「発禁になる前に読んでおけ!」底辺で生きるホームレスを14年追いかけたルポ漫画『ホームレス大博覧会』

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『ホームレス大博覧会』著者の村田らむ
 景気の回復が浸透しない日本で、ここ20年ほどで急増し、社会問題となっている「ホームレス」。社会の底辺に生きるアウトサイダーとして扱われる半面、世の中を達観した聖人と見る人もいる。  そんな社会病理ともいうべき問題を、足掛け14年間も取材し続けているのが、漫画家でルポライターの村田らむ氏だ。6月に発売された『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)は、正面からナチュラルにホームレスの実像をえぐり取った村田氏の集大成ともいうべきものである。終身雇用が崩壊した現代社会では、誰もがホームレスになる危険性を抱えている。ホームレスを見続けてきた村田氏に、その実情を聞いた。 ――まず『ホームレス大博覧会』はどのような本なのか、概要を教えてください。 村田らむ(以下、らむ) もともとはミリオン出版の編集者に、私が過去に出版した『こじき大百科──にっぽん全国ホームレス大調査』(データハウス)や『ホームレス大図鑑』(竹書房)みたいなことを、もう一回やってみたいと依頼されたのがきっかけなんです。とりあえずプレで(試験的に)漫画でやってみようということになって、描いてみたら読者アンケートの順位がよかったので連載することになって、それをまとめたのが『ホームレス大博覧会』なんですよ。 ――過去に出版トラブルが結構あったそうですが、発禁(発行禁止処分)になったんですか? らむ 裁判所からの命令で、法律上本が出せなくなることを発禁と考えると、発禁はちょっとオーバーで、自主規制ですね。ホームレスの支援団体からクレームが来て、出版社としてはこれ以上売りませんと、それで自主回収したというのが実際のところです。漫画家のいしかわじゅんさんが週刊文春の書評で『ホームレス大博覧会』を紹介してくれたのですが、「発禁になる前に読んでおけ」とまとめているのも無理からぬことなんですよ。 ――そもそも、なぜ14年前にホームレスを取材しようと思ったんですか? らむ もともとホームレスに興味があったんですけど、本当の本当は仕事で「やれ!」って言われたから。データハウスの『いやらしい2号』という『あぶない1号』の後継誌を作っていたときに持ち上がっていた企画のひとつだったんです。ホームレス取材はお金もかからないし、2回くらい取材したら評判が良かったので続けたという感じですね。 ――取材時は、ホームレスを取材していると明かすんですか? それとも身分を隠して? らむ 最初は上野公園に行って一人ずつ話しかけていったんですが、正直ハードルはかなり高かったですね。慣れてくると、いろいろなパターンを使い分けるようになりました。今回の『ホームレス大博覧会』では、取材だと伝えて話を聞くのが大半でしたが、時には「ボランティアです」と言ったり、相手から聞かれるまで何も言わないこともあります。もちろんホームレスに扮装したこともありますよ。若いと目立つので20代の時はなかなか難しかったんですが、40代まで続けていると、かなりナチュラルに取材できるようになります。  この14年の間に、ホームレスのメッカである西成のアングラな飲み屋に潜入して働いたりして、経験を積んできました。ホームレスは、ドヤ街ではヒエラルキーが低いんですよ。酔っ払って怒鳴ってきたりするけど「はぁ?」と言ったら黙るので、意外と牽制できます。 ――西成に限らず、どこでも潜入できるものですか? らむ そうでもないです。関西の方で話を聞くと「関東は怖い」と言いますね。口数は少ないんだけど暴力的。特に同じドヤ街でも、横浜のK町は厳しい。ホームレスの間でも「K町はヤバイ」ってみんな言いますよ。集団でケンカを売ってくるんですよね。 ――取材で出会った中で忘れられないホームレスっていますか? らむ 話を聞いただけの人も含めると、1,000人以上いると思いますが、潜入してホームレスになった時にいろいろ教えてくれた“土方”丸出しの黒いおっさんには、ビクビクしながらもお世話になりましたね。毛布とか貸してくれて最初は汚いなと思ったのですが、夜は本当に冷えて、10月でも寝ていられないんです。本当にお世話になったので、忘れられないですね。 ――その人と再会することはあったんですか? らむ ないです。ホームレスは亡くなってしまうこともあるし、ホームレスをやめてしまうこともあるので。ホームレスを辞めるというのは、家を借りてホームレスじゃなくなるということですが、これが実は結構あって、小泉政権時の政策でマンションを安い値段で貸し出すということをやって、一気に減った時があったんですね。 ●自由人の象徴として語られるホームレスの実態 ――ホームレスのタブーってあるんですか? ホームレスのコミュニティ内でのタブーと取材でのタブー、両方伺いたいのですが。 らむ 失礼に当たるようなことを聞いても、意外と大丈夫だったりします。家族の話も大丈夫。僕なんて、ホームレスを実家に連れて帰ったこともありますから。本当に人によるというか、話しかけるだけでダメな人もいるし、話しているうちにOKになる人もいる。コミュニティ内でのタブーは、物を盗ったらダメというのはホームレスに限った話じゃないんですが、「マグロ」とか「しのぎ屋」といわれる、ホームレス同士で物を盗む人が結構多いんですよ。だから、集団で集まる場所では揉め事が多いですね。 ――ホームレスの生き方を自由の象徴のように捉える人がいますが、それほどまでに自由なんですか? らむ 自由な部分もあるのですが、ものすごく不自由な部分に囲まれた自由なんですよね。 ――「ホームレスは俗世を捨て去っているからピュアなんだ」みたいな見方は間違い? らむ ピュアなんてことは全然ないですよ。むしろ俗にまみれています。こんなことを言ってしまうと問題ありますけど、少なくとも若い女の子が信用してホイホイついていっていいような、浮世離れした仙人みたいな存在ではありませんね。 ――ホームレス取材の中で、世の中のゆがみを感じたことはありますか? らむ よく思うのは、ホームレスに対する暴力はなくならないということ。本当にダメなことだと思うんですが、社会の仕組みが原因でホームレスになったんだから殴ってはいけないということではなくて、どんな人であろうと、寝ている人を殴ってはいけない。自由人だからとか、実はいい人だから殴っちゃダメというのは違うと思いますが、クソろくでなしだけど蹴ったらあかんだろ! と。それほどまでに、表面化しないホームレスに対する暴力は多いんですよ。大げさかもしれないですが、死なない限りは表面化しないでしょう。花火を持って追いかけ回されたり自転車を投げつけられたりということは、毎日どこぞで起きています。 ――ホームレス側は抵抗しないんですか? らむ 無理でしょう。寝ているところを、いきなりやりますからね。僕もホームレスを疑似体験しましたが、まあ怖いんですよ。梅田で取材していた時、踏み殺されたホームレスがいました。酔っ払ったホームレスが勢いでやることもあるし、ホームレス狩りみたいなこともあるし、ホームレス同士のケンカもあります。元ヤクザのホームレスも多いですから、暴力に慣れているホームレスも珍しくはないんです。 ●ホームレスには、なるべくしてなる!? ――ホームレスになる人には、いろいろなパターンがあると思いますが、実際どんな人がなっているんですか? らむ ショッキングだったのは、財布を盗まれたからとか、ものすごく簡単な理由でホームレスになるんですよね。例えば仕事をしていてパソコンのデータが壊れたりすると、死にたくなったりするじゃないですか。でもグッとこらえて死なないのが普通の人ですよね。携帯電話をどこかに落としたときも、後処理がすごく面倒くさくて死にたいとか思ったりするけど、実際には死なない。ところが、ホームレスになる人の中には、そのタイミングで社会との境界線を踏み越えちゃうんですよ。「全部捨てて逃げちゃおう」みたいな。中には深刻に捉えて自殺の前段階としてホームレスになる人もいますね。車上生活とかしていたりすることが多いです。村上たかしさんの漫画『星守る犬』(双葉社)なんかもそうですよね。 ――意図的に境界線を踏み越えない限りは、ホームレスにならないものなんですか? らむ いろいろな人に話を聞いた中で、「ホームレスになっちゃうかも」と言ったのが売れっ子クリエイターの人たち。有名で作品も評価されているし、収入だってある……そんな人たちが絶対ホームレスにはならないはずですが、ホームレスになるかもと思ってしまう。そこに共通しているのが、フリーランスという立場だと思うんですよ。フリーランスの人はホームレスを同じステージだと思っているところがあるんです。僕もフリーランスだから同類として捉えているところがあって、だから彼らに対する見方がちょっと辛口なのかもしれない。 ――ホームレスになったら「もはや終わり」と思う人が多いでしょうが、社会復帰はできるものなんですか? らむ 衣食住が保障されて仕事があっても、すでに社会には戻れないところまで来てしまっている人は無理ですよ。そもそもアル中(アルコール中毒者)が多い。アル中、ギャンブル依存症、約束守れない……なるべくしてなった人だと、社会復帰するのは困難と言わざるを得ないですね。これは私の印象ですけど、運が悪くてホームレスになった人もいるでしょうが、大半の人はジタバタすれば意外と(ホームレスに)ならずに済んだんじゃないかと思うんですよ。 ――ホームレスにならないためには、どうすればいいでしょうか? らむ 役所に行って揉めに揉めるなどすれば、ホームレスにならずに済む道はあるんです。セーフティーネットなどの問題点はすでに指摘されていますけど、実際にホームレス側から取材していて思うのは、日本にはホームレスにならずに済む選択肢があるということですね。すごい借金があるから借金取りから逃げるためにホームレスにならざるを得ないんだという人がいて、漫画にもそのまま描いてきたんですけど、今になって振り返ると「そうか?」と思うんです。だって本当に借金取りが来たとしても、今はめちゃくちゃな取り立てはできないし、自己破産して生活保護を申請するという選択肢もある。「でも相手がヤクザやから、そうはいかんのや」みたいなことを言う人もいるけど、そもそも今どきのヤミ金が、そんな強引な取り立てをやってくるわけない。結局、言い訳にして逃げているだけで、基本的にホームレス生活を楽しんでいる人も多いと思うんですよね。 ――最後に、足掛け14年に及ぶホームレス取材をまとめた『ホームレス大博覧会』に込めた思いを教えてください。 らむ 僕が過去に出版したホームレスの本の感想では、「すごくひどい」と思う人もいれば「いい本だった」と泣く人もいて、反応が極端なんです。ただ僕はなるべくフラットに描こうとしていて、そうすることで「もともと人間ってそういうもんだよな」ということが伝わるんじゃないかと思います。ただ、『ホームレス大博覧会』ではホームレストレーディングカードなんて前代未聞の試みもしていますので、発禁になる可能性は拭えません。できれば回収される前に、ぜひ手に取ってみてください(笑)。 (取材・文=丸山佑介/犯罪ジャーナリスト<http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/>)

「発禁になる前に読んでおけ!」底辺で生きるホームレスを14年追いかけたルポ漫画『ホームレス大博覧会』

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『ホームレス大博覧会』著者の村田らむ
 景気の回復が浸透しない日本で、ここ20年ほどで急増し、社会問題となっている「ホームレス」。社会の底辺に生きるアウトサイダーとして扱われる半面、世の中を達観した聖人と見る人もいる。  そんな社会病理ともいうべき問題を、足掛け14年間も取材し続けているのが、漫画家でルポライターの村田らむ氏だ。6月に発売された『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)は、正面からナチュラルにホームレスの実像をえぐり取った村田氏の集大成ともいうべきものである。終身雇用が崩壊した現代社会では、誰もがホームレスになる危険性を抱えている。ホームレスを見続けてきた村田氏に、その実情を聞いた。 ――まず『ホームレス大博覧会』はどのような本なのか、概要を教えてください。 村田らむ(以下、らむ) もともとはミリオン出版の編集者に、私が過去に出版した『こじき大百科──にっぽん全国ホームレス大調査』(データハウス)や『ホームレス大図鑑』(竹書房)みたいなことを、もう一回やってみたいと依頼されたのがきっかけなんです。とりあえずプレで(試験的に)漫画でやってみようということになって、描いてみたら読者アンケートの順位がよかったので連載することになって、それをまとめたのが『ホームレス大博覧会』なんですよ。 ――過去に出版トラブルが結構あったそうですが、発禁(発行禁止処分)になったんですか? らむ 裁判所からの命令で、法律上本が出せなくなることを発禁と考えると、発禁はちょっとオーバーで、自主規制ですね。ホームレスの支援団体からクレームが来て、出版社としてはこれ以上売りませんと、それで自主回収したというのが実際のところです。漫画家のいしかわじゅんさんが週刊文春の書評で『ホームレス大博覧会』を紹介してくれたのですが、「発禁になる前に読んでおけ」とまとめているのも無理からぬことなんですよ。 ――そもそも、なぜ14年前にホームレスを取材しようと思ったんですか? らむ もともとホームレスに興味があったんですけど、本当の本当は仕事で「やれ!」って言われたから。データハウスの『いやらしい2号』という『あぶない1号』の後継誌を作っていたときに持ち上がっていた企画のひとつだったんです。ホームレス取材はお金もかからないし、2回くらい取材したら評判が良かったので続けたという感じですね。 ――取材時は、ホームレスを取材していると明かすんですか? それとも身分を隠して? らむ 最初は上野公園に行って一人ずつ話しかけていったんですが、正直ハードルはかなり高かったですね。慣れてくると、いろいろなパターンを使い分けるようになりました。今回の『ホームレス大博覧会』では、取材だと伝えて話を聞くのが大半でしたが、時には「ボランティアです」と言ったり、相手から聞かれるまで何も言わないこともあります。もちろんホームレスに扮装したこともありますよ。若いと目立つので20代の時はなかなか難しかったんですが、40代まで続けていると、かなりナチュラルに取材できるようになります。  この14年の間に、ホームレスのメッカである西成のアングラな飲み屋に潜入して働いたりして、経験を積んできました。ホームレスは、ドヤ街ではヒエラルキーが低いんですよ。酔っ払って怒鳴ってきたりするけど「はぁ?」と言ったら黙るので、意外と牽制できます。 ――西成に限らず、どこでも潜入できるものですか? らむ そうでもないです。関西の方で話を聞くと「関東は怖い」と言いますね。口数は少ないんだけど暴力的。特に同じドヤ街でも、横浜のK町は厳しい。ホームレスの間でも「K町はヤバイ」ってみんな言いますよ。集団でケンカを売ってくるんですよね。 ――取材で出会った中で忘れられないホームレスっていますか? らむ 話を聞いただけの人も含めると、1,000人以上いると思いますが、潜入してホームレスになった時にいろいろ教えてくれた“土方”丸出しの黒いおっさんには、ビクビクしながらもお世話になりましたね。毛布とか貸してくれて最初は汚いなと思ったのですが、夜は本当に冷えて、10月でも寝ていられないんです。本当にお世話になったので、忘れられないですね。 ――その人と再会することはあったんですか? らむ ないです。ホームレスは亡くなってしまうこともあるし、ホームレスをやめてしまうこともあるので。ホームレスを辞めるというのは、家を借りてホームレスじゃなくなるということですが、これが実は結構あって、小泉政権時の政策でマンションを安い値段で貸し出すということをやって、一気に減った時があったんですね。 ●自由人の象徴として語られるホームレスの実態 ――ホームレスのタブーってあるんですか? ホームレスのコミュニティ内でのタブーと取材でのタブー、両方伺いたいのですが。 らむ 失礼に当たるようなことを聞いても、意外と大丈夫だったりします。家族の話も大丈夫。僕なんて、ホームレスを実家に連れて帰ったこともありますから。本当に人によるというか、話しかけるだけでダメな人もいるし、話しているうちにOKになる人もいる。コミュニティ内でのタブーは、物を盗ったらダメというのはホームレスに限った話じゃないんですが、「マグロ」とか「しのぎ屋」といわれる、ホームレス同士で物を盗む人が結構多いんですよ。だから、集団で集まる場所では揉め事が多いですね。 ――ホームレスの生き方を自由の象徴のように捉える人がいますが、それほどまでに自由なんですか? らむ 自由な部分もあるのですが、ものすごく不自由な部分に囲まれた自由なんですよね。 ――「ホームレスは俗世を捨て去っているからピュアなんだ」みたいな見方は間違い? らむ ピュアなんてことは全然ないですよ。むしろ俗にまみれています。こんなことを言ってしまうと問題ありますけど、少なくとも若い女の子が信用してホイホイついていっていいような、浮世離れした仙人みたいな存在ではありませんね。 ――ホームレス取材の中で、世の中のゆがみを感じたことはありますか? らむ よく思うのは、ホームレスに対する暴力はなくならないということ。本当にダメなことだと思うんですが、社会の仕組みが原因でホームレスになったんだから殴ってはいけないということではなくて、どんな人であろうと、寝ている人を殴ってはいけない。自由人だからとか、実はいい人だから殴っちゃダメというのは違うと思いますが、クソろくでなしだけど蹴ったらあかんだろ! と。それほどまでに、表面化しないホームレスに対する暴力は多いんですよ。大げさかもしれないですが、死なない限りは表面化しないでしょう。花火を持って追いかけ回されたり自転車を投げつけられたりということは、毎日どこぞで起きています。 ――ホームレス側は抵抗しないんですか? らむ 無理でしょう。寝ているところを、いきなりやりますからね。僕もホームレスを疑似体験しましたが、まあ怖いんですよ。梅田で取材していた時、踏み殺されたホームレスがいました。酔っ払ったホームレスが勢いでやることもあるし、ホームレス狩りみたいなこともあるし、ホームレス同士のケンカもあります。元ヤクザのホームレスも多いですから、暴力に慣れているホームレスも珍しくはないんです。 ●ホームレスには、なるべくしてなる!? ――ホームレスになる人には、いろいろなパターンがあると思いますが、実際どんな人がなっているんですか? らむ ショッキングだったのは、財布を盗まれたからとか、ものすごく簡単な理由でホームレスになるんですよね。例えば仕事をしていてパソコンのデータが壊れたりすると、死にたくなったりするじゃないですか。でもグッとこらえて死なないのが普通の人ですよね。携帯電話をどこかに落としたときも、後処理がすごく面倒くさくて死にたいとか思ったりするけど、実際には死なない。ところが、ホームレスになる人の中には、そのタイミングで社会との境界線を踏み越えちゃうんですよ。「全部捨てて逃げちゃおう」みたいな。中には深刻に捉えて自殺の前段階としてホームレスになる人もいますね。車上生活とかしていたりすることが多いです。村上たかしさんの漫画『星守る犬』(双葉社)なんかもそうですよね。 ――意図的に境界線を踏み越えない限りは、ホームレスにならないものなんですか? らむ いろいろな人に話を聞いた中で、「ホームレスになっちゃうかも」と言ったのが売れっ子クリエイターの人たち。有名で作品も評価されているし、収入だってある……そんな人たちが絶対ホームレスにはならないはずですが、ホームレスになるかもと思ってしまう。そこに共通しているのが、フリーランスという立場だと思うんですよ。フリーランスの人はホームレスを同じステージだと思っているところがあるんです。僕もフリーランスだから同類として捉えているところがあって、だから彼らに対する見方がちょっと辛口なのかもしれない。 ――ホームレスになったら「もはや終わり」と思う人が多いでしょうが、社会復帰はできるものなんですか? らむ 衣食住が保障されて仕事があっても、すでに社会には戻れないところまで来てしまっている人は無理ですよ。そもそもアル中(アルコール中毒者)が多い。アル中、ギャンブル依存症、約束守れない……なるべくしてなった人だと、社会復帰するのは困難と言わざるを得ないですね。これは私の印象ですけど、運が悪くてホームレスになった人もいるでしょうが、大半の人はジタバタすれば意外と(ホームレスに)ならずに済んだんじゃないかと思うんですよ。 ――ホームレスにならないためには、どうすればいいでしょうか? らむ 役所に行って揉めに揉めるなどすれば、ホームレスにならずに済む道はあるんです。セーフティーネットなどの問題点はすでに指摘されていますけど、実際にホームレス側から取材していて思うのは、日本にはホームレスにならずに済む選択肢があるということですね。すごい借金があるから借金取りから逃げるためにホームレスにならざるを得ないんだという人がいて、漫画にもそのまま描いてきたんですけど、今になって振り返ると「そうか?」と思うんです。だって本当に借金取りが来たとしても、今はめちゃくちゃな取り立てはできないし、自己破産して生活保護を申請するという選択肢もある。「でも相手がヤクザやから、そうはいかんのや」みたいなことを言う人もいるけど、そもそも今どきのヤミ金が、そんな強引な取り立てをやってくるわけない。結局、言い訳にして逃げているだけで、基本的にホームレス生活を楽しんでいる人も多いと思うんですよね。 ――最後に、足掛け14年に及ぶホームレス取材をまとめた『ホームレス大博覧会』に込めた思いを教えてください。 らむ 僕が過去に出版したホームレスの本の感想では、「すごくひどい」と思う人もいれば「いい本だった」と泣く人もいて、反応が極端なんです。ただ僕はなるべくフラットに描こうとしていて、そうすることで「もともと人間ってそういうもんだよな」ということが伝わるんじゃないかと思います。ただ、『ホームレス大博覧会』ではホームレストレーディングカードなんて前代未聞の試みもしていますので、発禁になる可能性は拭えません。できれば回収される前に、ぜひ手に取ってみてください(笑)。 (取材・文=丸山佑介/犯罪ジャーナリスト<http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/>)

「発禁になる前に読んでおけ!」底辺で生きるホームレスを14年追いかけたルポ漫画『ホームレス大博覧会』

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『ホームレス大博覧会』著者の村田らむ
 景気の回復が浸透しない日本で、ここ20年ほどで急増し、社会問題となっている「ホームレス」。社会の底辺に生きるアウトサイダーとして扱われる半面、世の中を達観した聖人と見る人もいる。  そんな社会病理ともいうべき問題を、足掛け14年間も取材し続けているのが、漫画家でルポライターの村田らむ氏だ。6月に発売された『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)は、正面からナチュラルにホームレスの実像をえぐり取った村田氏の集大成ともいうべきものである。終身雇用が崩壊した現代社会では、誰もがホームレスになる危険性を抱えている。ホームレスを見続けてきた村田氏に、その実情を聞いた。 ――まず『ホームレス大博覧会』はどのような本なのか、概要を教えてください。 村田らむ(以下、らむ) もともとはミリオン出版の編集者に、私が過去に出版した『こじき大百科──にっぽん全国ホームレス大調査』(データハウス)や『ホームレス大図鑑』(竹書房)みたいなことを、もう一回やってみたいと依頼されたのがきっかけなんです。とりあえずプレで(試験的に)漫画でやってみようということになって、描いてみたら読者アンケートの順位がよかったので連載することになって、それをまとめたのが『ホームレス大博覧会』なんですよ。 ――過去に出版トラブルが結構あったそうですが、発禁(発行禁止処分)になったんですか? らむ 裁判所からの命令で、法律上本が出せなくなることを発禁と考えると、発禁はちょっとオーバーで、自主規制ですね。ホームレスの支援団体からクレームが来て、出版社としてはこれ以上売りませんと、それで自主回収したというのが実際のところです。漫画家のいしかわじゅんさんが週刊文春の書評で『ホームレス大博覧会』を紹介してくれたのですが、「発禁になる前に読んでおけ」とまとめているのも無理からぬことなんですよ。 ――そもそも、なぜ14年前にホームレスを取材しようと思ったんですか? らむ もともとホームレスに興味があったんですけど、本当の本当は仕事で「やれ!」って言われたから。データハウスの『いやらしい2号』という『あぶない1号』の後継誌を作っていたときに持ち上がっていた企画のひとつだったんです。ホームレス取材はお金もかからないし、2回くらい取材したら評判が良かったので続けたという感じですね。 ――取材時は、ホームレスを取材していると明かすんですか? それとも身分を隠して? らむ 最初は上野公園に行って一人ずつ話しかけていったんですが、正直ハードルはかなり高かったですね。慣れてくると、いろいろなパターンを使い分けるようになりました。今回の『ホームレス大博覧会』では、取材だと伝えて話を聞くのが大半でしたが、時には「ボランティアです」と言ったり、相手から聞かれるまで何も言わないこともあります。もちろんホームレスに扮装したこともありますよ。若いと目立つので20代の時はなかなか難しかったんですが、40代まで続けていると、かなりナチュラルに取材できるようになります。  この14年の間に、ホームレスのメッカである西成のアングラな飲み屋に潜入して働いたりして、経験を積んできました。ホームレスは、ドヤ街ではヒエラルキーが低いんですよ。酔っ払って怒鳴ってきたりするけど「はぁ?」と言ったら黙るので、意外と牽制できます。 ――西成に限らず、どこでも潜入できるものですか? らむ そうでもないです。関西の方で話を聞くと「関東は怖い」と言いますね。口数は少ないんだけど暴力的。特に同じドヤ街でも、横浜のK町は厳しい。ホームレスの間でも「K町はヤバイ」ってみんな言いますよ。集団でケンカを売ってくるんですよね。 ――取材で出会った中で忘れられないホームレスっていますか? らむ 話を聞いただけの人も含めると、1,000人以上いると思いますが、潜入してホームレスになった時にいろいろ教えてくれた“土方”丸出しの黒いおっさんには、ビクビクしながらもお世話になりましたね。毛布とか貸してくれて最初は汚いなと思ったのですが、夜は本当に冷えて、10月でも寝ていられないんです。本当にお世話になったので、忘れられないですね。 ――その人と再会することはあったんですか? らむ ないです。ホームレスは亡くなってしまうこともあるし、ホームレスをやめてしまうこともあるので。ホームレスを辞めるというのは、家を借りてホームレスじゃなくなるということですが、これが実は結構あって、小泉政権時の政策でマンションを安い値段で貸し出すということをやって、一気に減った時があったんですね。 ●自由人の象徴として語られるホームレスの実態 ――ホームレスのタブーってあるんですか? ホームレスのコミュニティ内でのタブーと取材でのタブー、両方伺いたいのですが。 らむ 失礼に当たるようなことを聞いても、意外と大丈夫だったりします。家族の話も大丈夫。僕なんて、ホームレスを実家に連れて帰ったこともありますから。本当に人によるというか、話しかけるだけでダメな人もいるし、話しているうちにOKになる人もいる。コミュニティ内でのタブーは、物を盗ったらダメというのはホームレスに限った話じゃないんですが、「マグロ」とか「しのぎ屋」といわれる、ホームレス同士で物を盗む人が結構多いんですよ。だから、集団で集まる場所では揉め事が多いですね。 ――ホームレスの生き方を自由の象徴のように捉える人がいますが、それほどまでに自由なんですか? らむ 自由な部分もあるのですが、ものすごく不自由な部分に囲まれた自由なんですよね。 ――「ホームレスは俗世を捨て去っているからピュアなんだ」みたいな見方は間違い? らむ ピュアなんてことは全然ないですよ。むしろ俗にまみれています。こんなことを言ってしまうと問題ありますけど、少なくとも若い女の子が信用してホイホイついていっていいような、浮世離れした仙人みたいな存在ではありませんね。 ――ホームレス取材の中で、世の中のゆがみを感じたことはありますか? らむ よく思うのは、ホームレスに対する暴力はなくならないということ。本当にダメなことだと思うんですが、社会の仕組みが原因でホームレスになったんだから殴ってはいけないということではなくて、どんな人であろうと、寝ている人を殴ってはいけない。自由人だからとか、実はいい人だから殴っちゃダメというのは違うと思いますが、クソろくでなしだけど蹴ったらあかんだろ! と。それほどまでに、表面化しないホームレスに対する暴力は多いんですよ。大げさかもしれないですが、死なない限りは表面化しないでしょう。花火を持って追いかけ回されたり自転車を投げつけられたりということは、毎日どこぞで起きています。 ――ホームレス側は抵抗しないんですか? らむ 無理でしょう。寝ているところを、いきなりやりますからね。僕もホームレスを疑似体験しましたが、まあ怖いんですよ。梅田で取材していた時、踏み殺されたホームレスがいました。酔っ払ったホームレスが勢いでやることもあるし、ホームレス狩りみたいなこともあるし、ホームレス同士のケンカもあります。元ヤクザのホームレスも多いですから、暴力に慣れているホームレスも珍しくはないんです。 ●ホームレスには、なるべくしてなる!? ――ホームレスになる人には、いろいろなパターンがあると思いますが、実際どんな人がなっているんですか? らむ ショッキングだったのは、財布を盗まれたからとか、ものすごく簡単な理由でホームレスになるんですよね。例えば仕事をしていてパソコンのデータが壊れたりすると、死にたくなったりするじゃないですか。でもグッとこらえて死なないのが普通の人ですよね。携帯電話をどこかに落としたときも、後処理がすごく面倒くさくて死にたいとか思ったりするけど、実際には死なない。ところが、ホームレスになる人の中には、そのタイミングで社会との境界線を踏み越えちゃうんですよ。「全部捨てて逃げちゃおう」みたいな。中には深刻に捉えて自殺の前段階としてホームレスになる人もいますね。車上生活とかしていたりすることが多いです。村上たかしさんの漫画『星守る犬』(双葉社)なんかもそうですよね。 ――意図的に境界線を踏み越えない限りは、ホームレスにならないものなんですか? らむ いろいろな人に話を聞いた中で、「ホームレスになっちゃうかも」と言ったのが売れっ子クリエイターの人たち。有名で作品も評価されているし、収入だってある……そんな人たちが絶対ホームレスにはならないはずですが、ホームレスになるかもと思ってしまう。そこに共通しているのが、フリーランスという立場だと思うんですよ。フリーランスの人はホームレスを同じステージだと思っているところがあるんです。僕もフリーランスだから同類として捉えているところがあって、だから彼らに対する見方がちょっと辛口なのかもしれない。 ――ホームレスになったら「もはや終わり」と思う人が多いでしょうが、社会復帰はできるものなんですか? らむ 衣食住が保障されて仕事があっても、すでに社会には戻れないところまで来てしまっている人は無理ですよ。そもそもアル中(アルコール中毒者)が多い。アル中、ギャンブル依存症、約束守れない……なるべくしてなった人だと、社会復帰するのは困難と言わざるを得ないですね。これは私の印象ですけど、運が悪くてホームレスになった人もいるでしょうが、大半の人はジタバタすれば意外と(ホームレスに)ならずに済んだんじゃないかと思うんですよ。 ――ホームレスにならないためには、どうすればいいでしょうか? らむ 役所に行って揉めに揉めるなどすれば、ホームレスにならずに済む道はあるんです。セーフティーネットなどの問題点はすでに指摘されていますけど、実際にホームレス側から取材していて思うのは、日本にはホームレスにならずに済む選択肢があるということですね。すごい借金があるから借金取りから逃げるためにホームレスにならざるを得ないんだという人がいて、漫画にもそのまま描いてきたんですけど、今になって振り返ると「そうか?」と思うんです。だって本当に借金取りが来たとしても、今はめちゃくちゃな取り立てはできないし、自己破産して生活保護を申請するという選択肢もある。「でも相手がヤクザやから、そうはいかんのや」みたいなことを言う人もいるけど、そもそも今どきのヤミ金が、そんな強引な取り立てをやってくるわけない。結局、言い訳にして逃げているだけで、基本的にホームレス生活を楽しんでいる人も多いと思うんですよね。 ――最後に、足掛け14年に及ぶホームレス取材をまとめた『ホームレス大博覧会』に込めた思いを教えてください。 らむ 僕が過去に出版したホームレスの本の感想では、「すごくひどい」と思う人もいれば「いい本だった」と泣く人もいて、反応が極端なんです。ただ僕はなるべくフラットに描こうとしていて、そうすることで「もともと人間ってそういうもんだよな」ということが伝わるんじゃないかと思います。ただ、『ホームレス大博覧会』ではホームレストレーディングカードなんて前代未聞の試みもしていますので、発禁になる可能性は拭えません。できれば回収される前に、ぜひ手に取ってみてください(笑)。 (取材・文=丸山佑介/犯罪ジャーナリスト<http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/>)

「発禁になる前に読んでおけ!」底辺で生きるホームレスを14年追いかけたルポ漫画『ホームレス大博覧会』

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『ホームレス大博覧会』著者の村田らむ
 景気の回復が浸透しない日本で、ここ20年ほどで急増し、社会問題となっている「ホームレス」。社会の底辺に生きるアウトサイダーとして扱われる半面、世の中を達観した聖人と見る人もいる。  そんな社会病理ともいうべき問題を、足掛け14年間も取材し続けているのが、漫画家でルポライターの村田らむ氏だ。6月に発売された『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)は、正面からナチュラルにホームレスの実像をえぐり取った村田氏の集大成ともいうべきものである。終身雇用が崩壊した現代社会では、誰もがホームレスになる危険性を抱えている。ホームレスを見続けてきた村田氏に、その実情を聞いた。 ――まず『ホームレス大博覧会』はどのような本なのか、概要を教えてください。 村田らむ(以下、らむ) もともとはミリオン出版の編集者に、私が過去に出版した『こじき大百科──にっぽん全国ホームレス大調査』(データハウス)や『ホームレス大図鑑』(竹書房)みたいなことを、もう一回やってみたいと依頼されたのがきっかけなんです。とりあえずプレで(試験的に)漫画でやってみようということになって、描いてみたら読者アンケートの順位がよかったので連載することになって、それをまとめたのが『ホームレス大博覧会』なんですよ。 ――過去に出版トラブルが結構あったそうですが、発禁(発行禁止処分)になったんですか? らむ 裁判所からの命令で、法律上本が出せなくなることを発禁と考えると、発禁はちょっとオーバーで、自主規制ですね。ホームレスの支援団体からクレームが来て、出版社としてはこれ以上売りませんと、それで自主回収したというのが実際のところです。漫画家のいしかわじゅんさんが週刊文春の書評で『ホームレス大博覧会』を紹介してくれたのですが、「発禁になる前に読んでおけ」とまとめているのも無理からぬことなんですよ。 ――そもそも、なぜ14年前にホームレスを取材しようと思ったんですか? らむ もともとホームレスに興味があったんですけど、本当の本当は仕事で「やれ!」って言われたから。データハウスの『いやらしい2号』という『あぶない1号』の後継誌を作っていたときに持ち上がっていた企画のひとつだったんです。ホームレス取材はお金もかからないし、2回くらい取材したら評判が良かったので続けたという感じですね。 ――取材時は、ホームレスを取材していると明かすんですか? それとも身分を隠して? らむ 最初は上野公園に行って一人ずつ話しかけていったんですが、正直ハードルはかなり高かったですね。慣れてくると、いろいろなパターンを使い分けるようになりました。今回の『ホームレス大博覧会』では、取材だと伝えて話を聞くのが大半でしたが、時には「ボランティアです」と言ったり、相手から聞かれるまで何も言わないこともあります。もちろんホームレスに扮装したこともありますよ。若いと目立つので20代の時はなかなか難しかったんですが、40代まで続けていると、かなりナチュラルに取材できるようになります。  この14年の間に、ホームレスのメッカである西成のアングラな飲み屋に潜入して働いたりして、経験を積んできました。ホームレスは、ドヤ街ではヒエラルキーが低いんですよ。酔っ払って怒鳴ってきたりするけど「はぁ?」と言ったら黙るので、意外と牽制できます。 ――西成に限らず、どこでも潜入できるものですか? らむ そうでもないです。関西の方で話を聞くと「関東は怖い」と言いますね。口数は少ないんだけど暴力的。特に同じドヤ街でも、横浜のK町は厳しい。ホームレスの間でも「K町はヤバイ」ってみんな言いますよ。集団でケンカを売ってくるんですよね。 ――取材で出会った中で忘れられないホームレスっていますか? らむ 話を聞いただけの人も含めると、1,000人以上いると思いますが、潜入してホームレスになった時にいろいろ教えてくれた“土方”丸出しの黒いおっさんには、ビクビクしながらもお世話になりましたね。毛布とか貸してくれて最初は汚いなと思ったのですが、夜は本当に冷えて、10月でも寝ていられないんです。本当にお世話になったので、忘れられないですね。 ――その人と再会することはあったんですか? らむ ないです。ホームレスは亡くなってしまうこともあるし、ホームレスをやめてしまうこともあるので。ホームレスを辞めるというのは、家を借りてホームレスじゃなくなるということですが、これが実は結構あって、小泉政権時の政策でマンションを安い値段で貸し出すということをやって、一気に減った時があったんですね。 ●自由人の象徴として語られるホームレスの実態 ――ホームレスのタブーってあるんですか? ホームレスのコミュニティ内でのタブーと取材でのタブー、両方伺いたいのですが。 らむ 失礼に当たるようなことを聞いても、意外と大丈夫だったりします。家族の話も大丈夫。僕なんて、ホームレスを実家に連れて帰ったこともありますから。本当に人によるというか、話しかけるだけでダメな人もいるし、話しているうちにOKになる人もいる。コミュニティ内でのタブーは、物を盗ったらダメというのはホームレスに限った話じゃないんですが、「マグロ」とか「しのぎ屋」といわれる、ホームレス同士で物を盗む人が結構多いんですよ。だから、集団で集まる場所では揉め事が多いですね。 ――ホームレスの生き方を自由の象徴のように捉える人がいますが、それほどまでに自由なんですか? らむ 自由な部分もあるのですが、ものすごく不自由な部分に囲まれた自由なんですよね。 ――「ホームレスは俗世を捨て去っているからピュアなんだ」みたいな見方は間違い? らむ ピュアなんてことは全然ないですよ。むしろ俗にまみれています。こんなことを言ってしまうと問題ありますけど、少なくとも若い女の子が信用してホイホイついていっていいような、浮世離れした仙人みたいな存在ではありませんね。 ――ホームレス取材の中で、世の中のゆがみを感じたことはありますか? らむ よく思うのは、ホームレスに対する暴力はなくならないということ。本当にダメなことだと思うんですが、社会の仕組みが原因でホームレスになったんだから殴ってはいけないということではなくて、どんな人であろうと、寝ている人を殴ってはいけない。自由人だからとか、実はいい人だから殴っちゃダメというのは違うと思いますが、クソろくでなしだけど蹴ったらあかんだろ! と。それほどまでに、表面化しないホームレスに対する暴力は多いんですよ。大げさかもしれないですが、死なない限りは表面化しないでしょう。花火を持って追いかけ回されたり自転車を投げつけられたりということは、毎日どこぞで起きています。 ――ホームレス側は抵抗しないんですか? らむ 無理でしょう。寝ているところを、いきなりやりますからね。僕もホームレスを疑似体験しましたが、まあ怖いんですよ。梅田で取材していた時、踏み殺されたホームレスがいました。酔っ払ったホームレスが勢いでやることもあるし、ホームレス狩りみたいなこともあるし、ホームレス同士のケンカもあります。元ヤクザのホームレスも多いですから、暴力に慣れているホームレスも珍しくはないんです。 ●ホームレスには、なるべくしてなる!? ――ホームレスになる人には、いろいろなパターンがあると思いますが、実際どんな人がなっているんですか? らむ ショッキングだったのは、財布を盗まれたからとか、ものすごく簡単な理由でホームレスになるんですよね。例えば仕事をしていてパソコンのデータが壊れたりすると、死にたくなったりするじゃないですか。でもグッとこらえて死なないのが普通の人ですよね。携帯電話をどこかに落としたときも、後処理がすごく面倒くさくて死にたいとか思ったりするけど、実際には死なない。ところが、ホームレスになる人の中には、そのタイミングで社会との境界線を踏み越えちゃうんですよ。「全部捨てて逃げちゃおう」みたいな。中には深刻に捉えて自殺の前段階としてホームレスになる人もいますね。車上生活とかしていたりすることが多いです。村上たかしさんの漫画『星守る犬』(双葉社)なんかもそうですよね。 ――意図的に境界線を踏み越えない限りは、ホームレスにならないものなんですか? らむ いろいろな人に話を聞いた中で、「ホームレスになっちゃうかも」と言ったのが売れっ子クリエイターの人たち。有名で作品も評価されているし、収入だってある……そんな人たちが絶対ホームレスにはならないはずですが、ホームレスになるかもと思ってしまう。そこに共通しているのが、フリーランスという立場だと思うんですよ。フリーランスの人はホームレスを同じステージだと思っているところがあるんです。僕もフリーランスだから同類として捉えているところがあって、だから彼らに対する見方がちょっと辛口なのかもしれない。 ――ホームレスになったら「もはや終わり」と思う人が多いでしょうが、社会復帰はできるものなんですか? らむ 衣食住が保障されて仕事があっても、すでに社会には戻れないところまで来てしまっている人は無理ですよ。そもそもアル中(アルコール中毒者)が多い。アル中、ギャンブル依存症、約束守れない……なるべくしてなった人だと、社会復帰するのは困難と言わざるを得ないですね。これは私の印象ですけど、運が悪くてホームレスになった人もいるでしょうが、大半の人はジタバタすれば意外と(ホームレスに)ならずに済んだんじゃないかと思うんですよ。 ――ホームレスにならないためには、どうすればいいでしょうか? らむ 役所に行って揉めに揉めるなどすれば、ホームレスにならずに済む道はあるんです。セーフティーネットなどの問題点はすでに指摘されていますけど、実際にホームレス側から取材していて思うのは、日本にはホームレスにならずに済む選択肢があるということですね。すごい借金があるから借金取りから逃げるためにホームレスにならざるを得ないんだという人がいて、漫画にもそのまま描いてきたんですけど、今になって振り返ると「そうか?」と思うんです。だって本当に借金取りが来たとしても、今はめちゃくちゃな取り立てはできないし、自己破産して生活保護を申請するという選択肢もある。「でも相手がヤクザやから、そうはいかんのや」みたいなことを言う人もいるけど、そもそも今どきのヤミ金が、そんな強引な取り立てをやってくるわけない。結局、言い訳にして逃げているだけで、基本的にホームレス生活を楽しんでいる人も多いと思うんですよね。 ――最後に、足掛け14年に及ぶホームレス取材をまとめた『ホームレス大博覧会』に込めた思いを教えてください。 らむ 僕が過去に出版したホームレスの本の感想では、「すごくひどい」と思う人もいれば「いい本だった」と泣く人もいて、反応が極端なんです。ただ僕はなるべくフラットに描こうとしていて、そうすることで「もともと人間ってそういうもんだよな」ということが伝わるんじゃないかと思います。ただ、『ホームレス大博覧会』ではホームレストレーディングカードなんて前代未聞の試みもしていますので、発禁になる可能性は拭えません。できれば回収される前に、ぜひ手に取ってみてください(笑)。 (取材・文=丸山佑介/犯罪ジャーナリスト<http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/>)

「発禁になる前に読んでおけ!」底辺で生きるホームレスを14年追いかけたルポ漫画『ホームレス大博覧会』

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『ホームレス大博覧会』著者の村田らむ
 景気の回復が浸透しない日本で、ここ20年ほどで急増し、社会問題となっている「ホームレス」。社会の底辺に生きるアウトサイダーとして扱われる半面、世の中を達観した聖人と見る人もいる。  そんな社会病理ともいうべき問題を、足掛け14年間も取材し続けているのが、漫画家でルポライターの村田らむ氏だ。6月に発売された『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)は、正面からナチュラルにホームレスの実像をえぐり取った村田氏の集大成ともいうべきものである。終身雇用が崩壊した現代社会では、誰もがホームレスになる危険性を抱えている。ホームレスを見続けてきた村田氏に、その実情を聞いた。 ――まず『ホームレス大博覧会』はどのような本なのか、概要を教えてください。 村田らむ(以下、らむ) もともとはミリオン出版の編集者に、私が過去に出版した『こじき大百科──にっぽん全国ホームレス大調査』(データハウス)や『ホームレス大図鑑』(竹書房)みたいなことを、もう一回やってみたいと依頼されたのがきっかけなんです。とりあえずプレで(試験的に)漫画でやってみようということになって、描いてみたら読者アンケートの順位がよかったので連載することになって、それをまとめたのが『ホームレス大博覧会』なんですよ。 ――過去に出版トラブルが結構あったそうですが、発禁(発行禁止処分)になったんですか? らむ 裁判所からの命令で、法律上本が出せなくなることを発禁と考えると、発禁はちょっとオーバーで、自主規制ですね。ホームレスの支援団体からクレームが来て、出版社としてはこれ以上売りませんと、それで自主回収したというのが実際のところです。漫画家のいしかわじゅんさんが週刊文春の書評で『ホームレス大博覧会』を紹介してくれたのですが、「発禁になる前に読んでおけ」とまとめているのも無理からぬことなんですよ。 ――そもそも、なぜ14年前にホームレスを取材しようと思ったんですか? らむ もともとホームレスに興味があったんですけど、本当の本当は仕事で「やれ!」って言われたから。データハウスの『いやらしい2号』という『あぶない1号』の後継誌を作っていたときに持ち上がっていた企画のひとつだったんです。ホームレス取材はお金もかからないし、2回くらい取材したら評判が良かったので続けたという感じですね。 ――取材時は、ホームレスを取材していると明かすんですか? それとも身分を隠して? らむ 最初は上野公園に行って一人ずつ話しかけていったんですが、正直ハードルはかなり高かったですね。慣れてくると、いろいろなパターンを使い分けるようになりました。今回の『ホームレス大博覧会』では、取材だと伝えて話を聞くのが大半でしたが、時には「ボランティアです」と言ったり、相手から聞かれるまで何も言わないこともあります。もちろんホームレスに扮装したこともありますよ。若いと目立つので20代の時はなかなか難しかったんですが、40代まで続けていると、かなりナチュラルに取材できるようになります。  この14年の間に、ホームレスのメッカである西成のアングラな飲み屋に潜入して働いたりして、経験を積んできました。ホームレスは、ドヤ街ではヒエラルキーが低いんですよ。酔っ払って怒鳴ってきたりするけど「はぁ?」と言ったら黙るので、意外と牽制できます。 ――西成に限らず、どこでも潜入できるものですか? らむ そうでもないです。関西の方で話を聞くと「関東は怖い」と言いますね。口数は少ないんだけど暴力的。特に同じドヤ街でも、横浜のK町は厳しい。ホームレスの間でも「K町はヤバイ」ってみんな言いますよ。集団でケンカを売ってくるんですよね。 ――取材で出会った中で忘れられないホームレスっていますか? らむ 話を聞いただけの人も含めると、1,000人以上いると思いますが、潜入してホームレスになった時にいろいろ教えてくれた“土方”丸出しの黒いおっさんには、ビクビクしながらもお世話になりましたね。毛布とか貸してくれて最初は汚いなと思ったのですが、夜は本当に冷えて、10月でも寝ていられないんです。本当にお世話になったので、忘れられないですね。 ――その人と再会することはあったんですか? らむ ないです。ホームレスは亡くなってしまうこともあるし、ホームレスをやめてしまうこともあるので。ホームレスを辞めるというのは、家を借りてホームレスじゃなくなるということですが、これが実は結構あって、小泉政権時の政策でマンションを安い値段で貸し出すということをやって、一気に減った時があったんですね。 ●自由人の象徴として語られるホームレスの実態 ――ホームレスのタブーってあるんですか? ホームレスのコミュニティ内でのタブーと取材でのタブー、両方伺いたいのですが。 らむ 失礼に当たるようなことを聞いても、意外と大丈夫だったりします。家族の話も大丈夫。僕なんて、ホームレスを実家に連れて帰ったこともありますから。本当に人によるというか、話しかけるだけでダメな人もいるし、話しているうちにOKになる人もいる。コミュニティ内でのタブーは、物を盗ったらダメというのはホームレスに限った話じゃないんですが、「マグロ」とか「しのぎ屋」といわれる、ホームレス同士で物を盗む人が結構多いんですよ。だから、集団で集まる場所では揉め事が多いですね。 ――ホームレスの生き方を自由の象徴のように捉える人がいますが、それほどまでに自由なんですか? らむ 自由な部分もあるのですが、ものすごく不自由な部分に囲まれた自由なんですよね。 ――「ホームレスは俗世を捨て去っているからピュアなんだ」みたいな見方は間違い? らむ ピュアなんてことは全然ないですよ。むしろ俗にまみれています。こんなことを言ってしまうと問題ありますけど、少なくとも若い女の子が信用してホイホイついていっていいような、浮世離れした仙人みたいな存在ではありませんね。 ――ホームレス取材の中で、世の中のゆがみを感じたことはありますか? らむ よく思うのは、ホームレスに対する暴力はなくならないということ。本当にダメなことだと思うんですが、社会の仕組みが原因でホームレスになったんだから殴ってはいけないということではなくて、どんな人であろうと、寝ている人を殴ってはいけない。自由人だからとか、実はいい人だから殴っちゃダメというのは違うと思いますが、クソろくでなしだけど蹴ったらあかんだろ! と。それほどまでに、表面化しないホームレスに対する暴力は多いんですよ。大げさかもしれないですが、死なない限りは表面化しないでしょう。花火を持って追いかけ回されたり自転車を投げつけられたりということは、毎日どこぞで起きています。 ――ホームレス側は抵抗しないんですか? らむ 無理でしょう。寝ているところを、いきなりやりますからね。僕もホームレスを疑似体験しましたが、まあ怖いんですよ。梅田で取材していた時、踏み殺されたホームレスがいました。酔っ払ったホームレスが勢いでやることもあるし、ホームレス狩りみたいなこともあるし、ホームレス同士のケンカもあります。元ヤクザのホームレスも多いですから、暴力に慣れているホームレスも珍しくはないんです。 ●ホームレスには、なるべくしてなる!? ――ホームレスになる人には、いろいろなパターンがあると思いますが、実際どんな人がなっているんですか? らむ ショッキングだったのは、財布を盗まれたからとか、ものすごく簡単な理由でホームレスになるんですよね。例えば仕事をしていてパソコンのデータが壊れたりすると、死にたくなったりするじゃないですか。でもグッとこらえて死なないのが普通の人ですよね。携帯電話をどこかに落としたときも、後処理がすごく面倒くさくて死にたいとか思ったりするけど、実際には死なない。ところが、ホームレスになる人の中には、そのタイミングで社会との境界線を踏み越えちゃうんですよ。「全部捨てて逃げちゃおう」みたいな。中には深刻に捉えて自殺の前段階としてホームレスになる人もいますね。車上生活とかしていたりすることが多いです。村上たかしさんの漫画『星守る犬』(双葉社)なんかもそうですよね。 ――意図的に境界線を踏み越えない限りは、ホームレスにならないものなんですか? らむ いろいろな人に話を聞いた中で、「ホームレスになっちゃうかも」と言ったのが売れっ子クリエイターの人たち。有名で作品も評価されているし、収入だってある……そんな人たちが絶対ホームレスにはならないはずですが、ホームレスになるかもと思ってしまう。そこに共通しているのが、フリーランスという立場だと思うんですよ。フリーランスの人はホームレスを同じステージだと思っているところがあるんです。僕もフリーランスだから同類として捉えているところがあって、だから彼らに対する見方がちょっと辛口なのかもしれない。 ――ホームレスになったら「もはや終わり」と思う人が多いでしょうが、社会復帰はできるものなんですか? らむ 衣食住が保障されて仕事があっても、すでに社会には戻れないところまで来てしまっている人は無理ですよ。そもそもアル中(アルコール中毒者)が多い。アル中、ギャンブル依存症、約束守れない……なるべくしてなった人だと、社会復帰するのは困難と言わざるを得ないですね。これは私の印象ですけど、運が悪くてホームレスになった人もいるでしょうが、大半の人はジタバタすれば意外と(ホームレスに)ならずに済んだんじゃないかと思うんですよ。 ――ホームレスにならないためには、どうすればいいでしょうか? らむ 役所に行って揉めに揉めるなどすれば、ホームレスにならずに済む道はあるんです。セーフティーネットなどの問題点はすでに指摘されていますけど、実際にホームレス側から取材していて思うのは、日本にはホームレスにならずに済む選択肢があるということですね。すごい借金があるから借金取りから逃げるためにホームレスにならざるを得ないんだという人がいて、漫画にもそのまま描いてきたんですけど、今になって振り返ると「そうか?」と思うんです。だって本当に借金取りが来たとしても、今はめちゃくちゃな取り立てはできないし、自己破産して生活保護を申請するという選択肢もある。「でも相手がヤクザやから、そうはいかんのや」みたいなことを言う人もいるけど、そもそも今どきのヤミ金が、そんな強引な取り立てをやってくるわけない。結局、言い訳にして逃げているだけで、基本的にホームレス生活を楽しんでいる人も多いと思うんですよね。 ――最後に、足掛け14年に及ぶホームレス取材をまとめた『ホームレス大博覧会』に込めた思いを教えてください。 らむ 僕が過去に出版したホームレスの本の感想では、「すごくひどい」と思う人もいれば「いい本だった」と泣く人もいて、反応が極端なんです。ただ僕はなるべくフラットに描こうとしていて、そうすることで「もともと人間ってそういうもんだよな」ということが伝わるんじゃないかと思います。ただ、『ホームレス大博覧会』ではホームレストレーディングカードなんて前代未聞の試みもしていますので、発禁になる可能性は拭えません。できれば回収される前に、ぜひ手に取ってみてください(笑)。 (取材・文=丸山佑介/犯罪ジャーナリスト<http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/>)

「ホームレスからむしり取れ!」生保受給者を食い物にする“弱者救済”NPOの悪質手口

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炊き出しに列を作る人々。日本各地で見られる光景だ。
 厚生労働省は先頃、全国の生活保護受給者が昨年12月時点で208万7,092人に上り、過去最多を更新したと発表した。それに伴い、予想されるのが悪質な貧困ビジネスの拡大。街で集めたホームレスらに生活保護を申請させ、劣悪な環境の宿泊施設に住まわせながら、さまざまな名目で“タケノコ剥ぎ”のように生活保護費をむしり取っていくのが貧困ビジネスの典型的な手口だ。  行政も、生活保護受給者が入所する施設を社会福祉法に基づく「無料低額宿泊所」と位置づけ許認可制を取るなど、悪徳業者への対策を講じてはいる。だが、行政の“お墨付き”を得た許認可業者が善良かといえば、必ずしもそうとは言い切れない。今回は、弱者を巧妙に誘う貧困ビジネスの現場をリポートする。  毎週月曜日の早朝、横浜市内の某所ではホームレスなど生活の困窮した人々のために炊き出しが行われている。主催するのは、神奈川県でも大手の弱者救済系のNPO。このNPOは神奈川県下に1,000床以上の無料低額宿泊所を有し、当然ながら自治体からの認可も受けている。食事を求めて行列をなす人々には、握り飯と一緒に1枚のチラシが手渡される。そこには、フリーダイヤルの番号とともに「生活相談乗ります!」と記されている。  「いくら寝る場所があっても、あんな目に遭うくらいならホームレスのほうがマシですよ」と訴えるのは、ホームレスのAさん(48歳)だ。半年前、勤務先をリストラされ困窮極まったAさんは、公園で知り合ったホームレスに誘われ、この炊き出しに並んだ。 「大手のNPOだったし、一緒にいたホームレスも信頼できる団体だと太鼓判を押すので、NPOの助言に従い生活保護を申請して、無料低額宿泊所に入所したのですが、とにかく搾取がひどかった。支給された約12万円の保護費も、さまざまな名目で差っ引かれ、手元に残るのはわずか1万円ほど。食費なんて3万円も取るくせに、1日2食でご飯のお代わりもできないし、オカズも小さなウインナーとしなびたキャベツとかレトルト食品ばかりで、いつも腹を空かせていたものです」(Aさん)  何よりも耐え難かったのは、所内の人間関係だったという。通常、認可を受けた無料低額宿泊所では、許認可業者のスタッフが寮長を務めることになっているのだが、人件費節減のためだろうか、なぜかこのNPOが運営する宿泊所では入所者が寮長だった。 「寮長は元ヤクザのホームレスだったのですが、強面で腕っ節も強いため、まさに“恐怖政治”でした。彼の機嫌を損ねれば、食事を抜かれたりするイジメや殴る蹴るのリンチは日常茶飯事。まるで刑務所の囚人のような人間関係でした。NPOが関係している飯場の仕事などを斡旋されたりもするのですが、断るとやはりリンチに。どういうわけか、『シャブを売ってこい!』なんて怒鳴られたこともありましたね。本当に覚せい剤なんてあったのでしょうか」(Aさん)  AさんがNPOに強要された仕事の1つに、街へ出てカモになるホームレスをスカウトするというものがあった。週に3名獲得のノルマもあったという。そして、明らかになったのが、自分がハメられたという事実だった。 「実は、私を炊き出しに誘ったホームレスもNPOとグルだったんです。ハナっから、私を宿泊所に誘い込むために仕組まれていたわけです。さすがにやり切れなくなり、1カ月で宿泊所を脱走しました。監視も甘かったので、逃げ出すのには大して苦労しなかったですね」(Aさん)  県下でも大手のNPO、しかも許認可業者であるにもかかわらず、なぜこのようなことが起きてしまうのか。寿町で福祉事業に携わる人物は、次のように話す。 「実は、このNPOは福祉関係者の間でも悪名高い札付きの団体なんです。暴力団や右翼団体がバックに付いているともささやかれ、行政としてもアンタッチャブルな存在。ここが運営する無料低額宿泊所は、あまりの待遇のひどさに入所数カ月以内に半数近くが逃げ出してしまうほど。だから、常にホームレスを集めていて、彼らがたむろする場所を大規模なスカウト部隊が巡回しているのは地元では有名な話。でも、それだけでは足りないので炊き出しを餌におびき寄せたり、罠にはめるような形で宿泊所に誘い込んだりしているのでしょう。通常、許認可業者の施設には行政が抜き打ちで検査を行ったりするのですが、このNPOの施設では強面のスタッフが自治体の職員の介入を頑なに拒むので、実態をつかめないのだそうです。また、指導すると後日、いかにもそれ風の男性が役所に怒鳴りこんできたりするので、役所としても頭を抱えています」  ホームレスが集まる場所に現れ、相談に乗る振りをして言葉巧みに無料低額宿泊所へ誘い込む輩は、基本的に貧困ビジネスを企んでいると考えていい。そこには、許認可も無認可も関係ないのだ。 (文=牧隆文)
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【関連記事】 ・【貧困レポ】大失業時代到来 住人の85%が生活保護を受給する"ドヤ街"寿町の今フィリピン貧困層に助けられながら生きる"困窮邦人"『日本を捨てた男たち』「都はサービスが悪い!?」年越し派遣村は"ゆとりオヤジ"たちの巣窟だった!派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』秋葉原事件は必然!? トヨタ社員が憤る人材の使い捨て

「ホームレスからむしり取れ!」生保受給者を食い物にする“弱者救済”NPOの悪質手口

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炊き出しに列を作る人々。日本各地で見られる光景だ。
 厚生労働省は先頃、全国の生活保護受給者が昨年12月時点で208万7,092人に上り、過去最多を更新したと発表した。それに伴い、予想されるのが悪質な貧困ビジネスの拡大。街で集めたホームレスらに生活保護を申請させ、劣悪な環境の宿泊施設に住まわせながら、さまざまな名目で“タケノコ剥ぎ”のように生活保護費をむしり取っていくのが貧困ビジネスの典型的な手口だ。  行政も、生活保護受給者が入所する施設を社会福祉法に基づく「無料低額宿泊所」と位置づけ許認可制を取るなど、悪徳業者への対策を講じてはいる。だが、行政の“お墨付き”を得た許認可業者が善良かといえば、必ずしもそうとは言い切れない。今回は、弱者を巧妙に誘う貧困ビジネスの現場をリポートする。  毎週月曜日の早朝、横浜市内の某所ではホームレスなど生活の困窮した人々のために炊き出しが行われている。主催するのは、神奈川県でも大手の弱者救済系のNPO。このNPOは神奈川県下に1,000床以上の無料低額宿泊所を有し、当然ながら自治体からの認可も受けている。食事を求めて行列をなす人々には、握り飯と一緒に1枚のチラシが手渡される。そこには、フリーダイヤルの番号とともに「生活相談乗ります!」と記されている。  「いくら寝る場所があっても、あんな目に遭うくらいならホームレスのほうがマシですよ」と訴えるのは、ホームレスのAさん(48歳)だ。半年前、勤務先をリストラされ困窮極まったAさんは、公園で知り合ったホームレスに誘われ、この炊き出しに並んだ。 「大手のNPOだったし、一緒にいたホームレスも信頼できる団体だと太鼓判を押すので、NPOの助言に従い生活保護を申請して、無料低額宿泊所に入所したのですが、とにかく搾取がひどかった。支給された約12万円の保護費も、さまざまな名目で差っ引かれ、手元に残るのはわずか1万円ほど。食費なんて3万円も取るくせに、1日2食でご飯のお代わりもできないし、オカズも小さなウインナーとしなびたキャベツとかレトルト食品ばかりで、いつも腹を空かせていたものです」(Aさん)  何よりも耐え難かったのは、所内の人間関係だったという。通常、認可を受けた無料低額宿泊所では、許認可業者のスタッフが寮長を務めることになっているのだが、人件費節減のためだろうか、なぜかこのNPOが運営する宿泊所では入所者が寮長だった。 「寮長は元ヤクザのホームレスだったのですが、強面で腕っ節も強いため、まさに“恐怖政治”でした。彼の機嫌を損ねれば、食事を抜かれたりするイジメや殴る蹴るのリンチは日常茶飯事。まるで刑務所の囚人のような人間関係でした。NPOが関係している飯場の仕事などを斡旋されたりもするのですが、断るとやはりリンチに。どういうわけか、『シャブを売ってこい!』なんて怒鳴られたこともありましたね。本当に覚せい剤なんてあったのでしょうか」(Aさん)  AさんがNPOに強要された仕事の1つに、街へ出てカモになるホームレスをスカウトするというものがあった。週に3名獲得のノルマもあったという。そして、明らかになったのが、自分がハメられたという事実だった。 「実は、私を炊き出しに誘ったホームレスもNPOとグルだったんです。ハナっから、私を宿泊所に誘い込むために仕組まれていたわけです。さすがにやり切れなくなり、1カ月で宿泊所を脱走しました。監視も甘かったので、逃げ出すのには大して苦労しなかったですね」(Aさん)  県下でも大手のNPO、しかも許認可業者であるにもかかわらず、なぜこのようなことが起きてしまうのか。寿町で福祉事業に携わる人物は、次のように話す。 「実は、このNPOは福祉関係者の間でも悪名高い札付きの団体なんです。暴力団や右翼団体がバックに付いているともささやかれ、行政としてもアンタッチャブルな存在。ここが運営する無料低額宿泊所は、あまりの待遇のひどさに入所数カ月以内に半数近くが逃げ出してしまうほど。だから、常にホームレスを集めていて、彼らがたむろする場所を大規模なスカウト部隊が巡回しているのは地元では有名な話。でも、それだけでは足りないので炊き出しを餌におびき寄せたり、罠にはめるような形で宿泊所に誘い込んだりしているのでしょう。通常、許認可業者の施設には行政が抜き打ちで検査を行ったりするのですが、このNPOの施設では強面のスタッフが自治体の職員の介入を頑なに拒むので、実態をつかめないのだそうです。また、指導すると後日、いかにもそれ風の男性が役所に怒鳴りこんできたりするので、役所としても頭を抱えています」  ホームレスが集まる場所に現れ、相談に乗る振りをして言葉巧みに無料低額宿泊所へ誘い込む輩は、基本的に貧困ビジネスを企んでいると考えていい。そこには、許認可も無認可も関係ないのだ。 (文=牧隆文)
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「ホームレスからむしり取れ!」生保受給者を食い物にする“弱者救済”NPOの悪質手口

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炊き出しに列を作る人々。日本各地で見られる光景だ。
 厚生労働省は先頃、全国の生活保護受給者が昨年12月時点で208万7,092人に上り、過去最多を更新したと発表した。それに伴い、予想されるのが悪質な貧困ビジネスの拡大。街で集めたホームレスらに生活保護を申請させ、劣悪な環境の宿泊施設に住まわせながら、さまざまな名目で“タケノコ剥ぎ”のように生活保護費をむしり取っていくのが貧困ビジネスの典型的な手口だ。  行政も、生活保護受給者が入所する施設を社会福祉法に基づく「無料低額宿泊所」と位置づけ許認可制を取るなど、悪徳業者への対策を講じてはいる。だが、行政の“お墨付き”を得た許認可業者が善良かといえば、必ずしもそうとは言い切れない。今回は、弱者を巧妙に誘う貧困ビジネスの現場をリポートする。  毎週月曜日の早朝、横浜市内の某所ではホームレスなど生活の困窮した人々のために炊き出しが行われている。主催するのは、神奈川県でも大手の弱者救済系のNPO。このNPOは神奈川県下に1,000床以上の無料低額宿泊所を有し、当然ながら自治体からの認可も受けている。食事を求めて行列をなす人々には、握り飯と一緒に1枚のチラシが手渡される。そこには、フリーダイヤルの番号とともに「生活相談乗ります!」と記されている。  「いくら寝る場所があっても、あんな目に遭うくらいならホームレスのほうがマシですよ」と訴えるのは、ホームレスのAさん(48歳)だ。半年前、勤務先をリストラされ困窮極まったAさんは、公園で知り合ったホームレスに誘われ、この炊き出しに並んだ。 「大手のNPOだったし、一緒にいたホームレスも信頼できる団体だと太鼓判を押すので、NPOの助言に従い生活保護を申請して、無料低額宿泊所に入所したのですが、とにかく搾取がひどかった。支給された約12万円の保護費も、さまざまな名目で差っ引かれ、手元に残るのはわずか1万円ほど。食費なんて3万円も取るくせに、1日2食でご飯のお代わりもできないし、オカズも小さなウインナーとしなびたキャベツとかレトルト食品ばかりで、いつも腹を空かせていたものです」(Aさん)  何よりも耐え難かったのは、所内の人間関係だったという。通常、認可を受けた無料低額宿泊所では、許認可業者のスタッフが寮長を務めることになっているのだが、人件費節減のためだろうか、なぜかこのNPOが運営する宿泊所では入所者が寮長だった。 「寮長は元ヤクザのホームレスだったのですが、強面で腕っ節も強いため、まさに“恐怖政治”でした。彼の機嫌を損ねれば、食事を抜かれたりするイジメや殴る蹴るのリンチは日常茶飯事。まるで刑務所の囚人のような人間関係でした。NPOが関係している飯場の仕事などを斡旋されたりもするのですが、断るとやはりリンチに。どういうわけか、『シャブを売ってこい!』なんて怒鳴られたこともありましたね。本当に覚せい剤なんてあったのでしょうか」(Aさん)  AさんがNPOに強要された仕事の1つに、街へ出てカモになるホームレスをスカウトするというものがあった。週に3名獲得のノルマもあったという。そして、明らかになったのが、自分がハメられたという事実だった。 「実は、私を炊き出しに誘ったホームレスもNPOとグルだったんです。ハナっから、私を宿泊所に誘い込むために仕組まれていたわけです。さすがにやり切れなくなり、1カ月で宿泊所を脱走しました。監視も甘かったので、逃げ出すのには大して苦労しなかったですね」(Aさん)  県下でも大手のNPO、しかも許認可業者であるにもかかわらず、なぜこのようなことが起きてしまうのか。寿町で福祉事業に携わる人物は、次のように話す。 「実は、このNPOは福祉関係者の間でも悪名高い札付きの団体なんです。暴力団や右翼団体がバックに付いているともささやかれ、行政としてもアンタッチャブルな存在。ここが運営する無料低額宿泊所は、あまりの待遇のひどさに入所数カ月以内に半数近くが逃げ出してしまうほど。だから、常にホームレスを集めていて、彼らがたむろする場所を大規模なスカウト部隊が巡回しているのは地元では有名な話。でも、それだけでは足りないので炊き出しを餌におびき寄せたり、罠にはめるような形で宿泊所に誘い込んだりしているのでしょう。通常、許認可業者の施設には行政が抜き打ちで検査を行ったりするのですが、このNPOの施設では強面のスタッフが自治体の職員の介入を頑なに拒むので、実態をつかめないのだそうです。また、指導すると後日、いかにもそれ風の男性が役所に怒鳴りこんできたりするので、役所としても頭を抱えています」  ホームレスが集まる場所に現れ、相談に乗る振りをして言葉巧みに無料低額宿泊所へ誘い込む輩は、基本的に貧困ビジネスを企んでいると考えていい。そこには、許認可も無認可も関係ないのだ。 (文=牧隆文)
貧困ビジネス これが社会の常? amazon_associate_logo.jpg
【関連記事】 ・【貧困レポ】大失業時代到来 住人の85%が生活保護を受給する"ドヤ街"寿町の今フィリピン貧困層に助けられながら生きる"困窮邦人"『日本を捨てた男たち』「都はサービスが悪い!?」年越し派遣村は"ゆとりオヤジ"たちの巣窟だった!派遣の"叫び"がこだまする現代版蟹工船『遭難フリーター』秋葉原事件は必然!? トヨタ社員が憤る人材の使い捨て

「ホームレスからむしり取れ!」生保受給者を食い物にする“弱者救済”NPOの悪質手口

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炊き出しに列を作る人々。日本各地で見られる光景だ。
 厚生労働省は先頃、全国の生活保護受給者が昨年12月時点で208万7,092人に上り、過去最多を更新したと発表した。それに伴い、予想されるのが悪質な貧困ビジネスの拡大。街で集めたホームレスらに生活保護を申請させ、劣悪な環境の宿泊施設に住まわせながら、さまざまな名目で“タケノコ剥ぎ”のように生活保護費をむしり取っていくのが貧困ビジネスの典型的な手口だ。  行政も、生活保護受給者が入所する施設を社会福祉法に基づく「無料低額宿泊所」と位置づけ許認可制を取るなど、悪徳業者への対策を講じてはいる。だが、行政の“お墨付き”を得た許認可業者が善良かといえば、必ずしもそうとは言い切れない。今回は、弱者を巧妙に誘う貧困ビジネスの現場をリポートする。  毎週月曜日の早朝、横浜市内の某所ではホームレスなど生活の困窮した人々のために炊き出しが行われている。主催するのは、神奈川県でも大手の弱者救済系のNPO。このNPOは神奈川県下に1,000床以上の無料低額宿泊所を有し、当然ながら自治体からの認可も受けている。食事を求めて行列をなす人々には、握り飯と一緒に1枚のチラシが手渡される。そこには、フリーダイヤルの番号とともに「生活相談乗ります!」と記されている。  「いくら寝る場所があっても、あんな目に遭うくらいならホームレスのほうがマシですよ」と訴えるのは、ホームレスのAさん(48歳)だ。半年前、勤務先をリストラされ困窮極まったAさんは、公園で知り合ったホームレスに誘われ、この炊き出しに並んだ。 「大手のNPOだったし、一緒にいたホームレスも信頼できる団体だと太鼓判を押すので、NPOの助言に従い生活保護を申請して、無料低額宿泊所に入所したのですが、とにかく搾取がひどかった。支給された約12万円の保護費も、さまざまな名目で差っ引かれ、手元に残るのはわずか1万円ほど。食費なんて3万円も取るくせに、1日2食でご飯のお代わりもできないし、オカズも小さなウインナーとしなびたキャベツとかレトルト食品ばかりで、いつも腹を空かせていたものです」(Aさん)  何よりも耐え難かったのは、所内の人間関係だったという。通常、認可を受けた無料低額宿泊所では、許認可業者のスタッフが寮長を務めることになっているのだが、人件費節減のためだろうか、なぜかこのNPOが運営する宿泊所では入所者が寮長だった。 「寮長は元ヤクザのホームレスだったのですが、強面で腕っ節も強いため、まさに“恐怖政治”でした。彼の機嫌を損ねれば、食事を抜かれたりするイジメや殴る蹴るのリンチは日常茶飯事。まるで刑務所の囚人のような人間関係でした。NPOが関係している飯場の仕事などを斡旋されたりもするのですが、断るとやはりリンチに。どういうわけか、『シャブを売ってこい!』なんて怒鳴られたこともありましたね。本当に覚せい剤なんてあったのでしょうか」(Aさん)  AさんがNPOに強要された仕事の1つに、街へ出てカモになるホームレスをスカウトするというものがあった。週に3名獲得のノルマもあったという。そして、明らかになったのが、自分がハメられたという事実だった。 「実は、私を炊き出しに誘ったホームレスもNPOとグルだったんです。ハナっから、私を宿泊所に誘い込むために仕組まれていたわけです。さすがにやり切れなくなり、1カ月で宿泊所を脱走しました。監視も甘かったので、逃げ出すのには大して苦労しなかったですね」(Aさん)  県下でも大手のNPO、しかも許認可業者であるにもかかわらず、なぜこのようなことが起きてしまうのか。寿町で福祉事業に携わる人物は、次のように話す。 「実は、このNPOは福祉関係者の間でも悪名高い札付きの団体なんです。暴力団や右翼団体がバックに付いているともささやかれ、行政としてもアンタッチャブルな存在。ここが運営する無料低額宿泊所は、あまりの待遇のひどさに入所数カ月以内に半数近くが逃げ出してしまうほど。だから、常にホームレスを集めていて、彼らがたむろする場所を大規模なスカウト部隊が巡回しているのは地元では有名な話。でも、それだけでは足りないので炊き出しを餌におびき寄せたり、罠にはめるような形で宿泊所に誘い込んだりしているのでしょう。通常、許認可業者の施設には行政が抜き打ちで検査を行ったりするのですが、このNPOの施設では強面のスタッフが自治体の職員の介入を頑なに拒むので、実態をつかめないのだそうです。また、指導すると後日、いかにもそれ風の男性が役所に怒鳴りこんできたりするので、役所としても頭を抱えています」  ホームレスが集まる場所に現れ、相談に乗る振りをして言葉巧みに無料低額宿泊所へ誘い込む輩は、基本的に貧困ビジネスを企んでいると考えていい。そこには、許認可も無認可も関係ないのだ。 (文=牧隆文)
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