5.2%自己最低の『僕たちがやりました』は、火曜ゴールデンでなんてものを見せるのか! だがそれがいい!!

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関西テレビ『僕たちがやりました』番組公式サイトより
 高校生が爆弾を仕掛けて10人くらい殺したり、メーンキャスト4人のうち主人公を含む2人が劇中で、最終回でもないのに自殺未遂しているという超珍しい学園ドラマ『僕たちがやりました』(フジテレビ系)も第8話。そんな陰惨な感じですので、視聴率は相変わらずの5.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と低迷中です。第6話と並んで過去最低だって。  ただし物語は、回を重ねるにつれてぐいぐい面白くなっています。序盤から多用されてきたクロスカッティング多様の演出も冴えてますし、劇伴もスタイリッシュです。こういうドラマは楽しんだもん勝ちだなーと思いますねえ。というわけで、今回も振り返りです。 (前回までのレビューはこちらから)  衝動的な飛び降り自殺が未遂に終わり、“生まれ変わる”ことに成功したように見えるトビオ(窪田正孝)は、互いに惹かれ合っていた幼なじみの蓮子(永野芽郁)と正式に付き合うことに。普通にデートしているだけで超楽しいし、自殺未遂以前のように「幸せを感じると吐き気がする」という罪悪感に苛まれることも少なくなったようです。  気がかりなのは、爆破事件の被害者で後遺症に苦しむ市橋(新田真剣佑)のこと。同じ病院に入院したことから仲良くなったトビオと市橋でしたが、トビオは市橋が蓮子に想いを寄せていることを知っています。  そこでトビオは、市橋に蓮子と付き合ったことをちゃんと言おうとしますが、市橋を女手ひとつで育ててくれたお婆ちゃんが亡くなったことを聞き、言いそびれてしまいます。  一方、もうひとりの自殺未遂者である伊佐美(間宮祥太朗)は、彼女の今宵ちゃん(川栄李奈)から妊娠を告げられます。そして、同時に「てことなんで、翔くんとは別れる」と、一方的に別れを宣言されてしまいました。ワケのわからないまま「触らないで、出てって」と部屋を追い出される伊佐美。「なんでだよ……」という呟きは、空しく夜空に消えるのでした。  そんなナーバスな2人をよそに、罪悪感ゼロで元気いっぱいなのがマル(葉山奨之)でした。しかし、マルには宿命のライバルがいます。ウンコ(加藤諒)です。マルとウンコは互いに闇討ちをし合う関係でしたが、ここにいたって1対1で対峙し、決闘することになりました。金属バットで襲い掛かるマルに、トンファー術で対抗するウンコ。ケンカ慣れしていない2人の、グダグダな決闘が始まります。  マルとウンコが決闘をするのは、これで2度目です。1度目は爆破事件の前。不良の極みだったころの市橋たちに拉致され、無理やり決闘させられたのでした。このときはマルが勝利を収めたものの、その後、市橋の手下にボコボコにされて箱詰めに。このときの恨みからマルは爆破事件を起こし、ウンコはマルへの復讐を誓うことになったのです。ウンコの復讐が市橋たちでなく、同じ被抑圧者であるマルに向くあたり、実に悲しいです。  そのころは絶対権力者だった市橋も、事件以降は学校での立場を失い、さらに今回、唯一の親族だったお婆ちゃんも失い、重ねて、お医者さんからはリハビリしても脚の完治が難しいことを知らされました。そんな市橋は、トビオを誘ってひととき、普通の高校生の遊びに興じます。ボーリング、ダーツ、カラオケ、2人はまるでずっと昔からの親友のようにハシャいだし、深い話もしました。トビオの、自分が蓮子と付き合っていることを早く言わなければ、という思いが募ってきます。 ■そしてパイセンは父親に会いに行く  この物語の根幹にあるのは、パイセン(今野浩喜)の金です。トビオ、伊佐美、マルがパイセンと仲良くなったのもパイセンの金のおかげですし、爆弾もパイセンの金で作りました。湯水のように、銀行に金が振り込まれるパイセン。パイセンはそれを、顔も知らぬ父親の愛情の証だと理解していました。ニセモノの真犯人を出頭させて自分を罪から解放してくれたのも、父親の愛情ゆえだと。  しかし、事件を捜査していた刑事・飯室(三浦翔平)によれば、どうやらそうではないようでした。父親の輪島(古田新太)は、闇社会のドンであるがゆえ“殺人犯の父親”であることが不都合であり、事件をもみ消したのも単に利己的な理由だというのです。  いてもたってもいられなくなったパイセンは、父親を見つけ出して問い詰めます。 「俺のこと、愛してますか、お父さん?」  しかし輪島は、「誰これ」と言いました。顧問弁護士(板尾創路)に確認して、ようやくそれが13番目の愛人の子だと理解します。事件のもみ消しも、金の振り込みも、優秀な弁護士が業務の一環として行っていたことであり、輪島自身は一切関与していなかったというのです。  輪島は言います。 「お前が生まれたとき、こう思ったよ。ブサイク、と」  パイセンのブサイクな顔面が、さらに歪みます。生まれた子がブサイクだったがゆえ、母と父は疎遠になったというのです。そのまま身体を壊して亡くなった母が、このブサイクを「大事にしたい」と言っていたから、金を振り込んでいたと。  そして、久しぶりに会った我が子を見て、こう思ったといいます。 「とても、ブサイク、と」  パイセンは、ブサイクだから捨てられた子でした。金だけを与えられたために、金でしか人間関係を築けない。愛を知らない自分は、生きている価値なんてない。 「金はもうええねん! 誰が子どもに、愛、教えてくれるんすか!」  パイセンが「死んでもいい」とか言い出すものだから、輪島は、じゃあ殺すことにしました。ハンサムな2番目の愛人の子・玲夢(山田裕貴)が、まだ人を殺したことがないので、ちょうどいいから経験を積ませることにしたのです。 「ヘルプミー! ヘルプミー!」  やっぱり死にたくなくなったパイセンは、玲夢に顔面を踏まれると、その靴をナメナメするという卑屈っぷりで一命を取り留めます。そんなパイセンに、輪島は「秀郎」と名付けた理由を教えてあげることにしました。 「生まれたとき、おまえの顔が“ひでえやろう”だったからだ」 ■それぞれが、やはり行き場所をなくしていく  伊佐美は、今宵ちゃんに言われました。 「だって翔くん、きれいな人間じゃないじゃん。あたしに隠してることあるじゃん。矢波高の事件のこと、近くにいたからわかるよ」  今宵ちゃんも、伊佐美のことは本当に好きなのです。だけど「この子が大きくなったときに犯罪者の子っていわれないように」と、伊佐美と別れることにしたのです。 「気付いたら好きすぎてやべえよ、おまえのこと……」伊佐美は、涙が止まりません。  マルとウンコの決闘は引き分けに終わりました。「似た者同士かもしれない」と、ウンコと友だちになろうとしたマルでしたが、ウンコはマルを引っ叩いたうえに「ともだちいねえだろ、その時点で人生の負けなんだよ!」と吐き捨てて去っていきました。この言葉を聞いて、マルは初めてパイセンとの関係が金だけじゃなかったことに気付きますが、パイセンもトビオも伊佐美も電話がつながりません。  伊佐美とマルが心を裸にする一方、まだ取り繕っているのがトビオです。市橋に「面と向かって言えないことを」と自画撮り動画をメールしますが、その中で「変な言い方だけど、事件がなかったら仲良くなってなかった」などときれいごとを言います。身寄りを亡くし、一生歩けなくなった市橋を励ましたい気持ちは本物です。だけど、やっぱり全部は言えないのがトビオなのです。 「犯人クソ野郎だよ、きっと。自分がやったこと、絶対後悔してるからさ」  この期に及んで、自分が犯人だとは言わない。それは保身でもあるし、市橋にとって唯一の親友である自分が犯人だったら、市橋がもっと孤独になってしまうということを理解した上での、優しさでもありました。  ところで、冒頭で2人の自殺未遂者がいると書きましたが、トビオと伊佐美だけでなく、この市橋も自殺未遂を経験していました。第5話で、蓮子が手下だった不良たちに襲われそうになったとき、自分が脅されていたナイフを奪って切腹を試みたのです。 「やりたきゃ俺を殺せ。もう終わった人間なんだよ」  刃先をグイグイと腹にねじ込ませながら、あのとき市橋はそう言っていました。  トビオが蓮子と付き合っていることを知った市橋は、「こんぐらっちねいしょん」と言って祝福しました。そしてトビオと同じように、動画で「おまえは俺が会った中で、最高の友だちだ」と告げ、「蓮子のこと、幸せにしろよ」と。  病院からの帰り、エントランスを出たところでその動画を微笑ましく眺めていたトビオの背後に、人が落ちてきました。市橋でした。今度の自殺は飛び降りで、未遂ではなく既遂でした。 ■火曜のゴールデンに、なんてものを見せるのか 『僕たちがやりました』が冴えたクロスカッティングとスタイリッシュな劇伴で描くのは、こうした陰惨な物語です。若者たちが自分の生きる意味を、実の親から否定されて踏みにじられたり、自ら否定して命を放り出したり、その命が放り出される姿を目の当たりにする物語です。  もう逃亡劇でもなんでもありません。青春ドラマでもありません。未熟な若者が未熟さゆえに死者を出す事件を起こし、逮捕されることも裁判にかけられることもなかったために、その罪の「許され方」もわからずに命がけで断罪される様が描かれたのです。この回は特に「火曜のゴールデンに、なんてものを見せるのか」と思いました。  あと2回、どんなものを見せてくれるのでしょう。原作を読んでるので、まあだいたいは予想つくんですが、それでも改めて映像で見せられるとね、演出も演者もいいだけにキツいですよ! キツおもしろい! (文=どらまっ子AKIちゃん)

5.2%自己最低の『僕たちがやりました』は、火曜ゴールデンでなんてものを見せるのか!だがそれがいい!

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関西テレビ『僕たちがやりました』番組公式サイトより
 高校生が爆弾を仕掛けて10人くらい殺したり、メーンキャスト4人のうち主人公を含む2人が劇中で、最終回でもないのに自殺未遂しているという超珍しい学園ドラマ『僕たちがやりました』(フジテレビ系)も第8話。そんな陰惨な感じですので、視聴率は相変わらずの5.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と低迷中です。第6話と並んで過去最低だって。  ただし物語は、回を重ねるにつれてぐいぐい面白くなっています。序盤から多用されてきたクロスカッティング多様の演出も冴えてますし、劇伴もスタイリッシュです。こういうドラマは楽しんだもん勝ちだなーと思いますねえ。というわけで、今回も振り返りです。 (前回までのレビューはこちらから)  衝動的な飛び降り自殺が未遂に終わり、“生まれ変わる”ことに成功したように見えるトビオ(窪田正孝)は、互いに惹かれ合っていた幼なじみの蓮子(永野芽郁)と正式に付き合うことに。普通にデートしているだけで超楽しいし、自殺未遂以前のように「幸せを感じると吐き気がする」という罪悪感に苛まれることも少なくなったようです。  気がかりなのは、爆破事件の被害者で後遺症に苦しむ市橋(新田真剣佑)のこと。同じ病院に入院したことから仲良くなったトビオと市橋でしたが、トビオは市橋が蓮子に想いを寄せていることを知っています。  そこでトビオは、市橋に蓮子と付き合ったことをちゃんと言おうとしますが、市橋を女手ひとつで育ててくれたお婆ちゃんが亡くなったことを聞き、言いそびれてしまいます。  一方、もうひとりの自殺未遂者である伊佐美(間宮祥太朗)は、彼女の今宵ちゃん(川栄李奈)から妊娠を告げられます。そして、同時に「てことなんで、翔くんとは別れる」と、一方的に別れを宣言されてしまいました。ワケのわからないまま「触らないで、出てって」と部屋を追い出される伊佐美。「なんでだよ……」という呟きは、空しく夜空に消えるのでした。  そんなナーバスな2人をよそに、罪悪感ゼロで元気いっぱいなのがマル(葉山奨之)でした。しかし、マルには宿命のライバルがいます。ウンコ(加藤諒)です。マルとウンコは互いに闇討ちをし合う関係でしたが、ここにいたって1対1で対峙し、決闘することになりました。金属バットで襲い掛かるマルに、トンファー術で対抗するウンコ。ケンカ慣れしていない2人の、グダグダな決闘が始まります。  マルとウンコが決闘をするのは、これで2度目です。1度目は爆破事件の前。不良の極みだったころの市橋たちに拉致され、無理やり決闘させられたのでした。このときはマルが勝利を収めたものの、その後、市橋の手下にボコボコにされて箱詰めに。このときの恨みからマルは爆破事件を起こし、ウンコはマルへの復讐を誓うことになったのです。ウンコの復讐が市橋たちでなく、同じ被抑圧者であるマルに向くあたり、実に悲しいです。  そのころは絶対権力者だった市橋も、事件以降は学校での立場を失い、さらに今回、唯一の親族だったお婆ちゃんも失い、重ねて、お医者さんからはリハビリしても脚の完治が難しいことを知らされました。そんな市橋は、トビオを誘ってひととき、普通の高校生の遊びに興じます。ボーリング、ダーツ、カラオケ、2人はまるでずっと昔からの親友のようにハシャいだし、深い話もしました。トビオの、自分が蓮子と付き合っていることを早く言わなければ、という思いが募ってきます。 ■そしてパイセンは父親に会いに行く  この物語の根幹にあるのは、パイセン(今野浩喜)の金です。トビオ、伊佐美、マルがパイセンと仲良くなったのもパイセンの金のおかげですし、爆弾もパイセンの金で作りました。湯水のように、銀行に金が振り込まれるパイセン。パイセンはそれを、顔も知らぬ父親の愛情の証だと理解していました。ニセモノの真犯人を出頭させて自分を罪から解放してくれたのも、父親の愛情ゆえだと。  しかし、事件を捜査していた刑事・飯室(三浦翔平)によれば、どうやらそうではないようでした。父親の輪島(古田新太)は、闇社会のドンであるがゆえ“殺人犯の父親”であることが不都合であり、事件をもみ消したのも単に利己的な理由だというのです。  いてもたってもいられなくなったパイセンは、父親を見つけ出して問い詰めます。 「俺のこと、愛してますか、お父さん?」  しかし輪島は、「誰これ」と言いました。顧問弁護士(板尾創路)に確認して、ようやくそれが13番目の愛人の子だと理解します。事件のもみ消しも、金の振り込みも、優秀な弁護士が業務の一環として行っていたことであり、輪島自身は一切関与していなかったというのです。  輪島は言います。 「お前が生まれたとき、こう思ったよ。ブサイク、と」  パイセンのブサイクな顔面が、さらに歪みます。生まれた子がブサイクだったがゆえ、母と父は疎遠になったというのです。そのまま身体を壊して亡くなった母が、このブサイクを「大事にしたい」と言っていたから、金を振り込んでいたと。  そして、久しぶりに会った我が子を見て、こう思ったといいます。 「とても、ブサイク、と」  パイセンは、ブサイクだから捨てられた子でした。金だけを与えられたために、金でしか人間関係を築けない。愛を知らない自分は、生きている価値なんてない。 「金はもうええねん! 誰が子どもに、愛、教えてくれるんすか!」  パイセンが「死んでもいい」とか言い出すものだから、輪島は、じゃあ殺すことにしました。ハンサムな2番目の愛人の子・玲夢(山田裕貴)が、まだ人を殺したことがないので、ちょうどいいから経験を積ませることにしたのです。 「ヘルプミー! ヘルプミー!」  やっぱり死にたくなくなったパイセンは、玲夢に顔面を踏まれると、その靴をナメナメするという卑屈っぷりで一命を取り留めます。そんなパイセンに、輪島は「秀郎」と名付けた理由を教えてあげることにしました。 「生まれたとき、おまえの顔が“ひでえやろう”だったからだ」 ■それぞれが、やはり行き場所をなくしていく  伊佐美は、今宵ちゃんに言われました。 「だって翔くん、きれいな人間じゃないじゃん。あたしに隠してることあるじゃん。矢波高の事件のこと、近くにいたからわかるよ」  今宵ちゃんも、伊佐美のことは本当に好きなのです。だけど「この子が大きくなったときに犯罪者の子っていわれないように」と、伊佐美と別れることにしたのです。 「気付いたら好きすぎてやべえよ、おまえのこと……」伊佐美は、涙が止まりません。  マルとウンコの決闘は引き分けに終わりました。「似た者同士かもしれない」と、ウンコと友だちになろうとしたマルでしたが、ウンコはマルを引っ叩いたうえに「ともだちいねえだろ、その時点で人生の負けなんだよ!」と吐き捨てて去っていきました。この言葉を聞いて、マルは初めてパイセンとの関係が金だけじゃなかったことに気付きますが、パイセンもトビオも伊佐美も電話がつながりません。  伊佐美とマルが心を裸にする一方、まだ取り繕っているのがトビオです。市橋に「面と向かって言えないことを」と自画撮り動画をメールしますが、その中で「変な言い方だけど、事件がなかったら仲良くなってなかった」などときれいごとを言います。身寄りを亡くし、一生歩けなくなった市橋を励ましたい気持ちは本物です。だけど、やっぱり全部は言えないのがトビオなのです。 「犯人クソ野郎だよ、きっと。自分がやったこと、絶対後悔してるからさ」  この期に及んで、自分が犯人だとは言わない。それは保身でもあるし、市橋にとって唯一の親友である自分が犯人だったら、市橋がもっと孤独になってしまうということを理解した上での、優しさでもありました。  ところで、冒頭で2人の自殺未遂者がいると書きましたが、トビオと伊佐美だけでなく、この市橋も自殺未遂を経験していました。第5話で、蓮子が手下だった不良たちに襲われそうになったとき、自分が脅されていたナイフを奪って切腹を試みたのです。 「やりたきゃ俺を殺せ。もう終わった人間なんだよ」  刃先をグイグイと腹にねじ込ませながら、あのとき市橋はそう言っていました。  トビオが蓮子と付き合っていることを知った市橋は、「こんぐらっちねいしょん」と言って祝福しました。そしてトビオと同じように、動画で「おまえは俺が会った中で、最高の友だちだ」と告げ、「蓮子のこと、幸せにしろよ」と。  病院からの帰り、エントランスを出たところでその動画を微笑ましく眺めていたトビオの背後に、人が落ちてきました。市橋でした。今度の自殺は飛び降りで、未遂ではなく既遂でした。 ■火曜のゴールデンに、なんてものを見せるのか 『僕たちがやりました』が冴えたクロスカッティングとスタイリッシュな劇伴で描くのは、こうした陰惨な物語です。若者たちが自分の生きる意味を、実の親から否定されて踏みにじられたり、自ら否定して命を放り出したり、その命が放り出される姿を目の当たりにする物語です。  もう逃亡劇でもなんでもありません。青春ドラマでもありません。未熟な若者が未熟さゆえに死者を出す事件を起こし、逮捕されることも裁判にかけられることもなかったために、その罪の「許され方」もわからずに命がけで断罪される様が描かれたのです。この回は特に「火曜のゴールデンに、なんてものを見せるのか」と思いました。  あと2回、どんなものを見せてくれるのでしょう。原作を読んでるので、まあだいたいは予想つくんですが、それでも改めて映像で見せられるとね、演出も演者もいいだけにキツいですよ! キツおもしろい! (文=どらまっ子AKIちゃん)

11.5%で好調の高畑充希『過保護のカホコ』 ハッピーで感動的な展開にかけられた“呪いの言葉”

11.5%で好調の高畑充希『過保護のカホコ』ハッピーで感動的な展開にかけられた呪いの言葉の画像1
日本テレビ系『過保護のカホコ』番組公式サイトより
 がぜん盛り上がってまいりました『過保護のカホコ』(日本テレビ系)も第8話。視聴率も11.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と前回より0.7ポイントアップです。  回を重ねるにつれて唐突なご都合主義的展開が多くなってきたこの作品ですが、それでも力ずくで面白くしちゃう脚本の遊川和彦さんは、やっぱり豪腕だなーと思います。というわけで、今回も振り返りです。 (前回までのレビューはこちらから)  前回、ばあば(三田佳子)がもうすぐ死んでしまうことを知ったカホコ(高畑充希)は、死ぬ前に曾孫の顔を見せたいという思いが募ります。そして、人生初カレシのハジメくん(竹内涼真)に「子どもつくろ!」などと言い出し、それをたしなめられて逆上。互いの家族観が絶望的に違うことなどから別れを告げられてしまいました。  その晩、眠れずに泣き明かしたカホコでしたが、すぐに一念発起。ハジメくんのことはきっぱり忘れて、一刻も早く子作りをするために婚活に勤しむことにしました。ハジメくんへの未練から、超ハイテンションのトランス状態に陥り「イエイイエイイエーイ!」などと奇声を発していますが、大丈夫なのでしょうか。  そんなことより大変なのは、ばあばの死期を知らされたほかの家族たちです。ばあばの願いは「手術せず家でゆっくり死にたい」というものですが、カホコのママ・泉(黒木瞳)は親族会議で「入院させて手術させる」ことを強硬に主張。妹たちや、その旦那たちは、ばあばの気持ちを慮って明確な方針を打ち出せませんが、とにかく泉の態度が気に食わない様子です。さらに、泉が各家庭の経済格差を無視して「入院費の足りない分は姉妹みんなで平等に」とか言い出すので、イラつきが止まりません。結果、堰を切ったようにみんなから泉への不平不満が吹き出しました。 「もう好きなようにすればいいじゃない!」  逆ギレした泉は、親族会議の結論も出ないまま実家を飛び出してしまいました。別に間違ったことを言っているわけじゃないのに、袋叩きにされる泉。ホントにタフな役回りですが、黒木瞳がその老成した美しい顔面をゆがめて演じる様は迫力があります。 ■竹内くん、世間というのは、君じゃないか  一方、ハジメくんもカホコと別れてから絵を描く気にならず、モヤモヤ中。カホコの従妹・糸ちゃん(久保田紗友)が生意気なことをヌカしたので、八つ当たり気味にからかったりしてみますが、それで気分は晴れるわけではありません。  ここまで、過保護に育ったカホコが接するほとんど唯一の“世間”として、作品世界の常識を司ってきたハジメくんでしたが、今回ようやく具体的な過去と個人的な体験が与えられました。  大学にも顔を出さず、婚活パーティーのサクラのバイトなどに精を出していたハジメくんは、よりによってそのパーティーの場でカホコと再会します。当然、お見合いは連戦連敗中のカホコですが、なんと、偶然ハジメくんが育った養護施設に行ったというのです。  カホコは、園長先生からの伝言をハジメくんに伝えます。 「大切なモノを預かっているから、取りに来てほしいって。お母さんからの手紙」  7歳のときに母親に捨てられ、それゆえカホコの家族愛にもまったく理解を示すことのなかったハジメくんでしたが、その手紙を読んで、母親に会いに行くことにしました。それはハジメくんにとって、カホコと一緒じゃなきゃできない行動だったのでしょう。だからハジメくんは、そのデリケート極まりない手紙をカホコにも読ませることにします。  その手紙には、母親が覚せい剤中毒だったこと、ハジメとともに心中を図ろうとして思いとどまったこと、ハジメを施設に預けて自首したこと、刑務所を出てもなかなかシャブから足を洗えなかったこと、自分を救ってくれた更生施設の職員と一緒になって、その職員の子どもたちと暮らしていることなどがつづられていました。  片田舎の港町、わりと立派な一軒家、ハジメの実母(高橋ひとみ)は庭先で水を撒いていました。実に楽しそうに、2人の子どもたちと笑顔を交わしています。  その様子を、ハジメくんは見ていました。カホコと2人で、並んで見ていました。実母が気付くまで、ずっと動かずに見ていました。  7歳のときに自分を捨てた母親、今は勝手に、幸せに暮らしている母親、その母親を、ハジメくんは責めませんでした。 「謝んなくていいから、そういうの苦手だし」 「けっこう幸せにやってるし」 「いつかあなたに負けない、すっばらしい家族作りますから」  それらのハジメくんの言葉に、決してウソはありませんでした。 「……みたいな感じで、そんじゃ」  と立ち去る笑顔に、ただ強がりがあるだけでした。  全身全霊を込めて強がったためでしょう。ハジメくんはお腹が空いてしまいます。カホコが自分用に作ってきたおにぎりがありましたが、ハジメくんはおにぎりを食べない人です。なぜなら、母親がいなくなったとき、最後に書き置きと一緒に残して行ったのがおにぎりだったからです。 「食べないよね?」というカホコに、ハジメくんは答えます。 「食べる、食べる」  大切なことなので、2回言います。そしておにぎりを食べ始めると、ぽろぽろと涙があふれてきます。何しろ「めちゃめちゃうめえ」のです。  母親が出て行ってから、泣かないと決めていたハジメくん。一度泣き出してしまったら、もう止まりません。  カホコは「カホコの胸で泣いていいよ」とハジメくんを抱きしめてあげます。それは、かつてカホコが従妹の糸ちゃんに面罵され、生まれて初めて悪意にさらされて号泣したときに、ハジメくんがしてくれたこと、そのままでした。  ただ母親への思いがあふれただけだと思われたハジメくんでしたが、途中から様子が変わってきます。 「カーホーコぉぉぉ、会いたかったよカホコぉぉぉ、もう別れるなんて言わないでくれよカホコぉぉぉ」  子どものように泣きじゃくるハジメくんは、「カホコがいないと自分が嫌になる、自分が生きてるこの世界も嫌になる」のだそうです。  このへん、ここまでハジメくんの心理描写がかなり省略されてきたため、唐突なカミングアウトに見えるんですが、このシークエンスの竹内涼真の芝居がよすぎたために、説得力が生まれちゃってました。いやー、泣いちゃうでしょ、ここは。泣いちゃうよ。  なんでハジメくんが「カホコがいないと自分が嫌になる」のかはイマイチ不明瞭ですが、ともかくそういう気持ちなら話は前に進むしかありません。2人はカホコの両親に、結婚の意思を伝えます。  ハジメくんはバイトをしながら画家を目指すと言います。カホコも頑張るそうです。客観的に見ても一人娘を嫁がせるにはかなり不安な状況ではありますが、ともあれ2人の真剣な気持ちは泉にも伝わりました。真剣な気持ちが伝わったので、泉はこう応えます。 「こっちも、本気で反対させてもらうから」  黒木瞳がまたしても、ものすごい顔面を披露していると電話が鳴り、ばあばが倒れたことが4人に伝えられました。と、今回はここまで。 ■ただし、カホコ自身は何も変わっていない  奇跡的な展開(ご都合主義)で、カホコがハジメと母親を引き合わせることに成功し、2人の関係は前に進みました。しかしカホコが相変わらず“家族依存”で、家族のことになると悪魔に憑かれたように暴走する性癖は何も変わっていません。死にゆくばあばを巡っての親戚一同の地獄絵図も、何ひとつ解決していません。  さらに今回、ばあばがすごく怖いことを言っていました。長女の泉には病気のことを隠して、カホコに秘密にするように頼んだ理由は「何か運命を感じた」のだそうです。 「この子に、家族のことを託そうかなって」  これ、呪いの言葉でしょう。過保護に育てられたせいで家族や親戚と共依存状態に陥っているカホコに対して、その共依存からの脱却と自立を促すのではなく、「託す」のだそうです。しかも、ばあばの言葉が指す「家族」とは、今後カホコが築いていくであろう新しい家族ではなく、遺されることになるじいじ(西岡徳馬)や泉、泉の妹の環ちゃん(中島ひろ子)や節ちゃん(西尾まり)たちのことです。カホコのパパ(時任三郎)の家族はそこに含まれていませんし、環ちゃんや節ちゃんの旦那さんたちの家族なんて、作品上に存在すらしていません。ばあばは、自分が嫁いだこの並木家という家族のことだけを、カホコに「託そう」というのです。こんなの、呪い以外の何物でもないでしょう。  高畑&竹内のラブストーリーとしてはスーパーハッピーに近い展開ですし、泣きじゃくる竹内くんはスーパーキュートでしたし、役者のみなさんが揃いも揃って好演熱演してらっしゃるので見ていて気持ちがいいのですが、やっぱりこのドラマには不穏な空気が漂っています。遊川さんがどういう結末を用意しているのか、ホントに楽しみです。 (文=どらまっ子AKIちゃん)

暴力に加え、17歳のベッドシーンも……『僕たちがやりました』は、視聴率5.4%くらいがちょうどいい!?

暴力に加え、17歳のベッドシーンも……『僕たちがやりました』は、視聴率5.4%くらいがちょうどいい!?の画像1
関西テレビ『僕たちがやりました』番組公式サイトより
 カンテレ制作の『僕たちがやりました』も第7話。爆弾を仕掛けて不良高校・矢波高の生徒を10人も殺した上に、身代わりが出頭したおかげで無罪放免となったクズどもが今日も元気に暮らす様子を描いた第7話の視聴率は5.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と低空飛行が続いています。  まあ、全体的に暴力とか多くて、あんまり教育上よろしくないですし、こんなご時世なのに17歳の永野芽郁ちゃんがベッドシーンに挑んだりしておりますので、口うるさい方々に見つからないくらいのちょうどいい数字で推移していただければと思います。個人的にはすごく楽しんでいるので、このドラマに何か制約じみたものがかかると、ちょっとね。イヤな感じよね。というわけで、今回も振り返りです。 (前回までのレビューはこちらから) 「幸せを感じるたびに思い出せ、人の命を奪ったということを──」  せっかく無罪放免になったのに、刑事・飯室(三浦翔平)に言われたこの言葉が脳裏に焼き付いてしまったトビオ(窪田正孝)は、夕陽に魅入られるように校舎の屋上から身を投げてしまいました。  飛んだ直後、空中で、トビオはこう思ったそうです。 「もしこのまま死んだら、死んで罪を償おう。生きてたら、そのときは新しい俺を始めよう」  爆破事件を起こした4人のうち、自殺を図ったのはこれで2人目です。1人目の伊佐美(間宮祥太朗)は事件直後、数日にわたって街をさまよった末に、廃倉庫のような場所で首を吊りました。幸運にもロープが切れて一命を取り留めた伊佐美は、気が付くとリトル伊佐美(ちんこ)がバキバキに勃起しており、すぐさま彼女の今宵ちゃん(川栄李奈)を抱くことで自我を取り戻していました。  はたして屋上からアイキャンフライしたトビオもまた、庭木の上に落下したことで、脚の骨折だけで済みました。そしてトビオは、トビオの考える“新しい俺”を模索する日々を始めます。  運ばれた病院には、事件の被害者で、その後遺症+蓮子(永野芽郁)を守るために自分の腹を刺したケガで、市橋(新田真剣佑)も入院していました。  トビオは、市橋に明るく話しかけます。 「市橋じゃーん! 久しぶり! ニュース見たろ? 犯人、俺じゃなかっただろ?」  いや、おまえだよ。おまえが目の前の男の人生を台無しにしたんだよ。ということはトビオ自身もよくわかっているのですが、もう「新しい俺を始める」と決めたので、弱っている市橋とどんどん仲良くなろうとします。  さらに、リハビリの先生であるミナミちゃん(水沢エレナ)を気安くナンパして退院後のデートの約束を取り付けるなど、もうイケイケどんどんです。  事件前は「そこそこの人生」を標榜していたトビオでしたが、いろいろあって「そこそこじゃ足りねえよ」と思うようになっていました。「幸せになって、とんとんだろ」と。  しかし、幼なじみの蓮子だけには、連絡を取ることができません。「ずっと信じてたんだ、トビオは犯人じゃないって」と言ってくれた蓮子には未練タラタラですし、蓮子がトビオのことを好きなのもよーくわかってますが、だからこそ、それは無理なのでした。 ■それぞれの“罪悪感”との向き合い方  警察の捜査が一応終わったことで、彼ら4人はそれぞれに“罪悪感”と向き合うことになります。  すでに自殺未遂を経験済みの伊佐美は、「黙っていれば大丈夫」と頭では理解していますが、やはり深層心理はかなりやられています。あれほど元気だったリトル伊佐美(ちんこ)が勃たないのです。  そこで伊佐美は“俺なりの鎮魂”と称して、行動を起こします。それは、犠牲となった10人の生徒の家を訪れ、「彼とは仲がよかった」「彼はお母さんを海外旅行に連れていきたいと言っていた」などと遺族に告げ、仏壇に手を合わせることにしたのです。  もちろん、10人の犠牲者と伊佐美は面識がありません。全部ウソです。すべてはリトル伊佐美(ちんこ)を復活させるための自己満足でしかありません。その行為に罪悪感がないわけじゃない。その証拠に伊佐美は、それぞれの家で“鎮魂”を終えると、必ず道端にゲロを吐いて、また次の遺族の家を訪れているのです。  一方、マル(葉山奨之)は「罪悪感がない」と言い切ります。もともとマルが矢波高生にボコられたのが爆破事件のきっかけなので「最初に悪いことしたのはあいつらじゃん」「あいつらが死のうが知ったこっちゃないよ、真実は闇の中でしょ」と、ケロッとしています。あまりのケロぶりに、パイセン(今野浩喜)も「すげーな、おまえ」と呆れ返るしかありません。  そのパイセンもあんまり罪悪感はないようですが、それより飯室に言われた「おまえは親に愛されていない」という言葉が心にひっかかっています。まだ会ったことのない父親。金だけはいくらでもくれるパパ。自分が刑務所に入れられないように、ホームレスを身代わりに仕立てて出頭させた“闇社会のドン”。「愛」って、「愛されてない」って、どういうことなのか。パイセンは父親に会いにいくことを決意します。 ■結局“新しい俺”になれず、「そこそこ」じゃない幸せを知るトビオ  ミナミちゃんとのデートもそれなりに楽しかったし、ミナミちゃんにキスもしてもらったトビオでしたが、家の前に蓮子が現れると、やはりどうしようもありません。最初は強がっていましたが、蓮子が試しに「市橋にキスされた」と言ってみると、トビオは自分から蓮子にキス。蓮子に誘われるままに家に上がり込み、処女をいただきました。  事後、トビオは涙を流しながら、蓮子に告げます。 「ごめん、俺、ホントに幸せ」  10人殺して、心にフタをして、それでもトビオには幸せを感じる心が残っていたのでした。というところで、今回はおしまい。 ■オリジナルキャラ・菜摘の立ち位置が難しい  ところで、第1話から登場しているトビオたちの担任・菜摘ちゃん(水川あさみ)が、いよいよ物語に深く関わり始めました。これまでは本筋とあまり関係ないところで動いていたので無視してきましたが、そうもいかなくなりそうです。  菜摘ちゃんは、パイセンパパの輪島(古田新太)に恨みを持っていました。いわく、実家の工場が立ち行かなくなったときに輪島が現れ、借金をさせられたあげく、両親が自殺したというヘヴィな過去の持ち主でした。だから輪島を「殺したい」のだと、菜摘ちゃんは言います。  この立ち位置が、物語の本筋との“馴染み感”として、けっこう難しいなと感じたんです。  トビオたちは、図らずも人を殺してしまい、その罪悪感と向き合うことを強いられながら物事を考えてゆく立場を与えられています。いわばキャラクターとして行動原理が受動的であり、こうしたキャラクターたちに確固たる動機がないからこその“心理の揺れ”を楽しめるのが、このドラマの個性的な部分です。基本的にクズだし、情けないし、性欲に逆らえないし、普通に恋もするし、特別に心に決めた夢も希望もないし、「10人殺した」以外は特になんでもない人物として描かれることで、彼らの存在には生活者としてのリアリティが現出しています。  それに比べて、菜摘ちゃんの設定は“心理の揺れ”が起こることが許されません。「輪島を殺す」という強固なモチベーションは動かしようがなく、これは言い換えれば「特別に心に決めた夢と希望がある人物」だということです。それだけでも、このドラマの描くリアリティと馴染みません。  さらに、すでに爆破事件で後遺症を負った市橋という人物がひとたび克己している「復讐心」というものを菜摘ちゃんの根っこに持ってきているので、ドラマが描く「復讐とは何か」という理念にダブルスタンダードが生まれてしまう。一つの作品の中で「罪とは」「罰とは」「復讐とは」といった理念、というか言葉の解釈にブレが出てくると、途端に全体像が見えにくくなってしまうものなので。そこらへん「親が闇金から借金→自殺」というエピソードのシンプルさ(悪く言えば陳腐さ)も含めて、今後この個性的なドラマのジャマにならないといいなと思います。  あと3話。すでに「原作と違う結末」であることは公表されていますが、さてさて楽しみです。 (文=どらまっ子AKIちゃん)

2ケタキープの高畑充希『過保護のカホコ』家族愛への“盲信とエゴ”を描く、ほのぼの悪意

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日本テレビ系『過保護のカホコ』番組公式サイトより
 過保護に育った女子大生が社会に飛び出して悪戦苦闘する話と見せかけて、実は家族との付き合い方がテーマっぽいことが見えてきた、遊川和彦脚本の『過保護のカホコ』(日本テレビ系)第7話。視聴率は10.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、横ばいながら今週も2ケタキープです。  今回は、過保護のカホコ(高畑充希)が周囲の影響で自立を促されたことで、さらに家族への依存を強めていく様が描かれました。カホコは、まったく社会に飛び出しません。というわけで、振り返りです。 (前回までのレビューはこちらから)  前回、「朝も一人で起きるし、駅まで自分で歩く」とママ(黒木瞳)に宣言し、「ママは金輪際、口を出さないから」と言われたカホコ。目覚まし時計を3つセットして、なんとかひとりで起きることに成功しました。さらに、着ていく服を自分で選ぶことにも成功。さらに、お弁当をひとりで作ることにも成功しました(中身はふりかけごはんとバナナ、ゆで卵、ツナ缶ですが)。  一方のママも、カホコの手伝いをしたくて仕方ありません。表向きは「別に……」という素振りですが、心配で仕方がない様子。  そんなカホコには、守らなければならない秘密ができてしまいました。ママのママであるばあば(三田佳子)が重い心筋症で、いつ死んでもおかしくない身体だと知ってしまったのです。ばあばの願いは、実家で静かに死んでいくこと。そして、今までみたいに家族仲良く、たまにみんなで集まってご飯を食べたりするような、普通の生活をしながら余生を生きることでした。  そして、今度の日曜日は孫娘・糸ちゃん(久保田紗友)の誕生日。ばあばは、この日もみんなが仲良く集まってパーティすることを望んでいます。  糸ちゃんといえば、神経の病気でチェリストになる夢が破れてからというもの、すっかりグレています。親戚のことは全員大嫌いだし、カホコのことが特に嫌いだし、当然誕生パーティなんて出るわけがない。糸ちゃんママの節ちゃん(西尾まり)もそれがわかっているので、今年の糸ちゃん誕生日会は中止にしたいとばあばに申し出ます。  また、ママの上の妹である環ちゃん(中島ひろ子)も、親戚に会いたくないと言いだしました。喘息持ちの環ちゃんが入院している病院を訪れたカホコは、またひとつ秘密を抱えてしまうことになりました。  環ちゃんは「私、嫌な人間だから、みんなに合わす顔がない」と言います。そして、喘息が出るとストレスで万引きをしてしまう常習者であることを告白します。旦那の衛くん(佐藤二朗)もそれを知っていて、アル中寸前の自分と万引き常習の環ちゃんが「お互いダメで弱い人間だから、支え合っていかなきゃ」と結婚したのだそうです。 「でもやっぱりダメみたい……」  環ちゃんのこぼすため息に、カホコは言葉をつなぐことができません。人生経験の乏しいカホコには、想像すらできない状況だからです。  想像すらできない相手の心境は、無視するに限る。というのが、カホコのやり方のようです。「それでも家族だから」の一点張りで、糸ちゃん誕生会に全員集合させるために奔走します。それはもちろん、ばあばの願いだから、ということもありますが、それも含めて今回、カホコが実にエゴイスティックな人間として描かれます。せっかく付き合い始めたハジメくん(竹内涼真)の「家族と別れたほうが幸せだってこともあるだろ」という一般論にも耳を貸さず、それどころかハジメくんを捨てた母親に「会いに行かない言い訳?」とか、けっこうひどいことを言い放ちます。  その後、シナリオ的にはいささか強引な段取りでしたが、誕生会にはみんなが揃うことに。糸ちゃんは別に改心してませんから、節ちゃん夫婦の問題も解決していませんし、環ちゃんと衛くんも、わだかまりを抱えたまま。みんな「今は会いたくない」と思っているのに集まってしまった家族は、当然ケンカになってしまいます。互いが互いを「バカにしてるだろ」「見下してるだろ」と言い合い、口汚く罵り合うことに。糸ちゃんだけが、そのケンカの様子を楽しそうに笑って眺めています。いざこざの原因は明らかにカホコの暴走なわけですが、ここでは巧妙に親戚たちの怒りの矛先がママに向くように仕掛けられており、カホコは「せっかく頑張って家族を集めたのに、みんなが勝手にモメ出したために、ばあばの願いを叶えられなかった」という被害者の立場に置かれました。 「ばあばがかわいそう!」  そう叫んで、家を飛び出したカホコ。追いかけてきたハジメくんに「誕生日会さえ開けば、環ちゃんと糸ちゃんの問題も解決すると思っていた」と告げます。するわけないんです。個々の感情にカホコがちゃんと寄り添って考えていれば、解決するわけないことはわかるはずなんです、こういう問題は。 ■依存と盲信を嫌味なく、正しいことのように描く悪意  まるでカホコが自立し、成長し、自分の判断で家族のために奔走できるようになったという、お涙頂戴的なテイストでお話が進みましたが、おそらく遊川さんはカホコの「家族への依存」と「家族愛への盲信」を悪意的なデフォルメで描いたのだと思います。  最後の最後でカホコが唐突に「子どもつくろ、ハジメくん! ばあば、すっごく喜んでくれると思う!」と言い出して、そのエゴっぷりは頂点に達します。それでも冷静にたしなめようとするハジメくんを「ハジメくんは家族がいないからわからないんだよ!」と突き放し、「やっぱ無理だわ俺」と別れを告げられてしまうのでした。  今回のカホコの「家族なんだから仲良くあるべき、それが当たり前」という思想は、第2話で糸ちゃんの病気が発覚したときに、いろいろ張り切って余計なお世話をしまくったママ・泉とまったく同じです。泉のときは、あからさまに「おせっかいをしてますよ」という演出を施し、カホコが同じことをした今回は「頑張り屋さん、成長してる、正しい」といったニュアンスを込めている。実際には、まるで生き写しのような行動原理なのに、描き方を変化させることで視聴者をミスリードしている。それが悪いとかブレてるとか言いたいわけじゃなくて、構造的に高度なテクニックだし、そういうところがこのドラマはホントに面白いという話です。  ママの庇護から離れようとすることで、逆にカホコが“ママ化”してきましたよ、というのが今回の話のキモですので、あと2~3話を残して『過保護のカホコ』は、かなり地獄の様相を呈してきました。それでも全体的にほのぼのしている感じなのが、高畑充希のお芝居の力なのでしょう。  さらに今回、パパ(時任三郎)の妹・教子(濱田マリ)が、どこかから迷子を拾ってくるという飛び道具まで放り込まれました。ご丁寧に遊川さんの前作『はじめまして、愛しています。』(テレビ朝日系)でも孤児を演じていた横山歩くんです。この投入もかなり唐突ですが、きっとそのほうが面白くなるからそうしたんでしょう。個人的に、そこらへんの遊川さんに対する信頼は厚いので、今後の展開を楽しみにしたいと思います。 (文=どらまっ子AKIちゃん)

2ケタキープの高畑充希『過保護のカホコ』家族愛への“盲信とエゴ”を描く、ほのぼの悪意

2ケタキープの高畑充希『過保護のカホコ』家族愛への盲信とエゴを描く、ほのぼの悪意の画像1
日本テレビ系『過保護のカホコ』番組公式サイトより
 過保護に育った女子大生が社会に飛び出して悪戦苦闘する話と見せかけて、実は家族との付き合い方がテーマっぽいことが見えてきた、遊川和彦脚本の『過保護のカホコ』(日本テレビ系)第7話。視聴率は10.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、横ばいながら今週も2ケタキープです。  今回は、過保護のカホコ(高畑充希)が周囲の影響で自立を促されたことで、さらに家族への依存を強めていく様が描かれました。カホコは、まったく社会に飛び出しません。というわけで、振り返りです。 (前回までのレビューはこちらから)  前回、「朝も一人で起きるし、駅まで自分で歩く」とママ(黒木瞳)に宣言し、「ママは金輪際、口を出さないから」と言われたカホコ。目覚まし時計を3つセットして、なんとかひとりで起きることに成功しました。さらに、着ていく服を自分で選ぶことにも成功。さらに、お弁当をひとりで作ることにも成功しました(中身はふりかけごはんとバナナ、ゆで卵、ツナ缶ですが)。  一方のママも、カホコの手伝いをしたくて仕方ありません。表向きは「別に……」という素振りですが、心配で仕方がない様子。  そんなカホコには、守らなければならない秘密ができてしまいました。ママのママであるばあば(三田佳子)が重い心筋症で、いつ死んでもおかしくない身体だと知ってしまったのです。ばあばの願いは、実家で静かに死んでいくこと。そして、今までみたいに家族仲良く、たまにみんなで集まってご飯を食べたりするような、普通の生活をしながら余生を生きることでした。  そして、今度の日曜日は孫娘・糸ちゃん(久保田紗友)の誕生日。ばあばは、この日もみんなが仲良く集まってパーティすることを望んでいます。  糸ちゃんといえば、神経の病気でチェリストになる夢が破れてからというもの、すっかりグレています。親戚のことは全員大嫌いだし、カホコのことが特に嫌いだし、当然誕生パーティなんて出るわけがない。糸ちゃんママの節ちゃん(西尾まり)もそれがわかっているので、今年の糸ちゃん誕生日会は中止にしたいとばあばに申し出ます。  また、ママの上の妹である環ちゃん(中島ひろ子)も、親戚に会いたくないと言いだしました。喘息持ちの環ちゃんが入院している病院を訪れたカホコは、またひとつ秘密を抱えてしまうことになりました。  環ちゃんは「私、嫌な人間だから、みんなに合わす顔がない」と言います。そして、喘息が出るとストレスで万引きをしてしまう常習者であることを告白します。旦那の衛くん(佐藤二朗)もそれを知っていて、アル中寸前の自分と万引き常習の環ちゃんが「お互いダメで弱い人間だから、支え合っていかなきゃ」と結婚したのだそうです。 「でもやっぱりダメみたい……」  環ちゃんのこぼすため息に、カホコは言葉をつなぐことができません。人生経験の乏しいカホコには、想像すらできない状況だからです。  想像すらできない相手の心境は、無視するに限る。というのが、カホコのやり方のようです。「それでも家族だから」の一点張りで、糸ちゃん誕生会に全員集合させるために奔走します。それはもちろん、ばあばの願いだから、ということもありますが、それも含めて今回、カホコが実にエゴイスティックな人間として描かれます。せっかく付き合い始めたハジメくん(竹内涼真)の「家族と別れたほうが幸せだってこともあるだろ」という一般論にも耳を貸さず、それどころかハジメくんを捨てた母親に「会いに行かない言い訳?」とか、けっこうひどいことを言い放ちます。  その後、シナリオ的にはいささか強引な段取りでしたが、誕生会にはみんなが揃うことに。糸ちゃんは別に改心してませんから、節ちゃん夫婦の問題も解決していませんし、環ちゃんと衛くんも、わだかまりを抱えたまま。みんな「今は会いたくない」と思っているのに集まってしまった家族は、当然ケンカになってしまいます。互いが互いを「バカにしてるだろ」「見下してるだろ」と言い合い、口汚く罵り合うことに。糸ちゃんだけが、そのケンカの様子を楽しそうに笑って眺めています。いざこざの原因は明らかにカホコの暴走なわけですが、ここでは巧妙に親戚たちの怒りの矛先がママに向くように仕掛けられており、カホコは「せっかく頑張って家族を集めたのに、みんなが勝手にモメ出したために、ばあばの願いを叶えられなかった」という被害者の立場に置かれました。 「ばあばがかわいそう!」  そう叫んで、家を飛び出したカホコ。追いかけてきたハジメくんに「誕生日会さえ開けば、環ちゃんと糸ちゃんの問題も解決すると思っていた」と告げます。するわけないんです。個々の感情にカホコがちゃんと寄り添って考えていれば、解決するわけないことはわかるはずなんです、こういう問題は。 ■依存と盲信を嫌味なく、正しいことのように描く悪意  まるでカホコが自立し、成長し、自分の判断で家族のために奔走できるようになったという、お涙頂戴的なテイストでお話が進みましたが、おそらく遊川さんはカホコの「家族への依存」と「家族愛への盲信」を悪意的なデフォルメで描いたのだと思います。  最後の最後でカホコが唐突に「子どもつくろ、ハジメくん! ばあば、すっごく喜んでくれると思う!」と言い出して、そのエゴっぷりは頂点に達します。それでも冷静にたしなめようとするハジメくんを「ハジメくんは家族がいないからわからないんだよ!」と突き放し、「やっぱ無理だわ俺」と別れを告げられてしまうのでした。  今回のカホコの「家族なんだから仲良くあるべき、それが当たり前」という思想は、第2話で糸ちゃんの病気が発覚したときに、いろいろ張り切って余計なお世話をしまくったママ・泉とまったく同じです。泉のときは、あからさまに「おせっかいをしてますよ」という演出を施し、カホコが同じことをした今回は「頑張り屋さん、成長してる、正しい」といったニュアンスを込めている。実際には、まるで生き写しのような行動原理なのに、描き方を変化させることで視聴者をミスリードしている。それが悪いとかブレてるとか言いたいわけじゃなくて、構造的に高度なテクニックだし、そういうところがこのドラマはホントに面白いという話です。  ママの庇護から離れようとすることで、逆にカホコが“ママ化”してきましたよ、というのが今回の話のキモですので、あと2~3話を残して『過保護のカホコ』は、かなり地獄の様相を呈してきました。それでも全体的にほのぼのしている感じなのが、高畑充希のお芝居の力なのでしょう。  さらに今回、パパ(時任三郎)の妹・教子(濱田マリ)が、どこかから迷子を拾ってくるという飛び道具まで放り込まれました。ご丁寧に遊川さんの前作『はじめまして、愛しています。』(テレビ朝日系)でも孤児を演じていた横山歩くんです。この投入もかなり唐突ですが、きっとそのほうが面白くなるからそうしたんでしょう。個人的に、そこらへんの遊川さんに対する信頼は厚いので、今後の展開を楽しみにしたいと思います。 (文=どらまっ子AKIちゃん)

視聴率続落5.2%でも『僕たちがやりました』に、どんどん期待が高まるワケ

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関西テレビ『僕たちがやりました』番組公式サイトより
 カンテレ制作『僕たちがやりました』第6話。視聴率は前回から0.2ポイント下げて5.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と過去最低を記録。反面、物語はギアを一段上げた感じで盛り上がってきました。今まででいちばん面白かった回だと思います。というわけで、振り返りです。 (前回までのレビューはこちらから)  10人の死者を出した矢波高爆破事件の容疑者として逮捕されていたパイセン(今野浩喜)でしたが、どっかから真犯人を名乗る男が出頭してきたおかげで、無事に無罪放免。「ええ響きやなー、冤罪!」とニッコニコ顔で、トビオ(窪田正孝)をご自慢のBMWに乗せて伊佐美(間宮祥太朗)とマル(葉山奨之)を迎えに行きます。  トビオはパイセンが逮捕されて以降、雲隠れしている間に伊佐美の彼女である今宵ちゃん(川栄李奈)とセックスしたり、マルに300万円を盗まれたりで、どんな顔で彼らに会ったらいいか逡巡していますが、まあどうでもいいことです。パイセンと“共犯者”の3人の高校生に、普通の日常が戻ってきたのですから。 「ただいま、そこそこの人生──」  トビオが久しぶりに家に帰ると、母さんは大好物のハンバーグカツカレーを作って待っていてくれました。童貞を捨てることに焦ってカラオケボックスで襲い掛かってしまった幼なじみの蓮子(永野芽郁)も、「気にしてない」と言ってくれます。それどころか、「また一緒にカラオケ行かない?」とまで。なんだか蓮子と付き合えそうな雰囲気ですし、むしろ事件前より「そこそこの人生」がいい感じになっています。  ここで描かれるのは、トビオも伊佐美もマルも、事件で10人の高校生が死んだことについては、たいして心を痛めていなかったという事実です。自分たちが犯人でさえなければ、死んだヤツらのことなんてどうでもよかった。彼らは、自分たちが殺したという罪悪感「だけ」に苦しんでいたのでした。だからその罪悪感から解放されてしまえば、もう事件のことなんでどうでもよかったのです。彼ら3人のうちの誰かは「どうでもいいと思い込もう」としていたのかもしれないし、誰かは本当に「どうでもよかった」のかもしれません。ともあれ、何も考えずに4人でスポッチャに通う日常が戻ってきました。 ■そうはいかないよね、そりゃ。  しかし、フットサル場で軽いノリで始めた「暴露大会」で、とんでもないことが起こってしまいました。トビオは逃亡中にホームレスのヤングさんに尻を掘られそうになったエピソードを披露し、爆笑をさらいます。  この暴露大会のルールは、「おもろなかったやつドリンクバー全部混ぜジュース」というもの。トビオの話でハードルが上がってしまったパイセンは、なんとかそれ以上の暴露をひねり出そうとして、言わなくていいことを言ってしまうのです。 「矢波高爆破事件の犯人な、あれやっぱ俺らやねん」 「真犯人、出てきたやろ、でっちあげやねん」  パイセンは「たっはー! そりゃそうやでなー!」とケラケラ笑っていますが、トビオたちは笑えるわけありません。パイセンは自分の暴露トークがスベッたと思ってカメムシ味のジュースを飲み干しますが、そんな問題じゃない。 「今の話、マジっすか……」  茫然とする3人にパイセンが説明したところによると、闇社会のドンであるパイセンパパがホームレスを拾ってきて整形手術させて、自首させたんだそうです。パイセンパパは警察ともズブズブなので、それで捜査を打ち切らせることも容易なんだとか。 「俺らが黙っといたら問題ないやろが!」  うろたえる3人を、パイセンが一喝。切り替えの早いマルは、すぐに「黙ってれば普通に生きていける」と納得しました。伊佐美も「10人殺したけど、闇の中だ……」と、現状を理解したようです。パイセンと3人で、「闇の中! 闇の中!」と闇の中音頭を歌い始めます。 「11人だ、ホームレスも死刑になれば、俺たちが殺したことになる。闇に埋めても、消えない──」  トビオが闇の中音頭に乗れないでいると、そのトビオの心境をダメ押しする人物がやってきます。事件を追っていた刑事・飯室(三浦翔平)です。  事件の真相に辿りついていたという飯室は、「法が許しても俺がお前らを許さない」などというアホでも思いつくようなセリフを言いに来たわけじゃありません。4人に、死んだ10人の高校生の写真を見せながら、「幸せを感じるたびに思い出せ、人の命を奪ったということを」と告げます。そして「一生、苦しめ」と。 ■追っ手がいなくなったことで追い詰められる逃亡者  飯室は、これ以上捜査するつもりはないと言いました。「真実を訴えても、最悪、俺が消される」と。つまり、警察からのオフィシャルな回答として、4人を追う者はもう誰もいないということです。『僕たちがやりました』が逃亡劇だとすれば、もう追っ手がいないので、物語としては一件落着となります。  しかし、トビオはこの日を境に、さらに追い詰められることになります。家に帰ればスキヤキが用意されていて、母さんも妹もなんだかんだ優しくしてくれる。蓮子からは「カラオケいつ行く?」とLINEが入る。そのすべてに吐き気を催す。「幸せが気持ち悪い」トビオはトイレでゲロを吐き続けます。  蓮子へのLINEに返信できないままのトビオ。学校に行けば、マルは平気な顔でクラスの女子に逃亡トークを面白おかしく話している。友だちから金を盗んでもヘーキ、10人殺してもヘーキ、誰にも言わなければヘーキ、それはマルのクズさであり、生き抜く強さでもあります。 「あいつみてえには、なれねえなあ」とトビオ。  廊下の向こうから、伊佐美が来ました。爆破事件の直後に首吊り自殺を図ったこともあった伊佐美は、やっぱりマルよりずっとナイーブです。笑顔で友人と話しながら歩いてきますが、トビオとは目を合わせることもありません。まるで、トビオとコンタクトすることであふれ出てしまいそうな何かにフタをするように、シカトして通り過ぎていきます。  この日、フットサル部の部室には、トビオしか来ませんでした。部活が終わる時間を告げる校内放送が鳴っています。トビオはいつものように、家に帰ろうとします。  画面からはエンディングテーマが流れています。 「♪生きろー、死ぬな、生きろ、生きろ」  夕陽に魅入られるように、トビオはカバンを捨てて駆け出します。その顔には、笑みさえ浮かんでいました。 「♪自由を追いかけてー」  そのままの勢いでトビオは屋上の腰壁を踏み越え、虚空に身を投げてしまいました。というところで、今回はおしまい。  まあ歌詞とシーンのシンクロがびしっと決まって、シーンとして実に気持ちいいラストでした。 ■シーンとして気持ちいいんですけど  今回、パイセンの出番が多かったこともあって、特に前半はだいぶコメディ寄りでしたが、パイセンと飯室の告白以降のシークエンスは心理的に超えぐかったです。  そもそも自分が真犯人だと知っていたのに、作品世界がコメディ寄りに見えてしまうくらい普通にハシャいでいたパイセンもえぐいですし、真相を知った後でもヘーキでいられるマルもえぐい。平静を装いながら全然平静じゃない伊佐美の心中も察するにあまりあるところですし、衝動的に屋上から身を投げてしまうというトビオもえぐいし、それに「♪自由を追いかけてー」という歌詞をかぶせる演出もえぐい。  ポップなフリしてますが、物語は、罪を犯し、その罪を償う機会が与えられないがゆえに苦しむ人間が、それぞれに心の血を流すパートに入ってきました。痛快青春ドラマのように見えて、実にえぐい。  原作がドラマ向きじゃないのは、エログロよりむしろ心理的なグロさだと思うんですが、ここまでは寄り道しつつも本質的な部分はちゃんとトレースしてきているような気がします。なので、そういう心理的ホラー、もしくは心理的スプラッターともいうべき作品が視聴率30%とかの国民的ドラマになるようだと社会がヤバい感じがするので、まあこの程度の視聴率でいいんじゃないかと思います。むしろ、変にライトにならずにちゃんと面白くなりそうなので、期待が高まるところです。 (文=どらまっ子AKIちゃん)

2ケタキープの高畑充希『過保護のカホコ』竹内涼真の「キュン死」演出が、逆に不穏すぎる!

2ケタキープの高畑充希『過保護のカホコ』竹内涼真の「キュン死」演出が、逆に不穏すぎる!の画像1
日本テレビ系『過保護のカホコ』番組公式サイトより
 遊川和彦脚本の『過保護のカホコ』(日本テレビ系)第6話が、16日に放送されました。視聴率は10.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、あいかわらず2ケタキープです。強い。  さて、公式ホームページでは、主人公カホコ(高畑充希)が「家族の問題を次々と解決していく痛快ホームドラマ」とされている同作品ですが、いよいよ不穏な空気が漂ってまいりました。ここまでも別に痛快ではなかったけど、いよいよです。というわけで、今回も振り返りです。 (前回までのレビューはこちらから)  前回、カホコは、ずっと依存してきたママ(黒木瞳)からの自立を宣言。ママはこれを受けて、仏頂面のまま実家に帰っちゃいました。  ママがいなくなってみると、パパ(時任三郎)もカホコも朝食くらい作れるものの、油の在りかさえわかりません。洗濯機の動かし方もわからないし、掃除もできない。根本家はどんどん荒んでいきます。カホコがママに送ったメールも、一向に既読が付きません。  パパはママを連れ戻そうとママ実家に赴きますが、ママは口さえきいてくれない。「家政婦として必要ってことですか、私が」と、パパが目の前にいるのにメールで返答するのみです。  しかし、問題が勃発していたのは根本家だけではありませんでした。ママの2人の妹も、ともに夫婦生活に亀裂が入り始めていたのです。  下の妹・節ちゃん(西尾まり)は、チェリストの夢破れた娘・糸ちゃん(久保田紗友)がグレちゃったことで夫婦ゲンカに。上の妹・環ちゃん(中島ひろ子)にいたっては、「なんか悪いことが起こりそうだから、離婚したほうがよさそう」という、ワケのわからない理由で実家に戻ってきてしまいました。  そうしてママ実家では、じいじ(西岡徳馬)とばあば(三田佳子)を囲んで久しぶりに家族水入らずの晩餐となったわけですが、ちょっとした言い争いから、今度はじいじが出ていくハメに。カホコ家に身を寄せると、節ちゃんの旦那・厚司(夙川アトム)、環ちゃんの旦那・衛(佐藤二朗)、さらにはパパのほうのおじいちゃん(平泉成)まで集まっています。  パパと厚司くん、衛くんの3人は、しきりに自分たちの奥さんの愚痴を言いながら、ばあばがいかに「できた女房」であるかをじいじに説きます。そして、カホコに対しても「カホコちゃんはいい奥さんになる」「いつまでも純粋なままでいてほしい」などと勝手なことを言い出します。あげく、自分たちの奥さんに「カホコちゃんからなんとか言ってくれないかな」とまで。  カホコはこれに、ややギレしながら「奥さんと仲直りするまで、この家に来ちゃダメだから」と言い放ち、全員(平泉成以外)で今からママ実家にいくことにします。  実家では、ばあばと姉妹3人が縁側でスイカを食べていました。その懐かしさもあって、みんなそれぞれに、姉妹にも言ったことのない心の内を告白していきます。  ママは、ずっと自分が愛されていない、必要とされていない人間なのではないかと悩んでいたと言います。それでも、カホコだけは「天使みたいな笑顔で私の胸に飛び込んできた」「思いっきり抱きついてきた」「この子だけは私のことを無条件に愛してくれる」と思ったんだそうです。  ダメ旦那4人組と一緒に陰でそれを聞いていたカホコは、ママのほうに駆け出します。 「自分が、ママのことなんにも知らなかったんだなって気づいた」 「今までママはママでしかなかったんだけど、ママも女の子だったんだよね」 「ママの愛は当たり前なんかじゃないんだよね、すっばらしい宝物なんだよね、偉大なんだよね」  ママが携帯を取り出すと、そこには読んでいなかったカホコからのメールがたくさん残っています。そのすべてに「大好きだよ」「ママ、大好きだよ」と書いてある。ママの目に、ぶわっ……と涙が浮かびます(このシーンの黒木瞳の芝居がホントすごかった)。  翌日、ママは家に帰ってきますが、出て行ったときの仏頂面に戻っています。そしてカホコとパパに、「あなたたちが望むならカホコのことは自由放任主義でいきましょう」と宣言するのでした。  翌日、カホコがママが帰ってきたことをばあばに報告に行くと、ばあばがひとり、縁側で電話をしています。お医者さんらしき人に、「自分がもうすぐ死ぬことを、家族に黙っていてほしい」とお願いしているようです。一族の精神的支柱であるばあばに、重い心臓病が見つかっていたのでした。 ■ばら撒かれた亀裂の種  ドラマもクール後半に入り、今回は物語の収束へ向けて全体的に「ネタ振り」的な要素の強い回だったと思います。カホコ家だけでなく、親戚一同、どの家族にも亀裂の種がばら撒かれています。しかも、どれもこれも実に深刻で「次々と痛快に解決」できそうな話じゃない。どうあれ、誰かが深く傷つくことになる匂いがプンプンと漂っています。  そういう、まるで家族崩壊・一家離散のモデルケースを複数一気に見せられているような、実に不穏な回だったのです。 ■竹内涼真の「キュン死」演出が意図するもの  一方で、カホコとハジメ(竹内涼真)の恋の行方は、たいへん瑞々しく描かれます。カホコが「カホコって呼んで」「好きって言って」とお願いして、ハジメが照れちゃって言えないという件の繰り返しなんて、超ベタなやつを徹底的にあざとく撮っています。さらにハジメが、カホコの表情に見とれて思わず「大好きだよカホコ」って言っちゃうとか、もうそりゃキュン死でしょう。そうでしょう。  前回の「お姫様抱っこ」からの「玄関グイ!」もそうなんですが、このドラマのロマンティックシーンのロマンティックさは、尋常ではありません。だから不穏なんです。竹内涼真が「キュン」を誘えば誘うほど、不穏になる。  なぜなら、おそらく遊川さんがこれから描こうとする「家族の崩壊と再生」のようなものは、今回までに仕込まれた伏線からすれば、相当にシビアで残酷です。「再生」が訪れない家族だってあるかもしれない。『東京物語』(1953)で原節子が放った「私はずるいんです」並みのパワーワードが発せられるかもしれません。登場人物たちの心の血がドクドクと流れる予感がします。  そういうものを「キュン」目的だけで見てる視聴者にブチかまそうとしているんじゃないか、と感じるんです。だって、あざとすぎませんか、竹内に対する演出だけが。竹内をあえてあざとく演出することで「キュン」な層を引き付けておいて、どえらいものを見せようとしてるんじゃないかと。ドロドロのやつをBUKKAKEするつもりなんじゃないかと。要するに、「キュン」層が全然見たいと思っていないような展開と結末が用意されているような気がするんです。それを、本当に見せたい層に見せるための「キュン死」連発であると。  当然、そのようなことになれば遊川さんは大いに批判を集めることになるでしょう。しかし、遊川さんがそうした批判をまったく恐れない作家であることだけは間違いありません。なので、不穏なのです。うーん、不穏! (文=どらまっ子AKIちゃん)

2ケタキープの高畑充希『過保護のカホコ』竹内涼真の「キュン死」演出が、逆に不穏すぎる!

2ケタキープの高畑充希『過保護のカホコ』竹内涼真の「キュン死」演出が、逆に不穏すぎる!の画像1
日本テレビ系『過保護のカホコ』番組公式サイトより
 遊川和彦脚本の『過保護のカホコ』(日本テレビ系)第6話が、16日に放送されました。視聴率は10.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、あいかわらず2ケタキープです。強い。  さて、公式ホームページでは、主人公カホコ(高畑充希)が「家族の問題を次々と解決していく痛快ホームドラマ」とされている同作品ですが、いよいよ不穏な空気が漂ってまいりました。ここまでも別に痛快ではなかったけど、いよいよです。というわけで、今回も振り返りです。 (前回までのレビューはこちらから)  前回、カホコは、ずっと依存してきたママ(黒木瞳)からの自立を宣言。ママはこれを受けて、仏頂面のまま実家に帰っちゃいました。  ママがいなくなってみると、パパ(時任三郎)もカホコも朝食くらい作れるものの、油の在りかさえわかりません。洗濯機の動かし方もわからないし、掃除もできない。根本家はどんどん荒んでいきます。カホコがママに送ったメールも、一向に既読が付きません。  パパはママを連れ戻そうとママ実家に赴きますが、ママは口さえきいてくれない。「家政婦として必要ってことですか、私が」と、パパが目の前にいるのにメールで返答するのみです。  しかし、問題が勃発していたのは根本家だけではありませんでした。ママの2人の妹も、ともに夫婦生活に亀裂が入り始めていたのです。  下の妹・節ちゃん(西尾まり)は、チェリストの夢破れた娘・糸ちゃん(久保田紗友)がグレちゃったことで夫婦ゲンカに。上の妹・環ちゃん(中島ひろ子)にいたっては、「なんか悪いことが起こりそうだから、離婚したほうがよさそう」という、ワケのわからない理由で実家に戻ってきてしまいました。  そうしてママ実家では、じいじ(西岡徳馬)とばあば(三田佳子)を囲んで久しぶりに家族水入らずの晩餐となったわけですが、ちょっとした言い争いから、今度はじいじが出ていくハメに。カホコ家に身を寄せると、節ちゃんの旦那・厚司(夙川アトム)、環ちゃんの旦那・衛(佐藤二朗)、さらにはパパのほうのおじいちゃん(平泉成)まで集まっています。  パパと厚司くん、衛くんの3人は、しきりに自分たちの奥さんの愚痴を言いながら、ばあばがいかに「できた女房」であるかをじいじに説きます。そして、カホコに対しても「カホコちゃんはいい奥さんになる」「いつまでも純粋なままでいてほしい」などと勝手なことを言い出します。あげく、自分たちの奥さんに「カホコちゃんからなんとか言ってくれないかな」とまで。  カホコはこれに、ややギレしながら「奥さんと仲直りするまで、この家に来ちゃダメだから」と言い放ち、全員(平泉成以外)で今からママ実家にいくことにします。  実家では、ばあばと姉妹3人が縁側でスイカを食べていました。その懐かしさもあって、みんなそれぞれに、姉妹にも言ったことのない心の内を告白していきます。  ママは、ずっと自分が愛されていない、必要とされていない人間なのではないかと悩んでいたと言います。それでも、カホコだけは「天使みたいな笑顔で私の胸に飛び込んできた」「思いっきり抱きついてきた」「この子だけは私のことを無条件に愛してくれる」と思ったんだそうです。  ダメ旦那4人組と一緒に陰でそれを聞いていたカホコは、ママのほうに駆け出します。 「自分が、ママのことなんにも知らなかったんだなって気づいた」 「今までママはママでしかなかったんだけど、ママも女の子だったんだよね」 「ママの愛は当たり前なんかじゃないんだよね、すっばらしい宝物なんだよね、偉大なんだよね」  ママが携帯を取り出すと、そこには読んでいなかったカホコからのメールがたくさん残っています。そのすべてに「大好きだよ」「ママ、大好きだよ」と書いてある。ママの目に、ぶわっ……と涙が浮かびます(このシーンの黒木瞳の芝居がホントすごかった)。  翌日、ママは家に帰ってきますが、出て行ったときの仏頂面に戻っています。そしてカホコとパパに、「あなたたちが望むならカホコのことは自由放任主義でいきましょう」と宣言するのでした。  翌日、カホコがママが帰ってきたことをばあばに報告に行くと、ばあばがひとり、縁側で電話をしています。お医者さんらしき人に、「自分がもうすぐ死ぬことを、家族に黙っていてほしい」とお願いしているようです。一族の精神的支柱であるばあばに、重い心臓病が見つかっていたのでした。 ■ばら撒かれた亀裂の種  ドラマもクール後半に入り、今回は物語の収束へ向けて全体的に「ネタ振り」的な要素の強い回だったと思います。カホコ家だけでなく、親戚一同、どの家族にも亀裂の種がばら撒かれています。しかも、どれもこれも実に深刻で「次々と痛快に解決」できそうな話じゃない。どうあれ、誰かが深く傷つくことになる匂いがプンプンと漂っています。  そういう、まるで家族崩壊・一家離散のモデルケースを複数一気に見せられているような、実に不穏な回だったのです。 ■竹内涼真の「キュン死」演出が意図するもの  一方で、カホコとハジメ(竹内涼真)の恋の行方は、たいへん瑞々しく描かれます。カホコが「カホコって呼んで」「好きって言って」とお願いして、ハジメが照れちゃって言えないという件の繰り返しなんて、超ベタなやつを徹底的にあざとく撮っています。さらにハジメが、カホコの表情に見とれて思わず「大好きだよカホコ」って言っちゃうとか、もうそりゃキュン死でしょう。そうでしょう。  前回の「お姫様抱っこ」からの「玄関グイ!」もそうなんですが、このドラマのロマンティックシーンのロマンティックさは、尋常ではありません。だから不穏なんです。竹内涼真が「キュン」を誘えば誘うほど、不穏になる。  なぜなら、おそらく遊川さんがこれから描こうとする「家族の崩壊と再生」のようなものは、今回までに仕込まれた伏線からすれば、相当にシビアで残酷です。「再生」が訪れない家族だってあるかもしれない。『東京物語』(1953)で原節子が放った「私はずるいんです」並みのパワーワードが発せられるかもしれません。登場人物たちの心の血がドクドクと流れる予感がします。  そういうものを「キュン」目的だけで見てる視聴者にブチかまそうとしているんじゃないか、と感じるんです。だって、あざとすぎませんか、竹内に対する演出だけが。竹内をあえてあざとく演出することで「キュン」な層を引き付けておいて、どえらいものを見せようとしてるんじゃないかと。ドロドロのやつをBUKKAKEするつもりなんじゃないかと。要するに、「キュン」層が全然見たいと思っていないような展開と結末が用意されているような気がするんです。それを、本当に見せたい層に見せるための「キュン死」連発であると。  当然、そのようなことになれば遊川さんは大いに批判を集めることになるでしょう。しかし、遊川さんがそうした批判をまったく恐れない作家であることだけは間違いありません。なので、不穏なのです。うーん、不穏! (文=どらまっ子AKIちゃん)

『僕たちがやりました』視聴率5.4%でも悲壮感ゼロ!? 画面から伝わる「やり切ってる感」が心地よい

『僕たちがやりました』視聴率5.4%でも悲壮感ゼロ!? 画面から伝わる「やり切ってる感」が心地よいの画像1
関西テレビ『僕たちがやりました』番組公式サイトより
 カンテレ制作の『僕たちがやりました』(フジテレビ系)も第5話。視聴率は5.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、まるで下げ止まりません。この先、5%を切ってくると、いよいよ「すわ打ち切りか!?」みたいな話題も出てくるでしょうが、同局で同じように低迷している『セシルのもくろみ』なんかに比べて、あんまり悲壮感ないんですよね。なんでかって、やり切ってる感が画面から伝わってくるからです。  脚本はまだ原作トレース以外の改変部分で結論が見えないのでなんとも言えませんが、クロスカッティング多めでテンポを出して、対照的な劇伴を強めに鳴らしてシーンごとのコントラストを出して……という演出の意図は明確に示されているし、何より役者のみなさんが楽しそうに演じているので、普通に考えれば気分が悪くなる筋立てなのに、気持よく見ていられる。視聴率をこっから挽回というのは難しそうですし、このまま、視聴者を選ぶ感じで突っ走っていただければ幸いです。というわけで、今回も振り返りです。 (これまでのレビューはこちらから)  10名の死者を出した矢波高爆破事件は、矢波高教師・熊野(森田甘路)の目撃証言によってパイセン(今野浩喜)が逮捕され、もう自白寸前。しかしそんな折、「おらがやりました」と言って真犯人を名乗る男が出頭してきました。  どうやらこの真犯人は、パイセンパパの輪島(古田新太)の差し金のようです。刑事・飯室(三浦翔平)はこの男が犯人でないことを確信していますが、動機も証拠もばっちり用意して自首してきたし、取り調べでも「おらがやりました」しか言わないので、どうしようもありません。  一方そのころ、逃亡中に出会ったホームレスのヤングさん(桐山漣)にケツを掘られそうになっていたトビオ(窪田正孝)は、意に反して性欲だけを向けられる恐怖を初めて実感し、数日前に幼なじみの蓮子(永野芽郁)に「1回だけやらして」と迫ったことを心の底から反省。もう一度、蓮子に会って謝りたいと涙に咽びます。 「やりたいときにやりたいことをやるだけだ。後ろが嫌なら前を向け」  ヤングさんの超男前な言葉に見送られて、トビオは蓮子を探しに街へ走り出します。蓮子に会いたい、蓮子に会いたい。  ほどなくトビオは蓮子を発見しますが、なんと蓮子は、爆破事件で重傷を負い、トビオの命を狙っている市橋(新田真剣佑)の車イスを押していました。2人はなんだか、とっても楽しそう。蓮子はトビオに気付きますが、「そういう関係かよ!」と誤解したトビオは走って逃げます。蓮子は「トビオに告るため」、市橋は「トビオを殺すため」に2人で一緒にトビオを探していただけなんですが、そんなことはトビオの知ったことじゃない。 ■トビオが「そこそこの人生でいい」思考に至ったワケ 「もうやだ、らしくないことしようとするからほら、こんなクソみたいな気持ちになるんだよ」 「昔からそうだ、熱くなってよかったためしがない、だからそこそこでいいんだよ」  蓮子と市橋の関係を誤解したまま、トビオは何もかもがどうでもよくなっちゃいました。ここ、重要なシーンです。なぜトビオが「そこそこの人生でいい」と、何度も何度も自分に言い聞かせるように語ってきたのか。 「そこそこ」から何度も踏み出そうとして、そのたびに傷ついてきたからでした。 「『好き』とか、そういうの向いてないんだよ、俺」  何度も傷ついたために、いわゆる「もう恋なんてしない」状態が平常運転になってしまった。このへんの主人公の心理に共感できないと、追いかけるのが結構きついんだろうな、と思うんです。痛みを避けることに慣れてしまった生活。それは、10人が死んだ爆破事件を起こしても、あんまり変わることがありませんでした。そして「ケツを掘られる危機」という実感を伴う恐怖によって一度は突き動かされたものの、自分勝手な誤解で、また同じように「やっぱりそこそこでいい」に戻ってしまう。  そうした人物が、いかにして『僕たちがやりました』という表題に帰結していくのか、というのが、この物語が描こうとする若者の生き様なんだと思います。  その後、トビオは都合よく、都合のいいロリ巨乳・今宵ちゃん(川栄李奈)のアパートに転がり込んで、あっさり童貞を捨てます。第1話で「夢も希望もないけど、せめて童貞を捨ててから死にたい」と願っていたトビオの童貞喪失は、単なる成り行きで訪れました。そして何度も今宵ちゃんを抱くうちに、あんなに焦がれたセックスという行為さえ「そこそこ」の「どうしようもない」日常になっていく。慣れていく。意味がなくなっていく。自己嫌悪が募る。母親からの留守電が沁みる。トビオは「もう逃げるのはやめよう」と決意し、ボーリング場で1,680円のプレイ代を踏み倒すと、「警察を呼べよ、早く!」とフロント係を怒鳴りつけます。  そのころ、熱海のキャバクラで逃亡資金をすべて溶かしたマル(葉山奨之)は伊佐美(間宮祥太朗)から金を盗もうとして失敗。伊佐美の金は、そこらへんの外国人観光客にかすめ盗られて、なくなってしまいました。結果、マルと伊佐美は殴り合いに。パイセンからもらった300万円ずつの逃亡資金を全部自分のモノにしようとしたことがバレたマルは「お前たちの正義感が俺の人生をメチャクチャにした、その賠償金だ」と言い出しました。ものすごいクズ! そうしたクズが、いかにして『僕たちがやりました』という表題に帰結していくのか、というのも、この物語が描こうとする若者の生き様なんだと思います。なので、このマルにさえ共感しないと話にノレないというのも、この物語の間口の狭さではあるよね。  さて、トビオがひと暴れして、ようやく警察を呼んでもらえることになったボーリング場に、パイセンが現れました。さくっと料金を立て替え、トビオは解放されます。いわく、「無罪や」とのこと。 「あの爆発と俺らは関係なかった、いたずらとテロが重なっただけやった」  殴り合いをしていた伊佐美とマルも、「真犯人逮捕、パイセン釈放」のニュースを見ていました。  そうしてひとたび、4人は罪悪感から解放されることになります。第5話はここまで。 ■「人生を終わろう」と「人生を終わらせる」の対比  トビオは自首する勇気がないという理由で、ボーリング場での無銭遊戯に走りました。警察に連れて行ってもらって、そこですべてを話して、どうしようもない人生を終わろうという算段でした。  一方、爆破事件で障害を負った市橋は、トビオ以上に何もかもがどうでもよくなっています。ひとりじゃおしっこするのだって大変だし、手下だった同級生は「タイマン張ろうぜ」とか言って車イスを蹴ってくるし、もうバイクにも乗れないし、蓮子と一緒にいたら「トビオを殺したい」という気持ちも萎えてくるし、死んでも悲しむ人は婆ちゃんひとりしかいないので、ほんとにどうでもよくなってる。蓮子だけが以前と変わらず接してくれるので、なんとか生きてるという感じです。  その蓮子が、手下のヤツらに目の前でスタンガンで倒され、目の前で輪姦されそうになります。市橋はナイフで脅されているし、そもそもひとりじゃ何にもできません。 「もうこれ以上、地獄見せんな……」 「もうどうでもいいんだよ、俺には……」  市橋は向けられたナイフを自らの手でつかむと、お腹にブッ刺しました。 「やりたきゃ俺を殺せ。もう終わった人間なんだよ」  さらにぐりぐりと、刃をねじこんで吐血しています。ビビった手下連中は、蓮子を解放して逃げだすしかありません。市橋は、文字通り命がけで蓮子を守ったのでした。  しかし、具体的な描写こそありませんが、こうやって女の子を輪姦したりっていうのは、きっと元気だったころの市橋だってやってきたことなんでしょう。立場が変化して、蓮子しか味方がいない、命を張る対象がいないからそうしただけで、別に正義感や倫理観での行動じゃない。ただの身勝手な自暴自棄が、結果として蓮子を助けることになっただけ。  このへんの一連の市橋って、かなり過剰というかグロいというか、動機と行動と結果のコントラストが激しくてキツイところなんで、ドラマでは緩めてくるかなーと予想していたんですが、しっかり伝えようとしていてよかったと思います。やっぱし、この作品、攻めるところはとことん攻めてると思う。  あと「攻めてる」でいえば、今宵ちゃんとトビオのセックスはどれくらい「攻め」てくれるのかなーと期待していたのですが、やっぱりこれはキスだけでお茶を濁された感じですね。でも、キスのあと別のシーンに飛ぶのではなく、すべからく直後にCMに入ったので、CM中に脳内補完してアレしておいて次の展開を待つことができ、意外に充足感があったように感じます。今後も楽しみです。 (文=どらまっ子AKIちゃん)