
108人のプチ出家者が集まり、仏堂で僧侶の話を聞く
「宗教は民衆のアヘンである」と説いたのは社会主義思想を確立したマルクスだが、その流れをくむ社会主義国家・中国では、実際のところ、仏教が比較的盛んに信仰されている。中国でお寺などに行くと、日本人よりもずっと熱心にお祈りしている中国人の姿をよく見かける。とはいえ、たいていの人は「商売繁盛」を願っているらしいが……。
そんな中、中国で最もビジネスが繁栄した上海にある玉佛禅寺で、10月15日から21日にかけて、一般市民向けに7日間の短期出家、いわゆる“プチ出家”のコースが開催されたと、上海紙「ホウハイ新聞」が伝えた。

若い女性の出家者もいる。みなスッピンで、メガネ姿の出家者も多い。日々のハードワークに疲れた?
このコースは期間中に僧侶の生活を体験し、修行の機会を得ようというもので、募集人員は108人。10月3日からネットで募集したところ、ホリデーシーズンでないにもかかわらず応募者が殺到、たった1週間で定員に。応募者は女性が多く、しかも企業で働くOLが目立ったという。
なぜ上海OLの間で、プチ出家が注目を集めているのだろうか?
「理由のひとつとして、中国は激しい競争社会であることが挙げられます。特に上海のような全国から優秀な人間が集まっている都市では、会社内で息を抜くヒマがない。若くて優秀な女性ほど、仕事に真面目に取り組むあまり、精神的に疲れ切ってしまうのです。そこで、仕事を離れて短期間出家することにより、精神的な安定を得ようとしているのだと考えられます」(上海事情に詳しい、ライターの佐賀沼譲二氏)
今回プチ出家コースを開催した玉佛禅寺は上海の中心部にあり、約100年の歴史を持っている。これまでも夜間に寺を開放して一般市民向けに読経や座禅などを行って好評を博したため、今回、プチ出家コースを開催することにしたのだという。

「止語」の札。出家中は読経以外、口を利くことはできない
全7日間のうちの5日間は朝5時半に活動が始まり、夜8時半に終了。寺院にいる150人の僧侶たちの指導の下、朝晩の読経、労働、写経、座禅、托鉢などが行われる。寺院内の宿舎に寝泊まりし、出家中は特別な事情で許可を得ない限り、寺の外に出ることは許されず、ひとりでの活動も禁止。寺が支給する修行服を着用し、無言を貫かなければならない。
このプチ出家に参加する費用は、7日間で2,000元(約3万8,000円)。これは、修行する気もない人たちに寺を無料の宿泊・食事施設として悪用されないための措置で、集まったお金は慈善事業に寄付されるという。予想以上の人気ぶりで、応募締め切りに間に合わなかった人が多かったため、玉佛禅寺では定期的にこのプチ出家コースを開催することにしたという。
経済の成長スピードが減速し、先行きが見えにくくなっている現在の中国。精神的な安定を宗教に求める人が、これからもっと増えてくるかもしれない。
(取材・文=佐久間賢三)