
左から川原克己、瀬下豊(撮影=後藤秀二)
2013年の『キングオブコント』ではお寿司のかぶり物で登場、見たことのない世界を展開し、お茶の間をざわつかせた異能のコンビ、天竺鼠。川原が放り込む暴投気味のナックルボールを、苦笑いしながらもガッチリ受け止める瀬下。そのクセになるコントは、東京をジワジワと侵食しつつある。真逆な二人がコンビを組むきっかけから、単独ライブにかける思いまで、聞けば聞くほど分からない! 天竺鼠という現代の謎に迫る。
――天竺鼠さんは毎回、単独ライブのタイトルが独特ですよね。「交通手段バイクの人限定ライブ」(2009年)とか。本当に信じてしまうお客さんもいたんじゃないですか?
川原 何人かいたそうです。吉本のほうに「あのう……歩きなんですが……」と問い合わせの電話があったと。考えてみたら、確認のしようがないですね。
――「便秘のお客さん限定ライブ」(2010年)も、なかなか確認が難しい。
川原 それも何人かいらっしゃったようで、揉めたと……。でも、それも踏まえてライブですから。
瀬下 今回は「単独のタイトルはみなさんにおまかせします」ですから、みんないろいろ考えるんでしょうね。
――「シュール」やら「独自の世界観」やらと表現されることが多い天竺鼠さんですが、そういう評価に対して、ご本人たちはどうお考えですか?
川原 いや、僕はすべてベタだと思ってやってますね。その基準もまた、人それぞれですからね。何がシュールか、何がベタか。僕は僕のベタをずっとやってるだけです。
瀬下 僕にとっては「シュール」というより、ホンマに分かりません。
――謎なんですね(笑)。
瀬下 ホンマに意味が分からないんです。誰よりも先にネタを見るのは僕ですが、おかしくてずっと笑ってますね。だからネタ合わせというよりは、笑わないようにする練習。
――お二人は高校時代からの付き合いと伺いましたが、なんというか……当時から、川原さんは川原さんでしたか?
瀬下 ちょっと、質問の意味が(笑)。川原は川原でしたよ。こんな感じで。ずっと変わってないです。
川原 小学校中学校は、ずっといじめられてましたよ。
――周囲に理解されず?
川原 いじめられたというよりは、避けられてました。気持ち悪いって。
瀬下 こういうことを平気でラジオでも言うので、周りの雰囲気が暗くなったりしますけど、でもそういうのもコイツには関係なしなんです。
――瀬下さんの第一印象は?
川原 真逆やったんです。こっち(瀬下)はグループ作って、ヤンチャしてはケラケラ笑ってた。僕は部屋で国語辞典を引いてるタイプの人間だったんです。一体何が面白いのかなと。
瀬下 こっちのセリフですよ。こいつの家に行って部屋をバッて開けたら、3人くらいで国語辞典開いてニヤニヤしてる(笑)。
――変な言葉を調べて笑っていたんですか?
川原 違います。どちらかというと普通の、「テニス」とか。で、今度はテニスの説明にあった「隔てる」を調べて……と、暇つぶしの無間地獄です。
――(笑)。そんな真逆のニ人がコンビを組んだんですね。
瀬下 地元の友達には、「意外といいのかもね」って言われます。

――芸人を目指したきっかけは?
瀬下 もともとお笑いは好きでした。だけど芸人なんて頭にもなくて、僕は大阪に出て就職しました。でも、お笑い芸人を目指している川原を見ていたら、僕もめっちゃやりたくなって。
川原 僕はベタに高校の学祭ですかね。僕、野球部だったんですけど、先輩らがコントをやるって言ってて「川原、この台本見てくれ」って頼まれたんです。で、それが全然面白くなくて、全部変えた。全部変えたら、先輩たちが「え……分からん」ってなって、「じゃあ、お前出てくれ」ということに。
――ちなみに、それはどういうネタだったんですか?
川原 なんだったかな……みんながラッツ&スターみたいに顔真っ黒に塗って出てるのに僕だけ塗ってなくて、だけど誰もそれを触れない、とか。
――(笑)。反応はいかがでした?
川原 それが結構良かったんです。それから野球部の打ち上げのときは、「監督の話」「来賓の挨拶」と並んで「川原の漫談」を入れられるようになりました。だから、なんか前のめりで「僕にやらせてくれ」というよりは、そういう環境が増えていったという感じです。
――お姉ちゃんが勝手にジャニーズ事務所に書類を送った的な。
川原 そうですね。
瀬下 フフフ(笑)。
川原 本当は、教室の隅っこでずっとニヤニヤしてるだけでよかったんです。みんなが悪ふざけしているのを見て、「今お前が出ろ」とか「お前は一言多かったぞ」みたいなことを思いながらニヤニヤしてたんですよ。それだけでよかったんですけど、今はそこに自分も入ったような状況ですね。
――プレイングマネージャーですね。
川原 そう。だから、たぶんコントが多いんだと思います。もっとしゃべって笑かす感じだったら漫才をやっていたんでしょうけど、そうじゃなくて、「今こういうヤツが出てきたらオモロいのにな」みたいなのを脳みそで勝手に遊んでいて、それをいま、実際コントとしてやっているので。
――瀬下さんはその川原さんの世界の住人として、突然ポンと置かれるわけですね。
瀬下 僕は誰よりも一般人としてそこにいるので、そのおかしな世界とお客さんとの橋渡しができればいいと思ってます。
――お客さんの反応は、東京と大阪では違いますか?
川原 まぁ単独に関しては、大阪のお客さんのほうが免疫がありますからね。
――免疫ですか?
川原 僕の中ではお客さんに「一体これはなんの時間だったんだろう」「何を見せられたんだろう」って首をひねりながら帰ってもらうというのが、一番のコンセプトなんです。でも、単独を何度かやっていくうちにだんだんお客さんが慣れてきて、どんだけ間を使っても変なことしても「なんの時間だろ」とは思わなくなってきてる。その分、東京はまだ単独をやっている数が少ないので、驚きも新鮮ですね。大阪のお客さんは、結構待ってくれてしまう。

――これは何か来るなと。
川原 1時間のライブでオープニング20~30分出てこないという事態でも、お客さんはずっとニヤニヤして待っててくれるんですよ。いや、誰かに怒ってもらったり、「これなんの時間やねん」っていうツッコミを期待してるんですけど。それで、その日のアンケートを見たら「1時間出てこなくても面白かったかも」って、お客さんのほうが強くなってる。
――耐性がついているんですね(笑)。ちなみに、そのオープニングの20分は何をされていたんですか?
川原 楽屋風景のVTRを流してて、今からですよ、お客さん入ってますよ、という状態で「よっしゃ行くぞ」「今から舞台行きます」っていうのを20分。タバコ吸ったり、「行きたくない」ってダダこねたりするのを、ひたすらお客さんが見てるという。基本的に、その単独でしか見れないというネタも多いですよ。賞レース向けに作るというのがないので。だから、単独どんだけやってもネタが増えないんです。
――ライブで仕上げて賞レースで披露するという流れが、一般的かと思うのですが。
川原 単独2~3回やって、その中で一つ、マシなものができたらラッキーという感じです。
――なんか……職人の仕事ですね。
瀬下 (笑)。
川原 確実にプロのやり方ではないですね。何も考えてないので。まるで子どものようです。
――子どもがレゴで何か作っては片っ端から壊していくような。
川原 そうですね。最初からキリンを作ろうと思って作っているのではなく、色だけで選んでむちゃくちゃに作っていて、途中から「アレ……これってキリンになるかも」と発見するような。
瀬下 僕らは、ネタ合わせ自体をガッツリしないんですよ。縦の流れだけ確認して、ツッコミフレーズは自分で。川原は「俺がここでなんかやるから」「なんか言うから」って言うだけ。書面で台本もらったことないです。すべて口伝え。
――去年(2013年)の『キングオブコント』のネタも、そうして生まれたんですか? 2本目の交通事故のネタが特に大好きです。
瀬下 あれは本当に音効さんがすごいんですよ。
川原 あのネタも台本がないので、何度か仕事したことある音効さんに来てもらったんです。その時その時で毎回違うから、本当に音効さんには申し訳なかったですね。全国ネットの生放送で。
瀬下 終わった後、泣いてましたよ。プレッシャーで。
川原 ブラマヨの吉田さんに「あれ、音効さんがお前に合わせて音出してんやろ?」って聞かれて、「はい」って言ったら怒られましたよ。「かわいそうすぎるやろ」と。
瀬下 確かに(笑)。
川原 僕は「全然間違っていいよ」って言ってるんですけど、音効さんは「(間違ったら)立ち直れないかもしれないと思っていた」と後から聞いて「ほんまにそうやな」と思いました。
瀬下 演者が一番緊張するはずなのに、音効さんのプレッシャーを考えたら、ちょっと自分の気持ちが楽になりましたもん(笑)。
――そんな2013年の『キングオブコント』が堂々の3位。2008年の6位、2009年の7位から順位を上げてきました。
川原 あれ? まだ優勝してませんでした?
――ウィキペディアによると……まだです。
瀬下 ウィキペディア信じすぎでしょ! いや、そこは信じていいけど!

――決勝進出ならずだった2010年、11年、12年の3年の間に何か心境の変化はありましたか?
川原 最初に出させてもらったときは残ると思ってなかったから、それこそラッキーって思って、2回目もまた出られる、ありがたいなと。そこからちょっと、さっきの話じゃないですけど『キングオブコント』の決勝に残れるネタ、みたいなのが頭にチラついたんですね、作るときに。そこからダメになりましたね。(決勝に)残れなくなって、あぁもういいや!って吹っ切れたのが2013年でした。結局、何かに向けてネタを作っていくと、作り方がよく分からなくなってしまう。
――肩に力が入ってしまうと。
川原 やっぱり好きなことしようっていう考えに戻ったときに、それが選ばれました。
瀬下 出てしまうんでしょうね、何かが。
――そう考えると、今年の『ABCお笑いグランプリ』優勝がもたらしたものは大きそうですね。
川原 あれもネタ自体が好きなネタだったので、それがたまたま賞レース向けのネタになっていたという。
――賞レースに向いているネタって、どういうタイプのものなのでしょうか。
瀬下 それが分かってたらね……(遠い目)。
川原 でも、10年間やってきて、やっとちょっとは分かってきましたよ。『ABC』の優勝は、ネタを選ぶ際に間違えずに出せた結果だと思います。賞レースのにおいみたいなものが。少しは大人になりました。
――2014年の『キングオブコント』に向けて、何か秘策は?
川原 とにかくネタのセレクトを間違わないことですね。気を抜くと、好きなのばっかり持っていってしまうから。
――ネタのセレクトで揉めることはないんですか?
瀬下 ないですね。川原は絶対的平和主義者だから、ケンカになりません。あと僕、野球部でキャッチャーだったので、受け止めるのが苦じゃないというのもある(笑)。まぁ(どのネタがくるか)予想はしてるんですけど、「あ、これなんや」っていうときも正直多いです。ちなみに1本目のお寿司のネタは「それなんや」系(笑)。あぁ全国の賞レースで、それきたかと。でもやってみないと審査員やお客さんの反応は分からないし、楽しいですよ。だってどっちかですから。思いっきりアカンのか、ハネるか。だから覚悟は決めやすいです。
川原 僕、たまになすびの格好してるんですけど、『キングオブコント』ではお寿司になったので、街で「あ! この間お寿司やってた、なすびの人だ!」って、よう分からんことになってました。
瀬下 川原どこいってん(笑)。
川原 でもね、みんなそうやってめちゃくちゃになったらいいかなと。何をしてるなんなのか。もう一体なんなんの? っていうのが最終的なゴールですね。この人らはこういう人らだっていうふうにならないように、ならないようにっていうか、皆さんの脳みそで「あれはこういうことかな?」と考えてもらえれば。僕がお客さんだったら、そうしたいから。
――まるで宇宙の存在のような。
川原 宇宙に怒られますよ、お寿司してるだけなのに(笑)。
瀬下 「天竺鼠は宇宙」とか記事にされたら、いよいよ頭おかしくなったと思われる(笑)。
川原 時期が時期だけに、よからぬものを服用していると思われてしまう! そうじゃなくても、なすびとお寿司を見たおばあちゃんから「帰っておいで」と心配されてるのに。
瀬下 ガチのトーンでな(笑)。
(取材・文=西澤千央)
●天竺鼠単独ライブ「単独のタイトルはみなさんにおまかせします」
出演:天竺鼠
日時:2014年6月22日(日)
場所:ルミネtheよしもと
時間:19:00開場・19:30~21:00本番
料金:前2300円・当日2500円(全席指定)
Yコード:999-050
・チケットよしもと 予約・お問い合わせ(東阪共通)
<http://ticket.yoshimoto.co.jp>
TEL:0570-550-100
(お問い合わせは10:00~19:00)
・チケットぴあ
<http://t.pia.jp/>
Pコード:597-721
TEL:0570‐02‐9999
・ローソンチケット
<http://l-tike.com/>
TEL:0570-000-407
Lコード:35212
・イープラス
<http://eplus.jp/>
●「なすびのたべれないフィギュア」
発売日:6月22日(日) ※数量限定発売
販売場所:よしもとテレビ通り なんばグランド花月店/よしもとテレビ通り 新宿店/よしもとプレミアムショップ
<http://yoshimotoclub.jp/>
販売価格:1,200円(本体価格1,111円)
★
6/22(日)天竺鼠単独ライブ「単独のタイトルはみなさんにおまかせします」 公演終了後、「発売記念なすびとの撮影会」を行います(21:30頃からを予定しております)。当日、よしもとテレビ通り新宿店において「なすびのたべれないフィギュア」をお買い求めのお客様に「整理券」を配布いたします。
※先着名様に達しましたら締め切らせて頂きますのでご了承ください。
※フィギュアを複数ご購入頂いた場合も、整理券はお1人様1枚とさせて頂きますのでご了承ください。