
イメージ画像(Wikipediaより)
韓国の国技であるテコンドー。日本の柔道と同じで、いわば韓国の“お家芸”であることは、世界が認めるところだ。
だが、そのテコンドーが、どういうわけか韓国ではあまり愛されていないようだ。リオデジャネイロ五輪の女子テコンドー49kg級で金メダルを獲得したキム・ソヒも、優勝直後にこう語って周囲を驚かせた。
「『テコンドーはつまらない』などと言われていますが、五輪のために私たちが頑張ったことだけは、みなさんに知ってほしい」
事実、キム・ソヒの決勝戦について、韓国国民の反応は厳しかった。ネット上では「ポイントを守るために逃げ回るなんて情けない」「面白くもないし、むしろ恥ずかしかった」「後味の悪い金メダルだな」と、不評が続出。金メダルを素直に喜べなかった人が多かったようだ。
もっとも、それだけ韓国人のテコンドーを見る目が肥えている証しでもある。キム・ソヒの言葉は、五輪金メダリストの優勝コメントにしてはどこか寂しい気もするが、ポイント重視の試合内容は、韓国人からすると“邪道”にも映ったのだろう。
そもそも韓国で、テコンドーはかなり身近な武道スポーツでもある。韓国の小中学校周辺には必ずといっていいほどテコンドー道場があり、小学生の間では人気の習い事のひとつだ。つまり、誰もが経験者で、“気持ち”だけでは一人前なのだ。
だが、武道とスポーツの側面を持つテコンドーは、見方によっては、その戦い方や美学も変わってくるし、武道とスポーツでは性質も変わってくるので、それぞれを統括する団体も異なる。
正統武術はITF(International Taekwon-Do Federation)、競技志向はWTF(World Taekwondo Federation)となり、五輪で採用されているのはWTFテコンドーなのだ。
そして、このWTFテコンドーが韓国はおろか、世界で何かと議論の的になる。テコンドーが正式競技になってしばらくの間は韓国がメダルを独占していたが、当然のごとく他国からの不満が募り、誤審などを理由に一時は五輪でのテコンドー廃止論まで沸き上がったこともあったほどなのだ。
ただ、それでも韓国政府はWTFテコンドーの世界的普及を重視。しかし、2011年の世界選手権で韓国は初めて総合優勝を逃し、12年ロンドン五輪でも金メダル1個、銀メダル2個にとどまるなど、徐々に低迷し始める。
さらに、今度は国内のテコンドー愛好者たちの突き上げも待っていた。「クソつまらねえ」「五輪のたびにルールが変更されて訳わからん」「逃げ回るのが戦略……スポーツとしてどうなんだ」「こんなのが国技なんて恥ずかしい、廃止しちまえ」と、身内であるはずの自国民からも非難が相次ぐようになる。冒頭で紹介したキム・ソヒの優勝コメントには、そんな背景があったのだ。
発祥国のはずなのに国民たちから愛されず、国技のはずなのに世界でも苦戦が続く韓国テコンドー。しかも、20年東京五輪からは日本の空手が正式種目に加わる。韓国のテコンドー関係者たちは早くも空手がテコンドーの地位を脅かす強力なライバルになるのではないかと、戦々恐々としている状態だ。
日本には、国技である柔道を嫌う人はほとんどいないし、世界は日本柔道をリスペクトしている。そう考えると、韓国におけるテコンドーが不憫に思えてならない。