「このアルバムは『はだしのゲン』の第1巻のようなもの」ソウルセット・渡辺俊美が歌う“県内の人”の歌

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 結成20年を迎えたTOKYO No.1 SOULSETのギター・ボーカルであり、ソロユニットTHE ZOOT16としても活躍する渡辺俊美は、震災以降、脱原発の姿勢を強く表明している。昨年、箭内道彦やサンボマスター山口隆らとともに「猪苗代湖ズ」として紅白にも出場した彼の故郷は、福島県富岡町。福島第一原発の半径20km圏内に位置し、現在も実家には思うように立ち入ることができない。  今回、20年以上にわたるキャリアの中で初となるソロアルバム『としみはとしみ』(felicity)をリリースした彼に、日刊サイゾーではインタビューを敢行。最小限の音で作られたポップなアルバムは、アーティストとしての熟練を感じさせる仕上がりとなっている。もちろん、このアルバムの制作にも、福島出身というアイデンティティは深く関わっているようだ。 ――現在、富岡町のご実家は、どのような状況になっているのでしょうか? 渡辺俊美(以下、渡辺) 一時帰宅した姉によれば、草も伸びきって、家にも虫がわいてしまった。野生動物が入った跡もあるそうです。もう一度家を建て直すのも無理かもしれないですね。 ――やはり、復興は程遠い状況なんですね……。今回リリースした『としみはとしみ』では、福島で育ったアイデンティティが深く関わっているように感じました。今、あえてソロ作品をリリースする意義は、俊美さんにとっても大きなものなのでしょうか? 渡辺 大きいですね。3年くらい前から、自分とちゃんと向き合った作品を作りたいと思っていたんです。そのために、ZOOT16でもSOULSETでもなくソロアルバムという形になりました。SOULSETもZOOT16も、僕の中では“東京の音楽”という雰囲気。けれども、渡辺俊美は福島で育った人間です。その過去を見つめ直して、今故郷をどう思っているのか、これから自分がどういう選択をしてくのか、ということを歌にしたいと思ったんです。 ――“選択”というのは、どういうものでしょうか? 渡辺 原発に反対するのも選択だし、推進するのも選択です。住む場所にしても、福島でいいのか、別の場所のほうがいいのか……。3月11日以降、誰もがいろいろな選択をしなければならなくなりました。僕は福島第一原発の20km圏内で生まれ育ち、音楽もやってきたし、洋服屋もやってきた。そんな自分がこの先どんな選択をしていくのか、自分でも興味があるんです。 ――今作の落ち着いたトーンには、俊美さんの等身大の姿が描かれているように感じました。一方で、今の日本の状況を考えれば、怒りに満ちたレベル・ミュージック(反抗の音楽)になる可能性もあったのではないかと思います。 渡辺 七尾旅人くんの「圏内の歌」や、斉藤和義くんの「ずっとウソだった」、フライングダッチマンの「Human ERROR」、この3人の曲が僕の怒りの気持ちを代弁してくれています。それ以上のことは、僕が歌うことではないんじゃないかと思いました。そのような怒りは、“県外の人”が歌うことなのではないかと。 IMG_6249.jpg  僕は被害者でもあるんだけど、ずっと原発の近くに住んできたし、なんらかの形で恩恵は受けきた加害者としての側面もあります。そのような“県内の人”が、どのように歌を歌うべきかを考えていました。今作で「僕はここにいる」という歌が一番最初にできたんですが、その中に「誰のせいでもない」という歌詞があります。国のせいでも、東電のせいでも、自分のせいでもない。誰かをヒステリックに責めるのではなく、自分の選択は自分で決めるということを歌っています。人々がいがみ合って、あたかも戦争のような状態にならないための、僕なりのレベル・ミュージックであり、“県内の人”の歌なんです。 ――加害者でもあり被害者でもあるというのは、まさに「当事者」である福島県人の複雑な感情ですね。 渡辺 猪苗代湖ズでは、どんな応援ソングにも負けない歌を出したという自信があります。次に何を歌おうかと考えたら、「これは福島だけの問題じゃない、日本の問題だよ」ということを言わなければならないと思いました。 ――1986年に起こったチェルノブイリ事故の時は、どういったお気持ちだったんでしょうか? 当時も、何か音楽で表現しようと思っていたんでしょうか? 渡辺 当時は20歳で、東京で洋服屋を始めた頃でした。「チェルノブイリ」を歌っていたブルーハーツも「サマータイムブルース」を歌っていた忌野清志郎さんも大好きだったんですが、原発のすぐ近くに住んでいた僕はこういう歌を歌えないと思っていましたね。同級生にも原発関連で仕事をしている人がたくさんいました。原発を否定することは、その人たちの仕事も否定することにもなってしまいますからね。 ――今回の事故でもやはり、原発関連で仕事をする同級生や周囲の人のことは考えましたか? 渡辺 やっぱり、最初はそういったことも考えました。けれども、原発を廃しても雇用はできるのではないかと思うんです。僕らの世代は贅沢をしすぎてしまった。だから、僕らが社会の状況を変えなきゃならないんです。それは原発だけではなく、産業廃棄物の問題や米軍基地の問題も同じことです。 ■故郷の人々を前に、歌うということ ――震災から1週間後、ギターを持って避難所を訪れたものの、歌うことができなかったそうですね。 渡辺 テレビの中で歌っていた人はいましたが、避難所では「上を向いて歩こう」みたいなことはとても歌えない。「上なんてどこにもないじゃん」という状況でした。歌うことよりも、嘆きや叫びを聞いてあげることのほうが大切なことでした。だから、震災直後に天皇陛下がとった行動は素晴らしいと思いましたね。被災者の話に耳を傾けてあげるという姿勢は、当時いちばん求められていることだったんです。 IMG_6282.jpg ――そういった経験を通して、自らの歌うことに対する変化はありますか? 渡辺 歌っていると、涙が出るようになりました。悲しみ、憎しみ、うれしさ、いろいろな感情が出てくるんです。「伝えよう」とか「どう見せよう」ということではなく、「歌っていいな」と思いながら、情景を感じながら歌えるようになりましたね。 ――アーティストとしては、これ以上ない経験ですね。 渡辺 ありませんね。福島の20km圏内に生まれ育っていなければこういった感覚は得られなかったと思います。エンタテインメントの音楽活動やってなくてよかったなって、本当に思いますね(笑)。 ――7月28日には、帰村宣言が出されたばかりの川内村でのライブを予定されています。 渡辺 帰村宣言を出したといっても、村長ですら川内村に人が戻ってこないというのはわかっているんです。でも、だからこそ、現場で言葉を残さなければいけない。そういった思いから、ライブを行います。無責任かもしれないけれど、地元の人が声を上げられないんだったら、僕が代わりに歌っていきたいなと思っているんです。まだ人が住むことは難しいのかもしれませんが、イベントは毎年でも行っていきたいですね。 ――再び福島に帰りたいという思いはありますか? IMG_6387.jpg 渡辺 実は2年くらい前から、子どもと一緒に福島に移住しようと思っていたんです。親父が川内村で百姓をやっていたので、僕も農業のことを独学で勉強していました。以前から東京でレベル・ミュージックを歌うということに疑問を感じていたんですね。だから、地元に根ざして音楽活動をしようと思っていたんです。 ――そんな夢も、震災によって奪われてしまった。 渡辺 今作に収録した「安らぎの場所」で歌っているのは、そんな場所のことです。現実的には難しいかもしれませんが、まだあきらめたわけではありません。それが福島になるのか、それともどこか別の場所になるのかはわかりませんが、希望は持ち続けていたいと思っています。 ――いま福島について、どんな思いを持っていますか? 渡辺 「FUKUSHIMA」と書かれることを地元の人はあまりよく思わないのですが、新しい日本のモチーフとなる場所であることは間違いないでしょうね。原発の問題はずっと続いていく問題だと思っています。僕は、このアルバムは『はだしのゲン』の第1巻のようなものだと思っているんです。この先も、2巻、3巻と、死ぬまで終わることなく制作を続けていくでしょうね。 (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]/撮影=後藤秀二) ●わたなべ・としみ 1966年12月6日生まれ、福島県出身。1990年に結成したTOKYO No.1 SOUL SETのシンガー、ギターとしてデビュー。2000年以降TOKYO No.1 SOUL SETとしての活動は休止となり、ソロユニットTHE ZOOT16を始動させるほか、2010年には福島県出身の松田晋二(THE BACK HORN)、山口隆(サンボマスター)、箭内道彦(風とロック)と猪苗代湖ズを結成。「I love you & I need you ふくしま」で紅白歌合戦出場を果たす。

「ガールズトークって、やっぱり楽しい」水島努監督新作は、まさかのほのぼの系アニメ!?

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(C)久米田康治・ヤス・講談社/女子落語協会
 『侵略!イカ娘』『よんでますよ、アザゼルさん。』『BLOOD-C』『Another』などなど、話題のアニメを立て続けに発表し続ける水島努監督。その最新作『じょしらく』が、7月よりTBS・MBS系列で放送スタートした。  寄席の楽屋を舞台に、女子落語家たちが些細なネタからどんどんトークを展開していく会話劇を描く本作だが、5月某日、「5月も終わりだというのに、まだ取材来ず。このままオンエア突入確定かー(゜゜;)」と水島監督自らツイート。そのアニメマスコミからのあまりの注目されなさぶりに、アニメクラスタは騒然となった。「ならば!」ということで、さっそく日刊サイゾーがコンタクトを開始。放送開始を目前に控えた6月某日、水島監督にインタビューを敢行した。  『ジャングルはいつもハレのちグゥ』『撲殺天使ドクロちゃん』『ムダヅモ無き改革』のような、カッ飛んだギャグが見られるのだろうか。それとも『侵略!?イカ娘』『ケメコデラックス!』などで見せた、奇妙キテレツなアクションが今回も飛び出すのか? はたまた『BLOOD-C』『Another』のような、血みどろ残虐描写が繰り広げられるのか!? エッジな作品を多く生み出してきた水島監督の新作に期待が募る一方だが、そんな取材陣を待っていたのは「萌えアニメを作っている」という予想外のコメントだった! ■水島努、「萌え」を考える ──今回、取材させていただこうと思ったきっかけは、監督の「まだ取材が来ない」というツイートだったのですが、その後、取材はありましたか? jyoshi006.jpg 「はい、何件か取材していただきました。言ってみるもんですね(笑)」 ──なかなかない展開ですよね(笑)。そんな監督が手掛けられる新作アニメ『じょしらく』ですが、本作は「萌えアニメ」……ですよね。 「そうなんです。これは釣りじゃなくて、本当にそのつもりで作っています。やっぱりお客さんにDVDを買ってもらいたいので、過激なことに走り過ぎずに、かわいい女の子を描くということをベースに作ろうと考えています。それで売れるのかというと、分かりませんけど」 ──以前、取材させていただいた際に、水島監督が「萌えが分からない」とおっしゃっていたことをよく覚えているのですが、そんな監督が「萌えアニメを作る」と公言されていることに驚いています。 「私が“萌えアニメ”を作るってウソ臭く感じました? ただ、いまだに“萌え”はよく分かってないんです(笑)。でも、分からないと言っていても始まらないので、とりあえず難しく考えずに、普通の女の子の会話をきちんと描こうと思っています。個人的に“エロ”と“萌え”は絶対に別物で、“愛おしいな”と思えることが“萌え”かなと考えています。そうなると動物とかも当てはまるので、厳密には違うと思うんですが……。そんなことを考えながら作っている最中です(笑)」 ■水島努的アニメ論とは? ──水島監督作品というと、物語の中で突如出現するトリッキーな動き(『ケメコデラックス!』プリップリン体操や、『侵略!?イカ娘』レディオ体操の振り付けなど)や、過剰すぎるバイオレンス描写(『BLOOD-C』クライマックスや『Another』の殺人シーン、『よんでますよ、アザゼルさん。』など)がしばしばアニメファンの間で話題になりますが、『じょしらく』ではどんな動きで我々を驚かせてくれるのか気になります。 jyoshi005.jpg 「やっぱり絵を動かすことって楽しいんですよね(笑)。ただ『じょしらく』に関しては、そこまでトリッキーな動きはないと思います。もしかしたら、今までの中で一番まったりした作品になるかもしれない」 ──室内での会話劇を描く『じょしらく』ですが、それをどのようにアニメとして描くのでしょうか。 「まず、本編を3つのパートに分けることにしました。AパートとCパートは原作通り室内劇にして、Bパートには外に出るアニメオリジナルの話を入れることにしました。ただ、そこで動きがあるかというと逆で、AパートとCパートは会話が多いので見てる側も疲れちゃうと思うので、Bパートは箸休めみたいなポジションでゆったりと風景を描く感じになっています。そのようにした理由は、単純にキャラクターを外に出したいというのと、私服が見たかったからです」 ──原作は『さよなら絶望先生』などでも知られる久米田康治さんということで、かなり際どいネタも作中には盛り込まれていますが、アニメではどの程度再現されますか? 「そこはかなりバランスを取っていますね。私としてはなるべく忠実に原作を再現したいのですが、今回はテレビで放送する作品なので、やはり制限はあります。自分で責任を取れるんだったら全開でやりたいんですけどね(苦笑)。どこまでやれるのかな、という駆け引きをやっている最中ですね。スポーツでいうと、ぎりぎりルール違反でないラフプレーを探っている感じです。 jyoshi014.jpg  ただ、『じょしらく』では、できれば女性たちが話すほのぼのとしたところを楽しんでほしいと思います。そう言うとフリだろうと疑われると思うのですが、これは本心です(笑)。人によっては過激なものを私に期待されているみたいなんですが、それだけじゃ作品にならないと思うんですよね。まず“普通の女の子”っていう部分をきちんを描かないと、その上にどんなものを盛ったとしても心に響かないと思います。だから、基本を忘れちゃいけないと常に心がけています。小ネタを出していくのは自分も楽しいんですが、そちらにばかりを気を取られないように気をつけています」 ──では、水島監督が作品を作る上で、最も心がけていることはなんですか? 「一度方向性が決まったらブレないことですね。作り始めると、あれもこれもと欲が出ちゃうんですが、ベースはブレちゃいけないなと思います。仮に1話がものすごく評判が悪かったとしても、急に軌道修正せずに作り切らないといけないと思いますね。長丁場の作品ならともかく」 ──ここ最近、ウェブ上では「まとめサイト」に視聴者の評判や感想が編集されて、結果的にそこにまとめられたコメントが作品の評価に影響を与えてしまうことも多々あります。 「そうやって話題にしていただけることはありがたいと思います。インターネット上で私が何を一番気にしているかというと、褒められる、けなされるではなく、作品を気にしてくれているかどうかですから」 jyoshi010.jpg ■『じょしらく』の魅力はガールズトーク! ──視聴者には、どういうふうに『じょしらく』を見てもらいたいですか? 「一生懸命作ってはいるんですけど、だからといってかしこまって見る必要はまったくなくて、うすらぼんやりと見てほしいです。重いテーマもありませんし、そもそもストーリーもあるかどうか怪しい作品なので(笑)。乱暴な言い方ですが、アニメって、それでいいんじゃないかと思っています。とくにサイゾーさんの読者のような、アニメファン以外の方にも見ていただけるとうれしいですね。ガールズトークって、男性陣だけかもしれないけど、楽しいじゃないですか。そのガールズトーク要素をきちんと作っているつもりなので、そこを純粋に楽しんでほしいですね。その上で、もっともっと広がっていければいいなと思います」 jyoshi004.jpg ──広がる、というと。 「一つ一つの作品そのものというよりもアニメ市場が、ですね。アニメはもっと外側に広がる努力をしないといけないと個人的には思っていて、そのためにはいろんなジャンルがあっていいと考えています。『じょしらく』は萌えアニメとはいっても、王道の作品ではないのは間違いないと思います。だからこそ“こういう萌えもあるんだよ”とアニメファン以外の方にも知っていただいて、その結果、どんどんとアニメを気にしてくれる人の幅が広がっていくといいなと思います」 ──ちなみに監督の理想とするアニメとは、どんな作品ですか? 「そこまで真面目に考えてアニメを作ってないからなあ(笑)。理想はとくにありません。明日ご飯が食べられればいいなと日々思いながら、『仕事があるうちが花だよ』と常に自分に言い聞かせつつ、一生懸命こつこつと、難しいことを考えずにアニメを作っています」 (取材・文=有田シュン) ●『じょしらく』 MBS 毎週木曜26:25~放送中 TBS 毎週金曜26:25~放送中 CBC 7/12~ 毎週木曜27:05~放送 BS・TBS 7/14~ 毎週土曜24:30~放送 *放送日時は変更になることがあります。 <http://www.starchild.co.jp/special/joshiraku/

“映画祭監督”がド新人監督にインディーズ魂を伝授 処女作をめぐる熱きトーク60分一本勝負!

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小林政広監督(左)と鈴木太一監督。ふたりは“師弟関係”とは異なる、
Twitterを介した新しい関係性を築いている。
 通常、同業者がひとつのテーブルに就いても、腹を割って話し合うことは少ない。お互いにライバル同士だからだ。小林政広監督自身、「映画界はパイが限られているから、ライバルを育てるようなことは誰もしない」と話す。だが、この日の小林監督は違った。ガチでマジに熱い言葉をド新人監督に向けて贈った。小林監督はこれまでカンヌ映画祭に4度招待され、中でもイラク邦人人質事件を題材にした『バッシング』(05)はコンペ部門に選ばれている。また、佐世保市少女刺殺事件にインスパイアされた『愛の予感』(07)はロカルノ映画祭でグランプリを含む4冠を受賞。海外での評価が高い“映画祭監督”だ。対するド新人監督は、デビュー作『くそガキの告白』がテアトル新宿で公開中の鈴木太一監督。自主映画を撮り続けることで映画界をサバイブする小林監督の体験に基づく言葉の数々は、鈴木監督に限らず表現活動を目指す若者たちの胸に響くに違いない。 ──おふたりはTwitter上で知り合ったそうですね。 小林政広監督(以下、小林) そうです。この人(鈴木監督)は文章がうまいんです。ライターの文章は、すぐ分かる。ある程度書けるヤツかどうかは、Twitterを見れば分かりますよ。読ませる力があり、言葉の選び方がうまいんです。それで、けっこーTwitterでのやりとりをやったね。 小林政広監督(以下、鈴木) はい、直接お会いして話をしたのは昨年1度だけで、それまでずっとTwitterでやりとりしていました。2009年ぐらいからでしたね。映画を撮りたいけど撮れず、精神的に不安定になっている時に、ずいぶんとハッパを掛けていただきました。でも、小林監督がTwitterやっていたことに驚きましたし、「映画のことでフザけたことは呟けないな」と緊張もしました(笑)。 小林 ボクも20代、30代と映画が撮れずに悶々としている時期が長かった。テレビドラマやピンク映画の脚本を書いていたけど、シナリオライターとして認められれば認められたで、映画監督には成れないわけです。それで自分から「映画を撮る」と宣言したんだけど、それまで一緒に仕事をしていた周囲の人間はみんな引いちゃった。「撮りたいなら、撮れば」と。誰も協力してくれないし、応援もしてくれないわけですよ。誰かに背中を押して欲しいんだけど、誰も背中は押してくれない(苦笑)。なら、自分でやるしかない。ボクがデビューした頃は、フィルムで撮ると最低でも500万円、だいたい1,000万円かかった。でも、ボクはピンク映画の仕事もしていたので、35ミリフィルムを使って300万円くらいで撮る方法もある程度分かっていた。テレビドラマのディレクターに「キャスト1/3、スタッフ1/3、残り1/3」と予算の内訳も教わっていたしね。それに今はビデオ撮影がほとんど。もっと安くできる。だから、「グダグダ言わずに早くやれ!」とね(笑)。 鈴木 小林監督のその言葉は覚えています。Twitter上での発言だったんですが、明らかにオレに向けた言葉だなと分かりました。まだお会いしてない映画監督から、そんな言葉を投げ掛けられたので怖かった(笑)。でも、すごく身に染みた言葉でした。 小林 ボクのTwitterは若い人がよく見てくれているんだけど、実際に「映画を撮るぞ」と言う人は意外といないんです。それで、「やっちゃえ。やれば何とかなる」と。みんな背中を押してもらいたがっているんですよ。でも、映画界はパイが限られているから、わざわざライバルを育てるようなことは誰もやんないわけです。シナリオライターにしてもそう。ひとり増えれば、ひとり弾かれる世界ですから。狭き門です。昨年、映画製作のワークショップを受け持ったんだけど、映画の作り方って他人に教えてもらうもんじゃない。それでボクはいきなり1カットの映画を受講者全員に撮らせたんです。受講者の中には「映画の作り方を教えてもらえると思ったのに」とブーブー文句を言うヤツもいました。ボクは映画づくりでいちばん大切なこと、背中を押してあげるという行為をしたんだけどね(苦笑)。映画づくりって、協力者がたったひとりでもいればできるものなんです。いわば共犯者だね。ボクの場合は、それはプロデューサーではなく、役者だった。ボクのシナリオを役者が気に入ってくれたお陰で、ボクは映画を撮れた。共犯者は誰でもいいんです。でも、その誰かが、なかなかいない。 鈴木 そうですね、いませんね。「映画? 何をバカなことやってんだ」と言われてしまう。学生時代なら勢いで「やろうぜ!」みたいにできたけど、学校を卒業して30歳にもなると、そういう仲間がどんどんいなくなってしまう。「撮ればいいんだよ」と言ってくれる人がいなくなってしまいます。
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鈴木太一監督のデビュー作『くそガキの告白』。
映画監督志望のニート男(今野浩喜)が自分
だけのヒロイン(田代さやか)を見つけ、処女
作へと突っ走る。鈴木監督は借金で製作費を捻出
し、キャストの出演交渉も自分で進めた。
■ホテルの便せんに綴られたルコントからの手紙 ──小林監督、完成した『くそガキの告白』を観ての感想は? 小林 『くそガキの告白』のチラシにコメントを書いたけど、その通りですよ。あまり期待していなかった(笑)。撮影するというのは知っていたけど、いつまで経っても完成しないし、完成披露の試写もないから、「あぁ、ダメだったんだな。お蔵入りだな」と思っていた(笑)。完成させるのに、すごく時間が掛かったね? 鈴木 はい、撮影は4月に済んでいたんです。でも、悩みながら編集作業を進めている間に、小林監督は『ギリギリの女たち』を8月に撮影して、10月の東京国際映画祭でもう上映していたので驚きました。『くそガキの告白』は「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」の締め切りぎりぎりの11月に完成したんです。完成はしたけど、観たのはプロデューサーと編集者ぐらい。DVDを小林監督のご自宅に送っていいものか、ずいぶん迷いました(苦笑)。試写会の開き方も分からず、誰を呼べばいいのか見当がつかないまま、公開直前に2度やっただけですね。2度とも全然、集めることができませんでした。 ──社交辞令ぬきで、『くそガキの告白』に厳しい指摘はありませんか? 小林 あんまりないですよ。面白いシーンなら、いっぱいあるけどね。やっぱり、作品に気持ちが入っているんですよ。やりたいことを全部やったなという感じがします。娯楽作品として上手くまとめているしね。ボクのデビュー作『クロージング・タイム』(96)は、42歳で初めて撮った作品だから想いが強すぎて、詰め込みすぎのホン(脚本)になってしまった。『クロージング・タイム』が「ゆうばり映画祭」で賞をもらった後、『髪結い屋の亭主』(90)のパトリス・ルコント監督が来日していて、講演会でルコントに「ボクのデビュー作です。観てください」と『クロージング・タイム』のビデオを渡したんです。数日後に配給会社経由でルコントからの手紙が届いた。フランス語が読めなかったので、評論家の山田宏一さんのところに持っていき、「何て書いてあるんですか? 読んでください」と(笑)。そうしたら、山田さんが「いいことが書いてありますよ」と手紙を読んでくれた。『デビュー作にありがちな詰め込みすぎで、まるで映画のカタログを見ているかのようだ。これからはその中の1つ1つのテーマを1本の映画にして、突き進みなさい』みたいなことが書いてあった。その点、『くそガキ』は詰め込みすぎになってないし、でも自分の想いは充分に入っている。まぁ、暑苦しいくらいに鈴木監督の想いが入っているけどさ(笑)。 鈴木 キャストが脚本を読んでくれて、より熱く演じてくれたように思います。居酒屋で主人公が大学時代の映画サークルのメンバーから責められるシーンは、小林監督とのTwitterでのやりとりを使わせてもらいました。「そんなんなら、映画やめちまえ」とか……(笑)。 ■映画製作は、すべてが楽しい ──文芸の世界では『作家は処女作に向かって成熟する』という言葉がありますが、映画にも当てはまりそうですね。デビュー作に監督のすべてが詰まっているものですか? giri_kuso_03.jpg 小林 映画の場合は、なかなかそうは行かない。プロデューサーの存在が大きいし、他の人が書いた脚本の場合は特にね。助監督を経て監督になると、自分をどう表現するかよりも、与えられた脚本をいかに商品として形にするかが仕事になるでしょう。まぁ、自主映画の場合だと、デビュー作にやっぱり自分が出ますよ。そこから180度変わることは少ない。それでも、役者が表現するわけだから、100%自分が表現できるわけじゃない。でも、『くそガキ』は、鈴木太一そのものだよね。自分をストレートにさらけ出している。今どき、自分をさらけ出す若者は少ないよ。自分をさらけ出すのは、恥ずかしいし、怖いからね。 鈴木 100%自分というわけでもないんですけど。逆に自分をさらけ出すことが、果たしてお客さんを楽しませることになるのかと脚本の時点ではずいぶん悩みました。そのこともあって、キャスティングはジメジメしないように考えました。主人公(今野浩喜)とヒロイン(田代さやか)は、こちらが演出したというよりも、それぞれ脚本でハマった部分を撮影現場でうまく出してもらったように思います。 giri_kuso_04.jpg ──小林監督はご自身で、企画・製作から作品によっては配給まで手掛けていますね。 小林 仕方なしですよ。引き受けてくれる人がいないから(苦笑)。でもね、最初の頃は、配給や宣伝の仕事も面白くて、「こんな美味しい仕事を他人に任せたくない」と思ってました。美味しいといってもお金になるって意味じゃないよ。自分の映画を撮ることも、編集することも、宣伝することも、映画はすべてが楽しいんです。柳町光男監督は『十九歳の地図』(79)のとき、自分でチケットを100枚単位で売り歩き、2万枚をひとりで捌いたそうですよ。そこまではなかなかできないけど、ボクも『クロージング・タイム』のときは自分で宣伝をやりました。まず酒を呑んで景気づけしてから、飲み屋を回ってチラシを配って、30分ぐらいしてから「今なら、1000円でチケット買えますよ」とね。チケットを買ってくれた人には「じゃあ、一杯呑みませんか?」とサービスしていたので赤字です(笑)。でも、デビュー作って1回限りのものだからね。 鈴木 分かります。今、自分も『くそガキ』のチラシを配っている最中なんです。それまでチラシ配りが楽しいとは思っていなかったけど、小林監督の話を聞いて「あぁ、自分は楽しいから、自分の作品の宣伝をしてるんだ」と思えてきました(笑)。 小林 だから、一度全部やってみると、映画の仕組みがよく理解できますよ。プロデューサーにとっては、都合よくないでしょうね。監督が演出だけでなく、予算の使い道を知ってしまうのはね。お金の使い方を監督が覚えてしまうと、予算を使い切られてしまうようになるから(笑)。 ■新人監督が陥りやすい、危険な“アリ地獄”とは? ──7月28日(土)には小林監督の新作『ギリギリの女たち』が公開されます。被災地である気仙沼市でのロケ、キャストは3人の女優だけ、冒頭シーンは35分に及ぶ長回し。異様な雰囲気を感じさせます。長回しは被災地の空気感を取り込むためのものだそうですね。
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7月28日(土)より公開される小林政広監督
の最新作『ギリギリの女たち』。震災後の気仙
沼の自宅に戻ってきた3姉妹の物語。人生の崖っ
ぷちに立たされた3人が、家族の在り方を見
つめ直す。被災地でのロケ作品だが、近未来の
日本のようでもある。
小林 ビデオで撮ったのは『白夜』(09)以来となる2作目です。デビューからずっとフィルムで撮ってきて、試行錯誤して自分のスタイルを築いてきたんだけど、まだビデオはどう撮ればいいのか手探りの状態。やっぱりフィルムとビデオでは絵の重みが違うんです。今までのやり方ではダメだなと。それでフィルムではできないことに挑戦しようとね。今回は屋内のシーンが多いから、東京のスタジオで撮って、風景だけ被災地に行ってちょこちょこと撮ってきても良かった。その方が楽だしね。でも、被災地でロケ撮影することで、キャストもスタッフも気持ちの持ち方が違ってくるんですよ。数百人、数千人の方が数か月前に亡くなった場所で、噓っこの物語を撮るわけです。それがどれだけ疚しいことなのか、いろんなことを噛み締めながら撮りたかった。まぁ、それはボクの勝手な思い込みかもしれない。空気感なんて、出そうで出ませんよ。舞台挨拶では「空気感を」なんてボクも言いますが、空気感なんて表現しようと思っても表現できないもの。でもねぇ、何というかなぁ、長回しすることで、どんどんドキュメンタリーに近づきますよ。ビデオだから、リハーサルをしっかりやっているかどうかとか、女優が“演じている”感も、すごく出るんです。35分間の長回しは女優たちだけでなく、スタッフも緊張したでしょう。冒頭の長回しシーンだけで、20~30回撮り直しました。最初のシーンで、みんなもうヘトヘトですよ(笑)。 鈴木 『くそガキ』でも長回しを使っていますけど、意味合いもやり方も全然違います。『ギリギリの女たち』の場合、冒頭の長回しシーンで首をつかまれて、あの世界に無理矢理連れていかれた感じがしました。一体これから何が始まるんだろうと引き込まれたんです。3人の姉妹のギリギリ感もすごく伝わりました。『ギリギリの女たち』を観たのが、『くそガキ』の編集がなかなか進まずにモヤモヤしていた時期でしたし、震災直後に『くそガキ』を撮ったこともあり、これからどう世界と向き合えばいいのか悩んでいた自分に、『ギリギリの女たち』はすごく突き刺さるものがありました。 ──鈴木監督、映画監督としてサバイバルしていく秘訣を小林監督に聞いてみたくありませんか? 鈴木 そうですねぇ……。撮りたいものを撮る、というシンプルな気持ちで撮り続けられるものですか? 小林 撮りたいから撮る、というよりも、もう絞り出すように撮っている状態だよ。どっかに篭って企画を考えても、そうそう出てこないよ(苦笑)。自主映画は儲からない。でも、自分が権利を持っているわけだから、DVD化されたり、BS放送の放映料などで何とか食べてる。だから、新作を撮り続けないと食べていけない(笑)。次回作はね、早く撮ったほうがいいよ。あまり時間を置くと、欲が出てくる。前作よりもいいものを作ろうと気負いが出てきて、時間を置けば置くほど、どんどん気負いだけが大きくなっていく。「こんな企画じゃ、オレの第2作に相応しくない」とか考えるようになるんだ。自分の中で自分がどんどんエラくなっていくんだよ。 鈴木 それは、リアルに怖いですね……。 小林 新作が撮れないまま、あっという間に10年くらい経ってしまうからね。そうなるのがイヤで、ボクは毎年1本ペースで撮ろうとしているんだ。フランソワ・トリュフォー監督を見習ったんだよ。トリュフォー監督は常にシナリオを5本持ち歩いて、ことあるごとに映画会社に企画を持ち掛けていたんだよ。だからね、鈴木監督も2~3本は企画を準備していたほうがいいよ。 鈴木 はい。そう言われると気負ってしまいそうですが、なるべく気負わずに次の作品に取り掛かろうと思います! (取材・構成=長野辰次) giri_kuso_06.jpg 『ギリギリの女たち』 2011年8月に小林監督の自宅のあった気仙沼市唐桑町でロケ撮影された作品。冒頭35分の長回しをはじめ、全編をわずか28カットで撮り上げている。父の介護を終えた後、保険金を持って海外に出た長女(渡辺真紀子)、東京で結婚した次女(中村優子)、自宅にひとり残された三女(藤真美穂)の再会と葛藤を描いている。 監督・脚本/小林政広 撮影/西久保弘一 出演/渡辺真起子、中村優子、藤真美穂 製作/オールイン エンタテインメント、Grist 配給/ブラウニー 7月28日(土)より渋谷ユーロスペース、シネ・リーブル梅田ほか全国順次公開。http://girigiri-women.com (c)モンキータウンプロダクション/映画「ギリギリの女たち」製作委員会 ●こばやし・まさひろ 1954年東京都生まれ。高田渡に弟子入りし、林ヒロシとしてフォークシンガーとして活動。その後、脚本家に転身。『クロージング・タイム』(96)で監督デビュー。『海賊版=BOOTLEG FILM』(99)、『KOROSHI 殺し』(00)、『歩く、人』(01)で3年連続カンヌ映画祭に招かれる。『バッシング』(05)はカンヌ映画祭コンペティション部門に選ばれた。『完全なる飼育 女理髪師の恋』(03)はロカルノ映画祭特別大賞を受賞。監督・脚本・監督を兼ねた『愛の予感』(07)はロカルノ映画祭史上初となる4冠を受賞している。『春との旅』(10)に続き、仲代達矢を主演に迎えた『日本の悲劇』が公開待機中。 giri_kuso_07.jpg 『くそガキの告白』 能書きばかり垂れて、いつまでも映画を撮れずにいる映画監督志望の30男・馬場大輔(今野浩喜)。ホラー映画の撮影現場で純真な無名女優・木下桃子(田代さやか)に出会い、仕事を口実にアプローチを図る。鈴木監督の実生活が投影された青春コメディ映画。入江悠監督の『SR/サイタマノラッパー』シリーズを思わせる、クライマックスの長回しシーンが印象的だ。 監督・脚本/鈴木太一 出演/今野浩喜(キングオブコメディ)、田代さやか、辻岡正人、今井りか、仲川遥香(AKB48)、北山ひろし、高橋健一(キングオブコメディ)、石井トミコほか 6月30日よりテアトル新宿にて公開中。大阪・第七藝術劇場ほか全国順次公開。http://kuso-gaki.com  (c)SUMIWOOD FILMS&Taichi Suzuki ●すずき・たいち 1976年東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、ENBUゼミナールに入学し、篠原哲雄監督の講義を受講する。オリジナルビデオ作品『怪奇!アンビリーバブル』シリーズの演出・構成で映像キャリアを積み、その中の一編『闇の都市伝説』(08)が話題に。2008年、短編映画『信二』が東京ネットムービーフェスティバルで「田中麗奈賞」を受賞。2011年にも短編『ベージュ』を発表。長編デビュー作『くそガキの告白』が「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」で審査員特別賞、シネガーアワードを含む4冠を受賞した。

“映画祭監督”がド新人監督にインディーズ魂を伝授 処女作をめぐる熱きトーク60分一本勝負!

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小林政広監督(左)と鈴木太一監督。ふたりは“師弟関係”とは異なる、
Twitterを介した新しい関係性を築いている。
 通常、同業者がひとつのテーブルに就いても、腹を割って話し合うことは少ない。お互いにライバル同士だからだ。小林政広監督自身、「映画界はパイが限られているから、ライバルを育てるようなことは誰もしない」と話す。だが、この日の小林監督は違った。ガチでマジに熱い言葉をド新人監督に向けて贈った。小林監督はこれまでカンヌ映画祭に4度招待され、中でもイラク邦人人質事件を題材にした『バッシング』(05)はコンペ部門に選ばれている。また、佐世保市少女刺殺事件にインスパイアされた『愛の予感』(07)はロカルノ映画祭でグランプリを含む4冠を受賞。海外での評価が高い“映画祭監督”だ。対するド新人監督は、デビュー作『くそガキの告白』がテアトル新宿で公開中の鈴木太一監督。自主映画を撮り続けることで映画界をサバイブする小林監督の体験に基づく言葉の数々は、鈴木監督に限らず表現活動を目指す若者たちの胸に響くに違いない。 ──おふたりはTwitter上で知り合ったそうですね。 小林政広監督(以下、小林) そうです。この人(鈴木監督)は文章がうまいんです。ライターの文章は、すぐ分かる。ある程度書けるヤツかどうかは、Twitterを見れば分かりますよ。読ませる力があり、言葉の選び方がうまいんです。それで、けっこーTwitterでのやりとりをやったね。 鈴木太一監督(以下、鈴木) はい、直接お会いして話をしたのは昨年1度だけで、それまでずっとTwitterでやりとりしていました。2009年ぐらいからでしたね。映画を撮りたいけど撮れず、精神的に不安定になっている時に、ずいぶんとハッパを掛けていただきました。でも、小林監督がTwitterやっていたことに驚きましたし、「映画のことでフザけたことは呟けないな」と緊張もしました(笑)。 小林 ボクも20代、30代と映画が撮れずに悶々としている時期が長かった。テレビドラマやピンク映画の脚本を書いていたけど、シナリオライターとして認められれば認められたで、映画監督には成れないわけです。それで自分から「映画を撮る」と宣言したんだけど、それまで一緒に仕事をしていた周囲の人間はみんな引いちゃった。「撮りたいなら、撮れば」と。誰も協力してくれないし、応援もしてくれないわけですよ。誰かに背中を押して欲しいんだけど、誰も背中は押してくれない(苦笑)。なら、自分でやるしかない。ボクがデビューした頃は、フィルムで撮ると最低でも500万円、だいたい1,000万円かかった。でも、ボクはピンク映画の仕事もしていたので、35ミリフィルムを使って300万円くらいで撮る方法もある程度分かっていた。テレビドラマのディレクターに「キャスト1/3、スタッフ1/3、残り1/3」と予算の内訳も教わっていたしね。それに今はビデオ撮影がほとんど。もっと安くできる。だから、「グダグダ言わずに早くやれ!」とね(笑)。 鈴木 小林監督のその言葉は覚えています。Twitter上での発言だったんですが、明らかにオレに向けた言葉だなと分かりました。まだお会いしてない映画監督から、そんな言葉を投げ掛けられたので怖かった(笑)。でも、すごく身に染みた言葉でした。 小林 ボクのTwitterは若い人がよく見てくれているんだけど、実際に「映画を撮るぞ」と言う人は意外といないんです。それで、「やっちゃえ。やれば何とかなる」と。みんな背中を押してもらいたがっているんですよ。でも、映画界はパイが限られているから、わざわざライバルを育てるようなことは誰もやんないわけです。シナリオライターにしてもそう。ひとり増えれば、ひとり弾かれる世界ですから。狭き門です。昨年、映画製作のワークショップを受け持ったんだけど、映画の作り方って他人に教えてもらうもんじゃない。それでボクはいきなり1カットの映画を受講者全員に撮らせたんです。受講者の中には「映画の作り方を教えてもらえると思ったのに」とブーブー文句を言うヤツもいました。ボクは映画づくりでいちばん大切なこと、背中を押してあげるという行為をしたんだけどね(苦笑)。映画づくりって、協力者がたったひとりでもいればできるものなんです。いわば共犯者だね。ボクの場合は、それはプロデューサーではなく、役者だった。ボクのシナリオを役者が気に入ってくれたお陰で、ボクは映画を撮れた。共犯者は誰でもいいんです。でも、その誰かが、なかなかいない。 鈴木 そうですね、いませんね。「映画? 何をバカなことやってんだ」と言われてしまう。学生時代なら勢いで「やろうぜ!」みたいにできたけど、学校を卒業して30歳にもなると、そういう仲間がどんどんいなくなってしまう。「撮ればいいんだよ」と言ってくれる人がいなくなってしまいます。
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鈴木太一監督のデビュー作『くそガキの告白』。
映画監督志望のニート男(今野浩喜)が自分
だけのヒロイン(田代さやか)を見つけ、処女
作へと突っ走る。鈴木監督は借金で製作費を捻出
し、キャストの出演交渉も自分で進めた。
■ホテルの便せんに綴られたルコントからの手紙 ──小林監督、完成した『くそガキの告白』を観ての感想は? 小林 『くそガキの告白』のチラシにコメントを書いたけど、その通りですよ。あまり期待していなかった(笑)。撮影するというのは知っていたけど、いつまで経っても完成しないし、完成披露の試写もないから、「あぁ、ダメだったんだな。お蔵入りだな」と思っていた(笑)。完成させるのに、すごく時間が掛かったね? 鈴木 はい、撮影は4月に済んでいたんです。でも、悩みながら編集作業を進めている間に、小林監督は『ギリギリの女たち』を8月に撮影して、10月の東京国際映画祭でもう上映していたので驚きました。『くそガキの告白』は「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」の締め切りぎりぎりの11月に完成したんです。完成はしたけど、観たのはプロデューサーと編集者ぐらい。DVDを小林監督のご自宅に送っていいものか、ずいぶん迷いました(苦笑)。試写会の開き方も分からず、誰を呼べばいいのか見当がつかないまま、公開直前に2度やっただけですね。2度とも全然、集めることができませんでした。 ──社交辞令ぬきで、『くそガキの告白』に厳しい指摘はありませんか? 小林 あんまりないですよ。面白いシーンなら、いっぱいあるけどね。やっぱり、作品に気持ちが入っているんですよ。やりたいことを全部やったなという感じがします。娯楽作品として上手くまとめているしね。ボクのデビュー作『クロージング・タイム』(96)は、42歳で初めて撮った作品だから想いが強すぎて、詰め込みすぎのホン(脚本)になってしまった。『クロージング・タイム』が「ゆうばり映画祭」で賞をもらった後、『髪結い屋の亭主』(90)のパトリス・ルコント監督が来日していて、講演会でルコントに「ボクのデビュー作です。観てください」と『クロージング・タイム』のビデオを渡したんです。数日後に配給会社経由でルコントからの手紙が届いた。フランス語が読めなかったので、評論家の山田宏一さんのところに持っていき、「何て書いてあるんですか? 読んでください」と(笑)。そうしたら、山田さんが「いいことが書いてありますよ」と手紙を読んでくれた。『デビュー作にありがちな詰め込みすぎで、まるで映画のカタログを見ているかのようだ。これからはその中の1つ1つのテーマを1本の映画にして、突き進みなさい』みたいなことが書いてあった。その点、『くそガキ』は詰め込みすぎになってないし、でも自分の想いは充分に入っている。まぁ、暑苦しいくらいに鈴木監督の想いが入っているけどさ(笑)。 鈴木 キャストが脚本を読んでくれて、より熱く演じてくれたように思います。居酒屋で主人公が大学時代の映画サークルのメンバーから責められるシーンは、小林監督とのTwitterでのやりとりを使わせてもらいました。「そんなんなら、映画やめちまえ」とか……(笑)。 ■映画製作は、すべてが楽しい ──文芸の世界では『作家は処女作に向かって成熟する』という言葉がありますが、映画にも当てはまりそうですね。デビュー作に監督のすべてが詰まっているものですか? giri_kuso_03.jpg 小林 映画の場合は、なかなかそうは行かない。プロデューサーの存在が大きいし、他の人が書いた脚本の場合は特にね。助監督を経て監督になると、自分をどう表現するかよりも、与えられた脚本をいかに商品として形にするかが仕事になるでしょう。まぁ、自主映画の場合だと、デビュー作にやっぱり自分が出ますよ。そこから180度変わることは少ない。それでも、役者が表現するわけだから、100%自分が表現できるわけじゃない。でも、『くそガキ』は、鈴木太一そのものだよね。自分をストレートにさらけ出している。今どき、自分をさらけ出す若者は少ないよ。自分をさらけ出すのは、恥ずかしいし、怖いからね。 鈴木 100%自分というわけでもないんですけど。逆に自分をさらけ出すことが、果たしてお客さんを楽しませることになるのかと脚本の時点ではずいぶん悩みました。そのこともあって、キャスティングはジメジメしないように考えました。主人公(今野浩喜)とヒロイン(田代さやか)は、こちらが演出したというよりも、それぞれ脚本でハマった部分を撮影現場でうまく出してもらったように思います。 giri_kuso_04.jpg ──小林監督はご自身で、企画・製作から作品によっては配給まで手掛けていますね。 小林 仕方なしですよ。引き受けてくれる人がいないから(苦笑)。でもね、最初の頃は、配給や宣伝の仕事も面白くて、「こんな美味しい仕事を他人に任せたくない」と思ってました。美味しいといってもお金になるって意味じゃないよ。自分の映画を撮ることも、編集することも、宣伝することも、映画はすべてが楽しいんです。柳町光男監督は『十九歳の地図』(79)のとき、自分でチケットを100枚単位で売り歩き、2万枚をひとりで捌いたそうですよ。そこまではなかなかできないけど、ボクも『クロージング・タイム』のときは自分で宣伝をやりました。まず酒を呑んで景気づけしてから、飲み屋を回ってチラシを配って、30分ぐらいしてから「今なら、1000円でチケット買えますよ」とね。チケットを買ってくれた人には「じゃあ、一杯呑みませんか?」とサービスしていたので赤字です(笑)。でも、デビュー作って1回限りのものだからね。 鈴木 分かります。今、自分も『くそガキ』のチラシを配っている最中なんです。それまでチラシ配りが楽しいとは思っていなかったけど、小林監督の話を聞いて「あぁ、自分は楽しいから、自分の作品の宣伝をしてるんだ」と思えてきました(笑)。 小林 だから、一度全部やってみると、映画の仕組みがよく理解できますよ。プロデューサーにとっては、都合よくないでしょうね。監督が演出だけでなく、予算の使い道を知ってしまうのはね。お金の使い方を監督が覚えてしまうと、予算を使い切られてしまうようになるから(笑)。 ■新人監督が陥りやすい、危険な“アリ地獄”とは? ──7月28日(土)には小林監督の新作『ギリギリの女たち』が公開されます。被災地である気仙沼市でのロケ、キャストは3人の女優だけ、冒頭シーンは35分に及ぶ長回し。異様な雰囲気を感じさせます。長回しは被災地の空気感を取り込むためのものだそうですね。
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7月28日(土)より公開される小林政広監督
の最新作『ギリギリの女たち』。震災後の気仙
沼の自宅に戻ってきた3姉妹の物語。人生の崖っ
ぷちに立たされた3人が、家族の在り方を見
つめ直す。被災地でのロケ作品だが、近未来の
日本のようでもある。
小林 ビデオで撮ったのは『白夜』(09)以来となる2作目です。デビューからずっとフィルムで撮ってきて、試行錯誤して自分のスタイルを築いてきたんだけど、まだビデオはどう撮ればいいのか手探りの状態。やっぱりフィルムとビデオでは絵の重みが違うんです。今までのやり方ではダメだなと。それでフィルムではできないことに挑戦しようとね。今回は屋内のシーンが多いから、東京のスタジオで撮って、風景だけ被災地に行ってちょこちょこと撮ってきても良かった。その方が楽だしね。でも、被災地でロケ撮影することで、キャストもスタッフも気持ちの持ち方が違ってくるんですよ。数百人、数千人の方が数か月前に亡くなった場所で、噓っこの物語を撮るわけです。それがどれだけ疚しいことなのか、いろんなことを噛み締めながら撮りたかった。まぁ、それはボクの勝手な思い込みかもしれない。空気感なんて、出そうで出ませんよ。舞台挨拶では「空気感を」なんてボクも言いますが、空気感なんて表現しようと思っても表現できないもの。でもねぇ、何というかなぁ、長回しすることで、どんどんドキュメンタリーに近づきますよ。ビデオだから、リハーサルをしっかりやっているかどうかとか、女優が“演じている”感も、すごく出るんです。35分間の長回しは女優たちだけでなく、スタッフも緊張したでしょう。冒頭の長回しシーンだけで、20~30回撮り直しました。最初のシーンで、みんなもうヘトヘトですよ(笑)。 鈴木 『くそガキ』でも長回しを使っていますけど、意味合いもやり方も全然違います。『ギリギリの女たち』の場合、冒頭の長回しシーンで首をつかまれて、あの世界に無理矢理連れていかれた感じがしました。一体これから何が始まるんだろうと引き込まれたんです。3人の姉妹のギリギリ感もすごく伝わりました。『ギリギリの女たち』を観たのが、『くそガキ』の編集がなかなか進まずにモヤモヤしていた時期でしたし、震災直後に『くそガキ』を撮ったこともあり、これからどう世界と向き合えばいいのか悩んでいた自分に、『ギリギリの女たち』はすごく突き刺さるものがありました。 ──鈴木監督、映画監督としてサバイバルしていく秘訣を小林監督に聞いてみたくありませんか? 鈴木 そうですねぇ……。撮りたいものを撮る、というシンプルな気持ちで撮り続けられるものですか? 小林 撮りたいから撮る、というよりも、もう絞り出すように撮っている状態だよ。どっかに篭って企画を考えても、そうそう出てこないよ(苦笑)。自主映画は儲からない。でも、自分が権利を持っているわけだから、DVD化されたり、BS放送の放映料などで何とか食べてる。だから、新作を撮り続けないと食べていけない(笑)。次回作はね、早く撮ったほうがいいよ。あまり時間を置くと、欲が出てくる。前作よりもいいものを作ろうと気負いが出てきて、時間を置けば置くほど、どんどん気負いだけが大きくなっていく。「こんな企画じゃ、オレの第2作に相応しくない」とか考えるようになるんだ。自分の中で自分がどんどんエラくなっていくんだよ。 鈴木 それは、リアルに怖いですね……。 小林 新作が撮れないまま、あっという間に10年くらい経ってしまうからね。そうなるのがイヤで、ボクは毎年1本ペースで撮ろうとしているんだ。フランソワ・トリュフォー監督を見習ったんだよ。トリュフォー監督は常にシナリオを5本持ち歩いて、ことあるごとに映画会社に企画を持ち掛けていたんだよ。だからね、鈴木監督も2~3本は企画を準備していたほうがいいよ。 鈴木 はい。そう言われると気負ってしまいそうですが、なるべく気負わずに次の作品に取り掛かろうと思います! (取材・構成=長野辰次) giri_kuso_06.jpg 『ギリギリの女たち』 2011年8月に小林監督の自宅のあった気仙沼市唐桑町でロケ撮影された作品。冒頭35分の長回しをはじめ、全編をわずか28カットで撮り上げている。父の介護を終えた後、保険金を持って海外に出た長女(渡辺真紀子)、東京で結婚した次女(中村優子)、自宅にひとり残された三女(藤真美穂)の再会と葛藤を描いている。 監督・脚本/小林政広 撮影/西久保弘一 出演/渡辺真起子、中村優子、藤真美穂 製作/オールイン エンタテインメント、Grist 配給/ブラウニー 7月28日(土)より渋谷ユーロスペース、シネ・リーブル梅田ほか全国順次公開。http://girigiri-women.com (c)モンキータウンプロダクション/映画「ギリギリの女たち」製作委員会 ●こばやし・まさひろ 1954年東京都生まれ。高田渡に弟子入りし、林ヒロシとしてフォークシンガーとして活動。その後、脚本家に転身。『クロージング・タイム』(96)で監督デビュー。『海賊版=BOOTLEG FILM』(99)、『KOROSHI 殺し』(00)、『歩く、人』(01)で3年連続カンヌ映画祭に招かれる。『バッシング』(05)はカンヌ映画祭コンペティション部門に選ばれた。『完全なる飼育 女理髪師の恋』(03)はロカルノ映画祭特別大賞を受賞。監督・脚本・監督を兼ねた『愛の予感』(07)はロカルノ映画祭史上初となる4冠を受賞している。『春との旅』(10)に続き、仲代達矢を主演に迎えた『日本の悲劇』が公開待機中。 giri_kuso_07.jpg 『くそガキの告白』 能書きばかり垂れて、いつまでも映画を撮れずにいる映画監督志望の30男・馬場大輔(今野浩喜)。ホラー映画の撮影現場で純真な無名女優・木下桃子(田代さやか)に出会い、仕事を口実にアプローチを図る。鈴木監督の実生活が投影された青春コメディ映画。入江悠監督の『SR/サイタマノラッパー』シリーズを思わせる、クライマックスの長回しシーンが印象的だ。 監督・脚本/鈴木太一 出演/今野浩喜(キングオブコメディ)、田代さやか、辻岡正人、今井りか、仲川遥香(AKB48)、北山ひろし、高橋健一(キングオブコメディ)、石井トミコほか 6月30日よりテアトル新宿にて公開中。大阪・第七藝術劇場ほか全国順次公開。http://kuso-gaki.com  (c)SUMIWOOD FILMS&Taichi Suzuki ●すずき・たいち 1976年東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、ENBUゼミナールに入学し、篠原哲雄監督の講義を受講する。オリジナルビデオ作品『怪奇!アンビリーバブル』シリーズの演出・構成で映像キャリアを積み、その中の一編『闇の都市伝説』(08)が話題に。2008年、短編映画『信二』が東京ネットムービーフェスティバルで「田中麗奈賞」を受賞。2011年にも短編『ベージュ』を発表。長編デビュー作『くそガキの告白』が「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」で審査員特別賞、シネガーアワードを含む4冠を受賞した。

「一生モテないと思います……」“ネガティブすぎるイケメンモデル”栗原類の素顔

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イ……イケメン!!
 雑誌「MEN'S NON-NO」(集英社)や「POPEYE」(マガジンハウス)をはじめ、数々の雑誌やショー、広告などに出演。17歳の現役高校生にしてファッション業界の第一線で活躍する、日本人とイギリス人のハーフモデル・栗原類。  誰もがうらやむ端正な顔立ちと、抜群のスタイルは、彼がそこにたたずむだけで一流ブランドの広告ヴィジュアルの世界に入り込んでしまったような、ラグジュアリーな感覚に誘ってくれる。  さぞかし女の子にモテモテだろうと思いきや、先日、バラエティ番組『芸能★BANG+』(日本テレビ系)で「ネガティブすぎるイケメンモデル」として、その特異な性格を披露し一躍話題に。また、このインタビュー中も、ホットコーヒーをマドラーで激しくかき混ぜながら、独特の静かな口調で「僕はおそらく一生モテないと思います……」などと後ろ向きな発言を連発。  普通の高校生とは明らかに異なる彼に、ロングヘアーの下に隠された素顔を覗かせてもらった。 ――キレイな顔立ちですね。みんなから「カッコいいね」とか……。 栗原類(以下、栗原) (質問を遮って)言われません。 ――え、言われるでしょ?
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栗原 言われませんし、言われたいとも思いません。自分自身をカッコいいとか、イケメンだと思ったこともありませんし、人からそう言われても喜ぶべきなのか分からないので、別にイケメンと呼ばれなくてもいいです。なぜなら僕はイケメンではないので……。 ――なんてもったいない性格! 『芸能★BANG+』放送後、すごい反響だったそうですね。 栗原 もうすごかったです。Twitterでも「この子、ツボだわ」とか「え、マジ?」というようなツイートが続いて、放送前日は300人くらいだったフォロワーが、一気に3,000人になって、今でも増えまくっています。2ちゃんねるでも「これはガチだ、俺には分かる」などと、ヘンなスレッドまで立てられてしまいました。まあ、僕は別にいいんですけど……。 ――放送をご覧になって、ご自身の感想は? 栗原 今もそうですが、声が小さかったり、答えが矛盾したりと、“ちゃんとしゃべれない”という反省点もありましたし、皆さんとのカラミを見て“こういうのが面白いんだ”と教わりました。僕は普段、自分のポジティブな面とネガティブな面をノートに書き出して、自分を研究して、私生活で何に注意するべきか、何をしなければ周りに迷惑がかからないかということを考えているのですが、番組に出たことで、自分の知らなかった自分や不注意に話している自分を知りました。 ――「ネガティブすぎる」というイジられ方をするのは、平気ですか? 栗原 別に構いません。僕は、生活で大きなことがあっても、人形のように気にしないタイプなので。 ――17歳とは思えない冷静さですね。 栗原 おそらく本格的に「MEN'S NON-NO」の仕事が増えた2009年頃から、周りの年上の方々に失礼のないようにするために、より消極的で冷静な性格になったんだと思います。 ――現在、高校3年生ですが、学校ではどんなポジションですか? 栗原 基本的に、一匹狼として一人でいることが多いですね。休み時間も常に隅っこのほうで考え事をしたり、本を読んだりしています。最近は、スティーヴン・キングの『ミザリー』や『シャイニング』、ロアルド・ダールの、『ジャイアント・ピーチ』などを読みました。今はとくに、暗い話が好きです。 ――携帯メールはどのくらいしますか? 栗原 知人に連絡すること自体がないです。仕事のメールなどは、パソコンのメールのほうでチェックしています。 ――ちなみに、苦手なタイプの同級生はいますか?
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大変身!
栗原 男性でいうと、わざわざ日焼けしたり、髪を茶色に染めたりする“ギャル男もどき”みたいな人たちが苦手です。 ――その“ギャル男もどき”に絡まれたりしませんか? 栗原 もし絡まれそうになっても、自分は逃げるだけです。ヘンなのに関わったら、いろんな人に迷惑かけちゃうと思うので……。 ――先ほどから、人に迷惑をかけることをとても気にされてますよね。ブログでも、「ブログをさぼってしまい、非常に申し訳ありませんでした」などと頻繁に謝ってますし。 栗原 なるべく一週間に一回はブログを書こうと思ってるんですけど、その日程を越してしまうことがよくあるので、いろいろ反省しています。 ――自分に厳しいですね(笑)。モデルの仕事は楽しいですか? 栗原 はい、とても楽しいです。カメラマンさんやスタッフさんと話ができたり、自分じゃ買えなさそうな服を着られたり。それに、雑誌に自分が載ることがなんとなくうれしいです。最初に仕事をしたのは5歳くらいなんですが、中学3年生頃まではあまり仕事がなかったので、最近は「ああ、仕事ができるっていいなあ」とよく思います。 ――モデルさんは食生活に気を使っているイメージがありますが、普段は何をよく食べていますか? 栗原 主にグミ。あとは果物、野菜、スイーツなどですね。 ――モデル仲間から、遊びに誘われたりすることはないですか? 例えば合コンとか。 栗原 ないです。連絡先すら知りませんし、休日も一人でいることが多いので。それに合コンには誘われても行きません。以前、一人でお店に入った時、僕の後ろで合コンをしていて。何が起きているのかと聞きながらお茶を飲んでいたんです……はい、盗み聞きです、悪い趣味です(ニヤリ)。 ――あ、今日初めて笑いましたね! 栗原 そうですか……で、その合コンの雰囲気が嫌いでしたし、「場の雰囲気を壊す恐れがあるので、僕は行かないほうがいい」と思いました。それ以前に、僕は別に恋人はいらないので……。 ――え、恋人いらないんですか? 栗原 いらないですし、この先も多分ないと思います。恋人はいないほうが、一人でいろいろ考える時間も増えるので楽しいんです。それに、僕は「相手を傷つけないためにどうすればいいか」ということを常に考えてしまうと思います。 ――確か『芸能★BANG+』では、過去に4回告白して4回ともフラれたとおっしゃってましたよね。 栗原 若い頃は好きになりやすかったんだと思います。成長した今は、好きな人もいませんし、別になんとも思わないです。 ruikurihara4.jpg ――今まで彼女がいた経験は? 栗原 ないです。 ――モテたいという欲求もないんですか? 栗原 ありません。モテるといろいろ大変なことにもなりますし、僕は一人で静かに考え事をしていたいと思うケースが多いので、モテたいと思うことはないです。それに自分は一生モテないと思うので……。 ――女性に対してそのような考えであることを、親御さんはご存じですか? 栗原 はい、知ってます。自分はこういう性格ですし、「世の中的にはこれでいいんだ」と普段から話していますから。 ――常にテンションが一定ですが、幸せを感じる瞬間はありますか? 栗原 最近は、ベランダで洗濯物を干しながら音楽を聴くことが楽しいです。みんなからしたらとくに面白いことではないと思いますけど、自分の“孤独な人生”の中では幸せな時間です。 ――“孤独”は感じていらっしゃるんですね。「明るい性格になりたい」と思ったことは? 栗原 ないですね。仕事もプライベートも含めて、今ととくに変わりたいと思いませんし、自分は自分でいたいですし、それをいろんな人にも受け止めていただきたいです。それに明るくなるってことは、まず髪を切って爽やか系になることだと思いますから。髪の長いモデルはそんなにいないので、髪を短くすると仕事がもらいにくくなるんです……。 ――髪型はあまり関係ないと思いますが(笑)。最後に、今後の目標を教えてください。 栗原 まだモデルとしても駆け出しですが、これからはモデルだけでなくトークもやっていきたいと思っています。“モデルの栗原類”として多くの方に認識されたいので、やらせていただける仕事があれば、期待に沿えるよう努力したいと思います。 (取材・文=林タモツ/撮影=後藤秀二) ●くりはら・るい 1994年、東京生まれ。幼少時から現モデル事務所に所属し、中学3年生頃から「MEN'S NON-NO」(集英社)、「POPEYE」(マガジンハウス)などで、本格的にモデル活動を始める。 趣味は掃除、映画鑑賞、ゲーム。 公式ブログ <http://ameblo.jp/921614359632/

「たぶん、一生モテないと思います……」“ネガティブすぎるイケメンモデル”栗原類の素顔

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イ……イケメン!!
 雑誌「MEN'S NON-NO」(集英社)や「POPEYE」(マガジンハウス)をはじめ、数々の雑誌やショー、広告などに出演。17歳の現役高校生にしてファッション業界の第一線で活躍する、日本人とイギリス人のハーフモデル・栗原類。  誰もがうらやむ端正な顔立ちと、抜群のスタイルは、彼がそこにたたずむだけで一流ブランドの広告ヴィジュアルの世界に入り込んでしまったような、ラグジュアリーな感覚に誘ってくれる。  さぞかし女の子にモテモテだろうと思いきや、先日、バラエティ番組『芸能★BANG+』(日本テレビ系)で「ネガティブすぎるイケメンモデル」として、その特異な性格を披露し一躍話題に。また、このインタビュー中も、ホットコーヒーをマドラーで激しくかき混ぜながら、独特の静かな口調で「僕はおそらく一生モテないと思います……」などと後ろ向きな発言を連発。  普通の高校生とは明らかに異なる彼に、ロングヘアーの下に隠された素顔を覗かせてもらった。 ――キレイな顔立ちですね。みんなから「カッコいいね」とか……。 栗原類(以下、栗原) (質問を遮って)言われません。 ――え、言われるでしょ?
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栗原 言われませんし、言われたいとも思いません。自分自身をカッコいいとか、イケメンだと思ったこともありませんし、人からそう言われても喜ぶべきなのか分からないので、別にイケメンと呼ばれなくてもいいです。なぜなら僕はイケメンではないので……。 ――なんてもったいない性格! 『芸能★BANG+』放送後、すごい反響だったそうですね。 栗原 もうすごかったです。Twitterでも「この子、ツボだわ」とか「え、マジ?」というようなツイートが続いて、放送前日は300人くらいだったフォロワーが、一気に3,000人になって、今でも増えまくっています。2ちゃんねるでも「これはガチだ、俺には分かる」などと、ヘンなスレッドまで立てられてしまいました。まあ、僕は別にいいんですけど……。 ――放送をご覧になって、ご自身の感想は? 栗原 今もそうですが、声が小さかったり、答えが矛盾したりと、“ちゃんとしゃべれない”という反省点もありましたし、皆さんとのカラミを見て“こういうのが面白いんだ”と教わりました。僕は普段、自分のポジティブな面とネガティブな面をノートに書き出して、自分を研究して、私生活で何に注意するべきか、何をしなければ周りに迷惑がかからないかということを考えているのですが、番組に出たことで、自分の知らなかった自分や不注意に話している自分を知りました。 ――「ネガティブすぎる」というイジられ方をするのは、平気ですか? 栗原 別に構いません。僕は、生活で大きなことがあっても、人形のように気にしないタイプなので。 ――17歳とは思えない冷静さですね。 栗原 おそらく本格的に「MEN'S NON-NO」の仕事が増えた2009年頃から、周りの年上の方々に失礼のないようにするために、より消極的で冷静な性格になったんだと思います。 ――現在、高校3年生ですが、学校ではどんなポジションですか? 栗原 基本的に、一匹狼として一人でいることが多いですね。休み時間も常に隅っこのほうで考え事をしたり、本を読んだりしています。最近は、スティーヴン・キングの『ミザリー』や『シャイニング』、ロアルド・ダールの、『ジャイアント・ピーチ』などを読みました。今はとくに、暗い話が好きです。 ――携帯メールはどのくらいしますか? 栗原 知人に連絡すること自体がないです。仕事のメールなどは、パソコンのメールのほうでチェックしています。 ――ちなみに、苦手なタイプの同級生はいますか?
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大変身!
栗原 男性でいうと、わざわざ日焼けしたり、髪を茶色に染めたりする“ギャル男もどき”みたいな人たちが苦手です。 ――その“ギャル男もどき”に絡まれたりしませんか? 栗原 もし絡まれそうになっても、自分は逃げるだけです。ヘンなのに関わったら、いろんな人に迷惑かけちゃうと思うので……。 ――先ほどから、人に迷惑をかけることをとても気にされてますよね。ブログでも、「ブログをさぼってしまい、非常に申し訳ありませんでした」などと頻繁に謝ってますし。 栗原 なるべく一週間に一回はブログを書こうと思ってるんですけど、その日程を越してしまうことがよくあるので、いろいろ反省しています。 ――自分に厳しいですね(笑)。モデルの仕事は楽しいですか? 栗原 はい、とても楽しいです。カメラマンさんやスタッフさんと話ができたり、自分じゃ買えなさそうな服を着られたり。それに、雑誌に自分が載ることがなんとなくうれしいです。最初に仕事をしたのは5歳くらいなんですが、中学3年生頃まではあまり仕事がなかったので、最近は「ああ、仕事ができるっていいなあ」とよく思います。 ――モデルさんは食生活に気を使っているイメージがありますが、普段は何をよく食べていますか? 栗原 主にグミ。あとは果物、野菜、スイーツなどですね。 ――モデル仲間から、遊びに誘われたりすることはないですか? 例えば合コンとか。 栗原 ないです。連絡先すら知りませんし、休日も一人でいることが多いので。それに合コンには誘われても行きません。以前、一人でお店に入った時、僕の後ろで合コンをしていて。何が起きているのかと聞きながらお茶を飲んでいたんです……はい、盗み聞きです、悪い趣味です(ニヤリ)。 ――あ、今日初めて笑いましたね! 栗原 そうですか……で、その合コンの雰囲気が嫌いでしたし、「場の雰囲気を壊す恐れがあるので、僕は行かないほうがいい」と思いました。それ以前に、僕は別に恋人はいらないので……。 ――え、恋人いらないんですか? 栗原 いらないですし、この先も多分ないと思います。恋人はいないほうが、一人でいろいろ考える時間も増えるので楽しいんです。それに、僕は「相手を傷つけないためにどうすればいいか」ということを常に考えてしまうと思います。 ――確か『芸能★BANG+』では、過去に4回告白して4回ともフラれたとおっしゃってましたよね。 栗原 若い頃は好きになりやすかったんだと思います。成長した今は、好きな人もいませんし、別になんとも思わないです。 ruikurihara4.jpg ――今まで彼女がいた経験は? 栗原 ないです。 ――モテたいという欲求もないんですか? 栗原 ありません。モテるといろいろ大変なことにもなりますし、僕は一人で静かに考え事をしていたいと思うケースが多いので、モテたいと思うことはないです。それに自分は一生モテないと思うので……。 ――女性に対してそのような考えであることを、親御さんはご存じですか? 栗原 はい、知ってます。自分はこういう性格ですし、「世の中的にはこれでいいんだ」と普段から話していますから。 ――常にテンションが一定ですが、幸せを感じる瞬間はありますか? 栗原 最近は、ベランダで洗濯物を干しながら音楽を聴くことが楽しいです。みんなからしたらとくに面白いことではないと思いますけど、自分の“孤独な人生”の中では幸せな時間です。 ――“孤独”は感じていらっしゃるんですね。「明るい性格になりたい」と思ったことは? 栗原 ないですね。仕事もプライベートも含めて、今ととくに変わりたいと思いませんし、自分は自分でいたいですし、それをいろんな人にも受け止めていただきたいです。それに明るくなるってことは、まず髪を切って爽やか系になることだと思いますから。髪の長いモデルはそんなにいないので、髪を短くすると仕事がもらいにくくなるんです……。 ――髪型はあまり関係ないと思いますが(笑)。最後に、今後の目標を教えてください。 栗原 まだモデルとしても駆け出しですが、これからはモデルだけでなくトークもやっていきたいと思っています。“モデルの栗原類”として多くの方に認識されたいので、やらせていただける仕事があれば、期待に沿えるよう努力したいと思います。 (取材・文=林タモツ/撮影=後藤秀二) ●くりはら・るい 1994年、東京生まれ。幼少時から現モデル事務所に所属し、中学3年生頃から「MEN'S NON-NO」(集英社)、「POPEYE」(マガジンハウス)などで、本格的にモデル活動を始める。 趣味は掃除、映画鑑賞、ゲーム。 公式ブログ <http://ameblo.jp/921614359632/

「甘くて柔らかくてセリフが飛んで」『くそガキの告白』キンコメ今野浩喜のキストーク……!

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ベストアクターの風格。
 「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」では、審査員特別賞をはじめ4冠受賞! キングオブコメディ・今野浩喜が主演を務め、Hカップグラドルの田代さやかがヒロインを演じる青春映画『くそガキの告白』が、6月30日(土)に公開となる。  物語の主人公は、映画監督を夢見る“ブサイクくそガキ野郎”馬場大輔。その大輔が恋をするのは、名も無き崖っぷち女優・木下桃子。このうだつの上がらない2人が織り成す、とびきりピュアで、ウザいほど熱く、どこかヘンテコな展開に、自然と心がズルズルと引き込まれてしまうから不思議だ……。  「ゆうばり~」ではその演技力が評価され、“ベストアクター賞”“ゆうばりファンタランド大賞 人物部門”をダブル受賞した「役者・今野浩喜」に、長いキスシーンの裏側や、愛すべきダメキャラが一部で人気上昇中(?)の鈴木太一監督について話を聞いた。 ――初主演映画『くそガキの告白』がいよいよ公開ですね。 キングオブコメディ・今野浩喜(以下、今野) 最近、いろんな映画を観たんですが、大概の作品は先が読めるんですよ。でも、この映画は何がなんだか分からないから(笑)、先を読むことは不可能だと思うんです。それでも話をパワーでなんとか押し切ってるんで、ワケが分かんない映画でもないっていう。 ――主人公の馬場大輔は、かなりエキセントリックな役柄でしたが、演じるうえで苦労はありましたか? 今野 いや、どんなベクトルでも振り切っていればそれなりにすごく見えるので、意外とラクでした。普通の人を演じるほうが難しいんですよ。 ――大輔が「この顔死ね!」と叫んで飛び降りるシーンは、衝撃的でした。 今野 あそこの台本は、セリフが多いうえに同じようなセリフがものすごくあったので、「もう意味だけ覚えて流れでやろう」と思ってやりましたね。飛び降りる直前にアドリブで「怖え」って言ったんですけど、監督がその言葉を聞いて、ラストのキスシーンを書き換えちゃったんですよ。その後の展開のヒントになったらしくて。 kusogaki_konno03.jpg ――あのキスシーンは、もともと違う感じだったということですか? 今野 もともとは、桃子の気持ち抜きで、僕がただ無理やりキスするだけだったんです。それがああいう感じのキスシーンに急遽変わりました。僕のアドリブのせいでラストを変えさせちゃって、監督には悪いことしたなって思ってますけど(笑)。 ――ほかにもアドリブのシーンは多いんですか? 今野 そうですね。これも台本にはなかったんですが、「これは泣いたほうがいいなあ」と思ったシーンがあって、初めて気持ちを入れて泣くことに挑戦してみたんです。そしたら、カットがかかった後もずっと泣きやまなくて……“泣きやみ待ち”で何十分も現場をストップさせてしまって、エライことになりました。 ――撮影でNGは出しましたか? 今野 唯一のNGがキスシーンですね。ディープキスに入る前の普通のキスの時に、田代さんの唇のあまりの柔らかさに「柔らかい!」と思って、セリフが飛んでしまったんです(笑)。田代さんには「本当に申し訳ない」と謝りました。 ――キスシーンが思いのほか長くてビックリしました。 今野 一番最初にもらった台本では、1回強引にキスするだけだったんです。それが最終的には“夜から朝にかけて長いキス”みたいなことになってて、引きましたね(笑)。 ――うれしいとかじゃなくて、引いちゃったんですか? 今野 あれだけ長いディープキスだと、後々もう面白話では処理できないなと思って(笑)。ただ、田代さんは飴をめっちゃ舐めていらっしゃったんで、口の中がとにかく甘かったですね。 ――マジで舌入れてるってことですか? 本編では、あまり分かりませんでしたが。 今野 入れてますよ。あれ、撮影では13分くらいキスしてたんですよ。本編では相当カットされてますけど。 ――今野さんが個人的に好きなシーンはどこですか? 今野 桃子が、鍋で肉じゃがを温めるシーンですね。田代さんがアドリブで「タララッタッタッタッタ♪」って『3分クッキング』の曲を歌うんですけど、DVDにした時の権利関係のこととかを考えて、わざと音を少しズラしてるんですよ。プロだな~って思って(笑)。 ――田代さんの演技はいかがでしたか? 今野 ま~うまいですよね。大輔が桃子の家に初めて行くシーンで、僕がアドリブでヘンな場所に座ったんです。そしたら瞬時に「そこですか!?」ってツッコんできたんですよ。これはすごいなって思いました。 ――ちなみに、田代さんは“処女ドル”ですが、キスした仲としては、本当に処女だと思いますか? 今野 処女だと思いますよ。彼女って異様に下ネタ言ったりするんですよ。それって逆に処女のなせる業なんじゃないかなって(笑)。やっぱ僕も中学生の頃のほうが、実感がないからこそ下ネタ言ってた気がしますし。 ――相方の高橋さんも、レンタルビデオ屋の店員役で出演されていますが、演技はいかがでしたか? 今野 生涯無二のハマり役じゃないですか?(笑) あの役は、高橋じゃないとできないと思いますね。 ――8月には舞台『鎌塚氏、すくい上げる』(本多劇場、倉持裕作・演出)の出演も控えてますが、役者として演じるのと、コントで演じるのとでは、違うものなのでしょうか。 kusogaki_konno02.jpg 今野 演じるということに関しては、まったく同じだと思います。ただ、責任が全然違うんですよね。役者業は、演出家なり監督から言われたままをやっているので、どういうシーンになろうが自分は“責任ゼロ”だと思ってるんです。だけどコントは、作ってるのが自分なので、責任が大き過ぎるんですよね。 ――『ニコニコキングオブコメディ』(サイゾーテレビ)でも、この映画のお話をたびたびされてますが、“鈴木太一監督のダメさ”のお話ばかりで、作品の素晴らしさについてあまり語ってないのでは? 今野 確かに(笑)。でも伝えたいことは、やっぱり監督のダメさなんですよ。あの人は、監督というより脚本家なんですよね。撮影の時、僕らが監督に演じ方を聞くじゃないですか。でも、そもそもそういう質問が来ると思ってないから、何も返ってこないんですよ(笑)。そういうところがイラッとするので、この映画の面白さを、あの監督のおかげだと思われたくないんです(笑)。 ――現場で演出をしないで、監督は何をされてたんですか? 今野 見てる。見学の人ですよね。 ――そんな監督も、現在は自らサンドウィッチマンとなって、各地でビラ配りのプロモーション活動を頑張ってますよね。 今野 あれね~~、僕らが出るお笑いライブの会場前でも、ちょくちょく配ってるんですよ。僕がいるところで、気持ち悪いおっさんが僕の顔のアップのビラを配ってると思うと、もう恥ずかしくてしょうがないですよ。遠くに行ってくれって思います(笑)。 ――映画の公式サイトには、ビラを配る監督の勇姿が、ドキュメント風の動画でいくつもアップされてますね。 今野 あれって『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』と、まったく同じ宣伝方法なんですよ。いい加減、怒られてもいいのに(笑)。ただ、『サイタマノラッパー』はボランティアスタッフの人数がすごいから成功してるんです。だから僕は、監督に「この映画は、クチコミでしか広がらない映画なんだから、『Yahoo!』のユーザーレビューとか書きなさい」って前から言ってるんですけどね……。 ――そんな鈴木太一監督が初監督を務めた映画『くそガキの告白』について、最後に読者へPRをお願いします! 今野 おそらくテアトル新宿あたりで、監督が割引券とかを配ってると思うので、それを手に入れて、1,000円とかで観ていただければと思います(笑)。とりあえず観れば面白い映画なので、観てください! (取材・文=林タモツ) ●『くそガキの告白』 監督・脚本/鈴木太一 出演/今野浩喜(キングオブコメディ)、田代さやか、辻岡正人、今井りか、仲川遥香(AKB48)、北川ひろし、高橋健一(キングオブコメディ)、石井トミコ 6月30日よりテアトル新宿ほか全国順次公開 <http://kuso-gaki.com> ●こんの・ひろき 1978年、埼玉県生まれ。高校卒業後、プロダクション人力舎スクールJCAに6期生として入学。2000年より同期生の高橋健一とコンビ・キングオブコメディとして活動。05年、第3回お笑いホープ大賞受賞。2010年、「キングオブコント2010」優勝。俳優として舞台『サボテンとバントライン』(09)、『天才バカボン』(10)、『男子はだまってなさいよ!8 アダルト』(11)、『鎌塚氏、すくい上げる』(12)、連続ドラマ『ティーンコート』(日本テレビ)、映画『ちょんまげぷりん』など出演。12年4月よりNHK Eテレ『テレビスポーツ教室』ナレーション担当。サイゾーテレビ『ニコニコキングオブコメディ』出演中。

「甘くて柔らかくてセリフが飛んで」『くそガキの告白』キンコメ今野浩喜のキストーク……!

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ベストアクターの風格。
 「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」では、審査員特別賞をはじめ4冠受賞! キングオブコメディ・今野浩喜が主演を務め、Hカップグラドルの田代さやかがヒロインを演じる青春映画『くそガキの告白』が、6月30日(土)に公開となる。  物語の主人公は、映画監督を夢見る“ブサイクくそガキ野郎”馬場大輔。その大輔が恋をするのは、名も無き崖っぷち女優・木下桃子。このうだつの上がらない2人が織り成す、とびきりピュアで、ウザいほど熱く、どこかヘンテコな展開に、自然と心がズルズルと引き込まれてしまうから不思議だ……。  「ゆうばり~」ではその演技力が評価され、“ベストアクター賞”“ゆうばりファンタランド大賞 人物部門”をダブル受賞した「役者・今野浩喜」に、長いキスシーンの裏側や、愛すべきダメキャラが一部で人気上昇中(?)の鈴木太一監督について話を聞いた。 ――初主演映画『くそガキの告白』がいよいよ公開ですね。 キングオブコメディ・今野浩喜(以下、今野) 最近、いろんな映画を観たんですが、大概の作品は先が読めるんですよ。でも、この映画は何がなんだか分からないから(笑)、先を読むことは不可能だと思うんです。それでも話をパワーでなんとか押し切ってるんで、ワケが分かんない映画でもないっていう。 ――主人公の馬場大輔は、かなりエキセントリックな役柄でしたが、演じるうえで苦労はありましたか? 今野 いや、どんなベクトルでも振り切っていればそれなりにすごく見えるので、意外とラクでした。普通の人を演じるほうが難しいんですよ。 ――大輔が「この顔死ね!」と叫んで飛び降りるシーンは、衝撃的でした。 今野 あそこの台本は、セリフが多いうえに同じようなセリフがものすごくあったので、「もう意味だけ覚えて流れでやろう」と思ってやりましたね。飛び降りる直前にアドリブで「怖え」って言ったんですけど、監督がその言葉を聞いて、ラストのキスシーンを書き換えちゃったんですよ。その後の展開のヒントになったらしくて。 kusogaki_konno03.jpg ――あのキスシーンは、もともと違う感じだったということですか? 今野 もともとは、桃子の気持ち抜きで、僕がただ無理やりキスするだけだったんです。それがああいう感じのキスシーンに急遽変わりました。僕のアドリブのせいでラストを変えさせちゃって、監督には悪いことしたなって思ってますけど(笑)。 ――ほかにもアドリブのシーンは多いんですか? 今野 そうですね。これも台本にはなかったんですが、「これは泣いたほうがいいなあ」と思ったシーンがあって、初めて気持ちを入れて泣くことに挑戦してみたんです。そしたら、カットがかかった後もずっと泣きやまなくて……“泣きやみ待ち”で何十分も現場をストップさせてしまって、エライことになりました。 ――撮影でNGは出しましたか? 今野 唯一のNGがキスシーンですね。ディープキスに入る前の普通のキスの時に、田代さんの唇のあまりの柔らかさに「柔らかい!」と思って、セリフが飛んでしまったんです(笑)。田代さんには「本当に申し訳ない」と謝りました。 ――キスシーンが思いのほか長くてビックリしました。 今野 一番最初にもらった台本では、1回強引にキスするだけだったんです。それが最終的には“夜から朝にかけて長いキス”みたいなことになってて、引きましたね(笑)。 ――うれしいとかじゃなくて、引いちゃったんですか? 今野 あれだけ長いディープキスだと、後々もう面白話では処理できないなと思って(笑)。ただ、田代さんは飴をめっちゃ舐めていらっしゃったんで、口の中がとにかく甘かったですね。 ――マジで舌入れてるってことですか? 本編では、あまり分かりませんでしたが。 今野 入れてますよ。あれ、撮影では13分くらいキスしてたんですよ。本編では相当カットされてますけど。 ――今野さんが個人的に好きなシーンはどこですか? 今野 桃子が、鍋で肉じゃがを温めるシーンですね。田代さんがアドリブで「タララッタッタッタッタ♪」って『3分クッキング』の曲を歌うんですけど、DVDにした時の権利関係のこととかを考えて、わざと音を少しズラしてるんですよ。プロだな~って思って(笑)。 ――田代さんの演技はいかがでしたか? 今野 ま~うまいですよね。大輔が桃子の家に初めて行くシーンで、僕がアドリブでヘンな場所に座ったんです。そしたら瞬時に「そこですか!?」ってツッコんできたんですよ。これはすごいなって思いました。 ――ちなみに、田代さんは“処女ドル”ですが、キスした仲としては、本当に処女だと思いますか? 今野 処女だと思いますよ。彼女って異様に下ネタ言ったりするんですよ。それって逆に処女のなせる業なんじゃないかなって(笑)。やっぱ僕も中学生の頃のほうが、実感がないからこそ下ネタ言ってた気がしますし。 ――相方の高橋さんも、レンタルビデオ屋の店員役で出演されていますが、演技はいかがでしたか? 今野 生涯無二のハマり役じゃないですか?(笑) あの役は、高橋じゃないとできないと思いますね。 ――8月には舞台『鎌塚氏、すくい上げる』(本多劇場、倉持裕作・演出)の出演も控えてますが、役者として演じるのと、コントで演じるのとでは、違うものなのでしょうか。 kusogaki_konno02.jpg 今野 演じるということに関しては、まったく同じだと思います。ただ、責任が全然違うんですよね。役者業は、演出家なり監督から言われたままをやっているので、どういうシーンになろうが自分は“責任ゼロ”だと思ってるんです。だけどコントは、作ってるのが自分なので、責任が大き過ぎるんですよね。 ――『ニコニコキングオブコメディ』(サイゾーテレビ)でも、この映画のお話をたびたびされてますが、“鈴木太一監督のダメさ”のお話ばかりで、作品の素晴らしさについてあまり語ってないのでは? 今野 確かに(笑)。でも伝えたいことは、やっぱり監督のダメさなんですよ。あの人は、監督というより脚本家なんですよね。撮影の時、僕らが監督に演じ方を聞くじゃないですか。でも、そもそもそういう質問が来ると思ってないから、何も返ってこないんですよ(笑)。そういうところがイラッとするので、この映画の面白さを、あの監督のおかげだと思われたくないんです(笑)。 ――現場で演出をしないで、監督は何をされてたんですか? 今野 見てる。見学の人ですよね。 ――そんな監督も、現在は自らサンドウィッチマンとなって、各地でビラ配りのプロモーション活動を頑張ってますよね。 今野 あれね~~、僕らが出るお笑いライブの会場前でも、ちょくちょく配ってるんですよ。僕がいるところで、気持ち悪いおっさんが僕の顔のアップのビラを配ってると思うと、もう恥ずかしくてしょうがないですよ。遠くに行ってくれって思います(笑)。 ――映画の公式サイトには、ビラを配る監督の勇姿が、ドキュメント風の動画でいくつもアップされてますね。 今野 あれって『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』と、まったく同じ宣伝方法なんですよ。いい加減、怒られてもいいのに(笑)。ただ、『サイタマノラッパー』はボランティアスタッフの人数がすごいから成功してるんです。だから僕は、監督に「この映画は、クチコミでしか広がらない映画なんだから、『Yahoo!』のユーザーレビューとか書きなさい」って前から言ってるんですけどね……。 ――そんな鈴木太一監督が初監督を務めた映画『くそガキの告白』について、最後に読者へPRをお願いします! 今野 おそらくテアトル新宿あたりで、監督が割引券とかを配ってると思うので、それを手に入れて、1,000円とかで観ていただければと思います(笑)。とりあえず観れば面白い映画なので、観てください! (取材・文=林タモツ) ●『くそガキの告白』 監督・脚本/鈴木太一 出演/今野浩喜(キングオブコメディ)、田代さやか、辻岡正人、今井りか、仲川遥香(AKB48)、北川ひろし、高橋健一(キングオブコメディ)、石井トミコ 6月30日よりテアトル新宿ほか全国順次公開 <http://kuso-gaki.com> ●こんの・ひろき 1978年、埼玉県生まれ。高校卒業後、プロダクション人力舎スクールJCAに6期生として入学。2000年より同期生の高橋健一とコンビ・キングオブコメディとして活動。05年、第3回お笑いホープ大賞受賞。2010年、「キングオブコント2010」優勝。俳優として舞台『サボテンとバントライン』(09)、『天才バカボン』(10)、『男子はだまってなさいよ!8 アダルト』(11)、『鎌塚氏、すくい上げる』(12)、連続ドラマ『ティーンコート』(日本テレビ)、映画『ちょんまげぷりん』など出演。12年4月よりNHK Eテレ『テレビスポーツ教室』ナレーション担当。サイゾーテレビ『ニコニコキングオブコメディ』出演中。

ヒロシさんの至言「女の人はね、僕と約束してる日にカゼひくんですよ」

hiroshi_akari01.jpg モテない、金ない、華もない......負け組アイドル小明が、各界の大人なゲストに、ぶしつけなお悩みを聞いていただく好評連載。第33回のゲストは、DVD『ドキュメンタリーオブヒロシ~空白の1500日~』が絶賛発売中のヒロシさんです! [今回のお悩み] 「相談に答えてほしいのですが……」 ──わーヒロシさんだ! 本日はよろしくお願いいたします!  すいません。はい。すいません。 ──……なんで謝るんですか?  いや、謝っとけば間違いないんで……。 ──……。えっと、うちは親子そろってヒロシさんのファンで、ヒロシさんと対談させてもらえるって言ったら母親が凄く喜んで、デコメで「よろしく伝えて(はぁと)」って言ってました(笑)。  お母さんでしょ? よく言われるんですよ、「お母さんがファンです」とか「おばあちゃんがヒロシのネタに反応するんです」とか……。最近、久しぶりに本を出したんですけど、読書カードってのが挟んであるじゃないですか? それを見てたら、全部60オーバーなんですよ。若い人でも40代。若い人で「私がファンなんです」って人、あんまりいないんですよね。タレントさんとかでも、人づてに「この子、ヒロシのファンなんだってよ~」って聞いてたのに、現場で会ったら「あ、どうも」みたいな……なんなんでしょう? ――え? いや、あの、えーと、私、ファンです……よ? 気を取り直して、ヒロシさんの新しいDVD『ドキュメンタリーオブヒロシ~空白の1500日~』(コンテンツリーグ)はすごい内容でしたね~! ただ……発売がたった200枚っていうのは本当なんですか?  愕然としましたね……。作ったのはもっと多いんですけど、実際に店頭に並んだのは200枚だって。ぼく、本とか出すときは、「だいたいどれくらい売ればトントンになるんですか?」って聞いて、そこを目指すんですけど、一番最初の打ち合わせで「1,500枚」って言われて、「じゃ、1,500枚売れば元も取って、みなさんにギャラを払えるレベルか~」と思ってたのに、200枚って……。 ──どんだけ売れてないアイドルでもその数字はあり得ないですよ! だってヒロシさんの『ヒロシです。』(単行本/扶桑社/2004年)は30万部ですよ!?  そう。DVDだと『ヒロシ会』(ユニバーサルミュージック/05年)が4万5,000枚くらいかな。それで、これが200枚(笑)。 ──笑ってないで、怒ったほうがいいですよ!  怒ってもね、しょうがないよね。 ──しかも発売イベントはスタッフが会場を取り忘れて、場所が……土浦でしたっけ?  そう、土浦のイオンモール。よくご存知で。で、「とりあえず場所は押さえたから行ってくれ」って言われて、バタバタでチケット取って行ったんですけど、振り返って考えたら、ぼく、交通費だけで7,000円くらい使ってるんですよ。このDVDは3,000円なんで、そのお金で2枚買っほうがいいですよ。どうせぼくには1円も入ってこないだろうし……。そのイオンモールでも、ぼく、ネタを2回やってね、サイン会もやって、80枚も売ったんですよ? 現物がないのに。 ──えっ、現物ないんですか? 発売イベントなのに?   そうですよ! 「どっかにないんですか?」って聞いたら「静岡の倉庫にしかない」って……おかしいでしょ!? ──DVDないのに、何にサインするんですか?  えっとね、小さいサイン色紙を買って行ったの。さらにそこで買ってくれたお客さんは、送料の分、500円多く払わなきゃいけないんですよ? ほんと申し訳なくてね……。 ──アマゾンで買った方が安いですね……。  ほんとにそうなの……。ぼく、Twitterとかブログをやってるんですけど、コメントを見たら、やっぱり「売ってねぇんだけど?」っていうのばっかりで、「買いました!」っていうのが全然ないんだもの! 最初はそれに「申し訳ありません」って返事してたけど、だんだん「なんでこんなことやってるんだ」って思ってきちゃって……。 ──なぜかヒロシさんがすごい謝ってましたね。  そう。なんで俺が謝んなきゃいけないんだろう……。 ──発売後までネタになる話が満載ですね!  そんなつもりは全然ないのに……。やっぱりこれはドカンと売って、「ヒロシ、やっぱり作ったら売れるんだな!」とか、そういう風に思われたかった……。 ──でも、DVD自体はすごくいいドキュメンタリーでしたよね。お笑いブームの時に密着していたスタッフが、ブームが去っていくとともに密着をやめて、ヒロシさんの立場がどんどん危うくなっていく様子とか、切なすぎてお腹が痛くなりましたもん。こういうドキュメンタリーって、どれくらい台本があるものなんですか?  台本っていうのはほとんどなくて、大まかなことしか決めてないですよ。あとの流れは全部アドリブで。 ──離れていくドキュメントのスタッフに「前にNG出した九州の実家取材の話ですけど、アレ、やっぱりOKなんで!」って食い下がる様子とか、AVの人がだんだんNG事項を減らしていくのってこういう感じなのかな、と感慨深かったです……。でも一番ズーンときたのは、九州の実家取材のために自分でわざわざレンタカーを借りて、その車内でヒロシさんがスタッフにめちゃめちゃ気を使っておどけて、それでもやっぱり無視されたりして……もう、自分の学生時代を見ているようで……!  はははっ! ああー伝わってる、ちゃんと伝わってるんだねぇ……。 ──沈黙を恐れてはしゃぐ感じとか、学生時代に間違ってレベルの高いグループに入っちゃって、がんばって盛り上げるけど、やっぱり会話に入れてもらえない、みたいな思い出が蘇って、胃がキリキリしました。  そうそうそう! コンパとか行ってもしゃべれなくて、しゃべらなきゃと思って下ネタ言ってスベる、みたいな。ワンランク上に行こうとしてね……。でも、小明さんってそんな人ですか? 中学高校のときも一軍だった女の人みたいに見えるけど。 ──ありがとうございます、中学をひきこもりで過ごさせていただきました。  あ~、そうですか~(うれしそうに)。 ──それで高校からがんばり始めて、調子に乗ってグラビアを始めて、売れなくて、こじらせ続けて、現状です。  なるほどね~。そっかそっか~(すごくうれしそうに)。 ──このドキュメンタリーは、ヒロシさんの自叙伝の『沈黙の轍』(単行本/08年/ジュリアン)を読んでから見ると余計に辛いですよね。炭鉱の町で純粋に生きていた健一少年が、どうしてこんなことに……と。  えー! 読んだんですか? ありがとうございます! ──文章がお上手でびっくりしました、すごくちゃんとした短編集ですよね。  おー! おー! おー! だんだん気持ちよくなってきましたよ! でも、そんなこと言って帰りにエレベーター乗った後に舌をぺろっと出すんじゃないでしょうね? 「言ってやった(笑)」みたいに言うんじゃないでしょうね? もう人を信じられないから、俺は。危うく気持ちよくなったけど、もう気持ちよくなりませんから。騙されませんから。 ──なんでそんなに人を信じられないんですか! でも、本当にこういう文才も、世間の人にいまいち届いていない感じで残念ですよね。  そう。だから引き出せないんですよ、事務所が。俺はいろいろ提示するけど、「それはない」とか言われるから、辞めてやろうと思ってんの。ははは。 ──ヤケになっている! この『沈黙の轍』もご自分で書かれて、ご自分で持ち込みに行かれたとか。  そうですよ、全部そうです! 打ち合わせも全部ひとりで行って、編集の人を家まで車で送ったりして……。その『沈黙の轍』の表紙は実家がある炭鉱の町で撮ったんですけど、まずスタッフのみんなで福岡まで飛行機で行って、そこから俺が自分で車を運転してみんなを地元まで連れて行きましたから。 ──うわ! リアル『ドキュメンタリーオブヒロシ』! ちなみにこの本はどれくらい売れたんですか?  これはね、2万5,000部て聞いてたんですけど、おとといくらいに、「実は1万5,000部しかはけてなくて、1万部在庫が残ってる」っていうのを聞いて……。 ──でも、出版不況の中、それだけいったらかなり立派ですよ! 前の『ヒロシです。』とその続編もあわせたら、全部でどれくらい売れたんですかね?  えっとね、あわせて50万部くらいかな。 ──家が建つくらいの額じゃないですか!!  そうですね、普通に考えて、小さい家なら建ちますね。けどね、持って行くから。事務所が。税金も持って行くから。 ──ああ……。なんか、言葉を失います。えっと、ヒロシさんは、昔39万円の家賃の部屋に住んでいたと聞きますが、今もやっぱりそれなりに良いところにお住まいなんですよね?  今は4万3,000円。 ──嘘でしょ!?  いとこの家に住んでます。もう、ぼくね、贅沢いらないんですよ。ほんとは千葉に家を買おうと思ったけど、実際に見てみたらすごい山の中でね~。これはひとりじゃ鬱がひどくなると思って。 ──鬱は悪化しますよね。私、今都心を離れて窓からの景色が畑っていう戸建てに住んでるんですけど、都心で感じる孤独と、人がいないところで感じる孤独は桁違いです。  でた! マジですか!? 思い切ったことやりますね~! ──とりあえず、寝酒が進みます。あは……。  え~? そんなところ行こうと思わないですもん~! ちょっとした旅行になりますもんねぇ(やっぱりうれしそうに)。 ──ええ……。  ぼくもねぇ、そういう場所に家を借りてやっていこうかと思いましたけど、そこまでの勇気がなくて、結局川崎の一軒家を借りたんです。二階建てで屋上があって、ぼくはそこで家庭菜園なんか楽しめると思って借りたんですけどね、そのー、ひとりで一軒家って、すごい苦痛だなって思いましたね。「屋上がいいな~」と思って借りたんですけど、階段で行くからキツイんですよ。だから、結局は二階の一部屋を半分に仕切って、わざわざ狭いスペースを作ってそこだけで生活してました。 ──私も見事に一部屋の隅しか使ってないです。  そうでしょー? ただぼくの場合、ずっと狭い場所に住んでたから、一回は良いところに住みたいと思って、家賃39万の東京タワーが見える部屋を不動産屋に乗せられて借りちゃったんですけど、実際住んだら、「いらねえな……」って。 ──でも、そんな部屋だったら女性も連れ込み放題ですね!  そのときは超忙しくて、39万払ってもほとんど家に帰れてないんですよ。意味ないんです。 ──ホスト時代、冴神剣さんだった頃に住めればもろもろうまくいきそうなのに、都合良くいなかいものですね~。ホスト時代は公園で暮らしてたんですよね?  公園には3週間くらい住みましたね。完全歩合で、ぜんぜん指名がなかったので、基本的に給料がないんですよ。月曜から土曜までホストやって、えー……だいたい月に3万円くらいだったかな、給料。それでお金が足りないから日曜はコンビニでバイトしてましたもん。そんなんじゃ、どんな安いところでも借してもらえないから、2年間くらい家がなかったですね。 ──その当時はもう芸人さんだったんですよね、どんなお仕事をされてたんですか?  当時は別の事務所に所属していて、コンビで売れようと思っていたから、相方がいたんです。で、相方が辞めるって言いだして……。それから滅多に受からないオーディションに受かったんです。内容は教えてもらえなかったんですけど、「とりあえず2~3日分の着替えだけ持ってこい」って言われて、変なワゴン車に乗せられて、埼玉のえらい奥の方に連れて行かれて、「あそこの家を訪ねなさい」って言われて行ったら土建屋の親父が「遅い! 着替えろ!」って怒ってて、そのままとび職の現場に連れて行かれて、そこで住み込みで働いて……。 ──……え? すみません、それ芸人さんの仕事ですよね?  そういう企画だったみたい……。一応テレビの特番なんですけど、2カ月間しっかり土木作業をやって働いて、給料振り込まれてるの見たら、2万5,000円。もう携帯も止められてるし……。 ──テレビの企画にかこつけて、タコ部屋で働かされたような……。でもやっぱりテレビですし、放送後の反響は?  なーんもない。 ──……。  (失笑)。 ──……えっと! 音楽活動の話とかも聞かせてもらっていいですか!? ヒロシさんは学生時代にコピーバンドをやられてたんですよね、何のコピーバンドをされてたんですか?  なんだろ、結局、流行ってるのをやったんで、最初はXがまだメジャーにいく前のCDをコピーしたりとか、BOφWYとか、ZIGGYとか、そういうのをやってました。 ──バンドブーム世代ですし、バンドってモテますよね。  そうなんです。だからそれ目当てでやったんです。 ──でしょ? モテるはずなんです。なので、いまいち、そのヒロシさんのひねくれた根っこが見えなくて。あの、青春時代を謳歌できた人って……。  ひねくれない、でしょ? 学生時代にバンドやってるって、一見、謳歌してるように見えるでしょ? でも実は何も謳歌してないんですよ。バンドブームって言ったって、モテない人が作った童貞バンドなんか何も潤わないよ。みんな童貞なんだもん。やっぱ、人気あるバンドはみんな彼女がいてチヤホヤされるし、バンドでもそこにもう確実な格差があるもん。 ──あわわ、でも今でもかなりまじめに続けられてますし、人気なんじゃないですか?  結局ぼくのファンしか来ないから、何人か残存している、コアな8人くらいが来てくれるくらいです。 ──お笑いとバンドって、モテるツートップですけれども。  そうですよね、うふふ。……あれ? なんで? おかしいですよ。なんでモテないんですか? ──なんででしょう……。あの、試しにご自分からガツガツいかれてみては?  自分からいっても気に入られないから、どうしようもないよね。だって、ネタにもしてるけど、みんなカゼ引くんですよ、約束してる日に。 ──私もカゼひいたことあります(笑)。  カゼひくでしょ? ひいていないのに。 ──前日の夜になると急にひくんですよ、なぜなんでしょうね。  そうでしょ? それですよ。女の人と一生会えないんじゃないかと思うもん。あと、「犬に餌あげなきゃいけない」とか、「友達が泣いてるから慰めなきゃいけない」とかさー、よくわかんないこと言ってさー。 ──そこから生まれたのか分からないですけど、「コンドームが減りません」って言うネタが好きです。  コンドームが減らないんですよ……! ドンキホーテでダース買いしたのに、下手したらまだ封もあけてないっていう……。 ──私も4~5年前に海外に行くとき、友達から「海外は危ないから!」って持たされたコンドームが、先日そのままの姿で出てきましたよ。海外も国内もぜんぜん危なくなかったです。ネタってかなり実話が多いんですね……。  だいたいそうですよ、分かりやすくはしてますけど。 ──売れた後も、なおひねくれて続けているのはすごいですね、どこかで満足してしまいそうなのに!  モテないからですよ、単純に。 ──『ヒロシ会』のDVDでは観客の女の人が「ヒロシさんかわいかったですー」って頬赤らめてましたよぅ。  女性ってブームに弱いじゃないですか。現にもういなくなってるじゃないですか。今、だーれもいないじゃないですか。この『ヒロシ会』は一日だけやった単独ライブを収録したものなんですけど、恵比寿エコー劇場で、もう満員で入れないのに「入れろ! 入れろ!」って外でケンカが起きて、救急車で女性がひとり運ばれてるんですよ? ──ギャー! すっごい!  いま来りゃあ普通に入れるのにね? いまぼくがやってるバンドなんか、普通に来て普通にしゃべってるんですから、全然救急車呼ばなくてもいいのに、来ないでしょ? だから、「いまブームだから」っていう理由で来てるんですよ。そのときからそう思ってたから、もう一切信用できないですよね。 ──ヒロシさんの「一生応援します」ってファンレターに書いてた人が一切いなくなったけど、みんな死んだんでしょうか……ってネタ、ゲラゲラ笑いましたけど、実話と思うと悲しいですね。  そうですよ!「一生」「死ぬまで」って言ってたの来ないんだから、死んだんだなって。死んでるんですよ、みんな。 ──なんか……大変な人生ですね。  ほんとですよ。普通の人がぼくと同じ経験してきてたらね、どっかで自殺してますよ。 ──父親が炭鉱で働いてる時点で、ちょっとこう、背負うものがありますもんね。  あるでしょ? 炭鉱ってきいて絵が浮かぶでしょ? なんかその風情が。 ──うちの父親は炭鉱じゃないんですけど、地下鉄作業員の下請けの下請けで……。  ああっ、似たようなもんだよねぇ(うれしそう)。 ──しかもリアルにそこをリストラされてるところとかを見てしまって、子供心に複雑でしたよ。ヒロシさんは、ご家族とは仲いい方ですか?  えっと、ぼく弟がいるんですけど、20数年話してないですね。会ってないです。 ──あはは! 上京から一切連絡とってない感じ!  そうそう。こないだ実家に帰ったら知らない女の子がいて、「誰?」って聞いたら弟の子どもで、もう小学校4年生だって。それでぼくは弟の娘に人見知りして……しばらく無言でいたら「おじちゃん、しゃべんないんですね」ってボソって言われて……。 ──子どもに敬語を使われるってのもまた妙に辛いですよね、いっそバカな子どもだったらよかったのに……。  そうなんですよね、ワーッ! って来てくれればまだ対応できたかもしれないけど、「しゃべんないんですね」って言われたら、もうたまらなくなって家を出ようとしたら、「おじちゃん、また遊びに行くんですか?」って言われて……会話はその二言だけでしたね。はぁ。 ――あ、あはは……。あの、なんていうか、ヒロシさんは、テレビとインタビューではしゃべりが微妙にちがうんですね。  そうなんですよ……! ぼく、テレビ出ると緊張するんですよ、華やかでおしゃべり達者な人たちが並んる中になんて入って行けないじゃないですか? 打ち合わせだったらしゃべれるんです。けど、本番になったら黙って座ってるだけ。たまに振られて「ヒロシです……」って言うだけなんですよ。 ──なんかこう、えーと、残念ですね……。  残念なんですよ……。小学校のとき、クラスで「はい! はい!」って手を挙げるタイプじゃなかったでしょ? ──はい。できるだけ先生と目を合わせないようにしてました。  ね? でも、そこで「はい! はい!」って言わなきゃいけないんですよ、テレビに出たら。前へ前へ行かないと……! ──もう、ヒロシさんがひな壇に座ってるのが奇跡のように思えてきました。確かに、みんなと一緒に立ち上がって「ちょっとちょっとー!」って言ってるヒロシさんは想像がつきません。  そう、言えないんですよ。でも言わなきゃっていう、もやもやっとした感じ。もう、「ああああああああああ!」って言いそうになるもん。画面上では、だまーってるだけに見えるけど、ぼくは発狂しそうになっている。「あああああああああああ!」って言いたくなるのを我慢して、じーっとしてるんです。 ──思ってたよりずっとギリギリな精神状態でテレビに出られてたんですね……。でも、ヒロシさんの著書には、よく後書きの部分にモテない人や報われない人生を歩んでいる人への暖かいメッセージが書かれているじゃないですか。あれ、泣けるんですよ。ヒロシさんのネガティブなネタに、そんな熱い想いが込められていたと気づいて、ハッとします。  そうなんです。そういうのはなかなか伝わりづらいけどね。ぼく、いちばん悔しいのは、中学生とかで自殺しちゃう人いるでしょ? そういうの、いたたまれなくてねぇ。いじめてるやつなんて、絶対たいしたことないのに、そのときは大きな存在じゃないですか? 学校の先生もたいしたことないのに偉そうに言うから、「俺が悪いのかな?」って思うかもしれない。けど、絶対そんなことはないんだよっていうのを伝えていきたいなって。でも、ぼく自身がバカにされてる存在だから、それはなかなか伝わんない。だから、本にちょっとだけそういうのを入れたりとかね。 ──今まで何の気なしに笑ってた自分が恥ずかしいですよ。『ヒロシです。華も嵐も乗り越えて』(東邦出版)に書いてあった、「九九が覚えられなくて教室に残されて、人よりも劣ってる欠陥人間なんだっていう気持ちをずっと引きずってる」っていうの、すごくわかります。私もずっと給食が食べ終わらなくておもらししそうになったり、いくら残って練習しても、ひとりだけ逆上がりができなかったり……。  ねー。でもねー、逆上がりなんかできなくたってね、金儲けはいくらでもできるんですよ。でも、そのときの子どもには、それがすべてじゃないですか。逆上がりができたほうがモテるわけじゃないですか。足が速いほうがモテるわけじゃないですか。でも、いろんな才能があるわけじゃないですか。例えば写真を撮る才能があっても、小学校でそんな授業なんかないし、それだけじゃない、いろんな商売があるってことを知ってもらいたいですよね。だってこうやって愚痴言って金もらう仕事も、作ったわけですから、ぼくが。ずっと愚痴言い続けて。 ──本当ですね。なんだか思いもよらず良い言葉をいただきました。ありがとうございます!  そうでしょ。あと、メッセージとか発信してると、なんか、ちょっとかっこいいじゃない。モテそうじゃない。ちょっと尾崎豊っぽくて、ふふふ! 「こういう一面もあるのね、ヒロシちゃん」って思われたらいいな、と思って(笑)。 ──あっぶな! まんまと手中にハマるところでした! でも、この『ヒロシです。』に書いてある「マイナス要素を抱えながらも、絶対にモテてやろうと思ってます。だから、あなたも諦めないで」っていうくだりは、すごく希望になりますよ。ヒロシさん、絶対モテてくださいね!!  そんなん言いながら、やっぱりモテてはないんですけども、ただ、あのー……実家に帰ってね、同級生とかと会うとね、当時イケメンって言われてた人たちが、どんどん劣化してるんですよ(笑)。ぼくは学生の時に超くやしい思いしてるから、そういう一軍の男子たちがハゲてたりしてると、もう、たまらない幸福感に包まれて……(満面の笑み)! ──また、地元にいる人たちって、ちゃんと働いたり子どもを育てたりで忙しいから、外見的に年をとるのが早い感じがしますよね。  そう! ふはははは! 早いんですよー! そうそう、こないだね、たまたまテレビでぼくの地元までロケに行ったんです。そしたらそこの観光協会かなんかで働いてる作業服の人が、「斉藤くん」って、ぼくの本名を呼んできてね、話聞いたら高校んときにヤリまくってた男で、「チッ」と思って終始覚えてないふりをしてやりましたね、ふははは! たまんなかったなアレは! 他にも「俺だよ、なんとかだよ」って言われて、「あ~あいつか」って分かっても気づかないふりをしますよ。一瞬「誰だっけ?」って間を空けてから、「あ~!」ってね。 ──「当時の自分だって、お前なんて別に眼中になかったから」っていう強がり!  そうそう、それがぼくの復讐です。たまんないです。今すごい幸せです。 ──幸せが、暗い……! ヒロシさんは普通に職につこうと思ったことはないんですか?  こういう仕事する人って、たぶん、普通の生活できない人たちでしょ? ぼくも一回だけサラリーマンになったんですけど、1カ月目で「辞めさせてくれ」って言いに行ったくらいだから、耐えられなかったんです。サラリーマンに。 ──ちなみに、どういう仕事内容だったんですか?  保険を売る仕事です。 ──またずいぶん社交性の求められるものを!  そう、知らないところにいっぱい電話しなきゃいけない。1カ月で心が折れて、出勤しないで家で寝てたんですけど、家に偉い人がきて、「おめえ何やってんだ!」って起こされて、「ああっ」って……。「せめて半年はやりなさい」って言われて、半年やって辞めました。 ──さっきから他人とは思えないエピソードばかりです。性別と時空を超えて、すごく共感をしています。  やっぱりねぇ、そういう人って話があいますよねぇ。だから、ダメなスパイラルがずーっと続くわけですよ。ぼくも、暗くてB型の人とよく話が合うからね。 ──うわ、私、暗くてB型です……!  そうでしょ(笑)? で、そういう人とばっか接してると、「こっちの思考が王道だ」って勘違いするようになるから、よくないんですよ。 ──そうなんですよね。たまに明るい人たちと話すと、「うわ、自分ってゴミ」と実感して落ち込んだりします。  そうそう。でもこっち側にいると、「やっぱおかしいよねー?」「あんなところであんなカラオケ歌うのおかしいよねー?」って。全然おかしくないんだけど、「わかるわかるー!」ってなるわけですよ、だから良くないんですよ。 ――わああ、私だ、私がここにいる! 私はもう本当にますますヒロシさん大好きですよ!  ほんとですか? なんだかうれしいなぁ。 ──そんなところで、ちょっと私の相談に答えてほしいんですけどもー。  無理ですよー。こっちが答えてもらいたいくらいですー。 ──(無視して)私もけっこうネガティブなんですけど、やっぱり、こう、「ネガティブは良くない」って言われがちじゃないですか? ぼやいたり愚痴を言ったり卑屈になったりとか、そういうことをずっとしてると、そのうちそれに飲み込まれて、もう戻れなくなる、と。  言われますよねぇ。 ──でも、なかなか直るものではないし……。  直らないです。でも、こうやって、取材して書くっていう立場にいらっしゃるわけじゃないですか。ぼくも本気でネガティブなんですけど、たぶん、大まかにはポジティブなんですよね。 ──私はポジティブというか、根が図々しいような気がしてます。  そう。一個一個は図々しくないんだけど、なんか大胆なところで多分そうなんです。だって、普通ネガティブな人がグラビアアイドルなんかならないでしょ? どっかで「私はあいつらよりモテるんだ」「イケるはずだ」って考えられたくらいのポジティブさがあったわけでしょう? ぼくもそうなんです。一個一個は全部ネガティブだけど、すごく、大きな流れではポジティブなんですよ。だってモテない人が「お笑いやってモテてやろう」と思ったんですから。自分で言うのもなんだけど、そういう人はまだ良いんじゃないですか? こういう風に仕事として、お金もらうわけじゃないですか。 ──確かにそうですよね……。今はまだネガティブな部分に対して、憤ったり、妬んだり、僻んだり嫉んだりする体力がありますけど、年をとったらどうなってしまうんだろう。  そう、危険なのが、こうやって注目されてるうちは愚痴がお金になるからいいけど、飽きられるでしょ? ──そうなったら、大ピンチですよ!  ピンチとネガティブさだけが残っていくから、やっぱりキツイですよね……! ぼくだってテレビに出なくなってからもネガティブな思考はそのまま残ってるわけだから、キツかったですよ。今は仕事してるから笑って話せるけど、これがなくなったら、ほんとキツイもんな、人と話す機会もないし。これは……ちょっとどうにか解決しなきゃいけないですよね……。 ──積極的に幸せになりにいくのが一番いいと思うんですけど、ヒロシさんは幸せになったら、もうネタが増えないじゃないですか? そうして無意識に幸せから遠ざかろうとしているのでは?  いやいや、幸せになったほうがいいですよ! 絶対! ──たとえば、所帯をもってみたりとか。  いやーそれは危険だなー。浮気されたらどうしよう、とか。 ──え~そこですか? 大丈夫でしょう、それは~。  だって結婚したら離婚するときにお金半分あげなきゃいけないんでしょ? 冗談じゃないよ! 実際、浮気されて離婚して金とられたって人が何人もいるんすよ、ぼくの周りに! でも法律ではそうしなきゃいけないらしくて、最悪じゃないですかー。 ──「浮気はしないと言っていた彼女の家に行ったら、便座があがっていたとです」ってネタもありましたけど、あれも実話だったんですねぇ。  そうそう、毎回あがってるんですもん! 便座あげるときって掃除するときくらいでしょ? 別に綺麗になってないのにあがってるんですよ! もっと言っちゃえば、ゴミ箱から精子のにおいがするんですよ? ぼく、なんにもしてないのになんでにおいがするんだろうって……。 ──だんだん、本当に付き合っていたのかどうかも心配になってきますね……。  そうなんですよ。もう「人間のお付き合いってなんだ?」ってことですよ。もっと言えば、「結婚ってなんだ?」ってことになってくるですよね。「病めるときも~」って神様の前で約束するのに……お前らは簡単に破るじゃないか!! ──女性不信すぎますよ!! でも、ほら、えーと、最近またテレビにも出るようになられて、また波が来てるじゃないですか!  来てますか? そんな感じは一切しないですけど……。 ──ヒロシさんの場合は、「最近見ないよね」「消えたよね」って言われてても、本を出したりラジオをやったり、普通に活動はされてるんですよね。でも地上波に出てないだけで消えたような扱いになっちゃう。私はグラドルでデビューして、最初だけほんの少しだけ出て、すぐ売れなくなったんですけど、今でも希に「あー昔グラビアで見たよね、今いないね」って言われることがあります。でも、ページがカラーグラビアから白黒の文字ページに移動しただけで、微妙に消えてはいないんですよ。でも可愛いグラドルが好きな人たちなんて、誰もこっちまで見てくれない。  うんうん。でもね、「サイゾー」でページを持ってるなんて立派ですよ。俺なんてアレくらいのブレイクを見せて、何も残ってないじゃないですか。 ――そんなことないじゃないですか、なんか、確執みたいなものが残ってると思いますよ。  確執だけ残ってもしょうがないじゃないですか! ほんと、いつまた落とされるかわかりませんし、「サイゾー」なんて良いですよ、しかも連載でしょ? ……サイゾーさん、このページで、ぼくでひとつ、なんかやってくださいよ……。 ──え! ちょっと、普通に私の連載枠を狙わないでください!  いや、あの、ノーギャラとかでも全然いいんで、あ、この、こことかでもぜんぜん大丈夫なので!(編集雑記を指さしながら) ――ちょ、やめてください! きょ、今日はどうもありがとうございました! (取材・構成=小明) ●ヒロシ 1972年、熊本県生まれ。コンビ芸人、ホストなどを経て、2003年ころからピン芸人としてブレイク。「ヒロシです……」で始まる自虐ネタで一世を風靡した。DVD『ドキュメンタリー オブ ヒロシ~空白の1500日~』発売中。 ●あかり 1985年栃木県生まれ。2002年史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/> サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中 ニューシングル「君が笑う、それが僕のしあわせ」発売中<http://cyzo.shop-pro.jp/> 月刊サイゾーにて「卑屈の国の格言録」連載中。 小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談バックナンバー 【第32回】 ジャルジャルさんの至言「僕らのネタに深い意味なんかないんです」 【第31回】 オリエンタルラジオさんの至言「"変わってるって思われたい自分"も見透かされてる」 【第30回】 大槻ケンヂさんの至言「ネガティブを売りにすると自家中毒に陥るんです」 【第29回】 辛酸なめ子さんの至言「なんか、つい交尾の話とかしちゃうんです」 【第28回】 みうらじゅんさんの至言「アイドルライターってなんなの?」 【第27回】 山路徹さんの至言「バラエティーが怖いようでは戦場に行けないですよ」 【第26回】 浅草キッド・玉袋筋太郎さんの至言「相手がクンニしてる顔を思い浮かべなさい」 【第25回】 前田健さんの至言「自分は赤毛のアンの生まれ変わりだと思ってる」 【第24回】 叶井俊太郎さんの至言「結婚したければ高2で100人斬りの男を探しなさい!」 【第23回】 須藤元気さんの至言「僕の本なんて、ギャグみたいなものですよ」 【第22回】 オアシズ大久保佳代子さんの至言「本当はOLを辞めたくなかったんだよなぁ......」 【第21回】 Kダブシャインさんの至言「宇多丸は、Kダブをシャインさせない」 【第20回】 楳図かずおさんの至言「世界を相手にやっている人は、友達作っちゃうと危ない!」 【第19回】 キングオブコメディさんの至言「いつ辞めてもいいから、続けられるんです」 【第18回】 バカリズムさんの至言「モヤモヤは、そのまま持ち帰って立ち向かいます」 【第17回】 島田秀平さんの至言「小明さんの手相にはアブノーマル線があるんです」 【第16回】 小森純さんの至言「写真のチェックとか、自分では一切しないんです」 【第15回】 堀江貴文さんの至言「もうメジャー路線っていうものは存在しないかもしれない」 【第14回】 稲川淳二さんの至言「自分の子どもを殺そうか、と思った自分が一番怖かった」 【第13回】 蝶野正洋さんの至言「自分の役割の中で、最大限に光らなきゃならない」 【第12回】 有野晋哉さんの至言「アイドルは『育ちがええねんなー』っていうのが大事です」 【第11回】  鳥居みゆきさんの至言「やりたくないこと、やらないだろうな、ってことをやるの」 【第10回】  宇多丸さんの至言「人にはだいたい『ちょうどいい』ところがあるんです」 【第9回】  桜木ピロコさんの至言「あたしいつもだいたいいやらしいことしてるもん!」 【第8回】 伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」 【第7回】 ルー大柴さんの至言「ライフっていうのはマウンテンありバレーありです」 【第6回】 大堀恵さんの至言「私、いつも『アンチ上等』って思ってるんです」 【第5回】 品川祐さんの至言「なったらいいなと思ってることは、だいたい実現する」 【第4回】 福本伸行さんの至言「俺は『面白いものを作ろう』じゃなくて、作れちゃう」 【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」 【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」 【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」

ヒロシさんの至言「女の人はね、僕と約束してる日にカゼひくんですよ」

hiroshi_akari01.jpg モテない、金ない、華もない......負け組アイドル小明が、各界の大人なゲストに、ぶしつけなお悩みを聞いていただく好評連載。第33回のゲストは、DVD『ドキュメンタリーオブヒロシ~空白の1500日~』が絶賛発売中のヒロシさんです! [今回のお悩み] 「相談に答えてほしいのですが……」 ──わーヒロシさんだ! 本日はよろしくお願いいたします!  すいません。はい。すいません。 ──……なんで謝るんですか?  いや、謝っとけば間違いないんで……。 ──……。えっと、うちは親子そろってヒロシさんのファンで、ヒロシさんと対談させてもらえるって言ったら母親が凄く喜んで、デコメで「よろしく伝えて(はぁと)」って言ってました(笑)。  お母さんでしょ? よく言われるんですよ、「お母さんがファンです」とか「おばあちゃんがヒロシのネタに反応するんです」とか……。最近、久しぶりに本を出したんですけど、読書カードってのが挟んであるじゃないですか? それを見てたら、全部60オーバーなんですよ。若い人でも40代。若い人で「私がファンなんです」って人、あんまりいないんですよね。タレントさんとかでも、人づてに「この子、ヒロシのファンなんだってよ~」って聞いてたのに、現場で会ったら「あ、どうも」みたいな……なんなんでしょう? ――え? いや、あの、えーと、私、ファンです……よ? 気を取り直して、ヒロシさんの新しいDVD『ドキュメンタリーオブヒロシ~空白の1500日~』(コンテンツリーグ)はすごい内容でしたね~! ただ……発売がたった200枚っていうのは本当なんですか?  愕然としましたね……。作ったのはもっと多いんですけど、実際に店頭に並んだのは200枚だって。ぼく、本とか出すときは、「だいたいどれくらい売ればトントンになるんですか?」って聞いて、そこを目指すんですけど、一番最初の打ち合わせで「1,500枚」って言われて、「じゃ、1,500枚売れば元も取って、みなさんにギャラを払えるレベルか~」と思ってたのに、200枚って……。 ──どんだけ売れてないアイドルでもその数字はあり得ないですよ! だってヒロシさんの『ヒロシです。』(単行本/扶桑社/2004年)は30万部ですよ!?  そう。DVDだと『ヒロシ会』(ユニバーサルミュージック/05年)が4万5,000枚くらいかな。それで、これが200枚(笑)。 ──笑ってないで、怒ったほうがいいですよ!  怒ってもね、しょうがないよね。 ──しかも発売イベントはスタッフが会場を取り忘れて、場所が……土浦でしたっけ?  そう、土浦のイオンモール。よくご存知で。で、「とりあえず場所は押さえたから行ってくれ」って言われて、バタバタでチケット取って行ったんですけど、振り返って考えたら、ぼく、交通費だけで7,000円くらい使ってるんですよ。このDVDは3,000円なんで、そのお金で2枚買っほうがいいですよ。どうせぼくには1円も入ってこないだろうし……。そのイオンモールでも、ぼく、ネタを2回やってね、サイン会もやって、80枚も売ったんですよ? 現物がないのに。 ──えっ、現物ないんですか? 発売イベントなのに?   そうですよ! 「どっかにないんですか?」って聞いたら「静岡の倉庫にしかない」って……おかしいでしょ!? ──DVDないのに、何にサインするんですか?  えっとね、小さいサイン色紙を買って行ったの。さらにそこで買ってくれたお客さんは、送料の分、500円多く払わなきゃいけないんですよ? ほんと申し訳なくてね……。 ──アマゾンで買った方が安いですね……。  ほんとにそうなの……。ぼく、Twitterとかブログをやってるんですけど、コメントを見たら、やっぱり「売ってねぇんだけど?」っていうのばっかりで、「買いました!」っていうのが全然ないんだもの! 最初はそれに「申し訳ありません」って返事してたけど、だんだん「なんでこんなことやってるんだ」って思ってきちゃって……。 ──なぜかヒロシさんがすごい謝ってましたね。  そう。なんで俺が謝んなきゃいけないんだろう……。 ──発売後までネタになる話が満載ですね!  そんなつもりは全然ないのに……。やっぱりこれはドカンと売って、「ヒロシ、やっぱり作ったら売れるんだな!」とか、そういう風に思われたかった……。 ──でも、DVD自体はすごくいいドキュメンタリーでしたよね。お笑いブームの時に密着していたスタッフが、ブームが去っていくとともに密着をやめて、ヒロシさんの立場がどんどん危うくなっていく様子とか、切なすぎてお腹が痛くなりましたもん。こういうドキュメンタリーって、どれくらい台本があるものなんですか?  台本っていうのはほとんどなくて、大まかなことしか決めてないですよ。あとの流れは全部アドリブで。 ──離れていくドキュメントのスタッフに「前にNG出した九州の実家取材の話ですけど、アレ、やっぱりOKなんで!」って食い下がる様子とか、AVの人がだんだんNG事項を減らしていくのってこういう感じなのかな、と感慨深かったです……。でも一番ズーンときたのは、九州の実家取材のために自分でわざわざレンタカーを借りて、その車内でヒロシさんがスタッフにめちゃめちゃ気を使っておどけて、それでもやっぱり無視されたりして……もう、自分の学生時代を見ているようで……!  はははっ! ああー伝わってる、ちゃんと伝わってるんだねぇ……。 ──沈黙を恐れてはしゃぐ感じとか、学生時代に間違ってレベルの高いグループに入っちゃって、がんばって盛り上げるけど、やっぱり会話に入れてもらえない、みたいな思い出が蘇って、胃がキリキリしました。  そうそうそう! コンパとか行ってもしゃべれなくて、しゃべらなきゃと思って下ネタ言ってスベる、みたいな。ワンランク上に行こうとしてね……。でも、小明さんってそんな人ですか? 中学高校のときも一軍だった女の人みたいに見えるけど。 ──ありがとうございます、中学をひきこもりで過ごさせていただきました。  あ~、そうですか~(うれしそうに)。 ──それで高校からがんばり始めて、調子に乗ってグラビアを始めて、売れなくて、こじらせ続けて、現状です。  なるほどね~。そっかそっか~(すごくうれしそうに)。 ──このドキュメンタリーは、ヒロシさんの自叙伝の『沈黙の轍』(単行本/08年/ジュリアン)を読んでから見ると余計に辛いですよね。炭鉱の町で純粋に生きていた健一少年が、どうしてこんなことに……と。  えー! 読んだんですか? ありがとうございます! ──文章がお上手でびっくりしました、すごくちゃんとした短編集ですよね。  おー! おー! おー! だんだん気持ちよくなってきましたよ! でも、そんなこと言って帰りにエレベーター乗った後に舌をぺろっと出すんじゃないでしょうね? 「言ってやった(笑)」みたいに言うんじゃないでしょうね? もう人を信じられないから、俺は。危うく気持ちよくなったけど、もう気持ちよくなりませんから。騙されませんから。 ──なんでそんなに人を信じられないんですか! でも、本当にこういう文才も、世間の人にいまいち届いていない感じで残念ですよね。  そう。だから引き出せないんですよ、事務所が。俺はいろいろ提示するけど、「それはない」とか言われるから、辞めてやろうと思ってんの。ははは。 ──ヤケになっている! この『沈黙の轍』もご自分で書かれて、ご自分で持ち込みに行かれたとか。  そうですよ、全部そうです! 打ち合わせも全部ひとりで行って、編集の人を家まで車で送ったりして……。その『沈黙の轍』の表紙は実家がある炭鉱の町で撮ったんですけど、まずスタッフのみんなで福岡まで飛行機で行って、そこから俺が自分で車を運転してみんなを地元まで連れて行きましたから。 ──うわ! リアル『ドキュメンタリーオブヒロシ』! ちなみにこの本はどれくらい売れたんですか?  これはね、2万5,000部て聞いてたんですけど、おとといくらいに、「実は1万5,000部しかはけてなくて、1万部在庫が残ってる」っていうのを聞いて……。 ──でも、出版不況の中、それだけいったらかなり立派ですよ! 前の『ヒロシです。』とその続編もあわせたら、全部でどれくらい売れたんですかね?  えっとね、あわせて50万部くらいかな。 ──家が建つくらいの額じゃないですか!!  そうですね、普通に考えて、小さい家なら建ちますね。けどね、持って行くから。事務所が。税金も持って行くから。 ──ああ……。なんか、言葉を失います。えっと、ヒロシさんは、昔39万円の家賃の部屋に住んでいたと聞きますが、今もやっぱりそれなりに良いところにお住まいなんですよね?  今は4万3,000円。 ──嘘でしょ!?  いとこの家に住んでます。もう、ぼくね、贅沢いらないんですよ。ほんとは千葉に家を買おうと思ったけど、実際に見てみたらすごい山の中でね~。これはひとりじゃ鬱がひどくなると思って。 ──鬱は悪化しますよね。私、今都心を離れて窓からの景色が畑っていう戸建てに住んでるんですけど、都心で感じる孤独と、人がいないところで感じる孤独は桁違いです。  でた! マジですか!? 思い切ったことやりますね~! ──とりあえず、寝酒が進みます。あは……。  え~? そんなところ行こうと思わないですもん~! ちょっとした旅行になりますもんねぇ(やっぱりうれしそうに)。 ──ええ……。  ぼくもねぇ、そういう場所に家を借りてやっていこうかと思いましたけど、そこまでの勇気がなくて、結局川崎の一軒家を借りたんです。二階建てで屋上があって、ぼくはそこで家庭菜園なんか楽しめると思って借りたんですけどね、そのー、ひとりで一軒家って、すごい苦痛だなって思いましたね。「屋上がいいな~」と思って借りたんですけど、階段で行くからキツイんですよ。だから、結局は二階の一部屋を半分に仕切って、わざわざ狭いスペースを作ってそこだけで生活してました。 ──私も見事に一部屋の隅しか使ってないです。  そうでしょー? ただぼくの場合、ずっと狭い場所に住んでたから、一回は良いところに住みたいと思って、家賃39万の東京タワーが見える部屋を不動産屋に乗せられて借りちゃったんですけど、実際住んだら、「いらねえな……」って。 ──でも、そんな部屋だったら女性も連れ込み放題ですね!  そのときは超忙しくて、39万払ってもほとんど家に帰れてないんですよ。意味ないんです。 ──ホスト時代、冴神剣さんだった頃に住めればもろもろうまくいきそうなのに、都合良くいなかいものですね~。ホスト時代は公園で暮らしてたんですよね?  公園には3週間くらい住みましたね。完全歩合で、ぜんぜん指名がなかったので、基本的に給料がないんですよ。月曜から土曜までホストやって、えー……だいたい月に3万円くらいだったかな、給料。それでお金が足りないから日曜はコンビニでバイトしてましたもん。そんなんじゃ、どんな安いところでも借してもらえないから、2年間くらい家がなかったですね。 ──その当時はもう芸人さんだったんですよね、どんなお仕事をされてたんですか?  当時は別の事務所に所属していて、コンビで売れようと思っていたから、相方がいたんです。で、相方が辞めるって言いだして……。それから滅多に受からないオーディションに受かったんです。内容は教えてもらえなかったんですけど、「とりあえず2~3日分の着替えだけ持ってこい」って言われて、変なワゴン車に乗せられて、埼玉のえらい奥の方に連れて行かれて、「あそこの家を訪ねなさい」って言われて行ったら土建屋の親父が「遅い! 着替えろ!」って怒ってて、そのままとび職の現場に連れて行かれて、そこで住み込みで働いて……。 ──……え? すみません、それ芸人さんの仕事ですよね?  そういう企画だったみたい……。一応テレビの特番なんですけど、2カ月間しっかり土木作業をやって働いて、給料振り込まれてるの見たら、2万5,000円。もう携帯も止められてるし……。 ──テレビの企画にかこつけて、タコ部屋で働かされたような……。でもやっぱりテレビですし、放送後の反響は?  なーんもない。 ──……。  (失笑)。 ──……えっと! 音楽活動の話とかも聞かせてもらっていいですか!? ヒロシさんは学生時代にコピーバンドをやられてたんですよね、何のコピーバンドをされてたんですか?  なんだろ、結局、流行ってるのをやったんで、最初はXがまだメジャーにいく前のCDをコピーしたりとか、BOφWYとか、ZIGGYとか、そういうのをやってました。 ──バンドブーム世代ですし、バンドってモテますよね。  そうなんです。だからそれ目当てでやったんです。 ──でしょ? モテるはずなんです。なので、いまいち、そのヒロシさんのひねくれた根っこが見えなくて。あの、青春時代を謳歌できた人って……。  ひねくれない、でしょ? 学生時代にバンドやってるって、一見、謳歌してるように見えるでしょ? でも実は何も謳歌してないんですよ。バンドブームって言ったって、モテない人が作った童貞バンドなんか何も潤わないよ。みんな童貞なんだもん。やっぱ、人気あるバンドはみんな彼女がいてチヤホヤされるし、バンドでもそこにもう確実な格差があるもん。 ──あわわ、でも今でもかなりまじめに続けられてますし、人気なんじゃないですか?  結局ぼくのファンしか来ないから、何人か残存している、コアな8人くらいが来てくれるくらいです。 ──お笑いとバンドって、モテるツートップですけれども。  そうですよね、うふふ。……あれ? なんで? おかしいですよ。なんでモテないんですか? ──なんででしょう……。あの、試しにご自分からガツガツいかれてみては?  自分からいっても気に入られないから、どうしようもないよね。だって、ネタにもしてるけど、みんなカゼ引くんですよ、約束してる日に。 ──私もカゼひいたことあります(笑)。  カゼひくでしょ? ひいていないのに。 ──前日の夜になると急にひくんですよ、なぜなんでしょうね。  そうでしょ? それですよ。女の人と一生会えないんじゃないかと思うもん。あと、「犬に餌あげなきゃいけない」とか、「友達が泣いてるから慰めなきゃいけない」とかさー、よくわかんないこと言ってさー。 ──そこから生まれたのか分からないですけど、「コンドームが減りません」って言うネタが好きです。  コンドームが減らないんですよ……! ドンキホーテでダース買いしたのに、下手したらまだ封もあけてないっていう……。 ──私も4~5年前に海外に行くとき、友達から「海外は危ないから!」って持たされたコンドームが、先日そのままの姿で出てきましたよ。海外も国内もぜんぜん危なくなかったです。ネタってかなり実話が多いんですね……。  だいたいそうですよ、分かりやすくはしてますけど。 ──売れた後も、なおひねくれて続けているのはすごいですね、どこかで満足してしまいそうなのに!  モテないからですよ、単純に。 ──『ヒロシ会』のDVDでは観客の女の人が「ヒロシさんかわいかったですー」って頬赤らめてましたよぅ。  女性ってブームに弱いじゃないですか。現にもういなくなってるじゃないですか。今、だーれもいないじゃないですか。この『ヒロシ会』は一日だけやった単独ライブを収録したものなんですけど、恵比寿エコー劇場で、もう満員で入れないのに「入れろ! 入れろ!」って外でケンカが起きて、救急車で女性がひとり運ばれてるんですよ? ──ギャー! すっごい!  いま来りゃあ普通に入れるのにね? いまぼくがやってるバンドなんか、普通に来て普通にしゃべってるんですから、全然救急車呼ばなくてもいいのに、来ないでしょ? だから、「いまブームだから」っていう理由で来てるんですよ。そのときからそう思ってたから、もう一切信用できないですよね。 ──ヒロシさんの「一生応援します」ってファンレターに書いてた人が一切いなくなったけど、みんな死んだんでしょうか……ってネタ、ゲラゲラ笑いましたけど、実話と思うと悲しいですね。  そうですよ!「一生」「死ぬまで」って言ってたの来ないんだから、死んだんだなって。死んでるんですよ、みんな。 ──なんか……大変な人生ですね。  ほんとですよ。普通の人がぼくと同じ経験してきてたらね、どっかで自殺してますよ。 ──父親が炭鉱で働いてる時点で、ちょっとこう、背負うものがありますもんね。  あるでしょ? 炭鉱ってきいて絵が浮かぶでしょ? なんかその風情が。 ──うちの父親は炭鉱じゃないんですけど、地下鉄作業員の下請けの下請けで……。  ああっ、似たようなもんだよねぇ(うれしそう)。 ──しかもリアルにそこをリストラされてるところとかを見てしまって、子供心に複雑でしたよ。ヒロシさんは、ご家族とは仲いい方ですか?  えっと、ぼく弟がいるんですけど、20数年話してないですね。会ってないです。 ──あはは! 上京から一切連絡とってない感じ!  そうそう。こないだ実家に帰ったら知らない女の子がいて、「誰?」って聞いたら弟の子どもで、もう小学校4年生だって。それでぼくは弟の娘に人見知りして……しばらく無言でいたら「おじちゃん、しゃべんないんですね」ってボソって言われて……。 ──子どもに敬語を使われるってのもまた妙に辛いですよね、いっそバカな子どもだったらよかったのに……。  そうなんですよね、ワーッ! って来てくれればまだ対応できたかもしれないけど、「しゃべんないんですね」って言われたら、もうたまらなくなって家を出ようとしたら、「おじちゃん、また遊びに行くんですか?」って言われて……会話はその二言だけでしたね。はぁ。 ――あ、あはは……。あの、なんていうか、ヒロシさんは、テレビとインタビューではしゃべりが微妙にちがうんですね。  そうなんですよ……! ぼく、テレビ出ると緊張するんですよ、華やかでおしゃべり達者な人たちが並んる中になんて入って行けないじゃないですか? 打ち合わせだったらしゃべれるんです。けど、本番になったら黙って座ってるだけ。たまに振られて「ヒロシです……」って言うだけなんですよ。 ──なんかこう、えーと、残念ですね……。  残念なんですよ……。小学校のとき、クラスで「はい! はい!」って手を挙げるタイプじゃなかったでしょ? ──はい。できるだけ先生と目を合わせないようにしてました。  ね? でも、そこで「はい! はい!」って言わなきゃいけないんですよ、テレビに出たら。前へ前へ行かないと……! ──もう、ヒロシさんがひな壇に座ってるのが奇跡のように思えてきました。確かに、みんなと一緒に立ち上がって「ちょっとちょっとー!」って言ってるヒロシさんは想像がつきません。  そう、言えないんですよ。でも言わなきゃっていう、もやもやっとした感じ。もう、「ああああああああああ!」って言いそうになるもん。画面上では、だまーってるだけに見えるけど、ぼくは発狂しそうになっている。「あああああああああああ!」って言いたくなるのを我慢して、じーっとしてるんです。 ──思ってたよりずっとギリギリな精神状態でテレビに出られてたんですね……。でも、ヒロシさんの著書には、よく後書きの部分にモテない人や報われない人生を歩んでいる人への暖かいメッセージが書かれているじゃないですか。あれ、泣けるんですよ。ヒロシさんのネガティブなネタに、そんな熱い想いが込められていたと気づいて、ハッとします。  そうなんです。そういうのはなかなか伝わりづらいけどね。ぼく、いちばん悔しいのは、中学生とかで自殺しちゃう人いるでしょ? そういうの、いたたまれなくてねぇ。いじめてるやつなんて、絶対たいしたことないのに、そのときは大きな存在じゃないですか? 学校の先生もたいしたことないのに偉そうに言うから、「俺が悪いのかな?」って思うかもしれない。けど、絶対そんなことはないんだよっていうのを伝えていきたいなって。でも、ぼく自身がバカにされてる存在だから、それはなかなか伝わんない。だから、本にちょっとだけそういうのを入れたりとかね。 ──今まで何の気なしに笑ってた自分が恥ずかしいですよ。『ヒロシです。華も嵐も乗り越えて』(東邦出版)に書いてあった、「九九が覚えられなくて教室に残されて、人よりも劣ってる欠陥人間なんだっていう気持ちをずっと引きずってる」っていうの、すごくわかります。私もずっと給食が食べ終わらなくておもらししそうになったり、いくら残って練習しても、ひとりだけ逆上がりができなかったり……。  ねー。でもねー、逆上がりなんかできなくたってね、金儲けはいくらでもできるんですよ。でも、そのときの子どもには、それがすべてじゃないですか。逆上がりができたほうがモテるわけじゃないですか。足が速いほうがモテるわけじゃないですか。でも、いろんな才能があるわけじゃないですか。例えば写真を撮る才能があっても、小学校でそんな授業なんかないし、それだけじゃない、いろんな商売があるってことを知ってもらいたいですよね。だってこうやって愚痴言って金もらう仕事も、作ったわけですから、ぼくが。ずっと愚痴言い続けて。 ──本当ですね。なんだか思いもよらず良い言葉をいただきました。ありがとうございます!  そうでしょ。あと、メッセージとか発信してると、なんか、ちょっとかっこいいじゃない。モテそうじゃない。ちょっと尾崎豊っぽくて、ふふふ! 「こういう一面もあるのね、ヒロシちゃん」って思われたらいいな、と思って(笑)。 ──あっぶな! まんまと手中にハマるところでした! でも、この『ヒロシです。』に書いてある「マイナス要素を抱えながらも、絶対にモテてやろうと思ってます。だから、あなたも諦めないで」っていうくだりは、すごく希望になりますよ。ヒロシさん、絶対モテてくださいね!!  そんなん言いながら、やっぱりモテてはないんですけども、ただ、あのー……実家に帰ってね、同級生とかと会うとね、当時イケメンって言われてた人たちが、どんどん劣化してるんですよ(笑)。ぼくは学生の時に超くやしい思いしてるから、そういう一軍の男子たちがハゲてたりしてると、もう、たまらない幸福感に包まれて……(満面の笑み)! ──また、地元にいる人たちって、ちゃんと働いたり子どもを育てたりで忙しいから、外見的に年をとるのが早い感じがしますよね。  そう! ふはははは! 早いんですよー! そうそう、こないだね、たまたまテレビでぼくの地元までロケに行ったんです。そしたらそこの観光協会かなんかで働いてる作業服の人が、「斉藤くん」って、ぼくの本名を呼んできてね、話聞いたら高校んときにヤリまくってた男で、「チッ」と思って終始覚えてないふりをしてやりましたね、ふははは! たまんなかったなアレは! 他にも「俺だよ、なんとかだよ」って言われて、「あ~あいつか」って分かっても気づかないふりをしますよ。一瞬「誰だっけ?」って間を空けてから、「あ~!」ってね。 ──「当時の自分だって、お前なんて別に眼中になかったから」っていう強がり!  そうそう、それがぼくの復讐です。たまんないです。今すごい幸せです。 ──幸せが、暗い……! ヒロシさんは普通に職につこうと思ったことはないんですか?  こういう仕事する人って、たぶん、普通の生活できない人たちでしょ? ぼくも一回だけサラリーマンになったんですけど、1カ月目で「辞めさせてくれ」って言いに行ったくらいだから、耐えられなかったんです。サラリーマンに。 ──ちなみに、どういう仕事内容だったんですか?  保険を売る仕事です。 ──またずいぶん社交性の求められるものを!  そう、知らないところにいっぱい電話しなきゃいけない。1カ月で心が折れて、出勤しないで家で寝てたんですけど、家に偉い人がきて、「おめえ何やってんだ!」って起こされて、「ああっ」って……。「せめて半年はやりなさい」って言われて、半年やって辞めました。 ──さっきから他人とは思えないエピソードばかりです。性別と時空を超えて、すごく共感をしています。  やっぱりねぇ、そういう人って話があいますよねぇ。だから、ダメなスパイラルがずーっと続くわけですよ。ぼくも、暗くてB型の人とよく話が合うからね。 ──うわ、私、暗くてB型です……!  そうでしょ(笑)? で、そういう人とばっか接してると、「こっちの思考が王道だ」って勘違いするようになるから、よくないんですよ。 ──そうなんですよね。たまに明るい人たちと話すと、「うわ、自分ってゴミ」と実感して落ち込んだりします。  そうそう。でもこっち側にいると、「やっぱおかしいよねー?」「あんなところであんなカラオケ歌うのおかしいよねー?」って。全然おかしくないんだけど、「わかるわかるー!」ってなるわけですよ、だから良くないんですよ。 ――わああ、私だ、私がここにいる! 私はもう本当にますますヒロシさん大好きですよ!  ほんとですか? なんだかうれしいなぁ。 ──そんなところで、ちょっと私の相談に答えてほしいんですけどもー。  無理ですよー。こっちが答えてもらいたいくらいですー。 ──(無視して)私もけっこうネガティブなんですけど、やっぱり、こう、「ネガティブは良くない」って言われがちじゃないですか? ぼやいたり愚痴を言ったり卑屈になったりとか、そういうことをずっとしてると、そのうちそれに飲み込まれて、もう戻れなくなる、と。  言われますよねぇ。 ──でも、なかなか直るものではないし……。  直らないです。でも、こうやって、取材して書くっていう立場にいらっしゃるわけじゃないですか。ぼくも本気でネガティブなんですけど、たぶん、大まかにはポジティブなんですよね。 ──私はポジティブというか、根が図々しいような気がしてます。  そう。一個一個は図々しくないんだけど、なんか大胆なところで多分そうなんです。だって、普通ネガティブな人がグラビアアイドルなんかならないでしょ? どっかで「私はあいつらよりモテるんだ」「イケるはずだ」って考えられたくらいのポジティブさがあったわけでしょう? ぼくもそうなんです。一個一個は全部ネガティブだけど、すごく、大きな流れではポジティブなんですよ。だってモテない人が「お笑いやってモテてやろう」と思ったんですから。自分で言うのもなんだけど、そういう人はまだ良いんじゃないですか? こういう風に仕事として、お金もらうわけじゃないですか。 ──確かにそうですよね……。今はまだネガティブな部分に対して、憤ったり、妬んだり、僻んだり嫉んだりする体力がありますけど、年をとったらどうなってしまうんだろう。  そう、危険なのが、こうやって注目されてるうちは愚痴がお金になるからいいけど、飽きられるでしょ? ──そうなったら、大ピンチですよ!  ピンチとネガティブさだけが残っていくから、やっぱりキツイですよね……! ぼくだってテレビに出なくなってからもネガティブな思考はそのまま残ってるわけだから、キツかったですよ。今は仕事してるから笑って話せるけど、これがなくなったら、ほんとキツイもんな、人と話す機会もないし。これは……ちょっとどうにか解決しなきゃいけないですよね……。 ──積極的に幸せになりにいくのが一番いいと思うんですけど、ヒロシさんは幸せになったら、もうネタが増えないじゃないですか? そうして無意識に幸せから遠ざかろうとしているのでは?  いやいや、幸せになったほうがいいですよ! 絶対! ──たとえば、所帯をもってみたりとか。  いやーそれは危険だなー。浮気されたらどうしよう、とか。 ──え~そこですか? 大丈夫でしょう、それは~。  だって結婚したら離婚するときにお金半分あげなきゃいけないんでしょ? 冗談じゃないよ! 実際、浮気されて離婚して金とられたって人が何人もいるんすよ、ぼくの周りに! でも法律ではそうしなきゃいけないらしくて、最悪じゃないですかー。 ──「浮気はしないと言っていた彼女の家に行ったら、便座があがっていたとです」ってネタもありましたけど、あれも実話だったんですねぇ。  そうそう、毎回あがってるんですもん! 便座あげるときって掃除するときくらいでしょ? 別に綺麗になってないのにあがってるんですよ! もっと言っちゃえば、ゴミ箱から精子のにおいがするんですよ? ぼく、なんにもしてないのになんでにおいがするんだろうって……。 ──だんだん、本当に付き合っていたのかどうかも心配になってきますね……。  そうなんですよ。もう「人間のお付き合いってなんだ?」ってことですよ。もっと言えば、「結婚ってなんだ?」ってことになってくるですよね。「病めるときも~」って神様の前で約束するのに……お前らは簡単に破るじゃないか!! ──女性不信すぎますよ!! でも、ほら、えーと、最近またテレビにも出るようになられて、また波が来てるじゃないですか!  来てますか? そんな感じは一切しないですけど……。 ──ヒロシさんの場合は、「最近見ないよね」「消えたよね」って言われてても、本を出したりラジオをやったり、普通に活動はされてるんですよね。でも地上波に出てないだけで消えたような扱いになっちゃう。私はグラドルでデビューして、最初だけほんの少しだけ出て、すぐ売れなくなったんですけど、今でも希に「あー昔グラビアで見たよね、今いないね」って言われることがあります。でも、ページがカラーグラビアから白黒の文字ページに移動しただけで、微妙に消えてはいないんですよ。でも可愛いグラドルが好きな人たちなんて、誰もこっちまで見てくれない。  うんうん。でもね、「サイゾー」でページを持ってるなんて立派ですよ。俺なんてアレくらいのブレイクを見せて、何も残ってないじゃないですか。 ――そんなことないじゃないですか、なんか、確執みたいなものが残ってると思いますよ。  確執だけ残ってもしょうがないじゃないですか! ほんと、いつまた落とされるかわかりませんし、「サイゾー」なんて良いですよ、しかも連載でしょ? ……サイゾーさん、このページで、ぼくでひとつ、なんかやってくださいよ……。 ──え! ちょっと、普通に私の連載枠を狙わないでください!  いや、あの、ノーギャラとかでも全然いいんで、あ、この、こことかでもぜんぜん大丈夫なので!(編集雑記を指さしながら) ――ちょ、やめてください! きょ、今日はどうもありがとうございました! (取材・構成=小明) ●ヒロシ 1972年、熊本県生まれ。コンビ芸人、ホストなどを経て、2003年ころからピン芸人としてブレイク。「ヒロシです……」で始まる自虐ネタで一世を風靡した。DVD『ドキュメンタリー オブ ヒロシ~空白の1500日~』発売中。 ●あかり 1985年栃木県生まれ。2002年史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。 ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/> サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中 ニューシングル「君が笑う、それが僕のしあわせ」発売中<http://cyzo.shop-pro.jp/> 月刊サイゾーにて「卑屈の国の格言録」連載中。 小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談バックナンバー 【第32回】 ジャルジャルさんの至言「僕らのネタに深い意味なんかないんです」 【第31回】 オリエンタルラジオさんの至言「"変わってるって思われたい自分"も見透かされてる」 【第30回】 大槻ケンヂさんの至言「ネガティブを売りにすると自家中毒に陥るんです」 【第29回】 辛酸なめ子さんの至言「なんか、つい交尾の話とかしちゃうんです」 【第28回】 みうらじゅんさんの至言「アイドルライターってなんなの?」 【第27回】 山路徹さんの至言「バラエティーが怖いようでは戦場に行けないですよ」 【第26回】 浅草キッド・玉袋筋太郎さんの至言「相手がクンニしてる顔を思い浮かべなさい」 【第25回】 前田健さんの至言「自分は赤毛のアンの生まれ変わりだと思ってる」 【第24回】 叶井俊太郎さんの至言「結婚したければ高2で100人斬りの男を探しなさい!」 【第23回】 須藤元気さんの至言「僕の本なんて、ギャグみたいなものですよ」 【第22回】 オアシズ大久保佳代子さんの至言「本当はOLを辞めたくなかったんだよなぁ......」 【第21回】 Kダブシャインさんの至言「宇多丸は、Kダブをシャインさせない」 【第20回】 楳図かずおさんの至言「世界を相手にやっている人は、友達作っちゃうと危ない!」 【第19回】 キングオブコメディさんの至言「いつ辞めてもいいから、続けられるんです」 【第18回】 バカリズムさんの至言「モヤモヤは、そのまま持ち帰って立ち向かいます」 【第17回】 島田秀平さんの至言「小明さんの手相にはアブノーマル線があるんです」 【第16回】 小森純さんの至言「写真のチェックとか、自分では一切しないんです」 【第15回】 堀江貴文さんの至言「もうメジャー路線っていうものは存在しないかもしれない」 【第14回】 稲川淳二さんの至言「自分の子どもを殺そうか、と思った自分が一番怖かった」 【第13回】 蝶野正洋さんの至言「自分の役割の中で、最大限に光らなきゃならない」 【第12回】 有野晋哉さんの至言「アイドルは『育ちがええねんなー』っていうのが大事です」 【第11回】  鳥居みゆきさんの至言「やりたくないこと、やらないだろうな、ってことをやるの」 【第10回】  宇多丸さんの至言「人にはだいたい『ちょうどいい』ところがあるんです」 【第9回】  桜木ピロコさんの至言「あたしいつもだいたいいやらしいことしてるもん!」 【第8回】 伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」 【第7回】 ルー大柴さんの至言「ライフっていうのはマウンテンありバレーありです」 【第6回】 大堀恵さんの至言「私、いつも『アンチ上等』って思ってるんです」 【第5回】 品川祐さんの至言「なったらいいなと思ってることは、だいたい実現する」 【第4回】 福本伸行さんの至言「俺は『面白いものを作ろう』じゃなくて、作れちゃう」 【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」 【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」 【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」