アイドルラップの次なる本格派!? “ガチ”で“ドープ”な『E TICKET RAP SHOW』を聞け

 ラッパーブームといわれる昨今、アイドルがラップを、ラッパーがアイドルの楽曲を手掛けることは珍しくない。この連載では、アイドルファンで「社会人ラップ選手権」決勝進出経験を持つ、ラッパーのMC内郷丸が“ラッパー的観点”から毎月大量にリリースされるアイドルソングを定点観測。
「E TICKET PRODUCTION 1st mini ALBUM『E TICKET RAP SHOW』DIGEST TRAILER」(YouTubeより)
 アイドルに勝手にヒップホップ的要素を見出し紹介してきたこの連載。第3回にしてはじめて、やっと“アイドルラップ”を扱うことにした。今回の一枚は、『E TICKET RAP SHOW』(IDOL NEWSING)である。  アイドル×ラップといえば、現在は「lyrical school」と「ライムベリー」の二大巨頭が著名だ。lyrical schoolはメジャーデビュシングル「RUN AND RUN」(キングレコード)のMVが“スマホジャック縦型MV”として大きな話題を呼び、世界的な広告賞であるカンヌライオンズで銅賞を受賞するなど、大きな話題を呼んだ。その後も精力的に活動し、これからさらなるブレイクが期待されていただけに、昨年末のオリジナルメンバーのami、ayaka、meiの卒業発表は大きな衝撃であった。  一方、ライムベリーは現在盛り上がりを見せるMCバトルシーンに積極的に参加。一時は事実上解散かと思われたが、MC MIRIがラッパーがマイク1本で競う『戦極MC BATTLE』に参加するようになり、いまではMCバトルシーンのアイドル的存在にまでなっている。バトルで「リリスク(lyrical school)が嫌い」とラップし謝罪したり、日本のヒップホップシーンの女性ラッパーとして確固たる地位にいるCOMA-CHIの「B-Girlイズム」をカバーし、その後Twitter上でいざこざが起こったり、話題に事欠かない。  そんなアイドル×ラップのシーンに名を刻むことになるであろう新たな一枚が登場した。それが、E TICKET PRODUCTIONによる『E TICKET RAP SHOW』だ。  E TICKET PRODUCTIONとは、イラスト、執筆、作詞、作曲などマルチな活動を行う作家・桑島由一の音楽活動の際の名義で、2015年2月までライムベリーの楽曲プロデュースも彼の手によるもの。初期のライムベリーは、かなりオールドスクールな音作りが特徴。そんなアイドルラップシーンの重要人物による、アイドルラップがたくさん詰まったコンピレーションアルバムである今作。簡単にレビューしていこう。正直、めっちゃいい……! 「りんねラップ」& 「りんねラップ2」(feat.吉田凜音)
「りんねラップ」(YouTubeより)
 なんといってもこのコンピレーションの一番の注目は、吉田凜音。NONA REEVESの西寺郷太のプロデュースのもと音楽活動に取り組んでいた彼女だったが、今回のコンピレーションの一曲目「りんねラップ」が大きな話題を呼び、スペシャルユニットNATASHAにも参加。まだ高校生、しかも「りんねラップ」発表時はまだ中学生。2000年生まれのアイドルであるというから驚きだ。  MVには「808state」のパーカーを着て、みなとみらいを闊歩。楽曲ではかつて『関ジャニの仕分け∞』(テレビ朝日系)の企画「カラオケNo.1決定戦」に何度か出演していた経験からか「次私が仕分ける順番/お地蔵さん首振る瞬間」とラップしているなど、彼女のキャラクターがそのままリリック(歌詞)に反映されている。
「りんねラップ2」(YouTubeより)
「GOES ON(feat.ようなぴ)」  ニューウェイブ系アイドルグループ「ゆるめるモ!」から、ようなぴが参加。アニメ声でのラップが、いかにもアイドルラップらしい。「偏差値偏差値偏差値偏差値」と連呼する元ネタはなんと、アメリカの人気ラッパーMigosの「Versace」という曲の「ヴェルサーチ」というブランド名の連呼をそのまま真似たのだと本人がインタビューで答えている。
Migos「Versace」(YouTubeより)
 ちなみに、この「ヴェルサーチ」というブランド、この楽曲の影響なのか、やたら最近のラッパーのリリックに登場する。Tシャツ一枚で、僕が一枚にかける20倍近い値段だった。高けえ! 「AS ONE(feat.寺口夏花&山崎愛)」  かなりファンキーでオールドスクールなトラックに、アイドルの女の子のラップがのるという違和感が気持ちいい。「レペゼンお魚/山口愛(まな)だ」というラインは、ヒップホップであればよくありそうな自己紹介リリックの定番だが、妙に韻が固いのと、アイドルの女の子が「レペゼン」と口にするところが不自然でかわいい。  寺口夏花と山崎愛は「sora tob sakana」のメンバー。最近、アイドルファンの間で話題のグループである。 「FIRE LIAR(feat.椎名ぴかりん)」
「FIRE LIAR(feat.椎名ぴかりん)」(YouTubeより)
 ビッグビートに合わせてラップするのは、中二病モデルの椎名ぴかりん。タイトルの通り、炎上を恐れる内容の歌詞。彼女は“ファンサービスが過激すぎる”ということで、『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)や『アウトデラックス』(フジテレビ系)といったテレビ番組でもネタにされる存在だ。  全体的にヒップホップのみならず、テクノなどからの引用も散りばめられた高いクオリティのトラックに、ラップするアイドルたち本人の経験や思いをしっかりと反映してつくられたリリック。“リアル”を大切にするアンダーグラウンドのヒップホップにも通じるような、“アイドルのリアル”が見えてくる。  いずれにせよアイドルラップ界の重要人物、E TICKET PRODUCTIONの新たな活動に、今後も目が離せない! (文=MC内郷丸) Twitterアカウントは@bfffffffragile MC内郷丸の「ほんと何もできません」https://synapse.am/contents/monthly/uchigomaru

アイドル? シンガー? 15歳の道産子パフォーマー吉田凜音に聞く、「アイドル業界で生き延びるために私が考えていること。」

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 アイドルブームも過渡期を迎えている2016年。さまざまな女性アイドルがしのぎを削っているなか、圧倒的な実力でファンを増やしている“アイドルシンガー”がいる。2000年生まれ、北海道出身の高校1年生、吉田凜音だ。これまで出演してきたアイドルイベントはいずれも話題となり、14年2月に放送された『関ジャニの仕分け∞』(テレビ朝日系)には“歌うまキッズ挑戦者”として出演、歌唱力の高さも話題となった。  同年11月、ノーナ・リーヴスの西寺郷太プロデュースのもと、若干14歳でビクターよりソロメジャーデビューを果たし、同氏より「次世代のアイコンになれる存在」と太鼓判を押される。そして16年5月に発売されたDVDマガジン『IDOL NEWSING vol.2』では本格的なラップに初挑戦。Twitterに転載されたその「りんねラップ」の動画の再生回数は数十万回を突破、話題をさらった。  この7月22日(金)には、東京・新宿BLAZEにて開催される同DVDの発売記念イベント『IDOL NEWSING LIVE 2』(新宿BLAZE)にて、「りんねラップ」の生のライブパフォーマンスを披露予定。数段飛ばしでシンデレラストーリーを駆け上がる彼女と、彼女の所属事務所・5projectの外園栄太氏に、彼女の魅力の“源泉”を尋ねた。 ──外園さんは、吉田凜音さんが小学1年生の頃から通っていた北海道のアクターズスタジオの運営者として、長年に渡り吉田さんをご覧になっています。若いうちから注目され、ついには、西寺郷太氏らをバックにバンドデビューもされた彼女を売り出すに当たっての“戦略”とはどのようなものなのでしょうか? 外園栄太(以下、外園) 結局のところ、「戦略は吉田凜音」というところになるんだと思います。お客さんの対応だったり、企画だったり楽曲だったりを、プロデュースする大人たちの側が作り込むというのが、現在のグループアイドルの一般的な手法だとすると、彼女は違う。ボーカリストしても、芸能個性としても、非常に魅力的で面白いですから。今は、さまざまなスクールで小さい時から学んでいる若い人たちが増えていて、技術的に高い人たちもとても多い。でも、ただ、優等生で頑張っている人では、現状突破はできないと思うんです。感じる力や、考える力、意志の強さだったり、少しはみ出していしまう個性も、音楽を目指す人にとっては魅力的なポイントかなと思うんですよね。 吉田凜音(以下、吉田) 小学生の頃は、もしかしたらレッスンの時、はみ出していた日もあったかもしれないです(笑)。 外園 ソロアイドルだったり、ソロシンガーっていうのは、すごく夢があると思うんですよ。僕らの世代にとって「芸能人」っていうのはやっぱり特別な存在だし、カリスマだったじゃないですか。例えば、浜崎あゆみさんや、安室なみえさんのような時代の顔とも言える存在を生み出したいというのは、強く思うところで。そういう思いと、吉田凜音のファンキーな個性をどう同居させていくのかを考えるのが、僕らの仕事だと思っています。 ──そうした戦略を練るに当たって、吉田さんにも相談することはあるんですか? 外園 はい、むしろ常にそうしてます。結論や、運営側の意見を伝えすぎるより、本人にも考えてもらって、その上で話し合って決めることが多いです。メジャーデビューが決まったときも、アイドルグループだったらサプライズで発表して、メンバーが号泣するというような映像を撮ったりするんでしょうけど、吉田の場合は、レーベルの方との話が進んでいくなかで報告もしていたので、決まったときの吉田の反応も「あ~、よかったです~」っていうぐらいで(笑)。
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──吉田さん自身は、最初にアクターズスタジオに通い始めたきっかけってなんだったんですか? 吉田 テレビを見ていて、ダンスをやっている人にすごく興味を持ったんです。当時、アイドルがすごく好きだったわけじゃないんですけど、札幌で開催された中川翔子さんのライブをお母さんと観にいったときに、「こんなにお客さんをノセることができるってすごいな」って本当に感動して。で、ダンスと一緒に歌も習いたいと思ったです。 ──その後、しばらくは地元での芸能活動がメインでしたが、中学1年生になった13年頃から、東京での活動も開始します。当時を振り返っていかがですか? 外園 最初は、ひとりで東京に行くのをとにかく嫌がったよね?(笑) 吉田 地元で遊ぶのも楽しかったし、地元愛も強いので(笑)。札幌では公園でサッカーやったりして、普通に外で遊んでました。周りの友達が私を芸能人として特別視することもなかったし、実際すごく仲が良くて。とにかく、札幌の人と街が大好きだったんです。でも、お仕事はやっぱり刺激的なことも多くて面白いし、東京の友達も増えて。だから東京もすぐに楽しい街になって、慣れました。 ──新人だった当時は、秋葉原のライブハウスでダンスを披露したり、アイドルっぽい活動が多い印象でした。 吉田 はい。でも、「アイドルになりたい」っていう思いはあったのかなぁ。今でもそうですし、アイドルが大好きでアイドルのライブを見るのはほんとに大好きなんですけど、自分がアイドルだって自覚したことはないかもしれないです。なんか、すごいライブをやってやろうって気持ちでステージに立ってるだけで。だって、あんなにかわいくできないもん(笑)。 ──ちなみに、吉田さんが考えるアイドルのライブの面白さってなんですか? 吉田 うーん……。オタクの人が面白い。動きとか応援の仕方とか含めて全部が。(笑)。 ──運営側としては、当時からメジャーデビューを見越していたんですか? 外園 13年の7月からソロ活動を始めてその年の11月頃には、メジャーレーベルの方と一緒にやるっていうことがほぼ決まったんです。だから、トントン拍子だという印象はありましたね。ただ、今は能力がある人もあえてインディーズでやるという構造もあるから、なかなか難しいんですけどね。ただ吉田の場合は、マスの人に見てほしいという思いが明確にあるので、メジャーデビューという目標を達成できたのは大きな一歩でした。 ──その冬には、『関ジャニの仕分け∞』(テレビ朝日)に“歌うまキッズ挑戦者”として出演し、大きなインパクトを与えたり、翌14年夏にはTOKYO IDOL FESTIVAL 2014、@JAM EXPO 2014などショーケース型の大型アイドルフェスに次々と出演したりと、その勢いが加速した感じがありました。 吉田 大きな舞台に立ったのはZeppTokyoが初めてだったんですけど、最初の日はすごく緊張しました。その頃からバックダンサー(関東のダンスシーンでオーディションを開催し、「NATT!」というグループ名で専属バックダンサーとして活動)と一緒の活動も始まって、パフォーマンスもより楽しくなったんですよね。 『関ジャニの仕分け∞』に出たときは、オーディションを経ての出演だったこともあって、Twitterのフォロワーさんが一気に増えてすっごい驚いて、同世代のファンの方も増えたので、本当に嬉しかったです。収録現場には大物タレントさんもいるし、スタッフさんもたくさんいるし、そのなかで歌うのは緊張しましたね。
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──1stアルバム『Fantaskie』の発売、そして映画への出演などさらに活動の幅が広がった印象ある15年ですが、いかがでしたか? 外園 中2だった14年の7月から15年にかけてはリリースが続いたので、レコーディングを含めそうした準備が多かったなという印象ですね。中3になってからは、映画がきっかけで蒼波純さんとユニット「ずんね」をやることになったり(同い年であるミスiD2015の蒼波純と共に、“14歳期間限定ユニット”「ずんね」を結成。1カ月強の活動をおこなった)、いろいろなお仕事をさせてもらいました。そのなかで、アイドルの数が膨大に増えてアイドルシーンが成熟していくなかで、自分たちには何ができるかを模索していました。ただ、常に意識しているのは、日本の音楽シーンで彼女自身が本当に長い期間やっていくための進化ができるかというところでしょうか。その部分を判断基準として、常に大事にしています。 ──高校入学と同時に、愛着がある札幌を離れ、ついに上京を果たした吉田さんですが、東京に来て「すごいな」と思う方っていらっしゃいますか? 吉田 うーん……女性ミュージシャンでいうと、大森靖子さんですね。TIF(TOKYO IDOL FESTIVAL 2014)に出たときのソロのステージで、私の前の出番が大森さんだったんですね。その場を、普通のアイドルイベントじゃない雰囲気に一気に持っていていて、破壊力というか、パワーがすごくて、本当にかっこよくて。楽曲も独特で、靖子さんにしかできないことを歌っていて。 外園 吉田にもある意味“破壊者”になってほしいっていうのは強く思うんです。既存のシーンにとどまらず、新しいシーンをつくってしまうような。新しい価値観をつくって10年、20年活躍してほしい。今年の春から、西寺さんや村田シゲさんなど、大先輩のミュージシャンとバンドを組んだりもしているんですが、ちゃんと音楽に向き合う時間を15歳、16歳のうちにつくるっていうのは大事にしたいなと思います。最初に「戦略は吉田凜音」って話したように、このバンド活動が、吉田のこれからのシンガー人生にとって、よきものになればと思っています。 ──これまでの楽曲と違う方向性での活動としては、アイドルカルチャーマガジン『IDOL NEWSING vol.2』で初披露した「りんねラップ」がネット上で話題です。
吉田凜音 - りんねラップ ミュージックビデオ(short ver.)」(YouTube/jokemanhole)より
外園 SKY-HIの日高(光啓)さんがTwitter上で「ラップよかったよ」とリプライを吉田に直接くださったりとか、Twitterに転載された動画が数十万回再生されていたりとか、これまで吉田のことを知らなかった人たちに新たに広まっている感じがしていて、想定外にハマったのが嬉しいですね。 吉田 でも、実はそれまでまったくラップを聴いたこともなくて、自分でもどうなるかと思っていたんですけど、いろいろな方から評価をいただいて、やってよかったなって(笑)。 ──最終的に吉田さんが目指したい人を教えてください。 吉田 日本のジャスティン・ビーバーです!!! どうせ目指すなら、大きく言っときますよ!(笑) 外園 ジャスティン・ビーバーみたいな自由な振る舞いをみんなが楽しめる状況をつくれるように、最高のエンターテイメントを目指します!(笑) (文=竹下ジャパン/写真=FUSUMA SHOJI)
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●吉田凜音(よしだ・りんね) 2000年12月11日、北海道生まれ。現在高校1年生。アクターズスタジオ北海道本部所属時より、地元の情報番組などに出演し、13年からソロ活動を開始。14年にはシングル『恋のサンクチュアリ』でメジャーデビュー(プロデュースは西寺郷太)。15年には映画『女子の事件は、大抵トイレで起こるのだ。』に出演。今年に入り、西寺と□□□(クチロロ)の村田シゲらとともにバンド「MAGI(c)PEPA」を結成することを発表した。 ●ライブ情報 IDOL NEWSING LIVE2 2016年7月22日(金) 開場 18:00 / 開演 18:30 場所:新宿BLAZE 出演:アップアップガールズ(仮)、アイドルネッサンス、吉田凜音、Maison book girl、ひめとまほう、里咲りさ、りりか 吉田凜音&新井愛瞳(アップアップガールズ(仮))&石野理子(アイドルネッサンス)が、この日限りのコラボ曲をパフォーマンス! イベント限定の特別なグッズも多数販売予定。詳細はIDOL NEWSINGオフィシャルサイト<http://idolnewsing.com/>をチェック! イープラスにてチケット発売中 http://eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002194544P0030001