『ヤマト』も『まど☆マギ』もオタクの内輪受け!? 総集編アニメ映画急増の理由

【サイゾーpremium】より 3月無料購読キャンペーン開催!
1303_anime_1.jpg
オリジナルから新作エピソード映画、総集編映
画と、アニメ映画は花盛りだ。現在、数多くの
アニメ映画が劇場で公開されている。
──2012年の映画界を席巻したアニメ映画。映画不況にあって、アニメ映画は公開・製作本数が増加するなど、気を吐いている。しかし、中には客入りが見込めるのか疑問符のつくような作品もあり……。アニメ映画急増の内幕とは?  2012年の国内映画業界は、「アニメ映画が猛威を振るった一年」だったといえる。オリコンが昨年末に発表した12年の映画興行ランキングを見ると、邦画の歴代初動興収5位を記録したヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』や、興行収入40億円を突破した細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』など、上位10作品のうち4作品がアニメ映画だ。また、13年の正月映画として公開された『ONE PIECE FILM Z』は、公開1カ月で興行収入60億円を突破し、東映史上最大のヒット映画となった。こうしたアニメ映画の隆盛の背景として、日本国内における劇場公開本数の増加がある。興行収入、入場者数共に減少傾向で、映画業界全体が下火なのにもかかわらず、アニメ映画の製作本数は09年は50本から、10年は54本、11年57本、12年には64本と、着実に増加している。  これらの劇場用アニメ映画を大別すると、3つのパターンがある。最初から劇場公開用に製作される”オリジナル映画”、テレビ作品の続編・特別編として製作される”新作エピソード映画”、そして、テレビアニメを新規カットなどを交えつつ再編集、再構築した”総集編映画”だ。近年の例を見ると、先述の『おおかみこどもの雨と雪』のほか、『人狼 JIN-ROH』で高い評価を得た沖浦啓之監督の『ももへの手紙』などがオリジナル映画だ。次に新作エピソード映画では、『ONE PIECE』や『ドラえもん』『ポケットモンスター』シリーズなどの定番ものに加え、女子高生の青春を描く『映画けいおん!』といったアニメオタク向けの作品も人気を博している。そして、総集編映画としては、テレビ放送時から話題となったダークな魔法少女もの『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』や、腐女子にも人気のヒーローもの『劇場版TIGER & BUNNY -The Beginning-』などが公開された。  特に近年新しい動きとして目立つのは、アニメオタク向け作品の総集編映画の増加である。総集編映画に目を向けると、10年は0本、11年はわずか1本だったが、12年はイベント上映作品も含めると8本公開されるなど、漸増している。テレビ版も人気を博した『魔法少女まどか☆マギカ』や『TIGER&BUNNY』ならまだしも、現在公開中の『スタードライバーTHE MOVIE』のように、地上波放映時にヒットしたとは言えない作品までもが製作されている。なぜ、今アニメの総集編映画が増えているのか? その背景をひもといていこう。  京都精華大学マンガ学部准教授でアニメ史を研究している津堅信之氏は、「昔からアニメ映画の主流はテレビ放送が先行した作品であり、日本のアニメ映画はテレビ版の強い影響下にある」と指摘する。歴史を遡れば、戦前より製作されていた日本のアニメ映画だが、終戦後、東映動画(現・東映アニメーション)が『白蛇伝』など、子供向けアニメ映画を続々と製作。それらが「東映まんがまつり」などのラインナップに組み込まれ、冬休みなどの定番映画として普及していく。だが、東映動画としては、年一回のオリジナル映画のみではアニメ映画を商業的に成立させることは難しかった。 「そこで、テレビアニメの再編集版を劇場用アニメとして上映することが、窮余の策として取られました」(津堅氏)  その元祖が、63年に『わんわん忠臣蔵』と併映されたテレビアニメ『狼少年ケン』第2・3話だ。『劇場アニメ70年史』(徳間書店)によれば、この興行は予想以上のヒットを記録し、以降、劇場長編とテレビ作品の組み合わせというスタイルが、後の「東映まんがまつり」の原型になったという。翌64年には、テレビアニメのエピソードを再編集した映画『鉄腕アトム 宇宙の勇者』も上映された。そして、「テレビアニメから劇場映画へ」という流れを決定づける作品が公開される。 「こうした実績もあり、77年、事実上テレビ放映は打ち切りとなった『宇宙戦艦ヤマト』の総集編が、ファンの声にこたえる形で劇場公開されます。翌年には続編であるオリジナル作品『さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち』が、国産アニメ映画初の配給収入2ケタの21億円を達成。81年公開の劇場版『機動戦士ガンダム』3部作では、テレビ版の総集編という形をとりつつ新規作画を加えるなど、マニア向けの仕掛けが組み込まれるようになりました。この経緯を見てもわかる通り、個人で楽しむテレビアニメと、ファンが集まることでマニアックなネタでも盛り上がれる劇場版という役割分担ができたと考えられます」(同)  これまで見てきたように、総集編映画は、アニメ黎明期より存在していた。では、なぜ12年に総集編映画が急増したのか? 大きな流れとして、「テレビ局の深夜放送枠の価格が、00年代のアニメブームを受けて上昇したことも遠因となっているのでは」と語るのは、コンテンツビジネスに詳しいジャーナリスト・まつもとあつし氏だ。よく知られているように、アニメにおけるビジネスモデルの主流はパッケージビジネスだった。安い価格帯である深夜放送枠をアニメの製作委員会が買い取り、そこでアニメを放送することで世間に認知させた後、DVDなどのパッケージで資金を回収するモデルだ。しかし、競争激化による放送枠の価格上昇とパッケージ販売の冷え込みで、このビジネスモデルが危うくなっていると、まつもと氏は言う。あるアニメ関係者も「確かに、アニメ制作会社の人も、今のテレビ枠は(値段が)高いと愚痴っています。人気の放送枠で流す場合、パッケージのマージンを取られることもあるらしくて、困っていました」と話す。そこで、改めて劇場という伝統的なメディアに注目が集まることとなった。ネット配信といった、さまざまな課金スタイルと比較した時、現状最も効果的なマネタイズが図れるのが劇場アニメという形態だと、まつもと氏は分析する。  加えてまつもと氏は、近年、総集編アニメ映画の意味合いが変化していると語る。ツイッターなどのソーシャルメディアによって、総集編アニメ映画が「ファン同士で盛り上がるためのツール」としての側面を強化されつつあるというのだ。「パソコン文化との親和性が高いアニメファンは、以前から2ちゃんねるなどで”テレビアニメ実況”をして盛り上がっていました。その流れをツイッターといったリアルタイムメディアが加速させた。この盛り上がりを大勢で同時に肌で感じられる場として、劇場が再評価されているのでは」(まつもと氏)と、昨今の劇場アニメブームの理由を推測する。 ■アニメ業界の地殻変動でプロデューサーの露出増  ソーシャルメディアや劇場アニメの隆盛は、新しい動きを生み出しつつある。プロデューサーの前面化だ。 「今、有能なプロデューサーたちは、ネットの声を非常によく見ています。『TIGER&BUNNY』を手がけたサンライズの尾崎雅之プロデューサーは、ツイッターでのファンの声に目を通した上で、必要なアナウンスを行って、間接的にコミュニケーションを取っています。彼らは今、どういう作品が楽しまれているのかというところにも気を配り、仕掛け作りをしています」(まつもと氏)  かつては、今ならステルスマーケティングとして糾弾されかねないやり方で劇場版『宇宙戦艦ヤマト』を大ヒットさせた西崎義展氏や、宣伝のために声優ではなく人気タレントを作品に起用していると噂されるスタジオジブリの鈴木敏夫氏(本人は宣伝的意味合いでの起用を完全否定)などが、アニメプロデューサーとして脚光を浴びていた。そこへ前述の尾崎氏やアニプレックスの宣伝プロデューサー・高橋祐馬氏といった若い世代が、インタビューやイベント、はたまたソーシャルメディアを積極的に活用することで、コミュニケーションのハブとしての存在感を増してきている。例えば、尾崎氏は『TIGER&BUNNY』でテレビシリーズ最終話のオールナイト上映会を企画。この様子をライブビューイングで配信するという、ファンを巻き込んだイベントを成功させ、高橋氏はアニプレックス関連のイベントなどへ名物広報として出演している。プロデューサー自らが前に出ることでファンとの距離を縮めるなど、さまざまな試みを行って業界を盛り上げようとしているのだ。  このような流れの中で、総集編アニメはオタクたちに支持され、定着することとなった。しかし、次ページの山賀氏の発言からも、現状、急増する総集編映画は”オタク向け内輪受け”(=ファンイベント)という枠に収まっているようにも思われる。もちろん、アニメ市場を牽引してきたのが、オタクたちであることは間違いない。「オタクたちは『自分たちがブームを作り、業界を動かしている』といってもよいほどのエネルギーを自覚しているはずです。テレビアニメの劇場映画化という動きは、確実にオタクのエネルギーが、その前提として存在しています」と、前出の津堅氏も語る。しかし、日本映画界に元気がない今、従来の”内輪受け”の論理を突き破るような、そんなタブー破りのアニメ映画こそ、到来が待ち望まれているのではなかろうか? 前出のまつもと氏は「『TIGER&BUNNY』の試みは、アニメファンだけでなく、ドラマ愛好者にもファン層を広げるものだったと思います」と、評価する。とまれ、現場で試行錯誤を重ねるプロデューサーたちには、内輪向けのPRにとどまらず、より一層こうした期待にこたえてもらいたいものだ。 (文/富士峰 雄) 【今なら無料で読める!「サイゾーpremium」では他にもアニメ業界の裏側に迫った記事が満載です!】ガイナックス社長・山賀博之に直撃!! 総集編映画って儲かるの?セル画あげるからステマして!? アニメ映画と特典商法の意外な原点アイドル男性声優の極秘結婚は当たり前! 一般芸能化する声優が直面するゴシップ危機
1lineimg.jpg
「サイゾーpremium」とは?
「3月無料購読キャンペーン開催!」
雑誌「サイゾー」のほぼ全記事が、
月額525円読み放題! (バックナンバー含む)