ただ保育士を増やせばいいワケではない!? 待機児童問題で問われる、“保育の質”

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イメージ画像(Thinkstockより)
 待機児童問題がクローズアップされる中、国会では与野党の激しい論戦が続いている。5月16日の衆院予算委員会では、塩崎恭久厚生労働大臣が、保育士の平均賃金を女性平均の賃金に近づけるとしたところ、民進党の山尾志桜里政調会長が「女性の平均を物差しに出したのは問題」と男女平等を主張した上で、「男尊女卑政権だ」と発言した。これに対し、安倍晋三首相は「誹謗中傷だ(中略)国会運営を勉強してほしい」と反論。罵り合いに近いその一幕を、新聞各社がやや冷ややかな調子で伝えた。  現在、厚生労働省が発表している待機児童数は、平成27年10月時点で2万3,167人。平成22年の2万6,275人から、平成26年には2万1,371人まで減少したが、昨年は一転、増加傾向を見せた。統計に表れない“潜在的な待機児童”はさらに多いとされており、問題はますます深刻化しつつある。政府としては「女性の活躍推進」という政策とセットで、平成29年度までに45.6万人分の保育の受け皿拡大を目指す方針。最終的な目標は待機児童数ゼロだ。  ただ、待機児童の問題に関しては、保育士や施設の数だけが問題になるわけではない。同時に担保しなければならないものがある。それは“保育の質”だ。 「ちまたでは、保育士や施設を増やすという議論が盛んに行われています。ただ今後、数だけに固執すると、保育の質が伴わずトラブルが起こることも予想されます。保育園側としても、しっかりと子どもを任せられるプロを迎えたい。とにかく数だけ増えればいいという議論は、少し危険かもしれません」(保育関係者)  保育士や施設の数が増えるのは、保護者にとってよいことなのは間違いない。しかし、質を確保できなければ、待機児童問題は根本的には解決せず、むしろ増える可能性すらある。その一例となるのが、隣国・韓国の保育事情だ。  韓国・保健福祉部などの資料によると、ソウル市における待機児童数は、約10万人前後といわれている。東京都が正式に発表している都内の待機児童数は7,814人(昨年7月23日現在)。約12倍だ。  なお韓国でいわゆる“待機児童”と呼ばれている対象は、主に国公立の育児施設への入園を希望しているものの、定員オーバーで入園できない子どもたちを指す。韓国では近年、小規模な民間保育園を中心に、保育士による幼児虐待や保育サービスの低下などが相次いで起こっており、質の高い国公立育児施設に応募者が殺到している。つまり、全体的な児童施設の普及率は決して低くないにもかかわらず、保育の質が問われ、待機児童が減らないという現象が起きているのだ。  そうしてみると、<保育士もしくは施設数の増加=待機児童問題の解決>という単純な方程式は成たない。加えて、子どもを安心して預けられるサービスの充実が必要となってくる。 「今後、国の政策ももちろん重要ですが、現場で活躍する保育士自身がプロとしてどのようなモチベーションを持つかが非常に大事。福祉+サービスという観点から、保育の質を充実させていく必要があるでしょう」(保育施設関係者)  待機児童問題でネガティブな報道が続く日本の保育だが、その質は他国と比べても決して低くはなく、むしろ高いとさえいわれている。その強みを生かし、数と質の両方を確保していくことが、問題解決への糸口となりそうだ。