2006年に放送されたドラマ『14才の母』(日本テレビ系)は衝撃的だった。志田未来演じる14才の少女が妊娠、出産をするというストーリーで、当時、性体験の低年齢化などが問題になっていたこともあり、大きな話題となった。そのドラマで、志田未来の相手役、つまり「15才の父」を演じていたのが三浦春馬だ。
そんな三浦が今度は「30才の童貞」を演じているのが、現在放送中のドラマ『オトナ高校』(テレビ朝日系)である。
エリート銀行員の荒川英人(三浦)は、ある日内閣府特別政務官の嘉数喜一郎(杉本哲太)という男性に声をかけられる。彼いわく、国の少子化対策の一環として、30才以上で性体験の無い男女を集め、本当のオトナになる、つまり性体験をさせるための学校「オトナ高校」が設立され、その第一期生に英人が選ばれたらしい。
狼狽し、なんとか入学の日までに経験をしようと試みるが、もくろみは不発に終わり、結局入学することになる英人。入学式には、会社の上司であり、55才の権田(高橋克実)や、美人でキャリアウーマンの園部(黒木メイサ)など個性的な面々が集まっており、「未経験者」ならではの主張を繰り広げていた。さらには、英人が密かに思いを寄せていた姫谷さくら(松井愛莉)が、「経験豊富な副担任」として英人らの指導にあたることになったのだ。
ドラマは基本的にコメディタッチである。事あるごとに英人の心の声がカットインされるし、「処女」「童貞」のこだわりや葛藤が面白おかしく描かれている。「15才の父」から「30才の童貞」までを演じきる三浦の幅の広さもたいしたものだ。
しかし、気になるのは、このドラマが、どの立ち位置からの視点で描かれているかということ。
性経験の豊富なスタッフにより、「未経験者のおかしさを描いた作品を」という視点で作られていたとしたら、素直に笑うことはできない。そこには多分に「いじめ」的な要素が絡んでくるからだ。
誰もができていることができない人のことを笑う。みんなと違っている点がある人のことを笑う――。
「その人」たちから見れば面白いかもしれないが、まだ未経験の人、かつて未経験であることで苦しい思いをしたことのある人は決して手放しで笑うことはできないだろう。
そもそも本来、「貞淑」な女性、「一途」な男性は褒められるべき存在であった。昨年大ヒットした新垣結衣主演ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)で星野源が演じた津崎は、恋愛経験ゼロの堅物だったし、アイドルグループのメンバーが「恋愛禁止」を謳うのだって、「貞淑」を尊ぶファン心理があってのことだろう。
それがいつの頃からか、「数多く経験したほうが偉い」というようなヒエラルキーができてしまう(私の記憶では、高校生ぐらいの時期から)。もし、ドラマにあるように「少子化対策」を目的とするならば、数をこなすことより、一人の相手と結婚し、じっくりと愛し合うことを教えるのが正しい道ではないだろうか。
もちろん、経済面や環境面で子どもが持ちにくい社会であることも理解はしている。しかし「草食系男子」といった言葉に代表されるように、性交渉自体にガツガツしない若者が増えているのもまた、事実なのだ。
要因は一概には言えないだろう。ただ、一時期爆発的に増えた日本の人口に対し、何らかの「抑制」が働いて、少子化を進行させてしまったのではないかとも考えられる。少子化対策も確かに大事だが、無理に人口を増やすより、できるだけ推移を見守り、自然に任せたほうが幸せな気がする。それでもし、日本人が一人もいなくなるようなことがあったとしても、それはおそらく民族としての寿命なのだ。
第3話までの放送を見た限りでは、先生と生徒、両方の思いをうまく交差させながら物語が進行しているように感じる。「もっとうまく立ち回り、自分をさらけ出して相手にぶつかっていけ」という主張も「みっともないかもしれないが、自分はこうとしか生きられない」という思いも、両方に「うんうん、わかる」とうなずかされてしまう。
おそらく、この問題に正解はない。ドラマはどちらかの正当性を主張するのではなく、見る人にこの問題について考えさせるきっかけを与えれば成功なのだ。
そもそも「多くの人との経験をしたほうがいい」「無理に経験するものではなく未経験でもかまわない」この二つの思想は、どうあっても噛み合うものではない。どちらが正しいか、どちらが幸せなのかは、それぞれが判断すればいいことだ。ただ一つ言えるのは、どちらの考えも強制したり、排除したりするものではなく、それを選択する自由が与えられるべきだということだ。
毎回、合コン、不倫、恋人代行サービスなど、ホットな話題を取り入れながら進んでいくこのドラマ、もともとの設定がなかなかにトリッキーであるので、最終回にどんな結末を見せてくれるのかは興味深い。
何より、こうしてドラマについて論じている時点で、私自身、すでにこの作品の術中にハマっているともいえるのだ。
(文=プレヤード)