
撮影=後藤秀二
鹿島アントラーズが奇跡の下克上を果たし、大相撲では稀勢の里が初優勝、そして綱取り。次のNHK朝ドラは『ひよっこ』……キテる、いま確実に茨城がキテます!! このコンビは茨城勢の波に乗ることができるか? 2016年「M-1」決勝進出、心地よい茨城訛り、そして懐かしくてどこか新しいどつき漫才で鮮烈な印象を残した、カミナリである。ツッコミのたくみは言う。「僕たちの漫才、4分間に6発しかボケがない、まるでリボルバーのような漫才」。お笑い界に風穴、あけちゃう?
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――カミナリさんは養成所には行かずに、グレープカンパニーに入ったんですよね。何か理由があったんですか?
たくみ いくつか履歴書を送った事務所の中で、連絡くれたのがグレープカンパニーでした。いま思えば、事務所の人、見る目ありますね(笑)。
まなぶ 養成所に行かなかったのは……そうですね、とがりじゃないですけど、教えてもらうもんじゃねぇな、みたいに思ってました。でも結局、同じ事務所のNSC出た先輩に、養成所で習うこと全部教えてもらいました。
たくみ 無料でNSCのノウハウを得たという(笑)。
――永野イズム感じますね~。お笑いの世界には、どちらから誘ったんですか?
たくみ 僕です。
まなぶ 最初、中2のときにたくみくんが声をかけてくれて、でもそのときは僕「やらない」って断ったんですよ。で、高2のときにもう一回「やろう」って誘ってくれたから、「僕も、やりたいって思ってたよ」と。中2のときは、ちょうどホリエモンがはやっていたので、成り金になりたかったんですよね。
たくみ 六本木に住んで、社長になりたかったんだよね。
まなぶ テレビでよくやってたので。でも、高2のときは、ホリエモンブームも去った後だったので。
たくみ ホリエモンの代わりに、お笑い芸人がよくテレビに出るようになったんだよね。まなぶくん、テレビっ子だったので。
まなぶ そんなことないよ~。
――一回断られたのにもう一度声をかけるというのは、やはり相方はまなぶさんしかいないと。
たくみ そうですね。一番すごい人だと思ったので。
まなぶ 一番面白かったみたいです。僕が。
たくみ 村一番の笑わせ者ですね。高校のときもそういうやつはいたんですけど、やっぱりバイブスっていうか、笑いのツボが一緒の人は、まなぶくんくらいしかいなかったので。
――バイブス……また永野イズムが。
まなぶ たくみくんはしゃべりで笑い取るタイプで、僕は顔芸でした、ずっと。急に鼻水出したりとか、顔を振動させたりとか。
――顔を振動……?
たくみ フルフル~ってやるだけなんですけど。誰でもできます(笑)。
まなぶ ただ、それをやる勇気があったのは、僕だけです。
たくみ いきなりやるから面白いんですよ。変なタイミングでやるから「なんで今それやるの?」って。
――ややもすると、周囲から心配されてしまう子かもしれませんね……。
たくみ 本気で心配されてた時期もありました。僕らは、わざとだってわかってたんだけど。
まなぶ それを心配されないようにコントロールするのが相方で。

竹内まなぶ
茨城には、漫才の文化がない!?
――幼なじみコンビだからこそ、気をつけていることはありますか?
まなぶ あの、家族みたいなケンカをしちゃうときがありますね。爪切っててティッシュ敷いてねぇとか。
――注意するのは、どちらなんですか?
たくみ まなぶくんが僕に怒るほうが多い。
まなぶ ティッシュ敷かなかったのはたくみくんがキレてきたんですけど、僕はコンプライアンス担当なんで、カミナリの。言葉遣いとかは、注意します。
――たとえば……?
たくみ テレビで絶対言っちゃいけない言葉ってあるじゃないですか。それが時々わかんなくなっちゃって、大きい声でワーッて言っちゃうんですよ。そうすると、まなぶくんが「それはダメだよ」と。
まなぶ あと、たくみくんは盛り上がっちゃうと、先輩の楽屋に挨拶に行って、先輩はそろそろ帰ってくれの空気出してるのに、1エピソード話しちゃったりするんです。そんなときは、後から「一言でいいんだよ」と。
――まるで親(笑)。ああいうツッコミスタイルだと、周囲に「気性の激しい人」みたいなイメージを持たれたりしますか?
たくみ どうなんだろう?
まなぶ でも、みんな楽屋とかでしゃべって、5分くらいで「あぁ、いい子だね~」って言ってくれます。
たくみ いい子だね~(笑)。
――そもそも、あの激しいツッコミは、どういうきっかけで誕生したのですか?
たくみ まだコントをやっていた頃、地元茨城で単独ライブをやったんです。それが思った以上にウケなくて。地元だし、ホームだし、これくらいはイケんだろうっていう予想をはるかに下回っていたんで、悔しくてアドリブで叩いたんですよ、まなぶくんを。そしたら、すごいウケた。それから、叩く要素を入れるようになりました。
まなぶ 小さい子から80オーバーまで、幅広い客層がいたところでウケたから。
たくみ おばあちゃんたちも「あ~いや~」って(笑)。ただコント中心だったんで、限界を迎えまして。
――確かに、コントだと難しいかも。
たくみ ちょうど「M-1」グランプリがあったんで、記念受験みたいな感じで漫才作ったら、意外としっくりきたというか。いつも賞レースでは1回戦落ちだったのが、「M-1」ではウソでも2回戦まで行けたので。それで1年間漫才をやり、去年決勝に行けた……という流れです。
――すごい、シンデレラストーリー!
たくみ 勝手に苦手意識を持ってたんですよね。ずっとまなぶくんが言ってたのは「茨城には漫才って文化ねぇから、コントのほうがいい」って。まぁコントの文化もないんですけど(笑)。
まなぶ 漫才は、すごいもんだと思ってたんですよ。
たくみ 自由が利くのはコントだろうと思ってたけど、意外とコントのほうが縛りあって。コンビニの設定でやったら、店員さんがお客さんであるまなぶくんの頭叩くとか、訳わかんなくなっちゃう。漫才だったら、個人が個人叩くだけなんで。
まなぶ どつきで考えると、ルーツがあるんですよ。中1のときにたくみくん、「まなぶをどうしたら面白くなるか」悩みすぎて、俺の頭にいきなり机投げてきたことがあって。
――え……わからない……(笑)。
まなぶ それが、たくみからの初めてのどつきでしたね。
たくみ そうですね。まなぶくんも「痛ぇ」より先に、びっくりしてました。

石田たくみ
「M-1」に出て、あらためてサンドウィッチマンのすごさがわかった
――今のお話を聞く限り、学校側に心配されるのは、まなぶさんじゃなくて、たくみさんですね(笑)。でも、当時から「まなぶさんを面白くする方法」を、机ぶん投げるほど真剣に考えていたと。
たくみ まなぶくんが僕を注意すると、周りが笑うんですよ。だから、わざと怒られるようなことをします。まなぶくんが怒るように。ネタだけじゃなくて、普段の生活でも。そうすると、空気が柔らかくなるんですよ。だから、思ってもないようなことを言ったりする。
まなぶ 営業でも、叩くところより「ダメだよ」のところのほうがウケたりしますね。
――今「M-1」パワーを感じてます?
たくみ そうですね。「M-1」ってすごいなって、実感します。
まなぶ 僕らがすごいわけじゃない。「M-1」がすごいんです。
――(笑)。生活は変わりましたか?
たくみ 今はアルバイトをお休みしています。バイトに行く必要がなくなったわけではなく、厳密にいうと、バイトに行く時間がなくなった。籍は置いてあるんですけど。
――おお! まなぶさんはいかがですか?
まなぶ 酔っ払いの人に「カミナリだ!!」って、声をかけられることが多くなりましたね。僕、姉と仲いいんですけど、姉と新宿の歌舞伎町歩いてたら「あ、カミナリだ!」って。「あぁ、女と歩いてるって思われたかね~」って話してて、その翌日は妹と遊んでたんですよ、新宿西口で。そしたらまた「カミナリだ!!」って言われて。俺、女取っ換え引っ換えしてると思われたら嫌だな~。
――えっと、まず、そんな頻繁に、お姉さんや妹さんと遊ぶんですね。
たくみ そもそも(笑)。
まなぶ 仲いいんですよ。姉、僕、妹で。
たくみ 時々、女の子っぽいところが出るんですよ。内股だし。
まなぶ 味の好みも合うし、意見も合うし。一緒にレストラン行っても「○○のクリームチーズ」みたいなメニューは絶対頼むし。
――やっぱり、女子はチーズ好きですよね~。しかし、28歳で「M-1」決勝は、早いほうではないでしょうか?
たくみ いま永野さんまで「若手」ってなってるから(笑)。ただ、ダウンタウンさんとかウッチャンナンチャンさんとか……誰と比べてんだって話ですけど、皆さんは22、23歳で、もうテレビ出てるんですよ。だから周りの人に「早いね」って言われても、自分たち的には遅いと思ってます。あと、「M-1」に出て、あらためて(事務所の先輩の)サンドウィッチマンさんのすごさがわかった。
まなぶ 優勝って、すごい。
たくみ 富澤さんには「いくらオマエらが優勝したとしても、サンドウィッチマンが敗者復活から優勝したあの感動は超えられないから、安心して行ってこい」と言われました。
――優しい……。
まなぶ 2016年の年が明けたときは「今年も永野さんたちと酒飲めて、1年間楽しく過ごせたらいいな」くらいしか思ってなかったんですよ。それが、夏くらいに爆笑問題の太田さんが俺たちのこと知ってるって聞いたり……すべてが急で。
たくみ 爆笑問題さんのラジオでネタやらせてもらったんですけど、あの時点で(顔が見えない)ラジオでも結構面白いかも……っていうのがわかったから、逆に叩く必要ないんじゃね? って(笑)。(太田さんに)「話が面白い」って言ってもらえたのが、うれしかったですね。

ネタ作りへのこだわり
――カミナリさんの漫才は訛りとどつきがフューチャーされがちですが、実はネタが本当によくできてるなぁと。
たくみ 僕が大まかなテーマを出して、まなぶくんと相談して2人で作ってます。
まなぶ 僕が「これはいい」「これはやりたくない」って言いながら、完成させていく感じです。「これは言いたくない」とか「育ちじゃない」とか。
――育ちじゃない(笑)。
まなぶ 「そういう人間じゃない」っていうのは、言いますね。
たくみ 人の悪口言うようなやつは嫌がりますね。
まなぶ 振りでも嫌ですね。あと、ちょっと胸ぐらつかむとかもダメ。いくらそれがウケようが、ダメ!
たくみ 「じゃあ、ほかなんかあんのか!?」って言っても思いつかなくて、ケンカになる(笑)。
まなぶ たくみくん、去年頭のキレがすごかったんですよ。
たくみ 漫才にしてから、考えやすくなった。まなぶくんが間違いやすいようなことをテーマにね。
――まなぶ研究家としては、相当なキャリアをお持ちですから。
たくみ そうですね。いま言ったようなところを見極めないと、本当に全部NG出してくる(笑)。
――以前、日刊サイゾーでは永野さんもインタビューさせてもらったんですよ(
参照記事)。ブレーク直後くらいに。
まなぶ 僕ら永野さん大好きで、年末年始地元に帰ると、友達と集まるじゃないですか。それで「なんか面白いことやろう」ってなると、すぐ永野さんのネタをパクってた。
たくみ まだその頃、永野さんテレビ出てなかったから。その後、ブレークして、すぐバレたけど(笑)。でも本当、道作ってくれたというか、すごい、気持ちの面の話をしてくださる方なんですね、理屈じゃなくて。「笑顔で頑張れ」とか「大きい声出せ」とか。永野さんご自身がブレークして、それが正しいということを証明してくれた。
まなぶ 自分たちが面白いと思っている人がブレークすると「僕らの面白いって思うものは間違ってない」って思えます。
たくみ サンドさんもそうですけど、永野さんも、売れてるのにずっと真面目にネタ作ってるんですよ。「ブレたくないから」って。「ネタ作らなくなると、感覚がわからなくなる。つまらなくなる」って。ホント、すごいなって思います。
――2016年は「M-1」で顔と名前を売って、さて、2017年はどんな目標を?
たくみ トーク番組に出たいです。もともと漫才師というよりは、タレントを目指していましたので。もっと内面とか仲の良さとかを知ってもらいたいです。
まなぶ あと、2人で車イジったりしたいよね。
たくみ ……それはもっと先でしょ?
――所さん的な(笑)。
たくみ でも、正直、世田谷ベースとか憧れますよ……。俺がホースで水まいてて、後輩がやってきたら「おお!」って水かけるとか。
まなぶ 俺は車の下にもぐってて、出てくるたびに様子が違ってる。「車の下七変化」。
――それ、絶対所さんやらないですよね……。
(取材・文=西澤千央)
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