
撮影=後藤秀二
あの男がスクリーンに帰ってくる。5年前、カルト的ヒットを博した前代未聞「丘」サーファー映画『上島ジェーン』。あの日、高波に消えたはずの上島は死んではいなかった。今回は相棒に上島竜兵を知り尽くす男、リーダー肥後を迎え、元AKB野呂佳代、品川祐、大久保佳代子など共演陣も一層豪華に。なぜ上島は性懲りもなくまた海を目指すのか。「ビヨンド」に隠された意味とは。裏『上島ジェーン』を、上島、肥後、そして野呂の3人が語り尽くす。
――まずは、続編の話を聞いたときの気持ちをお聞かせください。
上島竜兵(以下、上島) ご飯食べてるときに、監督(マッコイ斉藤)から急に電話がかかってきて「『上島ジェーン ビヨンド』って面白くないですか?」って。あぁ、絶対たけしさんの『アウトレイジ ビヨンド』でひらめいたんだなと分かりました。前作で俺は死んだってことになってるでしょ?『アウトレイジ』も、たけしさんが刑務所で刺されて誰もが死んだと思っていたんだけど、実は生きていたっていうストーリーだから。だからたぶん、ほんとすみませんが、(アイデアを)いただきました。
肥後克広(以下、肥後) パクってるわけじゃないよね。リスペクトだよね。
上島 前作が東スポ映画特別賞いただいたんでね……本当、単なるリスペクトです。
――今回は有吉(弘行)さんがいらっしゃらないですが、そのことに対する不安はなかったですか?
上島 今回は、なんといってもリーダーがいますから、全然不安はなかったです。ただ、ちょっと気を付けたのは、リーダーと一緒にいて、これを映画みたいにカット割りで撮っていくとしたら、やっぱりコントみたいになっちゃうんじゃないかと。それはちょっと違うんですよね。たぶん監督もそう思ったから、2週間ずつくらいの長いスタンスで、セミドキュメント風に撮ったんだと思います。
――長くカメラを回して、自然な感じで。
上島 3カ月丸々いたわけじゃないですけど、まぁ1週間なら1週間、食事しているところも飲んでるところも含め、一日中カメラ回しっぱなしでしたね。
――肥後さん、撮影はいかがでしたか?
肥後 ロケは千葉の海で、非常に気持ちがよかったですね。夏はね。秋は普通につらかったので、やっぱり俺はサーファーにはなれないなと……。この映画をきっかけに、サーファーになろうと思ったんですけど、秋になって心が折れましたね。撮影現場は明るい雰囲気で楽しかったですよ。ただやっぱりね、僕はずっと一緒にいるから分かるんですけど、サーフィンにこれといって興味のない、この上島という男のサイテーさを、よく監督が出してくれたなぁと。そういう点で、本当にこれはドキュメント映画ですね。監督はよく上島のことを分かっているんですけど、千葉のサーファーたちが徐々に上島のダメさ、性格の悪さを分かっていくという。
上島 フフン(笑)。
――肥後さんだけが知っている上島さんが、この映画には出ていると。上島さんは、そのあたりいかがですか?
上島 だからね、あの……アレなんですよね、スタイルは全然違うし内容も違いますけど、寅さんなんですよ、俺は。ね?
肥後 何を言いだすんだよ!!
上島 いや監督が言ったんです。「上島さん、これ寅さんですよ。寅さんのヒドいバージョン」って。だから山田(洋次)監督には申し訳ないですけど、全然別物ですけど、人間みんなあるじゃん、そういうのって。最初っから、そんなやましい気持ちじゃないんですよ。本当にサーフィンやりたいと思ってたんですよ。それで行くんですよ、海に。
肥後 そこにマドンナが現れると。
上島 マドンナっちゅうか、女の子にばっかり気を取られて、結局女の子を中心に考えている男だから、サーフィンなんてどうでもいいってなっちゃうんですよね。でも、カッコはつけたい。まぁ、確かに俺はそういうところがあるよね。

――人間臭さというか。
上島 キレイに言ったね(笑)。
肥後 周りを巻き込んでいくっていうね。寅さんは。
上島 あんまり寅さん寅さん言うなよ。怒られるから。
――でも、それは前作からも一貫しているテーマですよね。人間臭さは。
上島 そうですね。監督いわく、前作のテーマは「人間カッコつけると死ぬ」。だから、そういうことなんですよ。
肥後 どういうことだよ。
上島 まぁそれは極端ですけど、今回もそういう似たような教訓の映画になってると思います。サーファーをチャラチャラしてるとか女にモテそうだとか勝手にイメージしてたら、実際は全然違うよ。サーファーはすごい。すごい世界ですよ。確かに、そういうところから入って、すごくなった人もいると思いますよ。女にモテたいから芸能人になったとかね、そういう人いるじゃないですか。ね?
肥後 上島さんは、なんで芸人になろうと思ったの? 女にモテたいから?
上島 違います。僕はもう、お笑いが大好きで……。
肥後 ほらね? 最低な人間でしょ? すぐ出るんだよ、そういうところが。
上島 僕はお笑いが大好きで、人の笑顔を見たら、もう本当に幸せだなって。
肥後 うそつけ!
上島 いや、お笑いは一番難しいですし、一番誇れる仕事だと僕は思っています!
一同 爆笑
――肥後さんが先ほどおっしゃっていたのは、この感じですか……?
肥後 この感じ、この感じ。ほんっとサイテーな人間。中身も何にもない。
上島 そうですよ。舞台でスベったら客のせいにして、テレビでスベったらディレクターのせいにする(笑)。「センスねぇなぁ」とか言って。
肥後 お前が一番センスねぇだろってな。
上島 それに対してなんの努力もしていないっていう、まさにそういう人間の映画です。
――野呂さんはいかがでしたか? 今回の役どころは?
野呂佳代(以下、野呂) えっと、まず上島さんが仲間にデカいことを言っちゃうんです。「AKB連れてきてやるよ」って。だけど、そろえられるのは私しかいなかったという話です。声をかけてもらった時は、私もうれしかったんですけどね。前作も見ていて、すごく出たかったので。しかも、サーフィン始めたばっかりだったんですよ。“え? 知ってたの、監督?”って、ウキウキして配役を待っていたらなんのこっちゃない、上島さんプロデュースのご当地アイドル……。まぁ、協力させていただいたっていう感じですかね(笑)。
――何か監督からアドバイスを受けたりしましたか?
野呂 それが……。
肥後 ププッ(笑)。
上島 素直に言ったほうがいいよ。
野呂 素直に言いますが、私のことをですね、監督が「野呂は……DV顔だ」と。
――え? ええ?
野呂 急になんですけど、「あれ? ちょっと待って? お前、DV顔だな」って。それで急に上島さんからビンタされたんですよ。
――えええ?

野呂 ビンタされて、普通ひるむじゃないですか。そしたら「その表情がたまんない」と。それで何回かやらされましたね。初めての経験でした。そんなにビンタされたことないんで。
上島 しないよね。
肥後 でも、されたそうな顔してるよね。
野呂 って、言われるんですよ。私には、それが意味が分からない。
上島 もちろん、お芝居だからやったんですよ。
野呂 そういう言い争うシーンがあったから、監督の指示で。私はほかの芸人さんみたいに、上島さんとキスはできないですから。
――それは、ご自身でも新たな発見でしたか?
野呂 そうですね。それからは、しゃべろうとすると「黙れ!」って言われたり。扱いが……あれ? って。
――マッコイさん、すごいですね。
肥後 ちゃんと見抜くんだよね。監督が今回、野呂さんのこと、すごい気に入っちゃって。次回作は『野呂ジェーン』を作ろうと。
野呂 それはいいですね!
――肥後さんは、監督から何か指示されましたか?
肥後 基本ドキュメントタッチで撮ってるので、ああしようこうしようは極力ないんですけど、監督自身もカメラを担ぎながら耳元でたまにささやかれるんですね。それが、だいたい人を傷つける言葉なんです。
一同 爆笑
肥後 大久保(佳代子)さんに向かって「クソババアって言ってください」とか。人を傷つける言葉しか演出でささやかないという、これまたサイテーな監督ですね。僕が大久保さんに「クソババア」って叫んだら、編集困るんじゃないかっていうくらい監督がギャハギャハ笑ってて、案の定、編集大変だったみたいです。
――じゃあ、結局、監督が一番楽しんでいたんですね。
上島 それは本当にそうでした。楽しそうだった。あと、地元のサーファーの方たちが楽しそうだったのがよかったですね。
肥後 この映画に関わって知ったよ。サーファーって真面目な人なんだなって。見た目はチャラいけどね。中には上島みたいなのもいるかもしれないけど。
上島 なんかリーダーがね、やりだしてんだよ、サーフィンを。
肥後 いやぁ楽しかった~。普通に楽しかったよ。
――肥後さんは海が似合いますよね。
上島 ずっとグッピー食ってたから。
野呂 うそ!?
上島 食ってたよ。チュルっとパクっと(笑)。
――竜兵会のメンバーから、何か感想は?
上島 これからですね。前作は渋谷でレイトショーしかやらなかったのに、それでも結構みんな見てくれましたよ。感想は……やっぱり最後のシーンで大爆笑だったと。人によっては「本編は、最後のオチのための長いフリだった」とも。
――前作はシンプルでしたから。
上島 そうですね。今回はあれよりも豪華で、かつエンタテインメント性があると思います。前作との違いはそこかな。あれはあれで、ずっと有吉といられて楽しかったんですけどね。でも、ちょっとドキュメント性が強かったんですよ。自分で芸人として「あ、うまくいったな」って思ったところは、ことごとく編集で切られてたから。そういうのはいらないと。前作はね、俺じゃなくて有吉の評価が高いのよ。ナレーションもやってたし。それで今作も、やっぱり野呂ちゃんとかリーダーの評価が高いんですよ。なぜか俺の評価は低い。

(C)2014 PONY CANYON INC.
肥後 だって監督が言ってたじゃん。「上島さん損するよ」って。
上島 (笑)。いや、これ本当で。編集作業が終わった後に「これ上島さん損するな~」って。
肥後 主役が損する映画って、あんまりないよね。
上島 今日も念押しされましたよ、監督に。「上島さんすみませんねぇ。絶対損すると思います」って。なんだそれ。
肥後 でも、野呂さんは良かったよ。九十九里ッターズの歌(「波の数だけI need you」)も、オールディーズっぽくていいよね。撮ってて、どのシーンが印象に残ってる?
野呂 そうですね。私は、やっぱり上島さんとのケンカシーンかなぁ。最初の出会いもケンカでしたし……あと本当にすみません、あんまり思い出がないんですよ。
一同 爆笑
野呂 私、言ってもそんなに出てないんで。いや、うれしかったんですよ、出演できて。
上島 さっきのコメント聞いても分かりますよ。見る気もないんです。見たいとも思ってない。
野呂 見たいし、うれしすぎるんですよ、ダチョウさんもマッコイさんも好きですし。ただ撮影中の記憶が本当にないんです。ハイ。
上島 野呂は撮影中、ずっとムッとしてたよ。
肥後 元AKBの野呂さんがセンターやる気満々で来たのに、まさかのセンターじゃなくて、リアルにもめてたよね(笑)。
野呂 ハッハッハ。
肥後 もう完璧に、自分がセンターだと思っていたんだよね。メンバーを見て。
野呂 やっとセンターになれると思ったんですよ。それが……そっか、そうだよなって。テヘ☆って。
肥後 そんなかわいい感じじゃなかったよ。すげぇムッとしてたよ。
上島 最後の最後までもめていたという、そんな野呂も今回の見どころですね。
――上島さん的な見どころは?
上島 俺はやっぱりあれですね。10月後半に撮ったところなんかは、もう寒くてね。最後の、オチのシーンは何回も撮ったからきつかった。ハアハア息上がっちゃったし、頭も痛かったし。
野呂 上島さん、楽しい見どころをお願いします(笑)。
上島 あぁあとね、「しき」ちゃんっていう子が、本当にかわいかった。
野呂 ……「希志(あいの)」さんですよね?
――で、では上島さん、今作の主役として最後はビシッと読者にメッセージをお願いします。
上島 みなさん好き嫌いはあるでしょうけど、本当にバカバカしくてくだらない部分と、すごいかっこいいサーフィンの映像や、サントラ出すくらいいい音楽とのバランスが絶妙です。本当に素晴らしい作品なので、絶対一回見たら、きっと面白いダと……。
肥後・野呂 面白い……「ダ」?
(取材・文=西澤千央)
●『上島ジェーンビヨンド』
企画・監督/マッコイ斉藤 脚本/藤谷弥生 出演/上島竜兵、肥後克広、大久保佳代子、品川祐、清宮佑美、野呂佳代ほか 製作/ポニーキャニオン 配給/キノフィルムズ
4月26日よりシネマート新宿ほかにてロードショー
<
http://www.ponycanyon.co.jp/ueshimajane/>