃんはすごいブス』(双葉社)
「ジャケ買い」という言葉があります。予備知識なしで、CDのジャケットや本の表紙を見ただけで買ってしまうというアレですが、今回は思わず「タイトル買い」してしまいたくなる作品をご紹介しましょう。  その名も『トモちゃんはすごいブス』。ものすごくストレートに女子を誹謗していますね。こんなタイトルなのに、単行本の表紙が美少女というところもミステリアス。一体どんなドブスが出てくるのか、気になって気になって、悩んだ挙げ句げに、つい手に取ってしまう……そんな作品です。 『トモちゃんはすごいブス』の作者は森下裕美先生。森下先生といえば、アザラシのゴマちゃんでおなじみの『少年アシベ』のような、ほのぼのした作品をイメージする人も多いのではないでしょうか。『トモちゃんはすごいブス』も絵柄は森下先生らしくかわいらしいのですが、内容はドス黒く、登場人物はことごとくメンタルを病んでおり、ゴマちゃんが黒ゴマちゃんになってしまうレベルのダークな話になっています。  主人公は「河口チコ」という20歳の女の子。物語は、チコちゃんの唯一の肉親だった父親の葬式シーンから始まります。その後、中学の頃からずっと引きこもりで生活力のない自分に絶望して、自殺を思い立つチコちゃん。……いきなり暗い話ですね。  疲れ切って、自宅でいつのまにか寝てしまっていたチコちゃんが目を覚ますと「ごっついオバケ」のような顔をした謎の女が朝食を作ってくれていました。  このオバケのような顔をしたすごいブス女が、白鳥朋美こと「トモちゃん」です。トモちゃんはチコちゃんの父親と生前に携帯サイトを通じて知り合い、「チコちゃんと仲良くしてくれ」と頼まれていたとのこと。なんだか、いろいろとうさんくさい登場の仕方です。 「アタシが助けてあげるから、今日から一緒に生活しましょう」  突然チコちゃんの前に現れたトモちゃんは、半ば強引に、抜け殻のような状態のチコちゃんが自立できるようにいろいろとサポートしてくれます。これはまさに、のび太君に対するドラえもんのようなポジションといえます。言うなれば「ブスえもん」です。  しかし、チコちゃんのダメさ加減はハンパではなく、スカウトされたキャバクラの仕事は1日でクビ。ビル清掃の仕事も、ハードすぎて、すぐにへたり込んでしまいます。そんなこんなで、仕事がどんどん限定されていく中、車谷という青年に出会います。車谷はボランティアで風俗の仕事を斡旋しているという謎の青年で、チコちゃんは車谷に言われるがまま、いろいろと怪しげなバイトにチャレンジしていきます。  最初はビデオ屋の店員です。ただし、ミニスカポリスや幼稚園児のコスプレをして、高いところにあるビデオを脚立に乗って取ってあげないといけません。なんで脚立に乗らされるのか……エッチな深夜番組を見て育った男性諸君なら、おわかりですよね?  その後は、セクシードレスを着てリング上で女同士が闘うキャットファイトをしたり、AKB48風の格好をして独身の男の家に上がり、セクシーダンスのバイトしたりするのですが、とうとうデリヘルまで行き着きます。  このまま世間知らずの女の子がだまされて、最後にはソープに沈められる『闇金ウシジマくん』のような話になってしまうのかと思いきや、トモちゃんが最後の一線は超えないようにしっかりサポートしていたのです。  ちなみに車谷は、お金に困っている女の子にボランティアで仕事を斡旋してあげており、一見すると善人のようですが、実は女の子たちを盗聴・盗撮している変態クズ野郎なのです。  そのほかにも主要キャラクターで、日比歯科の日比陽介先生というキャラクターがいます。歯科医でお金持ち、優しくて腕が良くてイケメンという、誰が見ても完璧な男子です。トモちゃんは、日比先生とチコちゃんをくっつけて玉の輿に乗らせようと画策するのですが、日比先生はむしろブス女のトモちゃんに興味津々。トモちゃんを縄で縛って襲いたい、という願望を持っていました。実は、日比先生は相手を縄で縛らないとエッチができないという、性奴隷大好き変態クズ野郎だったのです。  そんなわけで、登場人物がみんな何かしらの心の闇を抱えている作品ですが、なんといっても本作品の最大の謎は、ブス女・トモちゃんの正体です。トモちゃんの情報は秘密のベールに包まれているものの、作品後半に行くに従って少しずつ明らかになっていきます。チコちゃんをかいがいしく助けようとする真の目的や、トモちゃんの本名(白鳥朋美は偽名)、そして…… 「アタシは生きている限り、罰を受けないといけないの……」 「アタシは悪人で罪人なの、そしていずれそれに相応しい人生の幕引きをするわ……」 などと言いだすほどに重い十字架を背負っていることなど、そのミステリアスな魅力にくぎ付けにさせられます。あんなにブスで性格が悪いのに、彼女の真の姿が気になって仕方がない。読んでいるうちに、なんとも不思議な感情が芽生えてくるのです。  というわけで、『トモちゃんはすごいブス』、最初はつかみどころのない、病んだ人ばっかり出てくるひどい話だなと感じるかもしれませんが、最終巻まで読むと、これ映画化してもいいんじゃない? というような感動的なラストが待っています。きっかけは「タイトル買い」だったとしても、読み始めた以上はすべての謎が解けるラストまで読みきらないもったいない、そんな奥深い作品です。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

くだらない下ネタの宝石箱や~! 絶倫諸国マン遊記『男!日本海』

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『男!日本海』(日本文芸社)
 大ヒットするマンガといえば、たいていは息もつかせぬスリリングな展開、読者の期待を裏切るどんでん返しなど、ハラハラドキドキな要素がめじろ押しだったりするものです。しかし、そういうマンガばかり読んでいると、たまにはまったく中身のない、頭を空っぽにして読めるものが恋しくなったりすることはありませんか?  今回ご紹介する『男!日本海』こそ、ストレス社会で闘うあなたへの癒やしとなり得る作品であり、誤解を恐れずにいえば、頭をまったく使う必要がない、最高にくだらないマンガです(一応、褒めてます!)。タイトルだけを見ると、日本海を舞台にした硬派な漁師マンガをイメージしがちですが、そんな要素は微塵もありません。単なるスケべ野郎マンガです。 『男!日本海』は、いわゆる「諸国マン遊マンガ」というジャンルに属しています。日本全国を漫遊しながら、行く先々で登場する女性とひたすらエッチするという、硬派度も意識の高さも限りなくゼロというか、むしろマイナスです。同じようなタイプのマンガとしては、日本全国のソープ嬢とバトルする『ソープ水滸伝』(作画・出井州忍、原作・古山寛)などがあります。  なぜ、このようなジャンルが存在するのか? それは、主人公が旅を続ける限り、絶えず新しい女性が登場し、ネタ切れすることがないというメリットがあるからでしょう。読者がエロを求める限り、永遠に作品を続けることができるという、永久機関のようなジャンルなのです。  本作の設定をご紹介しましょう。主人公は魁日本海(さきがけ・にほんかい)という高校生。『魁!!男塾』(宮下あきら)のキャラとして出てきてもまったく違和感のない感じの硬派な名前をしていますが、ただの女好きのドスケベです。  寺の息子として育った日本海は、そのあまりの女好きぶりで親に勘当されてしまい、ヒッチハイクで日本全国アテのない旅を続けます。ヒッチハイクでは、なぜか必ず欲求不満な女が運転する車に乗せてもらえます。そして、助手席で巨大なイチモツをモッコリさせている日本海に対し、女が「まあ、なんて大きいの!」とか感動しちゃって、そのままベッドインするという話です。どうですか、くだらないでしょう!  ちなみに、女性をとりこにする日本海の自慢のイチモツは、幻の名刀「八寸胴返し」とか「極楽棒」などと呼ばれ、薪やビール瓶を真っ二つにするほどの破壊力を持っています。暴漢に襲われた時などは、突然勃起させて、その勢いで相手を突き飛ばして失神させたりもできます。  こんな感じで下ネタしか取りえのない作品ではあるのですが、その下品さについては徹底しており、ある種の職人的なこだわりを感じさせます。たとえば、作中に出てくる固有名詞。行く先々の土地のネーミングがことごとく下ネタになっており、ハイグレードなオヤジギャグ的センスが光ります。    松葉葛市(まつばくずし)、万毛市(まんげし)、佐瀬古市(させこし)、金道村(こんどうむら)、江楠田市(えくすたし)、木古市(もっこし)、横珍市(よこちんし)、座面村(ざあめんむら)、 仙吊市(せんずりし)、因毛市(いんもうし) 等々……若者の住みたい街ランキングをやったら、1,000位圏外になりそうな地名ばかりですね。  日本海とエッチする欲求不満な女性キャラの名前も、ことごとく下ネタ。もはや、ひどすぎて名付け親が訴訟を起こされても致し方ないレベル。  麻立好子(あさだち・すきこ)、矢来瀬益代(やらせ・ますよ)、槍間久里子(やりま・くりこ)、群田麻多代(むれた・またよ)、笛良千代(ふえら・ちよ)、木津久志芽子(きつく・しめこ)、又津礼子(またづ・れいこ)、瀬入梨代(せいり・なしよ)、生賀須喜代(なまが・すきよ)。  単行本10巻分、終始ずっとこんな調子です。下ネタ縛りで人名とか地名をずっと考え続ける作業って、普通の人だったら気が狂いそうですけど、それをやり遂げる精神力。これこそ、プロの仕事ではないでしょうか。  余談ですが、本作品では毎話、ドラマでよくありがちな『前略おふくろ様』風のナレーションが入ります。これがまた、最高に頭悪そうなのです。 「前略 母ちゃん、春です。勃起する春です。」 などなど、そんなこといちいち母ちゃんに報告するなよ! っていう下ネタばかり。勃起する春って、どんな春なんだ!?  そんなわけで、くだらない下ネタの宝石箱のような作品『男!日本海』をご紹介しました。仕事仕事で疲れ切っているあなた、たまにはこういうマンガを読んで、脳ミソを強制的にリセットしてみるのもいいんじゃないでしょうか。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

元暴走族の教官が熱血指導! 最短2日で免許が取れる『東京板橋マルソウ自動車教習所』

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『東京板橋マルソウ自動車教習所』(吉沢優/リイド社)
 みなさんは、自動車運転免許って持ってますか? 免許を取るために必ず通わなきゃいけない自動車教習所、あれがダルくて取得をあきらめたなんて人も、結構いるんじゃないかと思います。  免許は欲しいけど、教習所は嫌だ! そんな人にピッタリのマンガがあります。このマンガに出てくる教習所に通えば、もしかしたらたった2日で免許が取れて、しかも、ものすごいドライビングテクニックまで身についてしまうかもしれません。というわけで、今回は世にも珍しい自動車教習所マンガ『東京板橋マルソウ自動車教習所』を、ご紹介しましょう。  本作の作者・古沢優先生は、暴走族マンガを数多く手がけており、作品のタイトルに「特攻」というキーワードが入っている率がめちゃくちゃ高いです。本作も、元暴走族の教官が熱血指導してくれる教習所の物語です。自動車教習所がテーマというのも相当珍しいですが、メインの舞台が板橋区というのも、なかなかレアです。  早速、内容をご紹介しましょう。なんといっても、冒頭に掲げた「もしかしたらたった2日で免許が取れる」というところが気になりますよね。それ以外にも、画期的サービスで魅力満載の、この教習所。入所すると、すごい2大特典が! <どこでも印鑑」>  好きなところに勝手に教習印を1カ所だけ押せるという、夢の特典。ここぞという時、たとえば「みきわめ」の時とかに使えば、より効果的! 僕も、こんな教習所に通いたかった……。 <ロイヤルスペシャルスーパー教習券>  1時間だけ、元レースクイーンでマドンナ教官の杉本夏生ちゃんの、教習が受けられます。なんというダイレクトな色仕掛け!    しかも入所早々、いきなり実車教習開始です。最初の教習はドライビングシミュレーターみたいなやつでイメージをつかむのが一般的ですが、この教習所は、かなり実践的な方針のようです。いきなりの実車教習に戸惑っている生徒には、受付のお姉さんが優しく…… 「69号車だって言ってんのがわかんねーの!!」 と、ややキレ気味ですが、すごく親切に教えてくれます。こんな型破りすぎる教習所ですが、ちゃんと公認教習所なんでしょうか? 普通の人は心配になりますよね。でも大丈夫、ちゃんと看板に「公認」って書いてありますから、安心です。左のほうにミクロな文字で小さく「未」と書いてあるのが気になりますけど……。  教官はもちろん、さわやかイケメンが教えてくれます。……っていうか、予想通り、完全にヤンキーです。  そして教習車はもちろん、教習車とは思えないほどにエアロを装着しまくった、カッチョいい車がお出迎え。踏切とか上り坂でエアロがバキバキするレベルの、車高の低さも魅力です。  教習車のスペックは、ロングノーズにノーサス、自慢のカラーリング、シートはバケット、バリバリの福岡チューン……だそうです。  ちなみに教官は元暴走族のため、まれに仮免教習中に族の抗争に巻き込まれることがあります。というか、日常茶飯事です。族の抗争に巻き込まれたら、当然スピードオーバーやスピンターンなど多少の暴走運転をしてパトカーに追われることがありますが、仮免教習中だから問題ありません。 「安心しろ、おまえは無免だ、取り消しになる事も免停になる事もねーよ」  なんという斬新なロジック! その発想はなかった!!  このような過酷な教習を受けた見返りとして、入所初日なのに、もう次が卒業検定。合宿免許よりも断然早い!!  さらに、この教習所独自のスペシャルコースで「暴走教習」というのがありまして、教官が全員元暴走族というメリット(!?)を生かして、生徒に暴走族の走り方、並びにその精神などを徹底的に教え込みます。その様子はこんな感じです。 「前の車がチンタラおせー時はヨォ、まずアオる」 「いーか、日本の道路はすべて自分の道だと思え!!」  それって、教習所で一番言っちゃいけないセリフだろ……。  というわけで、もしかしたら2日で免許が取れるかもしれない『東京板橋マルソウ自動車教習所』をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか? なにげに、Vシネマの実写版もあったりする人気マンガです。 「どうしてもすぐに免許が欲しい、多少荒っぽくても構わない」とお急ぎの方は、こういう教習所で教習を受けてみるっていうのも、ありかもしれませんね。本当に、この教習所が板橋にあるのかどうかはわかりませんが……。

元暴走族の教官が熱血指導! 最短2日で免許が取れる『東京板橋マルソウ自動車教習所』

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『東京板橋マルソウ自動車教習所』(吉沢優/リイド社)
 みなさんは、自動車運転免許って持ってますか? 免許を取るために必ず通わなきゃいけない自動車教習所、あれがダルくて取得をあきらめたなんて人も、結構いるんじゃないかと思います。  免許は欲しいけど、教習所は嫌だ! そんな人にピッタリのマンガがあります。このマンガに出てくる教習所に通えば、もしかしたらたった2日で免許が取れて、しかも、ものすごいドライビングテクニックまで身についてしまうかもしれません。というわけで、今回は世にも珍しい自動車教習所マンガ『東京板橋マルソウ自動車教習所』を、ご紹介しましょう。  本作の作者・古沢優先生は、暴走族マンガを数多く手がけており、作品のタイトルに「特攻」というキーワードが入っている率がめちゃくちゃ高いです。本作も、元暴走族の教官が熱血指導してくれる教習所の物語です。自動車教習所がテーマというのも相当珍しいですが、メインの舞台が板橋区というのも、なかなかレアです。  早速、内容をご紹介しましょう。なんといっても、冒頭に掲げた「もしかしたらたった2日で免許が取れる」というところが気になりますよね。それ以外にも、画期的サービスで魅力満載の、この教習所。入所すると、すごい2大特典が! <どこでも印鑑」>  好きなところに勝手に教習印を1カ所だけ押せるという、夢の特典。ここぞという時、たとえば「みきわめ」の時とかに使えば、より効果的! 僕も、こんな教習所に通いたかった……。 <ロイヤルスペシャルスーパー教習券>  1時間だけ、元レースクイーンでマドンナ教官の杉本夏生ちゃんの、教習が受けられます。なんというダイレクトな色仕掛け!    しかも入所早々、いきなり実車教習開始です。最初の教習はドライビングシミュレーターみたいなやつでイメージをつかむのが一般的ですが、この教習所は、かなり実践的な方針のようです。いきなりの実車教習に戸惑っている生徒には、受付のお姉さんが優しく…… 「69号車だって言ってんのがわかんねーの!!」 と、ややキレ気味ですが、すごく親切に教えてくれます。こんな型破りすぎる教習所ですが、ちゃんと公認教習所なんでしょうか? 普通の人は心配になりますよね。でも大丈夫、ちゃんと看板に「公認」って書いてありますから、安心です。左のほうにミクロな文字で小さく「未」と書いてあるのが気になりますけど……。  教官はもちろん、さわやかイケメンが教えてくれます。……っていうか、予想通り、完全にヤンキーです。  そして教習車はもちろん、教習車とは思えないほどにエアロを装着しまくった、カッチョいい車がお出迎え。踏切とか上り坂でエアロがバキバキするレベルの、車高の低さも魅力です。  教習車のスペックは、ロングノーズにノーサス、自慢のカラーリング、シートはバケット、バリバリの福岡チューン……だそうです。  ちなみに教官は元暴走族のため、まれに仮免教習中に族の抗争に巻き込まれることがあります。というか、日常茶飯事です。族の抗争に巻き込まれたら、当然スピードオーバーやスピンターンなど多少の暴走運転をしてパトカーに追われることがありますが、仮免教習中だから問題ありません。 「安心しろ、おまえは無免だ、取り消しになる事も免停になる事もねーよ」  なんという斬新なロジック! その発想はなかった!!  このような過酷な教習を受けた見返りとして、入所初日なのに、もう次が卒業検定。合宿免許よりも断然早い!!  さらに、この教習所独自のスペシャルコースで「暴走教習」というのがありまして、教官が全員元暴走族というメリット(!?)を生かして、生徒に暴走族の走り方、並びにその精神などを徹底的に教え込みます。その様子はこんな感じです。 「前の車がチンタラおせー時はヨォ、まずアオる」 「いーか、日本の道路はすべて自分の道だと思え!!」  それって、教習所で一番言っちゃいけないセリフだろ……。  というわけで、もしかしたら2日で免許が取れるかもしれない『東京板橋マルソウ自動車教習所』をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか? なにげに、Vシネマの実写版もあったりする人気マンガです。 「どうしてもすぐに免許が欲しい、多少荒っぽくても構わない」とお急ぎの方は、こういう教習所で教習を受けてみるっていうのも、ありかもしれませんね。本当に、この教習所が板橋にあるのかどうかはわかりませんが……。

エロチックな色白美人は元過激派だった! 定番ジャンルの異質マンガ『おんな教師』

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『おんな教師』(グループ・ゼロ)
「女教師」……不思議とエロチックな響きがするのは、なぜでしょうか? 僕が煩悩の塊だから? いや、それだけではないはずです。世の男性諸君は、誰しも「女教師」という言葉に少なからずエッチなニュアンスを感じ取っているに違いありません。  それはおそらく、われわれの頭の中に『まいっちんぐマチコ先生』とか『いけない!ルナ先生』などといった、エッチな女教師マンガを読んだ記憶が残っているからにほかならないのですが、もしこんな先生が実在して授業をしてくれていたら、きっと僕らの人生は変わっていたのではないでしょうか? それも、悪い意味で。  そんな、青少年にとって、今後の人生を左右しかねない影響力を持つジャンル「女教師マンガ」にあって、ひときわ異質なマンガがあります。その名も『おんな教師』(原作:真樹日佐夫、作画:上村一夫)という作品です。  表紙カバーイラストを見れば一目瞭然ですが、上村先生の描く線の細い美人画が、めちゃくちゃ艶っぽいです。加えて、タイトルも女教師と書かず、あえて『おんな教師』としているところに異様ななまめかしさがあります。女教師マンガをこよなく愛す僕としては、いやが上にもボルテージが上がってしまいます。    主人公は、静岡県のとある中学校に配属された、千種美冴(ちぐさ・みさえ)という新人女教師。静岡有数の問題校で、新人の美冴先生が奮闘するという話です。単に新人教師が奮闘するマンガであれば、教師マンガのよくあるフォーマットですが、この作品が異質なのは美冴先生の経歴です。  なんと、美冴先生は過激派「天の声」の元リーダー。思想的に対立するほかの左翼団体や過激派をボコりまくっていた、バリバリの武闘派だったのです。作品冒頭からずっと過激派の乱闘シーンが続くので、このマンガが本当に女教師モノなのかどうか、ちょっと不安になってしまうほどです。  しかし、「天の声」が警察の介入により壊滅状態となり、職探しをしたところ、教師の職が見つかるのでした。  か細くて色白美人の美冴先生は、同僚の教師から、生徒から、さらに生徒の親から言い寄られたり、襲われたりします。むしろ、襲われるケースのほうが多いというのがこのマンガの異常なところなのですが、なにしろ元過激派ですから、襲ってくる男どもはことごとく返り討ちです。  例えば、美冴先生の歓迎会の席では、副主任の男性教師が2人っきりになったタイミングで上から覆いかぶさってきました。普通の女教師だったら泣き叫ぶようなシーンですが、まったく動じない美冴先生。それどころか……。 「離さないと死ぬことになるわ、あなた」 などと、殺し屋みたいなセリフ。実は、とっさにテーブルにあったつまようじを手に取り、男性教諭の後頭部にチクっと突き刺していたのです。ブラックエンジェルスかよ……おそろしや。  続いて、番長格の生徒が、生意気な新人教師をシメてやろうと、校舎裏に美冴先生を呼び出して襲います。舎弟が複数人で取り押さえているため、さすがの美冴先生も身動きが取れません。番長がズボンを下ろし始め、いよいよ犯されてしまうのか……というところで、まさかのセリフ。 「ホーッホホホッ!! そんな可愛いサイズで女をモノにできると思って?」 「先生ね、こう見えても百人くらい男性経験があって、なかにはコーラのビンほどの者もいたわ。それにくらべたら、まるで赤ちゃん」  愚息を赤ちゃん扱いされてしまった番長は、最初の勢いはどこへやら、すっかりシュンとしてしまいます。さらに、取り押さえている周りの舎弟たちにも一喝。 「離しなさい! それとも、あなたたち総がかりで先生を悦ばせてくれる?」 「悦ばせてくれる?」って。それ、教師が使う言葉じゃないだろ! とにかく、不良少年たちのメンタルをズタボロにした美冴先生の完全勝利です。ちなみに番長は、このことが原因でEDになってしまいます。過激派の手口、おそるべし……。  美冴先生の魅力は、男まさりの腕っ節や度胸だけでなく、聖母マリアのような器のデカさにあります。先生をレイプしようとした番長と舎弟たち。普通なら停学処分になってもおかしくありませんが、美冴先生は「まったく、おいたなんだから……」と、彼らをデコピンするだけで不問としてしまいます。いや、それはおいたじゃなくて、犯罪なんですが……。  そのほかにも、スケ番、番長が恐れる真の裏番、ヤクザの親分などが次々と登場しますが、美冴先生の過激派仕込みの懐柔メソッドが炸裂。みんな、美冴先生のとりこになっていくのです。  1980年代の作品ということで、当時の世相を反映してか、「過激派」「日教組」といった左翼的なキーワードがやたらと飛び交い、それだけでも普通の教師マンガとかなり違う雰囲気を味わえるのですが、一見か弱くて生真面目そうなルックスの美冴先生が、やたらと武闘派な上に、ちょいちょいオッパイをポロリしたり、パンツを見せたりしながら、生徒たちをガンガン懐柔していくスタイルはほかではあまり見たことがなく、女教師マンガとして、特異な存在といえるでしょう。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

「これはファックではない訓練だ!」伝説のハードボイルドエロ劇画『実験人形ダミー・オスカー』

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『実験人形ダミー・オスカー1 Kindle版』(グループ・ゼロ)
 今回ご紹介するのは『実験人形ダミー・オスカー』という作品。小池一夫先生と叶精作先生の巨匠コンビによる名作です。しかし、タイトルは知っているけど読んだことがない、という人も多いのではないでしょうか? その異様な響きのタイトルといい、あまりにエロ劇画的で近寄りがたいオーラが漂う表紙といい、恐れをなして手を出せないという気持ちもわかります。実際、僕もそのひとりでした。  今回は、この狂気の名作、『実験人形ダミー・オスカー』の魅力について語り、今まで敬遠していた人にもぜひ読んでもらいたいという趣旨で書いておりますが、もしかしたらいま以上に敬遠する結果となるかもしれません。それほどにアクの強い作品、「ハードボイルド・セクシーコミック」なのです。 『実験人形ダミー・オスカー』の主人公は、本物の人間とまったく見分けがつかない人形(ダミー)を作る天才人形師、渡胸俊介(ときょう・しゅんすけ)です。渡胸がその人形師としての能力を生かしてビジネスをしたり人助けしたり、時には犯罪を解決したりしながら世界中を渡り歩くというストーリーです。  渡胸は人形師として紛れもなく天才なのですが、口数が少なく、内向的で常にオドオドしており、加えてイチモツが子どものように小さくてベッドで女にバカにされるといった、非モテ男子要素が数え役満のようにそろっている人物です。  しかし、この渡胸が実は二重人格者で、精神的なショックを受けると裏の人格「オスカー」が現れます。「オスカー」は渡胸と真逆の人格で、性格はワイルドで暴力的、しかも顔つきまで精悍でイケメンになり、筋肉ムキムキで巨根という……、いくら二重人格だからって、そこのサイズまで変わる!? と、ツッコミを入れざるを得ないキャラクターです。  作中のエピソードは、心優しい渡胸が人形を使って人助けする癒やし系パートと、オスカーがそこらへんの女を犯しまくったりするエロ&バイオレンスパートに分かれるのですが、やはりオスカーのブッ壊れた人格と、過剰すぎるエロスが、この作品を特徴付けているといえるでしょう。オスカーは自らを「超人間」と自称しているのですが、セリフからしてもう常人のレベルをはるかに超えています。 「おれのコックにあいさつしてくれ」 「女は子宮(ウーム)で撃つことを覚えれば絶対だッ!」 ……どうですか? この俺様口調で、救いようのないくらい下品なセリフ。ちなみに、この作品では「コック」という言葉がまるで日常会話であるかのように普通に出てきますが、お察しの通り、コックさんのことではありません。念のため。  もうひとつ、この作品の魅力となっている重要な要素があります。それが、エピソードごとに毎回とっかえひっかえで登場するゴージャスな美女たちです。美女とは言いましたが、ことごとく洋物ポルノ女優みたいな濃すぎるルックスの女ばかりである上に、ほぼ全員が欲求不満という、必然的にエロくならざるを得ない設定となっています。お約束のベッドシーンでは…… 「BING! BING!! BINNーG!!」 というような擬音とともに、金属バットを模したオスカーの巨大な男根が登場。それをうっとりと眺める欲求不満な洋ピン女優もとい、ゴージャス美女たち。そして、ベッドで繰り出されるハードコアなあえぎ声は、それはもうすさまじいものです。 「ああーッ!! すごい あー!! ロッド!! OH ロッド ロッドーーーーッ(大きい)」 「ああッ!! ジィグ!! ジャグ!! アーッ上(ジィグ)!!  アーッ下ッ(ジャグ)」 「もっと……もっとォ!!  にぎりつぶしてェーーーーッ!! 私の乳房(ヘッドライト)ーーーーッ!!」 「あーーッ すご…い…い…もっと…もっと…ドッグファッションーーーーッ!!」 「ちょうだいッ ちょうだいッ あなたの…スライムッ」  どうですか、この狂気のセリフ……ヘッドライトとかスライムとか例え方がすでにおかしいし、ドッグファッションに至っては何を例えているのかもまったくわかりません。原作者、小池先生によるボキャブラ天国状態となっています。  ちなみに「勃起」と書いて「エレクチオン」と読ませたり、「性交」と書いてファックと読ませたり、「射精」と書いて「イジャキュレイション」と読ませたりなど、読んでいると自然と夜の英会話のボキャブラリーが増えるというマンガでもあります。まあ、覚えたところで使いどころがないけど。そして、これらの単語を組み合わせた代表的な例文としては…… 「これは性交(ファック)ではない訓練だ、その証拠におれは射精(イジャキュレイション)してはいない」  オスカー様のカッコよすぎるセリフです。「これはファックではない訓練だ!」男なら一度は言ってみたいような言ってみたくないような、それでいて口走ったら確実にお縄になりそうなセリフですね!  こんな感じで、ページをめくるたびにエロかっこいい変態ゼリフが乱れ飛んでいる『実験人形ダミー・オスカー』なのですが、ムチャクチャな設定なのにストーリーとしては奇跡的に破綻しておらず、しっかり読ませる作品となっているのが名作といわれるゆえんです。ただ、エロいシーンが山ほど出てくるわりには、美女たちがあまりにポルノ女優っぽすぎるのと、モンスターのようなあえぎ声にドン引きしてしまい、ちっとも興奮しないっていうか、どっちかというとギャグマンガ扱いしたくなるレベルです。どうですか? ちょっと読んでみたくなったでしょ?「イジャキュレイション」って、言ってみたくなったでしょ?(それはないか……) (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから

芦田愛菜も顔負け! 芸能界をあざとく生きる天才子役マンガ 『このゆびとまれ』

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『このゆびとまれ 1』 (ニチブンコミックス)
「天才子役」。このワードを聞いてすぐにイメージするタレントといえば、芦田愛菜ちゃん、加藤清史郎くんあたりでしょうか。かつては、日本テレビ系『家なき子』で一世を風靡した安達祐実、NHK朝ドラ『おしん』の小林綾子も、天才子役と呼ばれていましたね。  そんな天賦の才能を持った子役たちが魑魅魍魎はびこる芸能界で生き延びるには、大人顔負けのプロ根性や、世渡り上手さも必須です。当然、天使のような表の顔に対し、裏では性格が最悪だった……なんていうウワサも常につきまといます。今回ご紹介するのは、そんな天才子役にスポットを当てたマンガ『このゆびとまれ』です。  主人公は日本で一番忙しい子ども、藤江恵那(ふじえ・えな)ちゃん、小学1年生(6)です。恵那ちゃんがひとたび天使のように笑えば、大人たちをキュンキュンさせ、ひとたび泣きだせば、お茶の間もつられて号泣するという、まさに演技の天才。  そんな恵那ちゃん、いや、ここはあえて「恵那さん」と呼ばせていただきますが、控室で見せる素の姿がスゴすぎます。控室に戻るなり、少々頼りないマネジャー・田代を呼びつけ……。 「田代ぉ! 水っ!!」 「ほんっと使えねーな、言われる前に考えて動けっつーの!」 などと怒鳴りつけます。6歳に「使えねー」なんて言われる大人の立場って……いや、きっついです。これが天使の素顔なのか!? さらに、控室で次々に披露される本音トーク。自分が天才であるという自負も、しっかりあるようです。 「はっ、ばかじゃね? 数字持ってるのは私なんだから!」 「まー私もプロだし? 求められる以上のことはやるけどさっ!!」 「皆さんの大好きな“理想の子ども”を見事に演じてあげますよっ」 6歳にして、このプロ根性。「数字持ってる」とか、なかなか言えませんよね。それもそのはず、恵那ちゃんには「全宇宙で一番のトップ女優」になるという野望があるのです。「全宇宙」ってところだけは、なんか子どもっぽいですが。 さらに恵那ちゃんは、「恵那's eye」により、『ドラゴンボール』のスカウターよろしく、一瞬にしてタレントの実力を数値化できる能力があります。それがETP(恵那's・タレント・ポイント)と呼ばれるもので、そのタレントが100ポイント中、何ポイントなのかで接し方を変えるのです。  例えば、スタッフを怒鳴り散らし、現場の雰囲気を悪くするベテラン女優(ETP37)と共演した際には、撮影中に「くしゅん」とかわいいくしゃみをして、わざとNGを出し、その場を和ませます。もちろんこれは、ベテラン女優を踏み台にして自分の好感度を上げるための計算です。そして、腹の中では「もう用済みよ! お・ば・さ・ん」のセリフ。エグい、エグすぎる!  ETP90以上の大物芸能人には、子どもの特権を利用して巧妙に取り入ります。お笑い界の大物、松鶴亭剃瓶や三河屋はまちには、無邪気さ&かわいさを全力でアピール。そして、計算通り大物のハートをつかんだ時は、腹の中で「そるべさんゲットだぜーっ!!」って、ポケモンか!  ライバルの子役に対する仕打ちも容赦ないです。撮影の合間、椅子の上で子役同士おしくらまんじゅうして遊んでいる時、ライバルの子役にささやきます。 「よーく聞け小娘。芸能界(このせかい)は蹴落とし合いだ、うかうかしてると喰われっちまうぜ」  そう言うと同時に、自ら椅子から落下。そして、 「てへへへへーおっこちちゃった(コツンッ)」  自ら落ちることで、周囲の大人たちにドジッ子ぶりをアピールしつつ、ライバルを蹴落とすという一石二鳥の巧妙な動き。あざとい、あざとすぎる! 小悪魔どころか、もはや悪魔といって差し支えありません。  人気芸能人のお約束、始球式では、本当は豪速球が投げられるのに、かわいく「えいっ」とヘロヘロのボールを投げます。そして、投球後のインタビューでは……。 「パパとれんしゅうしたかいありました!!」(ヘタに投げる練習をなぁ……!!)  努力する方向そっち!? とにかく、自己プロデュースのために日々の鍛錬を惜しまないのです。  こんな感じで、芸能界を必死に生きていく恵那ちゃんの表と裏での豹変っぷりから目が離せない作品なのですが、大人顔負けのプロ根性と世渡りのうまさは、いろいろ学ぶところも多いです。これはもう、マンガという体の、自己啓発本といってもいいかもしれません。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>) 「ザオリク的マンガ読み」過去記事はこちらから