命と引き換えに産んだ「最後の仔」  競馬の常識を覆し、“血”を伝える『女帝』エアグルーヴ

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JRA-VAN公式サイト
 11月1日、東京競馬場で天皇賞・秋(G1)が開催される。天皇賞・秋といえば、この馬を思い出す人も多いのではないか。  競馬は“ブラッドスポーツ”と呼ばれ、古くから脈々と受け継いできた血統同士の、生き残りをかけた闘いともいえる。その闘いに勝ち続けた血統こそが、競馬の歴史の中心に座るわけだが……。日本には1頭、競馬における常識を幾度も覆しながら血を伝え、今もなお日本競馬の頂点に鎮座する“母馬”がいる。 1997年、強豪の“男”馬15頭を真っ向勝負でねじ伏せ、17年ぶりに牝馬で天皇賞・秋を制した「女帝」エアグルーヴである。当時、牝馬が牡馬にG1で勝利することは極めて難しいとされていた中での快挙だった。  同馬を管理した伊藤雄二調教師(当時)は、まだ赤子のエアグルーヴを初めて見た瞬間の衝撃を「この出会いだけは生涯忘れることはできないだろう。(略)調教師としての感性が、とてつもないエネルギーで突き上げられた瞬間と言っていいだろう」と、『戴冠 エアグルーヴ写真集』(イースト・プレス)にて語っている。比類なきオーラをまとったエアグルーヴは、その期待通りに優駿牝馬(オークス)、そして天皇賞を制した。2000年代後半以降に現れるウオッカ、ダイワスカーレット、ブエナビスタなど、混合G1でも主役を張るような名牝の道筋を示した“パイオニア”といえるだろう。  抜群のレースセンスで競馬界の主役を張ったエアグルーヴは、実働3年半で引退。その後は繁殖牝馬としての道を歩むわけだが、生み出した子どもたちもまた、「女帝」の血を色濃く受け継いでいた。初子のアドマイヤグルーヴは母の勝てなかったエリザベス女王杯(G1)を連覇。その後も産駒のほとんどが重賞に顔を出した。2009年にデビューしたルーラーシップは、香港のクイーンエリザベス2世カップを勝利して海外G1制覇も達成。エアグルーヴは、子だしのよさと突出した安定性で歴代繁殖牝馬の中でも突出した成績を残した。  しかし13年、20歳になったエアグルーヴの馬生は、唐突に終わりを迎える。人気種牡馬キングカメハメハとの間にできた仔馬を出産後、内出血を起こし、そのまま息を引き取ったのだ。繋養先のノーザンファーム代表・吉田勝己氏は、「現役時の活躍をはじめ繁殖牝馬として、まさに当牧場で一番の実績をあげた名馬で、まさにノーザンファームの歴史の中心にいた馬」と称え、競馬サークルと多くのファンがその死をなげいた。 90年代の「競馬黄金期」に確かな足跡を残したエアグルーヴ。凄まじい強さと血を伝えた伝説も、これで終わった。そう多くの人が思ったかもしれない。  だが、この「死」が、エアグルーヴ物語の“最終章”ではなかった。15年、自身の孫にあたるアドマイヤグルーヴの子・ドゥラメンテが、皐月賞、日本ダービーの「クラシック2冠」を達成。自身の血を受け継いだ馬が今、競馬ファンの視線を最も集める存在となっている。 「ドゥラメンテはもちろん、同じく孫であるポルトドートウィユもダービーに出走しました。直仔だけでなく、孫世代にも強い影響を及ぼすエアグルーヴはやはり偉大な存在です。競走馬としても繁殖馬としてもトップを走れる馬など、片手で数えられる程度。ルーラーシップも種馬になり、骨折したドゥラメンテも来年復帰します。今後10年は、エアグルーヴの血は“安泰”といえるかもしれないですね」(競馬記者)  現役、繁殖、そして死してなお競馬界を引っ張るエアグルーヴ。年末か年明けには、自らの命と引き換えに産み落とした最後の産駒がデビューする予定だ。その日を待ち焦がれているファンは、多いに違いない。

「ギャンブルはステップにすぎない!!」クレイジーじゃない、とってもクレバーな旅人

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現在は講演や作家活動、広告塔、タレントとして活動している。他に著書『勝率9割の選択』(総合法令出版)がある。
 “ギャンブラー”と聞いて、誰もが想像するのは、やさぐれた、ある意味クレイジーなヤカラに違いない。しかし、そこにいたのは、ギャンブルを論理的にビジネスチャンスに結びつける、非常にクレバーな男だった。  日本人で唯一のプロギャンブラー・のぶき氏が、6月下旬、下北沢の旅カフェ「ステイハッピー」で、自身2冊目の著書となる『ギャンブルだけで世界6周』(幻冬舎文庫)の出版発表とトークショーを開催した。  長髪をうしろで束ねた浅黒い肌のその男は、うさんくさいパチプロや雀士とは違って、優しく、しかし鋭い目つきで話し始めた。 「自分が生きるスタンスは、『思いやり』です。自分にしてほしいことを、相手にもしてあげたい」  冒頭に語られたこの言葉も、最初こそ、「ありがちな自己弁護」程度にしか聞こえない客もいただろう。しかし、並のギャンブラーの単なる武勇伝とは一線を画す内容だということはすぐにわかった。  今回のテーマは、彼自身が経験した、「ギャンブルと世界6周の経験をいかにビジネスにつなげたか」をもとに、「旅をどうビジネスチャンスに結びつけるか」というもの。一般的には結びつかないものを結びつける理論が、のぶき氏ならではの視点で語られた。
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おおよそ、ギャンブラーとは思えない論理的な展開のトークが進んでいく。実体験がもとにあるだけに、話もおもしろい。
「旅が好きだから、旅しながらできる仕事としてギャンブルを選んだ。初ギャンブルは、大学の卒業旅行のべガスで、そのときは1日で100万円勝った。その次、べガスに行った時は、30分で30万負けた。自分をプロギャンブラーとして自覚したのは、べガス中のカジノで出入り禁止になった時」  そう語るが、勝つようになるための修練の2年間は、重く暗いタールの海を泳ぐような暗黒の日々が続いたという。 「旅やギャンブルをビジネスに活かすには、その経験や知識を、相手がお金を出してもいいと思えるレベルにまで昇華させること。それには、旅の期間と同じくらい資料集めや準備に時間を割き、旅の最中には写真やメモをとりまくる。そして、帰ってきたあとも同じだけ時間をかけて、ブログやホームページ、YouTubeなどにアップして告知するのが重要」  その言葉も、言ったり聞いたりするだけなら簡単だが、実際にやるとなると途方もない労力がつきまとう作業ということはすぐにわかる。  その結果、現在は作家、カジノインストラクター、カジノをはじめとする海外諸事情の調査員、広告塔として収入を得、さらに芸能事務所に所属してタレントとしても活動しているという。  しかし、のぶき氏のゴールはまだ先にある。
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学生時代にバイトで1000万円貯めたというバイタリティーにも頭が下がる。
「ゆくゆくは政治やボランティアの方に進みたいんです。プロギャンブラーとして有名になるのは、そのためのステップ。メディアに出て、自分を知ってもらう必要があるんです」  果たして、そこまで将来のビジョンを持つギャンブラーが過去にいただろうか? いや、まっとうに働くサラリーマンとて、将来の自分の姿を想像できる人間はそう多くはいないはずだ。  単なる夢追い人と思っていた“プロギャンブラー”の素顔は、あまりにもロジカルでステディなビジョンの持ち主だった。のぶき氏のトークショーは随時開催中だ。 詳細はhttps://www.facebook.com/nobuki.progamblerまで! (取材・文=関口ヒサヨシ)

換金率は一般店の5倍! 1日の儲けは20万円! マンガ喫茶感覚でファンが集う裏スロ潜入記

shinjuku0420.jpg  1990年代後半、“一撃万枚”という言葉が飛び交うほど隆盛を極めたパチスロ業界。多くの“スロッター”がストック機能やAT機能、大量獲得機能を搭載し、史上まれに見る爆発力を持つ4号機や裏モノに魅せられてスロット漬けの日々を送っていた。  その後、多くの中毒者を輩出した4号機はその爆発力が原因でホールから排除され、代わって登場した玩具のように“ユルい”5号機は、かつての猛き戦場を知る者たちを大いに失望させ、スロッターたちは自然とホールから足が遠のき、今に至る。だが、その裏でかつての甘美の時を忘れられないスロッターたちが集う、もうひとつの戦場が“裏スロ”である。  新宿、渋谷、池袋。華やかな街から少し外れた路地にある雑居ビル。その重い扉の奥に裏スロは存在する。  昨今のパチスロ業界では、射幸心を煽りすぎるという名目でギャンブル性の高い機種はことごとく姿を消し、射幸性の高さを楽しみに通常のパチンコホールに通っていたサラリーマンや、近所の飲食店で働く店員などがひっきりなしにお店を訪れている。  裏スロの換金レートはおおむね1枚あたり20円から100円。100円となると、正規のパチスロに換算すると5倍に相当し、ボーナスを引き当てることができれば、あっという間に10万~20万円相当を手にすることができるのも人気の秘密である。  20台ほどの遊技機が並ぶ店内には、コインサンドやドル箱といった通常パチンコホールにあって当たり前の物は存在せず、遊技者はさながらゲームセンターのようにデジタルカウンターで自身のメダル獲得枚数を知ることができる仕組みになっている。何より普通のパチンコホールやスロット専門店と異なるのは、台移動のみならず掛け持ち遊技が可能なことだろう。 「スロットでの掛け持ち遊技とは?」とスロット経験者でも不思議に思うかもしれないが、裏スロには「オート機能」が搭載されており、直接レバーを叩いたり、リールのストップボタンを押さなくても遊技が可能となっているのだ。  そういう意味では極めて効率的な鉄火場となっており、このシステムに慣れた者の中には、平然と3台、4台同時にプレーを続ける猛者も存在する。  また、マンガ喫茶などと同じようにフリードリンク制で、遊技者は好きなタイミングで好きなだけドリンクを飲むことができるほか、お弁当やカップ麵などの軽食も無料となっている。さりとて、ほとんどの遊技者は一心不乱に台を愛でて、ドリンクや軽食の存在すら眼中にはないのだが……。  機種のラインナップを見ると、4号機のストック機やART機といった波の荒い台が人気を集めており、「南国育ち」や「北斗の拳」などといった機種はどの店に行っても存在する。そんな中、常連客の中ではほとんど目押し不要で、シンプルでありながら爆発力は桁ハズレの、裏モノとして一部の店で人気を誇っていた「ビッグシオ30 GOD ver」などの沖スロの改造台が一番人気を誇っているのが実状だ。慣れてしまえば普通の4号機では我慢できず、次々と刺激が欲しくなるのはスロッターの気質だろう。  店によってはイベントなどの日に最高設定の6(註:段階の設定の中でボーナス確率が一番高い)を投入し、客が抽選のため雑居ビルに200人近く並ぶことも。確かに設定6を打てば、理論上ほぼ間違いなく勝つことができるが、そこは“裏”の世界のこと。実際には店側が大当たりを遠隔操作していることもままある。とはいえ、これは裏スロを打つ客側も周知なのだが……。  無論、勝ち続けることは難しい。  だが、店側も客から回収してばかりでは、客離れを招き、結果的には自分で自分のクビを締めることになるのが現状だ。最終的には、そういった遊技者と店側との駆け引きも含めての勝負となるのだが、店側と良好な関係を築けば、つまるところ常連となれば、自然と高設定の台をつかむことにつながるため、店とのお付き合いが裏スロ一番の醍醐味なのかもしれない。ホスト側との関係性を大切にすることは、裏スロに限らず、あらゆるギャンブルの原点なのだ。 人生という最大のギャンブルにおいても、おごりすぎるものは決して真の勝者にはなれない。そういう意味でも、ここはまごうことなき人生の鉄火場とも言えよう。 今日も人通り少ない繁華街の外れで、誰かが万札を握り締め重い扉を開いている。スロットを心から愛する者たちの楽園は、規制という野暮な網を抜けて、今後も危うくも色あせない輝きを放ち続けることだろう。 (文=音無鈴鹿)

カジノ合法化、参院選後に加速の観測強まる…幅広い業態で経済波及効果の期待高まる

 サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。 ■「Business Journal」人気記事(一部抜粋) 森下悠里整形告白に、岡村隆史「顔見た時から怖いと思ってた。注射でもあかんと思う」 セブン、独り勝ちのカラクリ 加速する強気出店とPB拡大…飽和説覆すコンビニ3強 参院選の目玉・ブラック企業政策、各党の政策を検証~企業名公表、取り締まり強化… ■特にオススメ記事はこちら! カジノ合法化、参院選後に加速の観測強まる…幅広い業態で経済波及効果の期待高まる - Business Journal(7月12日) post_2491.jpg
カジノ候補地のひとつである東京・お台場
(「Wikipedia」より/Sasanoha)
 IR(Integrated Resort=統合リゾート)推進法案(略称:IR法案、通称:カジノ法案)が秋にも国会に提出される公算が高まっている。カジノ法案はこれまで何度も経済活性化案として浮上してきたが、その都度、反対の声などが上がり立ち消えになってきた経緯がある。しかし、今夏~秋には大きく進展する可能性がある。  スケジュール的にはまず、7月21日投開票の参議院議員選挙の後だ。事前の予想通り安倍晋三内閣が率いる自公連立与党が勝利すれば、その後に成長戦略が打ち出されることになる。カジノの経済インパクトは極めて大きいと見られる。カジノは単独施設ではなく、大規模商業施設、レジャー施設、国際会議場などからなる統合リゾート(IR)として建設される。  観光客増のほか、雇用を生み、税収も増加させる効果が期待できるなど経済波及効果が大きい。世界190カ国のうち、カジノが合法化されているのは120カ国以上に達している。アジアではマカオやシンガポールが成功を収めている。また、安倍内閣では8月にも「戦略特区構想」をまとめる見通し。東京や大阪がカジノ特区的な内容をまとめていると見られる。  東京はお台場のほか数カ所が候補とされ、大阪や沖縄、宮城なども建設候補に挙がっている模様だ。参院選前に具体化しなかったのは、ギャンブルのイメージが先行するカジノを、参院選の争点にしたくないとの思惑が働いたものと見られる。 ●法案成立の公算も高い  カジノ合法化を進める議員の動きは2001年の「国際観光産業としてのカジノを考える議員連盟」(通称・カジノ議連)にさかのぼる。当初は自民党の有志による議連だったが、09年に超党派の議連が設立された経緯がある。一時は民主党が主導したものの、今年4月に安倍政権発足後初のカジノ議連の総会が開催された。最高顧問には安倍首相、麻生太郎財務相が名を連ねており、実現への本気度がうかがわれる人事となっている。カジノ議連の会員数は140名で、うち85名を自民党が占めている。参院選での勝利となれば、法案提出に動くきっかけになるだろう。  また、自民党以外も、民主党、日本維新の会、公明党、みんなの党など超党派の布陣となっており、IR推進法案が国会に提出されれば成立する公算が大きい。カジノで得られた収益で、賭博依存症対策や周辺地域の安全確保対策を行えば、反対論者に理解を得やすいと見られる。収益金の一部を東北復興に充当するなどの案も検討課題となりそうだ。 ●外国人観光客増加にも追い風  政府は、将来的な訪日観光客を年間3000万人にまで増やすことを掲げた「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を推進している。04年のスタート時の訪日数は同500万人程度だったが、まず16年に1800万人を目指している。カジノ構想は訪日観光客の増加にも直結するだけに、これも追い風になる。  外資系証券のアナリストは、順調に進めば参院選後の臨時国会での法案提出、年内にIR推進法の施行後、18年にもカジノの開設が実現する可能性もあると指摘している。場所はカジノ議連で10カ所程度を選定し、当面は首都圏3カ所程度に絞られるよう。  具体的な関連企業には、IR施設運営では例えば、セガサミーホールディングスがある。遊技機器大手のサミーとアミューズメント関連大手のセガが、04 年に統合して発足した持ち株会社。パチンコやパチスロ機器の展開と、ゲームセンター運営で培ったノウハウを有しているだけに、カジノ運営にも意欲的と見られている。ユニバーサルエンターテインメントは現在係争中ではあるものの、現地企業とカジノホテルの経営実績があるのは有利か。マシンや周辺機器では硬貨や紙幣処理機のグローリー工業、米国でカジノ向け紙幣識別機に実績がある日本金銭機械などにビジネスチャンスが生まれる可能性がある。建設では鹿島などのゼネコンや、三井不動産などの大手不動産企業にもビジネスチャンスになりそうだ。お台場(東京都・江東区)など都心にカジノができれば、JRをはじめとした電鉄や宿泊施設にもメリットになる。椿山荘運営の藤田観光、高級ホテル予約の一休などが挙げられよう。 (文=和島英樹/ラジオNIKKEI 記者) ■おすすめ記事 森下悠里整形告白に、岡村隆史「顔見た時から怖いと思ってた。注射でもあかんと思う」 セブン、独り勝ちのカラクリ 加速する強気出店とPB拡大…飽和説覆すコンビニ3強 参院選の目玉・ブラック企業政策、各党の政策を検証~企業名公表、取り締まり強化… 特定大学へ1000億ばらまきに異論噴出…大学迷走の背景に潜む、旧態依然な経営の実態 スマホの動画SNS、新サービス続出で広がりの予感…TwitterやFBに投稿も

安倍首相主導でカジノ解禁が加速! 天下り、暴力団、赤字など問題を乗り越えられるか?

 サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。 ■「Business Journal」人気記事(一部抜粋) 「サムスンは凋落する」と予言する韓国人 歴代大統領と財閥の蜜月とは? おぎやはぎ小木、AKB指原“ヤバイ”発言釈明「美味しいものでも“ヤバイ”って使う」 バスは結局24時間営業にならない!? 深夜いきなり料金が倍になる謎を東急バスに直撃! ■特にオススメ記事はこちら! 安倍首相主導でカジノ解禁が加速! 天下り、暴力団、赤字など問題を乗り越えられるか? - Business Journal(6月10日)
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(「Thinkstock」より)
 政府は、4月17日、産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)を開き、首相主導で規制緩和や税制優遇に取り組む「国家戦略特区」を創設する方針を示し、6月5日には、成長戦略の素案を発表した。14日にも閣議決定する方針である。都市の国際競争力を高めて国内外のヒト・モノ・カネを呼び込み、経済再生の起爆剤として、アベノミクスの第三の矢である成長戦略の柱に据えるという。その国家戦略特区において、カジノの解禁も検討されることとなっている。カジノ解禁には、観光産業振興、地域活性化、雇用創出、税収増といった大きな効果があるとされる。 ●議連による議員立法から、内閣主導の閣法に「昇格」か?  カジノ解禁については、これまでは、国際観光産業振興議員連盟(IR議連、通称・カジノ議連)が盛んにロビー活動を行ってきたところであり、今秋に開かれる臨時国会で、カジノ法案の提出を目指してきた。それがここにきて、安倍首相を中心とした「国家戦略特区諮問会議」において、内閣主導で検討されることになったのである。これにより、カジノ解禁への流れがより一層加速すると予想される。  この動きについては、安倍首相がカジノ議連の最高顧問であることや、同首相が議長を務める産業競争力会議で、竹中平蔵氏を中心とする民間議員がいわゆる「アベノミクス戦略特区」の創設を提言し、カジノ・コンベンションの推進を強力に要請していることも強く影響している。 ●カジノ解禁の見込みはどれほどか?  カジノ解禁に反対している政党は、共産党と社民党のみである。事実、カジノ議連には、4月23日時点で、自民党、民主党、日本維新の会、公明党、みんなの党、生活の党、みどりの党から国会議員140名が参加している。安倍首相、麻生太郎副総理兼財務相、石原慎太郎日本維新の会共同代表及び小沢一郎生活の党代表が最高顧問に就任しているほか、かなりの有力政治家が同議連に結集している。地方自治体レベルでも、猪瀬直樹東京都知事、松井一郎大阪府知事、橋下徹大阪市長のいずれも、カジノ解禁を強く支持している。  安倍首相は、3月8日の衆議院予算委員会で、シンガポールやマカオのカジノ成功例に言及しつつ、「私自身は、メリットも十分にあるなと思う」と述べ、カジノ合法化に具体的に言及するまでに至っている。官庁の姿勢をみても、カジノ解禁にこれまで最も慎重であった警察庁を管理する古屋圭司国家公安委員長までもが、3月26日の記者会見において、一定の条件付きでカジノを合法化する特別立法の成立を容認する発言をした。さらに、5月20日には政府の観光立国推進ワーキングチームも、カジノを含む統合型リゾート(IR)について、IR推進法案の前提となる措置の検討を関係府省庁において進めると明記した中間とりまとめを発表した。  このような政治情勢からすると、日本でカジノが解禁される可能性はかなり高まっている。経済事象としても、カジノ関連銘柄の株価が大幅に上昇している。  しかし、カジノ解禁の具体的中身は国民の間でほとんど知られておらず、賛否をめぐる世論が熟しているとは言い難い。そこで、カジノをめぐる世界の趨勢と、日本における「賭博」の法的位置付けを明らかにした上で、現在検討されているカジノ解禁の具体的中身をご説明したい。 ●カジノをめぐる世界の趨勢  現在、120以上の国にカジノはあり、G8の中でカジノを合法化していないのは日本だけである。いずれの国のカジノでも、当然、マフィアなど反社会的勢力の関与は厳しく排除され、大きな社会的問題は発生していない。シンガポールのカジノが特に成功しており、多くの雇用創出とともに、莫大な税収効果をあげている。  日本では、「賭博」というと、とかく良くない暗いイメージがつきまとうが、世界的にみれば、カジノは、かつてのヨーロッパにおいて、王侯貴族などの社交場として認知され、その後は、温泉やオペラなどの天然資源や演劇・音楽文化と一体として発展してきた。また、アメリカでも、華やかなショービジネスと結びついて発展してきた。例えば、日本でも人気のあるサーカス、シルク・ドゥ・ソレイユはラスベガスで大成功したことによって、世界に名をはせるようになったし、セリーヌ・ディオンもカジノホテルと長期契約を結んでいる。  現在日本で検討されている構想も、カジノ単体で合法化するというものではなく、カジノを含めた統合型リゾート(Integrated Resort)(以下「IR」という)の法制化が検討されているものである。IRは、レジャー、ビジネス、エンターテイメントの包括的な施設をいい、カジノを含みつつ、民間による投融資を活性化し、民主導の地域再開発などを実現することを目的とする。したがって、カジノ解禁は、日本国内・国外に向けた新しい文化の創造・発信拠点ともなりうるものである。 ●日本における「賭博」の法的位置付け  では、なぜ、日本では、カジノが禁止されているのか。それは、刑法185条に「賭博罪」が規定されているからである。  賭博罪の処罰根拠について、昭和25年の古い最高裁判所の判例は、「勤労その他正当な原因に因るのでなく、単なる偶然の事情に因り財物の獲得を僥倖せんと相争うがごときは、国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害する」点に求めている。要するに、この判例は、賭博罪によって勤労の美徳を守るべきとしているのである。  しかし、人がどのようにして財産を獲得すべきか、また獲得した財産を何にどのように使うべきかについては、基本的には、個人の判断に委ねられるべきことであり、国家が刑罰権をもって労働についての道徳や倫理を強制するのは望ましくない。  また、賭博罪に該当する行為でも、国家が公認する目的で行われるときは、違法性が阻却され、処罰されない。その例として、地方財政調達が目的の宝くじ(当せん金付証票法)、馬の改良増殖・馬事思想の普及が目的の競馬(競馬法)、競輪(自転車競技法)、オートレース(小型自動車競走法)、競艇(モーターボート競走法)などがある。このように、現代においては、賭博を正当化する立法が既に多数存在するわけであるが、このこと自体が、賭博を「一般的に」禁止することの妥当性を疑わせる。少なくとも、「勤労の美徳を守る」ということだけでは賭博罪を合理的に説明できなくなっている。  ではなぜ、地方公共団体の行う賭博が違法とされないのか。それは、詐欺賭博が行われたり、収益が暴力団の資金源とされたり、脱税が行われたり、依存症患者の発生といった社会的弊害が放置されたりする危険性が少ないからであろう。このような、「賭博に関連する公正な社会秩序」こそが賭博罪が守るべき法益であると考える刑法学説が有力となってきており、筆者も支持するものである。  この見解に立った場合、カジノ法案が、公正な社会秩序を維持することが実際に可能な内容となっていれば、日本の法体系上、カジノ解禁は認められることになる。そのような観点で、現在検討されているカジノ解禁の具体的中身をチェックしてみよう。 ●これまでのカジノ法案検討の経緯  カジノ解禁をめぐる公的かつ具体的な議論は、2006年6月に、当時与党であった自民党が、「我が国におけるカジノ・エンターテイメント導入に向けての基本方針」と題する文書(以下「2006年自民党基本方針」という)をまとめたことがスタート地点である。その後、民主党政権下において、超党派の議連としてカジノ議連が発足し、2010年8月に、民主党の古賀一成議連会長(当時)が「国際競争力のある滞在型観光と地域経済の振興を実現するための特定複合観光施設区域整備法(案)」と題する会長私案(以下「2010年民主党会長私案」という)を発表した。さらに、2011年8月の議連総会において、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」と題する最終案(以下「2011年民主党推進法案」という)が発表され、議員立法として国会に提出される寸前までいった。  カジノ解禁の具体的中身を検討するにあたっては、上記の2006年自民党基本方針、2010年民主党会長私案及び2011年民主党推進法案の3つが重要である。2011年民主党推進法案は、そこで盛り込まれた各制度の実施には別途、個別の法律を成立させる必要がある体裁となっているものの、カジノ解禁の基本的な枠組みは2010年民主党会長私案とほぼ同様である。 ●カジノ法案の内容  カジノ法案について、2006年自民党基本方針と2010年民主党会長私案とを比較すると、枠組みは多くの点で共通している。すなわち、法律の趣旨・目的(国際競争力のある観光の実現、関連産業育成、雇用創出、地域振興・再生。収益で地方と国の財政に資する)、基本的視点(賭博行為が社会に与える危害の縮小化、青少年等に与える悪影響の排除、不正や悪の排除、闇の類似行為の撲滅、公共の秩序安全を図り、ゲーミングを健全かつ安全なエンターテイメントとして国民や観光客に提供)、許諾の対象(特定地域に固定して設置される複合的施設が許諾の対象。カジノは単純賭博遊興施設ではなく、複合的施設の一部としての位置付け)、対象施行数・地域の限定、段階的施行(当面、政策的ニーズ及び効果の高い地域を優先し、2~3箇所に限定して実施)、国の役割(国がカジノの許諾に関わる専権を保持)、国の機関(「カジノ管理機構」を設立し、運営規則の制定、施行に関与する民間主体に係る様々な許認可及び施行全般の監視・監督の任にあたらせるほか、中立的な立場から基本的な施策や方針に関わる調査・諮問を実施するために、「カジノ管理委員会」あるいは「カジノ諮問委員会」を設ける)といった項目については、両者でほとんど差異がない。  このようにカジノ法案は、自民党時代の2006年、民主党時代の2010年及び2011年と過去に3回まとめられているが、法律の趣旨・目的や基本的視点は、ほぼ共通している。 ●公営カジノか民営カジノか  2006年自民党基本方針と2010年民主党会長私案(及び2011年民主党推進法案)とで大きく異なる点は、カジノを公営とするか、民営とするかだけである(自民党時代が公営カジノ、民主党時代が民営カジノ)。これは今後のカジノ法案を考える上で重要事項である。  公営カジノは、賭博の原則的禁止を例外的に解除するのだから公的性格が強く求められるという法体系的な「原則論」には沿う。しかし、いかなる事業においてもリスクをとらない成功はありえず(現に、競馬、競輪といった現在の公営賭博は軒並み赤字となっている)、赤字による税金投入が危惧される。また、公務員の新たな天下り組織が発生してしまう可能性がある。よって、民間投資をより促進し、民間活力を最大限に活用するという観点からも、基本的には、民営カジノが望ましい。 ●今後注視すべきポイント  いずれにしても、これまで政党あるいは議連レベルで検討されてきたカジノ法案は、主要な論点は煮詰まりつつあり、基本的には、「賭博に関連する公正な社会秩序」をほぼ確保できる内容になっているといってよい。  今後、国民が注視すべきポイントは、(1)軒並み赤字となっている現在の公営賭博と同じ失敗を繰り返さず、税金が無駄に投入されない仕組みとなっているか、(2)公務員の新たな天下り組織が発生しない仕組みとなっているか、(3)当面は限定されると考えられる施行対象地域が公正に選定される仕組みとなっているか、(4)カジノ施設における不正行為の防止及び有害な影響の排除が確実に行われる仕組みとなっているか(具体的には、ゲームの公正性の確保、チップその他の金銭の代替物の適正な利用、反社会的勢力の徹底排除、犯罪発生の予防体制、風俗環境の保持、広告宣伝の規制、青少年の健全育成のために必要な措置、依存症対策、多重債務者の発生防止など)である。  経済再生のためには、弊害を除去する確実な担保措置を設けた上で、できることは全て実行すべきであるから、カジノ解禁についても、単なる「イメージ」にとらわれることなく、メリット及びデメリットに関する実質的な議論を進めることが重要である。 (文=山脇康嗣/弁護士) ■おすすめ記事 「サムスンは凋落する」と予言する韓国人 歴代大統領と財閥の蜜月とは? おぎやはぎ小木、AKB指原“ヤバイ”発言釈明「美味しいものでも“ヤバイ”って使う」 バスは結局24時間営業にならない!? 深夜いきなり料金が倍になる謎を東急バスに直撃! ドコモの「音声通話定額制」は内部のリーク? それとも日経“恒例”の飛ばし記事? 自動車の個人間売買、消費増税で普及か?注視する中古車業界、流通激変の可能性も