(2010年4月号特集『スキャンダル&ゴシップ白書』より)
朝青龍問題は、なぜ闇に葬り去られずに事件化したのか? なぜ、最近また日本の犯罪件数が減少傾向にあるのか? そのウラにある、共通した日本警察&検察に特有の問題点を、気鋭の法社会学者・河合幹雄が読み解く! ──まず、朝青龍の知人への暴行騒ぎと引退について。引退は当然、との見解が大勢を占める中、以前であればタニマチなどの仲裁でもみ消せたはず、という見方もあります。法社会学者のお立場から、河合先生はどうご覧になりましたか?桶川ストーカー事件をきっかけとして成立したストーカー規制法。
──一般刑法犯の認知件数の推移【右のグラフを参照】を見ると、1997年から02年まで、年平均約17万件ずつ増えていたのが、そこから逆に09年まで、年平均約16万件ずつ減っています。これも、そうした捜査力の低下が影響しているんでしょうか? 河 いや、これは単に上層部から、「認知件数を減らせ」という指令が出ていて、なるべく事件化せずに処理しているからです。性犯罪の被害者が署へ相談に来ても、告訴と見なさず帰したり、他殺かもしれない事件を、事故や自殺で処理したり。そもそも、00年から02年の間に急激に増えたのも、99年の桶川ストーカー殺人事件を受けて、「被害届けがあればすべて受理せよ」という通達があったからなんですよ。 ──そうした命令を出す意図は? 河 直接的には、警察官の増員のためです。増員してもらうために認知件数を増やし、増員の成果が出たと証明するために減らすわけです。実のところ、こうした操作は、どこの国でもやっていることです。ちょっと考えればわかることですけど、捜査力というものは、本来、増員すると直後はかえって低下するはずなんですよ。なぜなら、新人を教えるために人手を割かなければなりませんからね。 ──なるほど。もめごとが事件化、スキャンダル化するかどうかには、警察の方針が強くかかわってくるわけですね。 河 そう。いま話題の埼玉と鳥取の連続不審死事件も、警察が把握していながら顕在化せず、週刊誌が書き立てたことによって急展開したのかもしれません。週刊誌に載ったから捕まえたのか、週刊誌に意図的に情報を流したのかはわかりませんが、おそらく後者でしょう。立件できると踏んだ現場の刑事の判断でね。特に、自分を過信している知能犯の場合、報道によって圧力をかけられて余計な行動を取り、それがきっかけで捕まるということもよくあるんです。 ──逆に、立件できそうになくて消えていく事件もあるわけですね。 河 ええ。その意味でいま注目しているのが、先月発覚した、ローソンの連結子会社の幹部2人が、150億円を使い込んでいた事件です。史上最高額といえる巨額不正流用事件なのに、新聞各社の扱いはすごく小さくて、踏み込んで書いていたのは「日刊ゲンダイ」ぐらいなんですよ。間違いなくいえるのは、150億円という金額から、個人ベースの事件ではなく、かなりの大物の絡んだ背景がありそうということです。一般的に、こうした事件が問題化せず見逃してもらえるパターンは、その周辺で集められた金が、社会のためになる使われ方をしていて、だからこそ捜査機関にストップがかかるというものです。検察も警察も、ある案件を捜査しようとすると、幹部を通して「そこ、ちょっと待った」とストップがかかる。「コイツはこんないいこともやってるから、オレが身柄を預かる」という、まさに日本の古い村社会のようなシステムがまだ生きているんですね。 ──では、昨今の検察の捜査力について感じることは? 河 事情を知る誰もが口を揃えるのが、特捜がオカシイということです。しかし、それだけではありません。検察官とつきあうと、検事正クラス、あるいは法務省の局長、課長級には、バランス感覚に優れた人間的にも素晴らしい人材がいくらでもいる一方で、組織全体としては、公訴時効の廃止など、理解に苦しむ動きが目立ちます。社会学者の立場から、その原因のひとつとして指摘できるのは、検察幹部の大部分が、娘婿になるなどして閨閥のようなものを形成しているとされる点です。腐敗しているといったような低次元のことではなく、どうも内向きの視点で動いているように見えるんです。逆に言えば、日本全体の将来のために、検察が何をしようとしているのか見当がつかないようでは困る、ということですね。 (構成/松島 拡) 河合幹雄(かわい・みきお) 1960年生まれ。桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学)。京都大学大学院法学研究科博士課程修了。社会学の理論を柱に、比較法学的な実証研究、理論的考察を行う。著書『安全神話崩壊のパラドックス』(岩波書店、04年)では、「治安悪化」が誤りであることを指摘して話題となった。その他、『終身刑の死角』(洋泉社新書y、09年)など、多数の著書がある。 【表現者だからしょうがない!?】 ■芸能人おクスリ年表 77年 岩城滉一:覚せい剤取締法違反、懲役1年・執行猶予3年 井上陽水:大麻取締法違反、懲役8カ月・執行猶予2年 78年 勝新太郎:アヘン法違反、書類送検 83年 萩原健一:大麻取締法違反、懲役1年・執行猶予3年 清水健太郎:大麻取締法違反、起訴猶予 84年 美川憲一:大麻取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年 86年 清水健太郎(2度目):大麻取締法違反、懲役1年・執行猶予4年 88年 尾崎豊:覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年 89年 今井寿(BUCK-TICK):麻薬取締法違反、懲役6カ月・執行猶予3年 90年 勝新太郎:ハワイ・ホノルル空港でマリファナ・コカイン所持、罰金1000ドル・国外退去 91年 勝新太郎:大麻取締法・麻薬及び向精神薬取締法違反、懲役2年6カ月・執行猶予4年 92年 ミッキー吉野(2度目):覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月、執行猶予3年 93年 江夏豊:覚せい剤取締法違反、懲役2年4カ月 94年 清水健太郎(3度目):覚せい剤取締法・大麻取締法違反、懲役1年6カ月 95年 長渕剛:大麻取締法違反、起訴猶予 97年 sakura(元L'Arc〜en〜Ciel):覚せい剤取締法違反、懲役2年・執行猶予3年 01年 いしだ壱成:大麻取締法・覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年 田代まさし:覚せい剤取締違反法、懲役2年・執行猶予3年 02年 西川隆宏(元DREAMS COME TRUE): 覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年 03年 中島らも:大麻取締法・麻薬及び向精神薬取締法違反、懲役10カ月・執行猶予3年 岡村靖幸:覚せい剤取締法違反、懲役2年・執行猶予3年 04年 清水健太郎(4度目):覚せい剤取締法違反、懲役2年4カ月 田代まさし(2度目):覚せい剤取締法・大麻取締法違反、懲役3年6カ月 05年 岡村靖幸(2度目):覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月 岡崎聡子(4度目):覚せい剤取締法違反、懲役2年6カ月 06年 大森隆志(元サザンオールスターズ) :覚せい剤取締法・大麻取締法違反、懲役2年6カ月・執行猶予4年 西川隆宏(2度目):覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月 07年 赤坂晃(元光GENJI):覚せい剤取締法違反、懲役1年 6カ月・執行猶予3年 嶽本野ばら:大麻取締法違反、懲役8カ月・執行猶予3年 08年 岡村靖幸(3度目):覚せい剤取締法違反、懲役2年 加勢大周:覚せい剤取締法・大麻取締法違反、懲役2年6カ月・執行猶予3年 倖田梨紗:覚せい剤取締法・大麻取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年 09年 小向美奈子:覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年 倖田梨紗(2度目):覚せい剤取締法違反、懲役1年4カ月 岡崎聡子(5度目):覚せい剤取締法違反、懲役3年 鈴木茂(元はっぴいえんど):大麻取締法違反、懲役6カ月・執行猶予3年 押尾学:麻薬及び向精神薬取締法違反 酒井法子:覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年 成田昭次(元男闘呼組):大麻取締法違反、懲役6カ月・執行猶予3年 赤坂晃(2度目):覚せい剤取締法違反 10年 YOU THE ROCK★:大麻取締法違反 中村耕一(JAYWALK):覚せい剤取締法違反 【ただ今絶賛無料キャンペーン中の「サイゾーpremium」では他にも"芸能界と薬物"を徹底追及する記事が満載です!】 ・次の逮捕者は誰? またまた浮き彫りになり始めた芸能界薬物汚染の実態! ・押尾事件の背後で噂された疑惑の財界人たちは今...... ・石丸元章×磯部涼 「ダメ。ゼッタイ。」は絶対正しいか? 法的、医学的尺度を超えたDRUGの本質↑画像をクリックすると拡大します。
1999年に起きた桶川ストーカー事件をきっかけに、警察への告訴が受理されやすくなるなどし、刑法犯の認知件数は激増、「治安悪化」が叫ばれることともなったが、検挙件数はほぼ横ばい。その他のデータからも、データ上、治安は決して悪くはなっていないことがわかる。【註】「一般刑法犯」とは、刑法犯全体から自動車運転過失致死傷等を除いたもの。
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