ひとりの裁判官を丸裸にした『ゼウスの法廷』 司法の矛盾点を、高橋玄監督が白日の下にさらす!

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『ゼウスの法廷』の撮影現場での高橋玄監督。司法制度の問題点を分かりやすくエンタテインメントドラマに仕立てている。
 「この国に権力者は存在しない。我々庶民側は権力者がいると思い込まされているだけなんです」。曖昧模糊とした日本の社会構造をばっさりと斬り捨ててみせたのは高橋玄監督。警察組織の腐敗ぶりを暴いた『ポチの告白』(05)が大反響を呼んだ、物申す映画監督だ。乙一原作のサイコサスペンス『GOTH』(08)以来となる新作『ゼウスの法廷』は、司法界を舞台にした社会派ラブストーリー。エリート判事とその婚約者との恋の行方を軸に、刑事事件の99.9%は有罪判決となる日本の裁判所の問題点をあぶり出している。上司には絶対逆らえない完全なる縦社会、ひとりの判事が常時300件もの案件を抱えるという異常さ、「判検交流」という名の判事と検察官とのズルズルの関係……。この国を支配する三権のひとつ、司法界の抱える数々の矛盾を高橋監督が語った。 高橋玄監督(以下、高橋) 2009年に劇場公開した『ポチの告白』が話題になったのはよかったんですが、ちょっと反省点もあるんです。「実話ナックルズ」みたいなスキャンダル雑誌的な感覚で多くの方に観ていただいたようで(苦笑)。僕としては警察だけでなく、普通の会社や学校でも弱い者イジメは起きているよと、日本社会の縮図を描いたつもりだったのが、警察組織だけの特別なもののように思われてしまった。それで今回は、典型的な男権社会である司法界を描く上で、女性的な視点から「これって、おかしいんじゃないの?」というツッコミを主人公の小島聖に入れさせたわけです。観た人によっては、社会派ドラマにも、恋愛ものにも、法廷を舞台にしたコメディにも感じられはずです(笑)。  『ポチの告白』に続いて、司法問題を扱った『ゼウスの法廷』を撮ったことで社会派監督と見られる高橋監督。だが本人的には特別な意識はないという。 高橋 ヤクザものやサスペンスなど、いろんなジャンルを作ってきているので、社会派という意識はないですよ。『ポチの告白』は出資者に幾つか企画を提案した際に「これがいちばん面白そう」と注文を受けて撮った作品でした。今回の出資者は別の人ですが、次は司法を斬ってくれと頼まれて作ったのが『ゼウスの法廷』。『ポチの告白』を作りながら、「警察組織の不正を司法がきちんと懲罰していれば、もっと健全な共同体になるはず」という思いがあった。いちばん最後の出口が間違っているから、諸問題がたまっているんだろうなと。じゃあ、司法を題材に作品を撮ってみようということだったんです。  『ポチの告白』ではマジメな警察官が組織内で出世するに従って汚職刑事と化していく姿が生々しく描かれたが、『ゼウスの法廷』では結婚を控えたエリート判事(塩谷瞬、声:椙本滋)の公私にわたる多忙な日常を、婚約者である一般女性(小島聖)の目線でドラマ化していく。
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エリート裁判官への道を突き進む加納(塩谷瞬)だが、女性問題でつまずくことに。ちなみに、本作は塩谷のスキャンダル発覚以前に撮影された。
高橋 警察官以上によく分からない、裁判官の日常を可視化してみようという発想です。法衣を着て、エラそうに法壇に座っている裁判官をひとりの人間として描くことで、司法の問題点が浮かび上がってくるに違いないと考えたんです。裁判官は法律をどう解釈するかが仕事だとすれば、そこに感情的なものを入れることが原則的にはできないはず。それなのに「情状酌量」という言葉があったり、死刑判決などを宣告する際に「遺族の心痛は計り知れないものがある」などと唐突に感情を推し量ったりするわけです。これは一体、どういうことなんだと(苦笑)。そういった矛盾点をうまく組み込めば、面白い物語になるなと考えたんです。『ゼウスの法廷』は司法制度という暗黒の巨人に立ち向かっていくというお話ではありません。権力者とされる立場の人たちを、一人ひとりバラバラにして、裸にしたドラマなんです。たぶん、裁判官のセックスシーンを描いた、日本では初めての映画だと思いますよ(笑)。 ■司法に正義を求めることは間違っている!?  難解そうに感じられる司法制度の歪みを、『ゼウスの法廷』は分かりやすく、かつ面白いエンタテインメントドラマとして料理していく。『ポチの告白』同様、権力者を丸裸にしてしまう高橋監督の演出手腕はブレることがない。 高橋 司法を語る上で重要なポイントは、“法律とはその時代の常識にすぎない”ということ。戦争中は人を殺すことが義務であり、上官の命令に背いた者は敵前逃亡者として罰せられた。軍法であれ、当時はそれが正しかった。現在の法律だって、それが正しいとは限らない。そう考えると、法律を解釈することは正義でもなんでもない。現時点での社会の決め事がそうなっているだけのことだし、我々が合意している法律もほとんどが常識にすぎない。人を殺してはいけない、人の物を盗ってはいけない……。先日、現役判事の寺西和史さんと対談したんですが、寺西さんと考えが一致したのは「司法に正義を求めること自体が、そもそも間違い」ということ。例えば、強盗事件が起きた場合、貧乏な容疑者と裕福な容疑者がいた場合、貧乏な容疑者が不利になる。裕福な人間が強盗するはずがないという常識的判断に、法律的判断が譲られることが多いわけです。法律の運用のされ方って、そういう性質のもの。でも寺西さんは、だからこそ法律に定められている手続きはきちんとした上で判断しなくてはいけないと主張している。寺西さんは自白の強要につながりやすい代用監獄に反対し続け、拘留請求を却下してきた。自分の思想性や意見を語ることのない裁判官の中にあって、寺西さんは非常に珍しい存在ですよ。  2009年から裁判員制度が導入されたものの、一般市民が刑事裁判に関わる機会は極めて少ない。衆議院議員選挙の際に最高裁判所裁判官の国民審査が行われるが、ほとんどの有権者は戸惑って白紙で投票しているのではないだろうか。
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重過失致死罪で起訴された恵(小島聖)は、婚約を交わしていた加納から裁きを受けることなる。法廷が痴話喧嘩の場となる!?
高橋 総選挙の際に最高裁裁判官の国民審査も同時に行われますが、あれなんかとんでもないインチキ。どんな選挙だって、投票用紙に何も記入しなかったら無効票です。ところが国民審査では、白紙投票が裁判官を信任したことになる。最近はネットを見れば、その裁判官が担当した主な裁判が分かるようになりましたが、投票所で裁判官の名前を初めて知る人がほとんどでしょう。政見放送みたいに、この裁判官は過去にどんな裁判を手掛け、どんな判決を下したのか事前に分かるようにするべきじゃないですか。要するに国民の関心が自分たちに向かないようにしているわけです。僕に言わせれば、裁判員制度も民意の反映ではなく、裁判官の仕事がどれだけ大変かを一般市民に分からせるためのもの。誰にも見えない壁に囲まれた世界で、裁判官はいろんなインチキやっているんじゃないですかと。日本の裁判所のセキュリティーだっていい加減なもので、ないに等しい。庶民は逆らうはずがないと、彼らが思い込んでいるからです。日本人は司法をはじめ権力側の問題に意識がなかなか向かわないけれど、それは仕方ないことでもあるんです。我々は武装解除させられ、現行犯の私人逮捕を除けば逮捕や捜査権は警察、司法は裁判所に託した形になっている。もっと言えば、日本は政治も産業も文化もすべて東京に一極集中化し、東京=中央には逆らえないという風潮を生み出している。長きにわたって権力者側には逆らえない空気が、この国を覆っているんです。これを一個人が突き破ることは簡単なことではないですよ。  かたくななまでに保守的で閉鎖的な司法界に自浄化を求めるのは、どうやら無理らしい。冤罪事件をマスメディアが取り上げ、抗議運動を起こしても意味がないのだろうか? 高橋 寺西さんに尋ねたところ、寺西さんは新聞を契約していないし、テレビも置かず、インターネットもつないでいないそうです。携帯電話を寺西さんが持っていないのは極端かもしれないけど、裁判官がいかに外部の情報を遮断するように努めているかがうかがえます。裁判所の前で市民団体が不当判決を許すなというデモ抗議をしますが、ああいう抗議活動をしても裁判所の中にはまるで届かない。でも、声を上げていくことは大事です。一部の市民運動で終わらせず、もっと広げていかなくてはいけない。お買い物している主婦たちが「裁判所って変だよね」と、話題にするくらい常識化しないと世論にはならない。庶民的レベルで問題意識を広めていくことが必要でしょう。  法廷で裁判官が絶対的な権力者として振る舞う姿が劇中で描かれるが、『ゼウスの法廷』という題名は逆説的な意味からネーミングしたものだと高橋監督は語る。 高橋 権力者とは一体何者なんだろうということです。本来は主権者である我々国民が、彼ら公務員や政治家を権力者にしてあげているわけです。ゼウスとは万能の神のことですが、実在しないフィクション上の存在。日本の司法界には最高裁判所の長官はいても、ゼウスのような絶対的な権力者は存在しない。権力者がいるように我々は思い込まされているだけなんです。まっとうな社会を作っていくには、まずそこを見間違えないようにしないといけない。そして、この国の主権者である我々は、ずっと怠ってきた自分の頭で判断するという習慣をこれから身に付けていかなくちゃいけない。
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判事の内田(野村宏伸)は司法界の自浄化を目指していたが限界を感じ、弁護士へと転職。恵の国選弁護に就くことに。
■今の日本映画界に必要なのは、東宝インディーズに第二松竹  高橋監督にもうひとつ訊いておこう。『ポチの告白』は完成から劇場公開まで4年の歳月を要し、『ゼウスの法廷』も2011年の撮影から劇場公開までスムーズには進まなかった。この国の映画事情を、高橋監督はどのように感じているのだろうか? 高橋 『ゼウスの法廷』の公開が遅れた原因は2つ。ひとつは、僕が雇ったプロデューサーが背任行為で製作費を横領したため。これは僕が自力で解決したので、作品の内容には一切関係ありません。もうひとつは、日本の今の二極化した映画界の厳しい現状です。東宝をはじめとしたメジャー系とそれ以外の独立プロによるインディペンデント系との二極化が激しく、企画内容やクオリティーを重視した作品が市場に出回りにくくなっている。完成した『ゼウスの法廷』は東映撮影所の協力もあって撮ったものだしということで、東映さんで配給できないか持ち掛けたんですが、「このキャストだと弱いですね」と言っただけで、東映の取締役クラスは作品を観ようともしなかった。映画を配給する会社の人間が中身も観ずにパッケージで判断して、斬り捨てているわけです。そこで僕が提案したいのは、米国のメジャースタジオであるワーナーにはインディーズを子会社化したニュー・ライン・シネマ、20世紀フォックスにフォックス・サーチライトとそれぞれインディペンデント作品を専門に扱うブランドがあるように、東宝インディーズとか第二松竹といったような子会社か新ブランドを作って、低予算でも良質の作品を配給していくというアイデアです。そうすることで、作品は多様化し、映画文化はもっと豊かになる。さらにはメジャー系の人たちがいちばん望んでいる市場の拡大につながっていくと思います。まぁ、僕がこんな提案しても、あっちの人たちは「ふ~ん」でしょうけど(苦笑)。  新しいプラットフォームを作ることを高橋監督は提言する。 高橋 大手のシネコンに押されて、ミニシアターや地方の映画館は大変な状況です。貧すれば鈍するで、「東京での人気作であれば上映したい」という地方の映画館が増えている。それでは主客転倒なんですね。中央(東京)の映画をただ持ってくるなら、ますます大きなスクリーンと座り心地のよい客席を用意した駅前のシネコンにお客を奪われていくだけ。先ほども日本は中央に集権化しやすいことに触れましたが、中央に対し、地方は独自の価値観を築いていくことが大切です。中央にはない、その地域だけの独自の文化です。「ジャパネットたかた」はデジタル機器を使って、地方ならではの価値観を生み出した成功例。東京に本社を構える大手家電メーカーが、こぞって佐世保参りしているわけですからね。演劇の世界で言えば、寺山修司やつかこうへいは小劇場というプラットフォームをうまく立ち上げることで成功を収めた。時代の違いというものもあって簡単なことではないけれど、新しい発想によるインフラを構築することが重要だと僕は思います。僕自身で言えば、数年前からNYでハリウッド作品を準備しているところ。予算規模は15億円で、これは僕に声を掛けてきたハリウッドの大物プロデューサーが個人的に決裁できる額。ハリウッドでは高い予算に入らない金額ですが、日本のインディペンデントでずっとやってきた僕には充分な金額です(笑)。米国に活動拠点を作り、新しい作品を生み出せれば、日本の映画界にもいい刺激を与えることができるんじゃないかと思っているんです。  高橋玄という男から、しばらく目が離せそうにない。 (取材・構成=長野辰次) 『ゼウスの法廷』 監督・脚本/高橋玄 出演/小島聖、野村宏伸、塩谷瞬・椙本滋、川本淳市、宮本大誠、吉野紗香、速水今日子、横内正、黒部進、風祭ゆき、出光元  配給/GRAND KAFE PICTURES 3月8日(土)よりシネマート六本木ほか全国順次ロードショー  (c)GRAND KAFE PICTURES 2013  <http://www.movie-zeus.com> ●たかはし・げん 1965年東京都生まれ。19歳で東映東京撮影所に入り、『心臓抜き』(91)で劇場映画監督デビュー。『CHARON(カロン)』(04)で、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭ファンタランド大賞を受賞。『ポチの告白』(05)は完成から4年後の2009年に劇場公開され、ロングランヒット。日本映画館大賞特別賞を受賞し、英国ではDVDがソールドアウト。ベストセラー作家・乙一の代表作の映画化『GOTH』(09)も北米、英国、アジア各国で配給され、高い評価を得ている。現在はNYを拠点にハリウッド作品を準備中。

博多大吉が叫ぶ「(この本を読んで)若手芸人よ、大志を抱け!!」

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撮影=尾藤能暢
 企画意図を的確に読み取る“上品芸人”であり、ひな壇では抜群の安定感を醸し出す“先生”であり、もはやバラエティ番組に欠かせない存在である博多大吉。初めての著書『年齢学序説』(幻冬舎)も文庫化されるなど、絶好調、怖いものなし、この世の春かと思いきや……。くべてもくべても燃えない焚火のように、頑なに「そんなことないです」を繰り返す、あぁ上品。というわけで、年齢本に込めた思いから昨今のお笑い事情まで、愛と毒を絡めて語る大吉ワールドをご堪能あれ。 ――まずは、この本を書こうと思ったきっかけを教えてください。 大吉 僕が『やりすぎコージー』(テレビ東京系)で「26歳にまつわる都市伝説」を発表したのがきっかけです。実はこのネタ、ゴールデンでは丸々カットされたんです。言葉悪いですけど、その辺のネットで拾ってきたようなネタを言う人がゴールデンでオンエアされていまして。あぁそんなもんかと。それが深夜でオンエアされたものを、幻冬舎の編集さんが見ていてくださったんです。声をかけてもらった時は、うれしかったですね。見ている人は見ているんだなぁと思いました。 ――年齢の法則に気づいたのは? 大吉 大物芸人さんはみんな26歳で冠番組を持っているなぁと思って、調べてみたらそうじゃない人だらけだったんですけど、追いかけていくと必ず何かあるんですよ。基本、そこをくっつけているだけの戯言です。 ――でも、『年齢学』ですよね(笑)。 大吉 このタイトルを編集さんから提案された時は、おいおい全然「学」じゃないし、その上「序説」なんて何を言っているんだって、慌てましたよ。何度も言いますが、戯言なんですよ。お笑い、プロレス、漫画、昭和歌謡……自分の好きなことを書いているだけなんです。しかも回りくどく!! ――構想8年、執筆3年、大作です。 大吉 ある程度、ネタはあったんです。1ページに1ネタくらいのネタ本にしましょうかって提案もしてもらったんですけど、たぶん自分が本を出せるなんて最初で最後だと思ったんで、それではちょっとさみしいかなと。それで「一回書かせてもらっていいですか?」ってお願いして、前半部分を書いてみたんです。それを読んでもらって、こんな感じで書けるならやってみましょうと。ただ、前半にだいぶ出し尽くしてしまったんで、後半はほぼほぼ残りかすを集めた厳しい戦いでした。EXILEの年齢を足して割っている時なんか、ドキドキですよ。「26になれ、26になれ」って祈りながら計算して、26になったら「やった~!」って。もういろいろな人の年齢を計算してますから。四則計算駆使して。 ――そうはおっしゃいますが、この本には大吉先生のクールで鋭い視点が詰まっていると思います。 大吉 小さい頃から、大人の顔色をうかがう子どもだったんでね。仕事中はフロアさん(フロアディレクター)の顔ばっかり見てしまいますね。今何が起こっているのか、だいたい顔を見れば分かりますから。 ――相手が求めていることをやりたいと。 大吉 まずはそれですね。その相手というのが、僕の場合はMCの方とかではなくてスタッフさんなんです。そのあたりが、上品芸人と呼ばれるゆえんですかね。 ――あの「上品芸人」(テレビ東京系『ゴッドタン』での一企画)のくくりは、大発見でしたよね。 大吉 よくぞ言ってくれた、と思いました。だって、しゃべりながらも「絶対ここ使わないだろ」っていうこと、いっぱいありますもん。ただ現場のためにやってるっていう。そういうカンペは、だいたい僕に出る。もちろんオンエアされない。あれ? あんなに疲れたのに、テレビでは全然しゃべってないな……と思いながら。 ――『年齢学序説』が文庫になると聞いた時は、いかがでしたか? 大吉 僕、その話はてっきり立ち消えになったと思っていたんで、「まだあったんだ」っていうのが正直な感想でした。装丁が決まったころでしょうか、やっと実感が湧いてきて。実際、駅なんかで売ってるのを見かけると、「うわっ」ってなります。買っちゃいますもん。恥ずかしくて。だいたい一冊しかないから。 ――『サンデー・ジャポン』(TBS系)でもせっかく宣伝できたのに、すぐ(本を)隠しちゃいましたよね。 大吉 編集さんには申し訳ないですけど、恥ずかしいんです。 ――芸人さんなのに、本を書いているということが恥ずかしい? 大吉 ここまで時間をかけて書いたものなので、言い訳できないんですよ。面白くないって言われたら、もう「すいません」としか言いようがない。で、自分でも思うんですけど、年齢層や趣味とか読者を選ぶ本なので、ハタチそこそこの、なんとなく僕のことを好きだなって思ってくださっている方が読んだところで、ちんぷんかんぷんですから。だから、なるべく知られたくないっていう気持ちのほうが前面に出ちゃいまして。本当は同窓会で売りたいんですよ、手売りで。 ――先日、大吉先生のラジオでの発言がネットニュースで出回っていたのをご存じですか? 大吉 知ってます。すぐニュースになるんですね。 378A7148.jpg ――「若い子がテレビを見ない理由」。世代間で話題を共有できていないと。 大吉 その、(テレビに出てくるネタの世代間格差の)集大成みたいな本ですよ、これは。 ――この本で、若い子たちに知ってほしいという気持ちはありますか? 大吉 いや、同世代で趣味も僕と合う人が懐かしがって読んでくれたらいいです。若い子が知る必要のない情報が山盛りですからね。 ――そうは言っても、普遍的なアドバイスをさりげなく忍ばせてますよね。たとえば、「妥協すること」と「諦めること」の違いとか。 大吉 僕は「前向きな撤退」っていう言葉が大好きなんです。妥協するっていう自覚は持ちにくいかもしれませんが、ちょっとずつ目線を下げていく……それは「諦める」こととは違う。 ――今、NSCに入学する人が年に2000人いて、その割には出ていける場所は少ない。芸人を続けていこうか悩んでいる人に相談された時、大吉先生はどんな言葉をかけるんですか? 大吉 相談されたら、「辞めたら?」って言います。でも、相方は「絶対辞めるな!」としか言わない。だから、どっちに相談するかです。今ね、40歳付近で固まってしまってるじゃないですか。この世代、強すぎるでしょ。MCにもいるし、ひな壇にもいるし。『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の年間大賞とか、あれだけ芸人がいて、一番若手が品川君(品川庄司)ですよ。そりゃあ、20代30代、出てこれないですよ。 ――まるで自民党の議員みたいです。 大吉 そんな中、パンサーとかジャンポケとか頑張ってますけど……数が違う。この城は、なかなか落とせないと思いますよ。 ――その40歳周辺の芸人さんたちがテレビにも出て、毎年ライブもやって、自分たちでネタも書いて……もっと調子に乗ってくれないと、若手の出番がないのでは? 大吉 僕たちも、月イチで新ネタを作るようにしてますね。浮かれられないんです。吉本はギャラが安いとはいえ、おかげさまでここまで働いていればある程度はもらえるので、遊ぼうと思えば遊べるんですけど、やっぱりダメですね。 ――それは恐怖感ですか? 大吉 どんどん年を取ってますからね。もう44ですよ。じっとするのが怖い。華丸さんが結構ね……僕はまだ咀嚼しきれてないんですけど、華丸さんがいま変な面白さを出しているんですよ。フツーの一言が、めっちゃウケたりするんです。それはそれですがりたいんですけど、怖いんです。よく分かってないから。長いこと一緒にいすぎて、華丸さんの何が面白いのか、よく分からなくなってきてる(笑)。自分が作ったネタを演じてもらってなら、理解できるんですけどね。「今日は寒かね~」でドカーンとウケたりする。 ――すごい、金脈ですね。 大吉 ただ、これ以上埋まっているのかなという不安もありますよ。そこに頼っちゃうと、実は泥でしたっていうこともあるかもしれないので。 ――そういう用心深いところが、大吉さんが「先生」と呼ばれるゆえんなのでしょうか? 大吉 僕らは変に年を取ってる後輩芸人なので、雨さん(雨上がり決死隊)に気を使っていただいてるだけですよ。僕のことは「先生」で、華丸さんは「岡崎さん」。それを見て、周りの芸人さんたちもそう呼んでくれるようになったので、ありがたいですね。 ――やはり『アメトーーク!』での「博多華丸・大吉芸人」は大きかったですか? 大吉 あれは、僕らの中ではゴールだったんです。これでいつでも福岡に帰れるし、あとはもう言ってみれば余力というか。行けるところまで慣性の法則で行こうみたいなノリでした。実際、あれで爆発的に仕事が増えたわけでもないですし。それより、ちゃんとしたマネジャーがついてくれたことのほうが大きいかもしれません。 378A7116.jpg ――基本、スタンスは変わらないと。 大吉 変わらないですね。劇場やってるからじゃないですかね。お客さんの前で漫才をすることで冷静になれる。テレビに出られなくても、劇場でウケていればいい話なんで。あと福岡にも仕事があるし。慌てないんですよ、僕たち。 ――故郷を捨てて、東京で成功してやる! っていうのも、芸人として成功する一つのモチベーションだと思うのですが、あくまで福岡と東京の両立にこだわった理由はなんでしょう? 大吉 僕も福岡のことが好きですし大事にしたいですけど、僕以上に華丸さんが動かない。何よりも福岡を優先させるので。福岡を優先させているのか、福岡のゴルフを優先させてるのかは謎ですが。ちょっとは山っ気が出る時もあるんですよ。ピンでいろいろな仕事に呼んでもらって、それがウケればいいんですけど、失敗して落ち込んだ時、ふと振り返ると華丸さんが福岡でほほえんでる。それがどうしたって顔で、こっちを見てる。それで僕も「あぁそうでしたね」って。なんかすいません、ちょっと調子に乗ってました。反省とかしなくてよかったんですねって。 ――華丸さんの存在が大きいんですね。 大吉 本当にアイツが僕以上に博多が好きなので。全国ネットで「有名なラーメン店は?」って聞かれて、パッと浮かんだところを言うべきなのに、あの人は言わない。どこの名前を出しても角が立つ。あの店は、俺は好きだけど最近行ってないから味が落ちてるかもしれない。そういうことを気にして、結果、黙るという、テレビとしてあるまじきことをするんですよ。その一瞬は「何やってるんだ」ってムッとはしますけど、よくよく理由を聞いてみると、あの人はブレてない。昔っから何も変わってない。 ――華丸さんが『R-1』で優勝して先にブレイクして、その隣で大吉先生はどんなことを考えていたのですか? 大吉 華丸さんばっかりテレビに出てると、親たちから「アンタ何やってるの?」って言われるので、その辺は確かにキツかったですけど、個人的にはなんとも思っていなかったですね。すごい失礼な言い方ですけど、『R-1』にそこまで期待していなかったので、そんなに重要なタイトルだとは、当時は思っていなかったんですよ。たまたま優勝しただけのこと。それでTBSだったり、フジテレビだったり、いろんなテレビ局を見学させてもらったと。お金をもらって芸能人を生で見れて。ウィニングランの気持ちで一年間を過ごしました。 ――ご自身も芸能人なのに。 大吉 違いますよ。たまに街で僕のことを見かけて喜んでくれる方がいらっしゃるんですけど、困るんです。「またまた」と。綾野剛さんのほうがうれしいでしょ? 僕とばったり会うより。ごめんね、だけど綾野剛はここにはいないんだよ……と。 ――考えすぎです(笑)。 大吉 この間ですね、ロケで嵐の櫻井翔さんがカレーを召し上がったんですけど、カメラが止まった後に「大吉さん食べますか?」って言っていただいて、翔さんが使ったスプーンで食べてしまったんですよ……。さらに、その後、翔さんがまた同じスプーンで食べた。ラリーがあったんです。これは調子に乗ってるなと、自分で自分を戒めました。 ――(笑)。最後に、読者にメッセージをいただきたいのですが。 大吉 まぁきれいごとみたいですけど、売れてない若手が読んでくれたらいいなと思って書きました。世に出れなくてもがいている、ウチの、吉本の芸人に読んでほしいなと思って書いたんですけど、まぁ思っていた以上に誰も読んでくれなくて、はらわた煮えくり返るのみです。アイツら! だからお前ら売れないんだ! ――だから、26がダメでも38がある。38がダメでも……というふうに書いたのに。 大吉 僕の計算では、毎年2000冊売れるはずなんです。NSC生が買うから。 ――授業で読んでほしいと。 大吉 本当ですよ。今でこそこんなエラそうに言ってますけど、自分たちもそうだったので。35歳、知名度ゼロで東京に出てきてました。人生なんてあっという間ですから、若手は早くこれを読んで、辞めるなら辞める。続けるなら続ける。僕に謝るなら謝る。その三択です。 (取材・文=西澤千央)

「日本中を僕らの楽屋に」新生レイザーラモンが語る、プロレス愛が支えた漫才師への道

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撮影=後藤秀二
 誰がセンターマイクを挟んで立つ二人を予測しただろうか。「THE MANZAI」決勝進出で漫才師としての姿を強く印象づけたレイザーラモン。コンビとして誰よりも激しい紆余曲折を味わった二人はなぜ漫才にたどり着き、そしてどんな未来を見据えているのか。ルミネ終わりの二人を直撃し、新生レイザーラモンの決意表明を聞いた。 ――2年連続認定漫才師、そして2013年は決勝進出。「THE MANZAI」の前と後では、環境もだいぶ変わりましたか? RG まず、ネタをまったくやってなかったですね、2年前は。 HG あるある言う、ハードゲイやる、みたいな。コンビながら、ピンが二人おるという感じでやってましたね。 RG 認定漫才師になってから、ネタで笑いを取るというのが少しずつできてきまして。 HG 関西の漫才番組に呼ばれるようになったんです。17年やってきて初めてですよ。 RG やっと普通の芸人活動ができているという感じですかね。 ――「THE MANZAI」の時は、レイザーラモンさんの愛され感が視聴者にも伝わってきました。 RG それは、レイザーラモンが特殊な生い立ちをしていることにほかなりません。まずHGがバーンといって、俺が完全に置いていかれて、その後、HGがプロレスで大けがして……コンビとして「かわいそう」が、一つのキーワードになっていますから。 HG だから諸先輩方が助けたがるというか、なんとかコイツらを面白くしてやろうと。いつも助け舟を出してくれるんです。 RG 前に出ることをやめなかったっていうのは、あるのかもしれないですね。 HG コンビで一人がドーンてなったら、たいがい仲悪くなるか、そのまま解散してしまうかなんですね。しかしRGさんは、ブレイクしたHGをパクるというとんでもないことをしだした。それから「あるある」ですよ。お笑いのセオリーとはまったく別なやり方で、ここまできました。 ――それも、すべてお二人の頭にあったストーリーなのかなって思うくらい、自然です。 HG プロレス的ではありますね。 RG たとえば猪木さんは「スキャンダルを飯にしろ」ってことをよくおっしゃてまして、猪木VSモハメド・アリ戦ですごい借金を背負っても、逆にそれを売りにしてましたから。転んでも、ただでは起きない。プロレス好きが、HGをパクってる僕を見て「敵が出てきた!」みたいな感じで受け入れてくれたんですね。 HG ベビー(善玉)とヒール(悪役)。 RG 常にそれは僕らの中にある。だから漫才をやろうってなった時も、「解散するかも」と打ち出しておいて、自分たちを追い込んで、お客さんには乗っかってもらった。プロレス的な運びを意識しました。 ――二人の立場や関係性がどんどん変わって目が離せなくて、最終的には応援している。 RG その辺が、僕らが“ハッスルイズム”を継いでいるところだと思うんですけど、記者会見でも旬な人の話題を出して紙面を獲りにいくみたいなことを毎回やってて。話題になりたい。紙面を飾りたい。それが、ハッスルイズムです。 ――プロレスだったらリング、漫才だったら舞台、どちらも「神聖な場」というイメージがありますが、それぞれのガチなファンから中傷されることはなかったですか? HG 正直、プロレスファンの中には、当初「なんやお前ら」っていう空気がありましたけど、僕らとにかくプロレスが好きで真剣に練習して試合して、RGもやられキャラで頑張って、そうやってるうちに少しずつ認められていった感じがしますね。天龍さんも、ある時を境に「頑張ってるな」って話しかけてくれるようになりましたし。 RG どの世界でも、真面目にやってるのが分かれば、受け入れてもらえると思います。僕らも、これは漫才じゃないとか言われたり、HGが素顔で出てザワザワしたままネタに入れないこともあったんですけど、2年かけて、メディアも巻き込んで「俺たちは漫才に真剣です」って訴えて。一時は「ザ・漫才うけ太わろ太」に改名しようとまでしました。だから「THE  MANZAI」の決勝後に「やっぱりあれ漫才じゃない」って言われたの、悔しかったですもん。 _MG_8911.jpg HG 今年は、漫才協会の門を叩こうかという話も。 ――本当ですか!? RG 今はまだ吉本というホームでしかやってないので、ふらっと遊びに来た浅草のお客さんを笑わせることができるか挑戦したいですね。 ――では、ナイツがライバル? RG ライバルというより、憧れです。ナイツは今年のお正月の漫才番組で、もう紅白のネタをやっていたんですよ! なんてカッコいいんだ! HG 芸風からは、まったく想像できない発言ですね(笑)。最近のRGさんは漫才にアツすぎて、完全にキャラを見失ってます。 RG 去年「頑張れば、もしかしたら『THE MANZAI』の決勝行けるかも」って思った出来事があったんです。営業で中川家さんと一緒になりまして、その時に「あの雅楽のネタおもろいな」って言ってくれたんですよ。決勝まで頑張ってみようと思ったのは、その一言があったからかもしれません。 ――漫才への真剣な気持ちが、どんどん周囲を巻き込んでいったんですね。 RG これもまたプロレス的なんですけど、“新日本プロレスと東スポ”ならぬ“レイザーラモンと「お笑いナタリー」”という形でご協力いただきまして。僕らなんかに力を入れてもらって、申し訳ない限りですが。パンサーを特集したほうが、リツイート数は上がるというのに。 HG だから、僕の裸の写真(※ゲイ雑誌「バディ」2014年2月号表紙)入りの記事をナタリーさんで配信して、過去最高のリツイート数を記録したと。そこで恩返しをさせていただいて。 RG 周りを巻き込むというのは、怒られない空間を広げていくっていうことなんですね。楽屋でウケている感じを、ずっと広げていければと思っています。究極的には、日本全国が僕らの楽屋になればいい。楽屋だったら怒られないから。 ――すごい。そのままタイトルになりそうです(笑)。 RG 「日本を楽屋に」ですよ。 HG ンフフ。 RG プロ意識の欠如と言われれば、それまでですが(笑)。 ――でも間違いなく、2013年の「THE MANZAI」はレイザーラモンさんが持っていってしまったと思います。 HG いやいやいや……相方がトップバッターなんか取るから。 RG どうせあそこは空きますし。みんなが嫌がることを僕らがやることによって、大会自体が盛り上がればいいんですよ。結果、ゼロ票ということになりましたが。 HG 自分らの試合よりも興行を盛り上げたいという、プロレス的な考え方はあるかもしれませんね。 ――でも、ゼロ票だったことは悔しかったと? RG その時、初めて思いました。それまでは盛り上がれとか騒がしくしてやれとか考えていたのに、あそこで0点になって「あぁ負けたんや」と。 HG 意外でしたね。普段何やっても落ち込まない、反省しない男でおなじみのRGが。 RG ほかの人とはまったく違う漫才をしたと思っていたのに、「漫才じゃない」って言われて。でも、帰って番組の録画見たら「そりゃそやろな」って(笑)。 HG 愛のあるイジり方をしてくださったんですよ。 _MG_8914.jpg ――レイザーラモンさんにとって、お笑いのゴールはどこですか? RG それはいっぱいありますね。「THE MANZAI」のゴールがあって、そこをゴールしたらまた別のゴールがあって。武藤(敬司)さんが言っていたのは「プロレスはゴールのないマラソンだ」と。 HG 毎回、こうすればよかった、ああすればよかったが見つかる。年を取ったら取ったなりの漫才ができますし。 ――正解がないと。 RG オール巨人師匠に「漫才という大変な道にきてくれて、ありがとな」って言われた時、すごいところに足を踏み入れたんやなと思いました。 ――漫才という大変な挑戦を支えたのは、お二人のコンビとしての絆の深さだと思うのですが、特にレイザーラモンさんはピンとして片方がブレイクしたり、複雑な関係を強いられてきたと思います。でも「レイザーラモン」で居続けた、その理由はなんですか? RG やっぱりバッファロー吾郎軍団にいたことが大きかったですね。バッファロー吾郎さんにケンコバさんに小薮(千豊)さん……軍団の皆さんが僕らをかわいがってくれて、新キャラができたら先輩方のイベントに出してもらって。全然完成してないのに(笑)。僕らコンビだけでいて、どちらかが売れたら「なんやアイツ」となっていたかもしれません。だけど、僕らの周りにはいつも兄さんたちがいて、そんな兄さんたちに「なんだ、アイツ器ちっちぇえな」と思われたくなかった(笑)。 ――それで、今度はRGさんが、あるあるでブレイクして。 RG よく言われるのは、僕のあるあるネタを一番笑ってるのはHGやって。年末にHGが(EXILE弟分のGENERATIONS)関口メンディーさんのモノマネをした時も、やっぱり僕が一番笑ってた。お互いが一番笑うから自信を持っちゃう。日本全国楽屋なんですけど、その核というか、始まりは相方を笑わすことなんですよ。 HG めっちゃかっこいいこと言ってる(笑)。 RG コントでも、お互いが知らない設定を持ち込むことはない。お互いの共通体験、お互いが知ってる変な人……それを必ず題材にしてますから。 HG あるあるの選曲もバツグンなんですよ。渡辺美里とか佐野元春とかチューブとか、ほんまちょうどいい。 ――こんなにお互い目を合わせて話す芸人さんも、珍しいと思います。 HG 漫才師あるあるなんですけど、コンビで目も合わさへん、楽屋も別々っていう時期を経て、めっちゃ仲が良くなるっていう。僕らは、それをぎゅっとした感じだと思います。もちろん目合わさん時期もありましたけど、今は誰よりも相方を笑わせたい。 ――今年は、テレビにはどのようにアプローチされますか? 今バラエティはネタよりトーク力が優先されていますよね。 RG トーク力って、実は誰でも持ってるんですよ。だけど、緊張感が先に立ってしまうと発揮できなくなってしまう。僕らも相方と普通にしゃべる感じでテレビに出られたら、トークも面白くなると思うのですが(笑)。昔、吉本新喜劇座長の川畑(泰史)さんに「テレビはご褒美や」って言われたことがありまして。 HG 大阪時代なんて、テレビ出られるて言ったら、みんなに触れ回ったもんな。 RG DonDokoDonの山口(智充)さんなんか毎月ライブやって新ネタおろして、そのほんの一部がテレビで出てる。千原兄弟さんもそうです。だからテレビがどうのというより、「漫才でお客さんを笑わす」「楽屋で皆さんを笑わす」をちゃんとやっていれば、そのご褒美でテレビに出られると僕は思ってます。 HG 僕はまだまだ緊張してるし、肩に力が入っちゃう。それまでキャラに乗っかってやってきましたからね。銀行強盗が目出し帽を脱いだ状態なので、今は。 IMG_9005.jpg ――RGさんのハートの強さを見習いたいと? HG RGはハートが強いってよく言われますけど、僕はそんなに簡単な言葉じゃないような気がします。よく凹んだりもしますしね。 RG 僕は過保護に育てられてるだけ。前に出ないと先輩方に怒られると思ってるから、新キャラをとにかくやる、隙があったらあるあるを歌う。逆に言うと、ガラスのハートなんです。皆さんと、ちょっと意識が違うだけです。 HG 普通、ネタを思いついたら、自分の中で一旦消化しようとするじゃないですか。このキャラやったらどうなんねん、こっからどうオトしていくねんとか。それを考えずに思い付いたことをやるの、スゴイですよ。 ――今まで誰も通ったことのない道を進んできたお二人ですが、これからお笑い界で成し遂げたいことはなんでしょうか? RG お笑い芸人って、ミュージシャンや俳優から比べると、世間から若干下に見られてるじゃないですか。僕らのほうが偉いんだっていうことではないんですけど、僕は芸人さんが一番すごいと思ってるので、もっと正当に見てもらえないかなとは思っていますね。 HG 昔よりは、だいぶ評価されているとは思いますけど。 RG 一回テレビでやったネタが次からウケなくなるとか、すごい儚いモノなんですよ、漫才って。ノンスタイルだって、M-1取った時のネタをまだ一回もやってない。巨人師匠が言ってた「大変な世界」っていうのは、そういうこともあると思います。 ――何年もかけて磨いてきたものが、一瞬で消費されてしまう。 RG これが歌なら、その後もずっと残るじゃないですか。漫才やコントに関しても、そういう文化になれば。庶民の余興から始まって、徐々に伝統芸能になった歌舞伎のように、漫才にも革命が起きればいいと思うんです。芸術になっちゃいけないけど、格は上げたいと思います。 HG それを、市川AB蔵が言うという(笑)。 (取材・文=西澤千央)

「目指すは、男版・きゃりーぱみゅぱみゅ!?」JKに大人気“ガガ系高校生”けみおって?

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平成生まれの新人類・けみおくん。
 みなさんは「けみお」ってご存じでしょうか? おそらく「日刊サイゾー」のメイン読者層(おっさん)にはまったく知られていないと思いますが、実はこのけみおくん、ネットで今一番ホットな男子高校生といわれていて、女子高生の間ではメチャクチャ人気なんだとか。  面白動画をネットに上げ続け、Twitterのフォロワーはなんと37万人以上! そのほとんどがJKで、“けみおシスターズ”なんて呼ばれているというのだからあやかりたい……!?  そんなにJKの心をガッチリつかんでしまう動画、どんなもんなのかと見てみても、おじさんにはちょっと分からないなぁ~……。最近では、『めざましテレビ』(フジテレビ系)や『ZIP!』(日本テレビ系)でも紹介されたらしい(おまけに『オールナイトニッポン』にもMCとしてなぜか出演!)が、そんな、まさに新人類(長州力という意味ではなく)というべき「けみお」くんに、JKのハートをゲットしたいおっさんがインタビューしてきました。 ――えっと、けみおくんはいろんな活動をしてますけど、知らない人たちには、なんの人だと説明すればいいんですか? 「原宿系ファッション誌『HR』の専属モデル、というのがメインですかね。でも、最終的には(レディー)ガガ様のようなスーパースターになりたいんです!! モデルとかテレビに出たり……というのも、そのゴールに向けての一環ですから!」 ――ジャンルは問わず、とにかく有名になりたい……と。ネットでの活動で、一気に話題となったわけですが。 「6秒動画の『Vine』というアプリで面白動画を作っていたら、大ヒットしました。そのアプリ、海外ではメチャクチャはやってるんですけど、日本ではあんまり普及してなくて。海外には面白い動画を作っている人たちがいっぱいいるんで、それをマネして学校で友達が話しているネタとかを6秒にまとめてみたら、リツイートされまくったんです」
――Vineを始める前と比べて、Twitterのフォロワー数も全然変わったんじゃないですか? 「動画を上げ始めたのが去年の10月くらいなんですが、それ以前は6,000人くらいでしたからね。1カ月で11万人になって、今では37万人になっています。10本くらい上げたころから反応が変わってきたな……と感じましたね」 ――一気に話題になったという感じなんですね。動画にするネタは、どうやって考えてるんですか? 「“あるある”ネタが多いんで、あまり真剣にネタを考えて……という感じでもないんですよ。学校であった面白いこととか、感じたことなんかを、6秒にまとめるという感じですね。撮り直しても3回くらいで、わりとパッパッと撮れちゃいます」 ――学校であった面白いことを紹介するにしても、YouTube、ニコニコ動画みたいなところでダラダラしゃべる……というやり方もあったと思いますが、やっぱり6秒でまとめたほうが面白いんですかね?
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「HR」では特集ページが設けられるほど人気急上昇中。
「Vineって、6秒の動画しか作れないので、無限にループするんですよ。動画を見てくれている人たちに話を聞いたら、同じ動画を3回くらいループして見ているとツボにハマるらしいです」 ――動画は基本的に自宅の部屋で撮っているみたいですけど、親御さんはどう思ってるんですか? 「以前はよく怒られてました。一人で部屋にこもって騒いで撮影して……何をやってるか全然分からないから。しかも、顔に落書きしたまま部屋から出てきたりしてたんで(笑)」 ――息子が一人で部屋で騒いで、顔に落書きまでしてたら、完全にどーかしちゃったと思いますよ! 「まあ、テレビに出てからは応援してくれてますけどね」 ――やっぱり親世代にとって、テレビっていうのはデカいんですね。動画は、人前よりも、一人のほうが撮りやすいんですか? 「人が見ているところでも、やれないことはないんですけど……心の整理が必要ですね。一人のほうが恥を捨てられるんで!」 ――でも、その動画を世界中に配信するのは大丈夫、っていうのは面白いですね。 「それが若者のパワーなんだと思います! ほかの高校生たちも、わりとみんな自分の部屋で撮ってますから」 ――それじゃ、今後の野望は? 「やっぱりテレビの世界に挑戦してみたいです。今はまだ、高校生くらいの人にしか知られていないから、もっといろんな世代の人に知ってもらえたらいいなと。(きゃりー)ぱみゅぱみゅちゃんみたいな!」 ――きゃりーさんも、「HR」のモデル出身なんですよね。ちなみに、テレビに出てこれがやりたい……みたいなのってありますか? 「幅広く、なんでもやりたいです。クイズに間違えると水に落とされちゃう……みたいなバラエティにも出たいですし、音楽的なこともやってみたいです。とにかく新種の人間として認識されたいです。『けみお』っていう新たなジャンルを作りたいですね!」 ――そういえば今度、奥田民生さんプロデュースでCDが出るんですよね。 「そうなんですよ! 『ケミオ&アミーガチュ』という名義で、夏くらいにデビューさせていただく予定です。でも、失礼なことにボク、奥田民生さんってご存じなくて……」 ――ええーっ!? 「事務所の人たちから、『スゴイ人だから』ってさんざん言われました(笑)。カラオケに行っても、歌うというよりは騒ぐ派なんで、ちょっと心配ですけど、どんな曲になるのか楽しみです!」 ――それじゃ最後に「日刊サイゾー」を読んでる大人たちに一言。 P1170546.jpg 「息子のような存在として、かわいがってください!」 ――息子かぁー……。 (取材・文・写真=北村ヂン) ●けみお 1995年東京都生まれ。身長187cm。趣味はリサイクルショップめぐり、特技は人を笑わせること。この春、高校を卒業し、スーパーアイドルになる予定。 <http://ameblo.jp/grfft-kemio/

ポン・ジュノ監督が宮崎アニメについて語った!「SFとアニメは作家のメッセージが最も発露する」

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韓国・フランス・米国による合作映画『スノーピアサー』を演出中のポン・ジュノ監督。チェコで巨大セットを組んで撮影が進んだ。
 ディープなオタク心と鋭い社会批評性を持ち合わせたポン・ジュノ監督は、世界で最も注目される映画監督のひとり。『グエムル 漢江の怪物』(06)では怪獣映画の正しき進化の形を提示してみせ、『母なる証明』(09)では“母と子”といういちばん身近な人間関係をサスペンスフルなドラマに仕立てた。そして製作費約40億円を投じた最新作が『スノーピアサー』だ。環境破壊によって氷河期を迎えた近未来、残された人類は地上を走り続ける弾丸超特急スノーピアサー号の乗客だけに。そして17年間走り続けた列車の中は厳格な格差社会となっていた。主人公のカーティス(クリス・エヴァンス)らは支配階級の圧政に蜂起し、スノーピアサー号に隠された秘密を暴く。映画界の若き巨匠が日刊サイゾーのインタビューに応じた。 ──ポン・ジュノ監督の新作は、いつも驚きと同時にどこか懐かしさも感じます。人類滅亡後も走り続ける特急列車を舞台にした『スノーピアサー』を観て、70年代に日本でテレビ放映された『未来少年コナン』や『銀河鉄道999』を思い出しました。84年に発表されたフランスのグラフィックノベルが原作ですが、日本アニメの影響もありますか? ポン・ジュノ おぉ、『未来少年コナン』! 僕の中学時代をほぼ支配したアニメですよ(笑)。『コナン』を観たのは中学2年のときで、僕にとって初めて観る宮崎駿作品でした。何度も何度も繰り返し観て、さらに自分の頭の中で反芻する毎日でした。シーンとシーンはどのようにつなぐのか、カットをどのように割るのか、演出という概念を僕は『コナン』を観ることで学んだんです。『銀河鉄道999』も僕が子どもの頃に非常に人気のあるアニメでした。日曜日の朝、早起きしてよく観たものです。特に雨の日曜日に観る『999』が思い出に残っています。あのメランコリックな世界観は、雨の日曜日にぴったりでした。メーテルのセクシーさは、子ども心に焼き付いています(笑)。でも、『コナン』も『999』もずいぶんと昔に観た作品なので、今回の『スノーピアサー』に直接的に影響を与えたというわけではないですね。
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後方車両で抑圧された生活を強いられるカーティス(クリス・エヴァンス)らは前方車両で優雅に暮らす支配階級への反乱を企てる。
■宮崎アニメには左派的視点が盛り込まれている ──そうですか……。『スノーピアサー』を観たことで遅ればせながら気づいたのですが、『コナン』も『999』も、実は支配階級へ反旗を翻す階級闘争のドラマだったんですね。少年時代のポン・ジュノ監督は、『コナン』や『999』といった日本アニメに込められていたメッセージ性をしっかり受け止めていたように思います。 ポン 確かに『コナン』は階級闘争の面が色濃く打ち出されていますね。インダストリアのパートでは地下で暮らす民衆が反乱を起こす様子が描かれ、とても印象的でした。宮崎駿監督の作品には、どれも左派的な観点が盛り込まれているように思います。『魔女の宅急便』(89)でさえも、日々労働しながら生きる主人公キキの生活が裕福な階級とは対照的に描かれていたのではないでしょうか。SFやアニメーションは、監督の思想性やメッセージが込めやすい表現形態なんだと思います。『999』に関しては、『スノーピアサー』とは正反対の世界でしょうね。『999』では鉄郎とメーテル以外は誰もいないがらんとした列車の風景が描かれていましたが、『スノーピアサー』は人間が飽和状態で乗り込んでおり、ギュウギュウ詰めになっていますから(笑)。 ──日本のアニメに、とても精通されていますね。ポン・ジュノ監督が少年時代を過ごした1970~80年代はまだ日本と韓国は正式な文化交流はありませんでしたが、どのように日本アニメに接していたんでしょうか?
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アジアの名優ソン・ガンホら国際色豊かなキャストが集まった『スノーピアサー』。ティルダ・スウィントンは特殊メイクで顔が分からない!
ポン おっしゃる通り、韓国と日本が正式に文化交流を始めたのは98年になってからです。不思議に思うかもしれませんが、韓国でも日本のアニメ作品を幅広く視聴することができました。大人向けの番組と違ってアニメ作品は子ども向けだということで、韓国のテレビで普通に放映されていたんです。ですから僕らの世代は、みんな日本製アニメを観て育ちました(笑)。『マジンガーZ』『グレンダイザー』『グロイザーX』『新造人間キャシャーン』……いろんなアニメ作品を観てきました。でも、子どもだった僕らは、自分たちが観ているアニメが日本製だとは知らなかったんです。『宇宙戦艦ヤマト』は『空飛ぶ戦艦V号』という題名で放映されていましたし、主人公が着物姿になっているシーンなどは編集されていましたからね。いわば国籍不明の世界を、少年時代の僕らは楽しんでいたんです。 ──国籍不明の世界ですか。どこかスノーピアサー号の世界とつながっているように感じます。そのスノーピアサー号ですが、環境破壊、食料問題、人口問題、経済格差など現代社会が抱える歪みのすべてが列車の中に詰め込まれています。諸問題を抱えながらもシステムが回り続けることで辛うじて均衡を保っている状況は、現代のグローバル社会そのものですね。 ポン (うなずきながら)ずっと走り続けなくてはならない、一度も止まることが許されない、これは大変な恐怖でしょう。スノーピアサー号の乗客たちは「列車が止まったら終わりだ」「列車の外の世界は死が待っている」と洗脳されてしまっているんです。スノーピアサー号で生まれた子どもたちは、車両教室でそのことを小さいときから教えられ続けているんです。実際に外の世界に出たら死ぬのかどうかは誰も確かめていないのに、「列車は走り続けなくてはならない」と思い込んでしまっている。この状況は、私たちが生きている現代社会そのものです。私たちは社会という名のシステムの中で暮らしていますが、その社会がずっと続き、その社会の中の付属品のように生きざるを得ないかのように思い込んでしまっています。でも過去の人類の歴史を振り返ると、古いシステムが新しいシステムに取り代わり続ける連続だったはずです。今のシステムが本当に正しいものなのかどうか、主人公たちは自分の目で確かめようとする。SF映画だからこそ描くことができた世界だといえるでしょうね。 ■ポン・ジュノ監督が作品を量産できない理由 ──『キャプテン・アメリカ』(11)のクリス・エヴァンス、『ナルニア国物語』(05)のティルダ・スウィントンといったハリウッドスターは、濃厚なメイクで素顔が分からない。また、撮影はチェコのスタジオで行われたそうですね。ハリウッド映画でもなく、かといって韓国映画でもない、無国籍映画として『スノーピアサー』は完成したように思います。 ポン 米国で技術試写をしたんですが、上映が始まって20分が過ぎた頃に「どうして主人公のクリス・エヴァンスが、まだ登場しないんだ?」と言いだした映写技師がいたんです。クリスが最初からずっと出ていることに、彼は気づかなかったそうです(笑)。クリスはニット帽をかぶり、ヒゲ面で顔が真っ黒ですからね。主人公のクリスが分からなかったぐらいですから、特殊メイクしているティルダはもう言わずもがなですよ(笑)。ティルダが演じた総理役のメイソンのモデルはいろんなイメージを複合させたものですが、実在した人物でいえば英国首相だったマーガレット・サッチャーです。ティルダはメイソン役にノリノリで、わざわざサッチャーが生まれたヨークシャー地方のアクセントで台詞を話したいと提案してきました。韓国でいえば慶尚道風のなまり、日本なら関西弁といった感じでしょうか。実はメイソン役には、『コナン』の登場人物であるモンスリーとダイスのイメージも盛り込んでいるんです(笑)。
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『グエムル』で怪獣に食べられたコ・アソンは、特殊能力を持つ少女ヨナ役で出演。『未来少年コナン』のヒロイン・ラナを思わせるキャラだ。
──やっぱり『コナン』の影響があるんですね(笑)。米国や英国を中心にしたグローバル社会への異議申し立てを『スノーピアサー』には感じます。世界の映画の中心はハリウッドではないよという意味も込められているんでしょうか? ポン いやいや、そんなつもりはありません。ひとつの産業というのはとても大きなもので、映画産業に対して自分の立ち位置を作品を通して表明しようなどとは考えていません。これまで自分が追い求めるイメージを追求しながら5本の長編映画を撮りましたが、自分が表現したい作品を自分の理想通りに撮りたいという想いだけでやってきたんです。映画産業の中で自分はどの立場に立ち、どのような路線で作品を撮っていこうという方向性は別にありません。そういったことはプロデューサーが考えてくれればいいと思っているんです。 ──『悪魔を見た』(10)のキム・ジウン監督はシュワルツェネッガー主演作『ラストスタンド』(13)で、本作のプロデューサーを務めたパク・チャヌク監督はミア・ワシコウスカ主演作『イノセント・ガーデン』(13)でそれぞれハリウッド進出。近年は韓国映画界の人材の世界進出が目立ちます。 ポン 『グエムル』がカンヌ映画祭で注目され、僕にも海外エージェントが付き、いろんな脚本が送られてくるようになりました。その中には本当に完成度が高く、面白くて、「映画化されたら、ぜひ自分が客になって観たい」と思う脚本も少なくないんです。ハリウッド作品もありましたし、非ハリウッド作品もありました。でも、やはり自分自身で考えたオリジナル企画に比べると「この作品は絶対に自分が映画化してみせる」という心の奥底から込み上げてくるものがないんです。キム・ジウン監督らは他の人が書いた脚本をうまく演出する才能を持っています。僕もそのようにできれば、もっと多くの作品を発表できるでしょうね(苦笑)。自分の中で熟成し、「これだけは絶対に作品にしたい」という想いが込み上げたときには必ず作品にするようにしています。どうやら、それが僕にとっての短所でもあり、同時に長所でもあるようですね(笑)。 (取材・文=長野辰次) snow_p04.jpg 『スノーピアサー』 原作/ジャン=マルク・ロシェット、ベンジャミン・ルグランド、ジャック・ロブ 脚本/ポン・ジュノ、ケリー・マスターソン 監督/ポン・ジュノ 出演/クリス・エヴァンス、ソン・ガンホ、ティルダ・スウィントン、オクタヴィ・スペンサー、ジェイミー・ベル、ユエン・ブレムナー、コ・アソン、ジョン・ハート、エド・ハリス 配給/ビターズ・エンド、KADOKAWA 2月7日(金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー  (c)2013 SNOWPIERCER LTD CO,ALL RIGHTS RESERVED <http://www.snowpiercer.jp> ●ポン・ジュノ 1969年大韓民国生まれ、ソウル在住。ペ・ドゥナ主演作『ほえる犬は噛まない』(00)で長編監督デビュー。実在の未解決連続殺人事件を題材にした監督第2作『殺人の追憶』(03)が大ヒット。怪獣パニックムービー『グエムル 漢江の怪物』(06)は韓国映画史上に残るメガヒットを記録。ウォンビン、キム・ヘジャ主演作『母なる証明』(09)は世界各国で映画賞に輝いた。監督第5作となる『スノーピアサー』は2013年に韓国で公開され、900万人を動員する記録的な大ヒットに。世界167カ国での公開が決定している。

小泉麻耶が語る女性にとっての“風俗”という仕事、そしてグラビアから女優へと転身する難しさ

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 “障害者の性”というタブー視されている題材を真っ正面から描いた映画『暗闇から手をのばせ』は2013年に劇場公開され、全国各地でロングラン上映となった話題作だ。とりわけ障害者専門のデリヘル嬢を演じた小泉麻耶の体当たりの演技は、観客の視線とハートをがっちりとつかんでみせた。『暗闇から手をのばせ』は関西に実在する障害者専門の派遣型風俗店をモデルにしたドキュメンタリータッチの人間ドラマ。「障害者が相手なら楽そうで安全」と軽い気持ちから障害者専門のデリヘル店「ハニーリップ」に勤めだした沙織(小泉麻耶)が筋ジストロフィー患者をはじめとするさまざまな客と裸で接することで、生と性について見つめ直すというストーリーになっている。DVDリリースに当たり、難役に挑んだ小泉が「友達の風俗嬢を取材した」という役づくりについて、またグラビアアイドルから女優へと転身する難しさについて赤裸々に語った。 ──『暗闇から手をのばせ』は渋谷ユーロスペースでのレイトショー公開後に作品内容が徐々に広まり、上映館数が増えていったそうですね。 小泉 ほんとうれしいです。『暗闇から手をのばせ』という作品に参加できた上に、観客のみなさんに作品を評価していただけたみたいで。昨年はずっとどこかで上映が続いていましたね。スケジュールが合う限り、私もできるだけ舞台あいさつなどに参加するようにしました。 ──本作がデビュー作となる戸田幸宏監督からは、小泉さんのブログ宛てに出演のオファーがあったとのこと。「怪しい」とは思わなかった? 小泉 そうなんです(笑)。私のブログのメッセージ欄に戸田監督の書き込みがあったんです。「障害者の方たちの生と性についての真面目な話です」と内容が書いてあったんですが、文面に真面目さがすごく感じられたので、これは決して怪しい仕事じゃないなと。戸田監督は普段はNHKで番組ディレクターをしていて、最初はドキュメンタリー番組としてオンエアしたかったそうです。まず事務所に相談し、戸田監督に会ってもらいました。それで、「戸田監督はきちんとした人だし、やってみたらどうだ」と言われたんです。私自身ぜひやりたいと思っていたので、受けることにしました。
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『暗闇から手をのばせ』で障害者専門の風俗嬢を演じた小泉麻耶。屈託のない表情で、撮影の舞台裏について打ち明けてくれた。
──障害者の性がテーマで、しかも風俗嬢という役。躊躇はなかった? 小泉 この作品に出てから、共演したホーキング青山さんに仲良くしてもらったり、劇場に来られた障害を持つ方と接する機会ができたんですが、それまでは障害のある方が身近にいたわけではなかったですね。でも風俗嬢という仕事に関しては、私にとってそう遠い存在ではなかったんです。風俗経験のある友達がいたので、その子にはいろいろ聞きましたね(笑)。友達と新宿や渋谷に遊びに出掛けても、「あっ、あの子は風俗の仕事してるな」とか分かる同世代の女の子が多いですし。風俗の仕事してる子が特別な世界にいるようには感じられないんです。どんな女の子でも、ふとしたことで風俗の世界に足を踏み入れることもあるだろうし、誰しも「風俗ってどんな仕事なんだろう?」と興味あると思うんです。戸田監督が言っていたことなんですが、「この作品は障害者を支援したいとか、風俗嬢を肯定するものではなく、こんな人たちがいるんだってことを定義したいんだ」って。私もやりがいを感じてというよりは、「面白そうだな」という好奇心が強かった(笑)。風俗の仕事を選ぶのには、やっぱり何か理由があったからでしょうし、そういうのを探りながら役づくりするのは面白いだろうなって。 ──マスコミ試写の際に戸田監督からコメントをもらっていたところ、小泉さんがこちらに歩み寄って「脚本を読んで、この役は私だと思った」「女の子は誰しも心に闇を持っているんです」と話し掛けてきたのが印象に残っています。 小泉 私、言いましたか? 恥ずかしいなぁ(笑)。ごめんなさい、まだまだ日々成長中なもので、そういう恥ずかしい言葉をつい口にしてしまったようです。う~ん、当時の私は闇を抱えていたのかなぁ……。 ■量産してやっていく仕事のしんどさ ──風俗嬢として漠然と生きている劇中の沙織と、グラビアアイドルから女優への転身中で模索状態だった小泉さんの姿が、そのときは重なって感じられました。 小泉 うん、それはすごくあるように思います。グラビアの仕事を否定する気はないんですが、私にとってはグラビアの仕事は表現が限られ、対象者は男性に限定され、一時期かなり息苦しかったんです。もっと広い世界を見たいし、いろんなことに挑戦してみたかったんです。その部分は沙織が感じていた生きることへの息苦しさとリンクしてたみたいですね。沙織が障害者専門の風俗嬢になったのも、何か自分から新しいアクションを起こしたいという気持ちがどこかにあったんでしょうね。 ──小泉さんはグラビアアイドルとして人気を極めたわけですが、女優への転身は簡単ではなかった? 小泉 グラビアを極めたとは全然思っていません。グラビアでもアートっぽい自由度の高い仕事は面白いけど、量産してやっていかないといけない仕事がすごく多いんです。グラビアアイドルの王道ってよく言われるのが、雑誌をひと通り網羅したら、次はテレビのバラエティー番組に出て顔と名前を覚えてもらって、それでそのままタレントになるか、それとも女優になりたいなら違う道を目指しましょう、みたいなステップがありますよね。それで「日テレジェニック2009」に選ばれて、1年近く「日テレジェニック」の番組に出演していたんですが、その頃がいちばんキツかったんです。
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グラビア界を制したグラマラスボディはキープ。「サイゾーって攻めてる感じ。月刊サイゾーの表紙を飾れたときはうれしかったですよ♪」
──そのキツさって具体的には……。 小泉 グラビアアイドルとして求められていることと自分のやりたいことと食い違うことがありました。グラビアの仕事をしていると「じゃあ、自己紹介お願いします」「得意なポーズやって」「スリーサイズは?」「何か一発芸か物まねやって」みたいなことを言われるんですが、そういうのが本当に苦手で……。もちろん、グラビアの仕事が好きな人もいると思うし、才能のある人ならもっとスムーズに女優に転身できると思いますし、これは個人の問題でしょうね。自分の中でどのようなイメージで勝負していくべきなのか考え中なんです。その点、『暗闇から』の沙織はすごく演じがいがありました。どこまでも役に入っていけるし、役を演じることで自分自身とも向き合えたんです。もちろん役に入っていく作業は大変だし、何が正解かも分からないし、演じた後で「もっと、こうできたんじゃないか」と後悔することが多いんです。だから「じゃあ、次はもっとこうしよう」とトライし続けるしかない。今回の沙織役を熱意なく演じていたら、こんなに思い入れも湧かなかったでしょうね。 ■ぶっちゃけて聞いた風俗のお仕事 ──『暗闇から』の沙織役は、衣装や持ち道具も自分で用意したと聞いています。 小泉 持ち道具に関しては、バッグや財布まで自分で全部用意するべきだったなと反省しています。脚本では、お客さんの家に沙織が忘れ物するのは腕時計だったんですが、「腕時計はどこででも外すものだから、ネックレスとかのほうがいいんじゃないですか」と私から提案したりしましたね。衣装に関しても、私なりに風俗嬢の着ている衣服を研究していたので、自分で買いに行ったり、自分のものを提供したりしました。下着も自分で買ってきたんですが、透けていたので、自分で裏地を張って縫いました。 ──DIY精神あふれる女優! 小泉 はい(笑)、やっぱり自分の役ですし、自分が身に着けるものですから。作品によると思います。戸田監督は私のアイデアに耳を傾けてくれたので、そこはすごく感謝しています。 ──友達の風俗嬢からいろいろ聞いたとのことですが、印象に残ったことは? 小泉 沙織と同じような答えが返ってきたんです。「ねぇねぇ、ぶっちゃけ風俗の仕事って、どーゆー感じなの?」と訊くじゃないですか。そうすると「え~、やることはフツーに同じだよ」って。「えっ、フツーって?」と尋ねると「だって、みんなするじゃん」って。 ──みんなするじゃん(笑)。 小泉 ガールズトークだし、私が聞いた友達は、あけすけなんです(笑)。「風俗の仕事も、恋人にしてあげるのと同じだよ」って。「障害者の場合は動かないから楽かな。でも、自分が全部動かなくちゃいけないから、大変なのかなぁ」ってリアルな声が聞けましたね。なるほど、なるほどと。そういう言葉は、自分の中に染み込んできましたね。
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介護経験のないまま障害者専門のデリヘル嬢となった沙織。最初の客は寝たきり状態の筋ジストロフィー患者(管勇毅)だった。
■変わらないと思っていた日常風景が変わった ──撮影現場はどうでしたか? 小泉 マネージャー役の津田寛治さんと一緒のシーンから撮影が始まったんです。私はまだ芝居の経験が浅くて、自分が分かってないことすら分かってない状況だったんですが、津田さんはいつもニュートラルでいてくれて、すごく親切だし、素敵な役者さんだなって感じましたね。本当に頼りがいのあるマネージャーみたいでした。お客さんの順番は劇中の順番通りでした。筋ジストロフィーの患者さんを演じた管勇毅さんは撮影前に戸田監督と一緒に実際に筋ジストロフィーの患者さんの家を訪ねて、1日過ごして役づくりしたそうです。それで撮影現場には筋ジストロフィーの患者の方と女性パートナーの方も監修として来られて、狭い現場の割には人数が多かったんです。そんな中で私は脱ぐ場面だったんですが、管さんは「僕は見ないようにするね」って自分の手で目隠ししてくれた(笑)。緊張気味の私を和らげようと気遣ってくれた、とてもジェントリーな役者さんでした。その次がホーキング青山さん。 ──身障者芸人・ホーキング青山のアドリブ演技に、思わず吹き出してしまったと。 小泉 前半は表情を抑えた演技で通すつもりだったのに、ホーキングさんのアドリブのせいで、すっかり私の思い描いていた演技プランは崩壊しましたね(苦笑)。後で、戸田監督に「ごめんなさい。あのシーンはもっとちゃんとするつもりでした」と謝りのメールをしたんです。でも戸田監督は「どんな人間でも、ドン底に堕ちても、くだらないことで笑うことってあるよ。それが人間だよ」って言ってくださって。完成した作品を観たらドキュメンタリーっぽい感じに仕上がっていて、良かったです。
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デリヘルの常連客を演じたホーキング青山のエッチなアドリブトークに小泉は思わず表情を崩してしまう。小泉の素顔が覗いた心和むシーンだ。
──3番目のお客を演じた俳優には、胸をガン見されちゃったそうですね。 小泉 森山晶之くんは若い役者さんなんですが、戸田監督から「お前、勃つなよ」と言われて、現場は大変でした(笑)。下半身不随の役だったので、パンツを2枚はいた上に前貼りまでさせられていたんですが、そのせいで(股間が)膨らんでるように映ってしまって。それで、またパンツを脱がせて、前貼りを剥がして……と(笑)。撮影中は大変でしたけど、今考えると笑っちゃいますね。このシーン、目を手で覆ってくれた管さんと違って、森山くんには、しっかり見られてしまいました(笑)。 ──小泉さんの胸が、それだけ魅力的だったと。 小泉 はい、そういうふうに解釈します(笑)。最終日は森山くんと海に飛び込むシーンの撮影だったんですが、3月の撮影で海に飛び込むのは寒すぎるので、海のシーンだけ1カ月後の4月に撮影したんです。4月でも全然寒くて、森山くんは死にそうになってましたね(笑)。彼を助けるために沙織も海に飛び込んだからといって、体の障害が良くなるわけでもないし、沙織の人生が変わるわけでもないんです。日常が変わるわけではないけれど、でも沙織が心を開いて人と向き合うことで今までと違った風景が広がっていく。すっごく気に入っているラストシーンです。今回の沙織役は私を必要としてくれた役だったし、小泉麻耶としての存在意義を感じさせてくれた愛着のある作品になりましたね。 ──映画を観たくても、自宅からなかなか出ることのできない人たちにとって、今回のDVD化はうれしいニュースでしょうね。 小泉 そうですね。「この映画は、どうしても観たかった」と車椅子で劇場まで来ていただいた方もいましたが、劇場に来ることが難しかった方でもDVDなら手軽に観てもらえますよね。松本の映画館で上映された際にトークショーに参加させていただいたんですが、福祉関係の方がトークの様子を熱心にメモしていたのも印象に残っています。福祉のお仕事に興味がある方にもおススメしたいですね。幅広く、いろんな方が楽しめる作品になっていると思うので、ぜひ一度手に取ってみてほしいです。 ──最後に、今後の活動予定を教えてください。 小泉 まだ作品名を公表できないんですが、『暗闇から』を観てくださったある人気監督から出演オファーをいただきました。もうすぐ発表されるので、そちらも楽しみにしてください! (取材・文=長野辰次) ●こいずみ・まや 1988年東京都生まれ。『エレクトロニックガール』(09)、『特命女子アナ 並野容子』(09)、『Re:Play-Girls』(10)、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(12)などに出演。主演作『暗闇から手をのばせ』(13)は「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2013」のオフシアター部門でグランプリ&シネガーアワードの2冠を受賞した。

刺され、切られ、犯され……小松彩夏が艶麗なゾンビに変身!

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撮影=後藤秀二
 まるでお人形さんのようなパーフェクトな顔立ちで、女優やグラビアアイドルとして活躍する小松彩夏。そんな彼女が、その美貌をかなぐり捨てて挑んだ初主演映画『Miss ZOMBIE』。鬼才・SABU監督によるモノクロの美しい映像を背景に、刃物で刺され、包丁で切られ、そしてレイプされてしまうなど、人間に徹底的にいじめ抜かれるゾンビ「沙羅」役を熱演している。今回、この作品がDVDとなってリリースされることを記念して、彩夏ちゃんに突撃インタビュー! 果たして、初主演・初ゾンビという経験は、彼女に一体何をもたらしたのか!? ――『Miss ZOMBIE』初主演おめでとうございます! 小松彩夏(以下、小松) ありがとうございます。映画の主演をさせていただくことがデビュー当時からの夢だったので、その夢が10年越しにかないました! 作品を初めて見た時に、エンドロールの一番最初に自分の名前が出てきて、思わずうるっとしてしまいました。あ、もちろん作品の内容にも泣きましたよ(笑)。 ――ただ、主演の夢は「ゾンビ」の姿ではなかったと思うんですが……。 小松 あはは、確かに。台本をいただいた時は自分がゾンビ役だと聞いていなかったので、配役を知って「あたしがゾンビ!?」と、衝撃的でした。しかも、読んでも読んでもセリフがない……。 ――彩夏ちゃん演じるゾンビの少女・沙羅は、作品中、まったくセリフをしゃべることがありません。いったい、どのように演技をしていたのでしょうか? 小松 5日間という短い期間で撮影したんですが、撮影に入る前に、監督と一緒にリハーサルを重ねました。監督が特にこだわっていたのが、ゾンビの独特の歩き方。ゾンビの心情に合わせて、歩き方を少し早くしたり、ゆっくりにしたり、と変化させなきゃならないんです。撮影に入る前に、プライベートでも、駅から家まですり足の練習をしたり、買い物袋もゾンビのように持ってみたりと、一生懸命練習を重ねました。 ――夜道で、そんな人に遭遇したくありません! 小松 近所の人からは、怖がられていたかもしれないですね(笑)。 ――これまでに、数々のゾンビ映画が公開されてきましたが、彩夏ちゃんはもともとゾンビ好きだった? 小松 何本かは見たことがありますが、あんまりゾンビには詳しくないんです……。監督にも「参考になるゾンビ映画はありませんか?」と聞いたんですが、「絶対にゾンビ映画は見ないで!」と言われました。今回、監督が目指したのは、まったく新しいゾンビ。今までのゾンビ作品とは、まったく別物なんです。コアなゾンビファンの人が見ても、いい意味で裏切れるんじゃないかな〜。 _MG_0140.jpg ――確かに、ここまでゾンビの心情にフォーカスした映画はないですよね。演じる上で、こだわった部分はありますか? 小松 セリフがないので、動きや表情など、ひとつひとつの動作を大切に演じるようにしました。目線の角度、動きの速度など、細かいところでゾンビの心情を表現したんです。もともと血を見るとクラッとしてしまうタイプなんですが、あまりにも夢中で演じていたからカットがかかってようやく「血が出てる!」と気付き、びっくりして貧血を起こしそうになりました。 ――ブログには「特殊メイクが大好き」と書かれていましたね。 小松 メイクといったら、普通、キレイにしてもらうはずなのに、逆に傷つけられて血だらけになっていくのが新鮮でした。今回の特殊メイクには、2時間半もかかったんですよ! ――ただ、これまでキレイでカワイイ彩夏ちゃんばかり追いかけてきたファンの心境は複雑なんじゃ……。 小松 沙羅は、一見弱そうに見えるんですが、心に強い部分を持っているひとりの女性なんです。それなのに、何もしていないのにゾンビであるというだけで、周囲からいじめられてしまう。弱い者ならば何をしてもいいのか? 見てる人に、ちょっとでも考えてもらえればいいなと思います。 ――ところで、彩夏ちゃんと同じく実写版『セーラームーン』に出演していた沢井美優さんも昼ドラ『天国の恋』(フジテレビ系)で意外な一面を開花させていましたが、彩夏ちゃんから見て、その活躍ぶりはいかがでしょう? 小松 当時、セーラー戦士を演じた5人は、みんなそれぞれ活躍しているんです。しかも、定期的に集まって、今でもすごく仲良し。『天国の恋』も、見ていて気持ちがいいですよね。ああいう役をやったら、すごく楽しいだろうなって思います。 ――「糞ガール」と罵られたり、「このカピバラ女!」と罵ったり……? 小松 賛否分かれと思いますが、私のイメージを崩していきたいんです。今回の『Miss ZOMBIE』でも、今まで見たことない私を見せることができました。これからも、いろいろな私を見せていきたいですね。 _MG_0152.jpg (取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]) ●こまつ・あやか 1986年、岩手県生まれ。雑誌「CANDy」のモデルオーディションに応募したことがきっかけで、芸能界デビュー。主な出演作に、テレビドラマでは『美少女戦士セーラームーン』(TBS系)、『バンビ~ノ!』(日本テレビ系)、『BUZZER BEAT~崖っぷちのヒーロー~』(フジテレビ系)、映画では『僕は妹に恋をする』『容疑者Xの献身』『僕等がいた(前編・後編)』などがある。 <http://ameblo.jp/ayaka-502/●イベント情報 開催日時:01月26日(日)15:00~ 場所:タワーレコード秋葉原店 出演:小松彩夏ほか その他詳細は、HPにて<http://tower.jp/store/event/2014/01/09701Miss%20Zombie>

ジャーナリスト青木理が語る鳥取連続不審死事件──毒婦と地方格差と劣化する刑事“地方”司法の問題点

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青木理氏。
 2009年、婚活サイトなどで知り合った男性3人を自殺に見せかけ殺害したとして、昨年4月に1審で死刑判決を受けた木嶋佳苗被告(昨年10月より控訴審が始まった)。セレブ生活に憧れ、毒婦などと形容される彼女は、ワイドショーをはじめとするマスコミでも話題となり、多数の本が出版されるほどの注目が集まった。  ちょうど同じ頃、鳥取では木嶋と年齢もほぼ同じ30代後半で、容姿も似た上田美由紀という女性のまわりで数人の男性が不審な死を遂げていた。いわゆる、鳥取連続不審死事件である。  木嶋とは違い、美由紀はひとりで5人もの子どもを育てるためスナックで働き、決してセレブ生活を夢見ていたわけではなかった。だが、彼女と交際した男性の中には数百万円を貢ぐため借金をし、家庭を捨てた者までいた。彼女のまわりで不審な死を遂げた6人のうち2人の死についてだけが、強盗殺人罪などで立件されている。  美由紀と面会を重ね、鳥取の地を地道に取材してきたジャーナリストの青木理氏が13年11月、事件を追った『誘蛾灯 鳥取連続不審死事件』(講談社)を上梓した。その青木氏に「美由紀とはどんな女か?」「都会と地方の格差や貧困問題、そして刑事司法」、さらに「今後の裁判の見通し」について話を聞いた。 ──木嶋佳苗の事件と鳥取の事件の上田美由紀は、よく比較対象になると思います。木嶋に関して言えば、木嶋の顔を初めて見たとき、どうしてこんな女にダマされるんだろうと多くの男性は思ったはずです。実際に面会し、美由紀はどんな容姿でしたか? 青木理(以下、青木) 人間の恋愛感情なんて本来、相手方の美醜など無関係でしょう。もちろん、ものすごく魅力的なら初対面のときに一瞬ハッとなるかもしれないけど、心の底から好きになったり、嫌いになったりするのに美醜は基本的に関係ないと私は思う。それを前提とした上でも、率直に言って美由紀は魅力に欠ける女でした。その上、付き合った男性にはすぐに妊娠したと告げ、中絶費や養育費を要求する。ほかにもさまざまな名目で金銭をせびり取ろうとする。払わなければ自殺や自傷をちらつかせる。さらには交際相手の実家にまでウソで近づき、金をむしり取る。取材してみると美由紀は、病的ともいえるほどの虚言癖者でした。それなのに読売新聞の記者や鳥取県警の刑事までが美由紀に惹かれ、妻子を捨て、何百万円ものカネを貢いだ挙げ句に不審死していたんです。  でも、実際に付き合っていた男たちに話を聞くと、美由紀は熱烈な愛の文句を綴ったラブレターを何通も送ってきたり、意外にカワイイところもあって礼儀正しかったそうです。5人の子どもを女手ひとつで育てているのを目の当たりにし、情が湧いたと振り返る男も多かった。だからといって家族まで捨てて何百万円も貢ぐというのは理解できませんが、そんな美由紀に惹かれた男たちの気持ちが分からないでもありませんでした。 ──下世話な話ですが、性的に素晴らしいということではないのでしょうか? 青木理氏(以下、青木) 美由紀と付き合っていた男には幾人も話を聞いたけれど、そう言う人はひとりもいませんでした。むしろフツウだって(笑)。 ──取材対象として、木嶋ではなく、美由紀の事件のほうを選んだのはなぜでしょう? 青木 当時、木嶋佳苗の事件にメディアが大騒ぎしていたでしょ。元来がへそ曲がりの私は、まったく興味をそそられなかった。むしろ、バカ騒ぎするメディアを冷めた眼で見ていたし、同じ時期に発覚した鳥取の事件も似たようなものだろうと思っていたんだけど、ノンフィクション誌「g2」(講談社)の編集者から「木嶋の事件は別の書き手に依頼したんだけど、あんた、鳥取の事件を取材して短いルポを書いてみないか」と言われてね。鳥取の事件は木嶋の事件に比べて全然騒がれていなかったし、へそ曲がりの私には、何か心に響く提案だった。それに鳥取市には行ったことがなくて、一度行ってみたいと思ってたし(笑)。その程度の理由で、取材を始めたんです。  でも、取材するうちにのめり込みました。メディアがどうして事件取材に熱中するかといえば、面白いからということももちろんありますが、事件の背後に時代の臭いや社会の歪みが見えてくるというところに醍醐味があるからでしょう。鳥取の事件と同じ頃に起きた木嶋の事件は、「婚活」とか「出会い系サイト」とか「セレブ」とか、一見いまの時代を象徴しているキーワードがちりばめられていたからメディアは飛びついた。でも、それはなんだか表面的で薄っぺらく、本当の意味での時代の歪みを象徴しているようには、私には思えなかった。ところが鳥取で実際に取材してみると、美由紀の事件のほうがよほど、現代日本に巣食う深刻な病が底流で脈打っていると感じましたね。 ──それは、どういうことでしょうか? 青木 たとえば「都市と地方の格差」。あるいは「拡大する一方の格差と貧困の問題」。それに「刑事司法の歪み」でしょうか。  私は今回の取材で鳥取市に初めて入ったのですが、街が非常に疲弊していると同時に、陳腐化している印象を受けました。地方都市が疲弊しているのは鳥取に限った話じゃないけれど、ご存じの通り、鳥取は全国の都道府県の中でも人口最少の小さな県です。だから疲弊の度合いがことさらひどい。地元商店街や歓楽街は完全に没落し、代わりに国道沿いには巨大資本のスーパーやショッピングモール、ファミレスやコンビニが林立している。 ──典型的な地方の郊外ですね。 青木 そう。疲弊しているのに風景が画一化、陳腐化しているのは、現代日本の地方の荒んだ現状です。その上に鳥取は交通の便が極度に悪く、軽自動車の保有率が全国1。その他の指標でいうと、カレールーの消費量もインスタント麺の消費量も全国トップクラス。つまり、世帯の平均収入が低いから共働き率が高く、軽自動車やインスタント食品の需要が高い。全国的に見ても、人々が貧しい生活を強いられているんです。鳥取は、日本の地方が抱える歪みが凝縮されている場所といえるでしょう。そんな街の寂れ切った歓楽街を舞台に事件は起きた。 ──「貧困の問題」ですが、立件されていないものの、不審な死を遂げた6人のうち読売新聞の記者や県警の刑事を除いては、本書では生活保護受給者が数多く登場します。 青木 ええ。事件に関連した人々には、生活保護受給者が多くいます。不審死した男たちと美由紀が出逢う場となった「スナック・ビッグ」は、昔ながらの歓楽街の片隅で営まれている。ママはアパートも経営していて、本書に登場する中では唯一、辛うじて「持てる者」といえる存在ですが、そのママが持たざる者たちを食い物にしている面もあった。ママが経営するアパートに生活保護受給者を住まわせ、その人たちに自分の店で酒を飲ませている。ささやかだけど、一種の貧困ビジネス。美由紀も持たざる者だったけど、その彼女が周辺の人々にカネをせびり、カネを巻き上げて生を紡ぐ。生活保護受給者の増加や貧困問題といった日本社会の歪みが、事件にはベッタリと張りついています。 ──「スナック・ビッグ」は本書の要所要所に登場し、ひとつのキーポイントになっている印象を受けました。 青木 物語としては、そうなるように狙って書いた部分もあります。美由紀の周辺で不審死した男たちの大半はビッグで美由紀に出逢っているから、事件の面でも重要な場所なんですが、ビッグに来た男たちがどういう気分であそこで飲み、ホステスとして働いていた美由紀に惹かれていったのかを追体験させられないだろうかと思って。ある読者には「読んでいて、ビッグの場面に戻るとホッとする」と言われました。実際、陰惨な事件現場や事件関係者の話を聞き続けた私も、取材を終えてビッグに行くとホッとしてしまうところがあった。それを読んでいて「ホッとする」と感じるということは、私もあなたもダマされた可能性があるんじゃないかと(笑)。そんなふうに読んでもらえると、私の狙い通りでもあります。 ──「刑事司法の問題」とは? 青木 刑事司法は私が以前から取材しているテーマでもあります。美由紀の場合、1審公判は鳥取地裁で開かれ、すでに死刑判決が言い渡されていますが、検察が立件に踏み切った2件の強盗殺人について美由紀は逮捕時点から一貫して否認している。しかも警察と検察は脆弱な状況証拠しか示せず、決定的な証拠は何ひとつない。実際に現地で取材してみると、美由紀が事件とまったく無関係とは思えないけれど、女ひとりでできるような犯行と考えるのはどうしても無理があった。1審の公判には検察側の最重要証人として美由紀の最後の同棲相手である安西という男が出廷し、検察側立証を支える証言を口にしました。ところが、これは誰が聞いても明らかに不自然なところばかりの証言だった。そんな公判なのに死刑判決です。  死刑制度に賛成か反対かはさておき、一般の人はこんなふうに考えているんじゃないでしょうか。つまり、死刑になるような被告はとてつもない凶悪犯罪に手を染め、警察や検察の捜査もきちんとした証拠を集め、長期間の裁判を重ねた結果として被告の犯行であるということが確実に立証され、これは死刑以外にやむを得ないと判断されたんだろう、と。でも、現実は違う。特に美由紀の裁判は、警察も検察もヘボだし、さらにいえば弁護側もヘボ。こんな捜査と裁判で死刑にして大丈夫なのか、という思いは拭えません。いわば刑事司法の失態です。 ──刑事司法の失態とは、具体的にどんなことでしょうか? 青木 いま申し上げた通り、公判そのものも極めて不十分だし、何よりも鳥取県警の捜査がひどくずさんでした。今回の事件は、立件された2件のほかに美由紀の周辺で2004年から2009年までの間に読売新聞の記者や警備員、鳥取県警の刑事が不審死しています。真相は不明だけれど、彼らの死因や周辺をもう少しきちんと調べていれば、もっと早く事件化され、これほど多くの人が亡くならなくて済んだかもしれない。ところがロクな検視もせずに2件は自殺、もう1件は海水浴中の事故として処理してしまった。今となってみれば、すべてが藪の中ですけれどね。  ほかにも問題はある。今回立件された2つの事件の被害者のうち、日本海沿岸で溺死体で発見された方がいます。判明している計6人の不審死のうちでは4番目の死者ですが、彼が死ぬしばらく前に家から不審火が出て、彼は警察に対し「殺されそうになったかもしれない」と話したそうなんです。そして実際に遺体で発見された。慌てた県警が遺体を解剖したところ睡眠導入剤が検出され、美由紀との交際や金銭的な関係が浮上し、ようやく本格捜査を始めたんです。もっと迅速に対応していれば、彼は死ななくて済んだかもしれない。  そこから県警は、美由紀と安西を行動確認監視対象に置きます。この間にも2人は取り込み詐欺のような行為を繰り返していたのに、それを見逃した上、2つ目の殺人まで許してしまったんです。この事件が発生したとされる当日も県警は美由紀と安西を行動確認していたはずなのに、犯行時間帯だけは美由紀を尾行していなかったと警察・検察は裁判で言った。にわかには信じがたいし、もし事実だとすれば大失態でしょう。きちんと尾行していれば、2つ目の殺人は防げたんですから。 ──美由紀の弁護士は国選です。 青木 ええ。1審と2審は別々の弁護団で、いずれも国選ですが、1審の弁護人はヒドかった。弁護方針もブレブレで、メディア取材も拒否。失礼だけど、死刑という究極の刑罰がかかる重大事件の弁護団としては、明らかに力不足でした。 ──裁判官はいかがでしょうか? 青木 1審・鳥取地裁の裁判官は比較まっとうでしたが、結局は検察の脆弱な立証を丸呑みして死刑判決を下していますからね。裁判員だって黙秘権の意味をろくに理解していない状態で、これは明らかに裁判長の責任でしょう。鳥取である人に聞いた話ですが、警察にせよ、弁護士にせよ、刑事司法に関わる人々の平均レベルが低いのも地方都市の現実だと。そうなのかもしれません。 ──昨年の12月10日から控訴審が始まり、美由紀は1審での黙秘から一転、口を開きましたが、これはどう考えますか? 青木 美由紀は1審で黙秘権を行使して口を閉ざしましたが、美由紀の弁護団は起訴事実を否認するにとどまらず、「安西こそが真犯人だ」とまで主張していました。驚きの主張でしたが、2審で口を開いた美由紀の証言は、基本的にそれをなぞるものだったといえます。明確に安西が犯人だと言ったわけではないけれど、一緒に暮らしていた安西の事件当時の不審な行動を数々指摘し、誰が聞いても「安西が犯人だ」という内容でした。しかも極めて具体的で詳細。ただ、それはほとんどウソだと思います。  さりとて、1審で安西が証言したことにも明らかにウソが含まれている。安西によれば、美由紀から三つ子を妊娠したと言われて信じていた上、出産予定日を過ぎてから薬物で子どもを小さくして堕胎したと聞かされ、これも警察に教えられるまですべて信じていたと訴えました。もともと安西はやり手の自動車セールスマンで、40代の半ばを過ぎた妻子ある中年男ですよ。そんな安西の主張を信じろというほうが無理です。つまり美由紀も安西もウソをついていて、裁判は真実をほとんど明らかにできていない。 ──控訴審以降の裁判の見通しについては、どうお考えでしょうか? 青木 死刑判決が覆る可能性は極めて低いでしょう。そもそも日本の刑事司法は、検察が起訴した際の有罪率が99%を超え、1審でのわずかな無罪判決すら2審でひっくり返されてしまうことが多い。広島高裁松江支部で始まった控訴審は、裁判長が美由紀に証言の時間を与えましたが、1審で黙秘した被告が2審で証言すると言っているのにしゃべらせないわけにはいかないという判断でしょう。死刑という究極の刑罰がかかった裁判なのに、審理が尽くされていないじゃないかと批判されかねませんからね。従って美由紀の証言を受け入れる可能性は薄いと思います。  ただ、今回の公判は、日本の刑事司法の歪みを照らし出している。先ほども申し上げましたが、今回の事件では、警察・検察側も脆弱な状況証拠しか出せていません。しかも、それを支えているのは、これも怪しげな安西の証言。それなのに死刑判決です。「このままで本当にいいのか?」という私の思いは今も変わりません。 (取材・構成=本多カツヒロ) ●あおき・おさむ 1966年、長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクションライター。共同通信社警視庁公安担当、ソウル特派員などを務めた後、2006年からフリーに。主な著作に『日本の公安警察』(講談社現代新書)、『絞首刑』(講談社文庫)、『トラオ 徳田虎雄 不随の病院王』(小学館文庫)、『国策捜査』(角川文庫)など。最新作が『誘蛾灯 鳥取連続不審死事件』(講談社)。朝の情報番組『モーニングバード!』(テレビ朝日系)のコメンテーターなど、テレビ、ラジオでも活躍中。

マッチョなボディで、便利屋で大成功!? あの“新加勢大周”坂本一生の現在 

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撮影=後藤秀二
 新加勢大周として一世を風靡した、“筋肉タレント”の坂本一生を覚えているだろうか? 鍛え抜かれた筋肉と白い歯が光るさわやかな笑顔がトレードマークだった彼が、便利屋に転身し、ビジネスマンとして大成功を収めているという。そこで、そんな彼の現在を探るべく、取材を試みた。 ――相変わらず、いいカラダしてますね! 坂本一生(以下、坂本) デビュー当時からタンクトップだったんで、それが似合うようなカラダをキープしてます。年々、パワーアップしてるんじゃないかな。元祖筋肉タレントとしてのプライドもあるし、いつ仕事が来てもいいようにね。鍛えてなかったら、そこらへんを歩いてる、ただのおっさんと変わらないし。今いろいろと筋肉タレントがいるけれど、やっぱり黒いタンクトップが似合うのは、俺だと思ってます! ――現在は、便利屋のお仕事がメインなんですか? 坂本 少し前は、芸能界がメインで、この仕事は副業的な感じでやっていたんですが、今ではすっかり逆転しましたね。芸能は仕事が来たらやる、という感じです。 ――そもそも、どうして便利屋に……? 坂本 芸能界という世界にいて、いい時期もありましたし、チヤホヤもされてきました。その後、仕事が減って働かなければならない状況になり、トラックの運転手やとび職、レストラン店長など、さまざまな仕事をしてきましたが、どれも長続きせず、転々としていたんです。将来について悩んでいた時に、たまたま茨城の友達のところに遊びに行ったんですが、そこで東日本大震災に遭い、帰るに帰れず、着る物も食べる物なく困っていたところ、地元の人にいろいろと助けてもらって。そのお礼として、一週間ほど瓦礫の撤去や家の中の片付けの手伝いをしたりしました。僕は昔から世話好きというか、困っている人を放っておけない性格なので、その体験がきっかけで人の役に立つ仕事をしたいなと思うようになり、たまたま知り合いが便利屋を始めるというので、僕も加わったんです。 ――「便利屋!お助け本舗」は、わずか2年半で全国130店舗を構えるほど、急成長しているそうですね。 坂本 ありがたいことに開業当初から依頼をたくさんいただき、世の中にはこんなに困りごとを抱えている人が多くいるんだなあ、と思ったくらいです。 ――便利屋って、どんな仕事なんですか? 坂本 日本中に困っている人がたくさんいるじゃないですか? それを“よかった”に変える仕事です。特に高齢者や女性からの依頼が多いのですが、「便利屋=夫や家族の代理」みたいなイメージかな。 ――本当に、どんな依頼でも引き受けてくれるんですか? 坂本 法に触れないことなら、なんでもやります。ただ以前、男性から“ホテルの一室で水着撮影をさせてほしい”という依頼があったんですが、さすがにそれは断りました(笑)。芸能人としての僕に仕事を依頼するなら、1時間3150円~じゃ安いでしょ? それなりのギャラを払ってもらわないと(笑)。 _MG_4414.jpg ――時間内であれば、いくつかまとめて仕事をお願いしてもいいんですか? 坂本 うちは1時間3150円+出張費2100円、計5250円が基本料金ですが、50分で依頼が終わって、残り10分で何か別のことをしてくれ、というのもOKですよ。 ――どんな依頼が多いんですか? 坂本 季節ごとに変わってきますが、この時期は掃除とか不要品処分、引っ越しのお手伝いなどが多いですね。高齢者の方からは電球交換や荷物の移動、買い物の代行、庭の手入れ。女性の方からは、家具の組み立てやAV機器の配線、重い荷物の移動などが多いですね。 ――これまでに受けた、変わった依頼は? 坂本 食品会社からの依頼で、24時間、提供する食べ物・飲み物を残さず食べ、1時間ごとに体重を量ってほしいという依頼がありました。結果、腹はパンパンで5kg太りました(笑)。また、20年間ためた小銭を銀行に持って行くのを手伝ってほしいという依頼で、梅酒のビン27個分、重さ100kg超の小銭を運んだこともありました。両替するのに丸1日かかり、銀行の人もあきれていましたね。それから、母国語しかしゃべれないアフリカ人を空港に迎えに行くという依頼もありましたね。地下鉄の音におびえて走って逃げようとするわ、電車内で大声で歌いだすわ、公園に連れて行けば鳩を追い掛け回すわ、八百屋のりんごを勝手に取って食べるわで、向こうもすべてが驚きなんだろうけど、こっちはもっとビックリで大変でした……。。 ――便利屋をテーマにした、三浦しをんさんの小説『まほろ駅前多田便利軒』(文藝春秋)が映画化・ドラマ化され、便利屋という職業の認知度も高まっていますが、このストーリーのように、依頼の本筋から外れて、依頼者のプライベートにも踏み込むこともあるんですか? 坂本 基本的にはプライベートなことには首を突っ込みませんが、悩み相談というか、おじいちゃんおばあちゃんの雑談を聞くことはありますね。3年前に亡くなった奥さんの墓の掃除をしてほしいと独り暮らしのおじいさんから頼まれたことがあったんですが、現地に行ってみると墓はすでにきれいに掃除されていて、おじいさん宛てに書かれた手紙が置かれていました。それをおじいさんに渡すと、手紙を読み、すすり泣いていました。事情を聞くと、10年前に勘当し、音信不通になっていた娘さんからの手紙だった、なんてこともありましたね。こんなドラマみたいなこと本当にあるんだと。 ――便利屋という仕事の魅力って、どんなところですか? 坂本 人助けをして、笑顔で感謝されることですかね。腰の曲がったおばあちゃんがさらに腰を曲げながら「ありがとう、ありがとう」と言ってくれるので、とてもやりがいがあります。依頼内容、場所、時間も毎回違って刺激があるので、そういう意味では芸能界に似ているところもあるかな。なにより、大好きな肉体労働だってところが大きいです。僕の天職ですね。 (取材・文=編集部) ●「便利屋!お助け本舗」 <http://otasuke365.com/>

映画ジャーナリスト大高宏雄氏が振り返る2013年 第一期を終えたテレビ局映画と若手監督らの台頭

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『映画業界最前線物語』(愛育社)。各映画会社ラインナップ発表会の様子、人事異動など業界紙ならではの記事から業界の息づかいが伝わってくる。
 「キネマ旬報」で“ファイト・シネクラブ”を連載し、「日本映画プロフェッショナル大賞」を主催するなど独自の視点で映画業界を見つめている映画ジャーナリストの大高宏雄氏。業界紙「文化通信」で2008年4月から12年12月まで、ほぼ毎週にわたって大高氏が連載執筆したコラム「映画業界最前線」が愛育社より『映画業界最前線物語 君はこれでも映画をめざすのか』として出版された。同書に登場するのは人気俳優や有名監督たちではなく、映画宣伝マンや興行関係者といった300人近い映画業界の人々だ。彼らの息づかい、鼻息、嘆息がリアルに感じられ、映画業界の現状がひしひしと伝わってくる内容となっている。大高氏は映画業界のこの5年間の変動をどのように感じているのか? 宮崎駿監督の『風立ちぬ』以外はメガヒットが生まれなかった2013年の映画興行と共に振り返ってもらった。 ──一般の人の目に触れることのない業界紙で連載されたコラムを書籍化した『映画業界最前線』。まとめて読むことで、映画業界がこの5年間で大きく変わったことが感じられます。 大高 この5年間での変動ぶりは本当に激しかったと思います。さらに、この1年でますます進んでいる状況です。もはや1年前にどの作品が当たったかなんて記憶の彼方になっています。ちなみに2012年の最大のヒット作は『BRAVE HEARTS 海猿』です(笑)。この数年間、解散した配給会社や宣伝会社も多かったけれど、大手の映画会社でも人事・組織改革がずいぶん進んでいます。『映画業界最前線物語』を通して読んでもらうことで、業界の激変ぶりが再認識できるはずです。 ──2009年4月6日付けの「初日の光景激変、若い映画マンはこの現状をどう見る」は印象的です。映画の公開初日の風景の変化が映画業界の変化を象徴しているようですね。 大高 私はそう感じています。映画の公開初日といえば、かつては有楽町の日劇やスカラ座といったメイン館に映画会社のトップから営業、宣伝担当者、興行関係者らがみんな集まって、観客の入りを見届けていました。それは単に初日の観客動員数を確かめるという意味だけではなく、自分たちが関わってきた作品を観客へ送り出すことを確認する儀式の場でもあったんです。自分たちが配給宣伝した作品がちゃんとお客さんのもとへ届いているのかを自分たちの目で確かめる意味合いがありました。観客で一杯だったら喜び合い、客の入りが悪かったら自分たちの配給宣伝方法に問題があったのではないかと受け止め、そこから様々な対処法を練るわけです。今は初日に顔を出す関係者は減りましたし、来なくてもいいと言い放つ興行者も出てきました。私がこの仕事を始めた1980年代に比べ、映画業界の人間関係がとても希薄になっているように感じますね。 ──映画の初日は、関係者が集まって情報交換する場でもあったそうですね。 大高 他の配給会社の作品の予告編の上映まで観て、本編が始まるとみんなで近くの喫茶店やレストランなどに移動して、そこでいろんなことを話し合ったものです。まだ若手の記者だった私もその中に加わって勉強させてもらいました。かつての映画宣伝マンや営業マンは映画に熱い意識とプロ的な考え方を持っている人が多く、とにかく面白かったですね。普段はなかなか話し掛けられない映画会社のトップにも、そういう場では気軽に話を聞くことができたんです。公開初日というのはどれだけ観客を動員できたかということ以上に、映画業界の人間にとっては特別な日でもあったわけです。 ──都市型シネコンが主流となって興行形態が変わり、メイン館の意義も薄らいでいます。 大高 かつては日劇やスカラ座が満席だった、7割の入りだった……というメイン館のデータが全国興行の目安になっていました。今は新宿ピカデリーが日本最大の集客数を誇るシネコンなのですが、新宿ピカデリーをはじめ、TOHOシネマズ日劇、TOHOシネマズ渋谷といった都市型シネコンの集客が良くても地方の劇場はガラガラということがザラなんです。メイン館を覗くだけでは、その作品がお客に届いているのかどうか見極めることが非常に難しくなっている。話は全く変わりますが、最近感じることがあるんですよ。多くの人に映画に関心を持ってもらおうと私はここ数年ツイッターを通して興行情報を発信してきましたが、最近はあまりに興行面ばかり重視する風潮が広まっている気がしてならない。2013年でいえば、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』や松本人志監督の『R100』は興収結果だけに異様に話題が集中してしまった。作品を観ないで、数字だけで作品の善し悪しを判断するのはどうかと思います。映画の興収はもちろん重要ですが、作品のクオリティーは興収結果によって貶められるものではありません。私は松本人志の才能を買っており、『R100』を楽しく観ることができました。指摘すべきは、その届け方なんですね。 【2013年 年間映画興行上位作品】 1位 風立ちぬ 120億円 東宝 2位 モンスターズ・ユニバーシティ 89億6000万円 ディズニー 3位 ONE PIECE FILM Z 68億5000万円 東映 4位 レ・ミゼラブル 59億円 東宝東和 5位 テッド 42億4000万円 東宝東和 6位 ドラえもん のび太のひみつ道具博物館 39億8000万円 東宝 7位 名探偵コナン 絶海の探偵 36億3000万円 東宝 8位 真夏の方程式 33億1000万円 東宝 9位 謎解きはディナーのあとで 32億円 東宝 10位 ポケットモンスター ベストウィッシュ 神速のゲノセクト ミュウツー覚醒 31億7000万円 東宝 (文化通信社調べ) ──宮崎駿監督の引退作『風立ちぬ』に話題が終始した感のある2013年の映画興行はどのように見ていますか? 実写映画のヒット作が少ないことが気になります。 大高 2012年は『BRAVE HEARTS海猿』『テルマエ・ロマエ』『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』と興収上位3本をフジテレビ作品が独占しましたが、2013年は『風立ちぬ』『モンスターズ・ユニバーシティ』『ONE PIECE FILM Z』とアニメ作品が上位を占めています。テレビ局映画が低迷した年だと言えるでしょうね。『踊る大捜査線THE MOVIE』(98)の公開から15年。テレビ局映画は確実に一巡した感があります。第1期が終わり、テレビ局映画は新しい鉱脈を探している過渡期にあると言えるんじゃないですか。フジテレビは今後は三谷幸喜や周防正行といった個性のある監督をブランド化した作品を作っていく腹づもりのようです。フジテレビが中心になって製作した是枝裕和監督の『そして父になる』も、その一環と見ることができる。是枝監督としてはこれまでで最高の31億円を越えるヒットを記録しました。ただ、監督のブランド化といっても、メガヒットはどうでしょうか。60億〜80億円のメガヒットを狙うには、やはり『海猿』や『踊る』のようなイベント的要素の強い娯楽作でないと難しい。木村拓哉や福山雅治に続く、新しいスター俳優をテレビ局は育てられるのかということも今後のポイントになるでしょう。また、以前から指摘していることですが洋画離れが激しい。『テッド』の大ヒットが一過性で終わってしまった。邦画はまだテレビと連動させたり人気キャストを配することでアピールできますが、洋画は若い層に目を向かせることがますます難しくなっていますね。 ──興収ランキングとは別に、2013年を代表する作品はありましたか?
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大森立嗣監督の『ぼっちゃん』。川越スカラ座で12月27日(金)まで上映。また2014年2月からロケ地となった長野県佐久市での公開が決まっている。
大高 映画の面白さは、そこに張りめぐらされている多くのヒエラルキーをひっくり返してみせることだと私は考えています。パッと出てきた新人監督の作品が巨匠の作品より高い評価を浴びることもあるわけです。その意味合いで言うと、今年見事にそのヒエラルキーをひっくり返してみせたのは白石和彌監督です。長編2作目となる『凶悪』のヒットで、映画賞レースの先頭を走っています。もうひとり、大森立嗣監督も私は高く評価しています。真木よう子が輝いた『さよなら渓谷』もいいけれど、個人的には大森監督が『さよなら渓谷』とはまったく異なる作風の『ぼっちゃん』を同年に撮ったことを特筆したい。秋葉原無差別殺傷事件を題材にした『ぼっちゃん』は全く予測不能の作品。これまでのどの作品にも似ていない興奮がありました。大森監督はデビュー作の『ゲルマニウムの夜』(05)がかなり叩かれたけど、ようやく表舞台に立った感がありますね。白石監督は若松孝二監督のもとでキャリアを積み、大森監督は荒戸源次郎のプロデュースでデビュー。若松孝二、荒戸源次郎という2人の映画異端の遺伝子をそれぞれ受け継ぐ若い監督がメインストリームに出てきた。これがヒエラルキーの転覆でなくて何でしょう。山下敦弘監督の『もらとりあむタマ子』も素晴しい作品でした。『苦役列車』(12)を経て、山下作品は新しい表現世界に入ってきたように思いますね。映画の現場から叩き上げで這い上がってきた監督たちが実力を発揮し始めたことは、今年の日本映画界の大きな収穫です。
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ロングランヒットを記録した実録犯罪映画『凶悪』。白石和彌監督は報知映画賞、新藤兼人賞などを受賞し、映画賞レースを席巻している。
──『映画業界最前線物語』の表紙を飾っているのは2013年3月に閉館した銀座シネパトス。アナログからデジタルへと映画館のシステムが切り替わった時代の象徴として表紙にしたのでしょうか? 大高 いや、私の勝手な個人的思い入れです(笑)。シネパトスもまたヒエラルキーをひっくり返してみせた存在だったんです。地下鉄の振動音などを含めた環境面から、劇場としては低く見られていたシネパトスでしたが、鈴木伸英支配人のときに3スクリーンのうちの1スクリーンを名画座として旧作の特集上映を積極的に行なったことから、評価が上がったわけです。シネパトスは映画館の夢だったのではないですか。私が発起人となって始めた「日本映画プロフェッショナル大賞」ですが、実はシネパトスのロビーにいるときに思いついた映画賞でした。当然、「日プロ大賞」もヒエラルキーをひっくり返すことが狙いです。メジャーな映画賞から漏れてしまったインディペンデント系の映画を顕彰しようという趣旨は“敗者復活戦”でもあるんです。映画の世界に憧れる若者たちは『映画業界最前線物語』を読んだ上で、「ふざけるな」と思いながらも、ぜひ業界を目指してほしいですね。業界のヒエラルキーをひっくり返すような人材を待ち望んでいますよ。 (取材・文=長野辰次) ●おおたか・ひろお 1954年静岡県浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、文化通信社に入社。92年から「日本映画プロフェッショナル大賞」を主宰。「キネマ旬報」のほか、毎日新聞で「チャートの裏側」、日本映画専門チャンネルガイドで「大高宏雄の今日の太鼓判」などを連載中。主な著書に『仁義なき映画列伝』(鹿砦社)、『映画賞を一人で作った男 日プロ大賞の18年』(愛育社)、『日本映画 逆転のシナリオ』(WAVE出版)など。 bochan_02.jpg 『ぼっちゃん』 真木よう子主演作『さよなら渓谷』が高い評価を得た大森立嗣監督のインディペンデント魂が炸裂した作品。秋葉原無差別殺傷事件をモチーフに派遣労働者の過酷な状況を描きながらも、観る者の予想を覆す展開をみせる。 脚本・監督/大森立嗣 出演/水澤紳吾、宇野祥平、淵上雅史、田村愛ほか 配給/アパッチ 全国順次公開中  (c)Apache Inc. <http://www.botchan-movie.com> kyoaku02.jpg 『凶悪』 死刑確定囚が告白した未検挙連続殺人事件の顛末を追った実録犯罪もの。血縁も地縁も崩壊した都市郊外の風景が異様に寒々しい。 原作/新潮45編集部編『凶悪 ある死刑囚の告発』 脚本/高橋泉 監督/白石和彌 出演/山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキー、池脇千鶴、白川和子、吉村実子ほか 配給/日活 R15+ 全国順次公開中 (c)2013「凶悪」製作委員会 <http://www.kyouaku.com>