「面白い」が正義! 狂ったTBSに『芸人キャノンボール』再び

geinin0823
TBS系『芸人キャノンボール2016』番組サイトより
「TBSってクレイジーな局になってきたよね」  これは『クレイジージャーニー』(TBS系)の中で、最近のTBSのバラエティ番組について、松本人志が言った言葉である。  最大級の賛辞といえるだろう。 たしかに今のTBSは、『クレイジージャーニー』や『万年B組ヒムケン先生』、『有田ジェネレーション』などの深夜番組の充実っぷり。そして、ゴールデンタイムでも『水曜日のダウンタウン』といった“攻めている”お笑い番組がある。  中でも“狂ってる”と思わせてくれるのはその大胆な編成だ。それをまざまざとあらわしているのが明日24日のゴールデンタイムだ。  なんと、19時から特番『芸人キャノンボール2016』を3時間、続けて22時(正確には21時57分)から『水曜日のダウンタウン』が放送されるのだ。  ともに、「地獄の軍団」と名高い藤井健太郎プロデューサー率いる制作陣による番組だ。つまり、内容は抜群だが、決して視聴率を獲るとは言いがたい藤井健太郎が、この日のゴールデン4時間を独占するのだ。狂ってる。 『芸人キャノンボール』は、1997年から始まったカンパニー松尾によるAV作品『テレクラキャノンボール』が下敷きになっている(さらに遡れば『テレクラキャノンボール』は映画『キャノンボール』が元ネタだが)。2014年には『劇場版テレクラキャノンボール2013』として劇場公開もされた作品だ。『キャノンボール』シリーズはアイドルグループ・BiSの解散ライブを題材にした『劇場版BiSキャノンボール2014』にも発展した。プロレス団体・DDTではマッスル坂井によってスカパー・サムライTVでオマージュ作品『プロレスキャノンボール2009』を制作。その後、2015年には『劇場版プロレスキャノンボール2014』が改めて制作され劇場公開。大きな反響を呼んだ。  そうした「キャノンボール」シリーズの本活的な芸人&テレビ版として企画されたのが『芸人キャノンボール』だ。  このAV作品を元にした番組が最初に放送されたのが、なんと2016年の元日のゴールデンタイムだったのだ。狂っている。攻めてる、としか言いようがない。  藤井健太郎も、このたび発売された自著『悪意とこだわりの演出術』(双葉社)で、このように述懐している。 「ここで攻めているのは決して僕ではなく、元日のゴールデンタイムにこの番組を流すジャッジをしたTBSの編成だと思います」  さらに、企画が決まった後も、一般的に視聴率至上主義と言われる編成部員から「ここは視聴率が多少悪くても、内容でちゃんと面白いモノを出すことが大事だから」「元日の目立つ場所で格好の悪い番組は出したくないから」と何度も言われたという(同書)。  結果、視聴率はふるわなかったが、番組を観た人が絶賛する「熱のある」番組になった。  そんな『芸人キャノンボール』が帰ってくる。  スタッフや芸人たちのSNSなどから『27時間テレビ』(フジテレビ系)放送のさなか、収録が行われていたらしい。  その放送を前に、元日に放送された前回を振り返ってみよう。 『芸人キャノンボール』は、芸人たちが4つのチームに分かれ、4つのステージごとに「お題」が与えられる壮大な“借り物レース”だ。ゴールを目指しながら、「とにかく歌が上手い人」や「とにかく相撲が強い人」など「お題」にあった人を連れていき対戦する。  ポイントはチェックポイントに到着した順番で与えられる「着順ポイント」と、対戦した上での結果の順位に応じて与えられる「競技ポイント」があり、さらに「『紅白』出場者」「社長」「100キロ超え」などの際立った特長がある人を連れていけばボーナスポイントが与えられる。  最初のお題は「とにかくにらめっこが強い人」。  それぞれのチームは人が多くいる場所や、個性的な人が集まりそうな場所を思案しながら、「にらめっこ」が強そうな人を探していく。  また、この番組の肝は、連れていく人を素人に限定していないことだ。出演者の人脈を使って芸能人などを連れて出すことも認められている。実際、ロンドンブーツ1号2号チームは、アンガールズ田中がいる有吉チームを笑わせるため、相方の山根をブッキングしようとした(結局、地方ロケのためNG)。  なんてことのない「お題」だが、そこは藤井健太郎の番組。絶妙な“悪意”がまぶされている。 「にらめっこ」が強い=個性的な風貌ということで、藤井Pの番組では頻出する「歯がない」人などが登場。  そして、ロンブーチームが場外馬券場で見つけた“英国紳士”風の素人が強烈だった。  他の人が一生懸命面白い顔を作って笑わせようとする中、ただそこにいるだけで笑わせることができる強烈キャラだった。  続く第2ステージはこの番組の面白さが凝縮されていた。 「とにかく歌が上手い人」を連れていくという「お題」でロンブーチームが真っ先に電話をかけたのは、『紅白』歌手でもある千秋だった。  最初こそ突然の電話に「マネジャーに確認しないと」と一度は躊躇するが、旧知の仲である出川哲朗やウド鈴木の説得に「行ったほうが面白いんでしょ? 行ったらオイシイんでしょ? じゃあ行くー!」と快諾したのだ。  だが、これが思わぬ展開を見せる。  ロンブーチームが待ち合わせの場所に到着してしばらく待っていると、千秋から電話がかかってくる。なんと、別の仕事で行けなくなったというのだ。もちろんロンブーチームは大混乱。なんとか時間ギリギリで別の人物を連れてチェックポイントの会場に到着した。  すると、なんとおぎやはぎチームの代表として千秋が登場したのだ!  じつはロンブーチームからの電話の後、おぎやはぎチームのバカリズムからも連絡が入った千秋。先に約束した上、長い付き合いのウドや出川を裏切れないというが、バカリズムはそのほうが「オイシイ」と説得。果たして、彼女は面白い方を選択したのだ。  裏切りや策略、相手の車のタイヤを外し、相手の進行を妨害することも厭わない。  多少「ズル」しても、「面白い」ことが一番の「正義」。  そんな世界だからこそ、とにかく芸人たちがレースにのめり込み真剣だ。  真剣にレースに勝とうとし、必死に「面白い」ことを探すのが『芸人キャノンボール』だ。  それは、今のTBSの“狂った”姿勢を象徴しているかのようだ。いよいよ24日、『芸人キャノンボール』が「2016 in Summer」として帰ってくる。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから