マテンロウ・アントニー×デニス・植野行雄 「若手」高齢化社会の“ハーフ芸人”という番外地

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撮影=後藤秀二
 総勢100名の若手芸人が本気の勝負を繰り広げるよしもと大運動会、通称“ラフスポ”。パンサーら人気若手芸人がファンから黄色い声援を浴びる中、粛々とレポーターの仕事を務めていたのがこの二人。マテンロウ・アントニーとデニス・植野行雄。ハーフ芸人という独自のポジションを得た彼らから見える、現在の若手芸人事情とは――。大運動会に負けず劣らず、熱い戦いがそこにはあった。 アントニー (DVDのパッケージを眺めながら)お気づきの通り、DVDのプロモーションする割には、僕らが端っこにしか写ってないというね。 ――お二人は『LAUGH SPORTS FES 2014 in CHIBA~よしもと若手“ほぼほぼ”オールスターズ大運動会』スペシャルレポーターですから。 アントニー しかしね、まさかワールドカップの真裏でこんなことをやるとは……。 植野行雄(以下植野) そう! 日本戦の一番大事な試合のとき(対コートジボアール戦)にね。よしもとも勝負に出たなと思って。 アントニー そんな中で、このイベントに足を運んでくれたわけでしょ。これは背負うものがデカい。 ――ワールドカップよりも素晴らしいものを見せないと。 アントニー 日本で認められたサッカー選手たちと、よしもとからも認められていない芸人たちとね。 植野 アントニーなんか、みんなにイジられてな。運動会が始まる前、ホテルのテレビで試合を観戦してたんですよ。みんなが日本を応援している中、アントニーだけコートジボアールを応援せなあかんみたいになって。コートジボワールがファールしたら……。 アントニー 僕に向かってブーイングですよ。 ――しかし、ワールドカップに負けず劣らず、熱い大会でした。 アントニー 熱いというか、暑かったです。ここでは「若手」と銘打ってますけど、基本的にみんな30過ぎてるんで。スタミナのほうが後半キツかったですね。一番印象に残ってるのは、行雄ちゃんとの二人三脚。何回もフライングしてね。 植野 はたから見たら、単に囚人が逃げてるだけという。 アントニー 鎖でつながれて(笑)。 ――いいコンビネーションを発揮されてました。 植野 でも、やっぱり足速くてキャーキャー言われたいですよ。もう一回運動し直そうかなと、終わった後にマジで考えましたもん。 アントニー インポッシブルの井元さんとかチョコレートプラネットの長田さんとか、カッコ良かったっすよね。 ――長田さんは、体つきもすごかったです。 植野 トップアスリートの体つきしてますよね。なんでやねん(笑)。 アントニー あとはパンサー向井さんと尾形さん。期待を裏切らない。ただ菅さんだけは、マジで使えなかったですけどね。俺より足遅いとかどういうこと? ――何かとんでもない事件などはありましたか? 植野 事件というか、ファンの子と木陰で談笑してる芸人の多いこと!! ホンマ、これなんなん? って。 アントニー 俺と行雄ちゃんが二人で歩いてても、誰も近寄ってこないのに。 ――ファンにとっては、夢のようなイベントですよね。 植野 めっちゃ近寄れるし、フリーでしゃべれますもんね。でもファンの子たちはね、俺らを見て「一応……写真撮っとくか」だけなんですけど。 アントニー 一番分かりやすい記念としてね。自分が喜ぶ写真ではなく、友達に見せる用。 _MG_9446.jpg 植野 でも、僕らが出場することで、来年あたりから世界戦になるかもしれませんよ。どっかのアメリカのコメディ事務所みたいな。 アントニー 「面白いおじさん達チーム」「情熱トライアングルズ」「おしゃべり野郎Aチーム」「チーム★スーパールーキー」と、もう一つ僕らが作りましょう。ハーフのやつらを集めて。 植野 今後、もっと広がる可能性ができましたよね。もっとワールドワイドに。 アントニー とはいえ、「面白いおじさん達チーム」はやっぱり面白かった。意外に大西ライオンさんが足速かったり。あと、先輩なのに、お昼ご飯のカレーをみんなによそってくれた。 植野 しかし、あの人たち、なんでそんなにしゃしゃんねや! ていうくらいしゃしゃってましたよ。芸歴3年目くらいの若手がいるのに、あの人たち18年目とかザラですよ。 アントニー しかも、競技じゃないところでグイグイくるんですよ。競技のときは満身創痍。全員どっか痛そうにしてた(笑)。 ――芸歴15年差をものともしないというのが、なんというか山本昌みたいです。 アントニー ……たとえが、おばさんですね。 ――(笑)。「若手」と一口に言っても、それぞれですね。 アントニー NSC2期生が若手だったら、僕らはなんなんだっていう……。 ――芸人さんの中で「若手」とは、どれくらいの芸歴のことを指すんですか? アントニー 都合よく、誰もが「売れるまで若手」って言いますね。そういうシステムじゃないですか。ピースさんとか見ると、「若手」って感じしないですもん。 植野 フットの後藤さんあたりが「中堅」とされてますからね。 アントニー 若手の高年齢化は、いかんともしがたいものがありますよ。 ――厳しい問題です。 植野 でもね、このイベントも護送車みたいなバスに乗せられてくるわけですよ。50人乗りのバスに50人で乗ってくる。詰め込まれて、補助席も使って。そこでまず疲労困憊なんです。朝も早くから千葉の奥地まで。あれに耐えられたら、みんな「若手」ですよ。 ――でも考えてみたら、たくさんの芸人さんがいる中で、これに出られるという時点でかなりの実力者ですよね。 アントニー そんなことはない(笑)。 植野 いやいや、結構絞られてるで。 アントニー そんな栄誉のメンバーですか? 植野 栄誉のメンバーよ。若手大注目枠やで。 アントニー でもまぁ、いま若手としてこれに出て、がむしゃらに運動して“いつか売れるぞ!”って思ってやってましたけど、どんなに頑張って売れても、これは続くんだと悟りました。 ――今回もいくつかチームに分かれて競い合っていましたが、実際に若手芸人の中でも派閥みたいなものはあるんですか? 植野 あ、でも(後輩を)連れていってる人は連れていってますよ。(派閥を)作ってる人は作ってる。 ――お二人はいかがですか? 植野 いや、ないですね。組織的にはフリーでやってます。フリースタイルで。 アントニー 行雄ちゃんは一匹オオカミタイプだから。 植野 一匹オオカミではないけど、仕事終わりにご飯行ったりはしますよ。ライブ終わりにそれこそハイエナ的に「ご飯行きませんか?」って言われたら、そりゃ行くしかないでしょう。 ――もちろん先輩がおごるわけですよね? _MG_9522.jpg 植野 だからね、このDVDに出てる先輩方も大変だと思うんです。「じゃ、飲み行くか?」って居酒屋に行くじゃないですか。そうすると、たまに二次災害があるんですよ。行った店に、さらに後輩がいるという。そうなると、そっちもおごらないけないんで。 アントニー 「遠くの飲み屋に行く」っていうのは鉄則だよね(笑)。 ――先輩後輩だけじゃなく、「売れてる」「売れてない」という要素がからんでくると、また人間関係が複雑になりそうです。世間的な認知度がそんなに高くない先輩との付き合い方で、苦労されることはないですか? 植野 ここ(劇場)に来たら、めちゃフラットなんです。 ――劇場での認知度とテレビの認知度は、必ずしもイコールではないですもんね。そこがまた悩ましいところではないかと。 植野 そこは本当にハーフで良かったと思うところです。 アントニー あんまり気にしないで済むから。 植野 「オイ、前説やっとけヨ」って軽口がたたけますし、先輩たちにとっても僕らはライバルじゃない。枠がちゃうから。 アントニー あいつがテレビに出てるからといって、俺の枠が奪われているわけじゃないと。 ――テレビには「枠」や「席」があるんですね。 植野 最近はあんまりないですけど、「ハーフ芸人」の頃とかね、「植野さんにホンマ出てほしいんですよ~」って言われてた仕事がどうしてもスケジュール合わなくて受けられなくて、ある日テレビつけたら、その番組にしれっとアントニーが出てましたからね。 アントニー もう、どっちでもよかったんだろうね(笑)。 植野 同期やし、しゃあないなと。家も5分くらいのところに住んでるしな。 ――まさに、スープの冷めない距離ですね。 アントニー ……先ほどから、たとえがおばさんですよ。 植野 (笑)。しかも、間にチャドさんも住んでる。 アントニー 外国人に優しい町だよね。 ――やっぱり『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「ハーフ芸人」でのブレークはすごかったですよね。本当に、テレビで見ない日はないというくらいに。 アントニー 1回の出演によるインパクトが強いだけなんですよ。自分たちでは「1回で3回分」って呼んでます。 ――ワールドカップもブラジル大会ということで、植野さんはそこでもご多忙だったのではないですか? 植野 そうですね。マルシアさんとサバンナ八木さんとの三つ巴で(笑)。 アントニー なんか最近、行雄ちゃんの笑顔が止まらないんですよ。 ――どうしてですか? アントニー お笑いのギャラって、しばらく後の入金なんですよ。 ――なるほど! アントニー 今まで買い物も全然してなかったのに、最近急に買いだしたよね? あと引っ越すって言いだした。 _MG_9438.jpg ――(笑)。お二人は今、どんな芸人さんを目標にしているんですか? アントニー それよく考えるんですけど、本当に前例がないので……。 ――パイオニアですもんね。 植野 開拓しているところが正しいのかどうかは分かりませんが。そもそも、ほかの芸人さんと戦ってないもんな。僕ら戦ってるの、ふなっしーですから。ゆるキャラがライバル。 アントニー だから新しい何かが出てきたら、僕らはいなくなってますよ。 ――そんなことないですよ。 アントニー じゃあ聞きますけど、今、せんとくん好きな人います? ――……。 アントニー この無言が答えですよ。3年後、「いたね?」ってなってますよ。 植野 いや、俺は絶対に生き残る! チャンスだと思ったら、周りを蹴落としてでも前に出ますよ。ブラジルサッカーですから。 アントニー 番組に二人で出るとき、行雄ちゃんは「今日のこの仕事は大事だ」って、入念な打ち合わせを持ちかけてくるんですよ。「じゃあこういう場合はこうして……」「せやな。最初から飛ばさんと、徐々にいこか」とか話しておきながら、番組が始まった途端、めっちゃスタートダッシュするんです(笑)。それからも絶対にボールを離さない。ブラジル人の悪いクセだ。 植野 今、マサイ族のハーフでリロイ太郎っていうのも出てきてるんです。だから「最近のハーフ芸人はどうですか?」とか聞かれると率先して「いや~、リロイ太郎っていうマサイ族のハーフがいて~」って話題にしちゃうんです。 アントニー ……最低ですよ。 植野 そうすると、リロイ太郎はテロップに出るじゃないですか。リロイは「植野さん、名前出してくれてありがとうございます!」って感謝して、僕は「いや、ええよ。仲間やから」って言う。 ――いい話じゃないですか。 アントニー だけど、リロイはテロップ出て終わりなんです。番組に呼ばれることはない。面白い話は、行雄ちゃんがバラしちゃってるから。 ――悪い先輩だな~。 植野 でもね、当時ハーフの話してるやつなんか誰もいなかったんです。それが(「ハーフ芸人」以降)他事務所のハーフも一斉に「こっちだこっちだ」って向かってきた。だってみんなそれなりのエピソードは持ってるから、それをワンテンポずらすだけでいい。ハーフ芸人集めたネタ見せなんか、全員が全員同じネタですからね。「切れるぞビザが」とか「来い(濃い)よ!顔が」とか。 ――でも、芸人さんに限らず「自分だけでも……!」という気持ちは大切だと思います。 植野 僕だけかもしれないですけどね、性格悪いのは(笑)。ただ地を這ってでも売れたいとは思います。 アントニー このDVDを見ても分かると思いますけど、いい年した大人が地を這いながら、それはそれは一生懸命バカなことをやってます。 植野 言ってみれば「次世代」じゃないですか。面白い人はもちろん、イケメンもいっぱいいる。DVDを見て興味を持った方は、ぜひ劇場のほうに足をお運びください。 アントニー 外人もいますしね。これはニッポンの縮図ですよ! 植野 ホンマに金なくても、こんなに楽しく遊べんねんなと実感しました。食券獲得も、戦いでしたよ。ウワサで「食べ物のタダ券もらえるらしいぞ」って聞いて、いろいろ聞き込みして、担当のスタッフさんにたどり着いたらやっともらえる。なんやねん、そのシステム! アントニー なんで行きのバスで配らないんだ! 植野 あわよくば渡さんとこという、その精神……。 アントニー This is YOSHIMOTO! (取材・文=西澤千央) ●『よしもと若手“ほぼほぼ”オールスターズ大運動会』 2014年10月8日(水)発売 価格:2,315円+税 発売元:よしもとアール・アンド・シー 6月15日に千葉県・生命の森リゾートにて、約2年ぶりに開催された『LAUGH SPORTS FES 2014 in CHIBA~よしもと若手“ほぼほぼ”オールスターズ大運動会~』をDVD化。約50組、総勢100人の若手芸人たちが4チームに分かれて、本気の運動会で勝負!

「奥さんさえいれば、友達なんていらない」テレビでは見られない“黒蛭子”の極端すぎる人づきあい観

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 最近『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』(テレビ東京系)がきっかけで再ブレーク中の蛭子能収。テレビへの出演歴もだいぶ長いのに、いまだに画面の中で異様な雰囲気を放っていて、なんだかモヤモヤした気持ちにさせられます。  そんな蛭子さんが『ひとりぼっちを笑うな』(KADOKAWA)という本を出版した。要は「友達がいなくたって、別にいいだろ」というような内容で。納得できるようなできないような……とにかくテレビでヘラヘラしている蛭子さんとは一線を画した、邪悪な蛭子さんが見え隠れする一冊なのだ。  「蛭子伝説」と呼ばれるような危険なうわさも多い蛭子さんにとっての「人づきあい観」って、どんなものなのか!? 聞いてみました。 ■友達なんていても、あんまりいいことはなかった ――テレビとかのイメージでは、蛭子さんってあんまり自分語りをするイメージがなかったんですが、今回この本はどうして出そうと思ったんですか? 蛭子能収(以下、蛭子) 広島でLINE殺人っていうのがあったでしょ? 友達とモメて殺されちゃったっていう。そういった、友達や仲間を作ることによってマイナスになることもあるんじゃないかな……っていうことを伝えたかったんです。 ――世の中的には「友達や仲間がいっぱいいるのはいいことだ」っていう風潮がありますよね。 蛭子 でも、その友達というのは、実は恐ろしい存在であったり、自分の自由を奪う存在であったりする可能性があるから、もう一度、友達というものを考えてみませんか? ということなんですよね。 ――蛭子さんは「友達がいて助かったな」みたいなことはなかったんですか? 蛭子 ううーん……うん、そういう記憶はあんまりないですね。 ――友達なんていても、あんまりいいことはなかったと。みうらじゅんさんとか根本敬さんは、よく「蛭子さんと友達だ」って言っていますけど。 蛭子 アレは……まあ、同じ絵を描く仲間ではありますけどね。でも、遊びに行こうとか電話をかけるような仲ではないですよ。仕事がある時に一緒になることはありますけど、プライベートでの付き合いはまったくないです。だから、プライベートでどっかに行く時には、ほとんどひとりなんですよ。映画に行くか、競艇に行くか、麻雀に行くか……。とにかく、ひとりで遊べるものが好き。 ――テレビで蛭子さんが何か言いだすとすぐにツッコまれちゃいますけど、本ではノーツッコミで丸々一冊蛭子さんの主張が繰り広げられていて面白かったです。意外だったのが、「とにかく目立ちたくない」ということですね。なんでそれが舞台に出たり、テレビに出たりすることになったんですか? 蛭子 いやぁ~、一般の人に埋もれて普通に過ごしたいんですよ、本当は。自分の顔とか姿を人前にさらしたくないですもん。最初に舞台に出たのは、柄本明さんから「出てくれ」って頼まれたから。オレは、ホントは出たくなかったんですよ。それからテレビの依頼も来るようになって……。だけど、人から頼まれたことを断るのもイヤなんですよ。仕事にしたって、せっかく頼まれたら普通断らないでしょ? ――あ、そうなんですか? ギャラも気にしない? 蛭子 「いくらくれるのかなー?」っていうのは、楽しみにするけど。安くてもとにかくやって、予想より多かったら「ヤッター!」、少なかったら「クソー!」って。だから、仕事は高くても安くても断らない。 ――なるほど、それじゃ今でもテレビに出るのはイヤだ……という感覚なんですか? 蛭子 今は出たいですね。お金稼ぎたいから。もう、お金を稼ぐのが面白くて面白くて! ――ああ(笑)。やっぱり漫画を描いているのと比べて、テレビのギャラは全然違いますか? 蛭子 「ガロ」で描いてた頃は、原稿料なんてもらえなかったですからね。今、普通の人が1日働いたとすると1万円くらい? それを、テレビに出ると10倍くらいもらえるわけじゃないですか。そりゃあ、辞められないですよ。すごく稼げるので、ドンドン出たいと思います。 ――漫画と違って、テレビに出ていると、チヤホヤされたりするわけじゃないですか。そのへんもうれしかったりしますか? 蛭子 それは、うれしくも悲しくもないって感じですね。まあ、いちいち声を掛けられて返事をするのがめんどくさいっていうのはありますけど。だから、かぶらなくてもいい帽子をかぶるようになりましたからね。おかげでハゲが進んできちゃって……。 ――それは年齢的な問題じゃないんですか? 蛭子 やっぱり帽子をかぶってると太陽の光をさえぎっちゃうから、栄養が足りなくなっちゃって……。 ――そんな光合成みたいな原理ではないでしょう! ■漫画でも意外と稼いでいる ――最近、『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』で再ブレークして、テレビによく出ていますけど、テレビの仕事が全然なかった時期ってあるんですか? 蛭子 いやー、意外とコンスタントにあるね。最初にテレビに出たのは『笑っていいとも!』で、それからドラマの『教師びんびん物語』と、『いつも誰かに恋してるッ』(すべてフジテレビ系)で宮沢りえのお父さん役が来て、それからもわりとずーっとあって、しばらくなくなったのは麻雀で捕まってから……半年くらいはなかったね。でも、その後もチョコチョコ仕事が入ってたから。でもこれからは、テレビに出るために、もっと話術とかを磨いていかないといけないですねぇ……。 ――えっ、今さらですか!? 蛭子 そろそろ新鮮味がなくなってきてると思うんで、お笑いの人みたいにしゃべりを上手にして、バーッとしゃべって最後にオチをつけられるようなトーク術を身につけたいですね。 ――それ、求められてない方向だと思いますよ……。 蛭子 そうかなぁ~? ――本にも書いてあって意外だったんですが、今でも「本業は漫画家だ」という認識なんですね。 蛭子 そうですね。「テレビタレント」というのは、ちょっと職業として言いづらいんですよね。「俳優」だったら言いやすいんだけど。オレはお笑いでもないし、テレビには漫画家として出てると思ってますね。まあ、漫画自体はほとんど描いてないけど。 ――本業だけど、仕事は全然していないと。 蛭子 ただ、イラストや4コマみたいなのはよく描いてますよ。だから、まだ漫画家っていってもいいんじゃないですかね。 ――収入的には、圧倒的にテレビのほうが……。 蛭子 そうですねぇ……。それでも、意外と思うかもしれないけど、漫画でも月50万くらいは稼いでるんですよ。テレビはもっとありますけどね。でも意外でしょ? ――ええーっ、そんなに!? 漫画の収入なんて、月2~3万くらいだと思ってましたよ 蛭子 そうでしょ? だから、今タレント辞めても細々だったら食っていけるの。 ――50万もあったら、細々でもないでしょう! ■奥さんは、どうしても必要な存在だった ――蛭子さんが、お葬式みたいな場所に行くと笑っちゃうというのは有名ですが、前の奥さんのお葬式では、ものすごく泣けたそうですね。 蛭子 そうですね、それまで他人の葬式っていうのは、どんなに親しい人でも全然悲しくなかったんですよ。 ――逸見政孝さんとか、山田花子さん(漫画家)なんかのお葬式にも出られたそうですけど。 蛭子 山田花子さんの時も、すごく笑ってしまったから……。すごく友達だと思ってたんですけど、だけどあんなに笑ったということは、そうも思ってなかったのかなって。 ――悲しいっていう気持ちはあるんですか? 蛭子 それはありますよ。あんなに面白い漫画を描いていたのに、どうして自殺してしまったんだと。それでも笑っちゃうんですよね……。だから、オレが死んだ時も別に悲しんでもらわなくていいと思ってます。死んじゃったら何の心もないわけですから、わざわざオレの葬式のために時間を使ってもらいたくないんですよ。各自で好きなことをしててもらいたい。人の自由を奪うのがイヤなんで。 ――それでも、奥さんの時はすごく泣けたと。 蛭子 やっぱり、どうしても必要な存在だったのかな、奥さんっていうのは。自分にとっては、すごく大切な人だった。 ――で、前の奥さんが亡くなってから、「必要な存在だ」ってことで、必死になって次の奥さんを探し出したらしいですね。 蛭子 ものすごく必死で探しました。ファンレターに電話番号が書いてあったら電話して「ご飯でも食べませんか?」とか。 ――それは「寂しい」っていう気持ちからだったんですか? 蛭子 そうですねぇ。電車に乗ってても、知らない女性が「寂しくなったら電話して」って電話番号くれたりしましたからね。 ■「奥さんって、セックスの面でも便利ですよね」 ――今回の本って、「自由」というのがテーマなのかなと思いますけど。 蛭子 そう。自由が一番楽しく生きる方法だと思いますね。ただ、そのためには、自分がやりたいことがなけりゃダメだと思うんですよ。やりたいことがない人に限って、友達に走って悪いことをする ――友達に走って(笑)。 蛭子 人間ってグループになると、たいてい悪い方向に行くでしょ。態度が大きくなるし、個人に対して失礼なことをしがちじゃないですか。だから、すべてのグループを否定しますね。ロクことはない、仲たがいもする、面白くない。だって、今までのグループって全部潰れてますよ。中核派とか革マル派とか、ロクなもんじゃないですよ。仲間割れになって殺し合いになって潰れていくじゃないですか。これがすべてのグループの末路ですよ。絶対に、支配する側と虐待される側に分かれちゃうんだから。 ――また極端な例を……。でも、確かに蛭子さんがそういうグループに所属したら、確実に虐待される側になりそうですよね。 蛭子 だから入りたくないんですよ。虐待する側だったら、楽しいかも分からないけど……。グループってどうしても、みんな平等ってことにはならないからイヤですね。 ――上下関係がイヤだと。 蛭子 そうですねぇ~。よっぽどリーダーができた人だったらいいと思いますけどね。たとえばオレみたいな……。オレがリーダーだったら、絶対にうまくやる自信がありますよ。グループをやる意思はないですけど。 ――確かにグループってめんどくさいですけど、それでも「寂しい」という気持ちに勝てない人も多いんじゃないでしょうか? 蛭子 そうなんですよ。そういう時は、趣味のグループに入るのがいいんじゃないですかね。適当なところに行ってみて、大丈夫かなっていうグループを探して。山登りでもいいし、コーラスでもいいし。 ――え? そういうグループだったらアリなんですか? 蛭子 あんまりリーダーが突出してないような、仲良しグループみたいなのだったらいいんじゃないですかね。 ――……? 蛭子さんは、寂しいっていう気持ちを、どこで解消しているんですか? 蛭子 うーん、競艇場に行っても寂しいですからね……。やっぱり、それが奥さんなんじゃないですかねぇ。お嫁さんと旦那さんっていう関係は、すごく大切だと思います。それが一番いいですよ。家で女房が待っていると思うからこそ、ひとりで競艇場に遊びに行っても寂しくないんですよね。 ――これだけ聞くとハートフルな話に聞こえますけど、蛭子さんは「奥さんとセックスすればタダだからいい」って、よく言ってますからねぇ……。 蛭子 それはそうじゃないですか! その面でも便利ですよね、奥さんって。オレは奥さんがいる時は絶対に浮気もしないですし、「いいな」って思っても声もかけないですし。……まあ、また亡くなったら必死で探すかもしれないですけど。 ――奥さんさえいれば、友達なんていらないという結論ですかね? 蛭子 まあ、どうしても友達が欲しかったら、たとえば「遊びに行こう」って電話がかかってきた時に、気軽に断れる人がいいと思います。本当はほかのことをしたいのに、気を使って「行く」って言わなきゃならないような関係は、あまりよくないんじゃないかと。それくらいお互いの自由を尊重できる関係が、いい友達だと思います。 (取材・文・写真=北村ヂン)

友好か忠誠か――『レッド・ファミリー』北朝鮮スパイ一家が問いかける“家族の意味” 

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 美しい妻、頼りがいのある夫、優しい祖父、かわいい娘。一見、誰もがうらやむ理想的な仲良し家族なのだが、彼らの正体は家族を演じる4人の北朝鮮スパイだ。互いの行動を監視し合いながら、脱北して韓国へ逃げた裏切り者を抹殺する任務を日々遂行していた。  そんなニセ家族の隣家で暮らしているのは、自分勝手な夫、金遣いの荒い妻、疲れきっている祖母、いじめられっ子の息子という、韓国のリアルを表現したかのようなダメ家族。夫婦はいつもケンカばかりしており、その怒号はニセ家族の家にまで響くほどだった。しかし、ダメ家族が起こすトラブルに巻き込まれていくうちに、4人のスパイたちには少しずつ変化が生まれていく。本物の家族の絆が芽生えようとしていたのだ。そんな中、4人に下ったミッションは、隣の家族の暗殺だった――。  斬新な設定と先が読めないストーリー展開で観客の心をわしづかみにし、「第26回東京国際映画祭」(2013)で観客賞に輝いた韓国映画『レッド・ファミリー』。製作・脚本・編集を手がけたのは異端作で数々の映画賞を受賞した鬼才キム・ギドクだが、監督としてメガホンを握ったのは新鋭イ・ジュヒョンだ。フランスで映画とデジタル・アートを学んだイ・ジュヒョンは、『レッド・ファミリー』が長編映画監督デビュー作となったが、完成した本作を見たキム・ギドクは「私が予想した以上の出来栄え」と絶賛。韓国映画界の次代を担う人物と期待が高まっている。そんなイ・ジュヒョン監督に、本作の見どころや制作秘話、そして朝鮮半島の分断問題や日韓関係について、幅広く話を聞いた。 ――監督は「最初に脚本を読んだときに大きな感動があった」そうですが、その“感動”はどんなところから受けたのでしょうか? イ・ジュヒョン監督 初めて脚本を読んだとき、この物語の中心テーマは“人間味”だと思いました。ほかの監督が撮っていたら、思想の問題を押し出した作品にしたかもしれませんが、体制の中の人間はどうやって体制に抵抗するのかということに主眼を置きました。そこに生きる“人間”を描きたかったんです。例えば劇中で北のスパイたちは、北に残してきた自分の家族のために演技をしていて、自分たち同士で互いに何かをしてあげたくても、そこに愛情が生まれていても、そうではないように振る舞う。生まれ育った“体制”がそうさせるんです。  すべての人間は、何か見えない共同体の体制や思想の中にいると思います。宗教、差別を受けるようなシステム……その中で葛藤し、あるいは抜け出そうともします。そんなところに“人間味”があると思うんですよ。 ――劇中、北のスパイは残虐でありながらも、コミカルな一面も見せていますよね。例えば、言葉遣いも、自分たち同士でしゃべっている時は北朝鮮風の発音ですが、外で話すときは韓国風の発音に変わっています。 イ監督 彼らは家の外に一歩出たら、仲良し家族としての演技をしています。でも、家の中に入れば豹変する。体制の中の人間になるわけです。同じハングルでも、発音やしゃべり方は南北で違いますからね。この作品で俳優たちは、演技に演技を重ねています。南の家族を真似する最後のシーンなんて、演技の演技の演技をしていることになりますよね。個人的にはそういう構造が好きなので、観客のみなさんには注目してほしいところです。
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――北のスパイを描くに当たって、監督自身、取材などをしたのでしょうか? イ監督 まず、資料集めをたくさんしました。北朝鮮のスパイがどうやって韓国で活動したのかという事例を探して。最近の事例は、国家情報院が明かさないからわからない(笑)。でも、昔の資料は多いんです。70年代には、偽装夫婦のスパイもいました。そういう人たちが武器をどこに隠していたか、どうやって本国と連絡を取っていたかを調べたわけです。映画でも描写しましたが、本国からの連絡は、ラジオの周波数を合わせて暗号を受け取っていました。「1、10、8……」などと、数字がたくさん送られてくる。それが暗号になっているのです。一般の人がラジオをいじっていたら、たまたまそれが聞こえたなんてこともあったそうです。  また、資料の調査だけでなく、脱北者の人たちにも協力してもらいました。男性1人、女性1人。その男性は、北朝鮮で軍隊にも入っていた方です。軍隊の話や、敬礼の仕方なども教えてもらいました。 ――敬礼といえば、北のスパイが表彰されるシーンで出てきますよね。あの「万歳!」の場面は、コミカルで笑ってしまいました。
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イ監督 もちろん、笑うところですよ。ありえないシーンですからね。でも、ヨーロッパの映画祭で上映したら、誰も笑ってくれず……。みんな深刻そうに見ていました(笑)。そういう文化の違いは、どうしようもないですよね。でも、ただ笑わそうとして撮ったわけではありません。あの空間は徹底的に北朝鮮でなければならなかったし、体制の空気が感じられなければなりませんでした。一歩ドアを開けたら、外は資本主義の空気。その違いを明白に出すためのシーンでもあったんです。 ――なるほど。撮影中、どんな苦労がありましたか? イ監督 一番危惧したのは、映る空間が限定的になってしまうというところです。ほぼ二つの家が舞台になっていますからね。観客の中には、それが窮屈と感じる人もいるかもしれません。だから、なるべく演劇を眺めているような構図で撮るようにしたし、そうできる家を探しました。家自体が演劇の舞台に見えるような。  あと家探しで気をつけたのは、二つの家族の家の間にある垣根の高さです。映画の中では、その垣根が南北を分断する軍事境界線を意味しています。だから、あまりに低いとおかしい。簡単に越えられそうでは、現実の南北関係の現状と合いませんから。かといって、高すぎてもまったく交流ができないので、それもダメ。ちょうどいい高さの垣根を苦労して探しましたよ。実際には微妙な高さの垣根も、劇中では南北を隔てる高い壁に見えると思います。でも、二つの家族は垣根越しに会話をして、次に物や鳥が垣根を越えていき、最後には人が越えていきます。みんなが軍事境界線を越えていくんです。 ――あの垣根は軍事境界線……。だから、それを越えた北の家族は処罰されてしまう、と。 イ監督 そうです。映画を見た人は、「なぜ、彼らはあんなひどい処罰を受けるのか」と思うかもしれませんが、4人はとんでもないことをしていたわけです。南北を混ぜてしまったのですから。最後には、二つの家族が島にキャンプしにいきますよね。そこには、もはや“境界線”はありません。  島のシーンは本当に苦労して撮影しました。映画で流れている映像と、まったく同じ順序で撮影したんです。俳優たちが自らテントを張って、海で遊んで……。だから彼らは十分、感情移入できたと思いますし、撮影では本当に嗚咽していました。カメラを回していて、私自身も本当に悲しかった。北の家族が船に乗せられるシーンは、本当に処刑場に連れて行かれているように見えました。船のシーンなので、何人かのスタッフは島に残ったのですが、彼らも「本当に死にに行くようだ……」と話していましたね。撮影現場全体が軽口を叩ける雰囲気ではなかったから、とても印象に残っています。
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――南と北の家族は、最初から仲が良かったわけではありません。でも、若い二人(チャンスとミンジ)をきっかけに、お互いのことを知っていきます。その設定には、何か意図があるように見えますが……。 イ監督 若い人は南北の対話や交流を望んでいる、というように見せようとしました。チャンスとミンジは、すべての登場人物の中で、最もイデオロギーから自由なんです。単純に、若くて幼いからです。彼らには、まだ白紙の部分がある。私は、軍事政権時代に思想教育をたくさん受けた世代です。でも、最近の若い世代は、そういう教育をあまり受けていません。純粋なチャンスとミンジが成長したら、もっといい世の中を望むだろう。そんなメッセージを込めました。  映画の序盤に、窓に激突して死んだ鳥が出てきます。そのとき、スパイの老人が「死んだ鳥が自分の姿と重なる」とつぶやきますが、実はあのシーン、物語の結末の伏線になっているんですよ。鳥が幻を見ながら死んだように、虚像に向かって走り続けた、人はみな最後は死ぬ。ただ、その鳥を埋めてあげるのは、チャンスとミンジです。思想教育を受けた世代、つまり虚像に向かって走り続けた人たちを慰安するのは、若い世代なんです。 ――『レッド・ファミリー』は、理念を超えた家族愛が一つのテーマだと思います。南北関係、日韓関係はともにギスギスしていますが、それを変えるためのヒントがあるようにも感じました。 イ監督 南北関係については、ただただ平和的な統一を願っています。南北が分断したのは、理念の違いに原因があると思うんです。でも反省しなければならないのは、一つの失敗で生まれたトラウマは、何十年、何百年と続くということ。日本が戦争で受けた核の痛みは、今も続いていると思います。私たちも植民地時代のトラウマが続いています。もちろん、韓国が加害者として誰かを傷つけたこともあるでしょう。いわば“苦痛のモンスター”がたくさんいるわけです。その痛みの起源がどこにあるのかはわかりません。でも、確実に起源はあります。トラウマが続かないように、その起源にまでさかのぼって、最大限に解消すべきです。痛みの中で生きていくなんて、かわいそうじゃないですか。  私が『レッド・ファミリー』でイデオロギーを解体させたかった理由も、現代は大切な個々人が見失われる時代だと思ったからです。世の中が発達して、便利な生活が送れるようになったと感じていても、変化したことは何もないように思う。だって、今も世界中で戦争が続いているんですよ。それは、とても恐ろしいことです。いずれにしても今は、すべての国がもっと反省しなければならない時代なのではないでしょうか。でも、誰か一人が反省したら、その人が弱者になってしまうジレンマがある。日韓関係においても、もしかしたらそんなジレンマがあるのかもしれない。 ――『レッド・ファミリー』は、本当にいろんなことを感じさせてくれる映画だと思います。これから見ようと考えている人は、どんなことを知っておくべきでしょうか? イ監督 いやいや、何も考えずに見てほしいですね。色眼鏡をかける必要はないと思います。なぜなら、偏見を捨てる映画なのだから。見る人にも偏見を捨てて見てほしいです。断っておきますが、この作品はあくまでも娯楽映画ですからね(笑)。重いといえば重いですが、力まずに見てもらえればうれしいですね。 (取材・文=呉承鎬) redmain.jpg ●『レッド・ファミリー』 監督:イ・ジュヒョン エグゼクティブ・プロデューサー/脚本/編集:キム・ギドク プロデューサー:キム・ドンフ  キャスト:キム・ユミ ソン・ビョンホ チョン・ウ パク・ソヨンほか 10月4日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開 (c) 2013 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved. 公式サイト <http://redfamily.gaga.ne.jp/>

「流行ってるなら、とりあえず乗っかる!」“渋谷のカリスマ”あっくんの飽くなきミーハー魂

 現在の「渋谷のカリスマ」と呼ばれているあっくんを知っているだろうか?  ギャル界の一大イベントを取り仕切り、109にあるショップ「SBY」をプロデュース。さらには、自らのCDデビュー曲「SHIBUYA PARTY ROCK NIGHT」はYouTubeで70万回以上再生され、iTunes Storeのダンスチャートで1位を記録。最近では、『妖怪ウォッチ』をパロッた「渋谷ヴィブス体操第一」がネットで話題……とスゴイ人なんですが、たぶん「日刊サイゾー」読者はまったく知らないでしょうね。  そんな、ボクらとはまったく接点のなさそうな文化圏にいる渋谷のカリスマにいろいろ聞いてみたんですけど、意外な共通点もありました! ■パーティーをロックする三鷹在住の渋谷のカリスマ! ――まず、自己紹介をお願いしたいんですけど、本業はなんなんですか? あっくん パーティーロッカーですね! 歌ったりはしていますけど、アーティストだとは思ってないんで。とにかくパーティーをことごとくロックする男でいたいなって。 ――えーっと、「パーティーをロックする」って、どういう意味ですか!? あっくん ……パーティーを盛り上げるってことですね。「あっくん来たら空気変わるよね」っていうところを目指しています! ――渋谷のカリスマと呼ばれているみたいですけど、出身は渋谷じゃないんですよね。 あっくん 兵庫県です。1歳の時に、東京の三鷹に引っ越してきたんですけどね。今も三鷹に住んでます(笑)。 ――えっ、渋谷のカリスマが三鷹住み!? 実家なんですか? あっくん ……実家です。 ――じゃあ、小さい頃からちょくちょく渋谷に遊びに来ていたという感じなんですかね? あっくん いやあ、渋谷に行きだしたのも17歳とか、遅かったんですよ。でも、渋谷でイベントというものを初めて体験して、いろいろな価値観が変わりました。渋谷にはいろいろな地区から人が集まってきてて、“こんな面白いヤツらがいたんだ”って。それから渋谷で目立ちたいっていう気持ちが生まれて、イベントをもっと盛り上げるためには運営側に入り込むことにしたんです。自分が行ってたイベントって、会社の組織みたいな感じで進行、運営、企画、制作とセクションが分かれていて、それぞれに統括っていう責任者がいるんですよ。で、企画の統括になるために800人くらいいるスタッフの前でプレゼンして、晴れて選ばれたんです。 ――スタッフって、そんなにいるんですか! でもイベントの幹部って、仕事として成り立つもんなんですか? あっくん いや、完全に趣味でしたね。支出ばっかりですよ。しかも、イベントに時間を取られちゃうから、普通に働くこともできないんで、日雇いで空いてる時間に働いて、そこで稼いだ金を後輩たちに使って……。まぁ当時は、将来のことは何も考えてなかったですね。
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■流行を作るのは難しいから、流行に乗っかったほうがいい ――ご両親は息子が渋谷で何をやっているのか、理解しているんですか? あっくん 当時は、ただ単に遊んでるって思われてましたね。渋谷に来る前はペンキ職人として働いてたのに、仕事を辞めて渋谷にばっかり行って何してんだと。でも、そこから先輩の立ち上げた会社に入ったんです。当時、渋谷っていう市場に企業が参入し始めて、イベントで知り合った子たちもモデルとしてデビューしたりしてたんですけど、事務所に所属してるわけじゃないんで、大人たちから使われたい放題だったんですよ。じゃあ、その子たちを守って適正なギャラを交渉してあげようってことで、先輩が起業したんですよね。その会社に入って、ギャルモデルの子たちをマネジメントしたり、イベントを運営したりっていうことが仕事になりました。 ――あ、そういう裏方的な仕事をしていたんですね。それがなんで、自分がCDデビューすることになったんですか? あっくん ある時、レコード会社の人にイケてる人を紹介するっていう会があって、「歌を聴きたいよね」ってことでカラオケがある飲み屋に行ったんです。けど、レコード会社の人たちがズラッとそろっているから、みんな緊張しちゃって歌いだせないんですよ。そこで、盛り上げ魂に火が付いちゃって「じゃあ、とりあえずオレが歌いま~す」みたいな感じで歌ったら、それがレコード会社の人たちに刺さっちゃったみたいで(笑)。「彼で仕掛けてみよう」みたいな話になったんです。 ――そこで、自分が前に出ることには抵抗はなかった? あっくん もともと目立ちたいっていう気持ちは強かったんで。それに、芸能人になりたいって思ってた時期もあるんですよ。 ――憧れてた芸能人とかいるんですか? あっくん モーニング娘。が……。矢口真里ちゃんが大好きだったんですよ。中学1年生の頃ですけど、どうしても矢口真里と付き合いたいと思って、そのためには芸能人になるしかないなと。それで、オーディションに書類を送ったりしてたんですけど……まあ全部落ちましたけどね。そのほかにも、ゆずや19に憧れて、いきなりギターの弾き語りを始めてみたり。 ――方向性がメチャクチャですよ! あっくん 自分、超ミーハーなんで、時代時代で流行っている人たちが好きなんですよ。GLAYやL'Arc-en-Cielが流行ったらエレキギターをやってみたりとか……。 ――デビュー曲がLMFAOの「PARTY ROCK ANTHEM」の日本語カバーになったのも、やっぱり流行っているから……ということなんですか? あっくん そうですね。当時はどのクラブに行ってもかかってたし、YouTubeでも7億回再生とかいってましたからね。本当は、フォークギターを持って熱い歌を歌って、長渕剛みたいに、みんなが憧れるアーティストになりたいって思ってたんですけど(笑)。オレがそんなの歌っても誰も喜ばないし、話題にならないんですよね。自分のプライドとか意思とかは関係なくて、「あっくん」に対するニーズは何かって考えると、「あっくんが来ると盛り上がる」とか「笑える」「面白い」っていうことだから。結果的にカバー曲の「SHIBUYA PARTY ROCK NIGHT」も「日本人は、こういうことをやるからバカにされるんだよ」とか言われましたけど、それが話題になってすごくシェアしてもらえたんで、よかったと思います。 ――なるほど、とにかく話題になることが最優先ってことなんですね。 あっくん みんなからも、「何がやりたいのか分からない」ってよく言われますけど、とにかく話題の人になりたいってことなんですよね。いきなり流行を作る人間になるのは難しいので、とりあえずは流行に乗っかったほうがいいと思うんですよ。一生懸命作っても、誰にも見てもらえなかったら意味がないじゃないですか。 ――だから、最近も『妖怪ウォッチ』に乗っかって……。 あっくん そうですね(笑)。『妖怪ウォッチ』っていうのがどうも流行ってるらしいって聞いたんで、「渋谷ウォッチ」の「ヴァイブス体操第一」(https://www.youtube.com/watch?v=0m2Rfun8KOc)っていう動画を作ってアップして。そもそも「妖怪ウォッチ」ってなんなのか分かってないんですけどね。“ああ、ゲームなんだ……”くらいで。でも、超ミーハーなだけに、流行をかぎ分ける嗅覚だけは鋭いんですよ。 ――そこで、「最近は秋葉原が流行っているから、秋葉原のカリスマに」……みたいなことにはならないんですか? あっくん 「根っこは渋谷」っていうのは変わらないですかね、やっぱりそこは軸なんで。 ――そこまで渋谷が軸になっているのに、なんで引っ越してこないんですか!? あっくん そこなんですよ……。実は、渋谷に住んでた時期もあったんですけど、実家の事情とかもあって三鷹の実家に戻ったんですね。でもおかげで「渋谷のカリスマって言われているくせに三鷹かよ」ってツッコまれるようになって、面白いかなって。やっぱり、ツッコミどころがあったほうが、みんな面白がってくれるじゃないですか。 ――確かに、ネットの時代になって、みんなツッコミを入れたがってますからね。 あっくん 格好いいとかカワイイっていうことより、ツッコミどころがあるもののほうがシェアされる時代なんですよね。だからオレ、自分の活動に広告費をかけたことがないですもん。全部SNSで拡散されてるんで。そのためには、みんなが面白いと思う物をいかに作るかってことですよね。 ■もはやリア充、非リア充っていう区分けはない! ――「日刊サイゾー」を読んでる人たちは、友達が少ないと思うんで、交友関係を広げるアドバイスをもらいたいんですけど。 あっくん ああ、いわゆる非リア充の方たちですね。でも、最近はリア充も非リア充も融合している感じはありますね。今の子たちって、渋谷に来ているような子でもネットにすごく依存していますから。だから、ハイブリッドな人間が一番いいと思うんですよ。リアルとウェブとをうまく使い分けられる人が強いんじゃないですかね。ネットに依存している人たちを否定できないですよ、もう。オレもネットに依存してますから。むしろ「ネットで流行ってることを教えて!」って感じです。 ――じゃあ、ネットばっかりやってる非リア充の人たちも、むしろそれが武器になるんだと。 あっくん 「その方向で合ってるな」って思いますね。オレも、今まではリアルな渋谷の街を背負ってきましたけど、渋谷も若い子たちがどんどん消えていって、ヒカリエみたいな、大人しか喜ばないようなオフィスビルが建ってきたりとか、どんどん変わっちゃってるんですよ。オレはよく「センター街をいろんな国に作りたい」って言ってますけど、今のリアルなセンター街って、ラーメン屋とか飲食店ばっかりですからね。オレの思う渋谷らしさはもうない。リアルな街作りは大人主導でオレには動かせないから、街は捨てて、これからはウェブだなって思ってます。「渋谷」っていう街をネット上に作ろうと。オレなりの「渋谷感」をネットの中に作りたいんですよね。ウェブ上でいろんな渋谷カルチャーを展開して、いずれは「ニコニコ超会議」みたいに、それらを一堂に集めたリアルなイベントもできればいいかなって思ってますね。 ――リアルな渋谷には行きづらい非リア充も、ネットでなら参加できますしね。 あっくん 超参加してほしいですね! 今、きゃりーぱみゅぱみゅちゃんたちが頑張ってることで原宿が盛り上がってますけど、同じように自分が頑張ることによって「渋谷」っていうカルチャーが盛り上がってほしいと思ってます! ――そして、いずれは渋谷区長に……。 あっくん ああーっ、それもいいっすね! ウェブの中の区長になります! (取材・文=北村ヂン) あっくんTwitter <https://twitter.com/shibuya_akkun> あっくんYouTubeチャンネル <https://www.youtube.com/user/akkunofficial>

キンコン西野が今度は校長に!「僕、世間からは非常に嫌われるんですけど、実は人たらしなんです」

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撮影=後藤秀二
 お笑いコンビ、キングコングの西野亮廣が仕掛ける新たなイベント『サーカス! - Smile Academic Crazy Unique School -』が9月21日(土)に開催される。これは、大谷ノブ彦(ダイノジ)、中田敦彦(オリエンタルラジオ)、吉田浩一郎(株式会社クラウドワークス代表取締役社長兼CEO)、はあちゅう(ブロガー・作家)、倉本美津留(放送作家)、西寺郷太(ミュージシャン・音楽プロデューサー)といったジャンルレスなメンツが講師となり、勉強の面白さを伝えるイベントだとか。そんなイマイチつかめないこの催しの狙いを、校長を務める西野に訊いた。 ――そもそも、このイベントをやろうと思ったのは? 西野亮廣(以下、西野) いや、なんか思いついてこんなんやろうかなぁって話してたら、大人の人が動いてくれたっていう感じですね。 ――軽いノリで始めたんですね。 西野 いつもそうですよ。飲み屋で話が始まる感じで。僕、学生の頃は勉強ができなかったんですよ。学年でもビリのほうで。不良とか、不登校だったのなら言い訳もつくけど、学校自体は面白くて、毎日ちゃんと通っていたんです。でも、先生の言ってることが、なんもわからなくて。それで、勉強が嫌で吉本に入ったんですけど、そこでダイノジの大谷さんの音楽の話や、マキタスポーツさんのJポップの話、茂木(健一郎)さんの脳科学の話なんかを聞いてたら面白いと思って、家に帰ってからも調べたりするようになったんですよ。これって、勉強じゃないですか。 ――確かに、学校以外で聞く専門的な話って面白いですね。 西野 それで、学生の時に、なんでこれができなかったんだろうって考えて。これって、先生のトーク力の差ちゃうかなって。歴史が好きな芸人なんかは、戦国武将のことを「どんな人なの?」ってこっちが聞くと、「SMAPでいうと~」って例えてくれるんですよ。すごい簡単な言葉で通訳してくる。これを、学校の先生は、やってくれなかったんじゃないかなぁって。黒板のほう向いて「何ページから何ページまで読め」って言われたって、全然面白くないじゃないですか。大事なポイントでは声を張るとか、そういう技術を身につけないまま、先生になってしまっていると思うんです。 ――芸人さんのトーク力はすごい、と。 西野 芸人はいくら面白いネタ書けても、トークが立たなきゃ表に出られないんですよ。ちっちゃい小屋のオーディションからずっと、おしゃべりを競争して、そっから誰が面白い、どのネタが面白いのかがようやく始まるけど、しゃべれなきゃネタもできない。学校ではそれをやらなかったので、おしゃべりがおもろいヤツが先生やったらええんちゃうかって。 ――講師陣は、どんな内容を話す予定なんですか? 西野 ひとり15~20分くらいの持ち時間で、大谷さんだったら音楽、クラウドワークス・吉田さんだったら今の時代の仕事の仕方、はあちゅうちゃんはブログで稼ぐ方法とかですかね。中田は内容を教えてくれないですけど。 ――校長も内容を知らない(笑)。 西野 倉本さんも知らないですね。僕が何を話してくれって言わなくても、面白い話をしてくれるから。 ――くくりは「面白い話」ってことだけですか? 西野 ゲラゲラ笑える面白さだけじゃないですよ、もちろん。お客さんが興味を持ってくれるような話であれば、お任せって感じです。 ――では、西野校長は何をするんですか? 西野 偉そうにしているだけですね(笑)。先生がしゃべった後に、生徒代表みたいな立場で「あれってどういうこと?」とか、質疑応答みたいなのを設けるので、その聞き役になります。 ――お客さんのターゲットは、どういった層を想定してるんですか? _MG_4067.jpg 西野 大人ですね。あと、勉強コンプレックスがある人。クラウドワークス・吉田さんのお話なんかは、クリエイターの方が対象になってくると思うんですよ。僕、去年美大でゲスト講師やったんですよ。そこで、生徒さんが400~500人いたんですけど、作品発表するとしたら、個展したり、制作期間中の生活費だったり、画材買ったりと、お金が必要ですよね。そこで「みんな、そのお金をどうやって調達するの?」って聞いたら、やっぱりアルバイトなんですよ。お金ためて、グループでお金出し合って展示するとか、そんなのばっかり。 ――まぁ、王道といいますか、定石ですよね。 西野 「そんなんやるよりも、クラウドファンディングで、個展やりたいって発信して、自分の作品見せれば、個展の宣伝にもなるし、作品の宣伝にもなるし、パトロンにリターンとして絵を描けば練習にもなるし、そっちのがバイトやってるよりよくない?」って聞いたら、全員クラウドファンディングを知らなかったんですよ。びっくりして、先生にも「なんで教えないんですか?」って聞いたら、先生たちもクラウドファンディングを知らない! ――ちょっと意外ですね。発表の場が限られていると。 西野 先生も知らないから、教えようがないんですよ。それで「ここで嫌われても構わないから、耳の痛い話をしてやろう」と思って、「美大の先生が(クラウドファンディングを利用した作品の発表を)実践できてたら、美大の先生になっていない。美大の先生は、絵で飯を食ってく方法を知らないから先生になっているんだ」とまで言いました。まぁ、後でめちゃくちゃ怒られましたけど(笑)。美大はもちろん、いいところですよ、技術は学べるし、お互い切磋琢磨できる。ただ、その後の生き方を教えてくれないんです。 ――今回の『サーカス!』は、その生き方も学べる、と。 西野 ここに出てくれる人って、極端な生き方をしてるじゃないですか。そういう人って、社会のレールからちょっとはみ出してるんで、その中でなんとか生きようとして、すごい知恵を身につけているんですよ。友達にホームレスがいるんですけど……。 ――ホームレスにまで交友関係を広めている(笑)。 西野 その彼がどうやってお金を調達するかっていうと、浅草寺なんかで煙を浴びるところがあるじゃないですか。その器のところに、五円玉を置くんですって。そしたら後に来た人は「ここにお金置くんだ」と思って、そこが小銭だらけになるんですよ。そこをごそっと頂くと。道徳的に良いか悪いかはさておき、こんなことって思いつかないじゃないですか! やるやらないは別にして、極限状態で絞った知恵や生き方を教えたいんですよ。 ――空き缶集めるくらいしか、思いつかないですもんね。 西野 ホームレスは本当にすごい。そういったレールからちょっとはみ出した人から、いろいろ学んでほしいですね。 ――講師の方を奇人変人扱いしてますけど、我々から見たら、西野さんもそっちの人に入ってますよ。 西野 だはは(笑)。僕、世間からは非常に嫌われるんですけど、実は人たらしなんですよ。そっちの人たちの懐に入ったり、口説いたりするのがうまいんです。 ――それは、どこで身につけた技術なんですか? 西野 僕は大阪の新世界に住んでたんですけど、20~21歳くらいの頃は、本当にお金がなくて。でも毎日酒を飲みたいんで、新世界の居酒屋に片っ端から入って、怖そうな人の横に座って、しゃべって、話を聞いて、仲良くなったら頃合い見計らって「実は僕、今日ほんとにお金がなくて、おごってもらっていいですか?」って毎日やってました。新世界って変な奴ばっかだし、ヤバい奴らもいっぱいいて、そういう人を丸め込むことで、生きていく技術を身につけてきたんです。 ――十分、講師としてやっていけますね。でも、ますます西野さんの本職はなんなのか、わかんなくなりますね。 _MG_4064.jpg 西野 (笑)。めっちゃ言われるんですよ! 絵本を描いたら「芸人のくせに」って言われる。でも、これは参加人数の違いでしかないなって思っていて。芸人がグルメ番組に出て、コメントしても、「芸人のくせに」とは言われない。なぜなら、ここに参加している人数が多いから、これも芸人の仕事にカテゴライズされてるんですよ。絵本描いている芸人が少ないから、芸人の仕事として認められていない。もし、100人の芸人が絵本を描いていて、グルメがひとりだったら、芸人のくせにって言われるはグルメのほうだと思うんですよね。それで、もし現実にそうなったら、僕はグルメのほうに行くんですよ。自分しかやってないことやりたいと思うから、必然的に「芸人のくせに」ってなることばっかりなんですよね。 ――だから周りから「西野がまた~」って言われると思うんですけど、それに対しては何か思うところはありますか? 西野 なんとも思わないですよ。誰かが僕のことをなんか言ってても、それはその人の課題であって、僕がその人に何かする気もないし、時間を割くつもりもないですから。時々、Twitterが炎上して、「Twiiterやめます」っていうタレントさんいるけど、アホちゃうかなって。タイムライン見なかったらいいんやから。わざわざそこにチャンネル合わせて傷ついてる暇があったら、もっと自分のために時間使ったらいいのにって思いますね。 ――では、SNS全盛期の時代の生き抜き方の講師として、ぜひ。 西野 教えますけど、嫌われますよ(笑)。でも、毎日は楽しくなりますよ。仲がいいスタッフや芸人を集めて、「次はあれしよう! あれ? 失敗した! じゃあ、次はこっちだ!」って、毎日楽しいですから。『サーカス!』は、そんな楽しさを教えたいですね! (取材・文=高橋ダイスケ) ●『サーカス! - Smile Academic Crazy Unique School -』 ≪日時≫9月21日(日)17:30開場 18:00開校(20:00閉校予定) ≪場所≫品川プリンスホテル クラブeX ≪出演者≫ 校長:西野亮廣(キングコング) 講師:大谷ノブ彦(ダイノジ)、中田敦彦(オリエンタルラジオ)、吉田浩一郎(株式会社クラウドワークス代表取締役社長兼CEO)、はあちゅう(ブロガー・作家)、倉本美津留 (放送作家)、西寺郷太(ミュージシャン・音楽プロデューサー) ≪チケット料金≫ 前売:一般席3,800円 ソファ席4,500円 当日:一般席4,300円 ソファ席5,000円 ≪チケット購入≫ チケットよしもと:<http://urx.nu/bfkC> 0570-550-100、Yコード【100867】 ローソンチケット:<http://urx.nu/bfmi> 0570-084-003、Lコード【39921】 チケットぴあ:<http://urx.nu/bfmG> 0570-02-9999、Pコード【439-229】

年間8本ペースで撮り続ける天才監督かく語りき。「ホン読みコンテなし。現場で奇跡の瞬間を収める」

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城定秀夫監督の最新作『いっツー THE MOVIE』。高校に入学したサガミ(中山龍也)は上級生のユイ(副島美咲)に憧れ、映画研究サークルに入部する。
 夜ごとレンタルビデオ店に通う楽しみのひとつに、城定秀夫監督作品を探し出すことがある。日本アカデミー賞に呼ばれるような有名キャストは出てこないが、『デコトラ・ギャル奈美』(08)や『本当にあったエロい話』(09)などレンタルビデオ店の片隅に佇む城定作品には笑いとエロスがいっぱい詰まっている。そして見終わると、思わずホロッとしてしまう。「こんな低予算映画に、まさかグッとくるなんて……」と毎回のように城定作品には驚かされてしまう。ささくれた都市生活者の心をじんわりさせてくれる温かみがあるのだ。  ハズレのない城定監督作品だが、DVD化されたばかりの最新作『いっツー THE MOVIE』『いっツー THE MOVIE 2』は文句なしの快作だ。『すんドめ』などで知られる人気漫画家・岡田和人の原作コミックを実写化したもの。中学3年生のサガミ(中山龍也)はセクシーな女子高生・ユイ(副島美咲)のパンチラ姿が忘れられずに猛勉強し、ユイと同じ高校に晴れて入学。『アルマゲドン』しか観たことがない映画ビギナーのサガミだったが、ユイのいる映画研究サークルに迷わず入部。ユイたちと一緒にゾンビ映画の製作準備を進めるうちに、次第に映画の面白さに目覚めていく。さらに『−THE MOVIE 2』では、メガネ女子・ヨシコ(小明)がゾンビ映画の特殊メイク担当として新たに入部。サガミは年上のユイに片想いし、ヨシコは同級生のサガミに片想いし、そしてユイは……、と一方通行の恋と映画愛が回転木馬のようにぐるぐる巡る切ない青春コメディとなっている。  すでに監督作は80本を越えている城定監督だが、ヒロインたちの初々しい魅力を引き出す演出手腕はお見事というしかない。年間8本ペースで撮り続ける城定監督に、JOJOマジックと呼ばれる演出の秘密について語ってもらった。 ──最新作『いっツー THE MOVIE』は、高校生が映画づくりの面白さとカメラのフレームを通した女性の美しさに魅了されていく、ちょっとエロくて爽やかな青春ものですね。 城定 撮影現場の内幕ものは僕がよくやっているパターンなんです。『ホームレスが中学生』(08)は中学生たちが同級生のホームレスを主人公にしたドキュメンタリーをつくる話で、『18倫』(09)はAVの製作会社が舞台でした。身近な題材なので、ついついやってしまいがちですが、やることが同じことの繰り返しになってしまうので、最近はあまり安易には手を出さないようにしていたんです。でも今回は原作が映研の話でしたし、まだ連載の1話目か2話目の段階で映画化の企画が持ち上がったので、あまりイジりようもなかった(苦笑)。まぁ、それで『−THE MOVIE 2』は完全にオリジナルストーリーなんですけどね。 ──冴えない映研の部員たちがゾンビ映画を撮り始めるという設定は、吉田大八監督&神木隆之介主演『桐島、部活やめるってよ』(12)と同じ。女優陣のサービスショットがある分、『いっツー』のほうがお得感があります。 城定 確かに『桐島』と設定は似ています(笑)。意識しなかったというと噓になる。でも、高校の映研でゾンビ映画を撮る、という設定は原作のままなんですよ。『桐島』のマネしてると思われたくないなぁとは思いましたが、あまり意識しすぎると、どうにもならない状況でしたしね。『−THE MOVIE 2』の脚本は撮影の3日前に書き終わるなど、ギリギリのスケジュールで動いていましたから。
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『いっツー THE MOVIE 2』ではゾンビオタクのヨシコ(小明)が新入部。クラスで浮いていたヨシコだが、ゾンビ映画づくりに自分の居場所を見つける。
■女性はみんな、生まれついての女優 ──ヒロインはグラビアやバラエティー番組で活躍する“小蜜”こと副島美咲。『−THE MOVIE 2』でダブルヒロインを務めるのはゾンビアイドルとして注目されている小明。2人とも女優としてのキャリアはさほどありませんが、城定作品ではうまくヒロイン役にハマってます。 城定 普段、僕はテレビを観ないんで、副島さんのことはあまり知らなかったんです。壇蜜さんに似てる人ぐらいの知識しかなかった(笑)。『−THE MOVIE 2』のゾンビ好きな女子高生はオリジナルのキャラなんですが、ゾンビ好きなアイドルなんていないだろうと思っていたら、プロデューサーが「ゾンビアイドルがいるぞ!」と日刊サイゾーで見つけてきたのが小明さん。小明さん、本人は年齢的に女子高生役は大丈夫かなとちょっと心配していましたが、全然平気でしたね。他のキャストと一緒でも違和感なかった。小明さんをキャスティングできたのは、日刊サイゾーのお陰ですね(笑)。女優陣は現場でまったく手が掛かりませんでした。副島さんも小明さんも芝居うまいですよ。ちゃんと自分のキャラクターを分かっている。 ──城定作品のヒロインはグラビアアイドルやセクシー系タレントが務めることが多いわけですが、演出上の秘訣があるんですか? 城定 いや、特別なことはしてません。今回は2本同時で撮影5日間ですし、いつもスケジュール的に余裕がない。1本を2、3日で撮り終わらなくちゃいけないので、あまり難しい脚本は書けないし、そんなに作り込まなくてもいい役がほとんどなんです。でも、これまで撮ってきて、全然演技ができなかった女性キャストは僕の記憶にないですね。女性って生まれついての女優だってよく言いますけど、確かにそういう面はあるなと思いますよ(笑)。今回の女優陣は手が掛からなかったけど、逆に男性キャストに時間を取られたんです。主人公のサガミ役の中山龍也くんは僕の『ホームレスが中学生』を観ていてくれて『よかったです!』なんて言ってくれた。イケメンだけど嫌味がなくて爽やか。これから売れるんじゃないかな。中山くんは良かったけど、いちばん手が掛かったのは部長(鈴木淳)。「よしもと新喜劇」みたいな芝居をしてきたんです。漫画原作のコメディだからって、ふざけた芝居をすると今回はアウトなんです。そのへんのことを準備段階できちんと説明してなかったこっちも悪いんですが、現場で「一度、原作のことは忘れろ」と言った覚えがある(苦笑)。時として役者個人が作品全体の雰囲気を読み間違えてくる場合もあるので、その点は注意するようにしています。 ──撮影日数が2日程度だと、クランイクイン前にキャストを集めての脚本の読み合わせやリハーサルをやることもない? 城定 衣装合わせがあるので、キャストには撮影前に一度は会います。脚本内容などに疑問があれば、そのときに聞くようにしています。でも脚本の読み合わせは僕は基本的にやりませんね。この仕事を始めた頃はやってたんです。ホン読みはやらなくちゃいけないものなんだろうと思ってましたから。でも、会議室みたいなところに集まって脚本を読んでいると、逆に不安になってくるんですよ。「この脚本、面白いのかな?」って気になってしまう。だいたい、自分が書いたものなんですけど(苦笑)。でも、役者が衣装を着て、現場に立つと見えてくるものがあるんです。いろいろと演出のアイデアが湧いてくる。だったら、ホン読みはしなくていいかなって。「脚本の読み合わせはムダ」と言ったら怒る監督もいるでしょうから、言いませんけど(笑)。多分、じっくり時間を掛けて作っていく映画の場合は、ホン読みからしっかりやっていくことが大事なんだと思います。リハーサルも特にはやりませんし、事前に絵コンテを準備することもないですね。事前にあまり決めすぎず、作り込まないほうが、現場で奇跡的な瞬間をカメラに収めることができる場合もあるのではと思うんです。まぁ、これは低予算短期撮影作品のひとつの方法論なので、一般的にはどうなんですね……。予算と時間が豊富にある作品はやったことがないので分かりません(笑)。
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低予算を逆手にとった演出で人気の城定秀夫監督。作家性を押し付けることなく、娯楽性を第一に考える職人なのだ。
──では、城定組は撮影初日が非常に重要ですね。 城定 かなり不安です(笑)。初日はキャストがどんな芝居をするのか様子見ですね。まずカメラの前で彼らがどんな芝居をするのかを見る。そのときは僕もホンは持たないようにしています。現場でまず芝居をやらせて、そのときに何か違和感を感じたときだけ修正するという感じですね。「何か違和感あるな」と思って、ホンを見直すと、やっぱり台詞が違ってたりするんです。でも、おかしい点がなければ、そのまま撮り進めていきます。自分で台本を書くことが多いので、だいたいの台詞は頭の中に入っているんですが、あまりに台本を見ないでいると大事な台詞を言い忘れたままでOK出してしまうことがありますね(苦笑)。撮り終わった後や編集段階で気づくこともあります。中には、シーンの後半部分を丸ごと撮り忘れていたこともあります(笑)。 ──何とも豪快に撮り進められていく城定作品。でも、『いっツー THE MOVIE』でサガミがユイ先輩をモデルにカメラテストするシーンはとても繊細な名場面。サガミのカメラに向かって、ユイがはにかんだ笑顔を見せる瞬間に胸を打たれます。副島美咲って、こんなナチュラルな芝居ができるんだという驚きがありました。 城定 高校の屋上シーンですね。あのシーンは難しかった。日が沈む直前で、もう1カットで撮るしかないという状況だったんです。サガミが「恋人だと思って笑ってください」と頼んで、ユイが自然な笑顔を見せるという流れだったんですが、カメラに向かって自然に笑ってみせるのって難しいんです。僕も現場で「微妙だな」と思いつつも、日が沈んできたのでOKしてしまった。それで編集してみたんですが、悪くはないけど普通だなぁって感じで。どうしようなかと思ったんですが、僕が「OK」を出した瞬間に副島さんが照れ笑いを浮かべていた。「あっ、この表情はギリギリ使えるな」と思い、音を差し替えて、スローモーションにして使ったんです。だから、あの笑顔は実は演技ではないんです。完全に副島さんの素の表情だったんです。 ■名画座に通っていた学生時代の思い出 ──まさに城定監督ならではのミラクルショット! 『いっツーTHE MOVIE 2』ではいよいよゾンビ映画の撮影が始まり、面白さがますます加速。 城定 映画づくりのネタで押し切ろうかとも思ったんですが、『いっツー』の本筋はラブコメなんで、そこは外さないように思いとどまりました。ゾンビアイドルの小明さんがいてくれて、本当に助かった。ただの憧れの先輩への片想いだけならありがち過ぎですけど、小明さん演じるヨシコが加わったことでトライアングルな関係性ができて、ストーリーが膨らんでいきましたね。もう少し時間の余裕があれば、小明さんをもっと活かせたかもしれない。贅沢な使い方になりました。小明さんがゾンビになったら、どうなったんだろうなという興味がありましたね。 ──そしてクライマックスは、エルヴィス・プレスリーのヒット曲「ラヴ・ミー・テンダー」が流れる中、ゾンビ役の男子生徒たちがそれぞれ想いを寄せる女子生徒に襲い掛かるという大カタルシスシーンに。いつもながら、城定監督は懐メロや童謡の使い方がうまい。 城定 権利の関係で「ラヴ・ミー・テンダー」は使えなかったので、あれは「ラヴ・ミー・テンダー」原曲である「オーラ・リー」なんです(笑)。もちろん「ラヴ・ミー・テンダー」を想起させる曲として使っています。曲を聴いただけで、そのシーンがどんな場面なのか、人物たちの心情が分かるような曲を選ぶということはよくやります。曲の力に助けてもらってますね。男子生徒が女子生徒に襲い掛かるあのシーンは、ちょっと間違えれば集団レイプシーンですから(笑)。 ──サガミは下心から映画づくりに参加しますが、城定監督が映画監督を目指そうと思ったきっかけは? 城定 巣鴨の高校に通っていたんですが、当時の池袋や高田馬場には名画座が多かったんです。高田馬場だけでなく池袋にもACTミニシアターがありましたし、シネマロサも当時は名画座だった。高田馬場も早稲田松竹以外に幾つも名画座がありましたし、池袋の文芸座はもちろん、銀座の並木座にも行ってました。最初は1000円で2本も映画が楽しめてお得だなと思って通っているうちに、古い映画が好きになっていきましたね。高校時代には「将来は映画監督になりたい」と考えるようになっていました。高校でも映画研究部に一瞬だけ入ったんですけど、キモい先輩がいて行かなくなり、高校では映画は撮ってません(苦笑)。大学に入ってから映画研究会で自主映画を撮るようになったんです。ビデオ撮影への移行期でしたが、僕は8ミリフィルムにこだわってましたね。 ──ユイ先輩みたいな憧れの女子の存在が影響したなんてことは? 城定 高校時代は男子校だったんで、まったくなかった(苦笑)。女性は売店でパンを売っているオバちゃんしかいませんでした。だから、今でも共学の雰囲気が分からないんです。本当、共学の高校に行けば良かったなと思ってますよ(笑)。あぁ、でも大学に入ってから、あったかもしれない。好きな女性をヒロインにして、映画を撮ろうとしたことがあったかなぁ……。  自身の青春時代を振り返りながら、城定監督はどこか遠くを見つめる。城定監督にとっての“ヒロイン”をめぐるエピソードをもっと聞いてみたい気もしたが、それは今後の城定作品の中で描かれることに期待しようではないか。JOJO作品を求めて、これからもレンタルビデオ店通いが続きそうだ。 (取材・文=長野辰次) jojo_ittsu03.jpg 『いっツー THE MOVIE』『いっツー THE MOVIE 2』 原作/岡田和人 監督・脚本・編集/城定秀夫 出演/副島美咲、中山龍也、鈴木淳、柳川芙美章、武田大知(無戦RUN)、若木萌、鈴木颯人(ペコ)、田口秋光、(マイペース)、八尋莉那、髙橋蘭、友寄蓮、伊瀬美雪、鼠先輩、小明(2のみ) 発売元・販売元/クロックワークス 『いっツー THE MOVIE』は現在DVDリリース中、『いっツー THE MOVIE 2』は9月3日(水)よりリリース開始。 (c)岡田和人(ヤングチャンピオン)/『いっツー』製作委員会 ●じょうじょう・ひでお 1975年東京都出身。武蔵野美術大学卒業。大学在学時から映画製作に関わり、ピンク映画の助監督として100本以上の作品に参加。『味見したい人妻たち』(03)で監督デビュー。主な劇場公開作に『ガチバン』(08)、『ホームレスが中学生』(08)、『18倫』(09)、『タナトス』(11)、『人妻セカンドバージン 私を襲ってください』(13)など。オリジナルビデオ作品『デコトラ・ギャル奈美』(08)や『本当にあったエロい話』(09)は人気シリーズとなっている。

『るろ剣』『花子とアン』の美少女が問題作に主演『人狼ゲーム ビーストサイド』で驚愕の大変身!

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ブレイクが確実視される土屋太鳳、19歳。主演作『人狼ゲーム ビーストサイド』では今まで経験したことのない難役にチャレンジしてみせた。
 大ヒット上映中の『るろうに剣心 京都大火編』ではアクションマニアを唸らせる難易度の高い殺陣を見せ、絶賛放映中のNHK連続テレビ小説『花子とアン』では花子の妹・もも役を熱演中。体育大学に通う現役女子大生・土屋太鳳(つちや・たお)は、身体能力の高さに加え、ひたむきな演技力で観客の心を魅了するハイスペックな若手女優なのだ。来年のテレビ小説『まれ』のヒロインの座をオーディションで勝ち取ったガッツの持ち主でもある。インタビュー記事に目を通していただければ、性格のピュアさも伝わるだろう。  ブレイク間違いなしの逸材・土屋太鳳にとっても、またファンにとっても「えっ!?」と驚いてしまうのが主演映画『人狼ゲーム ビーストサイド』。正体不明の何者かによってセミナーハウス風の建物内に監禁された10人の高校生たちが、生死を賭けた「人狼ゲーム」に挑むというもの。主演の土屋は、「村人」を襲う「人狼」のカードを引いてしまった樺山美佳という難役中の難役に挑んでいる。『バトル・ロワイアル』(00)出演時の柴咲コウを彷彿させるタフなキャラクターだ。ブレイク前の試練ともいえる人狼役に、彼女はどのように挑んだのだろうか? ──巻町操役で華麗なアクションを披露した『るろうに剣心 京都大火編』が大ヒット上映中。香港のアクション俳優ドニー・イェンばりの開脚キック(ドニーキック)を見事に決めましたね! 土屋 ありがとうございます(笑)。あの開脚キックのシーンは大変でした。どうしても体を捻りすぎて、顔が後ろに向いてしまうんです。頑張って、何テイクも撮ったんです。 ──『るろ剣』シリーズのアクション監督・谷垣健治さんが、「あのシーンはノーワイヤーなのに、『ワイヤー感ありすぎ』と言われてしまう」とこぼしてました。 土屋 えっ、ひどい! あのシーンはワイヤーは使ってませんよ。左足が痛くなるまで何度もテイクを繰り返したんです。どうしても軸足になる左足に負担が掛かって、繰り返しているうちに痛くなってくるんです。頑張って15時間掛けて撮影したんです。「ワイヤーで吊ってる」なんて、ひどいですよ~。
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由佳(土屋太鳳)たち10人の高校生は生死を賭けた人狼ゲームを行なうことに。村人役は10人の中に潜んでいる2人の人狼役を見つけて処刑しなくてはならない。
──怒った土屋さんの表情も素敵です(笑)。でも、10代の女の子で香港アクション映画好きで、ドニー・イェンをリスペクトしてるのも珍しいですよね。 土屋 アクションものが全般に好きで、家族みんなでよく観てました。弟がとくに香港アクション映画が好きなんです。私もジャッキー・チェンさん主演の『ラッシュアワー』(98)は何度も繰り返し観ましたね。アクション映画を観ているうちに、どうしても香港アクションもの、そしてドニー・イェンさん出演作にハマってしまうんです(笑)。ドニーさんって、技の切れ味が鋭いんです。『るろ剣』に出演が決まって、谷垣さんからいろいろアクション映画を見せていただいたんですが、「この人、観たことあるなぁ」と思っていたら、ドニーさんでした。後から気づいたんです(笑)。 ──谷垣さんはドニー・イェン率いるスタントチームの重鎮ですからね。えっと、あまりドニー・イェン話をしていると宣伝担当者の視線が気になるので、そろそろ主演映画『人狼ゲーム ビーストサイド』の話題を。「人狼ゲーム」のルールに従って、高校生たちが実際に殺し合うという驚愕の密室サスペンス。かなり過酷な体験だったのでは? 土屋 はい、私も今回の出演オファーをいただいたときはビックリしました。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』や『花子とアン』などはオーディションを受けていただいた役でしたが、今回の『人狼ゲーム ビーストサイド』は「次の主演映画が決まったよ」とマネージャーさんに言われて、「あっ、はい。やります!」という感じで脚本を読んだんですね。これまでに出演した作品には明快なテーマがあって、「よし、自分の役を演じることで、作品のテーマを観る人に届けよう」と思えたんです。でも、今回の作品は脚本を読んでも「何を伝えたいんだろう?」とすごく悩みました。人狼ゲームが進んでいく中で、参加者たちを次々と追い詰めなくちゃいけない役。難しかったですし、戸惑いました。 ──これまでは『鈴木先生』(テレビ東京系)の小川蘇美みたいな優等生役を演じることが多かっただけに、余計難しかったでしょうね。 土屋 はい。私は演技を基礎から学んだわけでもないですし、その役として生きることが役づくりだと考えているんです。作品の社会的背景やテーマ性について自分なりに考えることで、これまで役づくりをしていたんですが、今回の樺山由佳役はそういった役づくりができませんでした。 ──今まで自分なりに培ってきた役づくりのノウハウが役に立たなかったと。 土屋 そうなんです。でも、高校生同士が殺人ゲームを行なうってセンセーショナルさだけのエンターテイメント作品にはしたくなかったんです。リハーサルが3日間あったんですが、悩んだだけで何もつかめませんでした。どうしようかと考えているうちに、クランクインの朝が来て、家を出るときに姉が写真を撮ってくれたんですね。太陽が薄い雲に覆われていて、私の顔が映っている画像なんですが、その様子がまるで人間がオオカミに変身してく姿に思えたんです。今にも「ワォーン!」って吠え出しそうな感じ(笑)。姉が撮った画像を見て、思ったんです。今回の作品は人を殺したり殺されたりする物語なだけでなく、人が人でなくなっていく過程を描いたものじゃないかなって。そう思いついた瞬間、モヤモヤが収まりましたね。自分なりのテーマをつかむことで、撮影に挑むことができたんです。それでも、大変でしたけど(苦笑)。
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深夜ドラマ『リミット』で共演した桜庭ななみ主演『人狼ゲーム』(13)と同シリーズ。「ななみちゃんと同じ作品に出演する喜びもありましたが、撮影は大変でした」と語る。
──前作『人狼ゲーム』(13)に続いてメガホンを取った熊坂出監督から、ヒントは提示された? 土屋 さらけ出す、むき出す、自由、という3つの言葉をヒントとしてもらったんです。でも、本当の意味での自由って何だろうって余計に悩みました(笑)。本当の自分をさらけ出すって、魂を削ってまで自分を追い込んでいかないとできないことなんだなって今回やってみて実感しましたね。 ──殺人ゲームに従うかどうかは別にして、生きること死ぬことを自分自身に置き換えて考えさせる内容ですね。 土屋 日常生活をものすごく、ギューッと凝縮した世界なんじゃないかと思うんです。由佳たちのいる空間は一見すると極端な世界に見えますが、私たちのいる学校や会社にも通じるものがあると思うんです。由佳たちは何もわからないまま突然セミナーハウスみたいな場所に集められてゲームを強要させられ、ゲーム内容を理解できようが理解できまいが一方的にゲームが進行してしまう。ゲームが進む中で、自分自身を失ってしまう……。あって欲しくないんですけど、学校や会社といった環境が自分の性格に合わずに人間性が壊れてしまうことってあると思うんです。私、うまく言葉で説明できないんですが、この作品を観た方たちが何かを考えるきっかけになればいいなって。 ──俳優はよく「自分の中にある引き出しを開ける」っていいますけど、自分の中にある人狼の引き出しを開けるのは怖くありませんでしたか? 土屋 う~ん、実は撮影中のことはよく覚えていないんです。OKの声が掛かって、「あれ、終わったんだ」みたいな感じだったんです。もちろん演じるという意識はあるんです。「よ~いスタート」が掛かった瞬間に目を閉じて、目を開けたらもう自分は由佳なんだと思い込むようにしていました。心をなるべくフラットにするように心掛けて。目を一度閉じて、こうやってキッと睨むとキツそうな顔に見えるんですよね(笑)。後は普段の自分とはなるべく異なるようにしようと思い、ビンボー揺すりをずっとしていました。普段、私はビンボー揺すりしないので、他のキャストの様子を観察していたんですが、男子ってみんなすごくビンボー揺すりするんですね。今まで気がつかなかった(笑)。役づくりしていると、普段は気がつかないことがいろいろと見えてきますね。 ──なるほど、普段の自分とは違うキャラクターになるように努めたと。 土屋 はい。でもその分、なるべく普段の自分を大切にしようとも思いました。撮影の本番じゃないときは、他のキャストのみんなと一緒に仲良くご飯を食べたり、お話するように心掛けました。シリアスな内容だったので、キャスト同士での連帯感も強まりましたし、スタッフが美味しいご飯を用意してくれたり、明るい言葉を掛けながらメイクしてくれるのも有り難いなって思いました。あっ、でも撮影中は家族には電話できませんでしたね。電話したら「もう、嫌だ~」って泣き出してしまいそうで(笑)。撮休が1日だけあったので、自宅に一度戻ったんですね。姉に久しぶりに会ったら、やっぱり泣いてしまいました。 ──合宿スタイルでの5日間の撮影だったそうですが、過酷な体験だったようですね。村人役の美海(森川葵)と対峙するクライマックスは、本気で涙を流しているように思えました。 土屋 あのシーンは本当に辛かった……。私は人狼役だから絶対に泣いちゃダメだと自分に言い聞かせて臨んだシーンだったんです。でも、必死で泣くのを抑えようとしても、あのシーンは堪え切れませんでしたね。「泣くのは由佳らしくないな」と思って、熊坂監督にお願いして、もう一度撮り直していただいたんです。先日、みんなで初号試写を観たんですが、泣いている最初のテイクが使われていました。それを観て、「あっ、泣いている由佳も本当の由佳なんだな」って理解できたんです。「ひとりで生きていける」と強がっている由佳だけど、本当は人が好きで、友達を欲しがっている女の子なんだなって。自分ひとりで考えているときにはわからなかったことが、作品を通して観ることで理解できたように思います。 ──フィクションであるはずの由佳と素の土屋さんが融合した不思議なシーンに仕上がっていましたね。由佳役になることに苦闘している土屋さんが由佳役と一体化するまでのドキュメンタリーを観ているかのような気分でした。 土屋 多分、キャストのみんなそれぞれが大変だった作品だと思うんです。久々にみんなで集まって初号試写を観たときに、「このキャストとスタッフだから、最後まで頑張れたんだな」と思えましたね。今までにやったことのない役で悩みましたけど、自分にとって大事な体験になったように思うんです。自分らしさって何だろう? 本当に生きている実感ってどこにあるんだろう? そんなことをご覧になっていただいた方に感じてもらえればいいなって思っているんです。
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宗教や民族が違うだけで殺し合う人間社会の写し鏡でもある『人狼ゲーム』の世界。土屋太鳳はこれまでにないハードなキャラクターに挑んでみせた。
──では、最後は素の土屋さんへの質問。日記帳代わりにネタ帳を持ち歩いているそうですね。どんなことを書いているんでしょうか? 土屋 気になった言葉などをノートに書き記すようにしているんです。例えば、「将を射んとすれば馬を射よ」とか「ご飯はよく噛め」とか。福山雅治さんの言葉ですけど、「料理上手は芝居上手」とか(笑)。 ──どういう基準で土屋さんのアンテナに引っ掛かったのか非常に謎です(笑)。 土屋 最近だと、『花子とアン』で共演させていただいている鈴木亮平さんから教わった言葉もあるんですよ。この間、収録の合間に「太鳳ちゃん、ちょっと聞いてくれる? 弱点って、内に秘めればコンプレックスだけど、外へ出せば個性なんだよ。だから、太鳳ちゃん、大丈夫だよ!」って。そのときは思わず「えっ、それはどういう意味ですか?」って返してしまいましたけど、いい言葉ですよね(笑)。 ──村岡印刷さんに言われると、なんだかそんな気になりますね。『花子とアン』に続いて、来年3月から始まる連続テレビ小説『まれ』の主演も決まって、これからますます多忙になりそう。 土屋 そうなんです! 『花子とアン』の収録がようやく終わったばかりで、秋からは『まれ』の撮影が始まるし、いろいろとスケジュールが入ってくるので大変なことになりそう(笑)。でも、ひとつひとつのお仕事を、手を抜かずにしっかりやりたいです。『人狼ゲーム ビーストサイド』を撮り終わったときに感じたことなんですが、同時代を生きているみなさんと一緒に踏ん張って生きていきたいなって。これからもよろしくお願いします! (取材・文=長野辰次/撮影=尾藤能暢) tsuchiyatao_jinro032.jpg 『人狼ゲーム ビーストサイド』 原作/川上亮 脚本/山咲藍 監督/熊坂出 出演/土屋太鳳、森川葵、藤原季節、小野花梨、育乃介、桜田通、青山美郷、佐久間由衣、加藤諒、國島直希 企画・配給/AMGエンタテイメント 8月30日(土)より新宿武蔵野館ほか全国公開  (c)2014「人狼ゲーム BEAST SIDE」製作委員会  http://jinro-game.net ●つちや・たお 1995年東京都出身。黒沢清監督の『トウキョウソナタ』(08)で映画デビュー。『釣りキチ三平』(09)や『日輪の遺産』(11)でも印象的なキャラクターを演じた。NHK大河ドラマ『龍馬伝』では坂本乙女の少女期、『鈴木先生』(テレビ東京系)では小川蘇美役で注目を集める。犯罪サスペンス『アルカナ』(13)、異色ファンタジー『赤々煉恋』(13)ではヒロイン役に。現在はNHK連続テレビ小説『花子とアン』に村岡花子の妹・もも役で出演中。大ヒット上映中の『るろうに剣心 京都大火編』に続いて『るろうに剣心 伝説の最期編』が9月13日(土)より公開される。2015年3月スタートのNHK連続テレビ小説『まれ』のヒロインにも決定。

「頑張る嫌われ者を応援したい」高須院長が語る、清く正しい“タニマチ”人生のススメ

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撮影=後藤秀二
 幼少期の壮絶ないじめ体験、美容外科での成功を手にした後の医師免許停止処分、100億円という莫大な借金……濃密すぎる人生を歩んできた高須クリニック院長、高須克弥氏。そのすべてをつづった『筋と義理を通せば人生はうまくいく』(宝島社)の出版を記念し、高須氏に“タニマチ”としての生き方を伺うはずが……事態は風雲急を告げる。インタビュー冒頭で、パートナーである西原理恵子氏が合流という僥倖。さらに取材中、某テレビ局と高須氏との間にトラブル勃発! 闘い続ける男、高須克弥の荒ぶりを目撃した。 ――今まで何冊も本は出されていますが、“自伝”は今回初めてなんですね。 高須 自分のことって、恥ずかしいじゃないですか。だけど、もう70になるからね。確かノムさん(野村克也氏)も、70歳のパーティーをやった頃が一番輝いてた。サッチー(野村沙知代氏)もそうだったなぁ。あ、デヴィ夫人は今も元気いいか。でも、だいたいの人が70過ぎると急に老け込んじゃうのよ。人間って、老ける時はガクッと老けて、その後バタッと死んじゃうから。僕もいつ死んじゃうか分からないから、その前にいろいろと誤解を解いておいたほうがいいなと思ったのね。 ――デヴィ夫人、以前日刊サイゾーでもインタビューさせてもらいましたが(記事参照)、70歳でイルカに乗ったり、そりゃもうお元気でした。 高須 デヴィ夫人とサッチーはいいライバルだと僕は思ってる。うちの息子の結婚式にね、デヴィ夫人とサッチーと両方呼んだの。同じテーブルにしたら、ずっとにらみ合ってた。それで、サッチーのほうが「私帰る!」って席を立ったら、デヴィ夫人それから上機嫌(笑)。 ――同じテーブルとは、また……。 高須 そう? でもさ、結婚式とか葬式とかって、呉越同舟じゃない? だから「なんであんなのと一緒にするのよ?」とか言わないと思ってたの。それもあって、この前開いた僕の誕生日パーティーの時は、二人が会わないように、一人はバルコニーで、一人は一階下のテーブルで、死角になるようにしたよ。二人とも最後までいたよ。そうだ、あの時は浅香光代もいたんだった。ミッチーはあっという間に帰ったけど(笑)。 ――役者がそろった! 高須 だって、仲悪いっていっても、それが売り物の人たちもいるでしょう。曙とボブ・サップなんて、本当はめちゃめちゃ仲いいんだもん。だから、ミッチーもサッチーもデヴィ夫人も、そういう芸なのかと思ったら「う~ん」っていうにらみ合い。本気だったんだよね。 ――先生は、その真ん中にいらっしゃるんですね。 高須 僕はどっちの味方でもないんですよ。でも「敵と仲良くするヤツは敵」って、みんな思うんだよね。全方位外交は、友情ではなかなか難しい。 ――友情では全方位外交を取る一方で、社会とはとことん闘うというのが先生のスタンスですよね。本にも書かれている、税務署との10年戦争もかなり壮絶でした。 高須 法律的にしっかりやれば、僕は無罪なんですよ。脱税っていうのは、そもそもウソの申告書を書くってことなんです。でも、僕は申告書を自分で(サインと捺印)書いてない。後から聞いたんだけどね、税務署は裁判やっている間は何やっても来ないんだって。やりたい放題なんだって。それ知らなくて、すっごい真面目に申告してた! 税務署は自分たちが「脱税だ!」って乗り込んでいったら、ほとんどの人たちは言うこと聞くと思ってんの。それが「そうは思わん! 最高裁まで闘っちゃる」って言われたら、担当者はその後、その件に何年もかかりっきりになるから出世できないらしい。それについては、悪いことしたなって思ってます。 _MG_2901.jpg ――先生の「筋通し」人生に関しては、西原先生が書かれた扉のマンガがすべてを物語っているのではないかと思います。西原先生の「古っ」というコメントが(笑)。 高須 あ、今日サイバラそこにいますよ。呼んでくる? ――ええ? 本当ですか? 高須 面白いから呼んでこよう。 西原 あ、どうも。 高須 あなたが書いてくれたマンガのこと、今すごく褒めてたのよ。 西原 なんかすみません……(笑)。 高須 サイバラも同じ信念なんですよ。「負けた」って言うまでは、負けじゃない。本にも書いたけど「勝ち負けをつけない教育」とか、本当にバカじゃないのかなと思いますよ。だってやっぱりさ、勝ち負けがあるから向上心が生まれるんじゃない。負けるから、また勝つチャンスも出てくるんですよ。 ――勝ち負けをつけないというのは、「勝つ」ことのみならず「負ける」チャンスさえ奪われているということなんですね。 高須 僕ね、中国ドラマの『項羽と劉邦』が好きでね。サイバラは「このドラマ、ただ怒鳴り合ってるだけじゃん」って怒ってたけどね。だけど違うの。いつも負けてばっかりだった劉邦が、最後の最後で項羽に勝って漢王朝を立てるんだよ。 西原 ずっと口げんかしてるんですよ、三国志の人たち。うざいって。 ――(笑)。ずっと負けていたからこそ、「勝ち」に価値が出てくると。 高須 戦争はいけないって、みんな言うじゃない。負けたらいかんのですよ。だって、勝つ戦争の時は、全員賛成してたんだもん。 ――戦争に関しては、どんなご意見をお持ちですか? 高須 う~ん。友達がやっつけられてたら手助けするのが「義理」だと思うし、自分が理不尽に攻められてやっつけられてたら、抵抗する権利はあると思うのね。ケガするのが嫌だから戦わないって、バカだと思う。絶対抵抗しないって、それはいじめだもん。いじめられてるヤツって抵抗しないから。包丁持って振り回してるヤツのところには、いじめに来ないでしょ。 ――「昔はこんなヒドイいじめはなかった」とよく言われますが、先生の本を読むと、昔のいじめも相当ヒドイものですよね。 高須 昔のほうが、もっと暴力的だったと思う。特に、農村のいじめなんかすごいですよ。江戸時代から「村八分」っていってね。そもそも“仲間じゃないヤツ”をいじめるわけだから、農民ばっかりのところに医者の家の白いブタのガキがいたら、そりゃいじめますよ。サイバラのマンガにも描いてあるな。「一番憎いものは、家にピアノがある医者の家の小太りのガキ」って。俺のことじゃん(笑)。 西原 そうそう(笑)。 高須 この前、50年振りに同窓会やったんだけど、いじめっ子のほうはすっかり忘れてるんだよ。年食ってくると、だんだんボケちゃってね。嫌なことから順番に忘れていくから、幼い頃の思い出はすべて美しいの。んなことないのよ。子どもの時から嫌なことはたくさんあったはずなのよ。だけど、平気で「子どもの頃に戻りたいね~」とか言ってくる。 _MG_2913.jpg ――「昔は良かった」という話は、つまり…… 高須 老人になったっていうこと。古い嫌なメモリーが落ちちゃって、選ばれたいいメモリーが残ってるってだけ。 ――いじめと対峙する上で、一番大事なことはなんでしょうか? 高須 精神的に負けないことよ。肉体的には敵わなくても、決して負けは認めない。いつも闘争心を持つこと。自殺するくらいだったら、いじめたヤツに一服盛ってやったほうが気分がいいと思うんだけどね(笑)。でも「こいつは一服盛るかもしれない」と思われるようなヤツだったら、いじめられないか。 ――いじめや偏見などの“外圧”と闘いながら、儲けたお金は寄付やボランティアに使う、「タニマチ」という生き方もこの本の大きなテーマですが、先生が支援を決める際のポイントはどんなところでしょうか。 高須 「誰も目をつけていない」かつ「僕が支援したら伸びるんじゃないかな」って思うことかな。基本的には嫌われてる人、ちょっと落ち目の人、いま不遇をかこってる人、そういう人ほどタニマチ心が燃える。すごく幸せになっちゃうとね……今の安藤美姫なんて、全然そういう気持ちが湧かないね。勝手にやれって感じ。 ――本には「頑張る嫌われ者を応援したい」と書かれていましたね。 高須 別にもう彼女は嫌われてないしね。あんまり頑張ってなくても、仕事できてるじゃん。だから、そうなるまでの手助けができればって思うんですよ。それで目的は達成してる。 ――いま応援したい人は? 高須 ダライ・ラマには全力投球してます。ダライ・ラマとは本当に仲良し。チべタン・チルドレン・ヴィレッジっていう、中国から逃げてきた孤児たちを収容する学校があるんだけど、そこに寄付したの。お礼にダライ・ラマ法王庁から招待状が来てる。僕のほうのスケジュールがキツくて、なかなか行けないんだけど。 ――逆に「こういうヤツは応援したくない」と思うのは、どんなタイプですか? 高須 今回ね、「小保方晴子さん(への支援は)どうですか?」って結構言われたんですよ。でも、即答で「NO」。あの人はパッと見て、食わせもんだって分かったもん。勘がいいのよ、その辺は。要するに、「ウソつき」と「ズル」はダメ。 ――例の会見でも、核心部分は何も話してなかったですしね。 高須 「コピペ」とか「写真のすり替え」とか聞いた時点で、あぁダメだなと。研究の根底が揺らいでいるから、僕としては関わり合いたくない。でも、あの時は世論の半分くらいは「小保方さんは悪くない」だったよね。 ――「かわいいんだから許してやれ」という(笑)。 高須 それはみんな素人だからですよ。論文の出だしでウソをついた人を、信用できないでしょ? 土台が揺らいだら、その上にどんな立派な建物立てても、すぐ崩壊しちゃう。ナインティナインのラジオで岡村(隆史)くんに「院長、応援してあげたらどうですか?」って提案されたから、逆に「君なら応援してもいい」って言って番組(オールナイトニッポン)のスポンサーになったよ。小保方に支援するくらいなら、君たちの番組を応援するって。 _MG_t3017.jpg ――ドラマ『明日ママがいない』(日本テレビ系)をめぐる騒動ではスポンサーを名乗り出たにもかかわらず、売名行為と言われたり。 高須 みんな足並みそろえて「高須を入れるな」って(笑)。 ――オイシイとこを持っていかれたくない、という嫉妬でしょうか。 高須 分からないなぁ。でも、日テレのメンツなのかね。スポット(番組や時間帯の指定なしに放送されるCM)でもPT(番組中に番組提供の広告主以外のCMを放送すること)でも全部買ってやるからって言ったんだけど、日テレは頑として売らないと。そうそう、テレビでいうと今ね、すごいモメそうなヤツがあるのよ。 ――なんですか? 高須 僕ね、某T○Sで毎週土曜よる9時54分から『スッ○ン!』っていうミニ番組やってるの。博報堂仕切りで。ちょっとマンネリ化してきたから、テコ入れしようと思って「もっと面白くやれよ」って、僕としてはハッパかけてたんですよ。もちろん、スポンサーは続けるつもりでね。それが、ついさっき代理店から「高須さんより800万円高く○○○商事が買ってくれるって言うから、そこに売っていいものかどうかT○Sが検討してる」って連絡が来たの! バッカじゃねーか! 人のものを勝手にオークションにかけるようなことしたら、大問題ですよ。 ――それは明らかな契約違反じゃ…… 高須 僕も「そんなことができるのか!?」って言ったら、「T○Sのローカルルールで“空白の一日”っていうのがありまして……」って。江川(卓)かよ!! ――空白の一日……? 高須 正義はいくつもあっちゃいけないんですよ。今度T○Sで面白そうな番組があったら「800万円余計に出すからあれを売ってくれ。“空白の一日”があるんだろ」って言うからな(笑)。中小企業だと思ってバカにしおって! ――どうして先生は良きことをしているのに、このような憂き目にあうのでしょう。 高須 最近ちょっと思うんだけどね、もしかして僕は笹川良一さんの代わりにされてるのかなって。叩きやすい対象っていうのが、誰でもいるんじゃないのかな。叩きやすいのかもしれない、僕は。叩いてもこたえないし。 ――でも、それって社会的ないじめじゃないですか。 高須 いじめそのものですよ。普通だったら「すみませんでした」って言って、長いものに巻かれるじゃない? 僕は、長いものは切りつけてやるの。 ――先生としては、正しいお金の使い方をしているだけなんですよね。 高須 お金っていうのは血液みたいなもんだから、一カ所に滞らせるとロクなことないのよ。血圧上がるし。血液は循環させるべきもの。自分の血液なんだから、好きなところに供給すればいいんですよ。それは血液の持ち主の正当な権利。たくさん税金持っていくんだったらそれなりに尊敬するとか、それこそ“貴族院議員”にするとかさ(笑)。なんかしろよと。いっぱい稼いでいっぱい税金払ってるヤツが悪者、みたいに言われるのが頭に来るの。 ――今日のお話で、タニマチとしての先生の揺るぎない価値観が少し分かったような気がします。 高須 なんでもそうだと思うんだけど、「正直に生きる」っていうことだよね。義理っていうのもそう。いっぺん口に出して約束したことは、何があっても守るっていうのが「義理」。それを、正義をいくつも作ってT○Sみたいなことやられたら、世の中が全部ひっくり返っちゃう。 ――この本をT○Sの方に差し上げたいですね。 高須 僕がどんな攻撃をされようと堂々と生きていられるのは、少なくとも僕が義理と筋を通した人たちは僕の味方だから。長いスパンで見ていると、義理と筋を欠いたヤツは潰れます。いざという時に誰も助けてくれないからね。オイルショック、バブル、リーマンも乗り越えて、本当にそう思いますよ。 ……取材後、代理店からT○Sが正式に高須クリニックスポンサー枠の番組を○○○商事に売ることが決定したとの連絡が入った。「これで面白くなるな」と、新たなる敵に闘志を燃やす高須院長だった。 (取材・文=西澤千央)

園子温監督の“青の時代”はすでに終わった!?「僕には憎悪のエネルギーはもうありませんよ」

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「今年は3本、来年は5本の映画を撮る!」と豪語する園子温監督。さらに作家、タレント、ミュージシャン……と多彩な活躍を見せている。
 4時間の超大作『愛のむきだし』(09)、実在の連続殺人事件を題材にした『冷たい熱帯魚』(11)、染谷将太と二階堂ふみにベネチア映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞をもたらした『ヒミズ』(12)等など、問題作・話題作を次々とヒットさせている園子温監督。今や世界でもっとも忙しい映画監督といっていいだろう。園監督の大ブレイクは長年のファンにとってうれしい反面、ここ数年の作風の変化に戸惑いも感じているのではないだろうか。黒い帽子にボーダーシャツというおなじみのファッションも見なくなってしまった。はたして園監督はどこに向かっているのか? 『TOKYO TRIBE』の劇場公開を控え、多忙さを極める園監督にそのへんのことを含めて、ぶっちゃけて聞いてみた。  『TOKYO TRIBE』は1990年代に発表された井上三太原作の伝説的コミック『TOKYO TRIBE2』の実写化。近未来のトーキョーを舞台に、池袋を牛耳るブクロWU-RONZのボス・メラ(鈴木亮平)、ムサシノSARUのメンバーである海(YOUNG DAIS)らがストリートファイトを繰り広げるアクションエンターテイメントだ。『アナと雪の女王』の感動を上回る“バトル・ラップ・ミュージカル”を謳っている。NHK連続テレビ小説『花子とアン』で注目度が急上昇中の鈴木亮平と北海道を拠点にした現役ラッパーYOUNG DAISのダブル主演作で、ヒロインの清野菜名はキレのあるアクションとパンチラも披露している。園監督らしいカオティックな世界が広がる作品だ。 ──園監督は以前は『愛のむきだし』をはじめとするオリジナル作品にこだわってきたわけですが、『TOKYO TRIBE』は『ヒミズ』に続くコミック原作の映画化。オファーを受けた経緯について教えてください。 園子温 『ヒミズ』のときは、僕から「一度コミックものの映画化をやってみたい」と切り出したんです。それで先方が提案してきた原作があんまり面白くなかったんで、それなら『ヒミズ』をやりたいと自分で進めた企画でした。だから、最初から『TOKYO TRIBE』の映画化を持ち掛けられた今回とは事情が異なるんです。それで『ヒミズ』の後、テレビ東京で『みんな!エスパーだよ!』をやったんです。これが僕にとっての最初の原作つきのオファーでした。最初は「えっ、これ?」と思ったけど、やっているうちに「なるほどな」と思えてきて、面白くなってきた。で、その次に来たのが『TOKYO TRIBE』。確かに原作は面白いんですよ。でも、僕はストリートファッションとかヒップホップとか分からない。これは無理だなと思いました。 ──『TOKYO TRIBE』は井上三太さんの独自の絵のタッチがあってこその完成された世界ですからね。  そう。でも、三太さん自身が言ってたんですが、「ヒップホップやストリートカルチャーをリスペクトしている人が映像化するとシラけたものになる」と。確かにそうだなと思ったんです。フランシス・F・コッポラ監督はマフィアが嫌いで、『ゴッドファーザー』(72)を撮るのが嫌だったそうです。『仁義なき戦い』(73)を撮った深作欣二監督もヤクザが好きだったわけじゃない。マフィアやヤクザをリスペクトした人が映像を撮ると、裏社会の美学にこだわり過ぎてかっこ悪くなる。以前から僕には、“距離感があって醒めた目で撮るからこそ面白いものが作れる”という理論があるんです。その理論に従えば、ラッパー自体にそれほど興味を持たなくてもいいんだということになる。それでヒップホップについて勉強するのは今回はやめました。 ──完成披露の際に「この話は断ろうと思っていた」と園監督は話していましたが、企画当初はさほど乗り気じゃなかったわけですね。  うん、本当にどうしようかなと思った。そんなとき、今回出演してくれたラッパーたち全員に会う機会があったんです。練マザファッカーとか実在するんですよ。新宿とか渋谷にもそれぞれのエリアに族がいる。リアルに凶暴な人たちで、会ってみたら「面白い!」と思ったんです。役者を使うよりもリアルな不良たちをそのまま映画に出したほうがストリート感が出るだろうなと。それだったら、実際のラッパーたちがやるラップミュージカルにしちゃおうと。そいつはいいなと思えてきたんです。『爆裂都市』(82)や『ストリート・オブ・ファイヤー』(84)みたいに、街はオールセットにしちゃおうと。そこまで考えたら、めちゃめちゃ楽しくなって、面白いものができそうな気がしてきた。
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世界初のバトル・ラップ・ミュージカル『TOKYO TRIBE』。“村岡印刷”で人気急上昇中の鈴木亮平とリアルラッパーのYOUNG DAISが激突!
──ラップミュージカルというアイデアが湧いてから、一気に企画が進み出したわけですね。  そうです。漫画原作をそのまま映画にしたら、死ぬほどつまらない映画になっていたと思いますよ。役者たちがそれぞれキャラクターに扮して、「ヘイヘイ♪」とか言いながら本当の渋谷や新宿でロケして、ケンカするわけでしょ? しょっぼーいのしか撮れないですよ。『ルーキーズ』や『クローズZERO』みたいなすでにあるものになっちゃう。そうじゃなくて、もっとぶっ飛んだ世界にしたかった。言ってみればポジとネガみたいな関係で、普通の映画は本当の渋谷の街にウソのラッパーが出てくるわけだけど、それを逆にして本物のラッパーたちがウソの街でラップするということをやったわけです。 ■街頭パフォーマンス「東京ガガガ」は体に染み付いたもの ──園監督も売れっ子になって、人気コミックを原作にしたメジャー路線に転じたというわけではない?  『TOKYO TRIBE』は全然メジャー路線じゃないですよ(苦笑)。全然違う。これがメジャー路線になれればいいんだけど。でも、世界的に見たら、こっちがメジャー路線ですよ。日本の映画が偏りすぎ。ハリウッドだと『ワイルド・スピード』(01)や『ハングオーバー!』(09)みたいな下らなくて笑える映画が多いわけじゃないですか。ビール飲みながら観て、すっきりするエンターテイメント作品。それが主流ですよ。でも、日本だと病気になったり、喜怒哀楽を掻き乱すような作品が主流になっている。この間、ポスター見たら、『ドラえもん』(『STAND BY ME ドラえもん』)でさえ「ドラ泣きしてください」って。ふざけんなよ、ドラえもんはフツーにしてろよ(笑)。本当に面白い映画を作ることよりも、観た人を泣かせることのほうが大事になっている。それって、いびつですよ。『TOKYO TRIBE』みたいなエンターテイメント作品のほうが海外では主流なんです。 ──主人公の海(YOUNG DAIS)たちが戦う相手は、竹内力を家長に叶美香、窪塚洋介、中川翔子らで構成されたブッバ一家。インディーズvs.メジャーという図式が園監督らしいなと感じました。  それはまったく意識してなかった(笑)。でも、面白い見方だね。ラッパーは本当のラッパーたちにやってもらって、ブッバ家は別にラッパーはいらないから、コテコテ系の面白い家族にしようと思って役者を起用しただけです。 ──海たちがブッバ一派と激突するクライマックスの市街戦はかなりの迫力。園監督が90年代にやっていた街頭パフォーマンス「東京ガガガ」をイメージしたものでしょうか?  東京ガガガは全然イメージしてないですね。東京ガガガはイメージするものではなく、体に染み付いているものなんです。それだったら、『自殺サークル』(02)のほうがガガガに近いでしょうね。『自殺サークル』はJR新宿駅のホームに女子高生52人を本当に集めてゲリラ撮影したんです。無許可撮影だったんで関係者はみんな怖がっていたけど、僕はガガガで何度もゲリラ撮影を経験していたので何が危ないのか、どうすればいいのかを空気感で分かっていましたから。『HAZARD』(06)でもオダギリジョーを使ってNYや渋谷でゲリラ撮影やりましたしね。今回は様式的アクションですよ。
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「米国を放浪していた頃に観た、ヴァンパイアとチアガールが戦うZ級映画が衝撃的だった。あんな純粋なエンタメ作品を撮りたい」と語る
──You Tubeオーディションを行なったことでも話題になりましたが、オーディションで集まったキャストたちはどうでした?  役者もさることながら、役者でも何でもないラッパーたちが頑張ってくれましたね。最初は「どうなってもいいや」と思ってたんですよ(笑)。僕は大島渚監督の映画が好きなんですが、大島監督の『新宿泥棒日記』(69)には当時の紀伊国屋書店の社長(田辺茂一)がけっこー大事な役で出ているんですよ。芝居はうまくない(笑)。でも、それでいいんだと思えたんですね。大島監督の言葉ですが「映画は役者のドキュメンタリーだ」と。『TOKYO TRIBE』もそのつもりで撮ったんです。それがね、YOUNG DAISは意外と芝居うまいし、他のラッパーたちも一生懸命にやってる。彼ら本物の不良は我慢強いんですよ。出待ちで長い時間待たされていると、役者でもイライラするのに、彼らは落ち着いて待っていてくれましたしね。「キレたりしない」と言ってました。「そんな子どもっぽいことはしない」と。チンピラまがいの役者とは全然違いましたね。 ■いつ映画をやめるときが来てもいい覚悟がある ──園監督は2000年にサンフランシスコ留学を終え、ゼロ年代に『自殺サークル』で商業路線に転じたわけですが、『愛のむきだし』でブレイクするまでに7年の歳月を要しましたね。  本当、長かった。『愛のむきだし』の前に撮った『紀子の食卓』(06)も無視されたしね。 ──『紀子の食卓』は吉高由里子のデビュー作。レンタル家族を題材にした素晴しい作品でした。  『愛のむきだし』が話題になったのも、劇場公開後にビデオレンタル化されてからですよ。まぁ、『愛のむきだし』が評価されたんで『冷たい熱帯魚』を撮ることに繋がったんですけどね。40歳代後半になって、ようやくメシがちょっとだけ喰えるようになった。ちょっとだけ(苦笑)。今、52歳でそこそこ喰えるようになった。ここ1〜2年でたらふく喰えるようになりたいですよ。そうじゃないと、不公平じゃないですか(笑)。 ──ブレイク作である『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』、それに『恋の罪』(11)にはそれこそ地下マグマのような熱いドロドロしたエネルギーが篭っているように感じました。でも、ここ数年でずいぶん変わりましたよね。今や超売れっ子になった園監督は、その点はどう感じていますか?  うん、そういった憎悪のエネルギーはもうないですよ。でも、僕はそれでいいと思っているんです。僕はピカソも好きなんだけど、ピカソが貧乏時代に描いていた「青の時代」ってあるじゃないですか。さすがに「キュビズムの時代」になってお金持ちになったピカソに、「青の時代」みたいな絵を描けといっても描けないですよ。めっちゃ売れっ子になって、貧乏時代の絵を描き続けるのはおかしいですよ。ピカソってはっきり時代が分かれて、どんどん進化していくじゃないですか。だから、今回の『TOKYO TRIBE』も、これは僕にとっての前進なんです。 ──具体的に作品名を挙げると、『ヒミズ』での希望を感じさせるラストシーンから、園作品は変わってきたように感じます。憎悪のエネルギーが浄化されていったような……。  いや、明確に変わったのは『希望の国』(12)を撮り終わってからですね。『希望の国』を被災地で上映して、被災地の人たちに観てもらい、「ありがとう」と喜んでもらえたんですが、その喜びは純粋な喜びではなく、悲しみなわけです。見終わった後、被災地の人たちは涙を流しているんです。「あはは、楽しかったね」じゃないんですよ。僕はそのときに彼らが何も考えずに心から楽しめるような映画を撮ろうと考え、完全なエンタメを撮るようになったんです。それが『地獄でなぜ悪い』(13)であり、今回の『TOKYO TRIBE』なんです。最近、ダビングが終わったばかりの『ラブ&ピース』(2015年公開予定)は完膚無きまでのエンタメに仕上がってます。観た人、みんなほっこりする映画です。サザエさん一家がみんなで観てもいい映画が、初めてできたんです(笑)。
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人間家具が目を惹く、ブッバの息子・ンコイ(窪塚洋介)の部屋。園監督いわく、『時計じかけのオレンジ』(72)へのオマージュシーンとのこと。
──ほっこりする園作品!? いずれにしろ、園監督にとっての「青の時代」はもう終わったということですね。  そうです。最近は「Revolution Q」というバンドでライブ活動やってますし、美術館で個展を開くための作品もつくり始めたところです。『毛深い闇』(河出書房新社)という小説も書き下しました。それにタレントとして、毎週バラエティー番組の収録をやっています。今年は映画を3本撮って、来年は5本撮る予定。いつ映画をやめるときが来てもいいつもりでいるんです。実際、映画づくりは少し中断してもいいなと思っているんです。僕は過去にも何度か映画づくりから離れてますから。東京ガガガを始めたときも映画はやめていたし、サンフランシスコを放浪していたときも映画づくりからは離れていたわけです。でも、映画をやめる度に世界が開けてきて、表現の自由度が上がった。僕にとっては映画をやめることは、決してネガティブなことじゃないんです。まぁ、生活は大変になるでしょうけど、それでもいいやって(笑)。 ──「青の時代」に続く、園監督の新しい時代は何時代と呼びましょうか?  ピカソでいう「キュビズムの時代」はまだ来てませんね。順番でいえば「桃の時代」かな? いや、あれはなんだっけ……。ピカソの絵で有名な『アビニヨンの娘たち』(キュビズム革命の発端になった作品)だ。あれこそ、ピカソって感じがしますよね。だから、次の時代は「園子温の時代」。まごうことなく「これが園子温の映画だ」という作品を撮るんじゃないですか。 ──最後にもうひとつ。園監督のトレードマークだった黒い帽子を最近は被っていませんが、これも心境の変化ですか?  『新宿スワン』(2015年公開予定)を撮っているときにね、沢尻エリカが僕の帽子を取っていったんですよ。それまで20年近く被っていた帽子なのに。撮影に追われていたんで、「まぁ、帽子なしでもいいか」と思って、そのまま帽子なしで今も過ごしているんです。園子温の歴史を変えてしまった、沢尻エリカはまさに魔性の女ですよ(笑)。  1作ごとにスタイルが大きく変わっていく園子温監督。鬼才の新時代はいつから幕を開けるのだろうか。『TOKYO TRIBE』は8月30日(土)からの公開だ。 (取材・文=長野辰次/撮影=名鹿祥史) tokyotribe03.jpg 『TOKYO TRIBE』 原作/井上三太 脚本・監督/園子温 出演/鈴木亮平、YOUNG DAIS 清野菜名、大東駿介、石田卓也、市川由衣、ベルナール・アッカ、丞威、松浦新、石井勇気(パンダユナイテッド)、坂口栞琴、佐々木心音、中野英雄、大方斐紗子、山本亨、城明男、山口祥行、北村昭博、髙山善廣、深水元基、片山瞳、屋敷紘子、矢吹春奈、サイボーグかおり、三田真央、横山美雪、間慎太郎、舘形比呂一、泉澤祐希、Stephanie、佐藤隆太、染谷将太、でんでん、窪塚洋介、竹内力 配給/日活 R15 8月30日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー (c)2014 INOUE SANTA/〝TOKYO TRIBE〟FILM PARTNERS http://tokyotribe-movie.com ●その・しおん 1961年愛知県豊川市出身。『俺は園子温だ』(85)がPFFに入選、『男の花道』(87)でPFFグランプリを受賞。PFFスカラシップ作品『自転車吐息』(90)はベルリン映画祭に出品された。路上パフォーマンス集団「東京ガガガ」時代にはジャン・ジャック・ベネックス監督のドキュメンタリー『おたく Otaku』(93)に出演している。1999年に文化庁新進芸術家在外研修員として米国に留学。帰国後に『自殺サークル』(02)、『紀子の食卓』(06)などの問題作を発表。『愛のむきだし』(08)はベルリン映画祭で2冠を受賞し、主演の満島ひかりと共にブレイク。以後、『冷たい熱帯魚』(11)『恋の罪』(11)『ヒミズ』(12)とヒット作を連発する。『希望の国』(12)では原発事故を正面から描いてみせた。『地獄でなぜ悪い』(13)はトロント映画祭ミッドナイト・マッドネス部門で観客賞を受賞。『TOKYO TRIBE』に続き、『ラブ&ピース』『新宿スワン』の公開が控えている。2014年6月には故郷・豊川市を舞台にしたミステリー小説『毛深い闇』(河出書房新社)を上梓した。 ■園子温率いるバンド「Revolution Q」のライブイベントが9月30日(火)に東京・恵比寿LIQUIDROOMで行なわれる。対バンライブとして「ART-SCHOOL」のほか、多数のゲストが参加。18時開場/19時開演、前売り3800円(税込み)。http://www.sonosion.com

おそらく史上初! “釣り”をテーマにしたアイドル「つりビット」が梅宮辰夫の相棒を目指す!?

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 グループアイドル百花繚乱な昨今。おたくアイドル、ゾンビアイドル、寿司ドル、虫ドル……などなど、ちょっと変化球な特徴をつけたグループもたくさんいますが、そんな中、いそうでいなかったのが「釣りアイドル」。  まあ、少々旬を過ぎたグラビアアイドルさんがテコ入れとして「釣りアイドル」を名乗る……というパターンはなくはなかったですが、グループアイドルじゃないですからねぇ。  さてさて、メンバーみんな中学生という彼女たち。女子中学生が釣りをやるなんてイメージはないですけど……。どうして「釣りアイドル」になったのか、大人にやらされているだけなのか!? 山下達郎の名曲「踊ろよ、フィッシュ」のカバーをリリースしたばかりの、つりビットを直撃した! ■釣りは、おじさんがやるものだと思ってた ――「日刊サイゾー」初登場ということで、まずは自己紹介をお願いします。 小西 つりビットの中学1年生。ダンスリーダーの「あゆたん」こと小西杏優です。釣りたい魚は鮎です。よろしくお願いします! 長谷川 つりビットの最年長でリーダーの「みーちゃん」こと長谷川瑞です。釣りたい魚はマダイです。 聞間 つりビットの美容リーダー。中学2年生の「ちゃんあや」こと聞間彩です。釣りたい魚はマグロです! 安藤 つりビットのMC&ボーカル隊長。中学2年生の「さくちん」こと安藤咲桜です。釣りたい魚はカジキマグロです! 竹内 つりビットの中学2年生。サブリーダーの「なっちゃん」こと竹内夏紀です。釣りたい魚は~……。 一同 カツオだよ! カツオだよ! いつか世界を釣り上げます! つりビットです、よろしくお願いしまーす! ――……あ、そういうのが決まってるんですね。「釣り」がコンセプトという珍しいアイドルですけど、みなさんこれまで釣りはやったことがあったんですか? 竹内 ゲームとかならありますけど……。 聞間 私はザリガニ釣りくらいですね。そもそも、釣りをするアイドルだっていうことを聞いてなかったんですよ。 安藤 オーディションを受けて、メンバーと初めて顔合わせをするっていう時に、いきなり「釣りをやる」って聞かされたんで。 ――まあ、中学生くらいの女の子は、あんまりやりませんよねぇ。釣りに対して、どういうイメージを持っていましたか? 安藤 ただ待つだけ……みたいな。 聞間 もっと年上の男の人がやるっていうイメージだよね。 長谷川 やっぱり、おじさんがやるものだと……。 ――初めて釣りをしたのは、このメンバーで集まって……という感じだったんですか? 安藤 そうですね。ニジマスが釣れる管理釣り場っていうところで、ルアー釣りをやりました。 長谷川 みんな初めての釣りだったんだけど、釣れたメンバーと釣れなかったメンバーがいたね。 竹内 魚がかかった時は、ゲームみたいにブルブルッてなって、すごい興奮しました! うれしかったです。 安藤 私は釣れなくって……ホント悔しかった! 小西 やめたくなるよね。みんな釣れてるのに、自分だけ釣れないなんて悲しくなっちゃう。「これから釣りを頑張ろう」って思いました。 ――「釣りって、待つだけのものじゃないんだ」って思いましたか? 安藤 リールの巻き方や、竿の動かし方で、ルアーを本物の魚っぽく見せる方法がいろいろあるんだって知って「釣りって、意外と深いんだ!」って思いました。それから、どんどんハマッていきましたね。初めて釣れた時には「魚の引きって、こういう感触なんだー!」って今でも覚えてます。
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■つりビットを始めて、お父さんと共通の話題が ――逆に、釣りをやる上で一番キツかったことってなんですか? 聞間 イソメ(虫えさ)を触ることですね……。 安藤 ああー、やっぱりそこだよね。でも、もう触らないと始まらないんで。 聞間 私はもう全然、虫とかダメ系なんで大変でした。 長谷川 今ではみんな慣れて、無表情のままプチッと頭を切って針に付けられるようになったけど(笑)。最初は、魚に触るのも怖がってたのにね! ――しかし、歌や踊りのレッスン以外に、釣りも頑張らなきゃいけないから、普通のアイドル以上に大変ですね。 安藤 釣りに関しては趣味のひとつになってるんで、そんなに苦には感じないですよ。 竹内 みんな、普通にプライベートでも行ってますから。 安藤 私がつりビットを始めてから、お父さんも釣りをやるようになって一緒にハマッてます。共通の話ができて楽しいです! ――ああ、いい話ですねぇ。ちなみに、釣りを始めるまでの趣味って、なんだったんですか? 安藤 ゲームとか漫画とか……。 長谷川 私も! ――超・インドア派じゃないですか。 安藤 外で遊ぶことなんてなかったですもん。 長谷川 日の光を浴びない子どもでした。 小西 私は、ちゃんと外に出て遊んでたけど……鬼ごっことか。 ――(笑)。鬼ごっこかぁー! 聞間 私は公園に行って、ガールズトークとかしてましたね……。 ――それは家でやればいいじゃないですか! 安藤 何を話すの? 恋バナとか? 聞間 恋バナはしてなかったけど……外で話すのが楽しいんですよ! ■目標は梅宮辰夫の相棒!? ――さて、今回のニューシングル「踊ろよ、フィッシュ」ですけど、元曲である山下達郎さんの歌は知らないですよね? 竹内 知ってましたよ! 安藤 家にお父さんのCDがあったんで、「山下達郎さんじゃん!」って驚きました。 ――達郎さんの歌は、すごく昔のCMソングだったんですよ。つりビットのバージョンはアレンジされて、かなりアイドルソングらしくなってますよね。 安藤 最初は、「こんな歌が私たちに歌えるのか」って思いましたね。すごく声の音域が広いんで。 長谷川 でも楽しく歌えました! 曲の中に水の音が入っていたり、夏っぽいアレンジになっているので、ぜひ聴いてもらいたいです! 竹内 つりビット風のアレンジのひとつとして、アウトロのところで、みんなで「フィーッシュ!」って叫んでいるんですけど、そこはライブでお客さんとも一緒に言えればなって思ってるんですよ。まだお客さんは恥ずかしがって、ちらほらしか言ってくれていないので、ぜひ全力で叫んでください! ――ところで今、メンバー内で「釣りセンター」というものを競っているらしいですけど、これはAKBでいうセンターってことなんですか? 長谷川 まあ、そういうことですね。10月10日(“ととの日”=釣りの日)に向けて、釣りの釣果とかペーパーテストで競っています! 安藤 釣りの技術が一番ある子が「つりセンター」になって、新曲のセンターになれるんですよね。 ――仲良く見えて、意外とセンターをめぐってドロドロしてたり? 小西 楽しいのが一番なんで、そんなにバチバチしてないですよ。 竹内 そう言いつつ、みんな「負けないぞ」っていう気持ちはあるんじゃないかな……? 安藤 でも、釣りで糸が絡まったりした時は、ちゃんと助け合ってますよ! ――「センターになりたいから」って、そこで無視してたらイヤですよ! 安藤 まあ、誰がセンターになっても、「おめでとう」って感じになるとは思いますよ。
――それでは、今後の目標を聞かせてもらいたいんですけど、まずはアイドルとしての目標を。 長谷川 とりあえずの目標は武道館ですかね。 安藤 「世界を釣り上げる」って言ってるんだから、東京ドームくらいまでいこうよ! 長谷川 とりあえずの目標ね。 ――武道館でやるとして、「釣り」要素はどんな感じで入れていくんですか? 長谷川 うーん、竿投げますか? 安藤 意味わかんないよ。ステージに湖を作っちゃって魚を放とう! 長谷川 大人が困るよ、そんな大規模なのは。でも、お魚は欲しいよね……わかった、マグロの解体ショーをしよう! ――アイドルのライブで解体ショー! 安藤 新鮮なんでみんな喜びますよ、きっと。 ――その昔、スターリンっていうバンドが似たようなことをやってましたけどね。 安藤 あーっ知ってます、豚の臓物を投げるんですよね! ――そんなの、よく知ってますねぇー! それじゃ続いて「釣り」での目標を教えてください。 安藤 メンバーごとに釣りたい魚種というのが決まっているので、とりあえずはそれを釣ることですね。 ――マグロとかカジキあたりは、相当難しそうじゃないですか? 安藤 梅宮辰夫さんのクルーザーに乗せてもらわないと(笑)。梅宮さんの相棒になりたいです! カジキマグロを釣り上げる頃には、腕はムキムキで真っ黒になってるかもしれませんよ。 長谷川 アイドルと両立できないよ! ――そのほかに、興味のある魚ってありますか? 聞間 深海魚! マグロを釣った後には、深海魚に行きたいと思ってるんですよね。顔がかわいいじゃないですか。 安藤 見たことないような魚をどんどん釣っていきたいよね。 竹内 私は料理するのが好きなんで、食べれるお魚をいっぱい釣って、さばいて食べていきたいです。 安藤 いいお母さんになれますね! ――最後に、釣りは好きだけど今までアイドルには興味がなかった……という人へのアピールを! 小西 釣りイベントとかもありますから。私たちと一緒に釣りましょう! 長谷川 まだまだ初心者なんで、詳しい人には教えてもらいたいですね。 安藤 握手会だけじゃなく、釣りでもコミュニケーションを取れるアイドルというのが売りなんで、ぜひ遊びに来てください! (取材・文=北村ヂン) ●イベント情報 「つりビット 釣りセンター決定杯2014~筆記試験編~ 放課後はミニライブ♪」 日時:8月23日(土)昼イベント Open 12:00 Start 13:00 End 15:00(予定) 場所;お台場・東京カルチャーカルチャー ゲスト講師はパーケン! 出演:つりビット、高橋健一(キングオブコメディ) <http://tcc.nifty.com/cs/catalog/tcc_schedule/catalog_140801204652_1.htm>