昨年の発売から順調にユーザーを増やしている電子書籍リーダー・Kindleだが、これにトンデモないコンテンツが登場した。“中二病全開”だと話題になっているのは、「架空の歴史ノート―1 帝国史 分裂大戦編」(304円)。コクヨのキャンパスノートに手書きされたものをそのままスキャンしただけという斬新な体裁で、全132ページの大ボリューム。人類史上最初で最後の世界帝国「人類帝国」の歴史が事細かに解説され、さらに敵国の侵略ルートや勢力が描かれた地図やイラストも掲載。また、帝国の民の生活ぶりなど文化についても記されているなど、世界観もしっかりと作り込まれている。単なる“子どもの妄想”では片づけられないこの力作に、「本気すぎる」「これだけの設定を考えた作者には脱帽」「電子書籍の新しい可能性だ」などと、称賛の声が上がっているのだ。 著者・設楽陸氏は、名古屋で活躍するアーティスト。この「架空の歴史ノート」は、彼が小中学生の頃に描いていたものが原案だという。 歴史が大好きで、学校の図書館で歴史書や歴史漫画を読んでは家に帰ってノートに架空の歴史年表を描いていました。友達と見せ合いっこしたり交換して遊んでいましたが、だんだんとみんなサッカーや野球、勉強などほかのことに興味を持ちだし、この遊びは黒歴史扱いとなってしまった。自分もそんな周りに合わせようと、架空の歴史ノートはすべて処分してしまいました」
それから十数年後、美大に進学した設楽さんはふいにこのノートの存在を思い出し、再びノートを描き始めた。その後、美術館の企画展で展示したところ、まさかの大反響。「多くの人が僕と同じようにノートを描いていて、それが共感を呼んだようです」 このノートは「分裂大戦編」のほか、「分裂大戦後の帝国の解体と軍事裁判の歴史」「世界分裂後の歴史」「新しい勢力の台頭の歴史」「モンゴル帝国をモチーフにした騎馬民族の歴史」「アネッサンスと呼ばれる芸術運動の歴史」「中華文明をモチーフにした帝国の栄華の歴史」「サムライの国の歴史」など10冊がある。また、「架空の歴史ノート」の一時代の出来事を漫画化した「漫画ノート」なるものも3冊あるそうだ。
「“小中学生が妄想してノートに夢中になって描く”というテーマがあるので、なるべくうまく描かないようにしています。それに、ノートを描いていると、当時の自分が乗り移ってくるというのもありますね。もともと美大でも絵がうまいほうではなかったというのもありますが……」 今回の大反響ぶりに「こうなるとは思いもしなかった」という設楽さんだが、なぜ、Kindleで出版しようと思ったのだろうか? 「1年ほど前から電子書籍に興味を持ち、電子書籍講座を受けたり、5つくらい電子書籍配信プラットフォームを渡り歩き配信を試みたのですが、自分の画像編集技術の未熟さと電子書籍の黎明期ということもありノウハウ本も少なく、詳しい知人もいなかったので失敗を繰り返していました。今年に入り、配信できそうなのはKindleしかないと思い、独学で勉強し直して配信までたどり着きました」 このノート以外にも、設楽さんの作品にはやはり中二病的な要素が出ているそうだが、今後の展望についてこう語る。 「『架空の歴史ノート』は、現在並行して描いているのが3冊あります。『漫画ノート』も含め、アマゾンで少しずつ発表していきたいですね。また、紙での出版も夢です。いつかノートと絵画、彫刻作品を合わせて展示した“大帝国展”をやってみたいです。あくまで妄想ですけど……」 利便性だけでなく、これまでの紙メディアでは考えられないような自由な発想で作品が発表できるのも電子書籍の魅力。今後も「架空の歴史ノート」のようなユニークな作品が登場することを期待したい。 (取材・文=編集部) ●設楽陸WEB <http://wwwbakudanrobocom.blogspot.jp/> ●「架空の歴史ノート」 <http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00CP7Y9IK/>




