AV女優・初音みのりが語る名作エロティック映画の魅力

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みのりんも氷にKISS……
 1986年に公開され、日本中のカップルたちを熱狂させたエロティック恋愛ムービー『ナインハーフ』。これまで長らく廃盤となっていたこの作品のDVDが、今回DVD再発&初ブルーレイ化された! これを記念して、恵比寿マスカッツの一員としても活躍中のAV女優・初音みのりちゃんが、その素晴らしさ&エロさを熱く語る! ──『ナインハーフ』をご覧になった感想はいかがですか? 初音みのり(以下、みのり) 今まで観たことがなかったんですが、すごくよかったです! パッケージからエロさが伝わってきますよね。セックスの描写も過激なんですけど、ただエロいだけじゃなく、カップルがエッチにふざけ合っていて、こういう関係もいいな~って羨ましくなりました。 ──名シーンとして名高い、目隠ししながら氷を当てられる前戯は、当時、日本中のカップルが真似したんですよ。 みのり そうなんですか! あれは絶対にゾクゾクするだろうなって思いました。自分でも真似したくなっちゃいます。 y7vg1v5x.jpg ──みのりちゃん自身、プライベートで目隠しプレイの経験は? みのり あるんですけど、全然気持ちよくなかったんです……。何をするかわからないから面白いのが目隠しプレイなのに、相手も経験不足だったから、いつも通りのプレイで全然驚きがなかった。経験豊富な相手ならもっと楽しめるんでしょうね。 ──氷プレイの他にも、映画の中では地下道やビルの屋上、時計台で愛し合っていました。みのりちゃんだったら、どこでHをするのがいい? みのり 屋上は開放感があって素敵ですよね。地下道だと、いつ誰が来るかわからないから、Hに集中できない。周りが気になっちゃうと全然気持ちよくないんですよ。 ──みのりちゃんがこれまでにいちばん印象に残ってる映画のラブシーンは? みのり 『アルマゲドン』のラブシーンは最高でした。カップルが愛し合ってシーンなんですが、動物ビスケットを使って女の人の身体をツンツンするんです。動物が「下の茂みに行こうかな」ってアソコの方に下りていったり(笑)。あれは見ていて思わずドキドキしました。 ──『ナインハーフ』とそっくりだね。 みのり そうなんです。私、焦らされるのが好きなんですよ~。 hatsuneminori02.jpg ──じゃあ、これまでみのりちゃんが経験した中で、『ナインハーフ』のような激しいプレイは? みのり う~ん……。以前付き合っていた人から、「電マを使ってみたい」ってリクエストされて、はじめて使ってみたんです。その時は、挿入されながら同時に電マをクリに当てられて……すごく気持ちよくてイっちゃったのを覚えています。 ──激しいけど、映画みたいなロマンチックさが全然ない! みのり あははは、確かに! ナインハーフで描かれているようなロマンチックなHも憧れるんだけど、そういうことをしてくれる相手に巡り合えないんです。お姫様抱っこをされて、ベッドに連れて行ってほしいな~。 ──セクシーな描写意外はいかがでしたか? みのり 印象深かったのが、人は恋人によって変化したり、自分でも知らない自分になれるというメッセージ。この先出会う人によって、自分もどうなっちゃうかわからないんですね。 sn1q0b9b.jpg ──みのりちゃんも付き合う相手によって変わっちゃう? みのり すごく変わります。私、相手の好みの女になるのが好きなので、相手に合わせて服の趣味も変わっちゃう。露出好きな男の人と付き合ってた時は、背中がヒモだけの、キューティーハニーみたいな服を着ていました。もうさすがに着れなくて、クローゼットの奥に閉まっていますけど……。 ──『ナインハーフ』というタイトルは、カップルが過ごした9週間半の時間を象徴したタイトル。みのりちゃんは、短期間で燃え上がるような恋は経験したことある? みのり 私、熱しやすく冷めやすいから、そんなのばっかりです(笑)。1カ月ずっと一緒に過ごしているんだけど、2カ月目になると、繰り返しに感じてすぐに飽きちゃう。もっとひどい場合だと、付き合う前に仲良くなり過ぎて、付き合いだすと冷めちゃうみたいなパターンもあります。 ──じゃあ、ミッキー・ロークに迫られたら燃え上がっちゃいますね。 みのり あれだけ男性から尽くされたら、幸せを感じない女性はいません! 日本人の男性って、プライドがあるからかあんまり愛情をアピールしないですよね。それは絶対ダメ!! 好きっていうのは言葉に出していかなきゃ絶対に伝わりません。 ──熱弁ですね~。 みのり だから、日本の男性も『ナインハーフ』を観て勉強してください! ──わかりました!

「前田日明さんよ、聞いてるか!?」アウトローひしめく地下格闘技会場を、“天下の傾奇者”瓜田純士がゆく!

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 「俺が瓜田純士じゃ! 文句あるヤツはかかって来んかい!」──4日、地下格闘技『KRUNCH第16戦』の会場・ディファ有明に、元アウトローのカリスマこと瓜田純士(32歳)が現れた。当日のカードに瓜田の名前はないが、果たして何をしに来たのか? たまたま現場に居合わせた記者は、恐る恐る突撃インタビューを敢行! 来場の目的、最近の日常、今後の野望などをフルスロットルで語ってもらった。  開場前のディファ有明。高級車や大型バイクがズラリと並ぶ駐車場には、ガングロ短髪のいかつい若者や、ダークスーツを着た本職とおぼしき御仁が大勢たむろしている。そこへ突然、缶チューハイ片手にホロ酔いで現れたのが、元アウトローのカリスマこと瓜田純士である。  顔面タトゥーにサングラス。革のジャケットに細身のパンツ。パンクロッカー風のいでたちの瓜田は、「そこのけ、そこのけ、瓜田が通る」とばかりに、サングラスをズラして方々にメンチを切りながら、与太った歩きで駐車場を突き進む。  周囲の反応はというと、触らぬ神に祟りなしとばかりに道をあける者、遠巻きに睨みつける者、「おお、瓜田クン!」と親しげに挨拶する者、「うわ、瓜田だ……」と囁き苦笑いする者など、実にさまざまだったが、これだけアクの強い面々が集う中にあっても、いや応なしに注目を集めてしまう存在であることだけは確かであった。
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メインマッチに出場するヒロ三河と抱擁。
 瓜田はそのまま会場入り口にたどり着くと、いま来た“獣道”をクルリと振り返り、「俺が瓜田純士じゃ! 文句あるヤツはかかってこんかい!」と吠えた。これは映画のワンシーンではない。実社会で起きた出来事である。記者を含む周囲はただただ、呆気に取られるばかりであった。  会場入りした瓜田は、ロビーでビールを飲みながら、顔見知りの不良と挨拶を交わしたり、行きずりの誰かと口論したり、ファンと握手したり。  足立区出身のjoltさん(28歳)は「まさかこんなところで瓜田さんと会えるとは。今から11年ぐらい前、僕も新宿でよく遊んでいたんですけど、当時の瓜田さんは供攻社でバリバリやっていた頃。僕は瓜田さんが来るといつも逃げてました(笑)。こうやって近くで見ると、やっぱオーラが凄いですね」と釘付け状態。  しかし、瓜田のことを好意的に見ている客ばかりではない。何かあったら行くぞとばかりに、鋭い眼光を飛ばすコワモテもチラホラ。  そんな中、頃合いを見計らって、瓜田にインタビューを申し込んだ。
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職質をくぐり抜け会場入り。
──今日はいったい、何をしに来たのでしょう? 「仲間が試合に出るんでね。その応援に来たんだけど、来る途中、職質に遭っちゃって、追い払うのに苦労しましたよ」 ──どこで職務質問されたんですか? 「ゆりかもめの新橋駅。私服の刑事数人に囲まれたから、『なんじゃコラ、誰が誰に声かけてんだ?』と怒鳴ったら、『瓜田さんでしょ? 顔見ればわかりますよ。ちょっと持ち物を調べさせてください』と」 ──瓜田さんはそこで、どのようなリアクションを? 「『俺を調べたいんだったら、今から俺んちまで行くか? 一緒に俺んち行こうぜ』と言ったら、その場で前科調べられて。シャブで逮捕歴があるとわかったら、『尿を採りたい』と言うんで、『じゃあ今すぐ検査キットを持ってこい! 早くしろ! 俺はこれから大事な用事があるんだ! 遅れたら、ただじゃすまさんぞ!』と。俺があまりに自信満々に言うもんだから、向こうもさすがに引き始めて『すいませんでした』と。『だったら、ゆりかもめが通り過ぎるまで頭下げてろ』と言ったら、下げてました(笑)」
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ワルそうな人たちと集合写真。
──相変わらずスリリングな日常ですね。そういえば、ハロウィンの日に殴られたという記事を読みましたが、何があったのでしょう? 「とある調子こいたバカが、パフォーマンスで瓜田純士にヤキを入れました。でも、青タンいっこありません。どっこも痛くもカユくもないです。僕、弱いものイジメはしたくないんで、とりあえず今んところは生かしておきますけど、あんまり調子に乗ってたら、○○ますよ。だからあんまりイチビんなって! お~い、頑張れよ~、絶縁者~っ!」 ──なぜその人に殴られたんですか? 「ある会合をそのバカがセッティングして、僕は『あなたの顔が立つんだったらいいですよ』と参加したら、いきなりガツンとやられた。そいつの自己顕示欲でしょうね。みんなの前でいいとこ見せたかったんでしょう。恥ずかしい40代ですねぇ」 ──反撃はしなかったんですか? 「気付いたら病院に運ばれてたんで。腐っても相手は元プロボクサーなんで、そりゃ倒されますよ。ただ、どっちが正しい正しくないの分別は誰にでもつく。あとで、その現場に居合わせた○○会の関係者からも、『今日は10対0で向こうが悪い。俺の安い頭でよければいくらでも下げるから機嫌を直して欲しい』という言葉をもらった。その人のその言葉がなかったら、今ごろ○○てますよ。ナメんな、あの野郎!」 ──今の話はオフレコですよね? 「いや、書いてください。なんでかっていうと僕、負けたと思ってないし、そいつにケンカを売ってるんで。僕は直の先輩、直の後輩、直の仲間は大事にしますよ。でもそれ以外の人間には興味がない。直の先輩のためなら『白いものも黒』と言いますけど、そうじゃない人間には『黒くねえじゃねえか!』と言う。それが僕のスタンスなんで。今日ここに来た理由は、僕は逃げも隠れもしませんよ、という意思表示でもある。そいつの関係者が今日、この会場に来るかもしれないんでね」 ──穏やかな話題に切り替えましょう。「仲間を大事にする」という言葉で思い出しましたが、先日、渋谷莉孔選手が自身のブログに「本当にヤバイときにいつも助けてくれる人間」として瓜田さんの写真を載せていました。2人の間で何があったのでしょう? 「莉孔がリングスとの契約がコジれて悩んでたから、『お前は何モンだ? そう言われたらなんと答える?』と聞いたんですよ。そしたら莉孔が『キックボクサーです』と答えたから、『じゃあ格闘技やれよ。紙切れがそんなに大事か? そうじゃねえだろ。だったらリングス代表の前田さんに電話して、大先輩に噛み付いてすいませんでした、またリングに立ちたいんです、と謙虚に言ってみろ』と助言したんですよ。それでもまだグズグズ言ってやがるから、『オイ、どうしたいんだコラ! もう一度脚光浴びたいの? それともここで腐りたいの? 自分がどう生きたいのかを建設的に考えてみろ。モタモタしてたらカムバックはどんどん難しくなるぞ。カムバックするんであれば、お前の居場所はどこだ? アウトサイダーで、この瓜田純士にケンカを売ったことで、お前は名前が売れたんだろ? だったら、そこに戻りゃいいじゃねえか』と。そしたらやっと、莉孔が吹っ切れた顔になった」 ──瓜田さんの助言は力強いですね。 「莉孔からも『なんで瓜田さんはそんなに自信があるんですか?』と聞かれましたよ。僕はこう答えました。『バーカ、役者が違うよ。こっちは生まれる前からスポットライト浴びてるんだよ。場数がちげえんだよ、このガキ!』と。ま、そんな話はどうでもいいっすよ。せっかく来たから、試合でも見ましょうか」  そう言って瓜田は客席へ。そして花道の脇の空席を陣取ると、ご覧の体勢で観戦を始めた。
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これが瓜田の観戦スタイル!
──みんな、こっちをチラチラ見てますが……。 「瓜田が何をするのか、みんなそこを見てるんですよね。その期待に応えるのが僕ですよ。傾(かぶ)いてナンボの傾奇者ですから(と言って椅子を蹴飛ばす)」 ──なぜ傾奇者に? 「歌舞伎町で生まれてりゃ、そりゃ傾きますって(笑)。僕ね、よくみんなに言われるんですよ。『純士は空気も読めるし、ちゃんと気も使えるヤツなのに、どうしてすぐに何かをブチ壊すようなことをするのか』と。僕はこう答えますよ。『お前ら傾いてない。もっと傾けよ』と。傾奇者ってのはいつの時代も、自分の物差しで、わかってる範囲で、メチャクチャするんですよ。ここにいる多くの不良は傾いてませんね。今だって、僕がこんだけメチャクチャしてんのに、誰も文句を言って来ないでしょ? さっき会場入りしたときも、刺青出した不良がいっぱいいたけど、そいつら全員『やっべー瓜田だ』って顔して下を向いた。それが答えですからね。主役は俺なんじゃ、コラ!」 ──アウトロー卒業宣言(http://www.cyzo.com/2012/01/post_9635.html)は撤回ですか? 「撤回もクソもありませんよ。人様に文句を言われるような生き方はしてないし、ハナからアウトローに入学式も卒業式もない。不良な生き方はやめたけど、行くときは行くと前に言ったでしょう。こっちは毎日、命のやりとりしながら、一つ一つ筋を通してる。こっちが筋を通してるのに、偽物のアウトローが道理を履き違えたマネしてくるなら、僕が今一度、『ノートレーニングの凄み』ってもんを教えてやりますよ」 ──具体的に今、リングで戦いたい相手はいますか? 「そこいらで不良ごっこしてるような可愛い坊やに用はない。本物とやりたいね。ていうか、俺とサシで戦える人間って、いるのかな? なんなら戦う相手は、動物でもいいですよ」 ──動物っ!? たとえば……? 「ホワイトタイガー。笑いごとじゃないっすよ。檻の中で、サシでやり合ってもいい。全然余裕ですから」 ──檻の中もいいですが、「アウトサイダーで戦う瓜田を、もう一度見たい」という声も多いですよ。 「チャンスがあるなら、僕もアウトサイダーに出たいですね。そうだ、この場を借りて、リングスの前田日明代表にメッセージを送ってもいいですか?」 ──前田代表がこの記事を読んでくれるかどうかはわかりませんが、どうぞ。 「おい前田さん! 聞いてるか! いろいろあったよな。鉄板焼きも食いに行ったし、ケンカもしたよな。でも俺さ、あんたのこと嫌いじゃないぜ。前田さんや村上(和成)さんに生意気言ったことは、悪かったと思ってるよ。前田日明、瓜田純士、お互い名前があるし、プライドもある。でも今度会うことがあったら、俺は『前田さん、どうも』って頭下げるぞ。わかったか前田さん! 聞いてんのか、コラ! このまんまじゃ早晩、地下格闘技は廃れちまうぜ! なれ合いや同窓会じゃ客は満足しねぇぞ、コラ!」 ──アウトサイダーは地下格闘技ではない、というのが前田代表の考えですが。 「定義はなんであれ、興行のこと考えたら、俺を出せばチケットの売り上げは確実に跳ねるぜ。前田さん、俺を一回アウトサイダーに戻してみぃ! そしらたらあんたも考え変わるぞ。色物、客寄せパンダ、なんでもいいぜ。俺をアウトサイダーに復活させてくれや! な、前田さん! 聞いてんのか、オイ! コラ!……ちょっと言いすぎましたが(笑)、マジで興行を維持するんだったら、ビッグスターを呼んだほうがいいですよ。俺はこの世界では、まぎれもないビッグスターですから。前田さん、なんかあったらいつでも俺に声をかけてください! 前田さん、頑張ってください! 俺も頑張ります!」
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瓜田が応援した3人の選手はいずれも勝利。この男、ツキがある?
 瓜田の熱いラブコール、果たして前田に届くかどうか。その成り行きに注目したい。 (取材・文=岡林敬太)

町山智浩氏に聞く“日本人の知らないアメリカ”

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町山氏
 サイゾー本誌に連載中の「映画でわかる アメリカがわかる」でもおなじみの、米カリフォルニア州バークレー在住のコラムニスト兼映画評論家・町山智浩氏。今秋同氏は、『99%対1% アメリカ格差ウォーズ』(講談社)、『教科書に載ってないUSA語録』(文藝春秋)、『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』(文春文庫、08年発刊の単行本の文庫化)という、すべて“日本人の知らないアメリカ”がテーマの単著を3冊連続で発刊した。新聞やテレビ、ウェブではわからない超大国の素顔を現地在住者の目線でレポートする町山氏に、アメリカの現在、そして11月6日に控えたアメリカ大統領選挙の展望を聞いた。 ──『教科書に載ってないUSA語録』は、2009年~12年にかけて、町山さんが日常生活やテレビで耳にしたはやり言葉やキャッチフレーズでアメリカの社会や政治を読み解くコラム集ですが、文字通り日本人の知らない「アメリカ語」だらけですね。 町山智浩(以下、町山) アメリカ人も知らない言葉もありますよ。毎年たくさんの新語が生まれて、意味もどんどん変わっていくから、誰もついていけないんです。普通に子どもと会話しててもわからない言葉があるくらい。英語って、日本語より造語をつくりやすい言語なんですよね。 ──「Eastwooding」(クリント・イーストウッドする)とか、うまいこと言いますよね。 町山 そうそう。「ing」をつければなんでも動詞化しちゃうし、「フレネミー」(friend+enemy=frenemy:友達ぶった敵)とか「チナメリカ」(China+America=Chinamerica:中国とアメリカの運命共同体)とか、2つの言葉をくっつけたり。インターネット時代になると、文字を打つのが面倒だから略語も使うじゃないですか。 ──「lol」(lough out loud:大爆笑)とかですね。 町山 「lol」は日本語の「ワロタ」や「w」とまったく同じ。だからすごく似てる部分もあって、一番おかしかったのは「トロール」(troll:インターネット上の「釣り」)。アメリカ人も「I'm trolling(それ釣りだから)」って書き込みしてるから、なんでここまで一緒なんだろうって(笑)。 ──そういったはやり言葉だけでなく、政治家の言葉もたくさん掲載されてますね。日本でも政治家の失言は叩かれますが、アメリカもそういうところは敏感ですか? 町山 ええ。というかむしろ、アメリカの「インターネットミーム」(ネット上で広がるネタ)は日本の比ではないです。失言からわずか数分以内にツイッターを埋め尽くさんばかりに拡散するし、失言をもとにしたコラ画像やMAD動画も大量に作られます。最近は特に、世間が失言で大騒ぎしすぎなんですよね。でも逆に、政治家の言葉は、キャッチフレーズになった場合は大きな力を持つんです。 ──オバマ大統領の「Hope」や「Change」みたいに。 町山 そのワンフレーズで国が動いちゃう。日本でもかつて「小泉劇場」なんてのがありましたけど、アメリカはもっと極端。ワンフレーズ・ポリティクスの国だから、この本でも政治ネタが非常に多くなってるんです。 ──お話を伺う限り、ネタには困らない感じだったんですね。 町山 ネタよりもオチで苦労しましたね。僕は、コラムってオチがなきゃいけないと思ってて、最後で笑えない原稿になったときはすごい罪悪感が……。どうしてもいいオチが浮かばないときは、娘に原稿を見せて考えてもらったり、ツイッターで「オチがなくて苦しんでまーす」ってつぶやいてみたり。 ──そうやって誰かのオチが採用されたケースもあるんですか? 町山 ええとね、かみさんが考えたオチは使わせてもらいました。ペッパー・スプレー(Pepper spray)っていうトウガラシの辛味成分を噴射するスプレーが問題になってるっていう話で。 ──あのオチは奥様の案だったんですか!(気になる方は、お手に取ってご確認を) 町山 あと、オチとは関係ないんですけど、文章だけだとどうしても発言者の雰囲気やおかしさが伝わらないところもあって、そこは澤井健さんのイラストにずいぶん助けられました。 ■「貧乏人に税金を使うな!」vs「金持ちに課税しろ!」 ──『USA語録』は時に下世話な笑えるコラム集ですが、ほぼ同時期に書かれた『99%対1% アメリカ格差ウォーズ』は、よりジャーナリスティックにアメリカ社会に切り込んでらっしゃいますね。 町山 『格差ウォーズ』の取材ではスマホを持ち歩いて、Ustで同時中継ルポみたいなことをしてたんですよ。証拠を残しておこうと思って。でも、いかんせん時差の問題で日本では見てくれる人が少なくて、「これは意味がねえ!」って途中でやめちゃいましたけど。 ──そういった現場感は本からも伝わってきます。書名の『99%対1%』は、上位1%の大金持ちがアメリカ全体の富の4割近くを独占している事態(原因はブッシュ政権時代の富裕層への減税)を表しているわけですが、象徴的なのは「ティーパーティー」と「ウォール街を占拠せよ」という2つの運動ですね。 町山 ティーパーティーの参加者は主にオバマの医療保険改革(「オバマケア」と揶揄される)に反対する人たち。大半は50代以上の白人で、だいたい襟のある服を着てるんですよ。一方で、アメリカの金融界に抗議してウォール街を占拠した人たちは、ほとんどが若者で人種もばらばら。格好はボロボロのジーンズにTシャツとかで、ピアス率が異常に高い。 ──そして、金持ちの白人は「貧乏人の医療保険に税金を使うな!」とアジり、貧乏な若者たちは「Tax the Rich(金持ちに課税を)」というプラカードを掲げていると。 町山 金持ちが気にしてるのは年金と高齢者用の医療保険なんですけど、どちらも破綻しかかってるんです。なのに、政府は貧乏な人たちの医療保険などの福祉にお金を回そうとしてる。だから「そんなことしたらオレたちの取り分が減るだろ!」「がんばって働いた見返りを待ってたのに、話が違うぞ!」と怒ってるんです。でも、若い子たちからすれば、最初から働き口もないひどい状態だから「せめてスタート地点に立たせてくれ!」と。彼らの多くは失業者ですからね。ウォール街を占拠している人たちに「なんで来たの?」ってインタビューしたら「職がないから」ってすごいストレートに答えてくれて。 ──そんな困った国のリーダーを決める大統領選挙が、来る11月6日に行われるわけですが、日本ではあんまり話題になってないんですよね。 町山 一番問題なのは、大統領選でいろんな政策論争が交わされてますけど、そこで対日政策が一切争点になっていないこと。アメリカにおける日本の経済的な存在感はゼロに近くなってるんです。 ──そういう理由なんですね。てっきり、日本がアメリカに興味をなくしてしまっているだけなのかと。 町山 もちろんそれもあると思います。どっちもどっちなんですよね。日本の雑誌も中国の記事ばっかりでしょ? アメリカでも「タイム」や「ニューズウィーク」は毎回中国とインドですよ。この両国はいま中流層が拡大しつつある過程で、彼らはいずれ巨大な消費層になります。日本とアメリカがなぜ大国になったかというと、消費力があったから。国力というのは生産力だけじゃなくて消費力=中流層の人口も重要。その点で中国とインドのポテンシャルは計り知れないから、これはヤバい。 ──逆にいえば、いま日本とアメリカが弱っているのは、格差が広がって中流層が崩壊しているからだと。 町山 中流がいない、一握りの金持ちとたくさんの貧乏人で構成される国のことは「第三世界」といいますからね。だから、いまやらなきゃいけないのは格差の是正なんです。 ■フロリダ州とオハイオ州を制した者が勝つ ──今回の大統領選は、「新自由主義」路線の共和党ロムニー候補 vs.「富の再分配」を標榜する民主党オバマ大統領ということになりますね。 町山 ロムニーのは、金持ちがもっと金持ちになればトリクルダウン(滴り落ちる)する、つまり貧乏人もおこぼれに与れるという理論だけど、それって科学的な根拠がないし、すでにブッシュ政権で失敗してます。一方のオバマは、大金持ちに課税して財源を得ようとしてるけど、議会で共和党に反対されて、まだ一度も課税法案を通せていない。 ──町山さんは、どちらが勝つと予想されます? 町山 オバマでしょうね。実はアメリカ大統領選って、フロリダ州とオハイオ州を制すれば勝つんです。アメリカでは共和党が強い州と、民主党が強い州がはっきりしているんですけど、どちらが勝つかわからない激戦州というのがいくつかあるんです。 ──共和党が強い州では、民主党の候補は何をしても勝てないわけですね。その逆もしかりで、結果として、その激戦州での選挙戦がカギを握る。つまり一握りの州の結果が勝敗を左右してしまうと。 町山 中でもフロリダとオハイオは、歴史的に見ても非常に影響力が大きい。まず、フロリダで票を動かすのは引退したユダヤ系の老人たち。フロリダって、州の政策として高齢者の税金を優遇したりして老人を呼び込んでるんです。彼らがニューヨークなど他の州で稼いできたお金をフロリダで使わせるためにね。で、この老人たちの関心事は何かというと、自分たちの年金と医療保険だけ。だから、そこだけ気をつけて戦えばいいんです。 ──有権者がユダヤ人=ユダヤ教徒ということは、共和党のロムニーは「福音派」(プロテスタント系のキリスト教右派。共和党の支持基盤でもある)というカードを切れませんね。 町山 フロリダはキューバ系の移民も多いんですけど、彼らはとにかく「共産主義が嫌い!」っていう思想だけ。あとね、ロムニーは大失言やっちゃったんですよ。アメリカ国民の47%は所得税を払ってないんですけど、彼は「所得税払わないやつらのことなんかどうでもいい」って言っちゃった。この47%にフロリダの老人は全員含まれるんですよ、所得がないから。 ──それは痛いですね。一方のオハイオは、どういう州なんですか? 町山 オハイオはもともと工業地帯で、東欧とかロシア系、あとイタリア系やアイルランド系の移民労働者が多い。彼らはプロテスタントではなくロシア正教やカトリックだから、やっぱり共和党にとっては戦いにくい。そもそもロムニーはモルモン教徒だから、キリスト教徒の支持を得にくいんです。その点、オバマはクリスチャンだからまだ有利なんですね。 ──それにしても、たった2州が世界のリーダーを決定するって、とんでもない話ですね。 町山 そこに関しては、最近はアメリカ人も「国の運命を決めるのが、ド田舎の労働者と年寄りでいいのか!」って怒ってるんですど、どうしようもない。 ──選挙のシステム上、重要な州である以上、そこに媚びるしかないんですね。 町山 ところがロムニーは、オハイオに対してもやらかしてるんです。オバマが09年に、経営破綻したGM(ゼネラルモーターズ)に公的資金を投入したとき、ロムニーは「自己責任で倒産させろ」って反対しちゃったの。結果的にGMは再生して自動車業界は救われました。で、オハイオには自動車工場もたくさんあるんですよ。大統領選に出るつもりだったら、絶対に言っちゃいけないことだった。 ──『USA語録』『格差ウォーズ』共に、失言製造機のサラ・ペイリン女史など共和党の議員が出てきますが、ロクな人がいない……。 町山 日本よりはマシですけどね(笑)。 ■アメリカ、中国、インドが三位一体で世界を支配!? ──では、今後アメリカはどこへ向かうのでしょう? 町山 いま中西部と南部では産業が崩壊しちゃったからスキルもないし、キリスト教原理主義だから高等教育を拒否して低教養な人たちが急増してるんですけど、彼らのような、「市民」として機能しない人たちをどうするのか。放っておくわけにもいかないから、アメリカはこれから大変な重荷を背負うことになります。 ──日本も、ここ20年くらいで就職し損なった人たちがたくさんいますから、同質の問題を抱えていますね。 町山 加えて、いまアメリカの一流大学の学生の半分くらいは、中国やインド系のアメリカ人もしくは留学生に占められつつあります。だからシティバンクとかアドビとかぺプシとか大企業のCEOにもインド系が増えて来ました。逆に白人のエリートは減っています。 ──学費が高すぎて大学に行けないアメリカ白人が増えている一方で、お金持ちの中国人やインド人がどんどん入ってくると。 町山 アメリカの中高生のレベルは先進国でも最低レベルですが、大学は世界一なんです。世界中のエリートがアメリカで学ぶから、、今後もアメリカは世界の「知的覇権」みたいなものを維持していくでしょう。ただ、中国とインド系のアメリカ人がアメリカの経済だけでなく、政治に加わるとどうなるのか。あるいは留学生たちが祖国に帰ってからどうするのか。おそらくアメリカで教育を受けた人たちはエリートになるでしょうから、中国もインドも変わらざるを得ないでしょう。当然、アメリカと両国との関係性も変わっていって、米中印の三位一体で世界を支配していくんじゃないですか。 ──そこで日本は……。 町山 仲間に入れてもらえないでしょうね。日本からの留学生は激減していますし、政治家が英語できない国だし。 ──ならば、この『USA語録』で英語の勉強を……。 町山 「まえがき」にも書きましたけど、まったく役に立たないどころか、うっかり日常で使うと銃で撃たれちゃうようなヒドい言葉も載ってますから(笑)。 (取材・文=須藤輝) ●まちやま・ともひろ 1962年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒。編集者として雑誌「映画秘宝」(洋泉社)創刊後に渡米。コラムニスト、映画評論家として「週刊文春」「ニューズウィーク日本版WEB」「クーリエ・ジャポン」「映画秘宝」などに連載を持つ。TOKYO MXTV『松嶋×町山 未公開映画を観るTV』、TBSラジオ『たまむすび』出演中。著書に『〈映画の見方〉がわかる本』(洋泉社)、『99%対1% アメリカ格差ウォーズ』(講談社)、『教科書に載ってないUSA語録』(文藝春秋)、『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』(文春文庫)など。

「自分はハッピーエンドのつもりでいた」脚本家・虚淵玄が語る『魔法少女まどか☆マギカ』の未来

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(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka
Movie Project
 オリジナル・テレビアニメ作品として昨年放送された『魔法少女まどか☆マギカ』(以下、『まどか☆マギカ』)。2012年10月現在、その再編集版という位置付けで、劇場版の前後編である『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[前編]/始まりの物語』、『劇場版 魔法少女 まどか☆マギカ[後編]/永遠の物語』が上映中だ。本作は、テレビシリーズの再編集版であることに加え、全国43スクリーンでの数少ない上映という条件の中、後編が初日2日間の興行収入ランキングで第1位を記録。まさに"社会現象"を巻き起こしている。  それぞれの思いを胸に魔法少女として魔女に立ち向かうことを選んだ少女たちの戦いを描いた同作は、パッと見、可愛らしい「魔法少女もの」だが、フタを開けてみればこれまでの魔法少女ものとは一線を画すショッキングな展開や視覚表現・構成がうけ、放送当初から人気に火がついた。同作のBlu-ray Disc1~3巻の売上げは、日本でのテレビアニメ歴代売上げ3位までを総ナメするという大記録を樹立。また、「第43回星雲賞メディア部門」をはじめとした数多くの賞を受賞するなど、高い評価を受けた。  今回は、そんな話題作の脚本を務める虚淵玄(ニトロプラス)氏に直撃インタビューを敢行! 劇場版に対する所感から、虚淵氏の制作に対する姿勢、さらには先日発表された完全新作の劇場版第3作の話までをうかがった── ──現在公開中の劇場版前後編は、テレビで放送されたものを再構成した作品ということですが、実際に今回の劇場版をご覧になっていかがでしたか? 虚淵 まず、テレビ放送中から話題になっているのは見聞きしていましたが、その時は視聴者の顔は見えませんでした。しかし、今回の映画で、シネコンに行ったら『まどか☆マギカ』の看板がかかっていて、そこに吸い込まれていく沢山の人の顔を見ることができた。大変嬉しいことだと実感すると同時に、改めて『まどか☆マギカ』の人気はスゴいことになっていると驚きました。  作品に関しては、ただの総集編かと思って油断していたんですけど、ほぼ作り直したようなすさまじい仕上がりでしたね。純粋に、テレビですでに観た視聴者にももう一回観てもらえるだけの素晴らしい作品になっていると思います。 ──一番印象に残ったシーンはどこですか?
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変身カットでは、厚遇されている(?)魔法少
女・巴マミ。(C)Magica Quartet/Aniplex・Mad
oka Movie Project
虚淵 強烈だったのは、新しく描き直された背景でした。それに、新たな音響演出や、追加された魔法少女の変身シーンによって、ひときわキャラが強烈になりましたね。二度変身した(魔法少女の1人である巴)マミさんなんか、変身カットは使い回すかと思いきや二回とも作り直されていて……しかも、バックの音楽がボーカル付きという好待遇でしたから(笑)。 ──今回の劇場版では、ストーリーはそのままに、画作りにすごく凝っていた印象です。 虚淵 この作品を劇場版にするという時に、テレビ版から脚本を再構成しようという話も当然ありました。ただ、やはり物語の進行上、テレビ版から構成を動かすことはできないということになったんです。オープニングの挿入や(魔法少女の1人・暁美)ほむらの回想も、ここからは動かせないだろう、と。 ──すでにテレビ版の時点で、構成として完成されていたということですね。そんな『まどか☆マギカ』のテーマというのはなんだったのでしょうか?
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主人公である鹿目まどかを始め、魔法少女たち
の「祈り」を肯定する本作。(C)Magica Quartet/
Aniplex・Madoka Movie Project
虚淵 『まどか☆マギカ』は、「魔法少女もの」というお題の前提として、「祈り」(=願い)を意識しています。今作のテーマは、「少女の祈りを世界が良しとするか否か」という点です。少女の祈りを突っぱねて、ただただ無情に運命が転がっていくだけの世界が、(彼女たちの)祈りを肯定する世界に切り替わる物語にしたいな、とは思っていました。つまり、『まどか☆マギカ』は「魔法少女」というジャンルを全肯定する作品にしたかったんです。 ■作品はエンターテイメントがすべて  虚淵氏はこれまでも、明示的な「全肯定」を与える物語ではなく、むしろ「無情に運命が転がっていくだけの世界」を背景とした作品を多く手がけている。元々、有名アダルトゲームメーカーで18禁ゲームの脚本を担当してきた氏の描く物語は、主要キャラが容赦なく殺されたり、複雑に張り巡らされた因果の糸に絡めとられていくような重厚な展開で知られていた。それは氏がシナリオを担当してカルト的人気となった18禁ゲーム『沙耶の唄』や、近年テレビアニメ化された『Fate/Zero』(原作)などにも通底している。それでは、虚淵氏が物語を作る上で心がけていることとは── ──新作も今後公開されるとのことでしたが、『まどか☆マギカ』はすでにコミカライズに加え、スピンオフであるマンガ版『かずみ☆マギカ』『おりこ☆マギカ』(共に芳文社)など、かなり多角的に展開されています。こうしたスピンオフ作品は劇場版新作とはかかわってきたりしないんでしょうか? 虚淵 しないですね。 ──そもそも、こうしたスピンオフ作品には虚淵さんは基本的に携わっていないのですか? 虚淵 そうですね。設定上の不整合があったときには、指摘する場合もある程度です。もし、自分が『まどか☆マギカ』を一人で書いて独占していたら、それはただの"作品"として、印税をもらえるだけのものでしかありません。でも、『まどか☆マギカ』のように、色々な人たちによって語り継がれることで物語は"伝説"になっていく。自分はそれが「物語」というものの健全な進化だと思うんです。産み落とした子どもに養い続けてほしいか、独り立ちして名を成してほしいか。どちらを望むかというだけの話です。 ──小説などと違い、ゲームやアニメという共同作業が前提の業界で活躍されているからこそ培われた感覚なのかもしれないですね。元々、虚淵さんは18禁ゲームでシナリオを執筆されていました。そこから、一気にテレビアニメの脚本家としてスターダムに登ったという実感はありますか? 虚淵 そもそも自分がスターダムに登ったとは思っていません。自分を取り巻く状況に変化はありましたが、自分の創作の軸は変わっていない。何であろうとエンターテイメントとして作品を作る。それがすべてですから。
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未来的な街並みの中に、風車のある背景が描か
れている。(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka
Movie Project
──「エンターテイメントがすべて」とおっしゃいましたが、『まどか☆マギカ』では、風力発電の風車が出てくるなど、「偶然ながらも、昨今の風潮を反映したような未来が描かれている」といった、社会的な観点からの評価も聞こえてきます。テレビ本放送時は最終回を含む数話が東日本大震災で一時放送中止になったことからもわかるように、震災の時点ですでに最終話は完成しており、この符号は偶然ではあったのですが、普段の執筆の際にその時々の世相を物語に反映することはあるのですか? 虚淵 仮にも現代を生きているわけだから、もしかしたら無意識に影響を受けている部分はあるかもしれないです。だけど、ことさらそれを意識するということもないですね。 ──東日本大震災後に執筆された新作に関しても同じことなのでしょうか? 虚淵 そうですね。「震災でこれまで信頼していたものが揺らいだ」と言っても、自分の中ではとっくの昔に世界の底は抜けていましたから。それこそ、僕らの世代では、オウムのサリン事件や阪神大震災などがありましたし。 ■ テレビ版のエンディングに対する新房監督との解釈の違い  あくまでエンターテイメントとしての作品にこだわり、制作を続ける虚淵氏。今回の映画の続編となる完全新作『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』は、すでに脚本も完成しているという。『劇場版 魔法少女 まどか☆マギカ[後編]/永遠の物語』の最後に流れる新作の予告編も気になるのだが、その内容と制作の裏側を直撃すると── ──劇場版3作目は完全新作ということですが、制作の経緯としては? 虚淵 テレビ放映の最後のほうから話は上がっていました。ただ、自分の中では完結した作品だったので、どんな話を作ればいいか、入り口が見えるまでは大変な苦労でしたね。新作に関しては、テレビ版の脚本を書き上げた後で付け加えられた演出や美術の追加設定を足がかりにしなければ到底生まれないストーリーでした。とっかかりができてからは、あっという間に話は進んでいきましたが。 ──内容に関してもうかがってよろしいでしょうか? 虚淵 現段階では、自分は何もコメントできないんです(笑)。公開された予告編がすべてです、ということで……。
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テレビ版のエンディングに対する監督との解釈
の違いが、新作のきっかけとしてあるという。
(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Movie
Project
 ただ、今回の新作ができたきっかけとしては、テレビ版のエンディングに対する自分と(監督の)新房昭之さんの解釈の違いがあったということは言えます。自分はハッピーエンドのつもりでいたんですが、新房さんとしては必ずしもそうではなかったようなんです。それを聞いてはじめて自分のなかで意識の切り替えができて、新作に向き合うことができました。それに、劇場版新作の後もテレビシリーズをやりたいと思っているので。と言っても、具体的な話はまだ何もないですが(笑)。  せっかく色々なクリエイターさんによるスピンオフが出て『まどマギ』の世界観の可能性は立証されているので、その可能性の芽を摘まずに、作品にとって一番良い未来を考えていきたいです。  名実共に伝説化し続けている『まどか☆マギカ』サーガはまだまだ終わらない。現代の新たな神話の誕生という歴史的瞬間に立ち会うためにも、ひとまず現在公開中の劇場版を観に行って、来たるべき新作に備えよう! ■虚淵玄(うろぶち・げん) 1972年生まれ。シナリオライター。ゲーム制作会社・ニトロプラスに所属しゲームのシナリオライターとして活躍する一方、『ブラスレイター』などでアニメ作品にも携わる。シリーズ構成から全話の脚本までを初めて一人で担当したTVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(TBS系)が大ヒット。2012年10月からはストーリー原案・脚本を担当するTVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』(フジテレビ系)が放送中。
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『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[前編] 始まりの物語』 『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[後編] 永遠の物語』 『化物語』『さよなら絶望先生』をはじめ、多くの作品でタッグを組む新房昭之監督×シャフト制作に加え、キャラクターデザインにマンガ家の蒼樹うめ女史、脚本にシナリオライターの虚淵玄(ニトロプラス)氏という、豪華なスタッフ陣が集結し、制作された『魔法少女まどか☆マギカ』の劇場版。テレビシリーズでは、2011年に第15回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞、2012年に、第43回星雲賞メディア部門などを受賞している。現在、テレビシリーズの総集編である劇場版が、前編・後編ともに全国の映画館にて公開中。 公式サイト:http://www.madoka-magica.com/

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■プレゼントのお知らせ 今回、お話をうかがった虚淵氏のサイン入り『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』のパンフレット(前後編)をセットで1名様にプレゼントします。ご応募はこちらから。 【応募〆切:2012年11月11日(日)23時59分まで】

「四六時中、エロいこと考えてます」“史上最強のエロス神”壇蜜が日刊サイゾーに降臨!

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 グラビアアイドル冬の時代に突然現れ、現在「日本一美しい31歳」として『サンデージャポン』(TBS系)をはじめテレビや雑誌に引っ張りだこの壇蜜。これまで、露出限界ギリギリのグラビアも多く発表してきた彼女だが、初主演映画『私の奴隷になりなさい』(11月3日より銀座シネパトスほかロードショー)で、ついにフルヌードを解禁!  彼女が演じるのは、どこにでもいるようなOLとして過ごす裏で、ご主人様との出会いをきっかけに、次第に被虐の世界に溺れていく女性。緊縛、剃毛、バイブでの二穴責め、野外露出といったプレイのシーンでは、壇蜜らしい妖艶な魅力がスクリーンいっぱいに溢れ出る。  今、各メディアからの注目と、世の男からの熱いエロ視線を集める彼女に、話を聞いた。 ――今日は、壇さんのエロスの秘密について伺いたいのですが…。 壇蜜(以下、壇) あの……私、フェミニストなんですよ。今日みたいに、女性お2人(※編註:ライター、編集共に女)から取材を受けるという状況が初めてなので、女性を前にして下ネタを言うと失礼なんじゃないかなって思ってしまって……。男性の前では、下ネタもペロッと言えるんですけど。 ――紳士的な一面をお持ちなんですね。しょせん、サイゾーの女なので、気になさらないでください。早速ですが、壇さんのそのただならぬ色気は、どこから出てるのでしょうか?  色気というか、四六時中、エロいことを考えてるので、それでだと思います。私、厄年だからなのか、今年に入ってから5回も旅行をキャンセルされてるんですよ。相手は、家族や、友人や、気になる方だったりするんですけど、直前に揉め事が生じて旅行を断られるんです。それで、今年は急に精神的に暇になることが多かったので、一人でエロいことばかり考えている一年でした。最近は、普通の言葉なのにエロく聞こえる言葉にハマってます。例えば「正規ルート」とか(笑)、「どんなルートだよ!」って思ってしまいますね。 ――主演映画『私の奴隷になりなさい』では、ひょんなきっかけでSMに目覚めるOL・香奈を演じていらっしゃいますが、壇さん自身はM寄りだそうですね。 _MG_1662.jpg  そうですね。ただみんな両面持っていて、会う人や触れ合う人によって、自分がどっちであるべきかを無意識で判断してると思うんですよ。だからある人にはSだけど、こっちの人にはMだったりするんじゃないかなって思います。 ――香奈のようなOLについて、どう思いますか?  会社では真面目にOLをしていて、どこにでもいる感じの香奈が、先生(板尾創路)の前ではどんどんM性が開花していく。その二面性のギャップが印象的でしたね。旦那がいながら、ご主人様を別個に考えている部分は理解しがたかったんですけど、こういう生き方もあるんだなって思いました。 ――この映画でフルヌードを解禁されたわけですが、脱ぐことに抵抗はなかったですか?  スタッフから「壇蜜として脱ぐわけではない」と言われたので、香奈として脱ぐぶんには、なんら抵抗はなかったです。 ――好きなシーンはどこですか?  ラストのシーンですね。ここまで濃密な関係になったのに、それを断ち切って別の世界に行こうとしている3人の姿は、ある意味ドライで、いい意味の裏切りなんだなって思いました。 ――剃毛されるシーンは、リアルに剃っているように見えましたが。  撮影では、刃が当たっても痛くない“おとし”と呼ばれるカミソリを使ったんです。私は目隠しされている状態だったんですが、緊張の中で感覚がセンシティブになっていたので、カミソリの冷たい感触や、石鹸の泡が当たる感じが、とても気持ちよかったです。 ――この作品を見た人に、何を感じてほしいですか?  明日、死んじゃうかもしれないのと同じで、こちらの世界に入る可能性は誰にでもある、ということが一番言いたいですね。のるかそるかはご自分次第だけれども、私はそういう穴に一度くらいハマッておいたほうが、人間として選択肢が広がっていいんじゃないかなと思います。 _MG_1703.jpg ――普段から、SM色の強いグラビアや映像も多い壇さんですが、デビュー当時からそちらの方向へ行きたいと思っていたんですか?  最初は、イメージDVDを撮っているうちに、「SMシーンがちょっとあっても面白いよね」と話しているくらいだったんです。ただ自分自身、昔から谷崎潤一郎さんや、団鬼六さんなど、フェチシズムやSM色の強い作品に出会うことが多かったですし、その世界観が好きだったので、だんだん私の定番みたいになっていきました。 ――特に好きなSM作品はありますか?  円地文子さんの『女面』(新潮社)は、直接的なSM色は薄いですけど、女のカルマの深さや、精神的な依存などをリアルに描いていて、その耽美な世界に惹かれましたね。嗜虐性をそそる者と、それをいじめる者で成り立っている世界を美しいと思うことは、私のナチュラルボーンなのかもしれないです。 ――芸名は、仏教用語から取られたそうですね。勝手に団鬼六さんを意識した名前なのかと思ってました。  そう言っていただくこともしばしばあるんですが、SM色の強い表現をするようになったのは、本当にたまたまなんです。ただ、団先生とリンクしていただくことは、とってもうれしいですね。 ――壇さんはバイセクシャルだとお聞きしましたが、男女の好みの対比はどのくらいですか?  6対4で、男性が6になったり、女性が6になったり、自分でも「どっち?」みたいな感じです。女の子って現金なところとか、たまに見せる素がかわいいんですよね。こないだも番組のロケで一緒になった子が、ちょうど誕生日を迎えてたので、泊まってるホテルの部屋にプレゼントを渡しに行ったんです。私が来ても、こっちも見ずにストレッチしたりしてたんですけど、プレゼントを見せたら「うそー!」ってすぐに起き上がって(笑)。逆に男性は、カッコつけてキザっぽくしてる方を見ると「素敵だな」って思います。よく「カッコつけマン」とかって揶揄されたりしますけど、カッコつけマンのほうが女性に対する誠意が見えて好きですね。 ――現在、31歳ですが、何歳まで芸能活動を続けていきたいですか?  それって、皆さん次第だと思ってるんです。マスコミやメディアって蛇口みたいなもので、彼らがバルブを開けてくれることで、私たちは世に出ることができる。だから最近、熱帯魚にすごい共感するんですよ。このプラグ、ヒーター、スイッチ……どれかを消したら死んでしまうんだなあって。バルブを開けてくれる限りは、長くやっていこうと思います。 ――すごく客観的なんですね。そんな冷静さも欠くほど、はしゃぐことってありますか?  エッチな野菜を見ている時が、一番盛り上がりますね。あの人(野菜)たちって、狙って生まれたと思うんですよ。2つくっついて股ができてしまった大根とかを見ると、「これからも頑張ろう!」って思います。 (取材・文=林タモツ/撮影=後藤秀二) ●だん・みつ 1980年秋田県生まれ。2009年、「週刊SPA!」(扶桑社)誌上の“美女タレント発掘プロジェクト どるばこ』にて29歳でグラビアデビュー。その後、現在の事務所にスカウトされ、グラビアを中心に活躍。現在までに9作リリースされているイメージDVDは驚異的な売り上げを誇る。BSジャパン「ギルガメッシュLIGHT」レギュラー出演中。 公式ブログ<http://ameblo.jp/sizuka-ryu/●『私の奴隷になりなさい』 監督:亀井亨 脚本:港岳彦 原作:サタミシュウ/出演:壇蜜 真山明大 板尾創路ほか/配給:角川映画  11月3日より銀座シネパトスほかロードショー 公式サイト <http://www.dorei-movie.jp/>

フランス映画界の鬼っ子パスカル・ロジェ監督が描く、本当の“悪魔”『トールマン』の正体とは……!?

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シアターN渋谷のクロージング作品となる『トールマン』。
近藤支配人いわく「ハリウッドからの誘いを振り払ったロジェ監督が
インディペンデント精神で撮り上げた作品。
怖い話ですが、ホラーではないのでご安心を」。
 ずっと大切に育んできたものを、ふいに奪い去られるという怒り、憎しみ、悲しみ、そして痛み……。7年間の歴史に幕を下ろすシアターN渋谷のクロージング作品として11月3日(土)より公開される『トールマン』は、大事な我が子を連れ去られた肉親が感じる恐怖を描いた新感覚スリラーだ。慎ましく暮らしていたのに何故? 街の人たちが噂する“トールマン”の仕業なの? 米国では年間約1000人もの子どもたちが忽然と姿を消すという。この“神隠し”現象は、クリント・イーストウッド監督が『チェンジリング』(08)でノンフィクションタッチに、ギレルモ・デル・トロ製作による『永遠のこどもたち』(07)ではダークファンタジーとして描かれた。だが、それら佳作とはまた異なるテイストを持つ『トールマン』を撮り上げたのは、フランス映画界で今もっとも尖った作品を撮っているパスカル・ロジェ監督。前作『マーターズ』(08)は過激さを極めた暴力描写から世界各国で物議を醸したが、新作『トールマン』はジェニシカ・ビールらハリウッドの人気俳優たちを迎え、一瞬も目を離すことのできないサスペンスフルなドラマに仕上げている。来日したロジェ監督が、『マーターズ』と『トールマン』、そしてハリウッドとフランスにおける映画事情について語った。 ──ロジェ監督の前作『マーターズ』は、シアターNで公開されて“史上最凶のフレンチホラー”として話題になりました。少女拉致監禁事件の顛末を描いた『マーターズ』は、表現活動に寛容なフランスでも大論争を巻き起こしましたね。 ロジェ そうなんだよ、フランスでは不理解からさまざまな誤解を受けたんだ。特にカトリック系の団体がものすごい難色を示して、18歳以下は鑑賞できないようにしようと上映反対運動が起きたほど。表現の自由が認められているフランスでR18指定されるのは、ポルノ映画だけなんだ。R18だと一般の映画館で公開できないし、DVD化されてもレンタル店ではアダルトコーナーでしか扱ってくれなくなってしまう。R18に指定されるということは、年齢制限というより、作品の存在そのものを殺してしまうことと同義なんだ。R18指定になったことを知ってボクらは文化庁へ通い、文化庁の映画担当者や文化大臣に直接会って話をすることで、ようやくレイティングの再審査にこぎ着けたんだ。再審査でも際どい票数差で、なんとかR16指定になったんだよ。 ──すでに確定していたレイティングを覆えらせるとは、すごい熱意&行動力! 我が子を守る母親の心情じゃないですか。 ロジェ ほんと、そうだよ。『マーターズ』は撮影だけでも6カ月かかったからね。今回の『トールマン』は親子愛をテーマにしているけど、自分が苦労して撮り上げた映画が無事に上映されるまでは、肉親が我が子を見守るのと同じような心境だね。
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都内で唯一『マーターズ』を上映したシアターNが閉館することに話題が及ぶと、
ロジェ監督はこのポーズ。「シネコンに街の小さな映画館が負けたと思うと
悲しいよね」と話す。
──そのかいあって『マーターズ』は世界中で注目を浴び、ロジェ監督には新作のオファーが殺到。フランス映画祭2009で来日した際には、「自分が感じる社会の閉塞感、自分自身の息苦しさを映画にした」と話していましたが、『マーターズ』がヒットしたことで、ロジェ監督を取り巻く環境は変わりました? ロジェ 確かに、そんな話をしたねぇ。『マーターズ』を撮る直前は、マジで精神状態はサイアクだったんだ。自分が思うような映画を、なかなか撮ることができずにいたんだ。幸いにも『マーターズ』が完成して、運良くヒットしたことで、ボクの精神状態はすごく良くなったよ(笑)。実は『マーターズ』を撮り始めるときは、「もう、これがボクの最後の作品になる」という覚悟だったんだ。あれだけ振り切った内容の映画を撮ることは、自殺行為でもあったんだ。これが最後だ、自分のすべてを作品にぶつけよう、と。自分の中にあった憎しみのエネルギーを全部注ぎ込むことで完成した映画でもあったんだ。そんなふうにして作った映画だから、観客は誰も振り向かないかもしれないと考えていた。他の仕事を探さなくちゃとね(苦笑)。でも、世の中は不思議なもので、自分が憎しみを込めて作った『マーターズ』が世界中で「すごい映画だ」と噂になったんだ(笑)。おかげで、『トールマン』は『マーターズ』に比べるとずいぶん予算をアップして撮ることができたよ。自分自身に真っすぐに向き合えるようになったしね。ボクが思うに、どんな芸術作品も、芸術家自身が抱えている影の部分を昇華させてくれるものじゃないかな。そういう意味では、『マーターズ』はボクを変えてくれた大事な作品だといえるね。 ──新作『トールマン』は子どもたちが次々と失踪し、トールマンという謎の誘拐魔の存在が噂される……というダークファンタジー的な始まり。ところが中盤以降は予想外の展開を見せ、社会派サスペンスへとモードチェンジしていく斬新な構成。ファンタジーとは異なる、現実社会と地続き的な怖さがありますね。 ロジェ その通り。リアルな世界を描こうというのが、今回の企画の趣旨だったんだ。社会のダメな部分、影の部分をリアルに描こうとね。そこで、まぁ、やっぱりボクはホラー映画のジャンルで売れたわけだから、ボクの得意な手法で物語の導入部分を描いたわけさ。でも、物語としての着地点は、ホラーとはまったく異なる仕掛けを用意した。その仕掛けを楽しんでもらえると、うれしいよ。
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過疎が進む街で看護士として働いていたジュリア(ジェシカ・ビール)は
息子を連れ去られてショック。必死の追跡の果てに、彼女が目撃したものは?
──どんよりと寂れた街で、唯一の明るい希望であるはずの子どもたちが姿を消してしまう。日本でも子どもたちをめぐって、育児放棄や幼児虐待といった悲惨な事件が絶えません。 ロジェ 舞台は米国の地方都市という設定にしているけど、世界的な不景気だから、日本や他の国でも同じようなことが起きてもおかしくないと思うよ。不況の影響をいちばん受けるのは、その国の貧困層。これは世界中どの国でも同じこと。そうして不況が長引けば長引くほど、社会格差はますます大きくなっていくわけだよね。映画に出てくるような寂れた街は、世界中に生まれつつあるんじゃないかな。 ──『マーターズ』もそうでしたが、ロジェ監督の作品に登場するキャラクターたちはどっちが被害者で、どっちが加害者なのか、簡単には判別できない。これは物語上のトリックというよりは、ロジェ監督自身の世界観ですよね? ロジェ ウイッ! その通りだよ。ボクが世界をそのように見ているというよりは、ボクの遺伝子がそうさせているようだね。どっちが被害者で、どっちが加害者か? 要するに突き詰めて考えると、何が“善”で何が“悪”かということだよね。ボクはフランス人だけど、もし米国人が『トールマン』を撮っていたら、誰が被害者か加害者か分からないような展開にはしていなかったんじゃないかな。物語が始まる前から、どっちが善でどっちが悪か、あらかじめ決まっているようなストーリーにしていたはずだよ。その上で、善とはこういうもの、悪はこうして滅びるんだ、みたいな教訓を観客に押し付ける内容にしていただろうね。でも、ボクは違う。善と悪は、もっと多角的なもの。観る側の視点によって変わるものだよ。そのことは常々、ずっと考えてきたことなんだ。ジャン・ルノワール監督の言葉があるんだ。『この世でいちばん厄介なことは、すべての人に理由があるということ』。かいつまんで説明すれば、犯罪を犯した人間には、犯罪を犯す理由があったということ。この“理由がある”ということ。これこそがいちばんの悪なんだよ。ルノワール監督の言葉に、ボクはすごく共感しているんだ。 ──ロジェ監督、トークに熱が入ってきましたね。 ロジェ 今回の『トールマン』は米国を舞台にしているけど、実際にはカナダで撮影したんだ。そしてボクはフランス人。『トールマン』は一見すると米国映画のように思えるだろうけど、ボクはこの映画をフランス映画、ヨーロッパ映画だと考えているよ。ここで、ちょっとボクのプライベートな話をさせてもらえるかな。米国の前大統領ジョージ・ブッシュはアラブ諸国のことを“悪の巣窟”呼ばわりしたけど、ボクの妻はアラブ人でイスラム教徒なんだ。ブッシュの言うことが正しいなら、ボクと妻と子どもが一緒に暮らすボクの家庭は、半分は悪の存在ということになってしまう。自分で自分の家庭を軽蔑しなくちゃいけない。でも、ボクは知っているよ。アラブ人みんなが悪いわけじゃないんだ。イスラム教徒が悪いんじゃない。同じように白人が悪でもない。ブッシュがアラブのことを悪者扱いしたのは9.11があったから。米国にしてみれば、アラブを責める理由があった。でも、アラブ側は9.11よりずっと前から、イスラエルとパレスチナの関係なども含めて、米国からさまざまな辱めを受けてきた。彼らにも理由があった。どっちが加害者でどっちが被害者なのか? どっちが善なのか悪なのか? どちらの立ち場に立つかで、まるで変わってくるもんなんだよ。
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誘拐された少年少女は“トールマン”の正体を知ることに。
『ローズ・イン・タイドランド』(05)の美少女ジョデル・フェルランドが
キーパーソン役で出演。
■二者択一の世界しかないのか? 第3の道を模索するロジェ監督  12月2日(日)で閉館を迎える、シアターN渋谷の近藤順也支配人にもコメントをもらった。「現在、世界中で生きのいいホラー映画を作っている監督は、次々にハリウッドへ引き抜かれています。パスカル・ロジェ監督も『マーターズ』で衝撃を与え、ご多分に漏れずハリウッドからお呼びがかかりました。しかし、それを振り払い、インディペンデントのスタンスで作られたのが『トールマン』。結果として本作は大ヒットを記録し、ロジェ監督は再び注目の的となっています。自分が描きたいもの、作りたいもののために妥協しない、ブレないこのインディペンデントスピリッツを、とくとご確認ください」(近藤支配人)。シネコンではお目にかかれないハードコアな作品を上映してきたシアターN渋谷が、クロージング作品に『トールマン』を選んだ理由が感じられるではないか。では、インタビュー後半。ロジェ監督は『マーターズ』のヒット後、ハリウッドに振り回されたここ数年間についてぶちまけた。 ──『テキサス・チェーンソー』(03)のハリウッド女優ジェシカ・ビールが、『トールマン』では大熱演しています。フランス、カナダ、米国による合作映画を撮ることの楽しさ、難しさの両面を教えてください ロジェ ノンノン! 米国資本は入ってないよ。『トールマン』はカナダとフランスの合作映画なんだ。米国、カナダ、フランスとクレジットされているのは、ライセンス上の関係のため。実際には、米国側は製作費を1ドルも払ってないよ。『マーターズ』より少し多いけど、『トールマン』の製作費はハリウッド映画の小品よりも、ずいぶん抑えた額なんだ(苦笑)。でも、そのおかげでボクは自由に撮ることができたから、よかったと思っている。これがもしハリウッド映画だったら、ボクは単なる雇われの演出家に過ぎず、出資者の言いなりになっているか、すぐにクビを切られていただろうね。物語も、こんな結末にはならなかったはず。幸いヨーロッパでは監督が作品をコントロールすることができ、もし出資者が作品を乗っ取ろうとすれば、裁判で訴えることも可能なんだ。実際に『トールマン』の企画は最初にワーナーやパラマウントといったハリウッドメジャーに持ち込んだけれど、「導入部分は素晴らしい。いかにもホラー映画っぽくていい。ただし、後半は全部変えてもらうよ」と言われた(苦笑)。もし、その通りに『トールマン』を撮っていたら、ボクが映画を作る意味がまったくなくなっていたと思うよ。 ──『マーターズ』がヒットした直後、『ヘル・レイザー』(87)のハリウッドリメイク版をロジェ監督が撮るというプランもあったはずですが、ハリウッド側の対応がイヤになって降りたわけですか? ロジェ 『ヘル・レイザー』! ボクはあの作品が大好きだったし、原作者のクライブ・バーカーの大ファンなんだ! バーガー自身がゲイで、『ヘル・レイザー』にはハードなSM的要素やゲイ的描写も盛り込まれているわけだよね。ボクに『ヘル・レイザー』のリメイク企画が持ち掛けられたときは、すごくうれしかったし、光栄に思ったよ。それで4カ月かけて脚本を練り上げて、イギリスにいるバーガーの自宅にまで脚本を見せに行ったんだ。バーカーはボクの脚本を読んでくれて「キミはボクの作品のことを、すごく理解してくれている」と喜んでくれたんだ。でも、その後で、こうも言ったんだ。「だけど、キミの脚本は、ハリウッドでは採用されないだろうね」と。それで実際に『ヘル・レイザー』の映画化権を持っているハリウッドのプロデューサーの元へボクの脚本を持っていったら、反応はこうだったよ。「ワォ! この脚本は素晴らしいよ、ロジェくん。でも全部書き直してくれるかな?」とね。 ──ハリウッド、ひでぇなぁ(苦笑)。 ロジェ SMダメ、ボンデージもダメ、ゲイもダメ。そーゆーのは全部ダメだって言うんだよ。それじゃ、もうボクの好きな『ヘル・レイザー』じゃないよ。『ヘル・レイザー』じゃないものを、『ヘル・レイザー』のリメイクだと称して作るのもイヤだし、バーカーやファンを裏切るのもイヤだった。それで『ヘル・レイザー』のリメイク企画からボクは降りたというわけなんだ。今のハリウッドでは、本当の意味での『ヘル・レイザー』は作れないと思うよ。 ──今回の『トールマン』を上映するシアターNは、12月2日で閉館。『トールマン』がクロージング作品となります。
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普段は紳士的なロジェ監督。「今回の製作中に妻の妊娠が分かったんだ。
自分が親になることを自覚しながら撮った作品でもあるんだ」
ロジェ ボクの作品をクロージングに選んでくれて、とても光栄に思うし、同時に寂しく思うよ。ボク自身、街の小さな映画館に毎日のように通いながら育って、映画監督になったわけだしね。ヨーロッパにも、いろんな個性的なプログラムを組む小さな映画館がたくさんあったよ。もちろんDVDはとても便利だけど、街の小さな映画館はボクが育った場所でもあり、そういう空間が消えていくことはとても哀しいよ。ハリウッドの大作映画ばっかり上映している大きなシネコンより、ボクは小さくても個性的な映画館が大好きなんだ。ボクは思うんだけど、デジタルとアナログの両方あって、選べればいいのにってね。ボクは今まで35ミリフィルムで撮っていたけど、『トールマン』からデジタルにしたんだ。デジタルにもいい面がいろいろあることが分かったよ。でも、フィルムが持つ独特の質感は棄てがたい。作るほうも観るほうも、作品によって選べればすごくいいのに。パリでも2年後に映画館はデジタルへ完全移行することが決まっているんだけど、地方はすでにデジタルへ移行していて、デジタル対応できない劇場は、もう上映できなくなってしまったんだ。デジタルかアナログか、どちらかしか残さないのでなく、どちらもあって好きなほうを選べる。そんな社会が、本当に豊かなんじゃないかなとボクは思うよ。 (取材・構成=長野辰次) 『トールマン』 監督・脚本/パスカル・ロジェ 出演/ジェシカ・ビール、ジョデル・フェルランド、ウィリアム・B・デイビス、スティーヴン・マクハティ  配給/キングレコード 11月3日(土)より、シアターN渋谷ほか全国順次ロードショー  (c) 2012 Cold Rock Productions Inc., Cold Rock Productions BC Inc., Forecast Pictures S.A.S., Radar Films S.A.S.U., Société Nouvelle de Distribution, M6 All rights reserved  http://the-tallman.com ※シアターN渋谷では、『トールマン』公開記念としてパスカル・ロジェ監督の大ヒットホラー『マーターズ』を10月27日(土)〜11月2日(金)モーニングショーとして上映。また、『トールマン』の上映にあたり、「とおる」という名前の人は入場料が1000円に(証明書持参のこと)。 ●パスカル・ロジェ 1971年フランス・コートダジュール生まれ。ダリオ・アルジェント監督に憧れ、パリの映画学校へ通う。警備員の仕事をしながら、イタリアンポルノの現場で撮影技術を習得した。『ジェヴォーダンの獣』(01)のメイキングを担当した後、『MOTHER マザー』(04)で長編映画監督デビュー。監督第2作となる『マーターズ』(08)のR指定問題で物議を醸し、一躍話題のフィルムメーカーとなった。新作『トールマン』は『マーターズ』以前より温めていた企画で、封切りと同時にフランスでは大ヒットを記録。敬愛するダリオ・アルジェントがプロデュースする作品を現在準備中。

「みんな、ちょっと大げさじゃない?」志茂田景樹が説く、悩み多き時代を生きるヒント

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 フォロワー数約23万人(2012年10月現在)を誇るTwitterアカウント「@kagekineko」に、日々、寄せられる仕事・学校・恋愛・人間関係の悩み。それに答える志茂田景樹氏のリプライは、読んでいるだけで人生が楽になり、小さな希望の火が心にポッと灯る。  有名人が発する言葉は、それだけで大勢が聞く耳を持つ。しかしこの人の場合、それはただのきっかけにすぎず、大勢の人が素直に彼の言葉を求めているように思う。なぜなら今の彼を支持する多くの人が、直木賞作家であることも、お茶の間タレントとしてバラエティ番組でもてはやされていた姿もよく知らない若者たちだからだ。  72歳にして再ブレイク中の本人を直撃した。 ――悩みが寄せられるようになったきっかけはなんですか? 志茂田景樹(以下、志茂田) 最初は「失敗したってそんなに気にすることはないんだよ」というような、僕がいつも漠然と考えていることをつぶやいてたんだけど、それに共感する人が多くて、フォロワーがどんどん増えていったんです。それからだんだん相談みたいなリプライが来るようになって、答えているうちに相談が殺到したという流れですね。全部には答えられませんので、「上から8つ答えようかな」って感じで、Twitterを開いた時にたまたま見たところから順に答えています。 ――悩みを送っている人は、どんな心境だと思いますか? 志茂田 Twitterには140字という制約があるから、別に長い答えは期待してないわけですよ。短い中から「何かヒントがつかめればいいな」「自分の考えと合っているかな」って感じじゃないかな。僕もなんとなく「この人は、もう自分で結論を出していて、背中をちょっと押してもらいたいんだろうな」とかって、その人の意図を読み取って答えてるつもりです。 ――特にどんな悩みが多いですか? 志茂田 今は就活中の大学生から「なかなか内定がもらえない」っていうのがよく来ます。焦るのは仕方ないとしても、「もうダメだ」って考える人が多くて。そういう時は、「あなたを必要としてる人はいるんだよ」って返すようにしてます。それで「もう少し頑張ってみようかな」って思ってくれれば回答は成功ですよね。5~7月あたりは、新入社員の人からの「この会社、自分に向いてないから辞めたい」という悩みが多かったですね。 378A9331.jpg ――「死にたい」と送ってくる人も多いようですが。 志茂田 そういう人に「親にもらった命を粗末にして、死にたいとは何事だ」なんて、昔のお説教みたいなことを返しちゃいけないんです。それより死から少し離れたところから答えると、素直に聞いてくれますよ。まあ、本当に死にたい人間はあまりTwitterに「死にたい」なんて書きませんから、気持ちが柔らかくなる言葉が欲しいんだと思います。 ――ちなみに志茂田さん自身は、死について考えることはありますか? 志茂田 よく考えます。なぜなら、僕はあと200年くらい生きたいと思ってるから(笑)、死に対する覚悟がまだできてないんです。死なんて本当はその日が来るまで、全然考えなくていいことなのに、それでも考えたり怖がったりするってことは、自分がいかに煩悩が多いかってことですよね。 ――Twitter以外に「FRIDAY」(講談社)の連載でもお悩み相談をされてますが、悩みを聞きすぎて、負のパワーに疲れてしまうことはありませんか? 志茂田 それはないですね。僕は人間に対する好奇心が強いほうなので、いろんな人と接することで、作家として創造意欲を駆り立てられますし、人間って一人ひとり違って面白い生き物だなあって感じられますしね。僕、Twitterを開いた瞬間にときめくんです。Twitterの“長方形の小窓”を通して世界を見たり、今まで接したことのないタイプの人が、僕に何か言ってきたりする。そういう意味では、板塀に囲まれた家の節穴から外を覗くような感覚に似てるかもしれませんね。 ――ところで書き下ろしの著書『失敗したって、いいんだよ ~希望をつくる40の言葉~』(青志社)が発売になりましたが、この本で伝えたいメッセージは何ですか? 志茂田 思い通りにいかないと、すぐにへこんでしまう人が多くて、「ちょっと大げさじゃない?」って気がしてるんです。みんな、目に見えない“転ばぬ先の杖”を持ってるんだから、少々のつまずきは、別に転んだことじゃないんだよと。 ――どんな人に読んでもらいたいですか? 志茂田 中学生から社会に出て2~3年あたりまでの人に読んでもらいたいなあって思います。特に中学生くらいは、失敗を恐れてすぐに心が揺れ始めるので。 378A9270.jpg ――あの、私も悩みがあるので聞いていただきたいのですが……。 志茂田 はい、どうぞ。 ――私、32歳なんですけど、今まで付き合ってきた男性がダメ男ばかりなんです。今、付き合ってる29歳の男性も労働意欲がなくて。生活できるギリギリの額しかバイトで稼がず、貯金もなくて……。 志茂田 その人は一人暮らしなの? ――いえ。同じような感じの友人と数人で暮らしてます。 志茂田 じゃあ結構、知恵のある人なんじゃない? 最低の稼ぎでちゃんと食っていけるように、それなりに知恵を働かせてる。 ――そう言われればそうですね。 志茂田 僕がこれまで見てきた感じだと、一生、ダメ男でいる割合って、結構少ないですよ。“ダメなヤツ”って言われてる人でも、大部分の人は、数年後や数十年後にはちゃんと働いてる。もしその人が、会うたびにデカいことを言ったり、「こういう理由で雌伏してるんだ」とか言い訳めいたことばかり言っているようなタイプのダメ男じゃなければ、将来性は悪くないですよ。意外と時と所を得れば変わっていくタイプだと思いますね。 ――なんだか心が軽くなりました! ところで、志茂田さん自身に悩みはないんですか? 志茂田 もちろん悩むこともありますよ。でもほとんどの悩みって、絞っていくと一本の線みたいになるんです。だから大きな悩みのように見えても、実はすごく細いちょっとした悩みだったりするんですよ。 (取材・文=林タモツ/撮影=尾藤能暢) ●しもだ・かげき 1940年、静岡県生まれ。大学卒業後は、20種類以上の職を転々とする。1976年『やっとこ探偵』で小説現代新人賞を、1980年『黄色い牙』で直木賞を受賞。執筆活動のほか奇抜なファッションセンスが注目され、テレビなどでも活躍。1999年より「よい子に読み聞かせ隊」を結成。最近はTwitterでの人生相談が話題となり、フォロワー数が23万人を超える人気となる。 Twitterアカウント「@kagekineko

「抱いた女は2000人」65歳の現役AV男優が語る、悠々自適な第二の“性”活

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自身の“マン遊記”を誇らしげに語る、
山田さん。
 介護モノや熟女モノなどのAVには、よくおじいちゃんのようなAV男優が出演している。だが、彼らは本当に勃起するのか、疑問に思う人も多いだろう。現在、AV業界には10人ほどの60歳以上の、シニア男優が存在しているといわれている。その中のひとり、山田裕二さんが『65歳。職業AV男優』(宝島社新書)を上梓した。  毛皮商から一転、56歳から第二の人生としてAV男優の世界に飛び込み、さらには出会い系サイトで知り合った22歳と37歳の“彼女”を持ちながら、奥さんとも良好な関係を築いているという高齢化社会の肉食男子だ。いったい、この性豪は、どんな“性”活を送っているのだろうか? シニアAV男優の“マン遊記”を、とくとご覧あれ! ■本能の赴くままに ――若い頃から女性が好きだったんですか? 山田裕二(以下、山田) 当たり前ですよ! そんなの、質問するほうがおかしいでしょう。 ――すいません……。 山田 人間はもともと動物ですから、女性が嫌いな男はいません。私は、本能に関しては歯止めがかからないんです。他の人から見れば異常なくらい、本能に忠実に生きていますね。 ――やはり、若い頃から相当遊んでたんですか? 山田 もう、ずっと遊んでいますね。20代で結婚、その直後にはマンションに愛人を囲っていました。やはり男なので、女房とは違う狩りがしてみたくなってしまう。いい女を見ると、口説かなきゃいけないと思っちゃうんです。 ――そんな義務はありません! ところで、AV男優になることに抵抗はなかったんですか? よく人前だと「勃たない……」という話も聞きますが。 山田 全然ありませんでした。毛皮商で営業もやっていましたから、大勢の前でおしゃべりをするのも得意だったんです。 ――でも、大勢の前でセックスをする経験はないですよね。 山田 もちろん(笑)。AV男優としての初めての現場は、パラダイステレビの企画だったんですが、50歳前後の熟女系女優が相手でした。撮影場所のラブホテルに入ると、監督からは「騎乗位や正常位とバック、あとは好きなようにお願いします」と簡単に指示があっただけ。スタッフも監督とカメラマン2人しかおらず、恋人同士のような気分でできたのもよかったんでしょうね。 ――“初体験”の感想はいかがでしたか? 山田 最高でしたね!! 終わってから女優さんに「すごいですね!!」と絶賛されたんです。 ――“すごい”とは、やはりテクニックのこと? 山田 いえ、「硬いですね」と。 ――さすがです(笑)。 山田 ただ、現場でさまざまな男優の仕事を見ていると、さすがに若い男優には負けますね。彼らの男性器はとりわけデカいんです! 自分も18センチくらいで小さいほうではありませんが、AV男優には20センチ以上の人はザラにいます。さらに、形も上下左右にしなりが加わっていて、感心してしまいますね。正直、羨ましいです。 ――同世代の男優さんと比較すると、どうですか?  山田 スタミナでは負けていませんね。AV男優になる前から、食事や生活習慣など健康に気をつけていたんです。 ――やはり、年齢的に健康には気を使うんですね。 山田 いえ、セックスのことを考えて健康を維持してきました。だって、健康でなければ何度もイカせられないじゃないですか! ――……まさに、AV男優というのは、山田さんにとって天職ですね。 山田 ただ、もちろんキツい部分もあります。肉体労働ですし、土方商売と同じです。いわば“セックス土方”ですかね(笑)。ハメるときは気持ちいいんですが、監督の指示通りに動かなければならないので、本能の赴くままに、とはいかない。冬に海に行き、オープンカーの中でセックスをするという撮影の時は、寒すぎてアソコが縮みましたよ。 ■孫にAV出演がバレた!! ――ところで、山田さんには奥さんがいらっしゃいますよね。AV男優の仕事のことはご存じなんですか? 山田 はい。もうバレています。 ――“親バレ”ならぬ、“妻バレ”ですか。 山田 今21歳になる孫がいるんですが、彼氏とAVを見ていたら、私が出ている作品だったらしいんです。それで、私が娘のところに遊びに行った時に「おじいちゃん、AV出てるよね」と……。突然だから、びっくりしましたよ。もちろん、その場では「いや、違う」と、否定しましたが。 ――離婚には至らなかったのでしょうか? 山田 今までたくさん遊んできましたし、浮気もしょっちゅう。さまざまな修羅場もくぐってきましたから、妻にしたら「またか……」という気持ちでしょうね。 ――しかし、これまでの修羅場は「遊び」ですよね。今回はAV男優という「仕事」です。より奥様の印象は悪いのでは? 山田 逆に「仕事だから」ということで、言い訳がしやすかったんですね。俳優さんだって、キスしたり濡れ場を演じますが、浮気ではありません。それと同じです! いろいろ嫌みも言われましたが、なんとか別れずに済みました。 ――65歳の現在、どれくらい発射してるんですか? 山田 仕事はその時によって変動がありますが、だいたい月7〜10本です。あとは、仕事のためにオナニーもします。これは現場で持続力を保ち、暴発を防ぐため。それと、今は出会い系サイトで知り合った22歳と37歳の彼女がいます。 ――彼女、ですか? 山田 はい。ただ、頻繁に会うわけではなく、2〜3カ月に1回ほどのペースでデートをしています。特に37歳の女性は相当に淫乱な女性で、カラダの相性も抜群にいい! セックスでも、お互いに舐め合いながら何度も昇天してしまいます。また、風俗にもよく足を運んでいますね。 ――あの……奥様との情事はないんでしょうか? 山田 ありません! 50歳くらいまではしていましたが、それ以降はほとんどないですね。「女性として見ていない」というと失礼なのですが、やっぱり奮い立たない……。狩りも済んで、食べまくってしまったので、もう残っている肉がないんです(笑)。 ■「気が狂うからもうやめて!!」 ――今までお相手をした女優さんの中で、一番気持ちよかった女性は? 山田 頻繁に絡んでいるので、あまり覚えていられないんです。ただ、その中でも北条麻妃さんとか大堀香奈さん、成瀬心美ちゃんなどは別格によかったですね。 ――心美ちゃんも!? 熟女女優さんだけではなく、若い女優さんの相手もしているんですね。 山田 プライベートでは若い子が好きです(笑)。ただ、仕事では、熟女のほうがやりやすい。30歳以上の女性は経験も豊富ですし、本当にセックスが好きな人ばかり。楽しんで仕事をされていますね。 ――素人、玄人、女優さん含め、これまでどれくらいの人数をお相手したんですか? 山田 合計で2,000人は下らないでしょうか。気持ちよさでは、やっぱり仕事よりも、プライベートのセックスが一番です。5回も6回もイカせて「気が狂うからもうやめて!!」と言われたこともあります(笑)。また、バブルの頃は儲かって仕方がないので、昼間からソープを2軒はしごしたり、店の中で2人、3人と並べてプレイをしたり……。多分、ソープだけで数千万円は使っているんじゃないでしょうか。 ――それでも、まだまだ性欲は衰えない……。 山田 そうですね。現在の2人の彼女も文句ないのですが、できればもう1人、30歳くらいでカラダもテクニックも最高な女性とお付き合いしたいと思っています。やはり、ハンターとしては、違う漁場に出てみたいんです!! ――山田さんから見たら、現在の「草食男子」など考えられませんね。 山田 日本人は、なぜそうなってしまったのでしょう……。僕の若い頃は、どうやっていい女を口説けるかばかり考えていました。路上でナンパをして引っ掛けて、ヤりまくっていましたね。ちょうど東京オリンピックをやっていた頃です。 ――まさに、古き良き昭和の時代ですね。 山田 今の若いカップルは、デートをしてもセックスをしないという人も多いらしいじゃないですか! まったく信じられません。 ――今後、挑戦してみたいものは? 山田 個人的には若い子としてみたいですね。JK、中学生、小学生といった設定が魅力的です。落ち着いた熟女のほうが仕事はしやすいんですが、若くて性格がよくていい子がいれば、ノーギャラでも出演してしまいますよ! もし犯罪でなければ、プライベートでも中高生と一戦交えているでしょうね……。 ――それはさすがにマズいですよ! くれぐれも犯罪には気をつけてください! ●やまだ・ゆうじ 1947年生まれ、65歳の現役AV男優。52歳で自ら経営していた毛皮商を廃業し、エキストラを経て56歳でAV男優へ。60歳以上の男優は10人ほどしかいないといわれる中のひとり。出演作は『いやらしい愛人をつれて ドライブに行こう‥』(Fプロジェクト)、『禁断介護』(グローリークエスト)ほか多数。

芸術的格闘技“シラット”による映画革命だ! ジャカルタ発のアクション大作『ザ・レイド』

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アクション映画界の新旗手となったギャレス・エヴァンス監督。イギリス出身の33歳。
最強武術シラットとの出会いによって世界進出を果たした。
 伝統芸能が息づく熱帯の国・インドネシアで1000年以上の歴史を誇る芸術的格闘技がある。それがシラットだ。殺傷能力を高めた軍隊式シラットをベースにしたローコンバットは世界50カ国で特殊部隊、警察、ボディガードなどのセキュリティー機関に採用されていることからも、いかに実用性の高い格闘技であるかが分かる。このシラットを全面的にフィーチャーしたインドネシア発の新感覚アクション大作が『ザ・レイド』。すでに全米900館で公開され、ハリウッドリメイクや続編製作が決定している大注目作なのだ。  シラットのプロ格闘家であり、本作のコリオグラファーも兼ねているのがインドネシアのアクションスター、イコ・ウワイス。イコ扮するSWAT部隊がスラム街にそびえる高層マンションを根城とする麻薬組織を一網打尽にすべく、強制捜査(raid)するというもの。だが、麻薬組織が武装して待ち構えていたため、マンションの住人たちを巻き込んでの阿鼻叫喚劇がノンストップで繰り広げられる。シラットに魅了され、本作のメガホンを取ったのはイギリス出身の新鋭ギャレス・エヴァンス監督。古今東西の娯楽作の要素を巧みに取り入れた『ザ・レイド』の舞台裏について、来日したエヴァンス監督が語った。 ──最近のハリウッド映画はCGに頼った作品がほとんど。プラッチャヤー・ピンゲーオ監督の『マッハ!』(03)や『チョコレート・ファイター』(08)以降、もう新しいアクション映画は現われないかと思っていましたけど、インドネシアからこんなにも血湧き肉躍るホットな作品が登場したことに驚きました。 エヴァンス サンキュー! 確かにその通りだね。最近のハリウッド映画はCGばっかりになってしまったよね。ボクらが同じようにCGを使った作品を作っても、ハリウッド大作には到底かなわない。それでボクらはあえて後ろに後退するというか、原点回帰を目指したんだ。ボクが子どもの頃に夢中になって観ていた1960〜70年代の映画のことを思い出したんだ。あの頃のアクション映画にどうしてあんなに夢中になったのかあらためて考えたんだけど、カメラワークや編集の刻むリズムがすごく良かったことに気づいたんだ。そうだ、リズム感のあるアクション映画を作ろう! そこからボクらの映画製作が始まったんだよ。
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主演のイコ・ウワイス、29歳。密室化した高
層マンションにて肉弾戦から銃撃戦まで何で
もありなバーリトゥード戦を繰り広げる。
──主な舞台は高層マンションだけという極めてシンプルな設定。ブルース・ウィリス主演の人気シリーズの第1作『ダイ・ハード』(88)や、リュック・ベッソン監督の『レオン』(94)のホテルからの脱出劇などを連想させますが、よりスリリングな展開に仕上げていますね。 エヴァンス イエス。ストーリーをどう展開させていくかは、すごく考えたよ。通常のアクション映画をDVDで観るときって、どうしてもドラマ部分を飛ばしてアクションシーンを観てしまうよね? みんな、そうでしょ(笑)。この映画も、みんな格闘シーンが目当てだと思うけど、他のアクション映画みたいにドラマ部分を飛ばして観たいと思われないような展開にしたんだ。上映中は一切の油断が観客もできないような展開を考えたわけさ。もちろん緩急は付けているけど、ひと呼吸できても「いやいや、あの柱の後ろにはまだ敵が潜んでいるに違いない」と常にハラハラドキドキするようなアクション映画に仕立てたんだ。 ──一切の無駄なシーンを削ぎ落とした作品が今回の『ザ・レイド』というわけですね。 エヴァンス そういうことだね。アクションシーンとアクションシーンのつなぎ部分に違和感がないようにまとめたよ。どうしてもこの手の映画は“脚本の10ページにつき1回のアクション”みたいなペース配分で、無理やりな展開になりがちだからね。つなぎ部分は休憩タイムじゃなくて、より観ている人たちの緊張感を高めるためのパートとして考えたんだ。つまり、『ザ・レイド』はアクション映画ではあるんだけど、サバイバルホラーでもあるんだ。ホラー的な演出、スリラー的な要素を盛り込むことで、観ている人の緊張感をずっと持続させているんだ。それに高層マンションに突入したSWAT部隊は途中から分かれてしまう展開になるんだけど、これによって異なるロケーション、異なるトーンや色調になることで、変化が出せたと思うよ。Aチームがギャングと格闘している一方、Bチームは別のフロアで逃げ場のない密室に追い詰められて……みたいに気が抜けない展開にしたんだ。 ──主人公ラマが得意とするのは、インドネシアの伝統的格闘技シラット。エヴァンス監督はシラットのどこに魅了され、インドネシアで映画を撮るようになったんでしょうか? エヴァンス 実はボクは6年前までは、シラットのことを知らなかったんだ。もちろん格闘技全般が好きで、カンフー、ムエタイ、柔道、合気道などのファンではあったんだ。それで格闘技好きなことからインドネシアでシラットについてのドキュメンタリー番組を撮ることになり、そのときシラットの奥深さを知ったんだ。ドキュメンタリーの撮影をしながら、目からウロコが落ちるような体験をいろいろしたよ。シラットには200以上の流派があり、その流派ひとつひとつに異なる哲学がちゃんとあるんだ。それにインドネシアはイスラム教徒が多いけれど、インドネシアではイスラム教よりもシラットの歴史のほうが古いんだよ。そして、何よりもシラットのスタイルが興味深かった。とてもフレキシブルで、いろんな環境に適応できるようになっているんだ。密室で1対1で戦う場合、広い場所で複数の敵に襲われた場合など、いろんなシチュエーションに応じた戦い方があるんだ。型がきっちり固まっておらず、いろいろと発展させて使うことができるし、他の格闘技の影響を受けて、今でも変化している。そこがすごく面白いなぁと思ったんだ。
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麻薬組織と麻薬王に買収されたマンションの住
民たちが次々とSWAT部隊に襲いかかる。
マンションにある物、すべてが凶器だ。
──アクション映画に適した格闘技といえそうですね? エヴァンス うん、そう思うよ。他の格闘技は今ではどれもスポーツになっているけど、まぁシラットもスポーツ化はしているけど、もともとのシラットはコンバット用のもので、“生きるか死ぬか”という状況で使われていた非常にアグレッシブなもの。シラットにはいろんな種類があるんだけれど、そのひとつに「チマンデ・シラット」というのがあるんだ。これは相手の骨を折ることを目的とした、とても攻撃的なもの。でも、それとは逆に「チマンデ・オイル」というのも存在して、これは相手の折った骨を治癒するためのもの。骨を折るだけでなく、折った骨を治してしまう。これも、とても興味深いよね。ある種のドラマチックさを感じさせる、シラットならではの奥深さじゃないかな。 ──骨を折っちゃうのもエグいけど、たちまち治しちゃうんですね。シラット、すごいなぁ。『ザ・レイド』は過激なアクションシーンの連続ですが、本当に死傷者は出てないんですか? エヴァンス ラッキーなことに死者は出てないよ、まぁ負傷者は少しばかり出たけどね(苦笑)。 ■切腹、子連れ狼、サニー千葉……。日本映画が大好き!  『ザ・レイド』の特筆すべき点は、5歳からプンチャック・シラットを始めた主演のイコ・ウワイスをはじめ、主要キャストにプロの格闘家をそろえたアクションシーンのガチンコぶり。肉弾戦、銃撃戦、剣斬戦と、さまざまなシチュエーションでの変化に富んだ戦いが繰り広げられる。エヴァンス監督は前作『ザ・タイガーキッド 旅立ちの鉄拳』(09)でもイコを主演&コリオグラファーとして起用していたが、イコのデビュー作となったこちらの作品も手加減なしの驚愕作だった。観る側に痛みが伝わってくるようなリアルさ。それがエヴァンス監督とイコ・ウワイスとのコラボ作の特徴といえそうだ。 ──前作『ザ・タイガーキッド』もすごかったですね。隣のビルに飛び移った主人公役のイコが、続いて飛び移ろうとする敵を物干しざおで突き落とすシーンは、どうやって撮影したんですか? エヴァンス ジャンプしている敵を竹ざおでビルの下に突き落としてしまうシーンだね(笑)。インドネシア版のDVDには特典でメイキング映像が付いていたんだけど、日本版は残念ながら入ってなかったらしいね。あのシーンはずいぶん時間を掛けたよ。まず敵役をワイヤーで吊るして、本当に落っこちないようにしたんだ。それからジャストなタイミングで竹ざおで突けるように何度もテイクを重ねた。もちろん竹ざおの先端にはゴムをハメていたし、敵役の胸にはパットを入れていたよ。それでもテイクを重ねると、どうしても集中力が落ちてきてしまう。13回撮り直してとめたんだ。どうして13回かというと、13回目でイコが誤ってしまい、相手の首筋のすぐ横を竹ざおがすり抜けたんだ。もし、首を直撃していたら、多分死んでたんじゃないかな。それで、「これ以上はヤバい」とスタッフ一同焦って、撮影をストップしたわけさ。それが13回目だった。本編では7テイク目が使われているよ。アクションシーンの撮影は万全を期しているけれど、何度も撮り直すことで、どうしてもリスクが生じてしまう。アクション映画は、やっぱり危険が伴うものなんだ。 ──今回は落っこちた敵が手すりに当たって、背骨が逆V字になってしまう強烈シーンがありますが、あれはCGじゃないんですか?
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こちら麻薬組織の最強戦士マッド・ドッグ(ヤ
ヤン・ルヒアン)。悪人顔だが、イコと共に本
作の過激なコリオグラフも担当している。
エヴァンス CGは使ってないよ。あのシーンは1ショットで撮っているように見えるだろうけど、実は3ショットを組み合わせたものなんだ。まず、マットを敷いた上に人が落っこちてくるショット。次に、落っこちた人の上半身が手すりに垂れ下がっているショット。そして反対側に下半身があるショット。その3つのショットをうまく組み合わせることで、あたかも手すりに当たって背骨が真っ二つに折れたように見えるシーンに仕上げたんだ。 ──CGに頼らず、アイデアをたっぷり使ったわけですね。 エヴァンス そうなんだよ! これだけアクションシーンがあると、ボクだけのアイデアでは追いつかない。それで撮影監督や特撮担当といろいろと相談して、アイデアを練り合うんだ。「こーゆーシーンを撮りたいんだけど、どう?」「あーやれば、撮れるんじゃないかな」というふうにね。3人でいろいろアイデアを出し合って、撮り進めていったんだ。 ──エヴァンス監督のプロフィールを見て気になったんですけど、デビュー作の短編映画のタイトルは『Samurai Monogatari』。よほど時代劇がお好きなようですね? エヴァンス ボクは小さい頃から、父親が映画好きで、ビデオをよく借りてきて一緒に観ていたんだ。ハリウッド映画だけじゃ物足りなくなって、香港のアクション映画や日本の時代劇といった作品もすごく観て、アジアに興味を持つようになったんだよ。黒澤明監督はもちろん、溝口健二監督の『雨月物語』(53)も大好きだ。あと、ダイゴローが出てくるのは何だった? そうそう、三隅研次監督の『子連れ狼』(72)も忘れられない作品。それに子どもの頃にいちばん好きだったのは、サニー千葉主演の『戦国自衛隊』(79)。あれは時代劇にSFタイムスリップを合体させた、最高に面白いエンタテインメント作だったと思うな。1カ月前には小林正樹監督の『切腹』(62)も観たよ。これにも痺れたね〜。 ──日本映画が大好きで、日活の『冷たい熱帯魚』(10)スタッフと組んで、北村一輝主演のバイオレンス映画『KILLERS』を製作することになったわけですか。
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「香港のアクション映画や日本の時代劇が大好
き」というエヴァンス監督。礼節を重んじる
アジアの武術にすっかり心酔しているのだ。
エヴァンス そうだね。ボクはチーフプロデュースではなく、コプロデュースという立場になるけどね。インドネシアで活躍しているモー・ブラザースが監督していて、製作の真っ最中。この間、撮影現場に立ち会ったけど、北村さんが普段とは全然イメージの異なる殺人鬼役に挑戦していて、すっごく面白い作品に仕上がると思うよ。日本のファンも期待していいんじゃないかな。 ──エヴァンス監督は、これから『ザ・レイド』の続編製作に加え、ハリウッドで『ザ・レイド』のリメイク、さらにはメジャースタジオでハリウッド大作を撮ることに。エヴァンス監督自身が大変な修羅場に足を踏み入れることになりますね。 エヴァンス そうなんだよ(笑)。でも、そういう状況でこそ、シラットは役に立つと考えているよ。シラットは精神面にも重点を置いていて、「シラット・ウラフニ」という言葉があるんだ。これは“自分からケンカを探しに行くようなまねはするな”という教え。シラットはただ相手を倒す技を教えるだけでなく、どうすればトラブルを回避できるかという教えも含んでいるんだ。どんなにストレスに悩まされても、ケンカ腰で仕事をしちゃいけない。平和的に解決できる方法が必ずあるはず。このことをボクはいつも心掛けているよ。インドネシアで映画を撮っていると、どうしてもインドネシアのスタッフはイギリスから来たボクに対して遠慮しがちだけど、ボクはみんな対等な関係だと考えているんだ。主演のイコがいないとボクは撮影ができない、でもイコはロケ車のドライバーがいないと撮影現場に来ることができない。みんなが協力し合わないと、映画はできないからね。シラットの教えを心掛けて、これからも面白いアクション映画を作っていくよ! (取材・文=長野辰次) 『ザ・レイド』 監督/ギャレス・エヴァンス 音楽/マイク・シノダ(リンキン・パーク)、ジョセフ・トラパニーズ 出演/イコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアン、ジョー・タスリム、ドニ・アラムシャ、レイ・サヘタピー、ピエール・グルノ、テガール・サトリヤ  配給/角川映画 R15 10月27日(土)より渋谷シネマライズ、角川有楽町シネマほか全国ロードショー (C)MMXI PT. MERANTAU FILMS http://www.theraid.jp ●ギャレス・エヴァンス ウェールズ生まれ。2003年に短編映画『Samurai Monogatari』で処刑を待つサムライを描いた。脚本も兼ねた低予算映画『Footsteps』(06)で長編監督デビューを果たし、スウォンジー湾映画祭で最優秀映画賞を受賞。2007年にインドネシアで撮影されたテレビ用ドキュメンタリー番組『The Mystic Arts of indnesia:Pencak Silat』を監督。このとき、プンチャック・シラットやスマトラ島東部の文化に触れ、すっかり心酔。ドキュメンタリー撮影で知り合ったイコ・ウワイスを主演に迎えた『ザ・タイガーキッド 旅立ちの鉄拳』(09)で注目を集める。本作の続編となる『Berandal』、ユニバーサルが企画開発を進めているクライムアクション大作『Breaking the Bank』などが監督作として予定されている。さらに北村一輝主演の日本・インドネシア合作映画『KILLERS』(13年世界公開予定)のプロデュースにも参加している。

“天才”ウルティモ・ドラゴンの挑戦「僕はプロレスを変えた。でも、今のプロレスは好きではない」

 
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デビュー25周年。マスクをさせておくにはもったい
ないほど、素顔もイイ男、との噂も。
 メキシコスタイルのプロレス「ルチャリブレ」。マスクマンを中心にしたレスラーたちが華麗な飛び技を繰り広げるルチャは、日本でも“仮面貴族”ことミル・マスカラスの活躍によって広く知られることになった。現在は「みちのくプロレス」などがルチャスタイルを取り入れているが、日本のルチャの第一人者として知られるのがウルティモ・ドラゴンだ。  彼はルチャの故郷メキシコと非常に縁が深く、デビューの地もマスクマンに変身した場所もメキシコ。そんな彼が、11月7日に東京・後楽園ホールで「LUCHA FIESTA 2012~ウルティモ・ドラゴンデビュー25周年記念大会~」を開催する。日本やメキシコはもちろん、アメリカのメジャー団体でもトップ選手として活躍してきた彼に、波乱に満ちたレスラー人生やプロレス界の現状について尋ねた。 ──ウルティモさんはプロレスラーになった経緯がかなり特殊だと思いますが、レスラーになろうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか? ウルティモ 小学生の時に、アントニオ猪木さんに興味を持ったことですね。でも、初めてプロレスを見たのはジャイアント馬場さんの試合だったんですよ。そのころ、馬場さんの全日本プロレスは土曜日の夜8時に放送していたんですけど、僕たちの小さいころは土曜8時というと『8時だョ!全員集合』(TBS系)を見ないと、翌週の学校の話題についていけなかった。ところが、何かの時にたまたまテレビにプロレスが映ってて「なんだコレ?」って思ったんです。あくまで子どものころの印象ですけど、馬場さんの動きって、そのころは遅くなってたんですよ。「レスラーって本当に強いの?」って思ったのが最初の印象ですね。 ──それがなぜプロレスへの憧れに変わったのでしょう? ウルティモ その次に見たのが、新日本の猪木さんの試合で。ほかにもタイガー・ジェット・シンとかスタン・ハンセンとか、身体の大きい人たちがたくさん出てきて。その時に「これだ!」と思いました。小学校の2年か3年のころですね。それから毎週欠かさず新日本プロレスの放送を見るようになって。あのころは新日本の時代なんですよ。藤波辰爾さんとかタイガーマスクとか、その後に長州力さんとか。 ──レスラーを目指したということは、肉体的に自信があったのでしょうか? ウルティモ まったくないですね。公害病認定患者でしたし、小さいころは身体が弱かったですよ。実は僕、高校を卒業する時に体重が55キロしかなかったんです。今と同じ身長(172センチ)で。だから僕が「プロレスラーになりたい」と言っても、周りはあきれてましたよ。学校の先生なんか「お前なんかレスラーになれるわけない」って。 ──あの当時は、身体の大きい選手が多かったですしね。 ウルティモ そうなんですよ。今でこそ僕と同じくらいの背丈の選手はたくさんいますけど、あのころは狭き門だった。入門のパンフレットを見ても、応募条件に「身長180センチ以上・体重80キロ以上」と書いてあって。東京に来てからアルバイトをしながらトレーニングして体重を増やしたんですけど、身長はどうにもならない。そんな中、入門テストを受けにいったんですけど、そのころから自分はズル賢かったんで、履歴書に「178センチ・65キロ」って書いたんですよ。そしたら、当時教官だった山本小鉄先生から「お前、178ないだろ」って言われて。テストのメニューは全部こなしたんですけど、通知は不合格だったですね。 ──それでも、あきらめなかった? ウルティモ プロレスラーになると言って故郷の名古屋を出てきたから、そのまま帰れないじゃないですか。だから小鉄さんに直談判して「テストのメニューを全部クリアしたのに不合格なのは納得がいかない」と伝えたんです。そうしたら、道場に通って練習することは許してもらえたんですよ。でも、それが新日本の中で問題になってしまって続けられなくなった。そのころ、たまたまメキシコのプロモーターが新日本に来ていたんですけど、そこで「メキシコに行けないかな」ってひらめいたんです。小鉄先生は自分の身体が小さいから、同じ身体の小さい人間に優しくて、自分のメキシコ行きに骨を折っていただきました。 ──ひらめきでメキシコ……。かなり大胆ですね。 ウルティモ たまたま僕が行く前に新日本プロレスの先輩2人がメキシコに遠征していて、そこに合流する形になりました。メキシコは6人タッグマッチが主流なんですけど、先輩たちと組めば団体側は日本人トリオとして扱えるじゃないですか。ちょうどタイミングが良かった。 ──メキシコではどうだったのでしょうか? ウルティモ メキシコに着いて、2日後には試合に出てましたね。いきなりセミファイナルでした。デビューして3カ月で、ビッグマッチのシングル戦を組んでもらったりもしました。僕が行ったのは「UWA」という団体だったのですが、その団体の世界ウエルター級のベルトは東洋人が獲ったことがなかったんですけど、僕が21歳の時に初めて獲りました。自分で言うのも変ですけど、その時は「自分はルチャリブレをやるために生まれてきたんだろうな」と思いましたよ。 ──いきなりメキシコでスターになれた要因はなんだったのでしょう? ウルティモ 向こうでスターになるためには、技はもちろんですけど、どれだけメキシコのルチャを理解しているかという要素が大きいですね。日本のプロレスは格闘技の要素が大きいんですけど、ルチャはエンターテインメント色が強い。日本で試合経験がある選手はそれに戸惑ってしまうんですけど、僕はスタートがメキシコだったから迷うことなくできたんですよね。 ■凱旋帰国の時、新日本を天秤にかけ、背を向けた ──メキシコでのデビューから3年後、ウルティモさんは日本初のルチャ団体「ユニバーサル・プロレスリング」の看板選手(当時は素顔で本名)として凱旋帰国されました。いろいろなウワサがある団体ですが、なぜウルティモさんに白羽の矢が立ったのでしょう? ウルティモ あれはもともと、新間寿さん(昭和プロレスの伝説的な仕掛け人)の息子(新間寿恒氏)さんが、グラン浜田さんを上げるリングをつくろうとしたのが発端だったんです。その中で「メキシコのプロレスをやりたい」というイメージでつくられたと思うんですよ。そのコンセプトに合った僕を若手のエースにして、浜田さんをメインにしていくという感じだったと思いますね。実は同じ時期に、新日本プロレスからもオファーがあったんです。でも、言ってみれば新日本は僕を捨てた団体ですよね。だから天秤にかけた時、あの当時はどちらに行くか決まりきっていたというか。 ──90年代には、その遺恨があった新日本のリングに上がっていますが、特別な感慨はありましたか? ウルティモ その時はWARという団体にいたので、対抗戦なら出て行かなきゃいけないとは思っていましたけど。ただ、自分のスタイルとは違う部分でやることになって、しんどかったかなというのは正直ありましたね。新日本的なジュニアのスタイルとは、ちょっと合わなかったなと。 ──メキシコの老舗団体EMLLでウルティモ・ドラゴンに変身し、SWS、WARと所属団体が変わり、さらにアメリカにも進出されました。あの当時はまだジュニアヘビーの日本人レスラーがアメリカで成功する例が少なかったと思いますが、どうしてアメリカ行きを選んだのでしょう? ウルティモ メキシコやユニバーサルでメインを張らせてもらって、WARでアンダーカードも経験して、いろんなことが分かるようになった。そしたら、さらに上に行きたいじゃないですか。その時にアメリカのメジャー団体「WCW」を選んだんですよ。 ──WCW行きの経緯を聞かせてください。 ウルティモ 当時、メキシコからレイ・ミステリオJr.とかさまざまなレスラーがWCWに行っていて、クルーザー級を活性化させるという話があったんですよ。それを聞きつけて、いろんなツテを使ってアメリカに行きました。そしたら、いきなりデビュー戦でPPVで。ミステリオを相手に日本スタイルの叩き潰すような試合をしたんですけど、それがいい評価をもらってWCWから契約の話をもらいました。その当時、僕はジュニア8冠王座を持ってて、当時WCW世界クルーザー級王者だったディーン・マレンコと年間で一番大きい大会で防衛戦をして。それに勝つことができたんですが、あれが自分のプロレス人生のハイライトだったんじゃないかと思いますね。 ■握力8キロでも見栄えのするファイト ──アメリカでの成功は、プロレス史に残る偉業だったと思います。 ウルティモ でも、アメリカだからということに感慨はないんですよ。日本人は「全米で」とか「世界で」って言葉が好きですけど、自分は出発点がメキシコだったから「世界」ってものに特別な感覚はないですね。たまたま大きな舞台に立ったのが、アメリカだったというだけで。 ──アメリカで学んだことは何でしょう? ウルティモ アメリカでは、ビジネスについてすごく学ばせてもらいましたよ。アメリカのレスラーの収入は、グッズのロイヤリティが、かなりのパーセンテージを占めてるんですよ。そして、たくさんギャラを稼ぐ奴が価値があると。昔はプロレスをやるだけでビジネスになりましたけど、アメリカに行って「今は違うな」と思ったんです。僕は会場で必ず売店に立つんですけど、あれもレスラーにとって大事な仕事ですよ。 ──98年の試合中に左肘関節を大ケガ。アメリカで受けた手術が失敗し、神経を痛めてレスラー生命の危機を迎えたことがありました。左手が全く動かないほどの重傷だったようですが、その当時は引退を考えたのでしょうか? ウルティモ 引退は考えてなかったですね。何がつらかったって、痛みがひどかったんですよ。痛くて死んだ方がマシかなって思うくらいで。その時は引退するかどうかまで頭が回らなかった。それから、いい先生と知り合って3回くらい手術したんですが、全く動かなかった左手が徐々によくなってきて、02年に復帰できました。 ──回復はしたものの、現在も左手の握力が8キロほどしかないそうですね。 ウルティモ うーん、8キロもないんじゃないかな。 ──プロレスではロープをつかんだり相手をクラッチしたりと握力が重要になる場面が多いと思いますが、最近の試合を拝見すると、そんなハンデを抱えているとは思えない動きです。 ウルティモ だから、それをなるべく使わないファイトスタイルに変えたんですよ。まあでも、動きとしては全盛期の3分の1ですね。プロですから、お客さんにはできるだけ悟られないようにはしていますが。普通だったら復帰できないほどでしたから。僕の主治医は絶対にカムバックさせると言ってくれましたけど、他のお医者さんは「復帰は難しい」と言ってましたね。 ──脂が乗り切っていた時期だけに、大ケガと手術ミスは悔しい気持ちがありますか? ウルティモ 今になってみれば、もしケガをしないで普通に試合を続けてたら、逆にどうなってたんだろうって思いますね。さっきも自分のハイライトって話がありましたけど、人間って上がったら次は落ちるしかないじゃないですか。レスラーは年齢的にファイトスタイルを変えなきゃいけなくなる時期が来るんですが、特に自分は跳び技が多い選手なんで、ケガもなくピンピンしてたら全盛期の危険な技をやりたくなる。それで失敗して頭から落ちたり、もっと大変なことになってたかもなって思いますね。スタイルを変える、いいきっかけになったのかなと。
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11月7日も、鍛えられた肉体でメキシコ流の
「魅せる」プロレスを体現する。
■黄金時代と今、レスラーのオーラがまったく違う ──かなりポジティブに思考するタイプですね。 ウルティモ 人間は、考え方次第の部分があるじゃないですか。手術後も試合のスケジュールがあったんですが、これはプロレスの神様が「おまえは出なくていいよ」って言ってるんじゃないかと思って出ませんでした。あと、ケガをする前年に、「闘龍門」というプロレスラー育成学校をメキシコで始めたんですよ。結局、4年間は試合を休んだんですが、その間、指導や経営に専念したおかげで闘龍門も成功したのかなって。両立しようとしてたら、絶対にうまくいかなかったでしょうね。 ──闘龍門は、日本でも興行として大成功しました。 ウルティモ 最初は逆上陸だったんですよ。メキシコで練習を積んだ選手たちの「発表会」という感じで。まあ、日本に持っていったら面白いなとは思ってましたけど。 ──闘龍門は、ルチャを日本に持ち込むという意図もあったのでしょうか? ウルティモ それは違いますね。自分がやってきたのは、単なるルチャリブレじゃなくて、自分なりの総合的なスタイルなんですよ。日本のスタイルをベースに、ルチャとアメリカンプロレスのいいところをミックスしたものですね。一つのスタイルしかできないという選手は育てたくなかったし、どこの国の選手ともやれるようにしてあげたかった。よく選手を育成するコツを聞かれるんですが、自分が経験してきたことをまとめて伝えただけというシンプルな話です。 ──プロレス黄金時代と今のプロレスの違いも感じましたか? ウルティモ レスラーのオーラが全く違いますね。ただ、よく昔と今とどっちがいいかと聞かれるんですけど、時代の流れだし仕方ないと思うんですよ。それはそれでね。ただ、先輩たちと試合をさせていただいて、好きか嫌いかだったら僕は昔のプロレスの方が好きですよ。良い悪いじゃなくてね。でもじゃあ、今みたいなスタイルのプロレスの流れになったのはなぜなのかって言われたら、僕が変えた部分もある。自分で変えといて、何言ってんだって思われるでしょうけど。 ──今のプロレスは、過激な技の応酬が中心になっています。 ウルティモ 若いレスラーたちの試合はすごいですよ。僕は正直言って最近は体力的に落ちてきたなと自分で思っていて、ああいう試合を1回やったら2週間くらい休まないと次はできんだろうと思いますね。今の若いレスラーというのは、それくらいハードな試合をしてますよ。それはすごいと思いますね。ただプロレス本来の、巡業があって毎日試合をこなしていくという意味では、そのスタイルは厳しいかなと思います。自分がジュニアのハードなスタイルの流れをつくって、それからさらにエスカレートしているので、そろそろ軌道修正した方がいいかなと。なぜかというと、レスラーも生身の人間ですから、これ以上ハードになったら危ないという心配がありますね。 ──危険な技の応酬がないと、お客さんが満足しないという側面はありませんか? ウルティモ それはね、僕はちょっと違うと思うんですよ。日本の今の若いレスラーは、ガチガチでやればお客さんが沸くと思ってる。本来のプロレスは、ドラマを積み上げて興味を引くようなシチュエーションをつくって盛り上げるわけですよ。でも、今は興行数が少ないからドラマがつくれない。1試合だけで魅せるというのは限界があると思うんですよ。だから、瞬間的に沸かせる大技に頼った試合になるのかなと。 ──先ほど、昔のレスラーはオーラが違うという話がありましたが、プロレスもスケールが小さくなってしまっているのかもしれないですね。 ウルティモ レスラーだけじゃなくて、時代の流れだから仕方ないですけどね。僕は海外に住んでるから、日本は安全で良い国だとは思いますけど、政治も何もかも周りの反応を気にしすぎてスケールが小さくなってるように感じますね。このままだと危ないんじゃないかと思いますよ。 ■今なぜ、メキシコのプロレスを日本でやるのか ──11月7日に開催される「LUCHA FIESTA」ですが、なぜ日本でルチャの大会を主催しようと思ったのでしょうか。 ウルティモ 僕の出発点になったメキシコという国に感謝の気持ちがあって、何かできないかなと。メキシコに対する恩返しという意味合いもあります。 ──メキシコの空気を再現することが最大の目的だそうですね。 ウルティモ ルチャリブレができる日本の選手に加えて、本場の伝説的な選手を連れてきて、本物のルチャをやろうという大会です。メインイベントはメキシコのルールでやりますよ。日本のファンは馴染みがなくて「なんだコレ?」と思うかもしれないんですけど、それはそれでいいかなと。「これがルチャリブレなんだ」と。明らかに他の興行とは違うスタイルになると思います。 ──試合以外でも演出があるそうですね。 ウルティモ ルチャリブレは、試合と観客のヤジや声援が一体になったものなんですよ。在日メキシコ人の方を会場に呼んでヤジを飛ばしてもらいますし、マリアッチ(メキシコの伝統的な楽団様式)の演奏もあります。激しい試合が目的なら、他の興行の方がいいかもしれません。でも、メキシコの空気を完全に再現できる興行はウチだけだと自負しています。あんまりルチャを知らないプロレスファンにこそ来てほしいですね。いろんなプロレスがあってもいいと思うんですよ。デスマッチとか2階から落ちたりとか。でも、それだけがプロレスじゃないよと。 ──プロレスは斜陽産業になっているといわれていますが、25年のキャリアがあるウルティモさんからはプロレスの未来がどう見えていますか? ウルティモ プロレスは、なくなりはしません。日本のカルチャーとして根付いてるので。ただ、野球にしたってテレビ放送がなくなったり、浮き沈みがあると思うんですよ。エンターテインメントが多様化して、若い人たちがケータイとかネットとか、そっちの方に目がいっちゃって。お小遣いの使い道も分散してしまうから、プロレスのチケットが買いづらいでしょうね。 ──どのように業界が変わっていけば、プロレスの未来が明るくなるでしょう? ウルティモ 今、ブシロードさんが新日本プロレスのオーナーになって、いろんなところで宣伝をしてますよね。あれは業界にとって素晴らしいと思います。ああいう企業が業界をまとめてくれるといいんじゃないかなと。今のプロレス界が厳しいのは、団体数が増えて興行が多くなりすぎていることも大きな要因だと思います。昔は後楽園ホールでも2カ月に1回くらいの興行数でしたけど、今は1カ月に半分くらいプロレスの興行があります。週末に興行が集中する傾向もありますね。たくさんの団体がお客さんを取り合って、互いに食い合ってるような状況。これを変えていくべきだと思いますね。一つのオーナー企業が業界をまとめて、潰し合いにならないようにして、それぞれの団体を独立採算制にするとか。 ──自分もファンとして、プロレスに頑張ってほしいですね。 ウルティモ プロレスには夢がありますから、これからも続くと思います。僕の役目としては、いい形で次の世代、さらに次の世代にバトンタッチできればなと。僕が引退して70歳、80歳になって、プロレスがなくなってたら寂しいじゃないですか。 (構成=佐藤勇馬/写真=早船ケン) ●ウルティモ・ドラゴン 1966年12月12日、愛知県生まれ。プロレスラー。87年にメキシコでデビューし、3年後に凱旋帰国。以後、日本マットをはじめ、米国のメジャー団体「WCW」「WWE」などでトップレスラーとして活躍。97年にプロレス学校「闘龍門」をメキシコに設立し、多くの有名レスラーを輩出。現在は自主興行を中心に、後進を育成しながら世界各国で活躍中。公式ブログ〈http://ultimodragon.eplus2.jp/●『LUCHA FIESTA 2012』 11月7日に東京・後楽園ホールで開催される『LUCHA FIESTA 2012~ウルティモ・ドラゴン25周年記念大会~』。ウルティモを筆頭にザ・グレート・サスケ、ブラック・タイガーら有力選手が多数出場するほか、メキシコの伝説的なレスラー“稲妻仮面二世”ラヨ・デ・ハリスコ Jr.の出場も決定。さらに“誰もが知る超大物選手”の出場も予告されている。メキシコの文化や音楽も楽しめる特別な大会となるだろう。 チケット申し込み イープラス <http://eplus.jp/sys/T1U14P0010117P002026260P0050001P006001>