「深海生物はギャンブル!?」“海の手配師”が語る、深海生物の魅力と気になるお値段

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イガグリガニ
 NHKスペシャルで『世界初撮影!深海の超巨大イカ』が放送されて以来、にわかに注目を集めている深海。国立科学博物館では『深海展』が開催され、夏休みを迎えた子どもたちを中心に、ひっきりなしに訪れる来館者であふれている。  この、深海の魅力に取り憑かれている男が石垣幸二。15年あまりにわたって深海生物を追い続け、“海の手配師”として各地の水族館に生物を納入する。さらに、手配だけに飽き足らず、2011年には静岡県沼津市に「沼津港深海水族館シーラカンス・ミュージアム」の館長に就任し、日々深海生物の魅力を来館者に語り続けている。  先日、『深海生物―奇妙で楽しいいきもの』(笠倉出版社)を刊行した石垣氏に、奇妙で、グロくて、美しい深海生物たちの魅力をタップリと語ってもらった! ――今年1月にNHKスペシャルで『世界初撮影!深海の超巨大イカ』が放送され、16.8%の高視聴率を記録しました。以来、“深海ブーム”ともいえる状況となっています。この現象について、石垣さんはどう思っていますか? 石垣幸二(以下、石垣) 実は、5~6年前から深海生物の映像を撮りたいという依頼が、テレビ局を中心に増えていました。ここ数年、それが徐々に広がりを見せてきた。そうして沸々と湧き起こっていた深海に対する注目が、一気に爆発したのがダイオウイカの番組です。だから、突然ブームになったわけではなく、ダイオウイカが後押しをしてくれたんですね。  放送後から、「沼津港深海水族館」の入場者数も一気に伸び始めました。水族館は今年で開業から2年目を迎えます。普通、オープンの翌年は初年度の7割いけばいいと言われていますが、この7月は初年度の120%。完全にあやかっていますね(笑)。 ――景気がいいですね。 石垣 ただ、現在がブームのピークだとは考えていません。あくまでも、ダイオウイカは深海に対する興味の扉を開いただけ。ここからすごいことになっていくと思いますよ。 ――石垣さんは、深海生物を15年以上にわたって追いかけています。一体、どこに魅力を感じているのでしょうか? 石垣 一番の魅力は、そのわからなさです。ほとんどの深海生物の生態は未知の状態ですから、飼育方法も確立されていません。何を食べるのか、水温は何度か、照度は……全部やってみないとわからない。だからこそ、興味をそそられるんです。 ――外見上も、グロテスクなものや美しいものなど、海の表層部分に生きる生物とはまた違ったユニークなものばかりですね。 石垣 深海は、表層とは環境がぜんぜん違います。水深1000mは、赤道直下でも北極海でも、世界中どこへ行っても水温3℃程度です。また、光が届かないので植物性プランクトンが発生しません。植物プランクトンや動物プランクトンの糞や死骸がマリンスノーとなり、深海生物の重要な栄養源になる。食物連鎖の仕組みが違うんです。
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オキナエビ
 深海に届くわずかな光を捉えるため、キンメダイのようにとても大きな目になったり、オキナエビのように目を退化させてしまう生物もいます。また、水圧から体を守るために硬いうろこで身を守ったり、逆にうろこを持たずにフニャフニャの体を持つことによって水圧を受け流す生物もいますね。 ――深海には、発光する生物も多いですね。 石垣 深海では8割の生物が発光します。ハダカイワシの仲間が生息しているのは、とても暗い環境なのですが、わずかに届くかすかな光が影を作り、ほかの生き物から標的とされる危険性がある。ですから、影を消すために発光をするんです。ギンオビイカという面白い生物がいます。発光するエビを食べて、外敵から狙われた時に、墨ではなく発光液を吐き出すんです。
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ギンオビイカ
 ギンオビイカの生きている写真は、この本で初めて登場しました。これまでイラストや標本はあったんですが、イカなので死ぬと真っ白になってしまう。だから、こんなにギラギラ光るギンオビイカは、ほかの本では見ることができないんです! 生きている状態は、こんなに美しいんですよ。 ――「生きている状態」に対して、石垣さんはとてもこだわっていますね。 石垣 深海水族館の使命は、生きた状態で来館者に見てもらうこと。特に深海生物が生きている状態を見るチャンスは少ないのですが、やはり、生きている状態は格別です。フジクジラという生き物は、死んだら真っ黒になってしまうんですが、生きている時は背中が鮮やかな藤色。これを泳がせている水族館は、今までもなかったですからね。  あとは、このユメカサゴを見てください。唐揚げとして食べられているんですが、生きている時はこんなに美しい目の輝きなんです。この目が夢を見ているように見えるから、ユメカサゴという名前なんですよ。
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ユメカサゴ
――ロマンチックですね~。 石垣 生きている時の一番いい状態を、この本でも、水族館でも見せたいんです。 ――そもそも、深海をメインにした水族館って、「沼津港深海水族館」のほかにあるのでしょうか? 石垣 ありません。水槽内では、長期間飼育しておくことが難しく、常に生きている状態で魚を集めなければなりません。イギリスの「THE DEEP」という水族館が深海生物の展示を試みましたが、継続的に生物が供給できず、メイン展示にはできませんでした。私が今も崇拝するアメリカの「モントレー水族館」は深海生物展を開催し素晴らしいものでしたが、 それでも常設展示というわけには、なかなかいきません。 ――石垣さんは、海の手配師としても、さまざまな魚を取り扱っています。やはり、深海の生物は値段も高いのでしょうか? 石垣 かかった費用と獲ってからの生存率によりますが、メンダコで数千円。1~2m程度のタカアシガニなら数万円です。
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メンダコ
 表紙にもなっているダイオウゾクムシは、最近、「1500日絶食している」とネットを中心に話題になった生物ですが、テレビ番組の企画用で150万円の予算をいただきました。でもメキシコ湾で船をチャーターしたり、冷凍機を設置したりしたら、600万円も経費がかかってしまったんです。 ――まさにギャンブルの世界ですね。 石垣 結果的に15個体を、1体30万円で各地の水族館に販売することができたので、経費分だけは賄えました。深海生物はリスクが高すぎるので、ほかの業者は手を出さないんです。うちでも深海生物は、大赤字部門なので、商売として考えたら本当は手を出すべきじゃないんです。 ――これまで手がけた中でも、高額な深海生物はどれでしょうか? 石垣 宝石サンゴでしょうか。これを獲るために潜水艇を使用したり、潜水艇を運ぶ母船を用意したりと、3000万円くらいの経費がかかっています。大学との共同研究なのでそれほどの経費負担はありませんでしたが、販売するとなったらびっくりするほどの金額になりますよ。 ――深海生物について話していると、石垣さんの目が輝いているのがわかります。本当に深海生物がお好きなんですね。
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ハダカカメガイ
石垣 好きです! 本当に僕の幸せそのものなので、とりあえず会社が潰れなければいいなと思っています。なんとか深海生物を長期飼育できるようにして、赤字にならないように頑張りたいですね。 ――ちなみに、ダイオウイカを捕まえてほしいという依頼はあるんでしょうか? 石垣 ないです(笑)。水槽もありませんしね。 ――もし依頼があったら、挑戦しますか? 石垣 お金をもらえれば挑戦します。値段というより、調査のための経費などをお願いしたいですね。たぶん、数億円で獲れるはずです(笑)。 (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]) isigakixs.jpg いしがき・こうじ 1967年、静岡県下田市生まれ。2000年に、有限会社ブルーコーナージャパンを設立。世界各国の水族館、博物館、大学に希少な海洋生物を納入。その手腕から「海の手配師」と呼ばれ、『情熱大陸』(TBS系)や『ガイアの夜明け』(テレビ東京系)などのドキュメンタリー番組にも取り上げられた。2011年に、沼津港深海水族館シーラカンス・ミュージアム館長に就任。 ●ブルーコーナージャパン <http://www.bluecornerjapan.com/index.shtml> ●沼津港深海水族館 <http://www.numazu-deepsea.com/>

「ブレークの秘訣は仕事を選ばない“尻軽さ”」芸人・大久保佳代子の現在と未来と、男

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撮影=尾藤能暢
 大久保さん”ことオアシズ・大久保佳代子が、42歳にしてブレークした。  現在、レギュラー番組7本、2013年上半期番組出演本数197本。6月にはドラマで主演を務め、今夏から冠番組2本がスタート。「Yahoo!トピックス」にたびたび名前が上がり、週刊誌を開けば年下男性とのスキャンダル報道が目に飛び込む……気付けば私たちの日常は、大久保さんであふれている。  この現状を、本人はどう感じているのだろうか? 話を聞いた。 ――「日刊サイゾー」には、これまで何度かご登場いただいている大久保さんですが、前回、結婚相手を募集したことを覚えてますか?(記事参照大久保佳代子(以下、大久保) 覚えてません。 ――ちなみに、誰からも連絡はありませんでした。 大久保 マジですか? このサイト見てる人、いないんじゃないですか? ――「地位と収入が平均を優に超える、関東在住のイケメンセレブ男性」という大久保さんの条件が厳しかったんだと思います。 大久保 そんな条件出しましたっけ? それより、そういうことはわざわざ報告しなくてもいいんじゃないですか?(笑) もう忘れてることですし。 ――すみません、覚えてるかなと思ったもので。さて、「2013上半期番組出演本数ランキング」(ニホンモニター調べ)女性タレント部門5位、おめでとうございます! 大久保 本当ですか、ふ~ん。 ――半年間で197番組に出演されたそうですが。 大久保 へ~、私そんなに働いてるんだ。 ――実際、忙しくなりました? 大久保 私の芸歴史上では、確かに忙しいですね。「あ、忙しいな」と思う時がたまにあるので。 ――さらに、「2013年上半期ブレーク芸人ランキング」(オリコン調べ)では堂々1位を獲得。ブレークして変わったことはありますか? 大久保 忙しいと、ちっちゃいことにイライラしますね。打ち合わせで相手が丁寧すぎて、「で、何が言いたいの?」みたいな時に、口には出さないんですけど顔に出しちゃいます。「はぁ~……」って顔して、台本を勝手にどんどんめくったり。後であさちゃん(いとうあさこ)に、「またスタッフにキレちゃったんだよね……」って話すと、「いや、分かりますよ。しょうがないそれは」って言ってくれるんで、更生することがないです。 ――(笑)。先日の『とくダネ!』(フジテレビ系)では、番組が検証した「大久保佳代子、ブレーク3つの秘訣」を紹介していました。それによると「アラフォー女性」「毒舌コメント」「異常なほどの性欲」だそうです。 大久保 「異常なほどの性欲」があったほうが売れるのかな(笑)。それ聞いて、みんなが「分かる、分かる!」ってなってるのかが心配ですね。 378A3016.jpg ――周りから持ち上げられることについて、どう感じますか? 大久保 「ブレークしてますね」とか「キテますね」って言われると、「怖いな」って思っちゃいますね。やっぱり、いずれ落ちることありきのブレークって表現だと思うので。プチブレークくらいが一番いいですね。 ――部で「脱・汚れ仕事宣言」したとの報道もありましたが。 大久保 それはないです。40歳過ぎてから、手首は痛いし、首はやっちゃってるし、7割方の関節が痛いんで、体力的にキツい仕事はできなくなりましたけど。でも、それ以外はやりますよ。 ――なぜ今、忙しくなったんだと思いますか? 大久保 仕事を選ばない“尻軽さ”の積み重ねじゃないですか? 「イケメンにセクハラするような仕事なんですけど」って言われても、「ああ、全然いいですよ」って受けてるうちに、「大久保さん、なんでもやってくれるじゃん」って思ってもらえて、いろんな番組が呼んでくれるようになったんだと。 ――2年半ほど前まで、OLと芸人を掛け持ちしていましたが、芸人一本に絞ったことはブレークの要因になっていると感じますか? 大久保 そこは関係ないような気がしてます。それより、42歳という年で結婚もせず、なんか頑張ってて楽しそうだよねって思ってくれる同世代が多いのかなと。今、OLを続けていたとしても、さらに「すげえな」って言われるだけのことだと思います。 ――最近、ちまたでは、大久保さんが「キレイになった」という声も多いようですが。 大久保 そうなんですか? 痩せたからですかね。2年くらい前に、片思いしてた男性にフラれて、傷心で2~3キロ落ちたんです。で、これを利用してやろうと思って、さらに3キロくらい落としました。 ■“年下男性お持ち帰り”報道と、大久保さんのこれから ――先日、「女性セブン」(小学館)に、年下男性のお持ち帰り現場をスクープされましたね。 大久保 はい、我慢がきかなくなって、お持ち帰りしました。 ――(笑)。直撃した記者に、そっけない態度をされてましたが。 大久保 名古屋で生放送がある日で、朝イチにすっぴんで外に出たら、メモを持った記者の人が、いきなり「この前の男性はなんですか?」って聞いてきたんです。撮られたことに気付いてなかったのでピンとこなくて、すっごい気持ち悪い目で記者のこと見てたんですけど、「あの時だ!」って分かったら、急にパニクッちゃって。「事務所に聞いてください!」って一言吐いて、逃げちゃいました。まさか自分が、この芸能人生であのカッコいいセリフを言うとは思ってもみなかったですね、ふふふ。でも、もしまた撮られたら、「ちょっと思い当たることが多くて、どの件か分からないんですけど」くらいの余裕を見せてやろうと思ってます。 378A3021.jpg ――自身のTwitterでも「無類の男好きだから困っちゃう」と書かれてましたね。 大久保 そんなこと書いてました? どの男でもいいわけではないですけど、好きな男の人といると、穏やかな気持ちになれるんです。甘えたいし、しかられたいし、なんなら肉体的に何かもらえるんであれば、一番いいですよね(笑)。 ――ところで大久保さんといえば、お酒好きのイメージが強いですが。 大久保 そうですね。忙しければ忙しいほど飲みたくなるんですよ。もっぱらあさちゃんとですけど、仕事のグチから始まって、男の話して、記憶がなくなって、気付くとちゃんと自分の家で寝てるっていう。その発展性のない繰り返しです。 ――記憶がなくなって、トラブルが起きたことはありますか? 大久保 朝起きたら、キッチンマットにうどんがぶちまけてあったくらいですね。やれやれと思って、キッチンマット丸めて、ごみ袋に入れて、捨てて、またキッチンマットを買う。幸い、それくらいのトラブルです。 ――酔っ払うと、内山理名を意識して立ち振る舞うというウワサですが。 大久保 昔からお酒を飲むと、気が大きくなって、自信がめきめきと出てくるクセがあるんです。ホロ酔いでトイレに立って、鏡を見た時に「あら、全然イケてるじゃない。内山理名さんと、さほど変わらないじゃないか」と思って戻るので、それまで賑やかしを頑張っていたのが、急に微笑むだけになったりしますね。 ――(笑)。では最後に、今後の目標を教えてください。 大久保 この状況がずっと続くなんて絶対に思ってないんで、働けるうちにお金をためて、結婚できたらしたいし、無理だったら女芸人仲間と老人ホーム借りるとか、海外で暮らすとか、ぼんやり考えてます。ただ考えたところで、その通りにいくわけじゃないんで、この先も気負わずに、一つひとつ確認しながらやっていこうと思ってます。 (取材・文=林タモツ)

ウワサの“民族大移動系”アイドル、小桃音まいを直撃!「スタートから私は普通じゃない!?」

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撮影=尾藤能暢
 2009年、彗星のごとく地下アイドルシーンに出現し、世にも珍しい「民族大移動」パフォーマンスや年間300本を超えるライブ活動を展開し、一躍その名を現場に知らしめた「まいにゃ」こと小桃音まいが、2013年8月14日、シングル「BANG BANG 鼓笛サンバ」でメジャーデビューを果たす。  これまでも、インディーズながらCDを7000枚以上売り上げ、オリコンウィークリーチャート24位にランクインしたり、海外でのライブ出演。はたまた劇団ひとりがTwitterで見かけたまいにゃの写真に一目ぼれし、イベントに一般客として来場したほか、雑誌やテレビでもたびたび彼女の名前を挙げるなど、何かと話題を振りまいているまいにゃ。  そんな現場系アイドルの筆頭ともいえる彼女に、メジャーデビューに至るまでの道のりと、これからの目標を尋ねてみた。彼女の前では、AKB48も、ももクロも過去の存在となる!? ──まずは自己紹介からお願いします。 小桃音 民族大移動系アイドルの小桃音まいです。これまで年間300本のペースでライブ活動をしていたのですが、8月14日に念願のメジャーデビューをさせていただくことになりました。 ──今、「民族大移動系」っていう、ちょっと聞き慣れないカテゴリーが出てきたんですけど……。 小桃音 ライブの時に私が動く方向にファンの皆さんも一緒に動いてくださる曲があって、その時の動きが民族大移動に見えるということで、民族大移動系アイドルと言われています。最初は一人のファンの方が一緒の方向に動いてくれるのを見つけたんですが、それがいつの間にか増えてきて、10人、100人、会場全体って増えて、自然に大移動が始まったんです(笑)。 ──メディアでは、「アキバ系アイドルの女王」というような紹介をされることも多いのですが、まいちゃん自身に実感はありますか? 小桃音 あんまりないんですけど、昔、石丸電気でライブをやらせていただいていた時は、その会場でライブをやるアイドルの中で年間最多だと言われたことがあります。やっぱり年間300本もライブをやっていれば、そう言ってもらえるんだなって。やっててよかったですね。秋葉原のほかにも池袋、渋谷、新宿とライブハウスがある場所には全部行って、毎日どこかでライブをやらせてもらっていました。去年くらいから地方に行く機会も増えてきましたね。グループだとスケジュールを合わせるのが大変だと思うんですけど、ソロだからこそのフットワークの軽さで活動させていただいてます。 ■ハロプロに憧れてライブハウスに殴り込み!? ──そんなまいちゃんが、アイドルになりたいと思ったきっかけは? 小桃音 小学校の頃からモーニング娘。さんや松浦亜弥さんといったハロプロ系が好きだったんです。初めてライブに行ったのが小学6年生の時で、ファンが振ってるサイリュームがきれいだったのと、掛け声が本当にすごいことに「みんなどこで練習してるんだろう!」って感動したんです。それにテレビでしか見たことのない人が、手を伸ばせば届くところにいて、同じ空気を吸えていることがすごくうれしくて、「ライブって素晴らしい!」「私もライブをやってみたい!」と思ったのが最初です。それから事務所に入るということは思いつかなくて、いきなりライブハウスに「私をライブに出してください!」って電話したんです。 ──いきなりライブハウスに!(笑) 378A4848.jpg 小桃音 はい(苦笑)。それから秋葉原のメイド喫茶の片隅にあるようなステージに立つようになったんですが、小さな場所でも歌えることがすごくうれしくて、ほかにももっと出たいと思うようになって、自分で調べてはどんどん連絡して出演してました。当時は兵庫県に住んでいたので、ライブをしに秋葉原に行って帰るという生活を月1ペースでやっていました。そういう活動をしているうちに、今のマネジャーさんから「イベントに出てみませんか?」って誘っていただけたんです。そこから「フリーでやってるんだったら、うちに所属する?」っていう話になって、今回のデビューに至りました。 ──まるでロックバンドみたいなエピソードですね。 小桃音 そうなんですよ(笑)。「アイドルのデビューの仕方じゃないね」ってよく言われます。 ──ほかにも、日本記念日協会より、今年から5月10日は「ことねの日」であると認定されたそうですね。 小桃音 はい。5月10日が、正式に「今日はことねの日」ということに。来年のカレンダーには小さく「ことねの日」って書かれているかもしれません(笑)。後藤真希ちゃんのファンの方が車のナンバーとかに「510」って入れたりしているのに憧れて、私も5月10日を「ことねの日」として主催ライブをやらせていただいたんです。それをいつか国民的アイドルの日みたいにできないのかなって思っていたら、スタッフさんが調べてくれて、実際に申請したら本当に通っちゃったんです。 ──アイドルとしては未知の領域にズンズン突き進んで行ってますね。 小桃音 面白いことが好きなんです。民族大移動っていうキャッチフレーズも、最初は「おかしいだろう」って誰もが言っていたんですけど、ずっとやっていると「民族大移動の子ね」って、なじんできたんです。年間300本ライブをやっていた時もおかしいって言われていたけど、1年くらいずっとやっていたらもうファンの方も慣れてきて毎回来てくれる方も増えてきたので、最初はぶっ飛んでいるように見えることも、続けていればだんだんと普通になってくるんだなって思います。だから、これからもまず大きいことを言って、それを実現していこうと思います。 ■道なき道を突き進むまいにゃ、ついにメジャーシーンへ! ──そして、8月には念願のメジャーデビューを果たします。デビュー曲「BANG BANG 鼓笛サンバ」はどんな曲ですか? 小桃音 ノリノリなアッパーソングで、夏の野外フェスとかで盛り上がっている光景をイメージして作ってもらった曲です。プライベートではまだ野外フェスには行ったことがないんですが、今年の夏はいくつか出演させていただくことが決まっているので、その会場で盛り上がろうと思います。 ──この曲をもってメジャーデビューする心境はいかがですか? 小桃音 ずっと(メジャーを)目指していたので、「ついにきた!」という感じです。メジャーデビューが決まってから変わったことって本当に多くて、「これがメジャーか」って感じる毎日です。まず取材に関しても、インディーズの時だとCDを発売した時に簡単な囲み取材をしてもらうくらいで、しかも記者の方もポツポツといる感じで全然囲まれている感じはなかったんですが、先日のメジャーデビュー発表の囲み取材の時はたくさんの方に来ていただいて「本当に囲まれている!」って思ったり。あと、CDに関してもインディーズだとCDを置いてくださる店舗がかなり限られていて、地方イベントとかに行っても「なかなかCDが地元で売られていない」ってファンの皆さんから言われていたんです。やっぱり地方の方にも気軽にCDを買っていただくためには、メジャーデビューは必要かなと思っていたので、今後はよりたくさんの人にCDを聴いてもらえると思うと、今から楽しみです。 378A4920.jpg ──メジャーシーンでは、どんなことをやってみたいですか? 小桃音 去年のクリスマスにやった赤坂ブリッツでのワンマンライブが過去最大のライブハウスだったんですが、今後もどんどん大きな会場でライブをやっていきたいですね。やっぱり私の原点はハロプロなので、ハロプロの聖地・中野サンプラザで5daysライブとかやってみたいです。あとは、初めてライブを見た大阪城ホールでもやりたいです。それと、やっぱり地元ですね。うちのお父さんってちょっと天然なところがあって、メジャーデビューが何か分からないみたいなんです。メジャーデビューってすごいことなんだというのを分かってもらうためにも、もっと大きなステージで活躍できるように頑張りたいです。やっぱり大きな会場になればなるほど、フロアのサイリュームの光もきれいだし、熱気もすごいし、照明もすごくなるので、やっぱりアイドルとしては、きらきらとしたステージに立つということに憧れます。 ──大きな会場でやる民族大移動って、壮観でしょうね。 小桃音 確かに(笑)。「なのです☆」という曲はファンの皆さんが右に左に動いてくれるんです。もし、大きな会場でこの歌を歌うことがあったら、みんなが会場をグルッと一周するまでエンドレスで歌い続けると思います(笑)。大きな会場でそういうことをやった経験のある人ってなかなかいないと思うので、ぜひ挑戦して記録を残したいですね。 ──アイドルの道なき道を開拓し続けている感がありますね。 小桃音 スタートから私は普通じゃないと思っているので、これからも変わらず面白いことをやって、みんなとライブを作っていきたいです。今思うと、勇気を出して最初の電話をかけてみて本当によかったって思います。今の自分なら、絶対にそんな行動はできないです。あの時の自分に感謝したいですね。 ──ところで劇団ひとりさんがまいちゃんのファンだと公言したり、イベントにも参加したこともあるそうですね。 小桃音 そうなんです。イベントに来てくださる数日前に劇団ひとりさんが私のことをTwitterでつぶやいてくださっていたらしくて、いきなり私のフォロワーが増えるっていうことがあったんです。その際にTwitter上で少しやりとりさせていただいたりして、「ありがたいな」って思っていたら、その後、シングル「ラグランジュ☆ポイント」リリースに関するインストアイベントを秋葉原でやった時に、帽子とメガネとマスクをつけて、しかも長袖、長ズボン、リュックサックっていう格好で不審な動きをされる方が来てくださったんです。「危ない人なのかな」って思っていたら、その後Twitterで劇団ひとりさんが「今日、まいにゃの握手会に行ってきました」ってつぶやいてるのを見かけて、思い返してみたら「あの挙動不審な人しかいない!」って……(笑)。もう全然気付かなかったんですけど、別の意味で印象に残っちゃいました。テレビとかでも私の名前を出してくださったみたいで、そのお礼をいつか言いたいですね。このインタビューをもしご覧になっていたら、また握手会とかイベントに来てもらえたらうれしいです(笑)。 (取材・文=有田シュン) 378A4836.jpg ●ことね・まい 1990年8月24日生まれ。兵庫県出身。09年、神戸から単身上京し、ライブ活動を開始。民族大移動と呼ばれるユニークな動きがあるライブは、年間300本という数に達し、“まいにゃ”の愛称で、瞬く間にライブ界隈で有名に。8月14日、シングル「BANG BANG 鼓笛サンバ」でメジャーデビューを果たす 公式ブログ<http://ameblo.jp/kotonemai/>

「矢口真里は配管をぶっ壊すべきだった」世界最大の不倫SNS上陸で日本が“不倫大国”に!?

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「不倫は“完全犯罪”が鉄則」
 “既婚者のための真面目な出会いサイト”という、一見矛盾したようなキャッチコピーで、28カ国5大陸で展開する世界最大の不倫SNS「アシュレイ・マディソン」が、ついに日本上陸。6月末に日本語版をリリースするやいなや、日本人の会員はすでに28万人に達したという。  世界中で賛否両論を巻き起こし、日本の未来を不倫大国にするかもしれないこのサイトの創始者ノエル・バイダーマン氏に、不倫する人の共通点から、自宅連れ込み不倫で日本を騒がせている“あの女性”のことまで、話を聞いた。 ――不倫の権威として、海外のTVショーなどでも活躍されているそうですね。 ノエル・バイダーマン(以下、ノエル) 不倫について地球上の誰よりも知っているのは、私でしょう。なぜなら、どんな社会学者でさえ、不倫や不貞について最新のデータは持っていませんから。「アシュレイ・マディソン」の1日の新規登録者は、約2万5,000人。その膨大なデータから、誰が不倫しているのか、なぜ不倫したいのか、誰と不倫したいのか、そしてそこからどんな結論が導き出せるのか分かってきます。 ――そもそも、なぜ不倫SNSを作ろうと思ったんですか? ノエル シングルの相手を探すサイトは、昔から多くの国にありました。しかし、「私、独身です」「フリーです」と嘘をついて登録している人が非常に多いんです。なので、「私は結婚を維持しつつ、あれもこれもやりたい」という人たちが、正直になれるコミュニティーを作りたかったんです。 ――不倫中の人を見分ける方法はありますか? ノエル 不倫をしてる人は、だいたい共通の兆候が見られます。例えば、急に「体の調子がいい」と言い出したり、ジムに通い出したり、新しい洋服を買い出したり、お小遣いを稼ぐために残業したり。また、“結婚とはなんぞや”という話をしょっちゅうする夫婦は、不倫をしている可能性がありますね。関係がうまくいっていれば、結婚について考えたりはしないので。 ――日本では、有名人の不倫が発覚した場合、マスコミやネットに叩かれ職を追われることもあるのですが、世界でも同じようなことが起きているのでしょうか? ノエル そうですね。アメリカなどでも、不倫がバレた政治家が公職から追い出されたりすることがあります。しかし、不倫によって職を奪われたりするのは、社会として健全ではない。また、日本ではどうやら、不倫した女性に対する風当たりが男性よりも強いようですが、それは性差別といえると思います。 ――確かに、自宅連れ込み不倫が報じられたタレントの矢口真里さんが、ここまでバッシングを受けているのは、“女だから”というのが一理あると思います。 ノエル ヤグチのことは、私も日本に来て聞きました。かわいい子なのに、残念ながら不倫が原因で表に出てこなくなってしまったそうですね。しかし、「すいません、不倫しちゃいました」と、堂々と出てくるべきだと思います。ちゃんと説明すれば、彼女のタレント性や才能に惹かれた人たちは、後からちゃんとついてきますよ。もし彼女に相談に乗ってくれる相手がいないのであれば、「アシュレイ・マディソン」のメンバーと語るといいですよ(笑)。
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海外のメディアから「不倫王」と呼ばれるノエル・バイダーマン
――不倫に理解がある方が集まってますもんね。これは早速、矢口さんに教えてあげないと! ノエル 彼女の過ちは、バレてしまったことです。そもそも不倫というのは完全犯罪でなければならない。例えば、携帯やパソコンの履歴などに残した浮気の痕跡を、“デジタルリップスティック”というのですが、「アシュレイ・マディソン」はそこに関しても徹底してますから、ヤグチにも最適だと思います(笑)。 ――ちなみに、矢口さんの不倫相手は、とっさに裸のままクローゼットに隠れたと言われているのですが、隠れ場所としてはアリですか? ノエル いいんじゃないですか? ピンチの時は、ベッドの下なり、窓の外に飛び出るなり、とにかく「隠れろ!」ですから(笑)。サイトのある女性メンバーは、不倫現場が家族に見つかりそうになった時、愛人を配管修理工に見立てるために、シンクの下のパイプを壊して、家を水浸しにしたそうです。 ――それでバレないのなら、たやすいですね(笑)。では最後に、この世界に不倫は必要だと思いますか? ノエル 結婚を維持しつつ不倫をするということは、“離婚よりマシなこと”だと考えています。それに、人それぞれ自由な生き方がありますから、そこにルールや、社会的制裁を加えていいというものではないと思うんです。それに、「アシュレイ・マディソン」のメンバーには、苦悩ではなく幸福をもたらしているという確信がありますから。 (取材・文=林タモツ 撮影=梅木麗子) ●のえる・ばいだーまん カナダ・トロント在住、社長。アスリートの弁護士や、マネジメントを手掛けたのち、デジタル業界にキャリア転向。既婚者向けSNS「アシュレイ・マディソン」を急成長させ、メディアで「不倫王」と呼ばれる。プライベートでは既婚者で、子どもは2人。著書に『不倫は結婚を救う』。 既婚者向けSNS「アシュレイ・マディソン」 https://www.ashleymadison.com/ ※独身者でも登録可能

『北斗の拳』原作者・武論尊が語る自衛隊時代、そして、恩人ちばあきおに伝えられなかった言葉

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ペンネームは肉体派男優チャールズ・ブロンソンから。
ブロンソン主演作『さらば友よ』(68)や『ウエスタン』(68)がお気に入りなのだ。
 アタタタターッ!!! 『北斗の拳』といえば、1983年から5年間にわたって少年ジャンプで連載され、数多くのフォロワーたちを生み出してきた一大ロングセラーコミックだ。核戦争後の荒廃した近未来社会を舞台に、北斗神拳の伝承者・ケンシロウと強敵(ライバル)たちとの激闘の歴史がコミック全27巻の中に刻まれている。名作誕生から30年を迎えた2013年、原作者・武論尊氏が新書『下流の生きざま』(双葉社)を書き下ろした。表紙を飾っているのは、何と北斗四兄弟の中でもっとも姑息な男・ジャギ! ケンシロウでもラオウでもトキでもなく、ジャギ流のサバイバル術をフィーチャリングした人生指南書なのだ。「こんな格差社会こそ、ジャギのように生きるべき」と説く武論尊流名語録の数々を堪能してほしい。 ──『北斗の拳』連載時はケンシロウとラオウの壮大な兄弟ゲンカの熱気に引き込まれるように読みましたが、改めて読み直すとケンシロウがバットやリンたちと出会って家族のような絆を築いていくドラマ部分に胸が熱くなりました。『北斗の拳』って、いろんな読み方ができる群像劇だったんですね。 武論尊 『北斗の拳』は格闘漫画として単純に楽しんでもらえればいいんだけど、そんなふうに読み直してもらえると原作者としてうれしいよ。でも、連載中は締め切りに追われていて、物語の流れに身を任せるように必死で書いていただけ。感動巨編を狙っていたわけではないんだ。エンターテイメントを目指していると、自然とああいう内容になったんだ。物語を面白くするのは仲間同士の絆だったり、成長ドラマだったりするからね。 ──連載時は完全なフィクションとして笑って読んでいたんですが、格差社会がますます進んでいく状況ではあながち絵空事じゃなく感じます。 武論尊 うん、そうだね。まぁ、後づけなんだけど、ヒットして世間から認められたから、そういう読み方もできるのかも知れないね。これがまったくヒットしていなかったら、ただの荒唐無稽な絵空事の世界で終わっていたでしょう。やっぱりヒットし、多くの読者に読んでもらうことで作品って変わっていくもの。漫画って生き物なんですよ。途中で手を抜いたり、水をあげるのをやめると枯れてしまう。常に新しい要素を加え、養分を与えないと死んじゃう。だから読者の目はすごく大事。自分の中でオナニー的に書いたものは成長しない。『北斗の拳』もヒットしていなかったら、まるで違う終わり方をしていたはずですよ。
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人気漫画家・本宮ひろ志との出会いが人生を大きく変えた。
「本宮も『まさかお前が原作者になるなんて』と未だに言ってますよ(笑)」
──『北斗の拳』は累計一億部突破の大ベストセラーですが、漫画原作者として成功を収めるまでは武論尊先生も下流の人間だった? 武論尊 下流も下流ですよ。中学を卒業して、高校進学する余裕がなくて自衛隊に就職したわけですから。もう一般社会からドロップアウトしてますよ(笑)。最終学歴:中卒ですもん。中学卒業後は、親からお金をもらうことなく生きてきたんです。 ──ところが、その自衛隊で出会ったのが、パイロットを目指して入隊し、後に『男一匹ガキ大将』でブレイクすることになる本宮ひろ志! このときの出会いが武論尊先生を漫画業界へ導くことに。 武論尊 そう、アイツとの出会いがなかったら今のオレは存在しなかった。だから漫画原作者として成功できたのは、自分の力でもなんでもない。みんなそうですよ。その道で生き残っている人って、自分ひとりの力で生きてる人はいませんよ。誰かが評価してくれて、力を貸してくれた。そのお陰で生き残ることができた。ひとりの力じゃ絶対生き残れない。 ──『北斗の拳』の第1巻でケンシロウと出会うバットも、出会いがなければ冴えないコソ泥で一生を終えていたわけですよね。出会い力は大きい。 武論尊 これはね、持って生まれた“運”としか言いようがない。だけどね、オレが出会ったのはいい人だけじゃないわけですよ。漫画が売れ出してから、オレから数千万円を持ち去っていったヤツもたくさんいるんですよ(苦笑)。オレに美味しい話を持ち掛けて、そのままお金を持って消えちゃったヤツらがね。 ──出会い力が大きいほど、面白い人間にも出会うけど、悪い人間にも出会ってしまう。 武論尊 それはもう仕方ないよね。オレ自身にヤマっ気があるから、美味しい話に乗っかって何度も痛い目に遭っちゃうんだよなぁ。(苦笑)。だから、そういった体験も自分にプラスになると考えるしかない。人間だから、こんな目にも遭うんだな。よし、いつかこれをネタにして元を取ってやるぞとね(笑)。 ■ジャギこそ『北斗の拳』のキーパーソン! ──『北斗の拳』のキャラクターの中で武論尊先生の思い入れが強いのはラオウだと思っていたんですが、北斗四兄弟の中で常に忘れられた存在であるジャギがお気に入りとは意外です。 武論尊 オレにいちばん近いんですよ、ジャギは。『北斗の拳』のキャラクターの中で、最もズルくて、弱くて、でも意地だけはあるというね。育ちもよくなさそうでしょ? ジャギが登場したとき、「あっ、こいつはオレだ」と思った(笑)。ジャギの弱さやズルさは、本当にオレの内面にそっくり。オレも生き抜くためには少々汚い手も使いますよ。 ──思い入れが強い割には、ジャギはあっさりケンシロウに倒されますし、回想シーンにも登場しませんが……。 武論尊 でも、ジャギを考え出したことで、「ケンシロウは“拳四郎”だから、上に3人の兄がいるに違いない」と閃いたんだよ。だから、ジャギは『北斗の拳』の重要なキーパーソン。ジャギがいなかったら、ラオウもトキも思い付かなかった。ラオウやトキは後付けで生まれたキャラクター(笑)。それに、それまで少年漫画誌に登場するヒーローって、みんなスーパーヒーローばかりだったでしょ。初めて登場したイヤらしいキャラクターがジャギだった。はっきり言えば、ケンシロウやラオウはフィクション上の存在に過ぎないけど、ジャギには誰でもなれるからね。
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7月19日(金)発売の『下流の生きざま』(双葉社)。武論尊流“生きるヒント”が名作キャラクターの名言と共に満載されている。
──理想の人物ラオウではなく、ジャギのようにリアル社会を生きてみろ、というメッセージが『下流の生きざま』には込められているわけですね。 武論尊 そういうことです。実社会には歴然とした差別や格差が存在するわけで、理想だけでは実社会は生きてはいけない。下流でもいいんです。下流の人間なら、上を目指していくしかないんですよ。一生、下流のままの人生じゃつまらないでしょ? 格差社会を嘆いていても何も始まらない。なら、ほんの少しでいいから上を目指してみようよと。ちょっと勝負してみよう、自分の上にいるヤツを引きずり降ろしてみようぜとね。そういう気構えを持つだけでも違ってくるはずですよ。ラオウを目指す必要はまったくない。ジャギで充分。ジャギは実社会で勝ち抜く力を持っていますよ。 ──かっこ悪いとか恥ずかしいとか口にしてる場合じゃないと。 武論尊 勝ち抜くためには、そんなことは言ってられないですよ。上に上がるには遮二無二にならないとダメ。自分より強いヤツと闘うときはどうすれば勝てるか必死で考えないと。その気合いがないと、下流からは這い上がれない。勝つためにはどんな手を使ってでもやってやる、そういう覚悟ができるかどうか。でも、そんな姿って、とっても人間らしいとオレは思いますよ。 ──何だかジャギのことが愛しく思えてきました(笑)。それにしても武論尊先生の作品は『ドーベルマン刑事』や『サンクチュアリ』など、すっごく男臭い世界ばかりですよね。やっぱり10代の頃を自衛隊で過ごしたことが大きい? 武論尊 自衛隊には7年間いたからね。15歳から22歳までの青春と呼べる時期を軍隊みたいなところで過ごした影響はデカいよ。男の友情とかそんなヤワな言葉で表現できる世界じゃなかった。もっとコアな、同じ釜のメシを食った仲というか刑務所仲間みたいなもんですよ(笑)。そんな世界で、かっこいいと思える先輩もいれば、イヤな上官もいる。信頼できる友達がいれば、ちょっと怪しい同僚もいる。無意識に刷り込まれた人間像が多分、作品の中に投影されているんだろうね。本当にね、ヒドい世界ですよ。上官が黒のことを白と言ったら、違うと思ってても「はい、白です」と答えなきゃいけないんです。人間の弱さとか業だとかが自然と自分の中に沁みてくるんですよ。 ■ちばあきお先生からの忘れられないひと言…… ──不思議に思っていたんですが、武論尊先生のストーリーテラーとしての資質はどのようにして育まれたんでしょうか? 武論尊 小学生の頃は図書館が好きで通ってました。小難しい小説は読まなかったけど、ジューヌ・ヴェルヌの『地底旅行』や『海底二万里』など空想力を広げてくれるような娯楽小説はよく読んでました。それに町に映画館が一軒だけあって、洋画をよく観ていた。学校では映画館に行くのは禁じられていたんだけど、試験の前日だけは先生が見回りに来ないことを知っていたんで、試験の前日は大人に交じって堂々と映画を観てましたね。でも、いちばん大きいのはオレ自身の性格だろうね。ウソや言い訳を考えるのが抜群にうまかった(笑)。オレ、自分では人を殴ったことないんだけど、番長にうまく取り入って、「オレをイジメると番長が来るぞ」と言い回っていた。コウモリ男とかネズミ男とか呼ばれてましたよ。自衛隊でもそうでした。本宮ひろ志は自衛隊を辞める前日に木刀で性格の悪い先輩を追い掛け回したりしてたけど、オレは目立たないように影でうまく立ち回ってましたね。でもねぇ、オレのことを見破っていた上官もいて、「お前の軍隊は真っ先に全滅する」と言われたことを今でも覚えています(苦笑)。 ──武論尊先生がジャギのことを深く愛している理由が分かったような気がします。『下流の生きざま』では、故ちばあきお先生とのエピソードも印象に残りました。ちばあきお先生といえば、野球漫画『キャプテン』『プレイボール』で当時の中高生たちに多大な影響を与えた方でした。 武論尊 素晴らしいスポーツエンターテイメント作品だったよね。オレが原作者として売れる前から、あきおさんにはずっと世話になっていたんです。家が近所で、オレの住んでたマンションにあきおさんの仕事場があって、アシスタントの食事を作る際に1食分多く用意してくれて、いつも食べさせてもらっていたんです。しばらくして、オレは『ドーベルマン刑事』が初めてヒットして、有頂天になっていた。「印税ってこんなに入ってくるもんなんだ」と浮かれて、タクシーで熱海まで行って夜通し遊んで、待たせていたタクシーに乗って帰ってくるなんてことをやってたんですよ。よっぽど、オレの態度を見かねたんでしょう。ある日、あきおさんがオレを呼び出して、「最近のお前、かっこ悪いぞ」と諭してくれたんです。あきおさんに言われるまで、自分ではまったく気が付いてなかった。あきおさんのひと言がなければ、ヒット作を一本出しただけでオレは消えていたかもしれない。
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夜の街が大好きな武論尊先生。「最近は2勤1休ペースだよ。ウコンの力を
よく呑むようになったしなぁ」。稼いだ分は遊ぶって素敵!
──ちばあきお先生、作風と同様にとてもマジメな方だったんですね。 武論尊 オレが遊んでいる間も、あきおさんは仕事場に篭ってずっと漫画を描き続けていたはずですよ。仕事に対してあまりに真剣すぎて、それで苦しくなって、途中からお酒に逃げるようになったんです。オレと違って漫画に対して、常に真摯だった。だからオレは逆に「あきおさん、そんなに真剣に頑張らなくてもいいじゃないですか」と言いたかった……。『下流の生きざま』にも書いたけど、漫画の世界で戦死していった仲間は少なくないんです。戦死というか、いわば漫画との心中ですね……。 ──『北斗の拳』の戦う男たちの姿は、やはり絵空事ではないようですね。 武論尊 うん、でも戦いのない世界はないですよ。サラリーマンの世界だって、どこの世界だって、戦わないことには生きていけない。仕事を取ってきて、こなすってだけでも一種の戦いだと思うんです。格闘だけが戦いじゃない。デスクワークだって立派な戦いですよ。自分の能力をどこまで出せるかっていうね。『北斗の拳』はただの格闘漫画じゃない、これはオレたちにもっと戦えと言っているんだと多くの人たちが感じてくれたから、あれだけの評価に結びついたんじゃないかな。生きていることが戦いなんですよ。 ──それで本当に辛いときは、逃げ出しちゃえばいいと。 武論尊 そうです、働く人間には、休む自由もあるわけですから。オレみたいに仕事を全部中断して、パァ〜ッと北海道の牧場にでも行ってしまえばいいんです。一度人生をリセットしてから、またイチからやり直せばいいんです。 ──そんなときこそ、ジャギのように小ズルく立ち回るべきですね。そろそろ時間のようです。洋画好きな武論尊先生は『ドーベルマン刑事』はクリント・イーストウッド主演作『ダーティーハリー』(71)、『北斗の拳』はメル・ギブソン主演作『マッドマックス2』(81)からインスピレーションを得たことで有名ですが、最近はぐっと胸に迫る映画はありました? 武論尊 CGばっかりの映画や3D映画は目がチカチカして苦手なんだよ。このところはあんまり面白い洋画に出会ってないなぁ。オレの運がよかったことは、連載の話が持ち掛けられた際にタイミングよく『ダーティーハリー』や『マッドマックス2』みたいな作品に出会えたこともあるよな。まぁ、言ってしまえば、態のいいパクリじゃないですか(笑)。最近はハリウッドもダーティーヒーローが人気みたいだから、ジャギみたいな悪役が活躍する新作を考えてみようか。ハリウッドのヤツらが唸るような物語を作ってみたいね。子どもの頃からずっと洋画を観てきたオレにとって、それは大きな夢なんだよ。 (取材・文=長野辰次/撮影=名鹿祥史) ●ぶろんそん 1947年長野県出身。中学卒業後、航空自衛隊に入隊。除隊後、本宮ひろ志の仕事場で資料係を務める。しかし、麻雀など遊んでばかりいたため、見かねた本宮の担当編集者から仕事を持ち掛けられ、1972年に漫画原作者としてデビューを果たす。以後、『ドーベルマン刑事』『北斗の拳』などのヒット作を放つ。史村翔名義でのヒット作に『ファントム無頼』『Dr.クマひげ』『サンクチュアリ』など。『北斗の拳』連載開始から30年を迎えた2013年3月、初の小説『原作者稼業 お前はもう死んでいる?』(講談社)、さらに7月に新書『下流の生きざま』(双葉社)を上梓した。 ●『下流の生きざま公式ツイッター』 https://twitter.com/futabasha_karyu ●武論尊が語る『下流の生きざま』 http://youtu.be/wDq-4Vhjozk 

「アウトな人たちが光って見えたら、こっちの勝ち」“混乱の”フジが仕掛ける、アウトな刺客たち

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撮影=後藤秀二
 「アウトとグッドは紙一重」を合言葉に、毎回、愛すべきダメ人間たちを紹介する異色のトークバラエティが話題を集めている。その番組こそ『アウト×デラックス』(フジテレビ系)だ。テーマはずばり「アウト」。世間の常識からほんのちょっとだけ外れてはいるが、熱い思いを持って生きる「アウト」な人たち。MCを務めるナイナイ矢部浩之&マツコ・デラックスの巧みな媒介によって、アウトな彼らだけに見えている不思議な世界がするすると引き出されていく。果たして本当に「アウト」なのは、彼らなのか、それとも見ている我々か――。若きディレクター、鈴木善貴氏が仕掛ける、フジバラエティの新しい王道スタイルとは? ――5月23日の放送では、あの絶対王者『アメトーーク!』を視聴率で追い抜いたことが話題になりましたが、まずはその時のご感想をお聞かせください。 鈴木善貴氏(以下、鈴木) 時間が丸っきりかぶってて勝ったら、そりゃあスゴイですけど……ズレてますから。だって『アメトーーク!』は10年間続いている番組ですよ。その10年の歴史でたった一回、「おっ、何か新しい番組が始まったな」っていう興味で見てもらった番組の視聴率が、たまたまちょっとよかったぐらいで調子に乗ってたら、おこがましいですよ。でも……うちの番組を知らない友達には言ってますけど。「え? おまえ『アウト×デラックス』知らないの? あの『アメトーーク!』に視聴率で勝ったんだけど」って(笑)。 ――それにしても、「アウト」という概念を番組の中心に据えるというアイデアがスゴイ。それは“王道”のイメージがあるフジテレビバラエティにおいて、かなり「アウト」ではなかったですか? 鈴木 僕の中では、特に外れている感じはないです。王道にもいろいろあるし。ただ深夜番組を僕に頼むということは「何やってもいいんだな」とは思いましたね。一応上の人は「レギュラー目指してます」とか言ってましたけど、大体そんなことになった例がないし(笑)、だったら思いっ切りやって「あぁ、また見たい」って若者たちに言わせてやろうと。 ――放送後にすぐネットで話題になるのも、『アウト×デラックス』の特徴だと思います。 鈴木 僕らがこの番組を作るのに心がけているポイントが3つあるんですけど、まずは皆さんが知らなくて興味深い人に出てもらう。知ってる人の場合は、必ずなんらかの新しい発見があるように。あとは完全に一般の方。出演者には楽しんで帰ってもらって、見ている人には不快な思いが残らないように。それだけは気を付けてキャスティングしているつもりです。 ――タレントさんと素人さんをまったく同じ土俵に並べるというのも、独特ですね。 IMG_0736.jpg 鈴木 “大部屋”と呼んでいるひな壇には、淡路恵子さんや坂上忍さんとまったくの素人が、同じ並びで座ってますからね(笑)。でも素人さんといっても相当アクの強い、ポリシーのある人たちですから。タレントさんも素人さんも、それぞれポリシーは違えど、思いのパワーは負けてないんですよ。普通だったらタレントさんを前に「恐縮です……」ってなっちゃいますけど、素人さんもガンガン言い返す。思いのパワーはみんな同じなんだろうなと思います。逆にパワーが弱い人は、あそこには入れない。「見せかけアウト」は、すぐバレちゃうんです。 ――見せかけアウト(笑)。いそうです。 鈴木 「アウト」って、マイナスなイメージに聞こえるかもしれないけど、僕たちは「アウトとグッドは紙一重」という、いい意味で使ってますから。タレントさんをブッキングする時には「えっ……アウト?」って、必ず聞かれますけど(笑)。 ――キャスティングする時は、相当リサーチをされるのですか? 鈴木 その人の本を読み、映画やテレビを見て、雑誌のインタビューにも当たります。インタビューなら、ほんのちょこっと書かれていた情報、たとえば「カレーライスが好き」という情報をもっと深く掘り下げていくと意外な発見があったり。淡路さんなんて腱鞘炎になるくらい、それこそドラクエの動きを自分がしちゃうくらいゲームがお好きだなんて、お話しするまで全然知りませんでした。最近だと……矢部美穂さんのお母さんかな。抜群に面白い。 ――矢部(浩之)さんが「番組乗っ取られる」って言ってましたね。 鈴木 もう全然乗っ取っていただいて構いません(笑)。栗原類くんもブレークしてくれて本当にうれしいです。ミラクルひかるさんも、以前はモノマネのうまいタレントさんっていうイメージだけだったんですけど、なかなか闇を抱えてらっしゃった(笑)。 ――あの「アウト面会」(※アウト軍団による、苦手な人克服コーナー)は面白かった……。ちょっとスッキリしました。 鈴木 一番うれしいのが「そうそう、私もそう思った」って共感してもらえることです。この番組はすべて“本音”。入念な取材と打ち合わせはしますけど、台本はありません。本番は皆さんに本音で語っていただくだけ。だから、思いもよらない方向にいくことも多々あります。そんなにハネないだろうと思っていたところにマツコさんが食いついて、ドカーンとなることも。やっぱりマツコさんがね、もともと番組を始める際に「私自身がアウトだから、アウトな人たちを笑えないわよ」って言ってたんですよ。それを聞いて、“あぁ、いいな”と。マツコさんは自分自身をアウトだと思ってるから、アウトな人たちの魅力を上手に引き出してくれるんですよね。また「アウトな人間がテレビに出ないと、テレビは面白くない」とも言っていました。普通じゃ面白くないと。 ――マツコさんの優しさが、すごく出ている番組ですよね。
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鈴木 「優しいマツコを見せる」っていうのは、実は番組当初のコンセプトとしてありました。それがマツコさんにとってうれしいかどうかは分かりませんが。そこに矢部さんの優しいツッコミが加わって、そんな優しい2人だったら、どんな出演者の方々も受け入れてくれるだろうと。 ――しかしコンプライアンスが厳しい状況で、素人さんに登場してもらうことは、それだけリスクも高いのではないかと思うのですが。 鈴木 僕らがまずはその人たちとたくさん話して、この人は魅力的だと、これなら視聴者も分かってくれるなと、そういう自信を得た時だけ出演してもらうようにしています。そこでピンとこない人は、どんなにアウトであってもオファーはしません。編集後にいろいろなスタッフにも見てもらって、厳しくチェックしています。 ――たとえば、俳優志望の上地雄輔さん好きの田口学くんとか……。 鈴木  おっ! きましたね(笑)。 ――田口くんの場合は、最初から「イケるな」という確信があったのですか? 鈴木 僕らが理想として描いていた人ですね、田口くんは。「こういう人に出てもらいたいな」と思っていた型にピタっとハマった人。今じゃもう、神みたいになってますけど(笑)。裏でもスゴイですよ~。会議も「この間、田口が楽屋でね」とか「田口ったら、後ろでそっくり返って座ってた」とか、田口くんの直近トークから始まりますから。みんな腹立ちながらも田口でこれだけ盛り上がるってことは、やっぱり面白いんですよ。だからこのラインを崩さないように、ギリギリ面白がられる範囲で止めておかないと(笑)。山下(恵司/声が高すぎる男)くんもこぼり(ゆきこ/主治医に恋する女)さんもそれぞれ夢があってテレビに出たい人たちだから、その夢がかなうように応援したいと思ってますね。だから大物俳優さんがゲストで来た時とか、演技を見てもらったりするんです。その「アウト」な部分が、すぐ隣にある「グッド」に転がればいいなって。まぁ、みんなが「グッド」になってしまったら、この番組は終わりですけどね……。 ――確かに(笑)。 鈴木 素人さんの恐ろしさって、こちらの想像をはるかに超えてくるところ。タレントさんももちろん面白いですけど、素人さんの場合は、その振り切れ方が、こっちが予想だにしない方法だったりしますからね。そういう瞬間に立ち会った時は「やった!!」ですよ。だって尊敬する上地さんを前にしての最初の質問、僕らなら「ふぁ、ファンです!」みたいな、ありきたりのセリフしか書けないですけど、彼(田口)は「僕のブログ見てくれてましたか?」ですよ。「6回ライブに行ったんですけど、気づいてました?」ですよ。もうそれは台本では絶対書けない。柿沼(しのぶ/自分の紙芝居を世に広めたい女)さんの「涙あり、笑いあり、やりがいあり」も、もうなんなんですか、「やりがい」って(笑)。 IMG_0692.jpg ――話にオチがなかったり、間がおかしくなったり、芸人さんに振るのとはだいぶ違う反応が返ってきますよね。それをそのまま流すというのも、『アウト×デラックス』のはじけてるところではないかと。 鈴木 お笑いの文法が成立しない、普通のことを言って面白い人にはかなわないんですよ。フリがあってボケて……とかじゃないですから。彼ら彼女らにとっては普通のことを言っているだけで、それがあるうちは、この番組は大丈夫じゃないかと思います。 ――タレントさんで、度肝を抜かれたのはどなたですか? 鈴木 元SIAM SHADEの栄喜さん。あとベタにラーメン王の石神秀幸さんも好き。すっごい薄い話を、よくあそこまで濃厚に話せるなっていう(笑)。それから……ひふみん。 ――加藤一二三九段! クイズを出したがる天才棋士ですね! 鈴木 年上の、しかもすごい経歴をお持ちの方にこんな言い方は失礼かもしれませんが、ほんっとにカワイイ。アウトは「カワイイ」でもあると僕は思っていて。本音をさらけ出してくれて、その人の素の部分が見えた時って、たまらなくカワイイし愛おしいんです。人間の魅力というか……出てくるんですよね。そうそう、出版業界で誰かいませんか? アウトでカワイイ人は? ――サイゾーは……変な人しかいません……。 鈴木 いいですねぇ。「今日は某雑誌の編集部の方です」「なんの雑誌ですか?」「サイゾーです」「アウト~!」(笑)。 ――一度編集部に来ていただいて、ぜひお好みをピックアップしてください(笑)。『アウト×デラックス』といえば、いくつかのエピソードをパズルのように組み合わせる構成も独特ですよね。 鈴木 トーク番組を見ている時に「ちょっと長いな……」って思うことありません? 飽きさせないためにも、最初に出演者さんを全部見せてしまおうかなと。あと、作るものは基本的にオシャレなものでありたい。たとえば10人ゲストが出て、エンディングを迎えた後にガガッと巻き戻って、一人目の一言が聞けるみたいなことがやりたかったんです。スタンリー・キューブリックのような。いやムダなんですよ、いらないんですよ。だけど僕みたいな浅い人間は、アレを見て「オシャレだな~」って思うんです。本来であれば、中身を見るべきですけどね。僕は洋服も好きだしガワを楽しむ人間なんで、あれを見て男の子たちが「おお!かっけー!」って言ってくれるかなと思ったんですよ。 ――ムダ精神は大事だと思います! 鈴木 僕もそうでした。誰かの思いつきだと思うんですけど、昔セットの後ろに四星球(スーシンチュウ)が置いてあるのを見たことがあるんです。その時「あぁ、遊び心あるなぁ」って感動して。遊び心って大事ですよね。テレビを楽しんで作ってる感じ。 ――それこそまさに、フジバラエティという感じじゃないでしょうか。 鈴木 ムダなことに全力を傾ける(笑)。あとは反骨心じゃないですけど、常にマイノリティな部分を大事にしたいんです。だからゴールデンにはこだわらないし、なんなら15分に縮小されてもいい。とにかくじっくり手間暇かけて作りたいんですよ。“作品感”を出したいんです。 ――DVD化などは? 広報 ないですね。 鈴木 もったいないな~! フルバージョンのDVD出したら絶対面白いのに!! ――フルバージョンすごそう!『アウト×デラックス』を見ていると、「もしかして私のほうがアウトなんじゃないか……」って思えてくるから不思議なんです。 鈴木 アウトな方たちの生き方が少しでも光って見えたら、こっちの勝ちなんだと思います。面白いのは、当初男性をターゲットに番組を作っていたんですけど、視聴率調査によると実際は女性のほうがよく見てくれているみたいで。男性は、やっぱり『アメトーーク!』に行っちゃうんですかね。 ――以前、日刊サイゾーのインタビューで、加地倫三さん(『アメトーーク!』総合演出)は「フジテレビはバラエティ界の巨人軍」と言ってましたから、『アウト×デラックス』のことは相当意識されてると思います。 鈴木 そのインタビュー読みました。まったく、うまいこと言いますよね! でもそれは、王者だからこその発言ですよ。マツコさんが初回に「混乱のフジテレビだからこそのレギュラー化」って言ってましたけど、混乱だからこそできることもある。僕としては、もっと早くレギュラーになってもよかったと思います。2年前であれば、まだ同じような番組はなかったから。まぁないとは思いますけど、ゴールデンに移行するなんて話になったら、きっぱりやめますよ。面白くないだろうし。だから、この番組をゴールデンに昇格させるレベルの混乱状態には陥ってほしくはないですね(笑)。 ――鈴木さんの夢はなんですか? 鈴木 そうですね……もうちょっと、ゆったり働きたいですね……。そしていつかアウト軍団だけで30分作ってみたい。田口くんや山下くん、柿沼さんたちの面白さを凝縮した30分が作れたら、この番組はもっと強くなるんじゃないかと思います。その延長上として「アウト総選挙」がね、中野サンプラザあたりでできたら素晴らしい。 ――会場選びが……絶妙です(笑)。 鈴木 もちろん生放送で。 ――だ、大丈夫ですか? 鈴木 大丈夫じゃない生放送ほど、見たいものはないじゃないですか。終わりはそれで。生放送でやらかしちゃって、終了と。 (取材・文=西澤千央)

「発禁になる前に読んでおけ!」底辺で生きるホームレスを14年追いかけたルポ漫画『ホームレス大博覧会』

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『ホームレス大博覧会』著者の村田らむ
 景気の回復が浸透しない日本で、ここ20年ほどで急増し、社会問題となっている「ホームレス」。社会の底辺に生きるアウトサイダーとして扱われる半面、世の中を達観した聖人と見る人もいる。  そんな社会病理ともいうべき問題を、足掛け14年間も取材し続けているのが、漫画家でルポライターの村田らむ氏だ。6月に発売された『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)は、正面からナチュラルにホームレスの実像をえぐり取った村田氏の集大成ともいうべきものである。終身雇用が崩壊した現代社会では、誰もがホームレスになる危険性を抱えている。ホームレスを見続けてきた村田氏に、その実情を聞いた。 ――まず『ホームレス大博覧会』はどのような本なのか、概要を教えてください。 村田らむ(以下、らむ) もともとはミリオン出版の編集者に、私が過去に出版した『こじき大百科──にっぽん全国ホームレス大調査』(データハウス)や『ホームレス大図鑑』(竹書房)みたいなことを、もう一回やってみたいと依頼されたのがきっかけなんです。とりあえずプレで(試験的に)漫画でやってみようということになって、描いてみたら読者アンケートの順位がよかったので連載することになって、それをまとめたのが『ホームレス大博覧会』なんですよ。 ――過去に出版トラブルが結構あったそうですが、発禁(発行禁止処分)になったんですか? らむ 裁判所からの命令で、法律上本が出せなくなることを発禁と考えると、発禁はちょっとオーバーで、自主規制ですね。ホームレスの支援団体からクレームが来て、出版社としてはこれ以上売りませんと、それで自主回収したというのが実際のところです。漫画家のいしかわじゅんさんが週刊文春の書評で『ホームレス大博覧会』を紹介してくれたのですが、「発禁になる前に読んでおけ」とまとめているのも無理からぬことなんですよ。 ――そもそも、なぜ14年前にホームレスを取材しようと思ったんですか? らむ もともとホームレスに興味があったんですけど、本当の本当は仕事で「やれ!」って言われたから。データハウスの『いやらしい2号』という『あぶない1号』の後継誌を作っていたときに持ち上がっていた企画のひとつだったんです。ホームレス取材はお金もかからないし、2回くらい取材したら評判が良かったので続けたという感じですね。 ――取材時は、ホームレスを取材していると明かすんですか? それとも身分を隠して? らむ 最初は上野公園に行って一人ずつ話しかけていったんですが、正直ハードルはかなり高かったですね。慣れてくると、いろいろなパターンを使い分けるようになりました。今回の『ホームレス大博覧会』では、取材だと伝えて話を聞くのが大半でしたが、時には「ボランティアです」と言ったり、相手から聞かれるまで何も言わないこともあります。もちろんホームレスに扮装したこともありますよ。若いと目立つので20代の時はなかなか難しかったんですが、40代まで続けていると、かなりナチュラルに取材できるようになります。  この14年の間に、ホームレスのメッカである西成のアングラな飲み屋に潜入して働いたりして、経験を積んできました。ホームレスは、ドヤ街ではヒエラルキーが低いんですよ。酔っ払って怒鳴ってきたりするけど「はぁ?」と言ったら黙るので、意外と牽制できます。 ――西成に限らず、どこでも潜入できるものですか? らむ そうでもないです。関西の方で話を聞くと「関東は怖い」と言いますね。口数は少ないんだけど暴力的。特に同じドヤ街でも、横浜のK町は厳しい。ホームレスの間でも「K町はヤバイ」ってみんな言いますよ。集団でケンカを売ってくるんですよね。 ――取材で出会った中で忘れられないホームレスっていますか? らむ 話を聞いただけの人も含めると、1,000人以上いると思いますが、潜入してホームレスになった時にいろいろ教えてくれた“土方”丸出しの黒いおっさんには、ビクビクしながらもお世話になりましたね。毛布とか貸してくれて最初は汚いなと思ったのですが、夜は本当に冷えて、10月でも寝ていられないんです。本当にお世話になったので、忘れられないですね。 ――その人と再会することはあったんですか? らむ ないです。ホームレスは亡くなってしまうこともあるし、ホームレスをやめてしまうこともあるので。ホームレスを辞めるというのは、家を借りてホームレスじゃなくなるということですが、これが実は結構あって、小泉政権時の政策でマンションを安い値段で貸し出すということをやって、一気に減った時があったんですね。 ●自由人の象徴として語られるホームレスの実態 ――ホームレスのタブーってあるんですか? ホームレスのコミュニティ内でのタブーと取材でのタブー、両方伺いたいのですが。 らむ 失礼に当たるようなことを聞いても、意外と大丈夫だったりします。家族の話も大丈夫。僕なんて、ホームレスを実家に連れて帰ったこともありますから。本当に人によるというか、話しかけるだけでダメな人もいるし、話しているうちにOKになる人もいる。コミュニティ内でのタブーは、物を盗ったらダメというのはホームレスに限った話じゃないんですが、「マグロ」とか「しのぎ屋」といわれる、ホームレス同士で物を盗む人が結構多いんですよ。だから、集団で集まる場所では揉め事が多いですね。 ――ホームレスの生き方を自由の象徴のように捉える人がいますが、それほどまでに自由なんですか? らむ 自由な部分もあるのですが、ものすごく不自由な部分に囲まれた自由なんですよね。 ――「ホームレスは俗世を捨て去っているからピュアなんだ」みたいな見方は間違い? らむ ピュアなんてことは全然ないですよ。むしろ俗にまみれています。こんなことを言ってしまうと問題ありますけど、少なくとも若い女の子が信用してホイホイついていっていいような、浮世離れした仙人みたいな存在ではありませんね。 ――ホームレス取材の中で、世の中のゆがみを感じたことはありますか? らむ よく思うのは、ホームレスに対する暴力はなくならないということ。本当にダメなことだと思うんですが、社会の仕組みが原因でホームレスになったんだから殴ってはいけないということではなくて、どんな人であろうと、寝ている人を殴ってはいけない。自由人だからとか、実はいい人だから殴っちゃダメというのは違うと思いますが、クソろくでなしだけど蹴ったらあかんだろ! と。それほどまでに、表面化しないホームレスに対する暴力は多いんですよ。大げさかもしれないですが、死なない限りは表面化しないでしょう。花火を持って追いかけ回されたり自転車を投げつけられたりということは、毎日どこぞで起きています。 ――ホームレス側は抵抗しないんですか? らむ 無理でしょう。寝ているところを、いきなりやりますからね。僕もホームレスを疑似体験しましたが、まあ怖いんですよ。梅田で取材していた時、踏み殺されたホームレスがいました。酔っ払ったホームレスが勢いでやることもあるし、ホームレス狩りみたいなこともあるし、ホームレス同士のケンカもあります。元ヤクザのホームレスも多いですから、暴力に慣れているホームレスも珍しくはないんです。 ●ホームレスには、なるべくしてなる!? ――ホームレスになる人には、いろいろなパターンがあると思いますが、実際どんな人がなっているんですか? らむ ショッキングだったのは、財布を盗まれたからとか、ものすごく簡単な理由でホームレスになるんですよね。例えば仕事をしていてパソコンのデータが壊れたりすると、死にたくなったりするじゃないですか。でもグッとこらえて死なないのが普通の人ですよね。携帯電話をどこかに落としたときも、後処理がすごく面倒くさくて死にたいとか思ったりするけど、実際には死なない。ところが、ホームレスになる人の中には、そのタイミングで社会との境界線を踏み越えちゃうんですよ。「全部捨てて逃げちゃおう」みたいな。中には深刻に捉えて自殺の前段階としてホームレスになる人もいますね。車上生活とかしていたりすることが多いです。村上たかしさんの漫画『星守る犬』(双葉社)なんかもそうですよね。 ――意図的に境界線を踏み越えない限りは、ホームレスにならないものなんですか? らむ いろいろな人に話を聞いた中で、「ホームレスになっちゃうかも」と言ったのが売れっ子クリエイターの人たち。有名で作品も評価されているし、収入だってある……そんな人たちが絶対ホームレスにはならないはずですが、ホームレスになるかもと思ってしまう。そこに共通しているのが、フリーランスという立場だと思うんですよ。フリーランスの人はホームレスを同じステージだと思っているところがあるんです。僕もフリーランスだから同類として捉えているところがあって、だから彼らに対する見方がちょっと辛口なのかもしれない。 ――ホームレスになったら「もはや終わり」と思う人が多いでしょうが、社会復帰はできるものなんですか? らむ 衣食住が保障されて仕事があっても、すでに社会には戻れないところまで来てしまっている人は無理ですよ。そもそもアル中(アルコール中毒者)が多い。アル中、ギャンブル依存症、約束守れない……なるべくしてなった人だと、社会復帰するのは困難と言わざるを得ないですね。これは私の印象ですけど、運が悪くてホームレスになった人もいるでしょうが、大半の人はジタバタすれば意外と(ホームレスに)ならずに済んだんじゃないかと思うんですよ。 ――ホームレスにならないためには、どうすればいいでしょうか? らむ 役所に行って揉めに揉めるなどすれば、ホームレスにならずに済む道はあるんです。セーフティーネットなどの問題点はすでに指摘されていますけど、実際にホームレス側から取材していて思うのは、日本にはホームレスにならずに済む選択肢があるということですね。すごい借金があるから借金取りから逃げるためにホームレスにならざるを得ないんだという人がいて、漫画にもそのまま描いてきたんですけど、今になって振り返ると「そうか?」と思うんです。だって本当に借金取りが来たとしても、今はめちゃくちゃな取り立てはできないし、自己破産して生活保護を申請するという選択肢もある。「でも相手がヤクザやから、そうはいかんのや」みたいなことを言う人もいるけど、そもそも今どきのヤミ金が、そんな強引な取り立てをやってくるわけない。結局、言い訳にして逃げているだけで、基本的にホームレス生活を楽しんでいる人も多いと思うんですよね。 ――最後に、足掛け14年に及ぶホームレス取材をまとめた『ホームレス大博覧会』に込めた思いを教えてください。 らむ 僕が過去に出版したホームレスの本の感想では、「すごくひどい」と思う人もいれば「いい本だった」と泣く人もいて、反応が極端なんです。ただ僕はなるべくフラットに描こうとしていて、そうすることで「もともと人間ってそういうもんだよな」ということが伝わるんじゃないかと思います。ただ、『ホームレス大博覧会』ではホームレストレーディングカードなんて前代未聞の試みもしていますので、発禁になる可能性は拭えません。できれば回収される前に、ぜひ手に取ってみてください(笑)。 (取材・文=丸山佑介/犯罪ジャーナリスト<http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/>)

「発禁になる前に読んでおけ!」底辺で生きるホームレスを14年追いかけたルポ漫画『ホームレス大博覧会』

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『ホームレス大博覧会』著者の村田らむ
 景気の回復が浸透しない日本で、ここ20年ほどで急増し、社会問題となっている「ホームレス」。社会の底辺に生きるアウトサイダーとして扱われる半面、世の中を達観した聖人と見る人もいる。  そんな社会病理ともいうべき問題を、足掛け14年間も取材し続けているのが、漫画家でルポライターの村田らむ氏だ。6月に発売された『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)は、正面からナチュラルにホームレスの実像をえぐり取った村田氏の集大成ともいうべきものである。終身雇用が崩壊した現代社会では、誰もがホームレスになる危険性を抱えている。ホームレスを見続けてきた村田氏に、その実情を聞いた。 ――まず『ホームレス大博覧会』はどのような本なのか、概要を教えてください。 村田らむ(以下、らむ) もともとはミリオン出版の編集者に、私が過去に出版した『こじき大百科──にっぽん全国ホームレス大調査』(データハウス)や『ホームレス大図鑑』(竹書房)みたいなことを、もう一回やってみたいと依頼されたのがきっかけなんです。とりあえずプレで(試験的に)漫画でやってみようということになって、描いてみたら読者アンケートの順位がよかったので連載することになって、それをまとめたのが『ホームレス大博覧会』なんですよ。 ――過去に出版トラブルが結構あったそうですが、発禁(発行禁止処分)になったんですか? らむ 裁判所からの命令で、法律上本が出せなくなることを発禁と考えると、発禁はちょっとオーバーで、自主規制ですね。ホームレスの支援団体からクレームが来て、出版社としてはこれ以上売りませんと、それで自主回収したというのが実際のところです。漫画家のいしかわじゅんさんが週刊文春の書評で『ホームレス大博覧会』を紹介してくれたのですが、「発禁になる前に読んでおけ」とまとめているのも無理からぬことなんですよ。 ――そもそも、なぜ14年前にホームレスを取材しようと思ったんですか? らむ もともとホームレスに興味があったんですけど、本当の本当は仕事で「やれ!」って言われたから。データハウスの『いやらしい2号』という『あぶない1号』の後継誌を作っていたときに持ち上がっていた企画のひとつだったんです。ホームレス取材はお金もかからないし、2回くらい取材したら評判が良かったので続けたという感じですね。 ――取材時は、ホームレスを取材していると明かすんですか? それとも身分を隠して? らむ 最初は上野公園に行って一人ずつ話しかけていったんですが、正直ハードルはかなり高かったですね。慣れてくると、いろいろなパターンを使い分けるようになりました。今回の『ホームレス大博覧会』では、取材だと伝えて話を聞くのが大半でしたが、時には「ボランティアです」と言ったり、相手から聞かれるまで何も言わないこともあります。もちろんホームレスに扮装したこともありますよ。若いと目立つので20代の時はなかなか難しかったんですが、40代まで続けていると、かなりナチュラルに取材できるようになります。  この14年の間に、ホームレスのメッカである西成のアングラな飲み屋に潜入して働いたりして、経験を積んできました。ホームレスは、ドヤ街ではヒエラルキーが低いんですよ。酔っ払って怒鳴ってきたりするけど「はぁ?」と言ったら黙るので、意外と牽制できます。 ――西成に限らず、どこでも潜入できるものですか? らむ そうでもないです。関西の方で話を聞くと「関東は怖い」と言いますね。口数は少ないんだけど暴力的。特に同じドヤ街でも、横浜のK町は厳しい。ホームレスの間でも「K町はヤバイ」ってみんな言いますよ。集団でケンカを売ってくるんですよね。 ――取材で出会った中で忘れられないホームレスっていますか? らむ 話を聞いただけの人も含めると、1,000人以上いると思いますが、潜入してホームレスになった時にいろいろ教えてくれた“土方”丸出しの黒いおっさんには、ビクビクしながらもお世話になりましたね。毛布とか貸してくれて最初は汚いなと思ったのですが、夜は本当に冷えて、10月でも寝ていられないんです。本当にお世話になったので、忘れられないですね。 ――その人と再会することはあったんですか? らむ ないです。ホームレスは亡くなってしまうこともあるし、ホームレスをやめてしまうこともあるので。ホームレスを辞めるというのは、家を借りてホームレスじゃなくなるということですが、これが実は結構あって、小泉政権時の政策でマンションを安い値段で貸し出すということをやって、一気に減った時があったんですね。 ●自由人の象徴として語られるホームレスの実態 ――ホームレスのタブーってあるんですか? ホームレスのコミュニティ内でのタブーと取材でのタブー、両方伺いたいのですが。 らむ 失礼に当たるようなことを聞いても、意外と大丈夫だったりします。家族の話も大丈夫。僕なんて、ホームレスを実家に連れて帰ったこともありますから。本当に人によるというか、話しかけるだけでダメな人もいるし、話しているうちにOKになる人もいる。コミュニティ内でのタブーは、物を盗ったらダメというのはホームレスに限った話じゃないんですが、「マグロ」とか「しのぎ屋」といわれる、ホームレス同士で物を盗む人が結構多いんですよ。だから、集団で集まる場所では揉め事が多いですね。 ――ホームレスの生き方を自由の象徴のように捉える人がいますが、それほどまでに自由なんですか? らむ 自由な部分もあるのですが、ものすごく不自由な部分に囲まれた自由なんですよね。 ――「ホームレスは俗世を捨て去っているからピュアなんだ」みたいな見方は間違い? らむ ピュアなんてことは全然ないですよ。むしろ俗にまみれています。こんなことを言ってしまうと問題ありますけど、少なくとも若い女の子が信用してホイホイついていっていいような、浮世離れした仙人みたいな存在ではありませんね。 ――ホームレス取材の中で、世の中のゆがみを感じたことはありますか? らむ よく思うのは、ホームレスに対する暴力はなくならないということ。本当にダメなことだと思うんですが、社会の仕組みが原因でホームレスになったんだから殴ってはいけないということではなくて、どんな人であろうと、寝ている人を殴ってはいけない。自由人だからとか、実はいい人だから殴っちゃダメというのは違うと思いますが、クソろくでなしだけど蹴ったらあかんだろ! と。それほどまでに、表面化しないホームレスに対する暴力は多いんですよ。大げさかもしれないですが、死なない限りは表面化しないでしょう。花火を持って追いかけ回されたり自転車を投げつけられたりということは、毎日どこぞで起きています。 ――ホームレス側は抵抗しないんですか? らむ 無理でしょう。寝ているところを、いきなりやりますからね。僕もホームレスを疑似体験しましたが、まあ怖いんですよ。梅田で取材していた時、踏み殺されたホームレスがいました。酔っ払ったホームレスが勢いでやることもあるし、ホームレス狩りみたいなこともあるし、ホームレス同士のケンカもあります。元ヤクザのホームレスも多いですから、暴力に慣れているホームレスも珍しくはないんです。 ●ホームレスには、なるべくしてなる!? ――ホームレスになる人には、いろいろなパターンがあると思いますが、実際どんな人がなっているんですか? らむ ショッキングだったのは、財布を盗まれたからとか、ものすごく簡単な理由でホームレスになるんですよね。例えば仕事をしていてパソコンのデータが壊れたりすると、死にたくなったりするじゃないですか。でもグッとこらえて死なないのが普通の人ですよね。携帯電話をどこかに落としたときも、後処理がすごく面倒くさくて死にたいとか思ったりするけど、実際には死なない。ところが、ホームレスになる人の中には、そのタイミングで社会との境界線を踏み越えちゃうんですよ。「全部捨てて逃げちゃおう」みたいな。中には深刻に捉えて自殺の前段階としてホームレスになる人もいますね。車上生活とかしていたりすることが多いです。村上たかしさんの漫画『星守る犬』(双葉社)なんかもそうですよね。 ――意図的に境界線を踏み越えない限りは、ホームレスにならないものなんですか? らむ いろいろな人に話を聞いた中で、「ホームレスになっちゃうかも」と言ったのが売れっ子クリエイターの人たち。有名で作品も評価されているし、収入だってある……そんな人たちが絶対ホームレスにはならないはずですが、ホームレスになるかもと思ってしまう。そこに共通しているのが、フリーランスという立場だと思うんですよ。フリーランスの人はホームレスを同じステージだと思っているところがあるんです。僕もフリーランスだから同類として捉えているところがあって、だから彼らに対する見方がちょっと辛口なのかもしれない。 ――ホームレスになったら「もはや終わり」と思う人が多いでしょうが、社会復帰はできるものなんですか? らむ 衣食住が保障されて仕事があっても、すでに社会には戻れないところまで来てしまっている人は無理ですよ。そもそもアル中(アルコール中毒者)が多い。アル中、ギャンブル依存症、約束守れない……なるべくしてなった人だと、社会復帰するのは困難と言わざるを得ないですね。これは私の印象ですけど、運が悪くてホームレスになった人もいるでしょうが、大半の人はジタバタすれば意外と(ホームレスに)ならずに済んだんじゃないかと思うんですよ。 ――ホームレスにならないためには、どうすればいいでしょうか? らむ 役所に行って揉めに揉めるなどすれば、ホームレスにならずに済む道はあるんです。セーフティーネットなどの問題点はすでに指摘されていますけど、実際にホームレス側から取材していて思うのは、日本にはホームレスにならずに済む選択肢があるということですね。すごい借金があるから借金取りから逃げるためにホームレスにならざるを得ないんだという人がいて、漫画にもそのまま描いてきたんですけど、今になって振り返ると「そうか?」と思うんです。だって本当に借金取りが来たとしても、今はめちゃくちゃな取り立てはできないし、自己破産して生活保護を申請するという選択肢もある。「でも相手がヤクザやから、そうはいかんのや」みたいなことを言う人もいるけど、そもそも今どきのヤミ金が、そんな強引な取り立てをやってくるわけない。結局、言い訳にして逃げているだけで、基本的にホームレス生活を楽しんでいる人も多いと思うんですよね。 ――最後に、足掛け14年に及ぶホームレス取材をまとめた『ホームレス大博覧会』に込めた思いを教えてください。 らむ 僕が過去に出版したホームレスの本の感想では、「すごくひどい」と思う人もいれば「いい本だった」と泣く人もいて、反応が極端なんです。ただ僕はなるべくフラットに描こうとしていて、そうすることで「もともと人間ってそういうもんだよな」ということが伝わるんじゃないかと思います。ただ、『ホームレス大博覧会』ではホームレストレーディングカードなんて前代未聞の試みもしていますので、発禁になる可能性は拭えません。できれば回収される前に、ぜひ手に取ってみてください(笑)。 (取材・文=丸山佑介/犯罪ジャーナリスト<http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/>)

「発禁になる前に読んでおけ!」底辺で生きるホームレスを14年追いかけたルポ漫画『ホームレス大博覧会』

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『ホームレス大博覧会』著者の村田らむ
 景気の回復が浸透しない日本で、ここ20年ほどで急増し、社会問題となっている「ホームレス」。社会の底辺に生きるアウトサイダーとして扱われる半面、世の中を達観した聖人と見る人もいる。  そんな社会病理ともいうべき問題を、足掛け14年間も取材し続けているのが、漫画家でルポライターの村田らむ氏だ。6月に発売された『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)は、正面からナチュラルにホームレスの実像をえぐり取った村田氏の集大成ともいうべきものである。終身雇用が崩壊した現代社会では、誰もがホームレスになる危険性を抱えている。ホームレスを見続けてきた村田氏に、その実情を聞いた。 ――まず『ホームレス大博覧会』はどのような本なのか、概要を教えてください。 村田らむ(以下、らむ) もともとはミリオン出版の編集者に、私が過去に出版した『こじき大百科──にっぽん全国ホームレス大調査』(データハウス)や『ホームレス大図鑑』(竹書房)みたいなことを、もう一回やってみたいと依頼されたのがきっかけなんです。とりあえずプレで(試験的に)漫画でやってみようということになって、描いてみたら読者アンケートの順位がよかったので連載することになって、それをまとめたのが『ホームレス大博覧会』なんですよ。 ――過去に出版トラブルが結構あったそうですが、発禁(発行禁止処分)になったんですか? らむ 裁判所からの命令で、法律上本が出せなくなることを発禁と考えると、発禁はちょっとオーバーで、自主規制ですね。ホームレスの支援団体からクレームが来て、出版社としてはこれ以上売りませんと、それで自主回収したというのが実際のところです。漫画家のいしかわじゅんさんが週刊文春の書評で『ホームレス大博覧会』を紹介してくれたのですが、「発禁になる前に読んでおけ」とまとめているのも無理からぬことなんですよ。 ――そもそも、なぜ14年前にホームレスを取材しようと思ったんですか? らむ もともとホームレスに興味があったんですけど、本当の本当は仕事で「やれ!」って言われたから。データハウスの『いやらしい2号』という『あぶない1号』の後継誌を作っていたときに持ち上がっていた企画のひとつだったんです。ホームレス取材はお金もかからないし、2回くらい取材したら評判が良かったので続けたという感じですね。 ――取材時は、ホームレスを取材していると明かすんですか? それとも身分を隠して? らむ 最初は上野公園に行って一人ずつ話しかけていったんですが、正直ハードルはかなり高かったですね。慣れてくると、いろいろなパターンを使い分けるようになりました。今回の『ホームレス大博覧会』では、取材だと伝えて話を聞くのが大半でしたが、時には「ボランティアです」と言ったり、相手から聞かれるまで何も言わないこともあります。もちろんホームレスに扮装したこともありますよ。若いと目立つので20代の時はなかなか難しかったんですが、40代まで続けていると、かなりナチュラルに取材できるようになります。  この14年の間に、ホームレスのメッカである西成のアングラな飲み屋に潜入して働いたりして、経験を積んできました。ホームレスは、ドヤ街ではヒエラルキーが低いんですよ。酔っ払って怒鳴ってきたりするけど「はぁ?」と言ったら黙るので、意外と牽制できます。 ――西成に限らず、どこでも潜入できるものですか? らむ そうでもないです。関西の方で話を聞くと「関東は怖い」と言いますね。口数は少ないんだけど暴力的。特に同じドヤ街でも、横浜のK町は厳しい。ホームレスの間でも「K町はヤバイ」ってみんな言いますよ。集団でケンカを売ってくるんですよね。 ――取材で出会った中で忘れられないホームレスっていますか? らむ 話を聞いただけの人も含めると、1,000人以上いると思いますが、潜入してホームレスになった時にいろいろ教えてくれた“土方”丸出しの黒いおっさんには、ビクビクしながらもお世話になりましたね。毛布とか貸してくれて最初は汚いなと思ったのですが、夜は本当に冷えて、10月でも寝ていられないんです。本当にお世話になったので、忘れられないですね。 ――その人と再会することはあったんですか? らむ ないです。ホームレスは亡くなってしまうこともあるし、ホームレスをやめてしまうこともあるので。ホームレスを辞めるというのは、家を借りてホームレスじゃなくなるということですが、これが実は結構あって、小泉政権時の政策でマンションを安い値段で貸し出すということをやって、一気に減った時があったんですね。 ●自由人の象徴として語られるホームレスの実態 ――ホームレスのタブーってあるんですか? ホームレスのコミュニティ内でのタブーと取材でのタブー、両方伺いたいのですが。 らむ 失礼に当たるようなことを聞いても、意外と大丈夫だったりします。家族の話も大丈夫。僕なんて、ホームレスを実家に連れて帰ったこともありますから。本当に人によるというか、話しかけるだけでダメな人もいるし、話しているうちにOKになる人もいる。コミュニティ内でのタブーは、物を盗ったらダメというのはホームレスに限った話じゃないんですが、「マグロ」とか「しのぎ屋」といわれる、ホームレス同士で物を盗む人が結構多いんですよ。だから、集団で集まる場所では揉め事が多いですね。 ――ホームレスの生き方を自由の象徴のように捉える人がいますが、それほどまでに自由なんですか? らむ 自由な部分もあるのですが、ものすごく不自由な部分に囲まれた自由なんですよね。 ――「ホームレスは俗世を捨て去っているからピュアなんだ」みたいな見方は間違い? らむ ピュアなんてことは全然ないですよ。むしろ俗にまみれています。こんなことを言ってしまうと問題ありますけど、少なくとも若い女の子が信用してホイホイついていっていいような、浮世離れした仙人みたいな存在ではありませんね。 ――ホームレス取材の中で、世の中のゆがみを感じたことはありますか? らむ よく思うのは、ホームレスに対する暴力はなくならないということ。本当にダメなことだと思うんですが、社会の仕組みが原因でホームレスになったんだから殴ってはいけないということではなくて、どんな人であろうと、寝ている人を殴ってはいけない。自由人だからとか、実はいい人だから殴っちゃダメというのは違うと思いますが、クソろくでなしだけど蹴ったらあかんだろ! と。それほどまでに、表面化しないホームレスに対する暴力は多いんですよ。大げさかもしれないですが、死なない限りは表面化しないでしょう。花火を持って追いかけ回されたり自転車を投げつけられたりということは、毎日どこぞで起きています。 ――ホームレス側は抵抗しないんですか? らむ 無理でしょう。寝ているところを、いきなりやりますからね。僕もホームレスを疑似体験しましたが、まあ怖いんですよ。梅田で取材していた時、踏み殺されたホームレスがいました。酔っ払ったホームレスが勢いでやることもあるし、ホームレス狩りみたいなこともあるし、ホームレス同士のケンカもあります。元ヤクザのホームレスも多いですから、暴力に慣れているホームレスも珍しくはないんです。 ●ホームレスには、なるべくしてなる!? ――ホームレスになる人には、いろいろなパターンがあると思いますが、実際どんな人がなっているんですか? らむ ショッキングだったのは、財布を盗まれたからとか、ものすごく簡単な理由でホームレスになるんですよね。例えば仕事をしていてパソコンのデータが壊れたりすると、死にたくなったりするじゃないですか。でもグッとこらえて死なないのが普通の人ですよね。携帯電話をどこかに落としたときも、後処理がすごく面倒くさくて死にたいとか思ったりするけど、実際には死なない。ところが、ホームレスになる人の中には、そのタイミングで社会との境界線を踏み越えちゃうんですよ。「全部捨てて逃げちゃおう」みたいな。中には深刻に捉えて自殺の前段階としてホームレスになる人もいますね。車上生活とかしていたりすることが多いです。村上たかしさんの漫画『星守る犬』(双葉社)なんかもそうですよね。 ――意図的に境界線を踏み越えない限りは、ホームレスにならないものなんですか? らむ いろいろな人に話を聞いた中で、「ホームレスになっちゃうかも」と言ったのが売れっ子クリエイターの人たち。有名で作品も評価されているし、収入だってある……そんな人たちが絶対ホームレスにはならないはずですが、ホームレスになるかもと思ってしまう。そこに共通しているのが、フリーランスという立場だと思うんですよ。フリーランスの人はホームレスを同じステージだと思っているところがあるんです。僕もフリーランスだから同類として捉えているところがあって、だから彼らに対する見方がちょっと辛口なのかもしれない。 ――ホームレスになったら「もはや終わり」と思う人が多いでしょうが、社会復帰はできるものなんですか? らむ 衣食住が保障されて仕事があっても、すでに社会には戻れないところまで来てしまっている人は無理ですよ。そもそもアル中(アルコール中毒者)が多い。アル中、ギャンブル依存症、約束守れない……なるべくしてなった人だと、社会復帰するのは困難と言わざるを得ないですね。これは私の印象ですけど、運が悪くてホームレスになった人もいるでしょうが、大半の人はジタバタすれば意外と(ホームレスに)ならずに済んだんじゃないかと思うんですよ。 ――ホームレスにならないためには、どうすればいいでしょうか? らむ 役所に行って揉めに揉めるなどすれば、ホームレスにならずに済む道はあるんです。セーフティーネットなどの問題点はすでに指摘されていますけど、実際にホームレス側から取材していて思うのは、日本にはホームレスにならずに済む選択肢があるということですね。すごい借金があるから借金取りから逃げるためにホームレスにならざるを得ないんだという人がいて、漫画にもそのまま描いてきたんですけど、今になって振り返ると「そうか?」と思うんです。だって本当に借金取りが来たとしても、今はめちゃくちゃな取り立てはできないし、自己破産して生活保護を申請するという選択肢もある。「でも相手がヤクザやから、そうはいかんのや」みたいなことを言う人もいるけど、そもそも今どきのヤミ金が、そんな強引な取り立てをやってくるわけない。結局、言い訳にして逃げているだけで、基本的にホームレス生活を楽しんでいる人も多いと思うんですよね。 ――最後に、足掛け14年に及ぶホームレス取材をまとめた『ホームレス大博覧会』に込めた思いを教えてください。 らむ 僕が過去に出版したホームレスの本の感想では、「すごくひどい」と思う人もいれば「いい本だった」と泣く人もいて、反応が極端なんです。ただ僕はなるべくフラットに描こうとしていて、そうすることで「もともと人間ってそういうもんだよな」ということが伝わるんじゃないかと思います。ただ、『ホームレス大博覧会』ではホームレストレーディングカードなんて前代未聞の試みもしていますので、発禁になる可能性は拭えません。できれば回収される前に、ぜひ手に取ってみてください(笑)。 (取材・文=丸山佑介/犯罪ジャーナリスト<http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/>)

「発禁になる前に読んでおけ!」底辺で生きるホームレスを14年追いかけたルポ漫画『ホームレス大博覧会』

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『ホームレス大博覧会』著者の村田らむ
 景気の回復が浸透しない日本で、ここ20年ほどで急増し、社会問題となっている「ホームレス」。社会の底辺に生きるアウトサイダーとして扱われる半面、世の中を達観した聖人と見る人もいる。  そんな社会病理ともいうべき問題を、足掛け14年間も取材し続けているのが、漫画家でルポライターの村田らむ氏だ。6月に発売された『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)は、正面からナチュラルにホームレスの実像をえぐり取った村田氏の集大成ともいうべきものである。終身雇用が崩壊した現代社会では、誰もがホームレスになる危険性を抱えている。ホームレスを見続けてきた村田氏に、その実情を聞いた。 ――まず『ホームレス大博覧会』はどのような本なのか、概要を教えてください。 村田らむ(以下、らむ) もともとはミリオン出版の編集者に、私が過去に出版した『こじき大百科──にっぽん全国ホームレス大調査』(データハウス)や『ホームレス大図鑑』(竹書房)みたいなことを、もう一回やってみたいと依頼されたのがきっかけなんです。とりあえずプレで(試験的に)漫画でやってみようということになって、描いてみたら読者アンケートの順位がよかったので連載することになって、それをまとめたのが『ホームレス大博覧会』なんですよ。 ――過去に出版トラブルが結構あったそうですが、発禁(発行禁止処分)になったんですか? らむ 裁判所からの命令で、法律上本が出せなくなることを発禁と考えると、発禁はちょっとオーバーで、自主規制ですね。ホームレスの支援団体からクレームが来て、出版社としてはこれ以上売りませんと、それで自主回収したというのが実際のところです。漫画家のいしかわじゅんさんが週刊文春の書評で『ホームレス大博覧会』を紹介してくれたのですが、「発禁になる前に読んでおけ」とまとめているのも無理からぬことなんですよ。 ――そもそも、なぜ14年前にホームレスを取材しようと思ったんですか? らむ もともとホームレスに興味があったんですけど、本当の本当は仕事で「やれ!」って言われたから。データハウスの『いやらしい2号』という『あぶない1号』の後継誌を作っていたときに持ち上がっていた企画のひとつだったんです。ホームレス取材はお金もかからないし、2回くらい取材したら評判が良かったので続けたという感じですね。 ――取材時は、ホームレスを取材していると明かすんですか? それとも身分を隠して? らむ 最初は上野公園に行って一人ずつ話しかけていったんですが、正直ハードルはかなり高かったですね。慣れてくると、いろいろなパターンを使い分けるようになりました。今回の『ホームレス大博覧会』では、取材だと伝えて話を聞くのが大半でしたが、時には「ボランティアです」と言ったり、相手から聞かれるまで何も言わないこともあります。もちろんホームレスに扮装したこともありますよ。若いと目立つので20代の時はなかなか難しかったんですが、40代まで続けていると、かなりナチュラルに取材できるようになります。  この14年の間に、ホームレスのメッカである西成のアングラな飲み屋に潜入して働いたりして、経験を積んできました。ホームレスは、ドヤ街ではヒエラルキーが低いんですよ。酔っ払って怒鳴ってきたりするけど「はぁ?」と言ったら黙るので、意外と牽制できます。 ――西成に限らず、どこでも潜入できるものですか? らむ そうでもないです。関西の方で話を聞くと「関東は怖い」と言いますね。口数は少ないんだけど暴力的。特に同じドヤ街でも、横浜のK町は厳しい。ホームレスの間でも「K町はヤバイ」ってみんな言いますよ。集団でケンカを売ってくるんですよね。 ――取材で出会った中で忘れられないホームレスっていますか? らむ 話を聞いただけの人も含めると、1,000人以上いると思いますが、潜入してホームレスになった時にいろいろ教えてくれた“土方”丸出しの黒いおっさんには、ビクビクしながらもお世話になりましたね。毛布とか貸してくれて最初は汚いなと思ったのですが、夜は本当に冷えて、10月でも寝ていられないんです。本当にお世話になったので、忘れられないですね。 ――その人と再会することはあったんですか? らむ ないです。ホームレスは亡くなってしまうこともあるし、ホームレスをやめてしまうこともあるので。ホームレスを辞めるというのは、家を借りてホームレスじゃなくなるということですが、これが実は結構あって、小泉政権時の政策でマンションを安い値段で貸し出すということをやって、一気に減った時があったんですね。 ●自由人の象徴として語られるホームレスの実態 ――ホームレスのタブーってあるんですか? ホームレスのコミュニティ内でのタブーと取材でのタブー、両方伺いたいのですが。 らむ 失礼に当たるようなことを聞いても、意外と大丈夫だったりします。家族の話も大丈夫。僕なんて、ホームレスを実家に連れて帰ったこともありますから。本当に人によるというか、話しかけるだけでダメな人もいるし、話しているうちにOKになる人もいる。コミュニティ内でのタブーは、物を盗ったらダメというのはホームレスに限った話じゃないんですが、「マグロ」とか「しのぎ屋」といわれる、ホームレス同士で物を盗む人が結構多いんですよ。だから、集団で集まる場所では揉め事が多いですね。 ――ホームレスの生き方を自由の象徴のように捉える人がいますが、それほどまでに自由なんですか? らむ 自由な部分もあるのですが、ものすごく不自由な部分に囲まれた自由なんですよね。 ――「ホームレスは俗世を捨て去っているからピュアなんだ」みたいな見方は間違い? らむ ピュアなんてことは全然ないですよ。むしろ俗にまみれています。こんなことを言ってしまうと問題ありますけど、少なくとも若い女の子が信用してホイホイついていっていいような、浮世離れした仙人みたいな存在ではありませんね。 ――ホームレス取材の中で、世の中のゆがみを感じたことはありますか? らむ よく思うのは、ホームレスに対する暴力はなくならないということ。本当にダメなことだと思うんですが、社会の仕組みが原因でホームレスになったんだから殴ってはいけないということではなくて、どんな人であろうと、寝ている人を殴ってはいけない。自由人だからとか、実はいい人だから殴っちゃダメというのは違うと思いますが、クソろくでなしだけど蹴ったらあかんだろ! と。それほどまでに、表面化しないホームレスに対する暴力は多いんですよ。大げさかもしれないですが、死なない限りは表面化しないでしょう。花火を持って追いかけ回されたり自転車を投げつけられたりということは、毎日どこぞで起きています。 ――ホームレス側は抵抗しないんですか? らむ 無理でしょう。寝ているところを、いきなりやりますからね。僕もホームレスを疑似体験しましたが、まあ怖いんですよ。梅田で取材していた時、踏み殺されたホームレスがいました。酔っ払ったホームレスが勢いでやることもあるし、ホームレス狩りみたいなこともあるし、ホームレス同士のケンカもあります。元ヤクザのホームレスも多いですから、暴力に慣れているホームレスも珍しくはないんです。 ●ホームレスには、なるべくしてなる!? ――ホームレスになる人には、いろいろなパターンがあると思いますが、実際どんな人がなっているんですか? らむ ショッキングだったのは、財布を盗まれたからとか、ものすごく簡単な理由でホームレスになるんですよね。例えば仕事をしていてパソコンのデータが壊れたりすると、死にたくなったりするじゃないですか。でもグッとこらえて死なないのが普通の人ですよね。携帯電話をどこかに落としたときも、後処理がすごく面倒くさくて死にたいとか思ったりするけど、実際には死なない。ところが、ホームレスになる人の中には、そのタイミングで社会との境界線を踏み越えちゃうんですよ。「全部捨てて逃げちゃおう」みたいな。中には深刻に捉えて自殺の前段階としてホームレスになる人もいますね。車上生活とかしていたりすることが多いです。村上たかしさんの漫画『星守る犬』(双葉社)なんかもそうですよね。 ――意図的に境界線を踏み越えない限りは、ホームレスにならないものなんですか? らむ いろいろな人に話を聞いた中で、「ホームレスになっちゃうかも」と言ったのが売れっ子クリエイターの人たち。有名で作品も評価されているし、収入だってある……そんな人たちが絶対ホームレスにはならないはずですが、ホームレスになるかもと思ってしまう。そこに共通しているのが、フリーランスという立場だと思うんですよ。フリーランスの人はホームレスを同じステージだと思っているところがあるんです。僕もフリーランスだから同類として捉えているところがあって、だから彼らに対する見方がちょっと辛口なのかもしれない。 ――ホームレスになったら「もはや終わり」と思う人が多いでしょうが、社会復帰はできるものなんですか? らむ 衣食住が保障されて仕事があっても、すでに社会には戻れないところまで来てしまっている人は無理ですよ。そもそもアル中(アルコール中毒者)が多い。アル中、ギャンブル依存症、約束守れない……なるべくしてなった人だと、社会復帰するのは困難と言わざるを得ないですね。これは私の印象ですけど、運が悪くてホームレスになった人もいるでしょうが、大半の人はジタバタすれば意外と(ホームレスに)ならずに済んだんじゃないかと思うんですよ。 ――ホームレスにならないためには、どうすればいいでしょうか? らむ 役所に行って揉めに揉めるなどすれば、ホームレスにならずに済む道はあるんです。セーフティーネットなどの問題点はすでに指摘されていますけど、実際にホームレス側から取材していて思うのは、日本にはホームレスにならずに済む選択肢があるということですね。すごい借金があるから借金取りから逃げるためにホームレスにならざるを得ないんだという人がいて、漫画にもそのまま描いてきたんですけど、今になって振り返ると「そうか?」と思うんです。だって本当に借金取りが来たとしても、今はめちゃくちゃな取り立てはできないし、自己破産して生活保護を申請するという選択肢もある。「でも相手がヤクザやから、そうはいかんのや」みたいなことを言う人もいるけど、そもそも今どきのヤミ金が、そんな強引な取り立てをやってくるわけない。結局、言い訳にして逃げているだけで、基本的にホームレス生活を楽しんでいる人も多いと思うんですよね。 ――最後に、足掛け14年に及ぶホームレス取材をまとめた『ホームレス大博覧会』に込めた思いを教えてください。 らむ 僕が過去に出版したホームレスの本の感想では、「すごくひどい」と思う人もいれば「いい本だった」と泣く人もいて、反応が極端なんです。ただ僕はなるべくフラットに描こうとしていて、そうすることで「もともと人間ってそういうもんだよな」ということが伝わるんじゃないかと思います。ただ、『ホームレス大博覧会』ではホームレストレーディングカードなんて前代未聞の試みもしていますので、発禁になる可能性は拭えません。できれば回収される前に、ぜひ手に取ってみてください(笑)。 (取材・文=丸山佑介/犯罪ジャーナリスト<http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/>)