マッチョな美容師が、客にポイントカードを渡す。が、そのカードがめちゃくちゃ重い。そんなボケを駆使した若手コンビ「あがすけ」のコントを見た時、千原ジュニアはこう評した。 「最後にポイントカードを彼(美容師役のタツキ)がまあまあ重そうに出したとき、そこでネタ作ってるのはこっち(客役の吉村)なんやってわかりました。あそこは、普通に出したほうがいい」 確かによく見ると、タツキは若干だが、重そうにポイントカードを差し出した。重いはずのないものがめちゃくちゃ重いというボケなのだから、そこは一瞬でもそんなそぶりを見せると、ボケが台無しになってしまう。 ネタを書いて理解していれば、そんな演技はしないはずと、そのちょっとした動作ひとつでジュニアは看破してしまったのだ。 吉村も「(ジュニアに)すべて読まれている感じがしました」と、驚きを隠せなかった。 これは、「日本一面白い無名芸人」を決めるという触れ込みの『笑けずり』(NHK BSプレミアム)の一幕。『笑けずり』は昨年、第1弾が放送され、今年9月から第2弾が始まった。第1弾は漫才師9組がしのぎを削ったが、今回は「コント師」編である。 富士山の麓のペンションにオーディションで選ばれた若手芸人たちが集まり、合宿。そこで一流の芸人たちの講義を聞いた上で新ネタを披露し、その都度、順位が発表されていく。そして最下位になった芸人が脱落、つまり「けずられる」という、若手芸人のサバイバル成長記を描くリアリティーショーだ。 第1弾の優勝者である「ザ・パーフェクト」のピンボケたろうは、いまや『あさイチ』(NHK総合)のコーナー「ピカピカ☆日本」の生中継レポーターとしてレギュラー出演を果たしている。また、ファイナル進出者である女性コンビ「Aマッソ」は、その独特な世界観が注目され、ライブはもちろん、テレビのネタ番組などにも数多く出演し、ファンを増やしている。同じくファイナルに出演した「ぺこぱ」も、松陰寺太勇の強烈なキャラクターを武器に『有田ジェネレーション』(TBS系)などの番組に出演し、インパクトを残している。 一方、合宿に参加した9組のうち、合宿終了からわずか1年で半数近い4組がコンビを解散したという厳しい現実もある。 いま、若手芸人は飽和状態。「若手」と呼ばれる年齢も、どんどん高齢化しているのが現状だ。ライブでは実力が認められ、確かな人気があって名が通っていても、テレビでは「無名」と言われてしまうような存在がゴロゴロいる。 そんな中で、20代を中心とした文字通りの「若手」で「無名」なコンビを集めたのが『笑けずり』なのだ。 もちろん、この番組の見どころのひとつは、若手芸人の成長ドキュメントである。だが、それと同じくらい、いや、それ以上に大きな見どころになっているのは、講師役の一流芸人たちの講義だ。 第1弾では中川家、笑い飯、千鳥、サンドウィッチマンといった、一流の漫才師が参加。今回も、ロバート、シソンヌ、サンドウィッチマン、そして千原ジュニアらが講師として登場するようだ。 そこで彼らは、「ここまで明かしてしまっていいの?」と、見ているこちらが心配になってしまうほど、自分たちのネタを“教材”にして、具体的なネタの作り方から、その工夫の仕方、考え方までを解説してくれるのだ。もちろん、若手芸人たちにとってあまりにも勉強になるものだが、それは視聴者にとっても同じだ。 今まで気づかなかったポイントや、こんなところまで考えているのかというこだわりを知ることで、漫才やコントを見る際、新たな視点を持つことができるようになるのだ。 よく、笑いを解説するのは野暮だとか言われることもある。そんなことをしたら、笑えなくなってしまうと。だが、そんなのはウソだ。彼らの解説を聞くことで、より漫才やコントを多角的に見ることができる。その結果、笑いのポイントがそれだけ増えていく。だから、より一層笑える。 そのことは、この『笑けずり』が証明しているのだ。 第1回では、オーディションに合格した8組が集合。……のはずが、さらにもう8組登場。この16組から本当の8組に「けずられる」最終オーディションが行われた。 そして第2回、いよいよ1組目の講師としてロバートが登場。ロバートは事前に「今まで誰も見たことがないオリジナルの遊びやゲームを3つ作る」という宿題を芸人たちに課した。 授業のテーマは「引きずり込み力」。 コントは通常、その世界に観客を引き込むのに時間がかかってしまう。漫才と比べ、状況を説明しづらいからだ。だから、いかに早くコントに客を引きずり込むことができるかが重要だ。ロバートのコントは、それこそが最大の武器である。「何、この遊び?」と客を驚かせて引きずり込むことが多い。実際、ロバートは自分たちがやる「遊び」から、ネタに化けることが多いという。だから、「オリジナルの遊びやゲーム」を作るように課したのだ。 彼らは「オリジナル」であることも重視する。 「なんか見たことあるなとか、ちょっとカブってるんじゃないかとか連想させると、もったいない」 ここで秋山は、「ダメ」ではなく「もったいない」という表現を使った。また、実際に真似かどうかはともかく、客に「連想させる」こと自体が「もったいない」と。 つまり、過去のネタに似ていると見ている側が気づくと、どんなに面白くても、そのフィルターがかかってしまって損をする。だから気をつけたほうがいいと、単にダメと言うわけではなく、その理由までを端的に語っているのだ。 実際、今回ロバートによって「けずられた」のは、「動きとかセットとかの言葉のチョイスとか、これまであったようなにおいがするんですよ。それがあった瞬間に、急に損する」と評された「レイトブルーマー」だった。 彼らはネタ作りのシーンでも、コンビ間で衝突。細かな動きにこだわって、ネタ全体を覚えようとしない相方に、かにが不満をぶちまけていた。まだコンビ歴わずか3カ月。無理もない。 ジュニアが審査前に「こういう時に言われた一言って、いまだに覚えてますから。僕も25年前にある人に言われたこととか、先輩の一言とか、全部覚えてますんで、(みなさんには)非常に丁寧にお話ししたいと思います」と語っている通り、先輩芸人たちの一言一言は、彼らの血肉となっていくだろう。 『笑けずり』で「けずられる」のは、芸人自身だけではない。彼らは、過酷な状況の中で、必要以上のプライドや先入観をけずられ、自らを見直し、変わっていく。また視聴者である僕らも、それまで死角で見えなかった部分がけずられ、芸人たちへの見方が広がっていくのだ。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらからNHK『笑けずり シーズン2 ~コント編~』
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千原ジュニア、ロバートが自らのネタを種明かし! 過酷な芸人サバイバル『笑けずり』が“けずる”もの
マッチョな美容師が、客にポイントカードを渡す。が、そのカードがめちゃくちゃ重い。そんなボケを駆使した若手コンビ「あがすけ」のコントを見た時、千原ジュニアはこう評した。 「最後にポイントカードを彼(美容師役のタツキ)がまあまあ重そうに出したとき、そこでネタ作ってるのはこっち(客役の吉村)なんやってわかりました。あそこは、普通に出したほうがいい」 確かによく見ると、タツキは若干だが、重そうにポイントカードを差し出した。重いはずのないものがめちゃくちゃ重いというボケなのだから、そこは一瞬でもそんなそぶりを見せると、ボケが台無しになってしまう。 ネタを書いて理解していれば、そんな演技はしないはずと、そのちょっとした動作ひとつでジュニアは看破してしまったのだ。 吉村も「(ジュニアに)すべて読まれている感じがしました」と、驚きを隠せなかった。 これは、「日本一面白い無名芸人」を決めるという触れ込みの『笑けずり』(NHK BSプレミアム)の一幕。『笑けずり』は昨年、第1弾が放送され、今年9月から第2弾が始まった。第1弾は漫才師9組がしのぎを削ったが、今回は「コント師」編である。 富士山の麓のペンションにオーディションで選ばれた若手芸人たちが集まり、合宿。そこで一流の芸人たちの講義を聞いた上で新ネタを披露し、その都度、順位が発表されていく。そして最下位になった芸人が脱落、つまり「けずられる」という、若手芸人のサバイバル成長記を描くリアリティーショーだ。 第1弾の優勝者である「ザ・パーフェクト」のピンボケたろうは、いまや『あさイチ』(NHK総合)のコーナー「ピカピカ☆日本」の生中継レポーターとしてレギュラー出演を果たしている。また、ファイナル進出者である女性コンビ「Aマッソ」は、その独特な世界観が注目され、ライブはもちろん、テレビのネタ番組などにも数多く出演し、ファンを増やしている。同じくファイナルに出演した「ぺこぱ」も、松陰寺太勇の強烈なキャラクターを武器に『有田ジェネレーション』(TBS系)などの番組に出演し、インパクトを残している。 一方、合宿に参加した9組のうち、合宿終了からわずか1年で半数近い4組がコンビを解散したという厳しい現実もある。 いま、若手芸人は飽和状態。「若手」と呼ばれる年齢も、どんどん高齢化しているのが現状だ。ライブでは実力が認められ、確かな人気があって名が通っていても、テレビでは「無名」と言われてしまうような存在がゴロゴロいる。 そんな中で、20代を中心とした文字通りの「若手」で「無名」なコンビを集めたのが『笑けずり』なのだ。 もちろん、この番組の見どころのひとつは、若手芸人の成長ドキュメントである。だが、それと同じくらい、いや、それ以上に大きな見どころになっているのは、講師役の一流芸人たちの講義だ。 第1弾では中川家、笑い飯、千鳥、サンドウィッチマンといった、一流の漫才師が参加。今回も、ロバート、シソンヌ、サンドウィッチマン、そして千原ジュニアらが講師として登場するようだ。 そこで彼らは、「ここまで明かしてしまっていいの?」と、見ているこちらが心配になってしまうほど、自分たちのネタを“教材”にして、具体的なネタの作り方から、その工夫の仕方、考え方までを解説してくれるのだ。もちろん、若手芸人たちにとってあまりにも勉強になるものだが、それは視聴者にとっても同じだ。 今まで気づかなかったポイントや、こんなところまで考えているのかというこだわりを知ることで、漫才やコントを見る際、新たな視点を持つことができるようになるのだ。 よく、笑いを解説するのは野暮だとか言われることもある。そんなことをしたら、笑えなくなってしまうと。だが、そんなのはウソだ。彼らの解説を聞くことで、より漫才やコントを多角的に見ることができる。その結果、笑いのポイントがそれだけ増えていく。だから、より一層笑える。 そのことは、この『笑けずり』が証明しているのだ。 第1回では、オーディションに合格した8組が集合。……のはずが、さらにもう8組登場。この16組から本当の8組に「けずられる」最終オーディションが行われた。 そして第2回、いよいよ1組目の講師としてロバートが登場。ロバートは事前に「今まで誰も見たことがないオリジナルの遊びやゲームを3つ作る」という宿題を芸人たちに課した。 授業のテーマは「引きずり込み力」。 コントは通常、その世界に観客を引き込むのに時間がかかってしまう。漫才と比べ、状況を説明しづらいからだ。だから、いかに早くコントに客を引きずり込むことができるかが重要だ。ロバートのコントは、それこそが最大の武器である。「何、この遊び?」と客を驚かせて引きずり込むことが多い。実際、ロバートは自分たちがやる「遊び」から、ネタに化けることが多いという。だから、「オリジナルの遊びやゲーム」を作るように課したのだ。 彼らは「オリジナル」であることも重視する。 「なんか見たことあるなとか、ちょっとカブってるんじゃないかとか連想させると、もったいない」 ここで秋山は、「ダメ」ではなく「もったいない」という表現を使った。また、実際に真似かどうかはともかく、客に「連想させる」こと自体が「もったいない」と。 つまり、過去のネタに似ていると見ている側が気づくと、どんなに面白くても、そのフィルターがかかってしまって損をする。だから気をつけたほうがいいと、単にダメと言うわけではなく、その理由までを端的に語っているのだ。 実際、今回ロバートによって「けずられた」のは、「動きとかセットとかの言葉のチョイスとか、これまであったようなにおいがするんですよ。それがあった瞬間に、急に損する」と評された「レイトブルーマー」だった。 彼らはネタ作りのシーンでも、コンビ間で衝突。細かな動きにこだわって、ネタ全体を覚えようとしない相方に、かにが不満をぶちまけていた。まだコンビ歴わずか3カ月。無理もない。 ジュニアが審査前に「こういう時に言われた一言って、いまだに覚えてますから。僕も25年前にある人に言われたこととか、先輩の一言とか、全部覚えてますんで、(みなさんには)非常に丁寧にお話ししたいと思います」と語っている通り、先輩芸人たちの一言一言は、彼らの血肉となっていくだろう。 『笑けずり』で「けずられる」のは、芸人自身だけではない。彼らは、過酷な状況の中で、必要以上のプライドや先入観をけずられ、自らを見直し、変わっていく。また視聴者である僕らも、それまで死角で見えなかった部分がけずられ、芸人たちへの見方が広がっていくのだ。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらからNHK『笑けずり シーズン2 ~コント編~』
感動は障害者を救えない? NHK『バリバラ』の挑戦
画面に大きく「24」という文字。黄色い背景に地球が描かれたロゴが大写しになって、番組が始まった。 日本テレビの『24時間テレビ』ではない。NHK・Eテレの『バリバラ』である。「笑いは地球を救う」と書かれた、黄色いTシャツを着た出演者たちが今回テーマにしたのは「検証!<障害者×感動>の方程式」。障害者を感動的に扱うことの多い『24時間テレビ』の真裏でこのテーマを生放送でやるという、かなり挑発的な企画だ。 『バリバラ』は、出演者のほとんどが、なんらかの障害を持った人たち。これまでも『バリバラ』は挑戦的ともいえる放送を行ってきた。たとえば、7月26日未明に起きた相模原障害者殺傷事件を受け、いち早く「緊急企画 障害者殺傷事件を考える」を放送。当事者である彼らが意見をぶつけ合った。こうした社会的な問題を扱う一方、同じ熱量で「SHOW-1グランプリ」といった企画も行う。「マイノリティーのお笑い日本一を決める」というコンセプトを掲げ、障害者たちがお笑いのネタで競うのだ(これは、6年前の2010年から続いている人気企画だ)。ちなみに今回の放送で、なんの説明もなくカッパ姿で後方に見切れていたのは、「SHOW-1グランプリ」出場者でもある「あそどっぐ」だ。 これまでテレビは、障害者で笑うのはタブーだった。だが、彼らは自らの障害を“ネタ”にして笑いを取っている。視聴者の側からすると、「不謹慎」などと言いたくもなるのかもしれない。けれど、演じている人は真剣で楽しんでいる。そして実際、面白い。 彼らは、口をそろえて言うのだ。 「感動するな、笑ってくれ!」と。 番組では冒頭、世界的に大きな話題を呼んだ、骨形成不全症であるステラ・ヤングの「スピーチを紹介。 「手がない女の子が口にペンをくわえて絵を描く姿」「カーボンファイバーの義肢で走る子ども」など、障害者が自らの障害に負けず懸命に立ち向かっている姿を見て感動する。だが、その感動の中に「自分の人生は最悪だけど、下には下がいる。彼らよりはマシ」という視点があるのではないかとステラは指摘する。障害者は健常者に勇気や感動を与えるための道具、すなわち「感動ポルノ」になっているというのだ。 テレビは障害者を感動的に描いてきた。それは『24時間テレビ』に限らず、『バリバラ』を放送しているNHKも例外ではない。 番組では、その歴史をNHKのアーカイブから紹介。1950年代、障害者は「不幸でかわいそうな存在」として描かれていたという。そして81年の「国際障害者年」には、数多くの関連番組を制作。障害者の社会参加が謳われ、けなげで頑張る障害者のイメージが作られていった。その結果、生まれたのが「感動ポルノ」だ。 それでは、具体的に「感動ポルノ」とはどんな番組だろうか? 『バリバラ』では、元柔道五輪代表候補で多発性硬化症の大橋グレースを主人公に「感動ドキュメンタリー『難病なんかに負けない!~これが私の生きる道~』」と題した「感動ポルノ」のパロディを制作。 ストーリーは、「大変な日常」「過去の栄光」「悲劇」「 仲間の支え」「いつでもポジティブ」という5つの“感動へのステップ”に沿って描かれる。 その間、たとえば、グレースは口からご飯を食べることができないため、胃に開けた穴にパイプを差し込み直接栄養を摂っているのだが、そこで「大変ですね」と問うスタッフに対し、グレースは表情も変えず「いや、意外と食べる手間も作る手間も省けるので、そんなことはないですけどね」と返答。だが、スタッフは「いや、そこは大変な感じでいきましょう」などとたたみかけるが、感動ポルノではグレースのこういったコメントは「放送されない部分」だと、テロップ解説が入る。 イギリスでは、こうした障害者を一面的に描く番組に対して抗議運動が始まり、90年代後半に公共放送BBCは「障害者を“勇敢なヒーロー”や“憐れむべき犠牲者”として描くことは侮辱につながる」とするガイドラインを定めたという。 司会の山本シュウは言う。 「誤解してほしくないのは、感動は悪くないんですよ。感動の種類をちゃんとわかってないと怖い」 「一番怖いのは無意識」 ちなみにグレースは、本家『24時間テレビ』にも出演。やはり前述の「感動へのステップ」をなぞるような「死も考える、苦しみ抜いた過去があった」といった感動調のVTRではあったが、ほかの多くのVTRとは一味違っていた。 『世界の果てまでイッテQ!』などで体を張っている森三中・大島が好きという彼女は、同じく『イッテQ!』に出演するNEWSの手越祐也と3人でパンスト相撲に興じ、「水かつらアート」「スローモーションアート」といった、番組名物企画に挑戦。笑いのあふれるものだった。 大島から「すごく面白かった」と言われたグレースは、笑顔で「面白いって言葉が一番うれしい」と返した上でこう語った。 「お笑いやりたいとか、体を張るのが好きな障害者もいるんだっていうのがわかってもらえたら、お互いの壁みたいなのがなくなって、私の生きる道につながっていく」 『バリバラ』が本当にやりたかったのは、単なる『24時間テレビ』批判ではないだろう。打開すべきは障害者を無視し、ないことにしているテレビ全体だ。ドラマはもちろん、バラエティにも『24時間テレビ』などの例外を除いて、障害者たちが出ることはほとんどない。たとえ出ていたとしても、そこには“障害者である”という「意味」が必ず生じるし、そうでなければ「なぜ障害者?」と問われてしまう。障害者は、普通のイチ出演者としては扱われないのだ。 特別なことではなく、障害者も健常者も多様性のある普通の人間のひとりとして一緒に笑い、一緒に泣く。それこそが「感動ポルノ」に陥らない道なのだ。最後に山本シュウは、出演者たちに問いかけた。 「裏の番組からオファーを受けたら、出るという人?」 全員が「はーい!」と高らかに手を挙げた。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらからNHK『バリバラ』
「面白い」が正義! 狂ったTBSに『芸人キャノンボール』再び
「TBSってクレイジーな局になってきたよね」 これは『クレイジージャーニー』(TBS系)の中で、最近のTBSのバラエティ番組について、松本人志が言った言葉である。 最大級の賛辞といえるだろう。 たしかに今のTBSは、『クレイジージャーニー』や『万年B組ヒムケン先生』、『有田ジェネレーション』などの深夜番組の充実っぷり。そして、ゴールデンタイムでも『水曜日のダウンタウン』といった“攻めている”お笑い番組がある。 中でも“狂ってる”と思わせてくれるのはその大胆な編成だ。それをまざまざとあらわしているのが明日24日のゴールデンタイムだ。 なんと、19時から特番『芸人キャノンボール2016』を3時間、続けて22時(正確には21時57分)から『水曜日のダウンタウン』が放送されるのだ。 ともに、「地獄の軍団」と名高い藤井健太郎プロデューサー率いる制作陣による番組だ。つまり、内容は抜群だが、決して視聴率を獲るとは言いがたい藤井健太郎が、この日のゴールデン4時間を独占するのだ。狂ってる。 『芸人キャノンボール』は、1997年から始まったカンパニー松尾によるAV作品『テレクラキャノンボール』が下敷きになっている(さらに遡れば『テレクラキャノンボール』は映画『キャノンボール』が元ネタだが)。2014年には『劇場版テレクラキャノンボール2013』として劇場公開もされた作品だ。『キャノンボール』シリーズはアイドルグループ・BiSの解散ライブを題材にした『劇場版BiSキャノンボール2014』にも発展した。プロレス団体・DDTではマッスル坂井によってスカパー・サムライTVでオマージュ作品『プロレスキャノンボール2009』を制作。その後、2015年には『劇場版プロレスキャノンボール2014』が改めて制作され劇場公開。大きな反響を呼んだ。 そうした「キャノンボール」シリーズの本活的な芸人&テレビ版として企画されたのが『芸人キャノンボール』だ。 このAV作品を元にした番組が最初に放送されたのが、なんと2016年の元日のゴールデンタイムだったのだ。狂っている。攻めてる、としか言いようがない。 藤井健太郎も、このたび発売された自著『悪意とこだわりの演出術』(双葉社)で、このように述懐している。 「ここで攻めているのは決して僕ではなく、元日のゴールデンタイムにこの番組を流すジャッジをしたTBSの編成だと思います」 さらに、企画が決まった後も、一般的に視聴率至上主義と言われる編成部員から「ここは視聴率が多少悪くても、内容でちゃんと面白いモノを出すことが大事だから」「元日の目立つ場所で格好の悪い番組は出したくないから」と何度も言われたという(同書)。 結果、視聴率はふるわなかったが、番組を観た人が絶賛する「熱のある」番組になった。 そんな『芸人キャノンボール』が帰ってくる。 スタッフや芸人たちのSNSなどから『27時間テレビ』(フジテレビ系)放送のさなか、収録が行われていたらしい。 その放送を前に、元日に放送された前回を振り返ってみよう。 『芸人キャノンボール』は、芸人たちが4つのチームに分かれ、4つのステージごとに「お題」が与えられる壮大な“借り物レース”だ。ゴールを目指しながら、「とにかく歌が上手い人」や「とにかく相撲が強い人」など「お題」にあった人を連れていき対戦する。 ポイントはチェックポイントに到着した順番で与えられる「着順ポイント」と、対戦した上での結果の順位に応じて与えられる「競技ポイント」があり、さらに「『紅白』出場者」「社長」「100キロ超え」などの際立った特長がある人を連れていけばボーナスポイントが与えられる。 最初のお題は「とにかくにらめっこが強い人」。 それぞれのチームは人が多くいる場所や、個性的な人が集まりそうな場所を思案しながら、「にらめっこ」が強そうな人を探していく。 また、この番組の肝は、連れていく人を素人に限定していないことだ。出演者の人脈を使って芸能人などを連れて出すことも認められている。実際、ロンドンブーツ1号2号チームは、アンガールズ田中がいる有吉チームを笑わせるため、相方の山根をブッキングしようとした(結局、地方ロケのためNG)。 なんてことのない「お題」だが、そこは藤井健太郎の番組。絶妙な“悪意”がまぶされている。 「にらめっこ」が強い=個性的な風貌ということで、藤井Pの番組では頻出する「歯がない」人などが登場。 そして、ロンブーチームが場外馬券場で見つけた“英国紳士”風の素人が強烈だった。 他の人が一生懸命面白い顔を作って笑わせようとする中、ただそこにいるだけで笑わせることができる強烈キャラだった。 続く第2ステージはこの番組の面白さが凝縮されていた。 「とにかく歌が上手い人」を連れていくという「お題」でロンブーチームが真っ先に電話をかけたのは、『紅白』歌手でもある千秋だった。 最初こそ突然の電話に「マネジャーに確認しないと」と一度は躊躇するが、旧知の仲である出川哲朗やウド鈴木の説得に「行ったほうが面白いんでしょ? 行ったらオイシイんでしょ? じゃあ行くー!」と快諾したのだ。 だが、これが思わぬ展開を見せる。 ロンブーチームが待ち合わせの場所に到着してしばらく待っていると、千秋から電話がかかってくる。なんと、別の仕事で行けなくなったというのだ。もちろんロンブーチームは大混乱。なんとか時間ギリギリで別の人物を連れてチェックポイントの会場に到着した。 すると、なんとおぎやはぎチームの代表として千秋が登場したのだ! じつはロンブーチームからの電話の後、おぎやはぎチームのバカリズムからも連絡が入った千秋。先に約束した上、長い付き合いのウドや出川を裏切れないというが、バカリズムはそのほうが「オイシイ」と説得。果たして、彼女は面白い方を選択したのだ。 裏切りや策略、相手の車のタイヤを外し、相手の進行を妨害することも厭わない。 多少「ズル」しても、「面白い」ことが一番の「正義」。 そんな世界だからこそ、とにかく芸人たちがレースにのめり込み真剣だ。 真剣にレースに勝とうとし、必死に「面白い」ことを探すのが『芸人キャノンボール』だ。 それは、今のTBSの“狂った”姿勢を象徴しているかのようだ。いよいよ24日、『芸人キャノンボール』が「2016 in Summer」として帰ってくる。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらからTBS系『芸人キャノンボール2016』番組サイトより
いよいよ一挙再放送!『大アマゾン 最後の秘境』の「わからない」という恐怖
年齢を重ねるにつれ、見たこともない未知の映像をテレビで見ることはほとんどなくなった。 そして、その中から、心の底から「恐怖」を感じることもあまりない。 けれど、そのふたつをまざまざと見せてくれたのが『NHKスペシャル』で放送されたシリーズ『大アマゾン 最後の秘境』(NHK総合)だ。 今年4月から4回にわたって放送されたもので、このたび、22日深夜に第1集と第2集が、翌23日深夜に第3集と第4集が再放送される。 このシリーズは伝説的ドキュメンタリー『ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる』を作ったディレクター・国分拓による作品だ。 ちなみに『ヤノマミ』はアマゾンの奥地に住む先住民族「ヤノマミ」に150日間もの間、密着し、その独特な死生観や精神世界に迫ったもの。今回も国分らは、長期間アマゾンに滞在し取材したという。 第1集の「伝説の怪魚と謎の大遡上」と第3集「緑の魔境に幻の巨大ザルを追う」は、未知の自然の驚異を追ったものだった。 前者は、濁流のアマゾン川の中にうごめく「怪魚」たちを見事にカメラに捉え、その驚きの生態を世界で初めて映像に収めた。 後者では、現在もなお目撃談が後を絶たない謎の「巨大ザル」を探索。それだけ聞くと、「川口浩探検隊」シリーズ(テレビ朝日系)のようなものを思い浮かべてしまいそうだが、あのスペクタルを継承しつつも、映像は徹底的にリアリズム。見たことのない生き物や自然の姿に何度も息を呑んだ。 だが、今回のシリーズでスゴかったのは、「自然」よりも「人間」だった。 それは第2集「ガリンペイロ 黄金を求める男たち」と第4集の「最後のイゾラド 森の果て 未知の人々」。 「人間がいちばん恐ろしい」 というのは、ノンフィクションに用いられる常套句のひとつだが、それを何よりも実感させてくれるドキュメントだったのだ。 第2集の「ガリンペイロ 黄金を求める男たち」は、アマゾンに眠る金を掘り続ける男たち=「ガリンペイロ」の生活に密着した作品。過酷な労働環境のもと、一攫千金の夢を見る男たちは、たいていが訳あり。無法者の集まりだ。 当然のようにみんな銃を持ち、ケンカやトラブルは絶えない。それが殺し合いにまで発展することも少なくない。 「場所を誰かに話したら、誰かが死ぬことになる」 国分たち取材班が、ガリンペイロのボス(通称「黄金の悪魔」!)に取材許可をもらう交渉中にドスの利いた声で言われた言葉だ。ヤバい匂いがプンプンしている。 ガリンペイロには2人を殺した元殺人犯の男もいる。ある日突然、その男が取材班が寝泊まりしている小屋に木の棒を持ってやってきた。完全に目がすわっている。 「おい」 男はスタッフに声をかけるとイッた目のまま言う。 「お前らも踊れ」 そんな言葉とは裏腹に緊迫感が漂っている。 「お前ら人を殺したことがあるか?」 「ない」と答えると「ねぇってよ」とバカにした様子で笑うと、ひとしきり取材班をビビらせ、からかっていくのだ。 たとえからかっているだけとはいえ、少しでも機嫌を損ねたら何をされてもおかしくない怖さがビンビン伝わってくる。 別の日の夜には、酔っ払ったガリンペイロ同士がケンカ。そのうちのひとりが興奮して銃を持ちだした。 「やばい、やばい!」 カメラマンが慌てて逃げ出す。酔っ払って理性を失った状態。銃口がスタッフに向けられない保証はどこにもない。「死」の恐怖がリアルに迫ってくる。 第4集の「最後のイゾラド 森の果て 未知の人々」は文明社会と一切の関わりを持たない先住民「イゾラド」と近隣の村人たちとの衝突を描いたものだ。 イゾラドは洋服を着ない上、武器も木製の弓矢や槍。 彼らが、かつて自分たちが住んでいた集落に、自分たちと同じ人間が住んでいるらしいことを知り、まずは男たちだけで川を渡り、近づいてくる。攻撃するつもりだろうか。険しい表情で何やら話し合っている。 村人たちは彼らをむやみに攻撃するつもりはない。なんとかコミュニケーションをとろうと大きな声で話しかけていく。 お互いが警戒しあってなかなか距離が縮まらない。村人たちはバナナなどを与え、友好関係を築こうとしたが、結局後日、その集落は彼らに襲撃されてしまう。 ペルー政府は文明社会にイゾラドをなじませるために交渉役をたて接触をはかる。11回目の接触にカメラマンが同行。 「この人、誰?」 見知らぬ顔を見つけたイゾラドの一家は不信な表情で詰め寄ってくる。 「ノモレ、ノモレ、ノモレ」 カメラマンは「友達」を意味する言葉を必死で繰り返す。 すると、カメラマンの着ている服に興味を持ったのか、それを脱がそうとする。 「私の子どもに危害を加えるなよ」 とすごんだと思ったら、「妊娠してるの」とお腹を触らせようとしたり、動物に噛まれた傷痕を親しげに見せてきたりもする。 にこやかになったと思ったら、その数秒後には、急に攻撃的な表情に変貌する。 お互いがお互いを「わからない」という感情が、攻撃性を刺激したり、不安を煽ったりする。 ある程度危険な被写体であっても、テレビカメラがあれば滅多なことはしないだろう。そんな希望的観測はまったく通用しない。21分間というこの接触は、おそらくカメラマンにとって永遠のように長く感じられただろう。 本当の恐怖とは「わからない」ということだ。 だが、その「わからない」が映像になると、極上の刺激的作品に変わっていく。 もはやテレビで「わからない」ような未知の世界は残っていないなどと言われる。 だから今、テレビはよりわかりやすい方向にばかり進んでいる。 だが、テレビだからこそできるスケールと時間をかけて、国分たちNHK取材班はアマゾンの奥地で未知の「わからない」という金脈を掘り出したのだ。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらからNHK『大アマゾン 最後の秘境』番組サイトより
元ジャニーズアイドルに仕掛けられた『田村淳の地上波ではダメ!絶対!』のドッキリ最高峰
「高知(東生)さんのせいだよぉ~、なんで覚せい剤なんかやるんだよー」 ロンドンブーツ1号2号の田村淳はそんなふうに嘆きながら、衆人環視の中、ズボンを下ろし、オマルにおしっこをし始めた。 これは『田村淳の地上波ではダメ!絶対!』(BSスカパー!)で行われた、淳への抜き打ち尿検査である。すでに淳は、週刊誌やネット上などで覚せい剤疑惑があったことからスタッフが企画し、抜き打ちで尿検査を実施していた。それも3回。勘の鋭い淳が察知し、覚せい剤を“抜いて”いる可能性があるからだ。 専門家立ち会いのもと、実際におしっこをする場面も目視。その一部始終がノーカットで放送され、検査の結果、疑惑が晴らされたはずだった。 しかし、高知容疑者の逮捕を受け、再び疑惑が高まっているとして、7月21日の放送で4度目の検査が実施されたのだ。 『田村淳の地上波ではダメ!絶対!』はそのタイトル通り、地上波のテレビではタブー視されているような企画を次々に放送している。ホームレスの生活の実態を調査する社会派の企画から、実際に不倫をしている女性や、薬物経験のある人を招いて、その実体験を聞いたり、伝説の深夜番組『トゥナイト』(テレビ朝日系)での山本晋也の風俗リポートをオマージュした「アトゥシナイト」なるお色気系企画(8月4日の放送では、本家・山本晋也が登場し、浅草ロック座へ潜入したり、「エロ芸グランプリ」が開催される予定)など、かなり挑戦的で自由だ。サイゾー系のネットニュースが、番組の会見にあたかも訪れたような内容の実際と異なる記事を掲載したことに対して、実際にサイゾー編集部を淳が訪れ、その真意を問いただしたこともあった。 淳は4度目の検査で「陰性」つまりシロが確定した際、「いろんな人を検査したいんですよ」と漏らしたが、それが数日後に、すぐに実現。このあたりのフットワークの軽さも、今の地上波にはあまりないことだろう。 そして、その1回目の検査対象になったのは、なんと元KAT-TUNの田中聖。 確かに彼は週刊誌などで、覚せい剤疑惑のある芸能人として誌面をにぎわせたことがある。ネット上には、そのような疑惑の目を向ける書き込みが後を絶たないという。実際、ある舞台挨拶の前、田中は右手小指を骨折。見栄えが悪いだろうと、ギプスをつけずに登壇すると、それを見たネットユーザーが反応した。「アイツ、右手が動かない。やっぱりクスリをやってるに違いない」と。 それでも、元ジャニーズのアイドル。芸人ならばシャレで済まされるかもしれないが、激怒されてもおかしくない抜き打ち検査はリスクが高すぎる。そもそも、本当に“クロ”だったらどうするのか? まずは偽取材を敢行し、その言動を専門家とモニタリング。すると、田中はいきなり不可解とも思える行動をする。取材開始直前になって、トイレに行くのだ。これ自体は変わったことではないが、その時間、15分以上。待たされる形になった淳は「今、(覚せい剤を)やってんじゃないの? 怪しいな、すでに」「ほぼ確定だな」と言いたい放題。 そんな中、専門家が覚せい剤常習者の特徴を挙げていく。それが「汗をかきやすく、水分をよく摂る」「痩せ気味になり、顔色が悪い」「人を疑いやすい」「毛髪検査をくぐり抜けるため、髪の毛を頻繁に脱色する」というものだ。 果たして取材の場に現れた田中の髪は脱色され、体は痩せて、どことなく顔色が悪かった。取材を続けていくうちに、専門家が挙げる覚せい剤常習者の特徴と、次々に合致していく。専門家も「これは怪しい」とつぶやくほど疑惑が高まったところで、いよいよ淳が田中のもとへ突撃。 「マジか……!」と絶句する田中に対し、ついに抜き打ち尿検査が始まったのだ。 「ドッキリ的なものも、初めてなんですよ」 と言いながら、カメラの前でオマルにおしっこをしようとする田中に、淳は笑って言った。 「ドッキリの中でも、俺、これ最高峰だと思う」 もちろん「田中には事前に話が伝わっていたのではないか」とか「本当は出来レースではないのか」など、疑おうと思えばキリがない。そうやってなんでも色眼鏡で見て冷笑するのも、逆にカメラが映し出すものを100%信じるのも、同じようにバカげている。世の中を、自らつまらなくするだけだ。 『田村淳の地上波ではダメ!絶対!』は、今なかなかテレビでは味わえなくなった「こんなことやっていいの?」というドキドキ感を感じさせてくれる。だけど、僕は『地上波ではダメ!絶対!』というタイトルだけは気に食わない。確かにBSスカパー!という、まだまだ閉じられた世界だからこそ、許されているものかもしれない。だとするならば、それでは自ら視聴者層を狭めているだけだ。 エロ系の企画はともかく、それ以外のこの番組の企画を「地上波ではできない」と、もし作り手自らが言うのならば、それは勝手な思い込みではないだろうか? かつてテレビは、大衆と共犯関係を結ぶことができたからこそ、多少のことは許されてきた。ならば今、大衆とどのような共犯関係なら結べるのか? 時代が違う――。そんな理由だけであきらめてほしくないし、あきらめたくはない。なぜならテレビは“時代”を変えてきたメディアなのだから。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから『田村淳の地上波ではダメ!絶対!』スカパー!
「失敗のない青春に価値はない!」日テレ版『時をかける少女』が描く、青春のトキメキ
筒井康隆の青春SF小説の金字塔『時をかける少女』は、これまで何度も映像化されてきた。代表的なものでいえば、1983年に公開された大林宣彦監督による原田知世主演の実写映画版と、2006年に公開された細田守監督によるアニメ映画版だろう。 そして16年7月より、全5話の連続ドラマとして黒島結菜主演で始まったのが、日本テレビ版の『時をかける少女』だ。 このドラマ版の製作が発表されると、一部でアニメ版が原作だと思っている人がいると話題になるなど、世代によってイメージする“原作”が異なる稀有な作品である。それは、本当の原作である小説版はもちろん、その後に製作された実写映画もアニメ映画も、見る者の心に強く残る傑作だったことの証左だろう。 そして今回のドラマ版は、町並みの美しい風景は大林映画版っぽさがあり、明るくハツラツとした作風は細田アニメ版っぽさがあるように、原作や過去の映像作品のいい部分がバランスよく配合されて作られている。 すべての作品に共通するのが、タイムリープの能力を持ってしまう主人公である少女、彼女を好きな幼なじみの同級生、そして未来人の少年の三角関係が描かれるということだ。アニメ版は、そもそも原作の主人公である和子の姪という設定のため当然だが、このドラマ版でも原作とは一部名前が変わっており、それぞれ芳山未羽(黒島結菜)、深町翔平/ケン・ソゴル(菊池風磨)、浅倉吾朗(竹内涼真)。さらに、原作や他の映像作品でも出てこない相原央/ゾーイ(吉本実憂)という、翔平と一緒に過去にやってきた少女も登場する。 また、自分がタイムリープできるようになった秘密を、大林版では深町にしか、アニメ版では和子にしか相談しないが、ドラマ版では原作同様、深町と吾朗2人に早々に打ち明けている。逆に、原作や大林版では自分の意志でタイムリープするのは最後の一度きりだが、ドラマ版はアニメ版同様、何度も頻繁に自分の意志でタイムリープしている。加えて、ほとんどの映像作品は主人公ひとりの視点で話が進むのに対し、ドラマ版は連ドラという特性を生かし、3人の視点が入れ替わるように、それぞれのモノローグが挿入されている。 もちろん、エピソードもドラマオリジナルのものが付け加えられている。例えば第3話では、青春ドラマの定番である「学園祭」が描かれた。当初、未羽のクラスはクラス発表をしないことに決めた。だが、実際に学園祭を終えると、高校最後の年にそれをやらなかったことを3人は強く後悔した。 そこで、未羽はタイムリープをする。クラス発表をやるよう、クラスメイトを説得するためだ。そしてロミオ役を吾朗、ジュリエット役を相原に配した舞台『ロミオとジュリエット』を上演することが決まる。 だが、ジュリエット役の相原は、破壊的に演技がヘタ。向いてなかったのだ。クラスはバラバラになってしまう。すると、未羽はまたもタイムリープ。「ジュリエットは男がやったほうが面白いのでは?」と提案し、ジュリエット役を深町に替えるのだ。 普通、相原の心情を慮って、たとえタイムリープという武器があっても、彼女がジュリエットのままなんとかしようとするのが、青春ドラマの定石だ。だが、このドラマでは「それでいいの?」と思ってしまうほど、タイムリープはかなり軽く使われる。実は、それがこのドラマの“肝”でもあるのだ。 相原は、代わりに与えられた背景美術で才能を発揮して称賛を浴び、舞台も大盛況。しかし、クライマックスで大きなトラブルが発生する。大事な告白シーンのさなか、天井に挟まっていたバスケットボールが落下し、吾朗の頭を直撃、気絶してしまう。さらに、慌てて駆け寄ろうとした女子生徒がセットに足を引っ掛けてしまい、セットが崩れてしまう。続けて、なんとか成立させようと前に出たジュリエット役の深町の衣装が脱げてしまう始末。クラスメイトが一致団結して作り上げた舞台は、台無しになってしまった。 落ち込むクラスメイトを前に、いつものようにタイムリープしてやり直そうとする未羽。だが、「でも、浅倉くんが気絶する瞬間いい顔してたな」と吹き出す男子生徒がきっかけになって、「翔平くんの最後のキメポーズも最高だった」「おかげで演出を超えたクライマックスだったよ」と楽しそうに言い合うのだ。 そんな光景を見て「このままがいい」と、未羽はタイムリープすることを思いとどまるのだ。 「失敗のない青春に価値はない!」 男子生徒が言うと、「失敗最高!」というコールがクラスを包み込むのだ。 タイムリープが頻繁に軽く行われる設定だからこそ、逆にタイムリープしなかった時の思いに重みが増す。 青春には、失敗がつきものだ。いや、若さゆえの失敗こそが、青春ともいえる。やり直せないからこそのはかなさと煌めきを、やり直せるからこそ逆説的に描いている。 主人公がタイムリープするかのように、作品も何度も何度もやり直されている。何度やり直されても、そのトキメキは損なわれない。青春は、一度きりでは終わらないのだ。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから日本テレビ『時をかける少女』公式サイトより
“壊し屋”ホリケンも白旗! 『全力!脱力タイムズ』がぶっ壊す、バラエティ番組のルール
「わかんないよなぁ……わかんないんだよ」 スタッフから「OKでーす!」という本番終了を告げる声がかかると、ネプチューン堀内健は疲れ果てた様子でつぶやいた。 その言葉に、それまで笑いをこらえていた、くりいむしちゅー有田哲平をはじめとする出演者たちが、ドッと笑った。 これは『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系)の本編終了後、数秒流れるシーンだ。この番組は、有田が「アリタ哲平」としてキャスターを務める“報道”番組である。報道番組らしく、経済学者の岸博幸、アルピニスト・野口健、犯罪心理学者の出口保行といった3人の「解説員」が並び、ゲストと対峙する。 そのゲストのうち1~2人は俳優やアイドルなどで、彼らはたいてい普段はしないメガネなどをかけ、報道番組仕様になっている。今回(15日)はHey! Say! JUMPの中島裕翔だった。そしてもう一人のゲストとして、必ず芸人が呼ばれる。それが堀内だった。 「報道番組に出られたことは?」とアリタに問われると、堀内は報道番組らしく静かに言う。 「いや、初めてですね。あのー、嫌いじゃないんで。こういうニュース番組というのは。今日は解説員の方もいらっしゃるので、いつもより一歩踏み込んだ意見を、お茶の間に、テレビを通して訴えたいと思います」 スタジオには「天才芸人!堀内健 なぜそんなに面白いのか」と題されたパネルが用意されている。「堀内健の最大の魅力」とか「どんな人?」「やりすぎ!ホリケン伝説」「人生の大ピンチ」などと見出しが書かれ、肝心なところは隠されている。これをもとに、隠されている部分をめくって解説していくという、情報番組でよく見る形式である。 だが、この番組は一筋縄ではいかない。まずは、これまでのホリケンの略歴をまとめたVTRがあると振るアリタ。しかし、流れ始めたのは「日本の論点」と題する「学校のトイレで排便しない小学生」問題を扱ったVTRなのだ。 「一回止めましょう」 アリタは冷静に対処。「これは来週やる予定」だと説明し、あらためてVTRを振る。しかし、流れたのは、やはり同じもの。 「最初から、やり直しましょうか?」と堀内は言うが、「流しちゃったんで、こっちから……」とワケのわからないことを言うスタッフ。アリタが「ホリケンの魅力は、今日は語らない?」と確認するとスタッフがうなずき、パネルはそのまま片付けられていく。 結局、「学校のトイレで排便しない小学生」問題になると、アルピニストの野口は、「ウンチといえば、ベースキャンプですよね」とテーマと関係のない話を語りだす。番組内で「といえば解説」と呼ばれる、恒例の流れだ。 すると、「正気か、お前!」と激高するホリケン。 「打ち合わせ、すごいやったんだよ、これ! おい、アリペイ! ハメやがったな、この野郎! 裏切られた気持ちだよ!」 そんなホリケンにアリタは「手違いですので」と、冷たくあしらうのだ。 このように『脱力タイムズ』は、“トラブル”だったり、解説員がまったく関係ない話をしだしたりと、本来のテーマに全然たどり着かないという報道コント番組である。ゲストの芸人はひとりそれに翻弄され、なんとかツッコもうとする。だが、誰もそのツッコミに対してまともな反応をしてくれず、どんどん追い込まれていく。 バラエティ番組には、ある程度のルールが存在する。こうツッコめば、こういう反応がある。あるいはこうボケれば、こういう反応がある――。芸人たちは、そうしたことを経験則で知っている。だから、自分の言動によって起こることが予測できてしまう。 だが、この番組は違う。「わからない」のだ。「わからない」ことは不安だ。ルールが壊され、追いつめられていく芸人。だから、普段見せたことのないような表情が出てしまう。それがたまらなく面白い。不安定な部分をあえて残し、予定不調和な現実を見せつける。そういった意味では、文字通りの“報道”番組なのかもしれない。 『脱力タイムズ』に以前ゲスト出演した出川哲朗は本編終了後、驚嘆して言った。 「有田……攻めてるねえ」 これまでさまざまな番組において、自由奔放なボケで大暴れしてきたホリケン。いわば“壊し屋”だ。しかし、この番組で翻弄され“壊れた”のは、ホリケンのほうだった。 「アリペイちゃん、今日、オレ何点だ?」 あまりにもいつもと勝手が違いすぎて、自分の出来が「わからない」不安に駆られたホリケンが、思わず有田に尋ねた。 「100点です」 手だれの芸人が経験則で積み重ねてきたルールを壊したときにこそ、その芸人の「全力」が見られるのだ。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから『全力!脱力タイムズ』フジテレビ
“壊し屋”ホリケンも白旗! 『全力!脱力タイムズ』がぶっ壊す、バラエティ番組のルール
「わかんないよなぁ……わかんないんだよ」 スタッフから「OKでーす!」という本番終了を告げる声がかかると、ネプチューン堀内健は疲れ果てた様子でつぶやいた。 その言葉に、それまで笑いをこらえていた、くりいむしちゅー有田哲平をはじめとする出演者たちが、ドッと笑った。 これは『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系)の本編終了後、数秒流れるシーンだ。この番組は、有田が「アリタ哲平」としてキャスターを務める“報道”番組である。報道番組らしく、経済学者の岸博幸、アルピニスト・野口健、犯罪心理学者の出口保行といった3人の「解説員」が並び、ゲストと対峙する。 そのゲストのうち1~2人は俳優やアイドルなどで、彼らはたいてい普段はしないメガネなどをかけ、報道番組仕様になっている。今回(15日)はHey! Say! JUMPの中島裕翔だった。そしてもう一人のゲストとして、必ず芸人が呼ばれる。それが堀内だった。 「報道番組に出られたことは?」とアリタに問われると、堀内は報道番組らしく静かに言う。 「いや、初めてですね。あのー、嫌いじゃないんで。こういうニュース番組というのは。今日は解説員の方もいらっしゃるので、いつもより一歩踏み込んだ意見を、お茶の間に、テレビを通して訴えたいと思います」 スタジオには「天才芸人!堀内健 なぜそんなに面白いのか」と題されたパネルが用意されている。「堀内健の最大の魅力」とか「どんな人?」「やりすぎ!ホリケン伝説」「人生の大ピンチ」などと見出しが書かれ、肝心なところは隠されている。これをもとに、隠されている部分をめくって解説していくという、情報番組でよく見る形式である。 だが、この番組は一筋縄ではいかない。まずは、これまでのホリケンの略歴をまとめたVTRがあると振るアリタ。しかし、流れ始めたのは「日本の論点」と題する「学校のトイレで排便しない小学生」問題を扱ったVTRなのだ。 「一回止めましょう」 アリタは冷静に対処。「これは来週やる予定」だと説明し、あらためてVTRを振る。しかし、流れたのは、やはり同じもの。 「最初から、やり直しましょうか?」と堀内は言うが、「流しちゃったんで、こっちから……」とワケのわからないことを言うスタッフ。アリタが「ホリケンの魅力は、今日は語らない?」と確認するとスタッフがうなずき、パネルはそのまま片付けられていく。 結局、「学校のトイレで排便しない小学生」問題になると、アルピニストの野口は、「ウンチといえば、ベースキャンプですよね」とテーマと関係のない話を語りだす。番組内で「といえば解説」と呼ばれる、恒例の流れだ。 すると、「正気か、お前!」と激高するホリケン。 「打ち合わせ、すごいやったんだよ、これ! おい、アリペイ! ハメやがったな、この野郎! 裏切られた気持ちだよ!」 そんなホリケンにアリタは「手違いですので」と、冷たくあしらうのだ。 このように『脱力タイムズ』は、“トラブル”だったり、解説員がまったく関係ない話をしだしたりと、本来のテーマに全然たどり着かないという報道コント番組である。ゲストの芸人はひとりそれに翻弄され、なんとかツッコもうとする。だが、誰もそのツッコミに対してまともな反応をしてくれず、どんどん追い込まれていく。 バラエティ番組には、ある程度のルールが存在する。こうツッコめば、こういう反応がある。あるいはこうボケれば、こういう反応がある――。芸人たちは、そうしたことを経験則で知っている。だから、自分の言動によって起こることが予測できてしまう。 だが、この番組は違う。「わからない」のだ。「わからない」ことは不安だ。ルールが壊され、追いつめられていく芸人。だから、普段見せたことのないような表情が出てしまう。それがたまらなく面白い。不安定な部分をあえて残し、予定不調和な現実を見せつける。そういった意味では、文字通りの“報道”番組なのかもしれない。 『脱力タイムズ』に以前ゲスト出演した出川哲朗は本編終了後、驚嘆して言った。 「有田……攻めてるねえ」 これまでさまざまな番組において、自由奔放なボケで大暴れしてきたホリケン。いわば“壊し屋”だ。しかし、この番組で翻弄され“壊れた”のは、ホリケンのほうだった。 「アリペイちゃん、今日、オレ何点だ?」 あまりにもいつもと勝手が違いすぎて、自分の出来が「わからない」不安に駆られたホリケンが、思わず有田に尋ねた。 「100点です」 手だれの芸人が経験則で積み重ねてきたルールを壊したときにこそ、その芸人の「全力」が見られるのだ。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから『全力!脱力タイムズ』フジテレビ
ラップは賢くないとできない――『マツコ会議』でマツコが壊す先入観
「お前、うますぎるわ!」 マツコ・デラックスは、黒人ラッパーの流暢すぎる進行に驚愕しながらツッコんだ。 その男の名はACE。彼は、ヒップホップ界隈ではすでに有名な存在だ。『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)では「ラスボス」般若の“通訳”役を務めているのをはじめ、多くのバラエティ番組に出演。CSでは『ラッパー“ACE”の世界をねらえ』(MONDO TV)という冠番組まで持っている。ちなみに『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京系)にも“終電を逃したラッパー”として密着されたことがある。 マツコは、そんなバラエティ慣れしたACEの、ユーモアを挟みながらわかりやすくラップを解説する姿に舌を巻いていたのだ。 これは、気になるスポットに中継をつなぎ、それを見ながら企画会議を行う『マツコ会議』(日本テレビ系)での一幕。中継先とやりとりをしていく中で、“総合演出”のマツコがテーマを決め、VTRを作り、ホームページで公開するというコンセプトの番組だ。 7月2日放送の回で、下北沢で開催されている「ラップサークル」にカメラが潜入すると、そこで講師を務めていたのがACEだった。 教室のホワイトボードには、こんなふうに書かれている。 今日のご飯は“炊きたて” これが母の□□□□ でも毎日カレーは□□□□ たまには食べたい□□□□ この3つの□□□□に、「炊きたて」の母音「aiae」で韻を踏んだ言葉を穴埋めしていこうという授業である。 ひとりの女生徒は、それを上から順に「愛だね」「飽きたね」「まいたけ」と韻を踏んでいく。「ほかにないか?」とACEが振ると、手を挙げたのは「長老」と呼ばれる生徒。彼が「さじ加減」「なしだぜ」「闇鍋」と答えると、ACEは「ありきたりなのは嫌なんですね。いったい、人生に何があったのか?」と笑わせる。 「やってることは、ほぼ『笑点』よね?」というマツコに、「そうですね、座布団のない『笑点』」とACE。 「なんでそんなにしゃべりうまくなったの?」 「反省文書きすぎたからですかね」 ACEはラップで鍛えられたであろう瞬発力で、よどみなく答えて、芸人顔負けに笑わせていく。 授業は山手線ゲーム形式で韻を踏んでいく課題を経て、フリースタイルのMCバトルへ。ACEは、即興で相手をディスり合うMCバトルは「パンチライン」が大切だと解説。たとえば「でしゃばりすぎ」と相手にディスられたら、それを受けて「お前うるせえよ、“ペチャパイ好き”」と、相手のディスに対し韻を踏んで返すと高評価につながる、と。 番組でもラップの基本授業の光景から見せていたため、ラップをよく知らない番組視聴者でも、授業を受けるように、ラップの仕組みを理解でき、その何がすごいのかがとてもわかりやすい。これまでラップに接する機会があまりなかったというマツコも、感心しながら言う。 「ラッパーって、賢くなきゃできないね」 『BAZOOKA!!!』(BSスカパー!)の「高校生RAP選手権」や『フリースタイルダンジョン』をきっかけに今、ヒップホップが注目されている。雑誌では「サイゾー」、「ユリイカ」(青土社)、「クイック・ジャパン」(太田出版)、「TV Bros.」(東京ニュース通信社)などが相次いでフリースタイルを中心としたヒップホップの特集を組んだ。 たとえば『クイック・ジャパン』(Vol.126)では、いとうせいこうがお笑い芸人との類似性を指摘している。 「お笑いで上に上がるためには、ネタが面白いにはこしたことがないけど、その場その場でなにを言えるかという能力が必要」 それは、まさに「フリースタイル」だ。だから「芸人はそのことに焦って学ばなければいけないし、勝たなければいけない」と、いとうは言うのだ。 確かに、90年代以降、文化系で表現欲のある若者の最大の受け皿はお笑いだったが、それがヒップホップに変わりつつあるイメージがある。事実、このスクールに集まる生徒の多くはごく普通の人たちだ。 かつて「お笑いの学校なんて」と嘲笑されていたお笑い養成所が今では当たり前になったように、ラップの学校にもそんな日が来るのかもしれないし、ラッパーがテレビの世界を席巻する日も近いのかもしれない。 実際、このところさまざまなバラエティ番組で、ラッパーを使った企画を見かけるようになった。とはいえ、まだまだラッパーをうまく生かせず、持て余しているように見える番組が多いが、この企画はそうした番組の中でもラップを知らない人にラップの楽しさを伝えるという点で珠玉の回だった。その大きな要因は、マツコの柔軟さにある。 『マツコ会議』が取り上げるスポットの多くは、若者の流行の最先端だ。そういった目新しいものに対し、僕らは先入観で警戒してしまいがちだ。マツコも一見偏屈に見えるが、その実、自分の先入観を破られることに抵抗があまりない。むしろ、それを楽しんでいるフシがある。そうした場面は『マツコ会議』の中でよく出てくる。もちろん、今回もそうだった。 番組冒頭で、ラップは「反体制的な人たちがやっているイメージ」と語っていたマツコが、素直に「イメージが変わった」と言う。 「高尚なお遊びよね。ものすごく頭使うし、でもやってることは遊びなんだよ。そこがカッコいいと思った」 マツコの柔軟さが、僕らの先入観をも壊してくれるのだ。 なお、現在番組ホームページには、マツコが「なかなかの仕上がり」と評するACEを密着したVTRが公開されている(http://www.ntv.co.jp/matsukokaigi/)。まさに「なかなかの仕上がり」だ。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/) ◆「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから日本テレビ『マツコ会議』







