9.11テロの首謀者ビンラディン抹殺作戦の全貌! アメリカの夜明けは遠く『ゼロ・ダーク・サーティ』

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CIAのビンラディン追跡チームに実在した女性分析官を主人公にした『ゼロ・ダーク・サーティ』。
機密情報の漏洩や拷問の有無をめぐって米国の配給会社にはクレームが寄せられている。
 いかにしてビンラディンは潜伏先をCIAに探し当てられ、米軍特殊部隊によって殺害されたのか。キャスリン・ビグロー監督、ジェシカ・チャステイン主演による『ゼロ・ダーク・サーティ』はその一部始終を記録したシリアスドラマだ。上映時間2時間38分にわたって異様な緊張感が持続する。映画というよりも映像による殺人調書と呼んだほうがいいかもしれない。2月25日(月)に発表されるアカデミー賞に作品賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞、音響効果賞の5部門にノミネートされている。  米国人に多大なトラウマを与えた9.11同時多発テロの首謀者であるアルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンを追い詰めたのは、実在するひとりの女性だった。CIAのビンラディン追跡チームの中心メンバーとして活躍した若き女性分析官マヤがこの物語の主人公だ。過酷な職場に放り込まれた女性が伝説のテロリストに関する情報収集と潜伏先の割り出しという仕事を成し遂げることで大きく変容していく様が描かれる。『ツリー・オブ・ライフ』(11)、『ヘルプ 心がつなぐストーリー』(11)、『テイク・シェルター』(11)で若奥さん役を演じたジェシカ・チャステインが冷血な爬虫類を思わせる風貌で“アメリカの敵”と対峙する。『ディア・ハンター』(78)に出演していた頃のクリストファー・ウォーケンを彷彿させる、冷たく光る青い瞳が印象的だ。
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新米局員だったマヤ(ジェシカ・チャステイン)だが、同僚たちが次々と倒れていく中、
上司に噛み付くタフな女になっていく。
 10年近くにわたるマヤとビンラディンとの水面下での戦いを『ハート・ロッカー』(08)でもコンビを組んだ脚本家のマーク・ボールと女傑ビグロー監督は詳細な資料に基づいて追っていく。CIAパキスタン支局に配属されて間もないマヤ(ジェシカ・チャステイン)は見るからに華奢で、こんな娘がテロリストに立ち向かえるのかと観ているほうが心配になる。案の定、秘密施設内でチームリーダーのダニエル(ジェイソン・クラーク)が捕虜を水責めにすると、マヤは正視できずに吐き気に襲われる。米国内では違法となっている捕虜への拷問まがいの尋問が、海外では平然と行なわれていた。マヤの様子をみてダニエルはやれやれと肩をすくめるが、上司のブラッドリー(カイル・チャンドラー)は澄ました顔でいう。「彼女はああ見えて、けっこー冷血らしいよ」。  その言葉通りだった。なかなか口を割らない捕虜への拷問を続けていく日々に、先輩のダニエルのほうが先に心が折れてしまう。残ったマヤは膨大な量の情報を分析しながら、執拗に尋問を続けていく。同僚のジェシカ(ジェニファー・イーリー)は仕事熱心なマヤを心配して食事に連れ出していたが、気配り屋の彼女は自爆テロの犠牲となってしまう。百戦錬磨のベテラン局員たちの後ろに隠れるように佇んでいたマヤだったが、望むも望まざるもいつの間にか自分がビンラディン追跡チームを率いていかなくてはならない立ち場となっていく。一度も逢ったことのないひとりの男の暗殺こそが、公務員であるマヤの使命となる。  ニーチェの言葉に「怪物と戦うものは、己が怪物にならぬよう気をつけよ」という一節がある。マヤはこの言葉をあたかも逆利用する。伝説のテロリストに立ち向かうために、自分自身を怪物化する道へ進む。すでに死んでいるかもしれないビンラディンを探すことに予算や労力を割くよりも、犠牲者を増やさないようテロ防止により力を注ぐべきだと唱える上司のブラッドリーをマヤはこっぴどくなじる。莫大な情報提供料(当初は30億円だったが、07年には60億円にまで増額)を支払うことで手に入れたアルカイダ関係者の家族の電話を盗聴し、アルカイダとビンラディンとを繋ぐ連絡員の所在を洗う。マヤの指示に従って危険地帯で動く現地スタッフは命がいくつあっても足りない。
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2011年5月1日午前0時30分、ビンラディン捕縛作戦が実施。
パキスタンの市街地にある邸宅に米軍特殊部隊が強襲を掛ける。
 気が遠くなるような捜査を積み重ね、ようやくパキスタンの首都イスラマバード近郊にある町・アボッターバードに高い壁に囲われた不審な屋敷があることを突き止める。この屋敷の主人はいっさい屋外に出ようとしない。スパイ衛星にキャッチされることを避けているに違いない。ここまで徹底して身を隠す必要がある人間は非常に限られている。宿敵の隠れ家がようやく判明したのだ。それなのに、なぜ上層部は即行動に移さないのか? マヤはCIAテロ対策センターの責任者であるジョージ(マーク・ストロング)を逆パワハラ同然の行動で連日突き上げる。拷問を見て嘔吐していた女の子の面影はまるでない。もはやCIAにマヤをコントロールできる人間はいなかった。かくして屋敷の主人がビンラディンであるという確実な証拠がないまま、海軍の特殊部隊ネイビーシールズを投入した「海神の槍作戦」が実行される。  マヤが見守る「海神の槍作戦」を再現した映像は、まるでスナッフフィルムでも観るかのようにまがまがしいリアリティーに満ちている。作戦が開始されたのは2011年5月1日、タイトルとなった午前0時30分。暗視カメラで撮影された映像の中、極秘開発されたステルス型ヘリコプター2機から降り立った特殊部隊の精鋭24名と爆発物探知訓練を受けた軍用犬が屋敷の中へと瞬く間に侵入していく。真夜中の侵入者に気が付いた男たち2人がまず射殺され、一緒にいた女性も犠牲となる。続いて、様子を見にきたビンラディンの息子も射殺。屋敷の1階を制圧した突入隊は2階にいたビンラディンの妻子たちを確保。3階へと逃げるビンラディンを追う。この日のために殺人トレーニングを積んできたプロたちの前では伝説のテロリストもあっけなかった。銃を持って反撃する暇もないまま胸と頭部を撃ち抜かれた。捕獲ではなく抹殺することが作戦の当初からの目的だった。作戦に要した時間はわずか38分。着陸時に損傷したヘリコプター1機を爆破処理して、24名の隊員と軍用犬は無傷のまま引き揚げた。事前に情報が漏れることを恐れ、パキスタン側には作戦のことはいっさい知らされなかった。他国に不法侵入しての軍事行動だったが、おおむね諸外国は世紀の大犯罪者を最小限の犠牲者で仕留めたオバマ政権を賞讃した。  ネイビーシールズが持ち帰ったビンラディンの遺体とマヤは対面する。マヤを普通の女性から怪物へと変容させた相手は、すでに冷たいムクロとなっていた。マヤは念願のミッションをコンプリートし、同僚や同胞たちの仇を討つことに成功した。彼女は自分に与えられた困難な仕事を最後までやり抜いたのだ。通常のドラマなら、仕事を通した女性の成長ぶりに感銘を覚えるクライマックスなのだが、そこには感銘とは大きく異なるザラザラとした違和感だけが残る。長年の責務をやり終えた彼女を優しく出迎えてくれる家族は果たしているのだろうか。彼女には精神的な拠り所としている宗教はあるのだろうか。マヤに関する具体的な家族構成や生い立ち、宗教観は最後まで明かされない。彼女を特定するような情報があると、報復の手掛かりとなってしまうからだ。伝説のテロリストは莫大な予算と多大な犠牲者を伴うことで抹消された。だが、テロの火がこの世界から消えることはない。 (文=長野辰次) zdt04.jpg 『ゼロ・ダーク・サーティ』 脚本/マーク・ボール 監督/キャスリン・ビグロー 出演/ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、ジョエル・エドガートン  配給/ギャガ 2月15日(金)よりTOHOシネマズ有楽町ほか全国公開  Jonathan Olley(c)2012 CTMG. All rights reserved. <http://zdt.gaga.ne.jp> ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第208回]チェルノブイリ“立ち入り制限区域”で撮影敢行! オルガ・キュリレンコ主演の社会派作品『故郷よ』 [第207回]“明るい不登校児”のガラパゴスな団地ライフ! 中村義洋監督の箱庭映画『みなさん、さようなら』 [第206回]いつまでもバカやって、尻を追っかけていたい! ぬいぐるみの『テッド』は“永遠のエロ中学生” [第205回]石原慎太郎原作の異色ミステリー『青木ヶ原』ままならない人生の中で出会った恋人たちの行方 [第204回]陶酔と記憶の向こう岸にある世界に3Dで迫る! 松江哲明監督の『フラッシュバックメモリーズ』 [第203回]あの低視聴率ドラマ『鈴木先生』が映画版に! “鈴木式教育メソッド”は世界を変えられるか? [第202回]“余命刑事”が家族の絆と細菌兵器を奪回する! 究極の時間制限サスペンス『ブラッド・ウェポン』 [第201回]年末は“女体盛り”パーティーで盛り上がろう! ジェダイの騎士も集う秘密の宴『SUSHI GIRL』 [第200回]もし“理想の恋人”が目の前に現われたどーする!?  情熱的で予測不能な彼女『ルビー・スパークス』 [第199回]“耳フェチ”には堪えられない青春官能ムービー!『耳をかく女』桜木梨奈の無印演技に癒やされたい [第198回]ハリウッドの頑固オヤジがたどり着いた好々爺の境地! イーストウッド、4年ぶりの主演作『人生の特等席』 [第197回]この“明るいヘンタイ”っぷりがいいんじゃない!? 会田誠のアートなエロス『駄作の中にだけ俺がいる』 [第196回]三池監督ならではの“いのちの授業”が始まる! サイコパス教師と過ごす恐怖の文化祭『悪の教典』 [第195回]“絶対的価値”を求める男たちの翔んでもロマン! 井筒監督の犯罪サスペンス『黄金を抱いて翔べ』 [第194回]禁断の蜜が溢れるSM世界『私の奴隷になりなさい』セクシーアイコン・壇蜜がすべてをさらけ出した! 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チェルノブイリ“立ち入り制限区域”で撮影敢行! オルガ・キュリレンコ主演の社会派作品『故郷よ』

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ウクライナの小都市・プリピチャを舞台にした
オルガ・キュリレンコ主演の『故郷よ』。幸福な結婚式の最中に
原発事故の第一報が知らされる。
 プリピチャという街をご存知だろうか。ウクライナ北部にあるプリピチャは人口5万人ながら、平均年齢26歳で出生率の高い活気ある街だった。高層マンションに近代的な病院、劇場、学校が並び、開業を間近に控えていた遊園地には街のランドマークのような観覧車が建てられていた。その観覧車からは豊かな自然に囲まれた美しい街並を見渡すことができた。だが、この遊園地は一度も開業しないまま閉鎖されてしまう。プリピチャの駅も路線図から消されてしまった。1986年4月26日、プリピチャから3km先にあるチェルノブイリ原発で事故が起きたからだ。チェルノブイリ原発から30km圏内は“ゾーン”と呼ばれる立ち入り制限区域となり、全住民の退去が命じられた。プリピチャの街全体がゴーストタウン化してしまった。『007/慰めの報酬』(08)でタフなボンドガールを演じて人気を博したオルガ・キュリレンコ主演の『故郷よ』は、プリピチャを舞台にした物語だ。事故後もプリピチャに残り、現地の観光ガイドを務める女性の哀しい現実と事故当日までの愛と希望に溢れていた日々が描かれている。ゾーン内で初めて撮影された劇映画としても注目されている。  『故郷よ』は華やかな結婚式が物語序盤を彩る。純白のドレスを着た美しい花嫁のアーニャ(オルガ・キュリレンコ)と精悍な花婿のピョートル(ニキータ・エムシャノフ)を取り囲むように両家の家族や友人たちが集まり、造営されたばかりの遊園地の広場で記念写真を撮影している。一点の曇りもない幸せな光景だ。写真撮影中に急にどしゃぶりの雨が降ってきた。ドレス姿のアーニャはびしょ濡れになるが、愛するピョートルがいれば平気だった。アーニャが当時の大ヒット曲『百万本のバラ』を歌い、祝福ムードで満たされる披露宴会場。ところが宴の途中、ピョートルは仕事に出掛けると言い始めた。山火事が起き、消防士であるピョートルも消火活動に向かうことになったのだ。「今日だけは休んで」と懇願するアーニャを振り切って、ピョートルは現場へと急ぐ。アーニャがピョートルの姿を見たのは、それっきりだった。ピョートルが向かった先はチェルノブイリ原発の事故現場だった。  初夜を迎えることなく未亡人となったアーニャは、原発事故後もプリピチャに残った。住民たちはみんな強制退去を命じられたが、アーニャは街から離れられずにいる。廃墟と化した街並の中にピョートルの面影を探している。事故から10年の歳月が経ち、アーニャはチェルノブイリ原発事故の跡を見学して回るチェルノブイリツアーのガイドとして生計を立てている。アーニャによると、ツアーに参加している客たちはみんな「奇形化した動物たちを見たがっているだけ」だそうだ。そんな客たちを引率してアーニャは思い出の遊園地跡や石棺化作業に従事する労働者たちが利用する発電所の社員食堂などを毎日同じように巡っていく。アーニャの中ではあの日から時間が止まってしまったままだ。
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事故発生から2日後、30km圏内の住民は強制退去が命じられる。
白い防護服を着た軍人たちがまったく説明のないまま清浄作業を始めた。
 すでに涙は乾き切ってしまったアーニャだが、その瞳には様々なものが映る。退去命令後もずっと現地で暮らし続けている森林警備員のニコライ(ヴャチェスラフ・スランコ)は「5年で死ぬ」と診断されたが、地元産のリンゴを食べながら森の中で元気そうに暮らしている。無人化していた家屋には、タジキスタンから内戦を逃れてきた難民の家族がいつしか住みつくようになっていた。汚染された土地であっても、戦火の中を逃げ惑う恐怖に比べれば平穏極まりない土地なのだ。今も美貌をキープしているアーニャに言い寄ってくる男たちは多い。パトリック(ニコラ・ヴァンズィッキ)はベッドでの情事の後、「ここを離れて、フランスで暮らそう」と優しく申し出てくれる。でも、アーニャの虚ろな心にはまるで響かない。忘れ去られた遊園地の観覧車のように、哀しみを堪え続けてきたアーニャの心はぴくりとも動かなくなってしまった。  本作を撮ったのはフランス在住のミハル・ボガニム監督。イスラエル生まれの女性監督だが、戦乱から逃れるために幼少期にフランスに移り住んだ経歴を持つ。「自分には故郷と呼べる場所がない。だから、強制退去を命じられて故郷から引き離されたプリピチャの人たちとプリピチャという街に惹かれたのだと思う」と話す。ヒロインのアーニャをウクライナ出身の国際派女優オルガ・キュリレンコが演じているが、出演を熱望してきたオルガの申し出に対してミハル監督は当初は躊躇したと言う。 「ひとつにはオルガが美し過ぎるから(笑)。小さな街で暮らす女性の役には合わないと思った。もうひとつ出演を即OKしなかった理由は、彼女が『007』シリーズでボンドガールを演じていたことは知っていましたが、フランスでは彼女は女優としては評価されてなかったんです。アクション映画のお色気要員だろう、くらいにしか認識されてなかったんです。でも、彼女はオーディションを受けに来て、いちばん印象に残る演技を見せ、誰よりも熱意を感じさせました。『故郷よ』がフランスで公開され、彼女の女優としての評価はずいぶんと変わりました」。  オルガ・キュリレンコをはじめとするキャストやメーンスタッフは本作のテーマを充分に理解して撮影に臨んだが、ゾーン内での撮影はやはり困難を極めた。1日の撮影時間が制限されており、持ち込む機材や資材も規制されていた。ゾーン内で寝泊まりすることはできず、毎日30km圏外にある宿舎まで雪道の中を往復した。そして、何よりもウクライナ当局から脚本内容について厳しい検閲が入った。そのため撮影許可が降りるよう、ニセの脚本を用意して提出したそうだ。このニセの脚本について尋ねると、よほど不本意な行為だったのだろう、ミハル監督は首を振りながら言葉短めに答えてくれた。
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東京でのインタビューを終え、ミハル監督は福島へ。
「旧ソ連圏では映画を撮るのに25年要したが
、日本ではすでに福島の映画が撮られている。
この違いは大きい」と話す。
「撮影の許可をもらうために、仕方なく選んだ方便です。そうでないとゾーン内での撮影はできませんでした。製作プロダクションのほうでニセの脚本は用意してもらったので、私はその脚本を読んでいません。当局がNGを出すだろうシーンを予め外した内容になっていたはずです」  2011年3月の福島第一原発事故のニュースに胸を痛めながら本作の編集作業を進めたというミハル監督。完成後はベネチア映画祭、トロント映画祭、東京国際映画祭など世界各地でプレミア上映が行なわれたが、舞台となったウクライナでの上映会はひと波乱あったようだ。通常ならこの手の社会派作品は上映後に質疑応答が組まれるが、『故郷よ』の上映は観客たちとのディスカッションはいっさいないままに終わった。 「ウクライナでの上映では、『故郷よ』は批判の対象となりました。当局は消防士たちがヒーローのごとく活躍して原発事故から人々を救出するという物語を期待していたからです。でも、上映された作品はそれとは真逆のもので、事故の被害者たちの心情を描いたものだったのです。ウクライナの人たちにとって原発事故はいまだにタブーなのです。現在進行形の問題なので、誰も口を開きたがらないのです。でも、この作品は原発推進でも脱原発を訴えものでもありません。事故によって故郷を失い、自分の中のアイデンティティーの一部を欠落してしまった人々のドラマなのです。そして本当の恐怖とは放射能のように目には見えないものだということを描いたものなのです」  劇中、披露宴や酒場のシーンで『百万本のバラ』が何度か流れる。1980年代に流行したラブソングだ。もともとの原曲はヨーロッパの小国ラトビアで暮らす女系家族が生活の苦しさを歌にしたもの。ソ連をはじめとする大国の思惑に左右されてきた歴史を持つ小国の悲哀が感じられる歌詞だった。それが口当たりのよいラブソングに書き換えられたことで、ソ連圏で大ヒットしたのだ。そのことに触れると、ミハル監督は意外そうな顔を見せた。 「『百万本のバラ』は80年代を代表するヒット曲で、当時の結婚式では必ず歌われていたものです。実際に事故当日、プリピチャでは16組の結婚式が挙げられ、あの歌が歌われました。私が知っている歌詞は、貧しいペンキ職人が想いを寄せる女性のために家を売り払ってたくさんのバラを贈るというものです。主人公の一途さを伝えるラブソングとして映画では使っています。ラトビアで作られた歌? それは初めて聞きました」  1981年に作られた歌でさえ、数年後には原曲とは違う意味合いを持つものに変わってしまっていた。時間はおそろしいスピードで、あらゆるものを風化させていく。『故郷よ』の英題は『Land of oblivion』(忘却の土地)となっている。 (文=長野辰次)
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『故郷よ』 監督/ミハル・ボガニム 出演/オルガ・キュリレンコ、イリヤ・イオシフォフ、アンジェイ・ヒラ、ヴャチェスラフ・スランコ 配給/彩プロ 2月9日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開 (c)2011Les Films du Poissons  <http://kokyouyo.ayapro.ne.jp> ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第207回]“明るい不登校児”のガラパゴスな団地ライフ! 中村義洋監督の箱庭映画『みなさん、さようなら』 [第206回]いつまでもバカやって、尻を追っかけていたい! ぬいぐるみの『テッド』は“永遠のエロ中学生” [第205回]石原慎太郎原作の異色ミステリー『青木ヶ原』ままならない人生の中で出会った恋人たちの行方 [第204回]あの低視聴率ドラマ『鈴木先生』が映画版に! “鈴木式教育メソッド”は世界を変えられるか? [第202回]“余命刑事”が家族の絆と細菌兵器を奪回する! 究極の時間制限サスペンス『ブラッド・ウェポン』 [第201回]年末は“女体盛り”パーティーで盛り上がろう! ジェダイの騎士も集う秘密の宴『SUSHI GIRL』 [第200回]もし“理想の恋人”が目の前に現われたどーする!?  情熱的で予測不能な彼女『ルビー・スパークス』 [第199回]“耳フェチ”には堪えられない青春官能ムービー!『耳をかく女』桜木梨奈の無印演技に癒やされたい [第198回]ハリウッドの頑固オヤジがたどり着いた好々爺の境地! イーストウッド、4年ぶりの主演作『人生の特等席』 [第197回]この“明るいヘンタイ”っぷりがいいんじゃない!? 会田誠のアートなエロス『駄作の中にだけ俺がいる』 [第196回]三池監督ならではの“いのちの授業”が始まる! サイコパス教師と過ごす恐怖の文化祭『悪の教典』 [第195回]“絶対的価値”を求める男たちの翔んでもロマン! 井筒監督の犯罪サスペンス『黄金を抱いて翔べ』 [第194回]禁断の蜜が溢れるSM世界『私の奴隷になりなさい』セクシーアイコン・壇蜜がすべてをさらけ出した! 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[第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! 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“明るい不登校児”のガラパゴスな団地ライフ! 中村義洋監督の箱庭映画『みなさん、さようなら』

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「一生、団地で過ごす」と決めた悟(濱田岳)は仕事も恋人(倉科カナ)も
団地内で手に入れた。果たして悟の“ひとり鎖国令”は可能なのか。
 団地を舞台にした映画が続々と公開されている。タナダユキ監督の『ふがいない僕は空を見た』(12)では団地から抜け出すことができない高校生男女の切ない友情が描かれた。イギリスのSFコメディ『アタック・ザ・ブロック』(11)では団地を徘徊する不良少年たちが団地育ちの絆で侵略エイリアンを迎撃した。インドネシア発の格闘映画『ザ・レイド』(11)やスタローン主演のSF映画のリメイク『ジャッジ・ドレッド』(2月16日公開)は低所得者向け賃貸マンションで壮絶アクションが繰り広げられる。そんな数ある団地映画の中で真打ち登場と言えるのが、中村義洋監督の『みなさん、さようなら』だ。『アヒルと鴨のコインロッカー』(06)、『ジャージの二人』(08)、『チーム・バチスタの栄光』(08)の中村監督(1970年生まれ)が、同世代の作家・久保寺健彦(1969年生まれ)の同名小説を限りなく忠実に映画化。団地から一歩も出ないで一生を過ごすことを決意した主人公の青春の日々が描かれる。中村作品の常連俳優・濱田岳が年齢不詳な童顔を活かして12歳から30歳までをひとりで演じているのも見どころだ。  悟(濱田岳)は前向きな引きこもりだ。小学校の卒業以来、母親のひーさん(大塚寧々)と暮らすマンモス団地から一度も外へ出ていない。団地内には小さいながらも商店街があり、郵便局に保育園もある。団地外にある中学校には通わずに、毎朝ラジオ講座を聴きながら独学を続けている。団地内の公園でのトレーニングも欠かせない。団地内商店街にあるケーキ屋「タイジロンヌ」には週一度は通い、15歳になったら働かせてほしいと根回しに励んでいる。小学校時代の同級生たちが中学校から戻ってくると、しばし談笑して友情をキープしている。悟の登校を促しに来た中学校の教師(安藤玉恵)からは「世界が狭すぎるッ」となじられるが、悟は堂々と言い返す。「俺は決めたんだ。団地の中だけで生きていく!」と。
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年ごろになった悟は幼なじみの松島(波瑠)とペッティングし合う関係に。
中学、高校、大学、社会人と演じ分けた波瑠の変身ぶりだけでも観る価値あり。
 悟は有言実行の男だ。『空手バカ一代』のモデルである大山倍達に憧れ、空手教本『100万人の空手』(講談社)を読んで男を磨く。ひとり稽古を積み重ね、親指立て伏せを目指す。その一方では、隣に住む幼なじみの松島(波瑠)と親の目を盗んで初エッチを経験。狭い一室の中に甘い吐息が漏れる。さらには団地内の集会所で開かれた小学校の同窓会で再会した憧れの美少女・早紀(倉科カナ)へ一直線にラブアタック。初セックス&婚約に漕ぎ着けた。看護士のひーさんが夜勤でいない日は、悟と早紀は一晩中愛し合う。団地内に引きこもりながら、羨ましいセックスライフを送る悟。15歳から働き始めた「タイジロンヌ」では師匠(ベンガル)に鍛えられ、ケーキ職人としてなかなかの腕前になってきた。団地内で暮らしていても、悟の人生はとても充実している。  女手ひとつで育ててくれた母親のひーさん、団地内の保育園で働く婚約者の早紀、小学校のときのあだ名が“オカマラス”だった気の優しい不登校仲間の薗田(永山絢斗)らに囲まれ、幸せいっぱいの悟。遠く離れた職場まで満員電車に毎日詰め込まれてヘロヘロになりながら働くよりも、時間的にも精神的にも余裕のある生活を送っている。同じ団地で生まれ育った小学校時代の同級生であるみんなが、今日も元気に暮らしているのか、何を考えながら生きているのか悟は気になってしかたない。毎晩せっせと薗田と団地内をパトロールし、同級生たちの部屋にちゃんと灯りが点いているのか確かめないと気が済まない。ところが、同級生たちは悟のそんな想いをスルーして、高校や大学進学、就職をきっかけにどんどん団地から出ていってしまう。悟と早紀が婚約した23歳のときには、100人以上いた同級生たちが三分の一に減ってしまった。会社勤めを始めた松島も団地に帰ってこない日が多くなってきた。かつては輝いていた団地ライフが、いつしか時代が移り変わり、何となくダサいものへと変容していたのだ。誰よりも団地を愛する悟は、そのことが我慢ならない。
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女手で育てられた悟に厳しく接するケーキ職人の泰二郎(ベンガル)。
職人としての腕は確かだが、庶民の味にこだわりスイーツの高級化に対応できない。
 職住近接を謳った郊外のニュータウンは高度経済成長時代に“理想の未来都市”としてデザインされた。公団マンションは低所得者にとってはモダンな西洋的ライフスタイルが享受できる憧れの居住空間として高倍率を誇った。多摩ニュータウンをモデルにした『耳をすませば』(95)でプロデューサーを務めた宮崎駿監督は「三鷹天命反転住宅」などで知られる美術家・荒川修作とコラボレーションし、理想的な賃貸住宅群によって構成された街づくりを一時期は本気で考えていた。コンクリートで作られた新しい街は、住民たちの自治によって運営される暮らしやすいユートピアになるはずだった。だが、海外で社会主義国が次々と崩壊していくのと同調するように、日本はバブル経済へと突入。物が溢れる豊かな社会の中で、狭苦しく画一的な団地ライフは時代遅れなものとなっていく。前近代的な村社会から、個人が尊重される核家族の時代に変わったことのシンボルだった団地だが、社会の最小単位だった家庭さえもぶっ壊れてしまい、地域社会そのものが成り立たなくなってしまった。白く輝いていたマンションはペンキのはがれやひび割れが目立ち、空室が増え始めた。夜のパトロールに出掛けた悟には、団地のむせび泣く声が聞こえるような気がする。  『みなさん、さようなら』はひとりの男の17年間にわたる成長を描いたおかしくも切ない青春コメディだが、高度経済成長後の日本社会そのものを描いた箱庭的な物語でもある。団地で生まれ育った悟は団地内にある小さなケーキ屋で職人になることで、仕事を通じて現実社会に触れていく。同じ団地で暮らす女の子に恋をすることで人生を学んでいく。そんな悟のゆっくりとした成長を、シングルマザーのひーさんと団地はいつも静かに見守ってくれていた。国際情勢に疎いが何事にも一生懸命な悟は、小さな島国で穏やかに暮らす日本人そのものだ。できれば、ずっとずっと自分の愛する人、大切な人たちと一緒に暮らし続けたい。でも、時代は否応なしに流れていき、不況の波や国際化の波が悟の暮らす団地にも押し寄せている。変わりゆく時代の中で、悟と団地はどうなっていくのか。少年と呼べる季節を過ぎた悟の今後の姿を想い浮かべることは、日本社会がこれからがどうなるかを考えることでもある。 (文=長野辰次) minasan_sayonara04.jpg 『みなさん、さようなら』 原作/久保寺健彦 脚本/林民夫、中村義洋 監督/中村義洋 主題歌/エレファントカシマシ「sweet memory」 出演/濱田岳、倉科カナ、永山絢斗、波瑠、田中圭、ベンガル、大塚寧々 配給/ファントム・フィルム 1月26日(土)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー  (c)2012「みなさん、さようなら」製作委員会 <http://minasan-movie.com> ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第206回]いつまでもバカやって、尻を追っかけていたい! ぬいぐるみの『テッド』は“永遠のエロ中学生” [第205回]石原慎太郎原作の異色ミステリー『青木ヶ原』ままならない人生の中で出会った恋人たちの行方 [第204回]あの低視聴率ドラマ『鈴木先生』が映画版に! “鈴木式教育メソッド”は世界を変えられるか? 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[第171回]自由社会に順応できない“脱北者”の過酷な現状 無垢なる季節との決別『ムサン日記 白い犬』 [第170回] 世界興収100億突破のSF大作『ロボット』はあらゆる既成概念を破壊する!! [第169回]“エンタの神さま”ツイ・ハークが大復活! B級映画マニアの心を焦がす『王朝の陰謀』 [第168回]人はお下劣な分だけ、強く優しくなれる!? 結婚を控えた女たちの本音『ブライズメイズ』 [第167回]行きすぎたシステム社会に警鐘を鳴らす“ユナボマー・マニフェスト”の映画化『モンスターズクラブ』 [第166回]祭りの終わりと新ステージの幕開け、3部作完結『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 [第165回]すばらしき“コーマン野郎”の世界!『コーマン帝国』、愛と欲望の歴史 [第164回]懐かしき香り漂う、新感覚サスペンス 破滅へ突き進む男の悲劇『ドライヴ』 [第163回] 災害に備えた地下シェルターは必要? 心理ホラー『テイク・シェルター』 [第162回] 森田芳光監督の最終列車『僕達急行』人生は出会いと旅立ちのリフレイン! [第161回] 鬼才キム・ギドクの"多重人格ショー"セルフドキュメンタリー『アリラン』 [第160回]映画創成期に散った"殉教者"への聖歌 3D映画『ヒューゴの不思議な発明』 [第159回]これはホラー? それともコメディ? 勘違い女が爆走『ヤング≒アダルト』 [第158回] ピラミッドは古代からのメッセージ!? 歴史ミステリー『ピラミッドの謎』 [第157回] 韓国映画の名匠が明かす"創作の極意"イ・チャンドン監督『ポエトリー』 [第156回] ローカル局で"伝説となった男"の生涯『木村栄文レトロスペクティブ』 [第155回] 米国に半世紀も君臨した"影の大統領" FBI初代長官『J・エドガー』 [第154回]犯罪者たちに学ぶ"人心掌握術"の奨め『アニマル・キングダム』『預言者』 [第153回]"地獄"からの生還者・板尾創路の凄み 古典落語を過激に脚色『月光ノ仮面』 [第152回]早くも2012年ベスト1映画が登場!"代理殺人"を巡る恐怖『哀しき獣』 [第151回]父殺し、自分殺し、そして再生の物語 園子温流ラブストーリー『ヒミズ』 [第150回]米国お笑い横断旅行『宇宙人ポール』人間のちっぽけな悩みはETが解決! 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CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? 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いつまでもバカやって、尻を追っかけていたい! ぬいぐるみの『テッド』は“永遠のエロ中学生”

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かわいい顔して、やることはエロオヤジな『テッド』。
日本語字幕の監修は町山智浩、日本語吹替えは有吉弘行という
通好みな日本語対応。
 子どもの頃に『ドラえもん』『オバケのQ太郎』などの藤子不二雄ワールドを観て育った世代には堪らない大人向けのファンタジーコメディ『テッド』。人間の言葉をしゃべる陽気なクマのぬいぐるみと彼を唯一の親友として育ったコドクな少年との心温まる奇跡のヒューマンドラマ、の27年後の物語。かつては愛らしいかったぬいぐるみのテッドだが、すっかり人間社会に染まって下ネタ大好きなエロ中年オヤジ化してしまい、少年は体こそデカくなったものの、いつまでもぬいぐるみのテッドを手放せないボンクラ野郎に育ってしまった。最初は優しかった恋人も「いい加減、ぬいぐるみと別れろッ」と怒り出す始末。ぬいぐるみとの友情を取るのか、それとも恋人とケジメをつけて結婚するのか? ぬる~く育った元少年は重大な決断を迫られる。2012年6月に全米で公開され、R指定ながら2億ドルを突破、『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』(09)を越える大ヒットコメディがようやく日本でも公開される。  物語はクリスマスの奇跡から始まる。いじめられっ子のジョンは友達がまるでおらず、両親からクマのぬいぐるみをプレゼントされて大喜び。ぬいぐるみにテッドと名前を付けて、唯一無二の親友となる。テッドがいれば、もうジョンはコドクではなかった。でも、どうせなら、テッドとおしゃべりできればいいのに。「神さま、他には何もいりません。テッドとおしゃべりさせてください」。テッドが祈るとあ~ら不思議、少年の純真な願いは叶い、テッドは口を開いた。「僕をハグして!」。じーん……。なんて素敵なファンタジーだろう。ところが奇跡の夜から27年の歳月が経過し、ジョン(マーク・ウォールバーグ)は勤務先のレンタカー会社に遅刻ばかりしてるだらしな~い大人となり、一方のテッドは「しゃべるぬいぐるみ」として全米の注目を集めたのも過去の栄光。幻覚キノコの所持で逮捕されて以降、すっかり墜ちたセレブ状態。写メを求める女の子のおっぱいを触ったり、マリファナ吸ってまったりする日々。そんなテッドを変わらず受け入れてくれるのは、やっぱりジョンだけ。2人でB級SF映画『フラッシュ・ゴードン』(80)を見直しては盛り上がっている。まるで永遠の中学生みたいなジョンとテッド。男の友情、サイコー!  お前らホモかよとツッコミたくなるくらい仲のよい2人に怒り心頭なのが、ジョンと同棲中の恋人・ロリー(ミラ・クニス)。最初はジョンの子どものような純粋さに心を惹かれていたが、ベッドでこれからお楽しみというタイミングで度々邪魔に入るテッドは苦々しい存在。テッドは見た目はかわいらしいテディベアだが、性格はただのエロオヤジ。ジョンとロリーがデートから帰ってくるとコールガールたちを部屋に連れ込んで乱痴気パーティーを開くわ、フロアにはウ●コが落ちてるわのやりたい放題。一体どんなプレイしてたんだ? 「なんで私がウ●コ掃除しなきゃいけないの?」とロリーの怒り爆発! ロリーとの結婚を考え始めていたジョンは、親友か恋人かの二者選択を迫られる。
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交際4年目になるジョン(マーク・ウォールバーグ)とロリー(ミラ・クニス)はそろそろ
結婚を考えるが、ぬいぐるみのテッドが障害に。
 ぬいぐるみのテッドは少年時代のジョンをコドクから救ってくれた、大切な存在。友達のいないジョンの一途な想いが生み出した、いわばイマジナリーフレンドの一種だろう。ただし、ぬいぐるみという“よりしろ”があるため、他の人にもその存在が確認できる。通常のイマジナリーフレンドは少年が社会性を身に付けることで消滅していくが、ジョンにとっての“少年性”の象徴であるテッドはいつまでも消えることなくジョンと暮らし続けている。ジョンが30歳を過ぎても大人になり切れていないからだ。もちろん恋人のロリーのことは大好きなんだけれど、結婚して家庭に収まることにはまだ躊躇してしまう。今の職場で骨を埋める気にもなれない。もうちょっと遊んでいたいし、たまにはヤンチャもしてみたい。テッドと別れることは、そういった自分の中の“少年性”を断捨離することであり、なかなか踏ん切りをつけれずにいる。煮え切らない態度が、よりロリーをブチ切れさせてしまう。  テッドとジョンのバカ丸出しなセリフの応酬に、『フラッシュ・ゴードン』の主演俳優サム・ジョーンズや人気歌手ノラ・ジョーンズたちを本人役で引っぱり出すなどのカメオギャグが全編にわたってぎっしり。子どもの頃に夜店でリンゴ飴を口いっぱいに頬張っていたような至福感が溢れ出ています。やっぱり遠慮なく、いつでもバカやれる男友達ってサイコーなわけですよ。『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』(11)のマーク・ウォールバーグ、『寝取られ男のラブ・バカンス』(08)『ステイ・フレンズ』(11)のミラ・クニスというコメディもOKな2人に、3DCGのぬいぐるみのテッド(声はセス・マクファーレン監督)の絡み具合が絶妙です。人間とぬいぐるみが共存する世界は『ザ・マペッツ』(12)ですでに描かれているけど、『テッド』はひたすらギャグ至上主義で楽しませてくれる。
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映画史上屈指の大盛り上がりを見せるテッドの引っ越しお祝いパーティー。
テッドとジョンに極上のブツを勧める金髪の男性は……?
 テッドはジョン自身が生み出した一種のイマジナリーフレンドなわけだけど、他者にも見えるという点ではジョンにとってのリアルな家族・親戚とも言える存在。子どもの頃によく遊んだ仲のいい兄弟や従兄弟でも、その後ヤクザな道に進んでたり、借金まみれの自堕落生活を送っていた場合、自分の婚約者に引き合わせるのはちと考えてしまいますよ。果たして婚約者はどーゆーリアクションを見せるのかハラハラドキドキするじゃないですか。自分の恥ずかしい過去や身内を、自分の最愛の人はどう受け止めてくれるのか、くれないのか。本命の彼女がいたら、一緒に『テッド』を観に行くといいかも。お下劣ギャグ満載の『テッド』で爆笑してくれたら、すげーいい娘に思えるじゃないですか。まぁ、でも、女の子は発言と行動が一致しないことがままあるので、男子のみなさんはご用心を。 (文=長野辰次) ted_0004.jpg 『テッド』 製作・原案・脚本・監督/セス・マクファーレン 出演/マーク・ウォールバーグ、ミラ・クニス、ジョエル・マクヘイル、ジョヴァンニ・リビシ、パトリック・ウォーバートン、マット・ウッシュ、ジェシカ・バース、ノラ・ジョーンズ、サム・ジョーンズ、トム・スケリット 配給/東宝東和 R15+ 1月18日(金)よりTOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー  (c) 2012 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.(c)2012 UNIVERSAL STUDIOS.All Rights Reserved./Iloura(c)2012 UNIVERSAL STUDIOS.All Rights Reserved./Tippett Studio http://ted-movie.jp ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第205回]石原慎太郎原作の異色ミステリー『青木ヶ原』ままならない人生の中で出会った恋人たちの行方 [第204回]あの低視聴率ドラマ『鈴木先生』が映画版に! “鈴木式教育メソッド”は世界を変えられるか? [第202回]“余命刑事”が家族の絆と細菌兵器を奪回する! 究極の時間制限サスペンス『ブラッド・ウェポン』 [第201回]年末は“女体盛り”パーティーで盛り上がろう! ジェダイの騎士も集う秘密の宴『SUSHI GIRL』 [第200回]もし“理想の恋人”が目の前に現われたどーする!?  情熱的で予測不能な彼女『ルビー・スパークス』 [第199回]“耳フェチ”には堪えられない青春官能ムービー!『耳をかく女』桜木梨奈の無印演技に癒やされたい [第198回]ハリウッドの頑固オヤジがたどり着いた好々爺の境地! イーストウッド、4年ぶりの主演作『人生の特等席』 [第197回]この“明るいヘンタイ”っぷりがいいんじゃない!? 会田誠のアートなエロス『駄作の中にだけ俺がいる』 [第196回]三池監督ならではの“いのちの授業”が始まる! サイコパス教師と過ごす恐怖の文化祭『悪の教典』 [第195回]“絶対的価値”を求める男たちの翔んでもロマン! 井筒監督の犯罪サスペンス『黄金を抱いて翔べ』 [第194回]禁断の蜜が溢れるSM世界『私の奴隷になりなさい』セクシーアイコン・壇蜜がすべてをさらけ出した! [第193回]“無意識の湖”に身を投じたユングと女性患者の行方──クローネンバーグの恋愛サスペンス『危険なメソッド』 [第192回]“お蔵入り映画”が人命救助を果たした!? 実話をベースにした大冒険ロマン『アルゴ』 [第191回]我が家に“食人族”がやって来た! 奇才ジャック・ケッチャムの異形世界『ザ・ウーマン』 [第190回] 裏切り&結託は当たり前。今の政界にそっくり! 極道たちのバトルロワイアル『アウトレイジ ビヨンド』 [第189回] これが全米を熱狂させた“USA版バトル・ロワイアル”! 殺人リアリティーショー『ハンガー・ゲーム』 [第188回]行き詰まった人生の扉を開く鍵は“銭湯”にあり? 内田けんじ監督のオリジナル作『鍵泥棒のメソッド』 [第187回]大家族の伝統料理から超手抜きレシピまで勢ぞろい! 台所から見えてくる中東の家庭事情『イラン式料理本』 [第186回]“世界的な絶滅危惧種”である独裁者に愛の手を!? 政治ネタ&下ネタ満載コメディ『ディクテーター』 [第185回]障害者の性処理も介護の重圧も、すべて笑い飛ばせ! 男たちのバリアフリーな友情ドラマ『最強のふたり』 [第184回]人類を生み出した“創造主”との遭遇!! リドリー・スコットが物語るSF神話『プロメテウス』 [第183回]“校内格差社会”に出現した異分子(ゾンビ)たち! 青春のカタルシス『桐島、部活やめるってよ』 [第182回]カメラマンは法を犯してもかまわない!? 国家の暗部を暴く男の情念『ニッポンの噓』 [第181回]“学校”という名の密室ではびこる児童虐待の事実! 子どもたちは教師を訴える『トガニ 幼き瞳の告発』 [第180回]“神様”との出会いと別れ、そして旅からの帰還  ドキュメンタリー『アニメ師・杉井ギサブロー』 [第179回]親友=お金を貸してくれる、女友達=SEXさせてくれる!? 品性お下劣男の青春『苦役列車』 [第178回]“沢尻エリカ”という名のアトラクションムービー『ヘルタースケルター』が描く無常の世界 [第177回]毒カレー、オウム真理教、光市母子殺害……“悪魔の弁護人”と呼ばれる男の素顔『死刑弁護人』 [第176回]“芸能生活30周年”ニコラス・ケイジの会心作! 被災地に流布する暗号『ハングリー・ラビット』 [第175回]やめろと言われても、今では遅すぎたッ! 妻夫木聡&武井咲主演の過剰なる純愛劇『愛と誠』 [第174回]年間自殺者数3万人を越える現代社会への提言 自殺対策の現状を追った『希望のシグナル』 [第173回]“三島割腹事件”を若松孝二監督が映画化!『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 [第172回]実在の事件を題材にした“命の授業”『先生を流産させる会』がついに劇場公開! [第171回]自由社会に順応できない“脱北者”の過酷な現状 無垢なる季節との決別『ムサン日記 白い犬』 [第170回] 世界興収100億突破のSF大作『ロボット』はあらゆる既成概念を破壊する!! [第169回]“エンタの神さま”ツイ・ハークが大復活! B級映画マニアの心を焦がす『王朝の陰謀』 [第168回]人はお下劣な分だけ、強く優しくなれる!? 結婚を控えた女たちの本音『ブライズメイズ』 [第167回]行きすぎたシステム社会に警鐘を鳴らす“ユナボマー・マニフェスト”の映画化『モンスターズクラブ』 [第166回]祭りの終わりと新ステージの幕開け、3部作完結『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 [第165回]すばらしき“コーマン野郎”の世界!『コーマン帝国』、愛と欲望の歴史 [第164回]懐かしき香り漂う、新感覚サスペンス 破滅へ突き進む男の悲劇『ドライヴ』 [第163回] 災害に備えた地下シェルターは必要? 心理ホラー『テイク・シェルター』 [第162回] 森田芳光監督の最終列車『僕達急行』人生は出会いと旅立ちのリフレイン! [第161回] 鬼才キム・ギドクの"多重人格ショー"セルフドキュメンタリー『アリラン』 [第160回]映画創成期に散った"殉教者"への聖歌 3D映画『ヒューゴの不思議な発明』 [第159回]これはホラー? それともコメディ? 勘違い女が爆走『ヤング≒アダルト』 [第158回] ピラミッドは古代からのメッセージ!? 歴史ミステリー『ピラミッドの謎』 [第157回] 韓国映画の名匠が明かす"創作の極意"イ・チャンドン監督『ポエトリー』 [第156回] ローカル局で"伝説となった男"の生涯『木村栄文レトロスペクティブ』 [第155回] 米国に半世紀も君臨した"影の大統領" FBI初代長官『J・エドガー』 [第154回]犯罪者たちに学ぶ"人心掌握術"の奨め『アニマル・キングダム』『預言者』 [第153回]"地獄"からの生還者・板尾創路の凄み 古典落語を過激に脚色『月光ノ仮面』 [第152回]早くも2012年ベスト1映画が登場!"代理殺人"を巡る恐怖『哀しき獣』 [第151回]父殺し、自分殺し、そして再生の物語 園子温流ラブストーリー『ヒミズ』 [第150回]米国お笑い横断旅行『宇宙人ポール』人間のちっぽけな悩みはETが解決! [第149回]70年前と変わらない日本人の精神構造『聯合艦隊司令長官 山本五十六』 [第148回]追悼......"永遠の反逆児"原田芳雄さん幻の主演作『原子力戦争』がDVD化 [第147回]"ファスト風土"を舞台にした犯罪喜劇 J・アイゼンバーグ主演『ピザボーイ』 [第146回]"正義のゾンビ"が犯罪者を貪り喰う! イラク戦争奇談『ゾンビ処刑人』 [第145回] "時代の寵児"の未ソフト化作品上映!「松江哲明グレイテスト・ヒッツ」 [第144回]原発事故を描いた『カリーナの林檎』と今関あきよし監督の背負った贖罪 [第143回]"窮屈なモラル"を脱ぎ捨てた裸の女たち 園子温監督の犯罪エロス『恋の罪』 [第142回]ノーベル賞作家・川端康成が夢想した新風俗『スリーピングビューティー』 [第141回]横暴な上司は有志社員が制裁します!『モンスター上司』のブラックな笑い [第140回]"クソみたいな社会を変えたい!"高校生テロリストの凄春『アジアの純真』 [第139回] うつ病なんかヘーキ!? 宮崎あおい主演作『ツレがうつになりまして。』 [第138回]"神話"が生まれる瞬間を目撃せよ! 人類への黙示録『猿の惑星:創世記』 [第137回]刑務所で食する至高の味『極道めし』ヒロインの後ろ姿に、むせび泣き! [第136回]"理想の恋人"という偶像を破壊せよ 深夜番長の劇場デビュー作『モテキ』 [第135回]"城定秀夫監督、ブレイク前夜の予感! 闘争本能を呼び覚ます『タナトス』 [第134回]"人間失格"の道を選んだ映画監督の業 林由美香の最新主演作『監督失格』 [第133回]ホラ吹きのホラを見破る特異な職能 ポランスキー監督『ゴーストライター』 [第132回]芦田愛菜、6歳にして危険な魅力!? 子連れで全力疾走『うさぎドロップ』 [第131回]元"暴走族"が書いた旧友への鎮魂歌 青春懺悔録『アメイジング グレイス』 [第130回]V・ギャロ主演のサバイバルグルメ!? 『エッセンシャル・キリング』 [第129回]『キック・アス』より悪趣味で泣ける 中年男の悪ノリ暴走劇『スーパー!』 [第128回]この夏の清涼剤、地方少女のダンス成長記『あぜみちジャンピンッ!』 [第127回]竹ヤリで世界進出"スシタイフーン"『エイリアンVSニンジャ』ほか逆上陸 [第126回]イーモウ監督、久々のアイドル映画 中華的妹萌え『サンザシの樹の下で』 [第125回]ナタリー・ポートマン vs. ヘビメタ野郎 人気女優の隠し球『メタルヘッド』 [第124回]黒澤明の名作『生きる』のラテン版! ヤモメ男が残した遺産『BIUTIFUL』 [第123回]北国で93年間営業を続ける"大黒座"と町の記録『小さな町の小さな映画館』 [第122回]新幹線がすれ違う瞬間、願いが叶う? 小学生の目線で描かれた『奇跡』 [第121回]理想と情熱がもたらした"痛い現実" 青春の蹉跌『マイ・バック・ページ』 [第120回]胸に響く金言"プロとは手を抜くこと" 職人秘話『アトムの足音が聞こえる』 [第119回]危険な出会い、井口昇ミーツ仲村みう 悪夢の遊園地『富江 アンリミテッド』 [第118回]ナタリー・ポートマン"第1章"の終幕 虚実が攻め合う『ブラック・スワン』 [第117回]"セカイ"を旅立った少女の地底探検記 新海誠監督の新作『星を追う子ども』 [第116回] 美少女たちの輝きが脳裏から離れない。青春ムービー『魔法少女を忘れない』 [第115回] 恋愛が与える"陶酔"とリアルな"痛み"サブカル活劇『スコット・ピルグリム』 [第114回]妄想、空想、そして現実からの大脱走 美少女革命『エンジェル ウォーズ』 [第113回]"3.11"後の新しい映画モデルとなるか『劇場版 神聖かまってちゃん』の挑戦 [第112回]マスコミが讃えた"楽園"のその後、ひとりの少女の成長記録『愛しきソナ』 [第111回]閉鎖的な"村社会"をブチ破ったれ! 韓流サバイバル劇『ビー・デビル』 [第110回]"粋"を愛したフランスの伯父さん J・タチ主演『イリュージョニスト』 [第109回]自分にとって家族は敵か、味方か? オスカー2冠受賞『ザ・ファイター』 [第108回]コーエン兄弟『トゥルー・グリット』40年で変化した"米国のヒーロー像" [第107回]ジョニー・デップが愛した"極道記者" 『GONZO』奇人がスターだった時代 [第106回] 巨匠イーストウッド監督の異色作! "あの世"はあるか?『ヒア アフター』 [第105回] キレ味、喉ごしが違うアクション! 黒帯美少女の"涙拳"が炸裂『KG』 [第104回] 高齢化するニートはどこに行くのか? "戸塚校長"のその後『平成ジレンマ』 [第103回]堀北真希&高良健吾主演作『白夜行』闇に生きる"影男"の密やかなる喜び [第102回]園子温の劇薬ムービー『冷たい熱帯魚』"救いのない結末"という名の救い [第101回] NHKが放映しない"裏プロジェクトX" AV界のカリスマ監督『YOYOCHU』 [第100回]エロスとタブーを交配した"至高の美女" 禁断のサイエンスホラー『スプライス』 [第99回]2010年に活躍した女優を勝手に表彰! 満島ひかりに"面倒くさい女"大賞を [第98回]大人だって"ドラえもん"にいて欲しい 残念男の逆転劇『エリックを探して』 [第97回]平凡な高校生デイヴは2度変身する!原点回帰のヒーロー『キック・アス』 [第96回]村上春樹の超絶ベストセラーの映画化『ノルウェイの森』はどこにある? [第95回]実在した"奇妙な高額バイト"の顛末 心理サスペンス『エクスペリメント』 [第94回]"アル中"カメラマンの泣き笑い人生『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [第93回]朝ドラと異なる映画『ゲゲゲの女房』ゴールなき"貧乏耐久"2人3脚走 [第92回]バラエティーでの実績は通用するか? テリー伊藤の初監督作『10億円稼ぐ』 [第91回] 不謹慎なる社会派エンタテイメント『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』 [第90回]"世界のナベアツ"大阪府知事に就任! 政治コメディ『さらば愛しの大統領』 [第89回]自分の恋愛もプロデュースする女優、ドリュー・バリモア主演『遠距離恋愛』 [第88回]スタローンが立ち上げた"筋肉共和国"男たちの祭典『エクスペンダブルズ』 [第87回]元"おはガール"安藤聖の再起動ドラマ 就職氷河期を生きる『バカがウラヤマシイ』 [第86回]マイノリティーは"理想郷"を目指す。筒井文学の金字塔『七瀬ふたたび』 [第85回]清純派・佐藤寛子が美しく"変態"! 官能サスペンス『ヌードの夜──』 [第84回]死を意識して、ギラギラ輝く男たち! 三池節、大バクハツ『十三人の刺客』 [第83回] 女を食い物にする男どもは全員処刑! モダン社会の闇を暴く『ミレニアム』 [第82回] "企画AV女優"たちの青春残酷物語 性なる鎮魂劇『名前のない女たち』 [第81回]猫を見れば、人間社会が見えてくる! 世界の人気猫大集合『ネコを探して』 [第80回]原恵一監督の新作は辛口ファンタジー 退屈な"日常生活"を彩る『カラフル』 [第79回]米軍に実在した"超能力部隊"の真実!? ムー民、必見『ヤギと男と男と壁と』 [第78回]戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』 [第77回] 白ユリの花開くガールズの妖しい世界 H系ホラー『ジェニファーズ・ボディ』 [第76回] 爽やか系青春ゾンビ映画にホロリ......夏休みは『ゾンビランド』に集結せよ [第75回] "生きる"とは"見苦しい"ということ 藤沢周平の時代活劇『必死剣 鳥刺し』 [第74回]初恋の美少女は200歳の吸血鬼だった! 北欧産のホラー映画『ぼくのエリ』 [第73回] "三億円事件"の真相を解き明かす! 桜タブーに挑んだ『ロストクライム』 [第72回/特別編] 上映反対で揺れる問題作『ザ・コーヴ』"渦中の人"リック・オバリー氏の主張 [第71回] 女子にモテモテになる方法、教えます。軟派少年の実話物語『ソフトボーイ』 [第70回] 下町育ちの"北野少年"が見た現代社会 人間同士の食物連鎖『アウトレイジ』 [第69回] "リアルと虚構の狭間"を生きる男、アントニオ猪木初主演作『アカシア』 [第68回] ヒーローも神もいない現代社会の惨劇 井筒監督の問題作『ヒーローショー』 [第67回] アイドルが地獄で微笑む『戦闘少女』ギャグ×血しぶき×殺陣の特盛り丼! [第66回]アナーキーな"社歌"で生産性アップ! 満島ひかり大進撃『川の底からこんにちは』 [第65回]超ヘビー級なシリアス劇『プレシャス』"家族"という名の地獄から脱出せよ [第64回]乱れ咲く"悪の華"ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』 [第63回] オタク王が見出した"夢と現実"の接点 ティム・バートン監督作『アリス──』 [第62回] バッドテイストな感動作『第9地区』 アナタはエビ人間とお友達になれるか? [第61回]スコセッシ監督の犯罪アトラクション『シャッターアイランド』へようこそ! [第60回]宮崎あおいの"映画代表作"が誕生! 毒を呑んでも生き続けよ『ソラニン』 [第59回]"おっぱいアート"は世界を救えるか? 母乳戦士の記録『桃色のジャンヌ・ダルク』 [第58回]現代に甦った"梶原一騎ワールド"韓流ステゴロ映画『息もできない』 [第57回]命知らずの変態レポーター、中東へ! 史上最大のどっきり?『ブルーノ』 [第56回]仲里依紗がアニメから実写へと跳躍! 母娘2代の時空旅行『時をかける少女』 [第55回]ビグロー監督はキャメロンより硬派! 人間爆弾の恐怖『ハート・ロッカー』 [第54回] "空気を読む"若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は? [第53回]社会の"生け贄"に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』 [第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? "寅さん"の最期を描く『おとうと』 [第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 [第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』 [第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』 [第48回]全米"オシャレ番長"ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』 [第47回]市川崑監督&水谷豊"幻の名作"『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化 [第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』 [第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!"神の子"の復活を追う『マラドーナ』 [第44回] 暴走する"システム"が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』 [第43回]"人は二度死ぬ"という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは? [第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』 [第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』 [第40回]"涅槃の境地"のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』 [第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』 [第38回]海より深い"ドメスティック・ラブ"ポン・ジュノ監督『母なる証明』 [第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』 [第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』 [第35回]"負け組人生"から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』 [第34回]2兆円ペット産業の"開かずの間"に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』 [第33回]"女神降臨"ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』 [第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』 [第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』 [第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇 [第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』 [第28回]"おねマス"のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』 [第27回]究極料理を超えた"極地料理"に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』 [第26回]ハチは"失われた少年時代"のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊! 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石原慎太郎原作の異色ミステリー『青木ヶ原』ままならない人生の中で出会った恋人たちの行方

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毎年100体前後の遺体が見つかる富士の樹海を舞台にした『青木ヶ原』。
遺体捜索のボランティアに参加した村松(勝野洋)の奇妙な体験が描かれる。
 光と影は常に表裏一体の関係にある。霊峰として崇められる富士山だが、すそ野に広がる樹海は自殺の名所となっている。多くの人が富士山に向かって幸せを祈る一方、樹海には人知れず息を引き取った身元不明者たちの遺体が眠っている。映画『青木ヶ原』はそんな自殺の名所として知られる富士の樹海をめぐる異色ミステリーだ。若き特攻隊員たちを主人公にした『俺は、君のためにこそ死ににいく』(07)で賛否を呼んだ石原慎太郎(原作・企画)&新城卓(製作・脚本・監督)コンビが5年ぶりにタッグを組んでいる。前作『俺は、君のために−』は愛する者を守るため、お国のために命を投げ出した若者たちの実録ドラマだったが、本作は愛するものもなく、自分の生まれ育った国に居場所を見つけることができずにいる現代人たちの寄る辺なきファンタジーとなっている。  80歳にして国政に復帰し、精力的な日々を送る石原慎太郎氏が2000年に発表した同名短編小説が原作。かつて秋の恒例行事となっていた青木ヶ原の遺体一斉捜索にボランティアスタッフとして参加した地元男性が体験する奇妙なエピソードが綴られている。小説は、翌日に遺体捜索を控えた主人公が行き着ける地元のバーが主舞台。主人公はバーの客やバーテンダーを相手に、樹海での遺体捜索がいかに大変な作業であるかを愚痴り続ける。『完全自殺マニュアル』などのベストセラー本に煽られて、樹海で発見される遺体が一気に倍増したこと。全国各地から安らかな眠りを求めて自殺志願者たちが樹海に向かうが、見つかった遺体は悲惨さを極めていること。鳥によって目玉を突かれ、野犬、タヌキ、キツネら野生動物によって体が中途半端に喰いちぎられているそうだ。遺体捜索中、自分が遺体の第一発見者にならずに済むと「ラッキー」と感じるらしい。年々遺体は増え続け、ほとんどの遺体は引き取り手が現われないため、地元のお寺では納骨堂を拡張せざるを得なくなったともいう。
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溶岩流の上にできた富士の樹海は磁性が強く、氷穴や風穴がところどころにある神秘的な空間。
この世とあの世の緩衝帯で、村松たちは何を見たのか?
 樹海で発見される遺体には、ある傾向があるそうだ。ほとんどの遺体は道路からそれほど離れていない場所で見つかっている。多くの場合は遺書を残していない。どうやら、樹海に足を踏み入れた自殺志願者たちの多くはギリギリまで死ぬか生きるか迷い続け、そのため遺書も用意できず、人目に付きやすいところ、救出されやすいところで息を引きっているらしい。多分、自殺を考えたものの直前で思い直して引き返す人も多いのだろう。主人公たちはそう推測する。孤独に死ぬことを選択した人たちが集まる“自殺の名所”は、実はもっと生きたいと願い、「自殺なんてバカなことはやめろ」と言葉を掛けてほしがっている人たちが足を停める最後の緩衝帯ではないのかと逆説的な視点が小説には盛り込まれている。  小説は捜索前夜のバーでの“自殺談義”と翌日の捜索現場で起きた不思議な体験までを描いた2日間の物語だったが、映画ではその後日談が続く。富士山麓の忍野村でペンションを営む村松(勝野洋)は樹海の一斉捜索で中年男性(矢柴俊博)の遺体を見つける。遺体は地元で火葬されるが、村松の視界に人の良さそうなあの中年男性の姿が度々入ってくる。そのことを相談した寺の住職(津川雅彦)に「何か頼みたいことがあるんだろう」と言われ、気になった村松は中年男性の身元を調べ始める。男性は滝本という名前で、東京の老舗紙問屋の若旦那だった。経済的に恵まれ、熱愛のすえに結婚した妻(長谷川真弓)と育ち盛りの息子もいた。村松は遺族に滝本が樹海で見つかったことを伝えにいくが、遺族側は遺骨の引き取りを拒否する。さらに生前の滝本と交流のあった知人を訪ねると、滝本には若い恋人・純子(前田亜希)がいたことが分かる。純子は今どうしているのか? 滝本はなぜひとりで息を引き取ったのか? 妻子持ちの中年男には、ままならないラブロマンスがあったことが浮かび上がってくる。
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原作者の石原慎太郎氏。昨年10月の東京国際映画祭で上映された際
「知事を辞めた後は自分で映画を撮るつもりだったが、また道を間違った」と漏らした。
 人生のままならなさから、せめて最後は自分の望む場所で眠りに就こうと滝本は樹海に向かったわけだが、そんな滝本さんと純子さんに樹海に行く前に観て欲しい映画がある。1月18日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開される『エンド・オブ・ザ・ワールド』(配給/ミッドシップ、ツイン)だ。『40歳の童貞男』(06)でブレイクしたスティーヴ・カレルと『危険なメソッド』(12)で統合失調症患者を大熱演したキーラ・ナイトレイが共演した、地球最後の日をロマンチックに描いたラブコメディとなっている。小惑星が地球に接近し、人類は滅亡を避けられない事態に。こんなとき、人間は3つのグループに分かれる。残された日々を思う存分ハメ外してドンチャン騒ぎする人々、絶望してさっさと自殺しちゃう人々、そして死ぬのは何だけどドンチャン騒ぎにも加わる気になれず最後まで普段通りに暮らそうとする人々。保険の営業マンであるドッジはいつも通りに会社に出勤しようとするが、上司は自殺し、帰宅すると妻は愛人と蒸発。普段通りに平穏に過ごしたいドッジだが、ひとりぼっちになってしまう。そんな折、街で暴徒たちが暴れ始めたため、ドッジはアパートに残っていた隣人のペニーととりあえず安全な場所に避難することに。妻に逃げられたドッジと男運の悪いペニー。今まで顔を合わせても会話を交わすことすらなかった2人だが、人類滅亡まで残り数日という状況の中で人生最後の恋に墜ちていく。  いよいよ人類最後の瞬間を迎え、ペニーは「もっと早く出会えたらよかったのに」と嘆くが、ドッジはそれは違うよと優しく諭す。人生の最後に、最愛の人と出会うことができたのだと。ペニーは人生のままならなさを悲しむが、ドッジは人類滅亡の日だからこそ2人は結ばれたのだと肯定的に受け止めている。ドッジの言葉にうなずくペニー。サイコーに幸せな気持ちで、2人は巨大な光に包まれていく。滝本さんと純子さんに限らず、人生のままならなさを感じている人におススメの一本です。 (文=長野辰次) aokigahara4.jpg 『青木ヶ原』 企画・原作/石原慎太郎 製作・監督/新城卓 脚本/水口マイク、新城卓 出演/勝野洋、前田亜希、矢柴俊博、田中伸一、ゴリ(ガレッジセール)、中村育二、長谷川真弓、二木てるみ、左とん平、渋谷天外、津川雅彦 配給/アークエンタテインメント 1月12日(土)より有楽町スバル座ほか全国ロードショー (c)新城卓事務所 <http://aokigahara-movie.jp> ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第203回]陶酔と記憶の向こう岸にある世界に3Dで迫る! 松江哲明監督の『フラッシュバックメモリーズ』 [第204回]あの低視聴率ドラマ『鈴木先生』が映画版に! “鈴木式教育メソッド”は世界を変えられるか? [第202回]“余命刑事”が家族の絆と細菌兵器を奪回する! 究極の時間制限サスペンス『ブラッド・ウェポン』 [第201回]年末は“女体盛り”パーティーで盛り上がろう! ジェダイの騎士も集う秘密の宴『SUSHI GIRL』 [第200回]もし“理想の恋人”が目の前に現われたどーする!?  情熱的で予測不能な彼女『ルビー・スパークス』 [第199回]“耳フェチ”には堪えられない青春官能ムービー!『耳をかく女』桜木梨奈の無印演技に癒やされたい [第198回]ハリウッドの頑固オヤジがたどり着いた好々爺の境地! イーストウッド、4年ぶりの主演作『人生の特等席』 [第197回]この“明るいヘンタイ”っぷりがいいんじゃない!? 会田誠のアートなエロス『駄作の中にだけ俺がいる』 [第196回]三池監督ならではの“いのちの授業”が始まる! サイコパス教師と過ごす恐怖の文化祭『悪の教典』 [第195回]“絶対的価値”を求める男たちの翔んでもロマン! 井筒監督の犯罪サスペンス『黄金を抱いて翔べ』 [第194回]禁断の蜜が溢れるSM世界『私の奴隷になりなさい』セクシーアイコン・壇蜜がすべてをさらけ出した! 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“余命刑事”が家族の絆と細菌兵器を奪回する! 究極の時間制限サスペンス『ブラッド・ウェポン』

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沸点越えのアクション大作『ブラッド・ウェポン』。
濃厚な兄弟間の葛藤劇にハリウッドにはないガチンコ格闘シーンが満載だ。
 ダンテ・ラム監督はアクション演出を得意とする香港映画界の中堅どころ。職人肌の実力派監督として知られる存在だったが、ニコラス・ツェー主演のクライムアクション『ビースト・ストーカー/証人』(08)、『密告・者』(10)で評価がぐんぐんとウナギ昇りに。そして最新作『ブラッド・ウェポン』で、ついに大勝負に出た。香港映画としては異例の製作費2億香港ドル(約21億円)を投じたこの作品は、ガチンコなアクションシーンの連続に加え、過剰すぎる家族愛のドラマをブチまけた濃縮濃厚なエンターテイメント巨編に仕上がっている。「余命2週間」と宣告された刑事が、残された時間の中で生き別れとなっていた家族を見つけ出し、さらに未解決事件も究明するという“終活”に挑む。かつてない超過激なエンディングノートなのだ。  まず、物語の設定からイカれている。国際警察のジョン(ジェイ・チョウ)は中東のヨルダンで細菌兵器を狙うテロリストたちの襲撃を受け、同僚で恋人のアイス(バイ・ビン)を失ったばかりか、彼女の体を貫通した銃弾が頭の中に残るという致命傷を負った。脳梁の中に銃弾があるため摘出手術は不可能で、医者から「余命2週間」と診断される。残された時間を女手ひとつで自分を育ててくれた優しい母親のもとで過ごそうと北京に帰省するが、ここで母親が衝撃の告白。「ごめんね。お母さん、ずっと黙っていたけど、お前にはちゃんとお父さんとお兄さんがいるの。もう一度、家族全員で集まりたいわぁ」と余命わずかな息子に無茶ぶりする母。そう簡単に29年前に別れた父と兄を見つけだせるのか。2人の消息を追ってマレーシアに向かったジョンは、到着そうそう細菌兵器の実用化を企むテロリスト組織の暗躍に巻き込まれる。しかも、テロリストの手先となってジョンの前に立ち塞がるのは、写真でしか顔を見ていない兄・ヨウ(ニコラス・ツェー)。今ではすっかり犯罪者に身を落してしまっていた。どうするジョン、再会したばかりの兄を改心させて思い残すことなくあの世に旅立てるのか? あまりに都合のよい展開にこちらが啞然としている間にも、刻々とジョンに残された時間のカウントダウンは進んでいく。
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イケメン俳優として売り出したニコラス・ツェーだが、ダンテ・ラム作品で
すっかり汚れ役がハマるように。熱演のあまりこんな顔に。
 イカれた設定&展開をいとも簡単に吹き飛ばしてしまうのは、ハンパないアクションシーンの数々だ。冒頭のヨルダン編からどーかしている。ヨルダン政府軍が全面協力したこのシーンでは市街地でロケット砲が飛び交うわ、装甲車が大炎上するわ、戦争映画ばりのド迫力。このオープニングシーンだけで5億円を掛けている。お金に困っていたヨルダン政府軍は大喜びで、ロケ隊に対しあらゆる装備と火器類を自由に使うことを許可したそうだ。そのため実弾が飛び交っているようにしか見えない激しい銃撃戦となっている。治安の不安定なヨルダンでのロケ撮影というだけでもヤバいのに、ラム監督は「リアルな緊迫感が出ていいじゃないか」とハイテンションだったらしい。  中盤からは母親のもとで幸せに育った弟ジョンと、博打好きな父親(リウ・カイチー)を見捨てることができずに犯罪稼業で喰い凌いでいる兄ヨウとの愛憎が渦巻くマレーシア編。首都クアランプールの繁華街でカークラッシュの連続に銃撃戦の撮影を敢行している。爆破されたバスの炎はビル4階の高さにまで達した。さらに高層ビル街では、マレーシア警察飛行部隊の協力により4機のヘリコプターが空中戦を繰り広げる。『西部警察』2時間SPの地方ロケを表参道や六本木周辺でやっちゃったようなもんか。こんな無茶な撮影を許可したマレーシア政府もどーかしている。ロケ撮影中、ラム監督は「アクション」の掛け声の代わりに銃を空に向かってぶっ放していたとのこと。怖くて、誰も逆らえないよ! ラム監督は香港や中国では絶対に撮れないような市街戦シーンを撮影できて、ひどくご満悦だったそうだ。
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台湾の誇る人気歌手のジェイ・チョウも、体を張った演技を求められた。
『グリーン・ホーネット』とは段違いのアクションの連続。
 まだまだ尽きないラム監督のヤバすぎエピソード。イケメンでアクションもできるニコラス・ツェーは20代の頃は自分の才能にあぐらをかいている感があったが、『ビースト・ストーカー』で鼻血を吹き出しながらも執念の捜査を続ける“鼻血刑事”を熱演し、演技派の称号を手に入れた。だが、ラム監督は決してニコラス・ツェーを甘やかさない。今回は彼のためにビルの8階から飛び降りるシーンを用意した。下にマットが敷いてあるとはいえ、主演俳優を8階から飛び降りさせるとは香港映画は容赦ない。保険の関係上、ハリウッドでは絶対認められない撮影だろう。ラム監督は、ビルの8階から下を覗き込むニコラス・ツェーに向かって「どう思う?」「できるか?」と真綿で首を絞めるような言葉を投げ掛けている。主演俳優のプライドを刺激するラム監督もえげつないけど、その挑発にうっかり乗ってしまうニコラス・ツェーもどーかしている。弟ジョン役のジェイ・チョウは『カンフー・ダンク』(08)や『グリーン・ホーネット』(11)などのアクションものに出演しているが、本職は作曲家&ミュージシャン。台湾からのお客さんであるジェイ・チョウに対しても、スタッフは「ニコラスはスタントなしで、アクションシーンやったんだぜ」とけしかけたそうだ。頭に穴の開いたトレパネーション状態で超ポジティブ余生を送るジョン役を、ジェイ・チョウも体当たりで演じている。  これだけの過激なアクションシーンを支えるには、強度のあるドラマ性が必要だ。中国を離れ、異国で育った兄のヨウは裏社会に進むしか生きる道がなかった。更生したくても、障害を持つ父親とまだ幼い娘を食べさせるには、足を洗うわけにはいかない。恨み言のひとつでも言いたいが、ずっと離れて暮らしていた弟に今さら掛ける言葉もない。一方のジョンは自分だけ母親のもとでヌクヌクと育ったという負い目がある。でも、あの世に旅立つ前に兄と和解したい。もう一度、仲良しだった頃の兄弟に戻りたい。2人の間に横たわる30年近い断絶が、爆風と硝煙の中を潜り抜けていくことで、次第に溶解していく。ヨウもジョンも心の中のわだかまりの数だけ銃弾を詰める。ド派手な銃撃戦や生身の格闘シーンが、放出される熱エネルギーと共に兄弟間の葛藤も昇華されていく光景としてくっきり描かれている。  本作は世界最大のファンタスティック系映画祭であるスペインのシッチェス・カタロニア国際映画祭のコンペ部門に出品された。作品賞や監督賞は、レオン・カラックス監督の『Holy Motors』に持っていかれたが、これだけの力作を無冠で帰すには忍びないないと審査員たちは思ったらしく、トロフィーのひとつを贈呈している。ところがラム監督もキャスト陣も、この受賞を聞いて憮然呆然。贈られた賞が「特殊効果賞」だったためだ。「この受賞には正直戸惑っている。この映画の中で特殊効果と呼ばれるものはほとんど使っていない。ヨルダンでのアクションシーンに、マレーシアでのカーアクションに空中戦もすべて本物を使って撮影したんだ」と怒気をはらんだ受賞コメントをラム監督は残している。ラム監督に流れる血は煮えたぎるマグマのように熱い。しばらくはラム監督作品から目が離せない。 (文=長野辰次) bloodweapon4.jpg 『ブラッド・ウェポン』 監督/ダンテ・ラム 出演/ニコラス・ツェー、ジェイ・チョウ、リン・ポン、バイ・ビン、アンディ・オン、リウ・カイチー 配給/角川映画 12月22日(土)より角川シネマ新宿ほかロードショー公開 (c)2012Emperor Motion Picture Limited.All Rights Reserved <http://bloodweapon.jp> ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第201回]年末は“女体盛り”パーティーで盛り上がろう! ジェダイの騎士も集う秘密の宴『SUSHI GIRL』 [第200回]もし“理想の恋人”が目の前に現われたどーする!?  情熱的で予測不能な彼女『ルビー・スパークス』 [第199回]“耳フェチ”には堪えられない青春官能ムービー!『耳をかく女』桜木梨奈の無印演技に癒やされたい [第198回]ハリウッドの頑固オヤジがたどり着いた好々爺の境地! イーストウッド、4年ぶりの主演作『人生の特等席』 [第197回]この“明るいヘンタイ”っぷりがいいんじゃない!? 会田誠のアートなエロス『駄作の中にだけ俺がいる』 [第196回]三池監督ならではの“いのちの授業”が始まる! サイコパス教師と過ごす恐怖の文化祭『悪の教典』 [第195回]“絶対的価値”を求める男たちの翔んでもロマン! 井筒監督の犯罪サスペンス『黄金を抱いて翔べ』 [第194回]禁断の蜜が溢れるSM世界『私の奴隷になりなさい』セクシーアイコン・壇蜜がすべてをさらけ出した! [第193回]“無意識の湖”に身を投じたユングと女性患者の行方──クローネンバーグの恋愛サスペンス『危険なメソッド』 [第192回]“お蔵入り映画”が人命救助を果たした!? 実話をベースにした大冒険ロマン『アルゴ』 [第191回]我が家に“食人族”がやって来た! 奇才ジャック・ケッチャムの異形世界『ザ・ウーマン』 [第190回] 裏切り&結託は当たり前。今の政界にそっくり! 極道たちのバトルロワイアル『アウトレイジ ビヨンド』 [第189回] これが全米を熱狂させた“USA版バトル・ロワイアル”! 殺人リアリティーショー『ハンガー・ゲーム』 [第188回]行き詰まった人生の扉を開く鍵は“銭湯”にあり? 内田けんじ監督のオリジナル作『鍵泥棒のメソッド』 [第187回]大家族の伝統料理から超手抜きレシピまで勢ぞろい! 台所から見えてくる中東の家庭事情『イラン式料理本』 [第186回]“世界的な絶滅危惧種”である独裁者に愛の手を!? 政治ネタ&下ネタ満載コメディ『ディクテーター』 [第185回]障害者の性処理も介護の重圧も、すべて笑い飛ばせ! 男たちのバリアフリーな友情ドラマ『最強のふたり』 [第184回]人類を生み出した“創造主”との遭遇!! リドリー・スコットが物語るSF神話『プロメテウス』 [第183回]“校内格差社会”に出現した異分子(ゾンビ)たち! 青春のカタルシス『桐島、部活やめるってよ』 [第182回]カメラマンは法を犯してもかまわない!? 国家の暗部を暴く男の情念『ニッポンの噓』 [第181回]“学校”という名の密室ではびこる児童虐待の事実! 子どもたちは教師を訴える『トガニ 幼き瞳の告発』 [第180回]“神様”との出会いと別れ、そして旅からの帰還  ドキュメンタリー『アニメ師・杉井ギサブロー』 [第179回]親友=お金を貸してくれる、女友達=SEXさせてくれる!? 品性お下劣男の青春『苦役列車』 [第178回]“沢尻エリカ”という名のアトラクションムービー『ヘルタースケルター』が描く無常の世界 [第177回]毒カレー、オウム真理教、光市母子殺害……“悪魔の弁護人”と呼ばれる男の素顔『死刑弁護人』 [第176回]“芸能生活30周年”ニコラス・ケイジの会心作! 被災地に流布する暗号『ハングリー・ラビット』 [第175回]やめろと言われても、今では遅すぎたッ! 妻夫木聡&武井咲主演の過剰なる純愛劇『愛と誠』 [第174回]年間自殺者数3万人を越える現代社会への提言 自殺対策の現状を追った『希望のシグナル』 [第173回]“三島割腹事件”を若松孝二監督が映画化!『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 [第172回]実在の事件を題材にした“命の授業”『先生を流産させる会』がついに劇場公開! 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年末は“女体盛り”パーティーで盛り上がろう! ジェダイの騎士も集う秘密の宴『SUSHI GIRL』

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全編にわたって“女体盛り”シーンが続く『SUSHI GIRL』。
タランティーノ作品を思わせる、珍味な犯罪サスペンスだ。
 日本人のおめでたい席には“女体盛り”が欠かせない。少なくとも海外の映画監督たちはそう思っているらしい。スペイン出身のイザベル・コイシュ監督が菊地凛子主演で撮った『ナイト・トーキョー・デイ』(09)のオープニングでは、日本企業の大事な接待の場で女体盛りサービスが登場した。フィリップ・カウフマン監督、ショーン・コネリー主演の『ライジング・サン』(93)ではふんどし姿の日本人が女体に盛られた寿司に舌鼓を打っていた。「日本のヤクザ映画が大好き」という新人カーン・サクストン監督の長編デビュー作『SUSHI GIRL』は、それこそ全編にわたって女体盛りシーンが続く。女体盛りパーティーが開かれている宴会場を舞台にした、ワンシチュエーションドラマなのだ。スッポンポンの金髪美女コートニー・パームの大事な部分を隠すように刺身が盛り付けられ、俯瞰した眺めは一種のボディアート。しかも刺身を盛り付ける、こだわりの料理人はサニー千葉こと千葉真一ですよ。『SUSHI GIRL』は最高のおもてなしで映画マニアを迎え入れてくれる。  貸し切り会場に集まった、いわくありげな男たち。パーティーを主催する大男デューク(トニー・トッド)が、まず“女体盛り”の楽しみ方を説明する。テーブルの真ん中に寝そべる裸女の周囲に並べられた寿司は安全に食べることができる前菜。女体に盛られた刺身はよりグレードの高い食材であり、ビンカンな部分に盛られたものほど珍味かつ極めて美味なのだそうだ。そして女性のいちばん大事なところに盛られているのはフグの刺身。痺れるほどの美味しさだが、毒に当たって命を落とす者もいるという。「日本ではヤクザたちが肝試しとして好んで食べるのだ」とデュークは訳知り顔で解説する。日本人も知らないような“女体盛り”のうんちく。スリリングな女体盛りパーティーがここに始まる。
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この金髪ロン毛オヤジ、『スター・ウォーズ』(77)の
ルーク・スカイウォーカーことマーク・ハミルですよ。
苦労した風情がありあり……。
 女体盛りに向かって慣れない手つきで箸を伸ばす男たちの顔ぶれが、これまた味わい深い。金髪ロン毛のメタボ体型でクロウと呼ばれるオッサン、どっかで見覚えのある顔だなぁと思っていたら、『スター・ウォーズ』旧三部作の“ジェダイの騎士”ルーク・スカイウォーカーことマーク・ハミルじゃないですか! 『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』(83)の後はすっかり見なくなったと思っていたら、ダークサイドに堕ちてしまっていたんですね。顔つきが邪悪で、しかもオカマ口調。『スター・ウォーズ』(78)出演後、売れっ子になったハリソン・フォードがいまだにルックスをキープしてるのに比べ、まるで別人。主催者である黒人のデュークは、都市伝説を題材にしたホラー映画『キャンディマン』(92)でタイトルロールを飾っていたトニー・トッド。まぁ、この人は変わらず。そして女体盛りサービスで歓待される、幸薄そうな中年男フィッシュを演じるのはノア・ハザウェイ。『ネバーエンディング・ストーリー』(84)でファルコンに股がっていた、あの美少年アトレイユくんですよ! かつての人気スターたちが一堂に会して、女体に盛られた刺身を喰らう。はたして、その味はいかに?  この女体盛りパーティーは、6年間刑務所にブチ込まれていたフィッシュの出所を祝って、かつての強盗仲間であるデュークたちが開いたもの。もちろん、みんなで女体に盛られた刺身を仲良く食べて、「ごちそうさん。二次会はカラオケ?」という展開になるはずがない。デュークたちは6年前に襲撃した宝石店から忽然と消えたダイヤモンドの在処をフィッシュに吐かせるために、このパーティーを催したのだ。そんな危険を予感しながらも、のこのこと現われたフィッシュ。よっぽど女体盛りに興味があったに違いない。残念なことに裸女の上の刺身を食べ残したまま、拷問ショーという名の二次会へと突入する。  かつての美少年ノア・ハザウェイを、近親憎悪的にいたぶるのは元“ジェダイの騎士”マーク・ハミル。自分より劣化度のまだ低いノア・ハザウェイに対し、膝に箸を突き立てるわ、ブラックジャックで顔面を散々殴打して見る影もないようしてしまうわの、やりたい放題。スクリーンから離れていたマーク・ハミルは、近年はアニメやゲームの声優をしていたとのこと。いたぶられるノア・ハザウェイは10代で俳優業に見切りをつけ、ダンスの指導者になったけど、怪我で断念。その後はバイクレーサーになったり、バーで働いたりと流転の生活を送っていたらしい。2人とも若い頃に大ヒット映画に出演して人気者になったものの、その後はずいぶん苦労したんだな。この2人の間で延々と続く拷問シーンは、まるでお互いの傷を舐め合う“愛の交歓”のよう。その様子を身動きできずに、じっと傍観しているだけの裸女コートニー・パームも難儀です。
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こちらは『ネバーエンディング・ストーリー』(84)のアトレイユこと
ノア・ハザウェイ。彼の人生もまだまだネバーエンディングだ。
 本作の内容は、基本的にクエンティン・タランティーノ監督のデビュー作『レザボア・ドッグス』(93)とユマ・サーモン主演の復讐劇『キル・ビル』(03)を足してデロデロにしたような感じ。タランティーノ作品みたいな、切れ味の鋭いカット割りや編集テクには遠く及ばない。この映画を観たからといって、最新トレンドをチェックができるわけでもないし、社会的メッセージが込められているわけでもない。栄養にまったくならないジャンクフードみたいな、正真正銘のバカ映画だ。でも、世間のみなさんが忙しそうにしている年の瀬に、地下鉄がガタゴト走る音が響く銀座シネパトスでこんなバカ映画を観ることができれば、最高の贅沢じゃないですか。頭の中を真っ白にして、新年を迎えられるってもんです。ちなみに“B級映画の殿堂”シネパトスは2013年3月いっぱいでの閉館が決まっており、本作が最後のお正月映画です。  マーク・ハミルはサディスティックでオカマな犯罪者役を一度は断ろうとしたけれど、息子から説得されて出演をOKしたとのこと。「パパがまた映画俳優として輝く姿をボクたちは観たいんだ。スクリーンで活躍するパパは最高にかっこいいよ!」とせがまれたんだろうな。ノア・ハザウェイはすっかり映画界から遠ざかっていたが、Face bookで居場所を突き止められ、本作に引っ張り込まれた。拷問責めに遭う悲惨な役とはいえ、スポットライトを久々に浴びるのは快感だったらしく、本作をきっかけに俳優業を再開している。彼らの往年の姿を知るファンの中には、若い頃の栄光にわざわざ泥を塗らなくても……と思う人もいるかもしれないけど、人間の賞味期限は世間が考えているよりも意外と長い。マーク・ハミルもノア・ハザウェイも若くてピチピチしていた頃とは違った、食あたり寸前のデンジャラスな風味を醸し出している。伝説の世界で生きながらえることよりも、現実の世界で今の自分を晒すことを選んだ彼らの勇気に、ほんのちょっぴり胸が熱くなる。女体盛りパーティーに集った往年のスターたちに乾杯! (文=長野辰次) sush4.jpg 『SUSHI GIRL』 製作・脚本・編集・監督/カーン・サクストン 出演/トニー・トッド、ジェームズ・デュバル、ノア・ハザウェイ、アンディ・マッケンジー、マーク・ハミル、コートニー・パーム、千葉真一、ダニー・トレノ、マイケル・ビーン 配給/アース・スター エンターテイメント R15 12月22日(土)より銀座シネパトスほか全国順次ロードショー (c)2011 SUSHI GIRL FILMS http://www.sushi-girl.net ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第200回]もし“理想の恋人”が目の前に現われたどーする!?  情熱的で予測不能な彼女『ルビー・スパークス』 [第199回]“耳フェチ”には堪えられない青春官能ムービー!『耳をかく女』桜木梨奈の無印演技に癒やされたい [第198回]ハリウッドの頑固オヤジがたどり着いた好々爺の境地! イーストウッド、4年ぶりの主演作『人生の特等席』 [第197回]この“明るいヘンタイ”っぷりがいいんじゃない!? 会田誠のアートなエロス『駄作の中にだけ俺がいる』 [第196回]三池監督ならではの“いのちの授業”が始まる! サイコパス教師と過ごす恐怖の文化祭『悪の教典』 [第195回]“絶対的価値”を求める男たちの翔んでもロマン! 井筒監督の犯罪サスペンス『黄金を抱いて翔べ』 [第194回]禁断の蜜が溢れるSM世界『私の奴隷になりなさい』セクシーアイコン・壇蜜がすべてをさらけ出した! [第193回]“無意識の湖”に身を投じたユングと女性患者の行方──クローネンバーグの恋愛サスペンス『危険なメソッド』 [第192回]“お蔵入り映画”が人命救助を果たした!? 実話をベースにした大冒険ロマン『アルゴ』 [第191回]我が家に“食人族”がやって来た! 奇才ジャック・ケッチャムの異形世界『ザ・ウーマン』 [第190回] 裏切り&結託は当たり前。今の政界にそっくり! 極道たちのバトルロワイアル『アウトレイジ ビヨンド』 [第189回] これが全米を熱狂させた“USA版バトル・ロワイアル”! 殺人リアリティーショー『ハンガー・ゲーム』 [第188回]行き詰まった人生の扉を開く鍵は“銭湯”にあり? 内田けんじ監督のオリジナル作『鍵泥棒のメソッド』 [第187回]大家族の伝統料理から超手抜きレシピまで勢ぞろい! 台所から見えてくる中東の家庭事情『イラン式料理本』 [第186回]“世界的な絶滅危惧種”である独裁者に愛の手を!? 政治ネタ&下ネタ満載コメディ『ディクテーター』 [第185回]障害者の性処理も介護の重圧も、すべて笑い飛ばせ! 男たちのバリアフリーな友情ドラマ『最強のふたり』 [第184回]人類を生み出した“創造主”との遭遇!! リドリー・スコットが物語るSF神話『プロメテウス』 [第183回]“校内格差社会”に出現した異分子(ゾンビ)たち! 青春のカタルシス『桐島、部活やめるってよ』 [第182回]カメラマンは法を犯してもかまわない!? 国家の暗部を暴く男の情念『ニッポンの噓』 [第181回]“学校”という名の密室ではびこる児童虐待の事実! 子どもたちは教師を訴える『トガニ 幼き瞳の告発』 [第180回]“神様”との出会いと別れ、そして旅からの帰還  ドキュメンタリー『アニメ師・杉井ギサブロー』 [第179回]親友=お金を貸してくれる、女友達=SEXさせてくれる!? 品性お下劣男の青春『苦役列車』 [第178回]“沢尻エリカ”という名のアトラクションムービー『ヘルタースケルター』が描く無常の世界 [第177回]毒カレー、オウム真理教、光市母子殺害……“悪魔の弁護人”と呼ばれる男の素顔『死刑弁護人』 [第176回]“芸能生活30周年”ニコラス・ケイジの会心作! 被災地に流布する暗号『ハングリー・ラビット』 [第175回]やめろと言われても、今では遅すぎたッ! 妻夫木聡&武井咲主演の過剰なる純愛劇『愛と誠』 [第174回]年間自殺者数3万人を越える現代社会への提言 自殺対策の現状を追った『希望のシグナル』 [第173回]“三島割腹事件”を若松孝二監督が映画化!『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 [第172回]実在の事件を題材にした“命の授業”『先生を流産させる会』がついに劇場公開! [第171回]自由社会に順応できない“脱北者”の過酷な現状 無垢なる季節との決別『ムサン日記 白い犬』 [第170回] 世界興収100億突破のSF大作『ロボット』はあらゆる既成概念を破壊する!! [第169回]“エンタの神さま”ツイ・ハークが大復活! B級映画マニアの心を焦がす『王朝の陰謀』 [第168回]人はお下劣な分だけ、強く優しくなれる!? 結婚を控えた女たちの本音『ブライズメイズ』 [第167回]行きすぎたシステム社会に警鐘を鳴らす“ユナボマー・マニフェスト”の映画化『モンスターズクラブ』 [第166回]祭りの終わりと新ステージの幕開け、3部作完結『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 [第165回]すばらしき“コーマン野郎”の世界!『コーマン帝国』、愛と欲望の歴史 [第164回]懐かしき香り漂う、新感覚サスペンス 破滅へ突き進む男の悲劇『ドライヴ』 [第163回] 災害に備えた地下シェルターは必要? 心理ホラー『テイク・シェルター』 [第162回] 森田芳光監督の最終列車『僕達急行』人生は出会いと旅立ちのリフレイン! [第161回] 鬼才キム・ギドクの"多重人格ショー"セルフドキュメンタリー『アリラン』 [第160回]映画創成期に散った"殉教者"への聖歌 3D映画『ヒューゴの不思議な発明』 [第159回]これはホラー? それともコメディ? 勘違い女が爆走『ヤング≒アダルト』 [第158回] ピラミッドは古代からのメッセージ!? 歴史ミステリー『ピラミッドの謎』 [第157回] 韓国映画の名匠が明かす"創作の極意"イ・チャンドン監督『ポエトリー』 [第156回] ローカル局で"伝説となった男"の生涯『木村栄文レトロスペクティブ』 [第155回] 米国に半世紀も君臨した"影の大統領" FBI初代長官『J・エドガー』 [第154回]犯罪者たちに学ぶ"人心掌握術"の奨め『アニマル・キングダム』『預言者』 [第153回]"地獄"からの生還者・板尾創路の凄み 古典落語を過激に脚色『月光ノ仮面』 [第152回]早くも2012年ベスト1映画が登場!"代理殺人"を巡る恐怖『哀しき獣』 [第151回]父殺し、自分殺し、そして再生の物語 園子温流ラブストーリー『ヒミズ』 [第150回]米国お笑い横断旅行『宇宙人ポール』人間のちっぽけな悩みはETが解決! 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もし“理想の恋人”が目の前に現われたどーする!?  情熱的で予測不能な彼女『ルビー・スパークス』

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『リトル・ミス・サンシャイン』(06)のジョナサン&ヴァレリー監督夫妻の
6年ぶりの新作『ルビー・スパークス』。ゾーイ・カザンの魅力が爆発。
 誰しも頭の中には“理想の恋人”が暮らしている。子どもの頃に夢中になったアイドル、ずっと想いを寄せていた初恋の相手、若くて優しかった頃の肉親の面影……それらのイメージが混然一体化した最強の脳内恋人だ。一種の偶像崇拝であり、そんな理想の恋人は現実には存在しないことは分かっている。でも万が一、実在したら? 自分の頭の中から飛び出してきて、目の前に現われたら? でもってベッドを共にしたら? ライトノベルや深夜アニメで取り上げられそうな極めてチープでシンプルな題材に、映画『ルビー・スパークス』は堂々と挑んでいる。最初はたかをくくって観ていたものの、“理想の恋人”を演じたゾーイ・カザンの透き通った青い瞳にすっかり引き込まれてしまう。  映画には実に様々な“理想の恋人”が登場してきた。映画『モテキ』(11)の幸世(森山未來)は七転八倒、悪戦苦闘の末に、みゆき(長澤まさみ)という最高の美女を手に入れる。でも、理想の彼女をゲットしたら、その後が大変だ。恋愛成就という非日常的イベントが、やがて日常風景へと変わってしまう。幸世は念願の恋人を手に入れた喜びと同時に途方に暮れてしまう。パトリス・ルコント監督の『髪結いの亭主』(91)の主人公(ジャン・ロシュフォール)は、少年の頃からずっと夢に見てきた理想の女性(アンナ・ガリエナ)と出会ってしまったばっかりに、残酷な仕打ちを受ける。甘くとろけるような幸福な日々の代償として、その後は空虚な人生を歩むはめに陥る。
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ずっとひとり暮らしをしていたカルヴィン
(ポール・ダノ)は“理想の恋人”ルビー
(ゾーイ・カザン)と一緒に暮らし始めることに。
 SFファンタジー『ある日どこかで』(81)で若き劇作家に扮したクリストファー・リーヴの場合はもっと悲惨だ。古い写真の中の美女(ジェーン・シーモア)に直接逢うために、催眠療法を使って70年近い“時間の河”をさかのぼっていく。運命の女性との遭遇を果たすが、その結果命を落とすことになる。理想の恋人と出会うことは、非常にリスキーなことなのだ。それでも逢ってみたい、理想の恋人に。心の片隅で誰もが願う深層心理が、映画というフィクションの世界を突き動かしていく。  『ルビー・スパークス』のヒロインであるルビー(ゾーイ・カザン)は小説に出てくる女の子の名前。人づきあいが苦手で、犬の散歩以外は自宅に引き蘢っている小説家のカルヴィン(ポール・ダノ)が日記代わりに書き始めた小説の草稿に登場する。デビュー作は運良くベストセラーになったものの、その後はまったく小説が書けなくなってしまったカルヴィンは、精神科医に勧められ、自分が気に入っていることをテーマに文章を書き始める。恋人と別れて久しいカルヴィンは、自分が想像する理想の女の子との恋愛物語なら楽しく書けるだろうと軽い気持ちでタイピングを始めた。好奇心旺盛でちょっとエキセントリックな不思議ちゃん。家族のいない、どこか淋しげな影が差している。自分好みなルビーの容姿、性格、プロフィールを打ち込み、満足げに眠りに就くカルヴィン。そして翌朝、ベッドから起きると、小説の中で描いたまんまの女の子が目の前にいたのだ。彼女は自分のことを「ルビー」だと名乗るが、自分が小説上の存在であることには気づいていない。かくして、理想の恋人と過ごす理想の生活がスタートする。
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最初はラブラブだったカルヴィンとルビー。だが、自由奔放な性格の
ルビーを家に閉じ込めておくわけにはいかなかった。
 理想の恋人であるルビーと一緒にいるだけで、カルヴィンは大満足だ。彼女との理想の関係を壊すわけにはいかないので、カルヴィンは不用意に小説を書き進めることを中断する。恋愛小説の多くは、悲しい結末が待っていることをカルヴィンは知っているからだ。タイプライターを封印し、これで理想の恋人と永遠に暮らすことができると喜ぶカルヴィン。最初は確かに楽しかった。だが、進展しない淀んだ物語の中では、理想の恋人だったルビーは平凡で退屈な女へとどんどん劣化していく。理想の恋人が性格ブスへと変貌していくのが恐ろしい。下らないテレビ番組を1日中ずっと見ていたかと思うと、家にじっとしているのは耐えられないと週に1日は外泊することを要求する。小説の世界から飛び出したルビーは自分の意志を持ち、カルヴィンを振り回すようになっていく。  マグロは泳ぎ続けないと息ができない。ルビーも物語を書き進め、新しい刺激を与え続けないとダメ女になってしまう。付き合いはじめた頃はお互いにドーパミンが出まくってラブラブだったのに、非日常的な恋愛関係が日常生活へと変わっていくと脳内ホルモンの分泌がぴたっと止まってしまう。理想の恋人ルビーとのドン詰まった関係を解消するために、カルヴィンはついに覚悟する。悲しい結末が待っているかもしれないが、物語の続きを書き進めようと。曲がりなりにも小説家であるカルヴィンは、物語には物語そのものに推進力があり、その力には作者でさえ抗えないことを理解している。それでも続きを書き進めるしかない。そして、小説の続きを書き始めたカルヴィンは、自分はずっと執筆をためらっていたのでなく、人生という大きな河の流れに飛び込む勇気がなかったことを思い知る。ルビーは身をもって、そのことを教えてくれたのだ。  本作の脚本を手掛け、ヒロインのルビーを演じたのはゾーイ・カザン。『エデンの東』(54)『草原の輝き』(61)の巨匠エリア・カザン監督の孫娘だ。ルビーの彼氏カルヴィンを演じるのは『リトル・ミス・サンシャイン』(06)でダメお兄ちゃんを好演したポール・ダノ。劇中のルビーとカルヴィンよろしく、ゾーイ・カザンとポール・ダノは現在交際中とのこと。映画は2時間足らずで完結するが、現実世界を生きるゾーイとポールの関係は今後どうなるかは分からない。でも、そんなことを口にしたら、きっとルビーなら笑い飛ばすだろう。「そんなのちゃんちゃらおかピーわ。おへそでエスプレッソを淹れちゃうわよ」。それも、とても流暢で優雅なフランス語で。きっと多分、ルビーが正しいんだろう。未来は予測できないし、予測できないからこそ面白いのだ。明日がくることを恐れないルビーは、スクリーンの中でキラキラと輝いている。 (文=長野辰次) ruby_sparks4.jpg 『ルビー・スパークス』 監督/ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリスト 脚本/ゾーイ・カザン 出演/ポール・ダノ、ゾーイ・カザン、アントニオ・バンデラス、アネット・ベニング、スティーヴ・クーガン、エリオット・グールド、クリス・メッシーナ、アリア・ショウカット、アーシフ・マンドヴィ、トニ・トラックス、デボラ・アン・ウォール 配給/20世紀FOX映画 12月15日(土)より渋谷シネクイントほかにてロードショー (c)2012Twentieth Century Fox <http://rubysparksjp.tumblr.com> ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第199回]“耳フェチ”には堪えられない青春官能ムービー!『耳をかく女』桜木梨奈の無印演技に癒やされたい [第198回]ハリウッドの頑固オヤジがたどり着いた好々爺の境地! イーストウッド、4年ぶりの主演作『人生の特等席』 [第197回]この“明るいヘンタイ”っぷりがいいんじゃない!? 会田誠のアートなエロス『駄作の中にだけ俺がいる』 [第196回]三池監督ならではの“いのちの授業”が始まる! サイコパス教師と過ごす恐怖の文化祭『悪の教典』 [第195回]“絶対的価値”を求める男たちの翔んでもロマン! 井筒監督の犯罪サスペンス『黄金を抱いて翔べ』 [第194回]禁断の蜜が溢れるSM世界『私の奴隷になりなさい』セクシーアイコン・壇蜜がすべてをさらけ出した! 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“耳フェチ”には堪えられない青春官能ムービー!『耳をかく女』桜木梨奈の無印演技に癒やされたい

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“耳にこだわった映画”というオファーを受けて
堀内博志監督が撮った『耳をかく女』。耳かきの心地よさに思わず吐息が漏れる。
 映画にはさまざまなフェチズムが溢れている。その中でも忘れられないのが高倉健主演の『夜叉』(85)だ。ヤクザ稼業から足を洗った健さんは北陸の漁村で良き夫・良き父親として平穏に暮らしていたが、ふとしたことから飲み屋のママである田中裕子とホテルでひと晩を過ごす。田中裕子を抱きかかえた健さんはおもむろに彼女の耳たぶを甘噛みし、そのとき健さんはニヤッと笑う。「どうせ、お前も好きなんだろう?」と健さんに自分の性癖を見破られたような気がして、観ていてドキッとした。そんな耳フェチなら見逃せない映画が現在公開中だ。タイトルはずばり『耳をかく女』。耳かきサロンに勤めるヒロイン・桜木梨奈の鮮烈なるエロティズムが漂う青春映画の好編となっている。  他人の手で耳掃除をしてもらうと、思いがけず大きな耳垢の塊が発掘され、赤面したくなる恥ずかしさと同時に何とも言えない快感が込み上げてくる。耳のずっと奥に潜んでいる蝸牛管から喜びの潮が渦を巻きながら満ちてくる。あまりの気持ちよさに体ごとグルングルンと回り出してしまいそうだ。誰しもが経験したであろうあの喜びの瞬間が、『耳をかく女』ではノーカットモザイク処理なしで描かれる。スカーレット・ヨハンソン主演作『真珠の耳飾りの少女』(03)ではピアス穴を開ける瞬間が官能的に描かれていたが、やはり膝枕&耳かきに勝る快楽プレイはそうそうないだろう。
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就活に苦戦する絵菜(桜木梨奈)。自分が
社会からまるで必要とされていないように
感じられ、焦れば焦るほど空回りしてしまう。
 主人公の絵菜(桜木梨奈)は卒業を間近に控えた大学生。出版社への就職が決まっており、恋人(笹原紳司)の部屋で甘く楽しい学生生活の残りを楽しんでいた。その日も恋人の部屋でまったりと過ごしていたが、絵菜は今まで経験したことのない耳鳴りに襲われ、体の均衡が失われてしまう。それは絵菜だけが感じた衝撃ではなかった。巨大地震が起きたのだ。ベッドの横にいたはずの恋人は真っ先に逃げ出し、震災の影響で就職も取り消されてしまった。家を流されて家族を失った人たちに比べれば、このぐらいのことで泣き言なんて云ってられない。でも、マジメに学校を卒業して、きちんとした企業に勤めることしか考えてこなかった絵菜は、これからどうすればいいのか途方に暮れてしまう。とりあえず、リクルートスーツを引っ張り出して就職活動を再開するが、面接官の声がやけに遠い。絵菜はいつの間にか難聴を煩うようになっていた。補聴器が手放せなくなってしまう。見た目は以前と変わらない絵菜だが、震災以降、何かが自分の中で変わってしまったのだ。  いつまでも就職先が見つからない絵菜は、女友達の紹介で「耳かきサロン」で働き始めることに。性風俗まがいのいかがわしいサービスを強いられるのではないかと、不安げな表情のまま研修を受ける絵菜。先輩の耳かき嬢(広澤草)の膝に身を委ねた絵菜は、あまりの心地よさにうっとりする。先輩の手慣れた耳かきがリズミカルに外耳道の側面を刺激する。思わずエクスタシーに達した絵菜は、日々のストレスから自分が解放されていくのを感じる。こんなサービスが自分にもできるかしら。浴衣に着替えた絵菜はおぼつかない手つきながら、自分の膝の上に置かれたさまざまな形をした耳朶に対して慎重に慎重にマッサージを施す。彼女の初々しさに、男たちが行列をなすようになる。膝枕の温かさに童心に帰る客、日頃の愚痴をこぼすことでスッキリする客、耳掃除した後のティッシュを絵菜に嗅がせて喜ぶ客……。ストレスで悩んでいるのは自分ひとりではなかった。男たちが抱える疲れを癒やすことが、絵菜にとっての喜びとなっていく。ささやかながら社会との接点を持てたことが、時給以上に絵菜にはうれしい。
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絵菜は耳かきの研修を受けることに。主演に抜擢された桜木梨奈は
実際の耳かきサロンに通うなどして役づくりに励んだ。
 本作が映画初出演となる新人女優・桜木梨奈をオーディションで抜擢したのは、堀内博志監督。今年7月に『私の悲しみ』(11)で劇映画デビューを果たしたばかり新鋭監督だ。『私の悲しみ』は14人の男女がもつれ合う群像劇をロバート・アルトマン監督ばりに巧みにさばいてみせた演出手腕が見事だった。今回はその手腕がヒロインの揺れ動く心理を描くことにフォーカスが絞られている。堀内監督に聞いたところ、こんな耳より情報を教えてくれた。 「オーディション初日のいちばん最初に会ったのが桜木梨奈。オーディション会場は駅から5分の場所だったのに、彼女は30分掛けて現われ、焦りまくっていた。やる気はあるのに、つい空回りしてしまう。その様子は絵菜そのものでした(笑)。オーディションに参加してもらった女優のみなさんの耳を最後に拝見させてもらったんですが、彼女の耳の美しさは際立っていましたね。顔がきれいでも、耳とのバランスがとれている女性って意外と少ないんです。それにピアスの穴を開けてなかったことも、大きな決め手でした。演技経験はあまりないけど、彼女に賭けてみようと思えたんです」。  形の整った両耳と同じように、緩やかな曲線美を見せる桜木梨奈の裸体をカメラが捉える。オーディション時はドジっ娘ぶりを見せてしまった桜木だが、撮影現場では肝の座った演技を見せ、スタッフの期待に応えてみせた。中でも堀内監督の丁寧な演出とカメラマン・三本木久城の適切なカメラワークがうまくハマった後半の雨の海水浴シーンは秀逸。海中を漂う寄るべなきヒロインの姿が目に焼き付く。その昔、人間が海中に棲むアンモナイトのような原生動物だった頃の記憶が甦ってくるかのような、プリミティブな厳粛さと美しさが感じられるシーンになっている。  震災以降、コミュニケーション不全に陥っていた絵菜だったが、多くの人たちの耳たぶに触れ続けることで次第に落ち着きを取り戻していく。人間の体の中でもっとも柔らかい部位なのに、いつも剥き出し状態でさらされている耳のことが絵菜は愛おしく思えてくる。また、絵菜の耳の形の良さに心を惹かれているアマチュアカメラマンの川村(中田暁良)も、絵菜から「変態ですね」と言われながら自分が耳にこだわる理由に気づかされる。物語の進行と共に耳に関するさまざまなトラブルが集約されていき、それらの問題はずっと溜まっていた耳垢のごとく一気にラストで除去されていく。この爽快感が堪らない。  最後に映画とはまったく関係ない余談だが、髪からキレイな耳を出している女性を見かけると、うっとり見とれてしまうのと同時にほんの少し切なくなる。左右対象形の双子のような2つの耳は、両手や両足と違って一生出会うことがない。あんなに美しくて、そっくりな相似形なのに、お互いの存在を知らないままの一対の耳たち。多分、耳という部位の佇まいには孤独な美しさがあるのだ。そんなふうに耳のことを考え出すと、ついつい自分を失ってしまう。そして、その美しさに少しばかりの哀しみを覚える。 (文=長野辰次) mimiwokakuonnna4.jpg 『耳をかく女』 監督・脚本・編集/堀内博志 撮影/三本木久城 音楽/Satomimagase 出演/桜木梨奈、中田暁良、広澤草、宇野祥平、笹原紳司、正木佐和、安藤一人 配給/パーフェクトワールド 11月24日より新宿K’s cinemaにてレイトショー公開中 (c)スターボード <http://mimi-movie.perfect-world.me> ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第198回]ハリウッドの頑固オヤジがたどり着いた好々爺の境地! イーストウッド、4年ぶりの主演作『人生の特等席』 [第197回]この“明るいヘンタイ”っぷりがいいんじゃない!? 会田誠のアートなエロス『駄作の中にだけ俺がいる』 [第196回]三池監督ならではの“いのちの授業”が始まる! サイコパス教師と過ごす恐怖の文化祭『悪の教典』 [第195回]“絶対的価値”を求める男たちの翔んでもロマン! 井筒監督の犯罪サスペンス『黄金を抱いて翔べ』 [第194回]禁断の蜜が溢れるSM世界『私の奴隷になりなさい』セクシーアイコン・壇蜜がすべてをさらけ出した! 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ハリウッドの頑固オヤジが辿り着いた好々爺の境地! イーストウッド、4年ぶりの主演作『人生の特等席』

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球団から引退を勧告されたガス(クリント・イーストウッド)にとって
最後のスカウト旅行。ひとり娘のミッキー(エイミー・アダムス)が同行する。
 御年82歳となるクリント・イーストウッドの最新主演作『人生の特等席』を観ると、クリント・イーストウッド監督作がどれだけ凄いかということを改めて思い知らされる。ハリウッドで長年にわたって、決して死なないマッチョヒーローを演じ続けてきたイーストウッドだが、“俳優引退作”と銘打った『グラン・トリノ』(08)で壮絶な幕引きを済ませた。監督兼俳優として、やるべきことはやり尽くした。だが、それでも人生は続く。主演と監督の2役を兼ねるハードな役割からは降りたものの、徹底した健康管理のお陰で体はまだまだ元気。イーストウッドの個人スタジオ「マルパソ」でずっと裏方として支えてきてくれたロバート・ロレンツが監督デビューするのに丁度いい脚本があるから、ここはひと肌脱ごうじゃないか。かくしてイーストウッドが唯一の弟子として認めているロバート・ロレンツの監督デビュー作『人生の特等席』が製作された。人生のゴールが見えてきた老スカウトマンが次世代のメジャーリーガーを発掘するため、疎遠になっていた娘を伴って旅をする。万人が「いいね」とうなずきたくなる感動的な企画となっている。
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有能な弁護士として働くミッキーだが、幼い頃
に親戚に預けられたことを恨んでいた。
我が道をゆく父親へミッキーの怒りが爆発する。
 アトランタでひとり暮らしを続けるガス(クリント・イーストウッド)は、メジャーリーグのベテランスカウトマン。有望新人を次々と発掘してきただけでなく、自分がスカウトした選手がスランプに陥ると相談に乗り、怪我で実力が発揮できないまま引退した選手のことも思い遣る人情派だ。球団の若い幹部はコンピュータを使ったデータ分析に余念がないが、ガスは常に現場に足を運ぶことでドラフト候補となっている若者がプロの水に合うかどうかを見極めている。頑固ひと筋で通してきたガスだが、さすがに寄せる年齢の波は押し返せない。最近はオシッコの切れが悪いだけでなく、視力に支障が出てきた。周囲には隠しているが、古い付き合いの球団職員のピート(ジョン・グッドマン)はガスの体調が思わしくないことを察知している。ピートはガスのひとり娘・ミッキー(エイミー・アダムス)に連絡し、ガスの様子を見てほしいと頼む。母親を幼い頃に亡くしたミッキーにとって、ガスは唯一の肉親。弁護士として超多忙な毎日を過ごしていたが、視力の衰えた父親を放っておくわけにもいかない。携帯電話とノートパソコンを抱えて、ガスの車の運転手を務めることに。ドラフト会議までもうすぐ。深まりゆく秋のノース・カロライナの地方球場を、ガスとミッキー親子はぎくしゃくしながらも巡っていく。  枯れた男の味わいを見せるイーストウッド主演のロードムービーということで、決してハズれのない内容であることが予測できる。旅の相方を務めるのは、『ザ・ファイター』(10)での助演ぶりが印象的だったエイミー・アダムス。『ミリオンダラー・ベイビー』(04)のヒラリー・スワンク、『チェンジリング』(08)のアンジェリーナ・ジョリーと同じく、骨太タイプな女性だ。自分が決めたルールにこだわり続ける頑固オヤジと、仕事と結婚のどちらを優先するのかの選択を迫られる年齢に差し掛かった30代の娘とのドライブ旅行。旅を続ける中で、お互いの胸の奥に隠していた心情をぶつけ合い、親子のつながりを確かめ合う。地方のひなびた野球場、ホットドッグにビール、生バンドの演奏付き酒場、自然豊かな田舎のロケーション……。タイムスリップしたかのような、古き善き時代の米国の光景がスクリーンに広がる。選手たちが引き揚げていったグランドで、ガスとミッキーが数十年ぶりに2人きりでゲームに興じるシーンは文句なしに美しい。『フィールド・オブ・ドリームス』(90)のように野球が親子の溝を埋めてくれる。
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ライバル球団のスカウトマンであるジョニー(ジャスティン・ティンバーレイク)。
かつてはガスがスカウトした有望選手だった。
 しかし、イーストウッドの熱烈なファンは、少なからず不満を感じるかもしれない。イーストウッド主演の、いかにもイーストウッド作品らしいオールドアメリカンな風景が広がる。だが、そこには何かが足りない。ここでようやく、本作はイーストウッド主演作ではあるが、イーストウッド監督作ではないことを思い出す。幾つかのイーストウッド監督作を振り返るだけでも、何が足りないかは一目瞭然だ。『ミリオンダラー・ベイビー』の女性ボクサーにはリング上での栄光と引き換えに大きな代償を与えた。『硫黄島からの手紙』(06)では孤島での玉砕を命じられた日本兵たちの追い詰められた狂気を描いた。『J・エドガー』(11)に至ってはFBI初代長官に扮したディカプリオが存分に変態ぶりを発揮した。イーストウッド監督作の中では安直な駄作とされるバディアクションもの『ルーキー』(90)でさえ、イーストウッド演じる主人公の刑事が窃盗団の情婦(ソニア・ブラガ)に逆レイプされるというアブノーマルなシーンが盛り込んである。イーストウッドが主演を兼ねていると彼の颯爽としたかっこよさに目を奪われがちだったが、イーストウッド監督作のコア部分を形成しているのは猛烈なる“毒素”だったことが分かる。  ハリウッドきっての大物スターとして威厳と貫禄を漂わせるイーストウッドだが、私生活では必ずしも聖人君子で通してきたわけではない。『マンハッタン無宿』(68)『ダーティハリー』(71)でイーストウッドをスターに育て上げた“師匠”ドン・シーゲル監督とは『アルカトラズからの脱出』(79)以降、距離を置くようになってしまった。『ガントレット』(77)『ダーティファイター』(78)などで共演した女優ソンドラ・ロックとの“大人の関係”は泥沼裁判となり、イーストウッドを怒らせた女としてソンドラ・ロックは表舞台から消え去ることになった。『アルカトラズからの脱出』でイーストウッドに気に入られた脚本家のリチャード・タッグルは『タイトロープ』(84)の監督に抜擢されるが、撮影初日にまごついた仕草を見せたためにメガホンをイーストウッドに取り上げられてしまう。イーストウッドは離れた場所から眺めると眩しく輝く大スターなのだが、不用意に近づくと彼が体内に溜め込んだ猛毒を浴びるはめに陥る。イーストウッドは自分の中に抱え込んだ毒素をうまくコントロールすることで、神懸かり的な映画監督になりえた。聖人君子ではなく、あくまでも生身の表現者なのだ。  黒澤明監督に28年間師事した小泉堯史監督のデビュー作『雨あがる』(00)を観たときに、悪い映画ではないけれどアクのない精進料理みたいだなと感じた。『マディソン郡の橋』(95)で助監督に就いて以降、イーストウッド作品の製作スタッフを務めてきたロバート・ロレンツ監督のデビュー作となった本作にも同じものを感じる。映画監督としてのノウハウ的なことは現場を共にすることで盗むことができるが、イーストウッドが内面に抱え込んだ毒素まではロレンツ監督は受け継いでいないし、それは受け継ぐべきものではないだろう。ひどく遠回りになってしまったが、それゆえに『人生の特等席』は安心して観ることができる。表現者としての毒をほぼ出し切ったらしく、好々爺然としたイーストウッドが屈託なく笑う姿にホッとさせられる。それと同時に、イーストウッド監督は今のハリウッドにおいて非常に特殊な映像作家であることも再認識させてくれるのだ。 (文=長野辰次) jinseinotokutoseki4.jpg 『人生の特等席』 製作/クリント・イーストウッド 監督/ロバート・ロレンツ 出演/クリント・イーストウッド、エイミー・アダムス、ジャスティン・ティンバーレイク、ジョン・グッドマン 配給/ワーナー・ブラザース映画  11月23日(金)より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー公開  (c)2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. <http://wwws.warnerbros.co.jp/troublewiththecurve> ●深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】INDEX [第197回]この“明るいヘンタイ”っぷりがいいんじゃない!? 会田誠のアートなエロス『駄作の中にだけ俺がいる』 [第196回]三池監督ならではの“いのちの授業”が始まる! サイコパス教師と過ごす恐怖の文化祭『悪の教典』 [第195回]“絶対的価値”を求める男たちの翔んでもロマン! 井筒監督の犯罪サスペンス『黄金を抱いて翔べ』 [第194回]禁断の蜜が溢れるSM世界『私の奴隷になりなさい』セクシーアイコン・壇蜜がすべてをさらけ出した! 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