8月26~27日に放送される『24時間テレビ 愛は世界を救う』(日本テレビ系)。今年も障害者や難病患者などのチャレンジ企画が行われるが、近年、同番組における障害者への演出に対し「感動ポルノ(健常者に勇気や希望を与えるための道具)ではないか?」という声も寄せられている。昨年放送された裏番組『バリバラ』(NHK Eテレ)では「検証!『障害者×感動』の方程式」がテーマに掲げられ、本家を「感動ポルノ」と皮肉に扱った内容が大きな話題を呼んだ。はたして『24時間テレビ』は「感動ポルノ」なのだろうか? 6月にバニラ・エア搭乗拒否騒動で話題になった「バリアフリー研究所」代表の木島英登氏に、同番組の障害者の取り上げ方について聞いた。
■“募金する人が正しい”とされる、押しつけ感のある雰囲気が好きでない
ーーご自身も過去のけがで下半身不随になり、車いすで生活する障害者のおひとりですが、『24時間テレビ』はご覧になりますか?
木島英登氏(以下、木島) 自分が障害を持つ前から、『24時間テレビ』は見ていません。もともと、ファンタジーよりリアリティーが好きなので、『24時間テレビ』のように作られた演出で涙を誘うものよりも、リアリティーあるドキュメンタリー番組のほうが好きですね。
ーー『24時間テレビ』のような番組を放送することについて、どう思いますか?
木島 見る人がいるから番組が放送されていると思うんですが、個人的には「皆、なぜ見るのかな?」という思いです。私も、たまたまテレビをつけたら『24時間テレビ』が放送されていて、見たことはあるのですが、どうも心地悪いというか……リアリティーがないんですよね。私が、怪我で車いすの生活になったのは高校3年生のときでした。当時は「もしかしたら、『アルプスの少女ハイジ』のクララのように、奇跡が起きて歩けるようになるんじゃないか」と考えたこともありましたが、そんな奇跡は絶対にありえない。リハビリすれば歩けるようになる病気もあるんでしょうけれど、私のように脊髄損傷で下半身不随になった場合、歩くことは絶対に不可能なんです。
『24時間テレビ』も視聴者からしたら、「かわいそうな人が頑張るストーリー」がわかりやすいから、受けているのかもしれませんね。事実、視聴率も高いから放送しているんでしょうけど、個人的には残念という思いはあります。また、募金もあまり好きではないです。アフリカやアジアで、募金がひどい使われ方をしているのをたくさん見ています。募金しても政治家が半分持っていったりとか、寄付した洋服が流れ流れて露店で売られているとか、使われ方を末端まで管理するのが難しいんですね。とはいえ、寄付自体を全否定しているわけではなく、“募金する人が正しい”とされる、押しつけ感のある雰囲気があまり好きではないです。
ーー近年ますます批判が高まっているにもかかわらず、番組を毎年放送することをどう思いますか?
木島 批判が高まっているといっても、テレビを見ている人たちは、批判されていることすら知らないかもしれません。確かにネット上では批判されているかもしれませんが、今の世の中、テレビを見ているほとんどが高齢の方ばかりで、ネットを見る人たちはテレビを見ていないのでは、と思います。また、『24時間テレビ』に限らず、ネットの評価って基本批判が多いじゃないですか。良い評価ってあまり書かれないので、一概に批判が高まっているとも言い切れません。ただ、障害当事者の中では、あまり評判がよくない印象はあります。
ーーなぜ評判がよくないのですか?
木島 毎年放送される内容は、チャリティーがメインですよね。障害者運動は、世界的にチャリティー(慈善事業)からオポチュニティー(機会平等)へという流れなのに、いつまでもチャリティーをやっているのは時代遅れなのでは、とも感じます。たとえば電車の障害者割引制度とか、そういう割引があるから、(特別扱いされて)障害者の機会平等が進まない。完全な交通バリアフリーが達成されない。もっと障害者に対して普通に接して、社会参画を促せばいいのに、と思います。とはいえ『24時間テレビ』も、障害のある出演者が番組に出ることによって、やりたいことに挑戦できるというメリットはあります。番組だから特別に許可が下りたり、金銭面や人的な周りのサポートがついたりするからです。ただ単純に、やりたいことに挑戦しているだけなのかもしれないのに、取り上げ方が感動ストーリーになるのは、さすがに出演者もわかっていることでしょう。お涙頂戴の番組と感じますが、年に一度ですし、別にいいのではないでしょうか。ちなみに、私のところへ出演依頼が来たことはありません(笑)。
ーー「感動ポルノ」と言われるものについて、どう考えていますか?
木島 うまく翻訳した、よく言ってくれた、という気持ちです。個人的には感動を煽る番組や映画は好きじゃありません。その感動ものに、障害者が使われるのは、しょうがないのかもしれません。だからといって止められるものでもないので、もっとほかの取り上げ方が増えたらいいなとは思います。最近は、パラリンピックの選手がメディアに出ることが増えましたが、重度な障害を持っていながら企業で働いている人や、結婚して家庭を守っている人、お金もうけで成功した人、さまざまな形で社会参画している人など、スポーツ以外の活動についても取り上げてほしいと思います。就労という部分が、生活の基盤として、最も大切な部分ですから。
ーー『24時間テレビ』の裏番組『バリバラ』は、ご覧になりますか?
木島 見ることもありますが、録画してまでは見ていません。先ほどお話しした「障害者の感動以外の取り上げ方」は、『バリバラ』やEテレが、多少なりともその役割を果たしています。ただ、やはりプラスの良いところばかりが放送されることが多いので、現実的なマイナス部分、社会の闇の部分も放送してほしいと思います。マイナス面をテレビで放送しても面白くないのかもしれませんが、実際は悲惨だったり苦労する話、差別を受けたりする場面もたくさんあるので、そういう部分も取り上げて、社会が変わるキッカケ、考えるキッカケを作ってほしいですね。
ーー木島さんといえば、6月に格安航空会社「バニラ・エア」の旅客機への搭乗を拒否され、自力でタラップをよじ登って乗り込んだという、一連の騒動が印象に残っていますが、また同じようなことが起きたそうですね。
木島 このインタビューの直前に、中国の大連に1週間ほど出張していました。関西空港で、行きの飛行機に危うく乗れなくなりそうになりました。「(車椅子利用者であると)48時間前までに事前連絡を行わなかった」のが理由です。利用したのはエアチャイナ(中国国際航空)でしたが、過去に4~5回は搭乗したことがあり、いずれも事前連絡はしなくてもスムーズに乗れていたので、驚きました。翌日の便に変更してほしいと頼みました。バニラ・エアの件があったばかりなのに、「また問題提起しないといけないのか、再炎上してしまうかな」と考えていると、出発25分前くらいに「手伝いは不要です」という文書に署名することで、どうにか乗ることができました。内部でも結構、揉めていたみたいですね。
ーーバニラ・エアの騒動では、事前連絡をしていなかったことへの批判が多かったですね。
木島 そうなんです。飛行機に乗れなくなりそうな現実を目の当たりにして、「私自身も考えを改めなきゃいけないのか」と自問しました。どうして私が事前連絡をしないかというと、大したことを頼まないからです。機内の通路を通る、小さな車いすを用意してもらうのみ。それがなければ、這って乗ります。車いすもバッテリーなどなく、8キロぐらいの軽いもの。中国国際航空から、「復路の便には、機内用車いすを積むよう手配した」と連絡をいただきましたが、実際には積まれてませんでした。小さな車いすひとつ積むことだけに事前連絡が必要というのは、よく理解できません。病人を運ぶのにも使えるから、ほかの航空会社のように標準で積み込んでおいてほしいと思います。
ーー木島さんは、なぜ事前連絡をしないことにこだわるのでしょうか?
木島 「事前連絡がないことを理由に、歩けない人の搭乗を拒否すること」は、私は差別だと考えます。そもそも外国で飛行機に乗るときなど、言葉が通じないので、事前連絡が無理なことがあります。飛行機がキャンセルや災害で飛ばなくなって、急に違う便に乗り換えることもあります。世界の主要な航空会社の中には、医療機器や分解が必要な電動車いす以外のときは、事前連絡が必要ないと明言しているところもあります。24年間ずっと、事前連絡なしに飛行機に乗ってきましたが、考え方を改めないといけないのか、一度、国土交通省に問い合わせてみようと思っています。ところで、出張で訪れた中国はバリアフリーが遅れていましたが、急速に改善の兆しが見られ、中国新幹線も車いす利用者がネット予約で簡単に乗れるようになっていました。いまだに電話で長々と手続きをさせられた上で、車いす席を事前予約しないといけない、日本の新幹線より優れていましたね。
(カワノアユミ)