
『サカモト教授 完全攻略本』
近頃、ゴールデン番組などで、頭にファミコンを載せてマントを身に纏った人物を見たことがないだろうか。“サカモト教授”と呼ばれる彼は、2007年頃からニコニコ動画などでファミコン音楽を演奏する姿を発信、その後、ニコニコ生放送や全国各地でのライブを通して徐々にファンを増やしていった。もちろん、本家・坂本龍一氏とは無関係で、名字が坂本だったところからサカモト教授を自称するようになったといわれている。昨年、オリジナルアルバム『SKMT』(LASTRUM)をリリースしてメジャーデビューを果たして以降は、『コネクト』(NHK総合)や、『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』(テレビ朝日系)など多数のメディアに出演して広く認知されつつある。
サカモト教授の人気の秘密は、大きく分けて3つ。全ファミコン世代の心の琴線に触れるピコピコ音楽の演奏、そのおかしな風貌、そして最大の特徴ともいえる、ファンとの距離の近い交流だ。ライブやニコ生で感動的な演奏を披露しておきながら、Twitter等で「ウ●コ」「おっぱ●」などの言葉を悪びれなく発言してファンと絡む親しみやすいキャラクターが、カルト的な人気を誇っている。そんなファンたちの後押しもあり、『サカモト教授完全攻略本』(徳間書店)が発売されるに至った。

ライブでは、頭にファミコンを載せて
ゲーム音楽を演奏するサカモト教授。
本書の目玉は、ファイナルファンタジーシリーズの作曲者・植松伸夫氏とサカモト教授との対談と、サカモト教授ロングインタビューの2つ。植松氏との対談では、2人の原点となる音楽についてや、FFとドラクエ音楽の違い、音楽の制作環境に、2人の考える自己プロデューステクニックなどが語られている。
この調子で、てっきり真面目路線で作られた本なのかと思いながら、対談の次の章「サカモト教授ロングインタビュー」を読み進めると、徐々に様子がおかしくなってきた。「人生で初めてつけられたニックネームは“ウンコ食い”」「自分、小学生の頃、めちゃめちゃウンコが好きだったんです」、小学生のときに描いていた漫画は『“ウンコ軍とバキューム軍”の戦い』と、まあ“ウンコ”という単語の出てくる回数の多いこと! サカモト少年はウンコ好きだったため、漫画『“ウンコ軍とバキューム軍”の戦い』の設定ではウンコ軍が正義の味方だったという。

幼きサカモト教授作『“ウンコ軍とバキューム
軍”の戦い』。世界がウンコまみれになる漫画
だったのだろうか……?
それにしても、小学生という生き物はたいていがウンコ好きと相場が決まっているが、これほどまでに数多くのウンコエピソードを語られると、サカモト教授のウンコ好きは、生半可な気持ちだったわけではないのだとよく分かる。そんな愛に溢れたウンコエピソードの中で、筆者が最も感動を覚えたのは、小学3年生のときに彼が書いた作文である(以下、p38より原文ママ掲載)。
<きのう、あさ、学校に行くとき、うんこが三つならんで、とうせんぼを、していた。でも、しらんぷりして、とおった。ぼくは、学校で、
「帰りもあるかなあ。」
と、思った。ぼくは、しんぱいだった。でも、帰り、ちゃんと、ありました。つぎの日、あさ見に行ったら、うんこがきえていた。ぼくは、
「ほそみちが、さみしくなったな。」>
この作文は、担任の先生に「すごい感性だ!」と言わしめたほどの名作。ある日の登校中、ホヤホヤのウンコが雨に打たれるのを見たサカモト少年。その日の作文の授業で、朝見かけたウンコを心配する気持ちをしたためたのだそうな。ウンコ話ひとつで担任を感激させるとは、おそろしい小学生である。
そして、本の後半は、今までにサカモト教授が出したアルバム3枚のライナーノーツのほか、「サカモト教授のいきつけ 新宿ランチマップ」や、「サカモト教授の処女小説『コタツクロニクル』」(筆名:坂本概阿)、「サカモト教授のコスプレギャラリー」など、サカモト教授ファンに向けた小ネタページがたっぷり。また、ファンからの投稿ページでは、「ちょっとエッチが過ぎる。うらやまけしからん」(ryzさん)、「エロモト教授」(東京都・てんちょさん)、などのイジられ方をしているメッセージが目立っていた。
結局、全体を通して最も印象に残ったのは、ウンコ好きな一面と、エロモト教授な一面。ところが、最後のページについているサカモト教授作曲の未発表音源CD「prof.skmtレアドロップス」を聞くと、今までのウンコやエロモトがすべて帳消しになるくらいのカッコよさに打ち震えたのだった。こんな曲作っちゃうなんて……今まで散々ウンコウンコ言ってたくせに、ズルイ! この、カッコよさとカッコ悪さの絶妙なバランスが、熱狂的なファンの心を掴んで離さないのだろう。ぜひともいつか、これらの曲を使って、『“ウンコ軍とバキューム軍”の戦い』のRPGを作ってほしい。
(文=朝井麻由美)
■サカモト教授公式サイト
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http://p.sk-mt.com/>