「人を食う」はOKで「おっぱいポロリ」はNG? 世界の「R-18」をTokyo Otaku Modeに聞く

「人を食う」はOKで「おっぱいポロリ」はNG? 世界の「R-18」をTokyo Otaku Modeに聞くの画像1
「Tokyo Otaku Mode」ホームページより。米国のフィギュア週間ランキング(2017年10月)
 日本のオタク文化はクールジャパンとして世界で大人気」――言葉としては聞くが、実態はどうなのだろうか?  日本のオタクグッズを海外に販売する通販サイト「Tokyo Otaku Mode」を2012年から運営している、Tokyo Otaku Mode Inc.共同創業者・秋山卓哉氏、MDチーム・高橋裕氏に前編(http://www.cyzo.com/2017/10/post_34943.html)から話を聞いている。こちらの後編では、「海外のオタクイベントの様子」や「世界のR-18の尺度の違い」について伺っていく。 ■海外のオタクイベントは来場者の半数近くがコスプレをしている? ――前編ではフィギュアが一番人気、と伺いましたが、Tokyo Otaku Modeでは書籍も扱っているんですか? 高橋裕氏(以下、高橋) はい。マンガではなく画集ですと、日本語のままで販売もできますので。日本のイラストレーターの画集の場合、むしろ海外のコレクターにとっては、オリジナル版である日本語の方が「コレクションとして価値がある」というのはあると思いますね。 ――「オリジナルを所有したい」というオタク、マニア心は万国共通なんですね。欧米でもオタクイベントは行われていますよね。例えば日本の『コミックマーケット』などと比べ、どのような雰囲気なのでしょうか? 高橋 海外のイベントは日本のイベントより来場者の方がコスプレをしていることが多いな、と思いますね。日本だとコスプレをする人はコスプレをしに、買い物をする人は買い物に、と目的が分かれている感じがしますが、欧米だとそこがいっしょくたになっている印象はあります。なによりコスプレをしている人数が多いですね。来場者の半数くらいがコスプレをしているようにも見えます。 ――会場は東京ビッグサイトぐらいの広さなのでしょうか? 秋山卓哉氏(以下、秋山) 大型イベントはそのくらいの会場で行っていますね。有名どころとして、ロサンゼルスで開催される『アニメエキスポ』は、4日間で30~35万人が来場するといわれています。フランスの『ジャパンエキスポ』も規模は同じくらいです。そういった大型イベントではコミケ同様、大きな企業ブースがあったりもします。日本のメーカーさん、版元さんも見かけますよ。 ――コミケが3日間で50万人強(杉並区の全人口くらい)ですから、コミケほどではないにしろ、大した動員力ですね。イベント参加者の半数近くがコスプレをしている、というのは日本だとない感覚ですよね。コスプレがここまで広がっているのはなぜだと思いますか? 高橋 米国は日本よりずっとハロウィンの文化が根付いていますから、仮装への敷居が低いというのはあると思います。オタク系イベントに限らず、スターウオーズやマーベルの新作映画が公開されると、ダースベーダーなどのコスプレをした人が映画館でずらりと並んでいたりしますから。 ――「コスプレ」というと日本が先進国のように思えますが、考えてみれば「仮装」は、ここ数年でハロウィンが一部で定着しだした日本より、米国の方がはるかに先輩ですよね。米国のオタクイベントでは、どういった日本のアニメやマンガのキャラクターがコスプレされていますか? 秋山 ほんとうに時期、トレンドによりますね。何年か前の『ニューヨークコミコン』では『進撃の巨人』が多かったです。 ■「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、R-18か? ――Tokyo Otaku Modeでは扱わない商材はあるのでしょうか? 秋山 R-18は今のところ扱っていないですね。 ――なぜなのでしょうか? 秋山 性描写の規制は国によってルールが違いますし、国や地域によって宗教、文化的な背景や価値観に違いがあります。そのあたりを把握しないまま、相手国の文化的タブーに触れてしまえば国際問題にもなりかねません。そこまできめ細やかにみていくヒューマンリソースが今は社内にないので、そういったものに触れない範疇で扱っていますね。 ――日本の性表現はかなり過激とは言われていますよね。少女マンガでも掲載誌によってはセックスシーンがありますし。それに慣れてしまうと他国の「常識」が見えにくくなりますが、例えば他国のR-18事情はどんな感じなのでしょう? 秋山 例えば、シンガポールはヌードがNGです。 ――「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、小学生が読むような週刊少年マンガ誌にも掲載される、古典的表現の一つですが、これもNGなんでしょうか。 秋山 NGですね。 ――「セックスシーンじゃないからいい」とか、そういう“文脈”の話ではないんですね。おっぱいポロリはアウトだと。 秋山 はい。ですので、ある一国を対象にするというのでなく、グローバルに展開するという場合「性的な表現」はとても難しい問題なんです。他にも、例えばゲームでは、結構露出度の高いコスチュームを着ている女性キャラクターがよくいますよね。 ――ビキニの水着に少し装飾がついたようなコスチュームの女性キャラクターは、「あるある」ですよね。 秋山 はい。そういったキャラクターのフィギュアを販売する際に写真つきでメルマガで告知したところ、読者である米国の子供のお母さんから「こういう情報が来ると、親としては戸惑ってしまう」というご意見をいただいたこともありました。 ――米国のAmazonを見ると『進撃の巨人』『東京喰種』が人気です。人を食うのがOKなら、ビキニみたいな衣装のひとつやふたつ……、と思ってしまいそうになりますね。 秋山 あと、日本のアニメやマンガの女性キャラクターは、特に欧米の方には幼く見えるというのもありますね。 ――小児性愛に関するさまざまな規制については、日本がゆるいのか、米国が厳しいのかというのはありますが、歴然な「差」がありますよね。 秋山 はい。グローバルに展開するサービスでは、法律の違いもそうですが、宗教観や文化の違いなどにも敏感でないといけないと思います。 ■2020年は、日本が世界に注目してもらうラストチャンス? ――Tokyo Otaku Modeさんが今後広げていきたい事業はありますか? 秋山 イベントへの出展に加え、店舗など、直接、リアルにお客様と接点を持てる場を増やしていきたいですね。 ――2020年のオリンピックに向け、日本への注目は上がっていますね。 秋山 今後数十年を見ても、2020年ほど日本が世界から注目される機会はおそらくないでしょう。2020年に向けいかに世界中の人に日本は楽しいか、また、行ってみたいと思ってもらえるかが、2020年以降においてもとても大切だと思います。このチャンスを逃さないようにしたいですね。  当社が今まで培ってきたノウハウなどを活かし、新しく海外に向けて日本のオタクグッズを製造、販売したい、という会社の支援も行っています。 ――それは「競合他社の育成」になってしまうように思えますが……? 秋山 いえ、オタクグッズは本当に商材が多彩ですから。一緒に2020年に向けて盛り上げられればと思います。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) 「Tokyo Otaku Mode」ホームページ https://otakumode.com/

「人を食う」はOKで「おっぱいポロリ」はNG? 世界の「R-18」をTokyo Otaku Modeに聞く

「人を食う」はOKで「おっぱいポロリ」はNG? 世界の「R-18」をTokyo Otaku Modeに聞くの画像1
「Tokyo Otaku Mode」ホームページより。米国のフィギュア週間ランキング(2017年10月)
 日本のオタク文化はクールジャパンとして世界で大人気」――言葉としては聞くが、実態はどうなのだろうか?  日本のオタクグッズを海外に販売する通販サイト「Tokyo Otaku Mode」を2012年から運営している、Tokyo Otaku Mode Inc.共同創業者・秋山卓哉氏、MDチーム・高橋裕氏に前編(http://www.cyzo.com/2017/10/post_34943.html)から話を聞いている。こちらの後編では、「海外のオタクイベントの様子」や「世界のR-18の尺度の違い」について伺っていく。 ■海外のオタクイベントは来場者の半数近くがコスプレをしている? ――前編ではフィギュアが一番人気、と伺いましたが、Tokyo Otaku Modeでは書籍も扱っているんですか? 高橋裕氏(以下、高橋) はい。マンガではなく画集ですと、日本語のままで販売もできますので。日本のイラストレーターの画集の場合、むしろ海外のコレクターにとっては、オリジナル版である日本語の方が「コレクションとして価値がある」というのはあると思いますね。 ――「オリジナルを所有したい」というオタク、マニア心は万国共通なんですね。欧米でもオタクイベントは行われていますよね。例えば日本の『コミックマーケット』などと比べ、どのような雰囲気なのでしょうか? 高橋 海外のイベントは日本のイベントより来場者の方がコスプレをしていることが多いな、と思いますね。日本だとコスプレをする人はコスプレをしに、買い物をする人は買い物に、と目的が分かれている感じがしますが、欧米だとそこがいっしょくたになっている印象はあります。なによりコスプレをしている人数が多いですね。来場者の半数くらいがコスプレをしているようにも見えます。 ――会場は東京ビッグサイトぐらいの広さなのでしょうか? 秋山卓哉氏(以下、秋山) 大型イベントはそのくらいの会場で行っていますね。有名どころとして、ロサンゼルスで開催される『アニメエキスポ』は、4日間で30~35万人が来場するといわれています。フランスの『ジャパンエキスポ』も規模は同じくらいです。そういった大型イベントではコミケ同様、大きな企業ブースがあったりもします。日本のメーカーさん、版元さんも見かけますよ。 ――コミケが3日間で50万人強(杉並区の全人口くらい)ですから、コミケほどではないにしろ、大した動員力ですね。イベント参加者の半数近くがコスプレをしている、というのは日本だとない感覚ですよね。コスプレがここまで広がっているのはなぜだと思いますか? 高橋 米国は日本よりずっとハロウィンの文化が根付いていますから、仮装への敷居が低いというのはあると思います。オタク系イベントに限らず、スターウオーズやマーベルの新作映画が公開されると、ダースベーダーなどのコスプレをした人が映画館でずらりと並んでいたりしますから。 ――「コスプレ」というと日本が先進国のように思えますが、考えてみれば「仮装」は、ここ数年でハロウィンが一部で定着しだした日本より、米国の方がはるかに先輩ですよね。米国のオタクイベントでは、どういった日本のアニメやマンガのキャラクターがコスプレされていますか? 秋山 ほんとうに時期、トレンドによりますね。何年か前の『ニューヨークコミコン』では『進撃の巨人』が多かったです。 ■「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、R-18か? ――Tokyo Otaku Modeでは扱わない商材はあるのでしょうか? 秋山 R-18は今のところ扱っていないですね。 ――なぜなのでしょうか? 秋山 性描写の規制は国によってルールが違いますし、国や地域によって宗教、文化的な背景や価値観に違いがあります。そのあたりを把握しないまま、相手国の文化的タブーに触れてしまえば国際問題にもなりかねません。そこまできめ細やかにみていくヒューマンリソースが今は社内にないので、そういったものに触れない範疇で扱っていますね。 ――日本の性表現はかなり過激とは言われていますよね。少女マンガでも掲載誌によってはセックスシーンがありますし。それに慣れてしまうと他国の「常識」が見えにくくなりますが、例えば他国のR-18事情はどんな感じなのでしょう? 秋山 例えば、シンガポールはヌードがNGです。 ――「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ~ン」は、小学生が読むような週刊少年マンガ誌にも掲載される、古典的表現の一つですが、これもNGなんでしょうか。 秋山 NGですね。 ――「セックスシーンじゃないからいい」とか、そういう“文脈”の話ではないんですね。おっぱいポロリはアウトだと。 秋山 はい。ですので、ある一国を対象にするというのでなく、グローバルに展開するという場合「性的な表現」はとても難しい問題なんです。他にも、例えばゲームでは、結構露出度の高いコスチュームを着ている女性キャラクターがよくいますよね。 ――ビキニの水着に少し装飾がついたようなコスチュームの女性キャラクターは、「あるある」ですよね。 秋山 はい。そういったキャラクターのフィギュアを販売する際に写真つきでメルマガで告知したところ、読者である米国の子供のお母さんから「こういう情報が来ると、親としては戸惑ってしまう」というご意見をいただいたこともありました。 ――米国のAmazonを見ると『進撃の巨人』『東京喰種』が人気です。人を食うのがOKなら、ビキニみたいな衣装のひとつやふたつ……、と思ってしまいそうになりますね。 秋山 あと、日本のアニメやマンガの女性キャラクターは、特に欧米の方には幼く見えるというのもありますね。 ――小児性愛に関するさまざまな規制については、日本がゆるいのか、米国が厳しいのかというのはありますが、歴然な「差」がありますよね。 秋山 はい。グローバルに展開するサービスでは、法律の違いもそうですが、宗教観や文化の違いなどにも敏感でないといけないと思います。 ■2020年は、日本が世界に注目してもらうラストチャンス? ――Tokyo Otaku Modeさんが今後広げていきたい事業はありますか? 秋山 イベントへの出展に加え、店舗など、直接、リアルにお客様と接点を持てる場を増やしていきたいですね。 ――2020年のオリンピックに向け、日本への注目は上がっていますね。 秋山 今後数十年を見ても、2020年ほど日本が世界から注目される機会はおそらくないでしょう。2020年に向けいかに世界中の人に日本は楽しいか、また、行ってみたいと思ってもらえるかが、2020年以降においてもとても大切だと思います。このチャンスを逃さないようにしたいですね。  当社が今まで培ってきたノウハウなどを活かし、新しく海外に向けて日本のオタクグッズを製造、販売したい、という会社の支援も行っています。 ――それは「競合他社の育成」になってしまうように思えますが……? 秋山 いえ、オタクグッズは本当に商材が多彩ですから。一緒に2020年に向けて盛り上げられればと思います。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) 「Tokyo Otaku Mode」ホームページ https://otakumode.com/

世界130カ国にオタクグッズを配送! 世界のオタク事情をTokyo Otaku Modeに聞く

世界130カ国にオタクグッズを配送! 世界のオタク事情をTokyo Otaku Modeに聞くの画像1
「Tokyo Otaku Mode」ホームページより。米国でも人気な『ソードアート・オンライン』の商品の一部
「日本のオタク文化はクールジャパンとして世界で大人気」――言葉としては聞くが、実態はどうなのだろうか?  どの国の人が、どんな作品の、どんなグッズを購入しているのか? 日本のオタクグッズを海外に販売する通販サイト「Tokyo Otaku Mode」を2012年から運営している、Tokyo Otaku Mode Inc.共同創業者・秋山卓哉氏、MDチーム・高橋裕氏に話を聞いた。 ■130カ国、5大陸すべてにオタクグッズ販売実績あり ――Tokyo Otaku Modeでは、どの国に対してオタクグッズを販売しているのでしょうか? 秋山卓哉氏(以下、秋山) 配送はEMS(Express Mail Service:日本郵便が提供する国際郵便サービス)を利用しており、EMSが利用できる地域であればどこでも発送可能です。すでに130カ国、5大陸すべてに配送実績があります。 ――日本が承認している国が196カ国ですから、かなりの割合ですね。アジア圏、北米、フランスなどはオタク文化の人気が高い印象がありましたが、130カ国と聞くと、想像を超えて世界中なんですね。 秋山 「こんな国名初めて見た」という国の方にも配送したことがあります。例えば、カリブ海のマルティニークっていうフランス領の島とか。 ――マルティニーク、初めて聞きました。Tokyo Otaku Modeのホームページは英語ですが、130カ国、というと英語圏でない利用者も多いかと思います。 秋山 ECサイトは、今は基本的には英語だけですね。商品点数が何万件もあるので、全てを多言語対応にするのは社内のリソース的に難しくて。決済の部分など重要な部分から多言語化を進めています。中国向けには、中国のECモールに出店しており、そちらは全て中国語対応です。 ――確かに、お金周りのことについて利用者は母国語で把握したいですよね。商品はどのエリアで特に売れているのでしょうか? 秋山 割合でいくと、北米が圧倒的です。米国が一番ですね。 ――海外の人に販売をしていて、こんなこと日本人はしないな、と思ったことはありますか? 秋山 セールをはじめたときに、セール前に買われた方が「差額を返して」と連絡してきて、驚いたことがありますね。 ■日本のオタクグッズを自由に海外で販売できるというわけではない ――オタクグッズを海外に販売するにあたって、大変なことは何でしょうか? 秋山 販売のための調整ですね。メーカーさんがマンガやアニメのキャラクターをもとにしたグッズを作るときに、版元さんにこういう商品をつくりたい、と申請するのですが、そのときに「販売する地域」も合わせて申請するのが一般的です。  メーカーさんが国内展開しか考えていない場合は、契約を見直すことが必要です。こういった手続きにはとても時間がかかってしまうんですね。  また、「この地域向けにはすでにディストリビューター(販売代理店)がいるので、現地で仕入れてください」というケースも多くあります。単純に「日本で仕入れたものを世界で自由に売れる」というわけではないのです。 ――商品一つ一つにおいて、気が遠くなるような調整が必要になるんですね。そうなると、その「契約」がネックになり扱えない商品というのも多いのでしょうね。 秋山 はい。当社は渋谷の本社のほか、米国のオレゴンにもオフィスがあります。なぜ米国にもオフィスを作ったかというと、米国で販売権を持つ卸の会社さんから仕入れ、米国内で販売するのは問題ないためです。 ――日本のオタクグッズを販売する代理店が米国に存在する、ということは米国内でオタクグッズの普及は進んでいるとも言えます。一方で、それだけでは足りないから、通販を行うTokyo Otaku Modeさんへの注文があるのでしょうね。 秋山 はい。情報はネットにより世界中に瞬時に行き渡るようになりましたが、モノはまだまだ追いついていません。ですので、「ネットで情報は見たものの、購入できる場所がないので、Tokyo Otaku Modeで取り扱って欲しい」という問い合わせはよくいただきますね。それに、オタクグッズは商材の幅がとても広いですから。 ――ネットが普及する前の「情報すら分からずもどかしい」でなく、「分かっているのに手に入れることができない」という別のもどかしさが今はあるのですね。 ■「日常系」「キャラ推し」は米国では今一つ? 世界のオタク事情 ――北米圏が売上の中心と伺いましたが、北米のオタクと日本のオタクの好みに「ずれ」を感じることはありますか? 高橋裕氏(以下、高橋) 北米では日常系や、キャラクター推しの男性向けのタイトルは爆発的にはヒットしない印象ですね。文化的に好きなキャラクターに違いがあるように感じます。一方、中国、韓国などアジア各国はだいたい日本と流行る作品は似ています。 ――そうなると、北米圏で人気の作品はなんでしょうか? 秋山 『進撃の巨人』『東京喰種』『ソードアート・オンライン』は人気が高かったです。最近ですと『僕のヒーローアカデミア』ですね。 高橋 『僕のヒーローアカデミア』は北米人気が高いですね。マーベル(『スパイダーマン』などアメコミ作品を展開する米国の出版社)の話でも、いじめられっ子がヒーローになる、という“成り上がり”は定番のストーリーです。『僕のヒーローアカデミア』は米国の文化的にフィットするものがあったのだと思います。 ――冴えない主人公が成長していく物語は、日米ともに支持される定番なのですね。では、Tokyo Otaku Modeでの人気商品は何でしょうか? 高橋 フィギュアですね。売上個数で見るとぬいぐるみも結構売れているのですが、フィギュアは単価が高いですから。売上額でのランキングの上位はフィギュアが占めています。「フィギュアは世界で人気」というのは各社さんも分かっていますので、正規のルートでフィギュアを購入できる地域は広がっています。  ただ、フィギュアの場合すごくクオリティが低い偽物もあるので、当社を含め「本物を提供している」ことがひとつの価値になると思います。フィギュアは高いものでは2万円くらいするものもあります。そうなると、正規か分からないサイトで購入するのは怖いですよね。 ――買うからには正規品が欲しいですよね。利用者の性年代などはどうなっているでしょうか? 高橋 20代が一番多く、次が10代ですね。この2世代で60%ほどを占めます。男女比は、購入で見ると男性がちょっと多いくらいですね。 ――そう考えると、女性も結構多いのですね。 * * *  後編では引き続き秋山氏と高橋氏に「海外のオタクイベントの様子」や、「日本と海外のR-18の違い」などを伺っていく。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) 「Tokyo Otaku Mode」ホームページ https://otakumode.com/

「ウェブ再録」の同人誌は売れるのか? 実際に頒布してみた!

「ウェブ再録」の同人誌は売れるのか? 実際に頒布してみた!の画像1
 先にウェブで発表した作品を、後から紙の書籍の形で販売する「ウェブ再録」。同人誌に限らず商業出版でも見かけるが、そういった作品のAmazonレビューを見ると「タダで読めんじゃん。星一つ」など辛口なものも見かける。一方で「手元に形として残しておきたいから再録はうれしい」と言う声もある。そんな意見の割れる「ウェブ再録」に、ある同人作家(私)が初挑戦してみた。 ■二次創作は、「そのジャンルの第一作」に圧倒的に当たりが多い  私は2012年からはオンライン、15年からはオフライン(実際に紙の同人誌を発行する)でも同人活動を行っている。オフラインでは今までに4冊の同人誌を出しているが、これらはすべて書下ろしの「非ウェブ再録」だった。  そもそも、私自身ウェブ再録は好きな同人作家が出したものでも買わない。普段自分がやらないことを人に勧めてはいけないと思うが、それでも今回ウェブ再録に踏み切った理由は、「オンライン(pixiv)で発表してみたら思いのほか自分に大ヒットしたから」に尽きる。 「オンラインで発表してみたら思いのほか大ヒットしたから」ではない。「オンラインで発表してみたら思いのほか『自分に』大ヒットしたから」だ。私が行っているのは二次創作になる。今まで4冊紙の同人誌を出していて、「1冊目」と、「2~4冊」目がそれぞれ別の原作の二次創作になるが、今回の同人誌からはまたジャンルを変える。  二次創作をしている人には死ぬほどわかってもらえると思うが「そのジャンルの一冊目の二次創作の同人誌」というのは、自分が今まで書いたのを見ても、人の作品を読んだ時でも総じて当たりが多い。やはり処女作はパワーに満ちており、「このキャラクターはこうだと思うんですよ、僕ぁ!」という童貞の鼻息の荒さがたまらない。二次創作の場合ジャンルを変えるごとに「処女作(そのジャンルでは)」になるため、一人の同人作家が生涯に何冊も処女作を出せるという、処女なのにクソビッチというミラクルも起こるのだ。  私もジャンルを変えた現ジャンル一発目を書いてオンライン(pixiv)に上げてみたところ、これがいたく自分的に大ヒット、全米が泣いたのだ。しかし、数値は前ジャンルに比べるとpixivでの反響の数値は初動もその後の勢いも振るっていない。pixivの指標の一つ、ブックマーク数は前ジャンルの半分どころか、クオーター程度だ。それでも自分はこの話が好きだからウェブ再録したいと、ほとばしる童貞力で踏み切ることにした。    なお、私は「自分が買う側なら100%のウェブ再録は好きな同人作家でも、年収が3億あってもきっと買わない」ので、自分がこれなら買うレベルで修正と加筆は結構行った。自分的に大ヒット話の加筆修正は相当楽しかったのでお勧めしたい(私は書いているのが小説だから気楽に加筆修正できるのであり、マンガの人なら相当な労力を要するだろうが)。 ■同人やっていてよかったと思う瞬間~神からのブックマーク  ウェブ再録にあたり迷ったのが部数だ。私は今まで4冊の同人誌を出しており、1~3冊目は50部、4冊目は40部刷っている。晴れて2冊目が先日完売したため「50部を1年と少しで完売」が好調時の私のペースだ。ただしこれは「前のジャンルにおいて」であり、ジャンルが変わった今、その情報はさっぱりあてにならない。  pixivの投稿作品やブックマークなどの反響数から現ジャンルの同人人気は前ジャンルほどではないのは分かる。また、twitterでこんなこと呟けば炎上必至だが、「ジャンル内の同人作家としての自分の人気」も部数においては考慮すべきだろう。前ジャンルにいたころ、私のジャンル内でのpixivに投稿した作品のブックマークの集まり具合は「よい方」だった。しかし、現ジャンルでの集まり具合は「ふつう」ぐらいだ。  さらに、部数において考慮すべきは交流の有無だ。私は感想が欲しいくせにオンラインの同人活動はpixivのみで、twitterでの交流は一切していない引きこもり同人だ。理由は「twitterをやっている自分はイケていない」「顔も声も知らない人と交流すると後からヤバいことに気づくことがある」「そもそも自分が欲しいのは交流ではなく作品への感想だった」などが挙げられる。ということでフォロワーさんもおらず、「交流による需要」もない袖は振れない状態だ。  その上ウェブ再録だ。以上、目をこらしても明るい兆しは見えず、「爆死」という言葉が頭をよぎる中、印刷会社には30部で注文した。なお、大抵の印刷会社は20部、10部でも刷れるが、ここまで少部数だと価格は大して変わらない。  なお、「今後このジャンルでどれだけ活動していくか」も部数を決めるにあたって大きな要因だろう。またこのジャンルでイベントに出る予定があるなら、ある程度部数はあった方がいい。しかし現ジャンルは今回の再録の加筆修正を書いたら超すっきりしてしまい、今後も続けていくかは正直微妙だ。そのわりに30部は強気ともいえるが、やっぱりこんないい話書いちゃった以上、10や20部では自分に申し訳が立たないと、結局毎度のパターンで刷ることにした。  この段落と次の段落は自慢になるので舌打ちしながら読むか、薄目で飛ばしていただければと思うが、印刷会社に注文を出したあとイベント用のお品書きを作り、いつもの通りpixivにアップしたところ、「同担で絵もうまければ話もうまい、超絶イケてる二次創作漫画を描く同人作家さん(以下、神)」からお品書きに対しブックマークをもらってしまったのだ。これは同人活動をしている人でないと伝わりにくい感動だと思うが、「庭から石油が噴き出て止まらない」くらいに捉えてもらえれば、おおむね合っている。なお、作品そのものをアップした時はその神からはブックマークはなかったのだ。  マイナージャンルなので、神は単にイベント合わせ(同人用語で、そのイベントに合わせて中的一緒にコスプレをしたり、同人誌を出すことを差す)で同担はおしなべてチェックしていただけかもしれないが、そんなことを確認したところで何になるというのだろう。「神も気に入ってんだ、アタイの話。やっぱりね、アタイも好きなんだ」と鼻の下を人差し指でこすればそれで十分だ。しかし神からブクマをもらった以上、発行部数は30部ではなく300部の間違いだったのではと思ったが、お品書きのトータルのブックマーク数は結局いつも通り一桁で、心の底から追加注文を出さなくてよかったと思い当日を迎えた。  神は通販派の可能性もあるし、私自身、人のお品書きをブクマしたものの買わずに終わるケースはある。よってイベント爆死の可能性はゼロではないものの、神からのブクマである種やりとげたなという思いを抱え、ビッグサイトに向かった。 ■「部数は読めない」&「ジャンルを変えたら前ジャンルは苦戦」  今回のイベントの頒布冊数は以下の通りになった。 【前提条件】 ・同人誌A~Eを制作。全て二次創作。「A」「B~D」「E(新刊)」は元の作品が異なる ・書いているのは漫画でなく小説 ・A~Cは50部、Dは40部、Eは30部刷る ・B~Eを同人誌の販社を通じ通販している(Aも以前はそうしていたが、委託期間が過ぎて今は販売していない。Eは手続き中で販売はまだ始まっていない) 【前回、2017年8月までの頒布冊数】 A 17冊 B 50冊(完売) C 37冊 D 21冊 合計 123冊/190冊 【2017年10月の頒布冊数】 A 17冊 B 50冊(完売) C 38冊(+1) D 22冊(+1) E 11冊(+11) 合計 136冊/220冊 ※実際は印刷会社が何部か注文した分以外の「余部」を渡してくれるが、端数が出るので入れないでカウントしている。  ウェブ再録の新刊(上記における「E」)は、今回のイベントで11冊を頒布できた。今年の春にその前の新刊「D」を初めて頒布したイベントでも頒布冊数は11冊と、蓋を開ければジャンルが変わっても同じだけの数を頒布できたのだ。  現ジャンルはそれまでのジャンルより同人人気は強くなく、ウェブ再録の元となったオンライン上の話のpixivのブックマーク数は前のジャンルの1/4程度なのにだ。今までこの連載では何回か、「完売はわわ(イケると思われる数より全然刷らず、イベント開始1時間程度で完売してしまい、震えるまでの喜びを隠しつつtwitter上でごめんなさい><とつぶやくこと)」をする人をディスってきた。分かっていてやっている不届きな輩には天の裁きが下るだろうという気持ちに変わりはないが、しみじみと部数は読めない。当日、イベント会場から通販の販社へ発送も行ったため手元にはほとんど新刊は残らず、新刊に関しては上々の結果となった。  しかし、ジャンルが変わると前ジャンルの既刊は例えイベントに参加しても、数は一気に動かなくなる。二次創作の同人イベントは「桃太郎は東1ホール」「金太郎は東2ホール」「白雪姫は西1ホール」(例)などジャンルごとに配置されており、私は今回現ジャンルの場所で出たため、なかなか前ジャンルの人には来てもらいにくいのだろう。  ここで問われるのが交流力であり、前のジャンルでイベント参加する人のスペースに自分の本を委託で置かせてもらっている人もいる。これができれば強いが、それに伴う諸々(人づきあい、しかも金銭の授受が発生)が伴う。そもそも私は非交流派なのに自分の本を頒布してほしいだけ人を頼ろうとするなんて、ムシが良すぎて自分の良心が頼む前に割腹自決を選んでしまうだろう。私は飽きっぽくジャンル熱がいつまで続くかわからないので、やはり部数は50部でなく30部でやっていくのがちょうどいいのだろう。  また、前の記事にも書いたが、私の同人活動の力水は読んでいただいた方からいただく感想だ。twitterをやらない分、とっつきにくさはあると思うので「私、感想乞食で~すっ!」とのPRは積極的に行っている。そのせいもあってかイベントでは暖かい感想をいくつか頂けることもできた。11時くらいに「まだ御本があってよかったです」とほっとした笑顔で言われたときは、同人作家冥利に尽きた。来ていただいた方とそんなお話を今回あれこれできたのも楽しかった。 ■同人活動は思いがけない世の中のニーズと、知らない自分の姿をあぶりだしてくれる  今回、ウェブ再録だろうが、そうでなかろうが初動は同じになった現実を受け、しみじみと、自分の当たり前(ウェブ再録は買わない)は人の当たり前と限らないと感じた。  私は以下はやらないが、すべてやっている人をわりとよく見かける。 ①加筆修正のないウェブ再録を出す/購入する ②自分が好きになったジャンル、キャラクターの同人誌は絨毯爆撃で買い占める ③自分で書いた作品を超絶自慢する  ①はすでに触れた。②はイベントでそうしている人をたまに見るが、私自身は好みの二次創作作家が書いたもののみ入手できればよく、そのキャラが出ていれば何でも欲しい!とは全くならない。むしろ、好きな二次創作作家が書いた話だから、あまり原作は知らない別ジャンルの同人誌を買ったこともある。  ③は、私自身もこの原稿で散々自作を持ち上げているので正確にはやっているのだが、ここで言いたいのはtwitterやpixivなどで自作を絶賛しちゃう行為のことだ。そんな人いるのかと思った人もいるかもしれないが、結構いるのだ。男性作家をイメージした人がいるかもしれないが、女性作家でも結構いる。  私は自作が最高に好きだが、pixivで投稿時に絶賛はしない。何も言わずに神作をそっと出すのが最強クールな振る舞いであり、私自身そういう神が好きでかくありたいと思うからだ。しかし、自作を臆面もなく絶賛しちゃうタイプの人はそうまでするだけあって上手い人もいるし、そういう同人作家はファンがつきやすい気がする。口数の少ない控えめな人より、自作をいけしゃあしゃあと語る「俺」な方がカリスマ性は宿りやすいだろう。あまりに堂々と自慢しているのを見ると、なんだこいつと思いつつジュンと来るのも否定できない。「な、なんであんないけ好かない奴のこと気になってんの、私」と、読者を少女漫画の主人公状態にさせる「抱いて力」が半端なく強いのだ。いわゆるボーイズラブ界隈においては「攻め(オス側)」の人材不足が叫ばれ久しいが、描いている側が総攻め様だったりするのだ。  しかし、私とて「神が自分以外の同担をおしなべてブクマしていたらガッカリするから見ないようにした」と先ほど白状しており、「俺だけ見てろよ」と壁ドンをするような“俺様ハート”の持ち主なのだ。しかも相手は神だというから我ながらオス臭がえげつない。自慢しい同人作家が苦手なのは同族嫌悪だったのだ。私も今知ったが、自分とて総攻め様要素があったようだ。  同人活動は自分でも知らなかった自分の一面をあぶりだしてくれる。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])

書店に並ぶ本の40%が「返品」されている! 数値から見る出版不況

書店に並ぶ本の40%が「返品」されている! 数値から見る出版不況の画像1
 書店に並ぶ本のうち約40%が「返品」されている――出版不況と言葉では聞くが、数で見ると改めて驚くものがある。思えば90年代にはよく聞いた『ミリオンセラー(100万部突破本)』という言葉も聞かなくなった。出版販促コンサルタントの山本豊氏に、前編に続き、移りゆく書店の姿について話を聞いた。 ■問屋が最強――「取次無双」な出版業界 ――出版業界は独特ですよね。出版社という本を作るメーカーがあり、書店という小売があり、取次という問屋がある。メーカー、小売、問屋という構造は他業種でも一緒ですが、出版業界は問屋である取次の権限がとても強いですよね。出版社が取次にそれはそれは気を使っているのを見聞きして、取次とはそんなに恐ろしいのかと思ったほどです。日本出版販売株式会社、株式会社トーハンが日本二大取次ですが、ここまで取次が強い背景には何があるのでしょう。 山本 取次は流通を抑えていますからね。例えば出版社が3000部取次に預けると、取次でこの書店には何冊、あの書店は売れるから何冊、と書店に卸す冊数を取次が決めていたんです。出版社にしてみても自力でやるより取次にお願いした方が、取次が長年の実績に基づいたルート、冊数で配本してくれますから。ですが、最近では出版社が書店から受注をして取次を経由して配本する方向へ変わってきています。  また、最近の傾向として取次が出版社から受け取る本の冊数が減っているというのはありますね。かつては3000部引き受けていたのが、今は2000部になるというような。取次からの受注が少ないと、出版社には在庫が残ることになります。 ――なぜ、取次が出版社から受け取る冊数は減っているのでしょうか? 山本 一番大きな理由は返品です。書店からの返品率は上がっており41%とも言われています。 ――書店にある本の半分弱が返品されているとなると、気が遠くなりますね。 山本 返送時の郵送コストは取次が負担しますから、取次にしてみたら返品率の上昇は死活問題です。 ■読書離れの実態を数字で追う~電車で見かけなくなった雑誌を読む人 ――出版不況は、読者側の読書離れもあるのでしょうか。 山本 実際あると思いますね。文化庁の平成25年の調査では1カ月に一冊も本を読まない人が47.5%でした。およそ10年前の平成14年度では37.6%でしたので、年々増えているんです。 ――この文化庁の『国語に関する世論調査』は毎年行われていますが、平成25年度を最後に、1カ月に読んだ本の冊数を聞く質問そのものがなくなってしまっていますね。電子書籍に移っているのでしょうか? 山本 電子書籍というより、ゲームや動画など「本ではない娯楽」へ流出していると思いますね。特に雑誌は厳しいです。電車の中で紙の雑誌を読む人をずいぶん見かけなくなりました。マンガそのものは好調ですが、マンガをスマホで読む人が増え、紙のマンガ雑誌も発行部数を落としています。 ――聞けば聞くほど出版業界に明るい兆しを感じにくいですが、それでも明るいジャンルを上げるとしたら何でしょう? 山本 「児童書」は手堅いと思います。少子化なので、意外なように聞こえるかもしれませんが、子供の数が減り、親が一人の子供にかけられるお金はむしろ増えていますから。 ――確かに、親は子供の未来に対しては切実ですしね。前編で「萌え」が強いとありましたが、「児童書」「萌え」はどちらも「金を出そうと読者(もしくは読者の親)が切実に思える」点がずば抜けているのでしょうね。 山本 一方で、苦しいジャンルはマニュアル系の書籍でしょう。 ――特にIT系だと内容がすぐ陳腐化してしまいますし、ネットでいくらでも丁寧に解説したサイトが今はありますからね。 ■「ウェブ発ベストセラー」はあれど、「電子書籍発ベストセラー」はない ――今は電子書籍のプラットフォームが整って、誰でも電子書籍を発表できるようになりましたよね。こういった電子書籍の状況はどうでしょうか? 山本 電子書籍(※ここでは、紙の媒体で先に出た書籍が電子化したものでなく、電子のみで出版されているもの)は売れていませんね。100冊売れればいい方とも聞きます。そもそも、「大人気電子書籍、(紙の)書籍化!」という話はあまり聞きませんよね。 ――確かに、「人気ウェブサイトのコラム、(紙の)書籍化!」は聞きますけど、「人気電子書籍、(紙の)書籍化!」は聞かないですね。 山本 もともと紙媒体でヒットしたマンガの電子化作品などは伸びていますが、これも、紙の書籍の大幅減少分を補うほどではありません。出版業界は1996年には2兆6千億の市場規模がありましたが、15年には1兆5千億まで下がっているんです。 ――驚きの下がり具合です。書店が減るわけですね。 山本 なかなかベストセラーは出ていないですよね。ビジネス書において最近のミリオンセラー(100万部突破)は『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)くらいですね。 ――考えてみれば本も音楽も、ネットの一般普及が進む前の90年代は「ミリオンセラー」が結構頻繁に出ていましたよね。 山本 そうですね。出版点数自体は増えていますから、何を読んでいいのかわからない、という人も増えているはずです。他の娯楽により読書離れが進み、また、出版点数が増え選択肢が増す中で、ベストセラーは以前より出しにくくなっているとは思いますね。 ――ありがとうございました。 * * *  私自身、著者として本を出している。一冊目は14年に出したので、書店での取り扱いはかなり少なくなってしまっている。よって、いつでも自著を販売してくれるAmazonにはとても感謝している。しかし、Amazonばかりが大きくなる状況には危機感や違和感も覚える。さらに、宅配便の再配達問題に関わる取材をして配送業者の厳しい状況を知り、私は都市部に住んでいて、小さな子供がいるなど買い物に苦労するような事情もないのだから、そもそも通販自体をあまり使わないようにしようと個人的には思っている。なかなか難しくはあるが。  そのため利用しているのが「e-hon」という、オンラインで本を注文し、それを指定した書店で受け取れるサービスだ(書店の売り上げになる)。正直、Amazonで買うよりも手間だ。しかし「あの書店つぶれちゃったんだ、残念」などと、数年間買い物しなかったであろう書店の閉店をつぶれてから惜しむ人を見るとカッコ悪いと思うので、できる範囲で続けていきたい。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) ■山本豊氏 出版販促サポートサイト 出版SPプラス:http://booksales.jp

書店に並ぶ本の40%が「返品」されている! 数値から見る出版不況

書店に並ぶ本の40%が「返品」されている! 数値から見る出版不況の画像1
 書店に並ぶ本のうち約40%が「返品」されている――出版不況と言葉では聞くが、数で見ると改めて驚くものがある。思えば90年代にはよく聞いた『ミリオンセラー(100万部突破本)』という言葉も聞かなくなった。出版販促コンサルタントの山本豊氏に、前編に続き、移りゆく書店の姿について話を聞いた。 ■問屋が最強――「取次無双」な出版業界 ――出版業界は独特ですよね。出版社という本を作るメーカーがあり、書店という小売があり、取次という問屋がある。メーカー、小売、問屋という構造は他業種でも一緒ですが、出版業界は問屋である取次の権限がとても強いですよね。出版社が取次にそれはそれは気を使っているのを見聞きして、取次とはそんなに恐ろしいのかと思ったほどです。日本出版販売株式会社、株式会社トーハンが日本二大取次ですが、ここまで取次が強い背景には何があるのでしょう。 山本 取次は流通を抑えていますからね。例えば出版社が3000部取次に預けると、取次でこの書店には何冊、あの書店は売れるから何冊、と書店に卸す冊数を取次が決めていたんです。出版社にしてみても自力でやるより取次にお願いした方が、取次が長年の実績に基づいたルート、冊数で配本してくれますから。ですが、最近では出版社が書店から受注をして取次を経由して配本する方向へ変わってきています。  また、最近の傾向として取次が出版社から受け取る本の冊数が減っているというのはありますね。かつては3000部引き受けていたのが、今は2000部になるというような。取次からの受注が少ないと、出版社には在庫が残ることになります。 ――なぜ、取次が出版社から受け取る冊数は減っているのでしょうか? 山本 一番大きな理由は返品です。書店からの返品率は上がっており41%とも言われています。 ――書店にある本の半分弱が返品されているとなると、気が遠くなりますね。 山本 返送時の郵送コストは取次が負担しますから、取次にしてみたら返品率の上昇は死活問題です。 ■読書離れの実態を数字で追う~電車で見かけなくなった雑誌を読む人 ――出版不況は、読者側の読書離れもあるのでしょうか。 山本 実際あると思いますね。文化庁の平成25年の調査では1カ月に一冊も本を読まない人が47.5%でした。およそ10年前の平成14年度では37.6%でしたので、年々増えているんです。 ――この文化庁の『国語に関する世論調査』は毎年行われていますが、平成25年度を最後に、1カ月に読んだ本の冊数を聞く質問そのものがなくなってしまっていますね。電子書籍に移っているのでしょうか? 山本 電子書籍というより、ゲームや動画など「本ではない娯楽」へ流出していると思いますね。特に雑誌は厳しいです。電車の中で紙の雑誌を読む人をずいぶん見かけなくなりました。マンガそのものは好調ですが、マンガをスマホで読む人が増え、紙のマンガ雑誌も発行部数を落としています。 ――聞けば聞くほど出版業界に明るい兆しを感じにくいですが、それでも明るいジャンルを上げるとしたら何でしょう? 山本 「児童書」は手堅いと思います。少子化なので、意外なように聞こえるかもしれませんが、子供の数が減り、親が一人の子供にかけられるお金はむしろ増えていますから。 ――確かに、親は子供の未来に対しては切実ですしね。前編で「萌え」が強いとありましたが、「児童書」「萌え」はどちらも「金を出そうと読者(もしくは読者の親)が切実に思える」点がずば抜けているのでしょうね。 山本 一方で、苦しいジャンルはマニュアル系の書籍でしょう。 ――特にIT系だと内容がすぐ陳腐化してしまいますし、ネットでいくらでも丁寧に解説したサイトが今はありますからね。 ■「ウェブ発ベストセラー」はあれど、「電子書籍発ベストセラー」はない ――今は電子書籍のプラットフォームが整って、誰でも電子書籍を発表できるようになりましたよね。こういった電子書籍の状況はどうでしょうか? 山本 電子書籍(※ここでは、紙の媒体で先に出た書籍が電子化したものでなく、電子のみで出版されているもの)は売れていませんね。100冊売れればいい方とも聞きます。そもそも、「大人気電子書籍、(紙の)書籍化!」という話はあまり聞きませんよね。 ――確かに、「人気ウェブサイトのコラム、(紙の)書籍化!」は聞きますけど、「人気電子書籍、(紙の)書籍化!」は聞かないですね。 山本 もともと紙媒体でヒットしたマンガの電子化作品などは伸びていますが、これも、紙の書籍の大幅減少分を補うほどではありません。出版業界は1996年には2兆6千億の市場規模がありましたが、15年には1兆5千億まで下がっているんです。 ――驚きの下がり具合です。書店が減るわけですね。 山本 なかなかベストセラーは出ていないですよね。ビジネス書において最近のミリオンセラー(100万部突破)は『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)くらいですね。 ――考えてみれば本も音楽も、ネットの一般普及が進む前の90年代は「ミリオンセラー」が結構頻繁に出ていましたよね。 山本 そうですね。出版点数自体は増えていますから、何を読んでいいのかわからない、という人も増えているはずです。他の娯楽により読書離れが進み、また、出版点数が増え選択肢が増す中で、ベストセラーは以前より出しにくくなっているとは思いますね。 ――ありがとうございました。 * * *  私自身、著者として本を出している。一冊目は14年に出したので、書店での取り扱いはかなり少なくなってしまっている。よって、いつでも自著を販売してくれるAmazonにはとても感謝している。しかし、Amazonばかりが大きくなる状況には危機感や違和感も覚える。さらに、宅配便の再配達問題に関わる取材をして配送業者の厳しい状況を知り、私は都市部に住んでいて、小さな子供がいるなど買い物に苦労するような事情もないのだから、そもそも通販自体をあまり使わないようにしようと個人的には思っている。なかなか難しくはあるが。  そのため利用しているのが「e-hon」という、オンラインで本を注文し、それを指定した書店で受け取れるサービスだ(書店の売り上げになる)。正直、Amazonで買うよりも手間だ。しかし「あの書店つぶれちゃったんだ、残念」などと、数年間買い物しなかったであろう書店の閉店をつぶれてから惜しむ人を見るとカッコ悪いと思うので、できる範囲で続けていきたい。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) ■山本豊氏 出版販促サポートサイト 出版SPプラス:http://booksales.jp

書店が6000店も減少している! 懐かしの「ロードサイド書店」をつぶしたのはAmazonか? 

書店が6000店も減少している! 懐かしの「ロードサイド書店」をつぶしたのはAmazonか? の画像1
 2000年には2万店以上あった書店が16年には1万4000店まで減っている――近所の町の書店の閉店などを目にし「書店が前よりも減っている感覚」は多くの人にあるだろう。しかし、こうして数で見ると驚くものがある。そしてこれはいわゆる町の本屋さんだけでなく、紀伊國屋書店新宿南店など、都心の大型書店も含まれているのだ。その要因の一つに当然あるのはAmazonだろう。出版販促コンサルタントの山本豊氏に、移りゆく書店の姿について話を聞いた。 ■2000年時点では、Amazonはまったく脅威だと思われていなかった。 ――00年には2万店以上あった書店が16年には1万4000店まで減っている、というのは衝撃ですね。 山本豊氏(以下、山本) そうですね、後継者不足もありますが、Amazonの影響も大きいですね。 ――Amazonは00年に日本でのサービスを開始し、今や書籍に限らずEC市場を牽引する存在になりましたが、サービス開始時点の段階で、Amazonは書店にどう認識されていたのでしょうか? 山本 Amazonは赤字覚悟で本の送料無料を続けていました。当初は出版社も書店も、このやり方ではもたないと見ていましたね。また、Amazonは外資ですから、出版社にしろ書店にしろ「敵対」とまではいかずとも、「自分たちの土壌に土足で……」のような雰囲気はありましたね。  ただ、その後Amazonが拡大を続けたのはご存知の通りです。書店にとってAmazonはライバルですが、出版社にとってAmazonは販路を広げてくれる存在でもあります。ですが、出版社にしてみればそれまでずっと本を販売してくれた書店への恩義も当然あります。  なので、出版社は表立ってAmazonと何かをすることはせず「書店さんの味方ですよ」というスタンスを取っていました。ですが、そのスタンスも最近そうとも言えなくなってきていますね。 ――書店さんを大事にしていますよ、という出版社の建前もいよいよ崩れつつあるんですね。 ■「Amazonランキング1位」は操作されている? ――山本さんから見て、Amazonのいい点はどこにあると思いますか? 山本 利用者にしてみればいいサービスですよね。品切れはなく、届くのも早いですし。マーケットプレイスでの古本の販売も充実していますよね。 ――マーケットプレイスで、1円で販売されている本はどうやって利益を確保しているのでしょうか。 山本 あちらは送料が一律で257円ですよね。安い配送サービスを利用し、その差額を得ているのでしょう。ただ、当然Amazonも手数料を取るでしょうから、1円本の利益は相当薄いでしょうね。 ――Amazonは本別に売り上げのランキングがついていますが、1位を取ると「ベストセラー1位」のタグが付きます。そのタグやランキング上位の実績欲しさに著者が本を買い占め、ランキングを操作することもあるとも聞きますが……。 山本 一人の方が100冊買っても1カウントにしかならないようですね。「操作」するなら相当大掛かりにやらないといけないでしょう。 ――この「ベストセラー1位」は効力のあるものなのでしょうか? 山本 かつては効力があったと思いますが、今はさほど、という感じですね。内情をわかっている消費者も増えてきましたから。 ■90年代の日本の郊外の風景「ロードサイド書店」は絶滅する? ――書店は上場企業もありますが、最新年度の決算を見ると文教堂が赤字、三洋堂も前年よりも営業利益を落としています。 山本 三洋堂さんは愛知に本社のある書店さんで、いわゆる「ロードサイド書店」の走りですね。 ――東京など車なしでも生活できる都市圏の人にはピンとこないかもしれませんが、私は地方の郊外出身なので「ロードサイド書店」にはグッとくるものがあります。90年代くらいから、地方の郊外にはロードサイドに大型の書店が増えましたね。ネットも普及していなかった時代に、地方でも「文化」を感じる空間でした。 山本 ロードサイド書店は減ってきてしまいましたね。文教堂さんもかつては神奈川近郊でロードサイド店を多く展開していましたが、今は「アニメガ」という店舗形態に力を入れています。アニメガではアニメや関連グッズに注力しており、場所もロードサイドではなく、駅チカだったり、駅ビルのテナントに入っていたりと、路線転換しています。 ――出版不況でも、信者を抱える「萌え」は強いのですね。ロードサイド書店を駆逐したのはAmazonなのでしょうか? 山本 Amazonも当然ありますが、昨今増えたワンストップモールの影響もあるかと思います。それこそイオンのような、一店舗だけですべての買い物が完結するような超大型ショッピングモールの存在ですね。そういった店舗には大型書店も入っていますので。 ――書店という切り口だけで見ても、この20年で随分流通の姿は変わっているのですね。 * * *  なお、Amazonは「法人税を日本に払っていない疑惑」がある。Amazonの16年における日本事業の売上高は1兆1660億(1ドル108円で算出)になる。ちなみに日本経済新聞社のサイトのランキングで調べると、ユニクロのファストリテーリングの16年の売上高は1兆7778億円になり、これは全上場企業中73位になる。  ユニクロを小さくしたくらいの超大企業が日本に法人税を納めていないのは問題だ。しかしAmazonは、そもそも米国にも売上規模の割には法人税をさほど払っていない。Amazonの営業利益率は、16年は3%、15年は2%、14年は0.2%だ。ちなみに楽天の営業利益率は16年は9.9%、15年は13.2%、14年は17.2%になる。Amazonの投資家向け資料を見ると、「短期的な利益よりも中長期的なマーケットでの主導権をつかむための投資を続ける」といった趣旨の記載があり、利益は、徹底的にさらなる拡大のための投資に回す方針なのだ。  利用者にしてみればAmazonは確かに便利なサービスだが、宅配業者の再配達問題などAmazonと利用者「以外」の関係者の疲弊は大きいし、街の書店は6000店が消えて風景も変わった。最後はAmazon以外、草一本も生えてないのかもしれない。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) ■山本豊氏 出版販促サポートサイト 出版SPプラス:http://booksales.jp

書店が6000店も減少している! 懐かしの「ロードサイド書店」をつぶしたのはAmazonか? 

書店が6000店も減少している! 懐かしの「ロードサイド書店」をつぶしたのはAmazonか? の画像1
 2000年には2万店以上あった書店が16年には1万4000店まで減っている――近所の町の書店の閉店などを目にし「書店が前よりも減っている感覚」は多くの人にあるだろう。しかし、こうして数で見ると驚くものがある。そしてこれはいわゆる町の本屋さんだけでなく、紀伊國屋書店新宿南店など、都心の大型書店も含まれているのだ。その要因の一つに当然あるのはAmazonだろう。出版販促コンサルタントの山本豊氏に、移りゆく書店の姿について話を聞いた。 ■2000年時点では、Amazonはまったく脅威だと思われていなかった。 ――00年には2万店以上あった書店が16年には1万4000店まで減っている、というのは衝撃ですね。 山本豊氏(以下、山本) そうですね、後継者不足もありますが、Amazonの影響も大きいですね。 ――Amazonは00年に日本でのサービスを開始し、今や書籍に限らずEC市場を牽引する存在になりましたが、サービス開始時点の段階で、Amazonは書店にどう認識されていたのでしょうか? 山本 Amazonは赤字覚悟で本の送料無料を続けていました。当初は出版社も書店も、このやり方ではもたないと見ていましたね。また、Amazonは外資ですから、出版社にしろ書店にしろ「敵対」とまではいかずとも、「自分たちの土壌に土足で……」のような雰囲気はありましたね。  ただ、その後Amazonが拡大を続けたのはご存知の通りです。書店にとってAmazonはライバルですが、出版社にとってAmazonは販路を広げてくれる存在でもあります。ですが、出版社にしてみればそれまでずっと本を販売してくれた書店への恩義も当然あります。  なので、出版社は表立ってAmazonと何かをすることはせず「書店さんの味方ですよ」というスタンスを取っていました。ですが、そのスタンスも最近そうとも言えなくなってきていますね。 ――書店さんを大事にしていますよ、という出版社の建前もいよいよ崩れつつあるんですね。 ■「Amazonランキング1位」は操作されている? ――山本さんから見て、Amazonのいい点はどこにあると思いますか? 山本 利用者にしてみればいいサービスですよね。品切れはなく、届くのも早いですし。マーケットプレイスでの古本の販売も充実していますよね。 ――マーケットプレイスで、1円で販売されている本はどうやって利益を確保しているのでしょうか。 山本 あちらは送料が一律で257円ですよね。安い配送サービスを利用し、その差額を得ているのでしょう。ただ、当然Amazonも手数料を取るでしょうから、1円本の利益は相当薄いでしょうね。 ――Amazonは本別に売り上げのランキングがついていますが、1位を取ると「ベストセラー1位」のタグが付きます。そのタグやランキング上位の実績欲しさに著者が本を買い占め、ランキングを操作することもあるとも聞きますが……。 山本 一人の方が100冊買っても1カウントにしかならないようですね。「操作」するなら相当大掛かりにやらないといけないでしょう。 ――この「ベストセラー1位」は効力のあるものなのでしょうか? 山本 かつては効力があったと思いますが、今はさほど、という感じですね。内情をわかっている消費者も増えてきましたから。 ■90年代の日本の郊外の風景「ロードサイド書店」は絶滅する? ――書店は上場企業もありますが、最新年度の決算を見ると文教堂が赤字、三洋堂も前年よりも営業利益を落としています。 山本 三洋堂さんは愛知に本社のある書店さんで、いわゆる「ロードサイド書店」の走りですね。 ――東京など車なしでも生活できる都市圏の人にはピンとこないかもしれませんが、私は地方の郊外出身なので「ロードサイド書店」にはグッとくるものがあります。90年代くらいから、地方の郊外にはロードサイドに大型の書店が増えましたね。ネットも普及していなかった時代に、地方でも「文化」を感じる空間でした。 山本 ロードサイド書店は減ってきてしまいましたね。文教堂さんもかつては神奈川近郊でロードサイド店を多く展開していましたが、今は「アニメガ」という店舗形態に力を入れています。アニメガではアニメや関連グッズに注力しており、場所もロードサイドではなく、駅チカだったり、駅ビルのテナントに入っていたりと、路線転換しています。 ――出版不況でも、信者を抱える「萌え」は強いのですね。ロードサイド書店を駆逐したのはAmazonなのでしょうか? 山本 Amazonも当然ありますが、昨今増えたワンストップモールの影響もあるかと思います。それこそイオンのような、一店舗だけですべての買い物が完結するような超大型ショッピングモールの存在ですね。そういった店舗には大型書店も入っていますので。 ――書店という切り口だけで見ても、この20年で随分流通の姿は変わっているのですね。 * * *  なお、Amazonは「法人税を日本に払っていない疑惑」がある。Amazonの16年における日本事業の売上高は1兆1660億(1ドル108円で算出)になる。ちなみに日本経済新聞社のサイトのランキングで調べると、ユニクロのファストリテーリングの16年の売上高は1兆7778億円になり、これは全上場企業中73位になる。  ユニクロを小さくしたくらいの超大企業が日本に法人税を納めていないのは問題だ。しかしAmazonは、そもそも米国にも売上規模の割には法人税をさほど払っていない。Amazonの営業利益率は、16年は3%、15年は2%、14年は0.2%だ。ちなみに楽天の営業利益率は16年は9.9%、15年は13.2%、14年は17.2%になる。Amazonの投資家向け資料を見ると、「短期的な利益よりも中長期的なマーケットでの主導権をつかむための投資を続ける」といった趣旨の記載があり、利益は、徹底的にさらなる拡大のための投資に回す方針なのだ。  利用者にしてみればAmazonは確かに便利なサービスだが、宅配業者の再配達問題などAmazonと利用者「以外」の関係者の疲弊は大きいし、街の書店は6000店が消えて風景も変わった。最後はAmazon以外、草一本も生えてないのかもしれない。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/]) ■山本豊氏 出版販促サポートサイト 出版SPプラス:http://booksales.jp

コミュ障だって大丈夫! Twitter抜きで同人誌の感想をもらう方法

コミュ障だって大丈夫! Twitter抜きで同人誌の感想をもらう方法の画像1
 コミケの叶姉妹のようにファビュラスな行列を作れる同人サークルなどまれで、私も含めほとんどの同人サークルは行列とは無縁だ。しかし、「50人が無言で買う」場合と「買うのは5人だが全員熱い感想をくれる」なら後者の方がいいと私は思うし、そう思う同人作家は少なくないだろう。そもそも金がモチベーションになるほど稼げる同人作家など全体の1%未満であり、たいていの同人作家のモチベーションは読者からの感想だ。ここでは同人作家の力水であり生命線でもある感想獲得のためにしたことと、その成果を数値も含めお伝えしたい。 ■「ツイ廃」はコミュ障どころか「包容力がある」と履歴書に書いていい  現代の同人活動には欠かせないツールはTwitterだ。同じ漫画やアニメのキャラクターが好きな「同担」のつぶやきを見るのは楽しいし、手軽にコミュニケーションができるので感想が欲しいならば本来Twitterは必携のツールだ。しかし私はTwitterをほぼしておらず、自分のペンネームでアカウントを持っていない。  それはなぜか。Twitterはストレスフルだからだ。私とて「同担」の語らいを見たいしあわよくばコミュニケーションがしたい。しかし他人はコントロールできない。同担の「もうほんと〇〇さん(自分以外の同人作家)の書く二次創作って神」とか、同担が他の二次創作作家の話を絶賛しているのを見ると妬ましいやら悔しいやらでものすごく暗い気持ちになるのだ。なお、私はそんなことはしないが「〇〇さんの話が理想!」的なつぶやきに気分を害した別の人が当てつけのような発言をすることもたまにあり、本来楽しみたくて始めたはずのTwitterが地獄絵図になるのはよくあることだ。  Twitterへの依存が強い人が自嘲的にツイ廃(ツイッター廃人)と自称することがあるが、こんな可燃性のあるSNSを長時間使える人は履歴書の長所に「包容力がある」と書いていいレベルだと思う。  そもそも、リアル世界でのコミュニケーション力が「さほど」程度しかない人間がTwitterをしたところでそのコミュニケーション能力は絶対に「さほど」止まりだ。道具は使う人間のレベル以上にはなれない。  また、リアルにしろネットにしろ、コミュニケーション能力が高く生活が充実しているように端から見える人は、人が好きな人が多い。人とつながることのデメリットよりもメリットを大切にできて、さらにそのふるまいに無理をしている感がない「大人ないい人」なのだ。そんな人、私だって友達になりたい。  私は人とつながることの面倒くささや鬱陶しさに着目しクローズアップするタイプだ。ならば「Twitterで同人イベントに参加した際、フォロワーさんから頂いた差し入れのお菓子の山の写真をアップして周囲をうらやま死させたい」という野望を持ってはいけないのだ。スタート地点からすさまじい矛盾が生じているものがうまくいくわけがない。  使いこなせないねたみからTwitterの悪口はいくら書いても尽きることはない(これでもだいぶ字数を削った)。Twitterを使わないのは2017年時点の同人活動において翼の折れたエンジェル状態だが、自分に合わないツールは使いたくない。かといって、悪口を言うだけで何もしないデモデモダッテ野郎が死ぬほど鬱陶しいのは言うまでもないことだ。そうなると感想がほしい同人女がやれることとは何か。  答えは「Twitter以外はものすごく前のめり」だろう。  pixivに作品をアップロードするタイミングや、同人誌を出す都度、私は「感想が欲しい」と口を酸っぱくして言っている。正直最初は「感想乞食と思われたら、恥ずかしいよぉ///」とためらいもあった。しかしよく考えれば感想が欲しくてたまらない感想乞食なのは揺ぎ無い事実だと気づいてからは吹っ切れた。 ■5年目(うちオフライン2年)の二次創作同人作家がもらえた感想の数  そして、以下が私の同人生活5年で得た感想の数になる。 【5年目の二次創作同人作家(私)がもらった文字での感想】 ・書いた話の数…オンラインでは20話、オフラインでは4話。イベントは過去5回参加 ・同人活動をしている友人はいない ・書いているものは漫画でなく小説 ・オンラインはpixivのみ(Twitterや個人サイトでアカウントを持たない) ◆直筆の手紙…1件 ◆メール…2件 ◆pixivのメッセージ…2件 ◆pixivの作品下に表示されるコメント…5件 ◆自分で作った感想フォームから…3件 ◆Twitter(ペンネームでエゴサーチした)…9件  同人誌の頒布部数と同様に、感想がどれだけ来たかというのもタブー視される話題の一つだ。さらに、同人活動の内容は100人いれば100通りなので単純な比較は難しい。ただ、上の数字は自分では「多くはないが、善戦している」とは思う。なお、頂いた感想はすべて暖かいもので、何度も読み返している。  なお、上記の中では「感想フォーム」だけが名乗らずに感想を送ることができる。名乗るのはプレッシャーかもしれないと思い最近用意したが、手軽さからわりと匿名で送ってくれる方がいるのでおすすめだ。 ■pixivでブックマーク数が多い話ほど感想が来るとは限らない~トキの法則~  pixivの人気指標の一つにブックマークがある。ブラウザのブックマークと同じでしおりの機能になり閲覧者は作品についたブックマークの数を確認できる。しかし、「ブックマークを多くもらえる話」と「感想をもらえる話」は私の場合必ずしもイコールではない。書いたもの中には500人以上のブックマークがついている話もあるが、一番感想をもらいやすく感じるのは、50ブックマーク前後の話だ。  これは二次創作ならではの事情がある。私ははまるキャラクターが毎回マイナーな“脇役好き”だ。例えば『桃太郎』の二次創作なら、「桃太郎」「鬼」は眼中なし。「犬、猿、キジ」くらいのメジャーな脇役にはまることもあるが、「桃が流れる川のせせらぎ」クラスにぐっとくるときすらある。自分が脇役好きなので、脇役のスピンオフを書くことが二次創作だと思っていたが、たいていの二次創作において一番人気は主人公を書いた話だ。  やはり桃太郎の二次創作の場合、「川のせせらぎ萌え」で書くよりは「桃太郎萌え」で書いた方がブックマーク数は集まりやすいだろうし、私の場合も500ブックマークを超えた話は「脇役の中では比較的人気のあるキャラクターの話(『桃太郎』なら「犬」レベルでメジャーな脇役)」だった。  しかし「川のせせらぎ」クラスを主役にした超マイナーの二次創作になると、「これしかない需要」というブースターがかかる。カラスとトキなら、トキの方が「なんとかしないとこいつら絶滅する」と周囲は思うはずだ。マイナー萌えは、ブックマーク数はさほど伸びないが、感想をもらいやすいのではないかと自分の経験から思う。 ■感想を送って感想はいらないとすぐに言われた悲しい話をしたい  感想が欲しい人が一番してはいけないのは「もらった感想にガタガタと言うこと」だろう。ここで悲しい話をしたい。私自身感想がほしいので、感想用のフォームを用意している他の同人作家の話に感動した際は、何かの役に立てればと極力感想を送るようにしていた。  ある同人作家の感想フォームから感想を送って間もなく、Twitterでその同人作家が「感想とか、送ってこなくて大丈夫なので……」という趣旨をつぶやいていた。よかれと思ってしたことで公開処刑されてしまった悲しみの深さを想像してほしい。  星条旗を前に誓えるが、感想を送るにあたりウザがられる以下のことはしていない。 ◆感想じゃなく単なる自分語りや日記 ◆返信を過度に要求する ◆仲良くなりたいと擦り寄る ◆長文すぎる ◆他をディスった感想を言う(例:ほかの人の描く桃太郎モノは苦手なのですが〇〇さんが描いたのはすごく萌えました!) ◆なぜか上から(例:ほかの人が描く桃太郎モノは苦手なのですが〇〇さんの描いたのは見れました!) ※上記はあくまで一般的な見解であり、個人的には長文の感想はむしろ大好物だ。  私の感想が何か地雷か逆鱗に触れたのか、もしくは言葉通り感想がいらなかったのか。しかし後者なら感想フォームなど自分から用意してはいけない。デートで、男の腕に胸を押し付けながら歩き、男がいざその気になったら「そんなつもりじゃない!」と怒りだす女のようなものだ。 「表情」「声の調子」がわからないオンライン上の文字のやりとりでは、分かりやすさがリアルのコミュニケーション以上に大切だ。感想がほしい私のようなタイプは「感想ください(pixivのスタンプ以外で)」とPRし、感想が不要なタイプはそれを直接言うと角が立つので「感想はお返事できないので結構です。作品を読んでいただければ」と、やんわりしっかりPRし、感想フォームなどは用意しない。スタンスを言葉と行動で明確にPRすることが読む側、書く側双方の、ひいては同人世界全体の平和につながる。 ■感想以外にも同人誌を書く理由はある  最後に、前回のイベント参加(2017年5月時点)から3カ月たっているが、この間は同人イベントに出ず同人誌の販社を通じ通販を行っていた。この間でどのくらい同人誌が頒布できたか部数の報告をしたい。 【前提条件】 ・同人誌A~Dを制作。全て二次創作。「A」と、「B~D」は元の作品が異なる ・書いているのは漫画でなく小説 ・A~Cは50部、Dは40部刷る ・B~Dを同人誌の販社を通じ通販している(Aも以前はそうしていたが、委託期間が過ぎて今は販売していない) 【前回、2017年5月の頒布冊数】 A 17冊 B 43冊 C 31冊 D 12冊 合計 103冊/190冊 【3カ月後、2017年8月の頒布冊数】 A 17冊 B 50冊(+7冊) C 37冊(+6冊) D 21冊(+9冊) 合計 123冊/190冊  毎日部数の動きを確認したところで動きのなさに暗くなるだけだが、数か月おきに確認するのは励みになっていいものだ。  同人誌Bは50部刷って50部頒布できたので本来完売のはずだが、印刷所は余計に刷った分を「余部」として渡してくれる。それが3部残っているのだ。これが頒布できたら晴れて「完売はわわ」だ。  しかし「完売はわわ」はニュアンスとして「イケると思った数よりはるかに少ない部数を刷り、イベント開始1時間程度で完売してしまって、並んだのに手に入れられず肩を落とす人を尻目に『完売ですごめんなさい><;;」とこみ上げる高笑いを必死でこらえつつTwitterでつぶやくこと」であり、一年と数カ月かけて通販とイベントで50部を完売させた私は「完売はわわ」などではなく「同人よくがんばったで賞」だ。完売したらおいしいものを食べに行きたい。  二次創作は原作の人気に左右されるし、また「原作と二次同人作家の相性」もある。好きな二次創作同人作家が対象とする原作を変えたら「今回は前のジャンルで同人活動をしていたときほど輝きがない」と読者として思うのは残酷だがよくあることだ。私の場合も「同人誌A」と「同人誌B~D」は異なる原作だ。書いている本人としては同人誌A~Dどれも愛しているが、オンライン、オフラインの反響を見ると、私も「同人誌B~D」の方が原作との相性がいいのだろう。  しかし相性のいい現ジャンルなのに、近日出る予定のイベントではジャンルを変える予定だ。気が付いたら同人誌を出したいと思うほど現ジャンルにはまってしまったのだから仕方ない。残念ながらオンラインの反響を見る限り「新ジャンルは現ジャンルよりも同人人気がなく」そのうえ「新ジャンルは現ジャンルより私と相性悪い」のも、現ジャンルにいた方がおそらく感想をもらいやすいのもわかっている。  感想は力水であり生命線だ。感想をもらえない同人活動はむなしい。しかし、感想が全てではなく、そもそも「書きたいから書く」のが同人活動だ。「一冊も頒布できなくてもその覚悟で来たのだからガタガタ言わない」を心に、次回、さわやかに玉砕したい。 (文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])