“感動押し売り系”スポーツ番組に一石を投じる、浜田雅功『スポーツジャングル』の媚びない姿勢

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 ひっそりと、でもしっかりと、ダウンタウン浜田雅功がスポーツメディアに戻ってきた。  舞台は『スポーツジャングル』(フジテレビ系)。かつて日曜ゴールデンで人気を博した『ジャンクSPORTS』の後継番組だ。深夜枠、しかも関東ローカルではあるのだが、今年4月から大きな番宣もなく、しれっと放送が始まった。  今さらながら振り返っておくと、『ジャンクSPORTS』は2000年4月から10年3月まで、10年続いたフジテレビの看板スポーツバラエティ。レギュラー放送終了後も何度か特番として復活するほど、根強い人気を誇った番組だ。アスリートの素の部分を掘り下げるとともに、マイナースポーツでも積極的に取り上げたことから、スポーツファンからの評価も高かった。  いまやバラエティ番組で引っ張りだこの篠原信一だが、そのキャラクターに初めてスポットを当てたのは10年以上前の『ジャンク』だったし、なぜか今、「フジテレビスポーツの顔」のように振る舞う石井一久が台頭したのも、間違いなく『ジャンク』の影響が大きい。 『スポーツジャングル』も、番組スタイルはほぼ『ジャンク』のまま。「スポーツの未知なる世界を探検」をコンセプトに、浜田の話術によってアスリートと競技の魅力・奥深さを引き出していく。むしろ、低予算の深夜枠になったことで、『ジャンク』時代の無駄なもの(ひな壇中央にあった謎の俳優枠など)がスッキリ削ぎ落とされた感じだ。  また、好き嫌いの分かれる浜田のアスリートいじりも健在。世界で活躍するアスリートであっても、浜田は遠慮なく手と口でツッコミを入れる。  先日の放送でも、オランダで活躍するサッカー・太田宏介に「この番組、アスリートが自慢しに来る番組じゃないぞ」と一喝し、柔道の金メダル候補・高藤直寿には「お前も、めんどくさいなぁ」と機先を制していた。  浜田の良さは、徹底的に「自分はスポーツのことは知らない」というスタンスを貫いていること。小倉智昭しかり、明石家さんましかり、メディアには「俺ほどスポーツに詳しい人間はいない」とアピールする人物は多い。そして、ほとんどの場合、それは視聴者にいい印象は与えていない。  浜田だって『ジャンク』を10年も続けたのだから、いっぱしのご意見番のように振る舞ったっておかしくはない。だが浜田は今でも、スポーツとアスリートに対して一定の距離を置く。それがあるからこそ、アスリートいじりも決して馴れ合いにはならないのだ。なんでもかんでも「感動をありがとう」に持ち込みがちな昨今のスポーツメディアにおいては、むしろこの浜田のスタンスのほうがストレスはない。  浜田とアスリートの関係性でいえば、今年2月、イチローが浜田直筆のイラスト入りTシャツを着てキャンプインしたことが話題になった。添えられていたメッセージは「人生は42歳から始まるんやて」。そのメッセージの通り、42歳イチローの今季の活躍はすばらしい。  また、14年には、浜田がMCを務める関西のローカル番組『ごぶごぶ』(毎日放送)にイチローがサプライズ出演。キー局の報道番組であっても、めったに出演することがないイチローがノーギャラ(といわれている)で出演したのも、アスリートを決して腫れ物のように扱わない浜田だからできた偉業といえる。  フジテレビでは『すぽると!』が今年3月に終了し、代わって『スポーツLIFE HERO'S』が始まったが、この番組のコンセプトは「感動」だ。先ほども述べたが、スポーツを感動で訴求するのは、もうおなかいっぱい。だからこそ、『スポーツジャングル』のような番組があることで、アスリートも視聴者もガス抜きができるのだ。 『スポーツジャングル』が『ジャンク』時代と大きく変わった点があるとすれば、制作がスポーツ局からバラエティ制作センターになったこと。チーフプロデューサーは『さんまのお笑い向上委員会』『ホンマでっか!?TV』『ワイドナショー』などを手がける中嶋優一だ。  今のところ、バラエティ制作センターになった利点も弊害も、どちらも見えてきてはいない。中嶋プロデューサーは慶応大学ラグビー部出身として知られているだけに、今後もスポーツへのリスペクトを失わずに番組を続けてほしいと願うばかりだ。  また今後は、『ジャンク』時代同様、「アスリートの奥様」や「スポーツマスコミ」など、よりスポーツのマニアックでコアな部分を取り上げてほしい。なんなら、もっとマニアックでもよい。「スポーツの未知なる世界を探検」と掲げるからには、そこまで突き抜けるべき。浜田がいれば、視聴者もアスリートも迷うことはないはずだ。 (文=オグマナオト)

“感動押し売り系”スポーツ番組に一石を投じる、浜田雅功『スポーツジャングル』の媚びない姿勢

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 ひっそりと、でもしっかりと、ダウンタウン浜田雅功がスポーツメディアに戻ってきた。  舞台は『スポーツジャングル』(フジテレビ系)。かつて日曜ゴールデンで人気を博した『ジャンクSPORTS』の後継番組だ。深夜枠、しかも関東ローカルではあるのだが、今年4月から大きな番宣もなく、しれっと放送が始まった。  今さらながら振り返っておくと、『ジャンクSPORTS』は2000年4月から10年3月まで、10年続いたフジテレビの看板スポーツバラエティ。レギュラー放送終了後も何度か特番として復活するほど、根強い人気を誇った番組だ。アスリートの素の部分を掘り下げるとともに、マイナースポーツでも積極的に取り上げたことから、スポーツファンからの評価も高かった。  いまやバラエティ番組で引っ張りだこの篠原信一だが、そのキャラクターに初めてスポットを当てたのは10年以上前の『ジャンク』だったし、なぜか今、「フジテレビスポーツの顔」のように振る舞う石井一久が台頭したのも、間違いなく『ジャンク』の影響が大きい。 『スポーツジャングル』も、番組スタイルはほぼ『ジャンク』のまま。「スポーツの未知なる世界を探検」をコンセプトに、浜田の話術によってアスリートと競技の魅力・奥深さを引き出していく。むしろ、低予算の深夜枠になったことで、『ジャンク』時代の無駄なもの(ひな壇中央にあった謎の俳優枠など)がスッキリ削ぎ落とされた感じだ。  また、好き嫌いの分かれる浜田のアスリートいじりも健在。世界で活躍するアスリートであっても、浜田は遠慮なく手と口でツッコミを入れる。  先日の放送でも、オランダで活躍するサッカー・太田宏介に「この番組、アスリートが自慢しに来る番組じゃないぞ」と一喝し、柔道の金メダル候補・高藤直寿には「お前も、めんどくさいなぁ」と機先を制していた。  浜田の良さは、徹底的に「自分はスポーツのことは知らない」というスタンスを貫いていること。小倉智昭しかり、明石家さんましかり、メディアには「俺ほどスポーツに詳しい人間はいない」とアピールする人物は多い。そして、ほとんどの場合、それは視聴者にいい印象は与えていない。  浜田だって『ジャンク』を10年も続けたのだから、いっぱしのご意見番のように振る舞ったっておかしくはない。だが浜田は今でも、スポーツとアスリートに対して一定の距離を置く。それがあるからこそ、アスリートいじりも決して馴れ合いにはならないのだ。なんでもかんでも「感動をありがとう」に持ち込みがちな昨今のスポーツメディアにおいては、むしろこの浜田のスタンスのほうがストレスはない。  浜田とアスリートの関係性でいえば、今年2月、イチローが浜田直筆のイラスト入りTシャツを着てキャンプインしたことが話題になった。添えられていたメッセージは「人生は42歳から始まるんやて」。そのメッセージの通り、42歳イチローの今季の活躍はすばらしい。  また、14年には、浜田がMCを務める関西のローカル番組『ごぶごぶ』(毎日放送)にイチローがサプライズ出演。キー局の報道番組であっても、めったに出演することがないイチローがノーギャラ(といわれている)で出演したのも、アスリートを決して腫れ物のように扱わない浜田だからできた偉業といえる。  フジテレビでは『すぽると!』が今年3月に終了し、代わって『スポーツLIFE HERO'S』が始まったが、この番組のコンセプトは「感動」だ。先ほども述べたが、スポーツを感動で訴求するのは、もうおなかいっぱい。だからこそ、『スポーツジャングル』のような番組があることで、アスリートも視聴者もガス抜きができるのだ。 『スポーツジャングル』が『ジャンク』時代と大きく変わった点があるとすれば、制作がスポーツ局からバラエティ制作センターになったこと。チーフプロデューサーは『さんまのお笑い向上委員会』『ホンマでっか!?TV』『ワイドナショー』などを手がける中嶋優一だ。  今のところ、バラエティ制作センターになった利点も弊害も、どちらも見えてきてはいない。中嶋プロデューサーは慶応大学ラグビー部出身として知られているだけに、今後もスポーツへのリスペクトを失わずに番組を続けてほしいと願うばかりだ。  また今後は、『ジャンク』時代同様、「アスリートの奥様」や「スポーツマスコミ」など、よりスポーツのマニアックでコアな部分を取り上げてほしい。なんなら、もっとマニアックでもよい。「スポーツの未知なる世界を探検」と掲げるからには、そこまで突き抜けるべき。浜田がいれば、視聴者もアスリートも迷うことはないはずだ。 (文=オグマナオト)

“神スイング”稲村亜美を見習うべし!? 『ユアタイム』と市川紗椰に「本当に足りないもの」とは

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稲村亜美オフィシャルブログより
 番組開始から1カ月。フジテレビ系『ユアタイム~あなたの時間~』に、光明はまだ見えない。  MCを務める市川紗椰のかみっぷり、キョドりすぎの進行ぶりばかりが批判の矢面に立たされている。だが、もっとその中身を問いただすべきではないだろうか?  象徴的なのがスポーツコーナーだ。このコーナーにこそ、『ユアタイム』という番組が抱える「広く浅く」のスタンスが如実に表れている。プロ野球がベースとはいえ、特集競技は日替わり。さらに、特集競技で取り上げる試合(選手)は1つか2つ。それ以外のリーグ戦はまるでなかったかのように、小さな字幕で押さえる程度だ。順位表も、基本的には出てこない。 『プロ野球ニュース』の伝統を受け継ぎ、15年も続いてきた『すぽると!』を終わらせてまで始めた番組のスポーツ枠がこれ? という感想を抱く人も多いだろう。  かつての『プロ野球ニュース』が画期的だったのは、日本各地で行われた最大6試合のプロ野球をただ順番に見せるのではなく、6試合でひとつの物語のように見立てて構成していたこと。『すぽると!』にも受け継がれていた「スポーツの物語性」が、この番組では足りないのだ。  ユアタイム番組公式ページでは、この番組の特徴を《ノンジャンルでアトランダムに鋭く深く詰め込んだ新感覚の情報シャワー》と記している。だからまあ、狙い通りといえば狙い通りなんだろうが……。それにしても、ちょっとアトランダムすぎやしないだろうか?  もっとも、コアなファンであれば地上波を見限り、『プロ野球ニュース』を見ているはずなので、特に支障はないのかもしれない。だが、この『ユアタイム』と『CSプロ野球ニュース』を比較すると、「MCに求められるもの」が見えてくる。  実は『CSプロ野球ニュース』でもこの春、キャスターの刷新があった。トヨタのCMで見せた美しすぎる打撃フォームや、始球式での豪快な投球フォームが“神スイング”“神ピッチング”と評判のタレント、稲村亜美が金曜日担当のキャスターに抜擢されたのだ。  興味深いのは、この稲村も「よくかむ」とネットで話題になっている点。ただ、稲村の場合は市川とは異なり、かむことが「けなげ」「頑張れ!」と、世のオジさん連中から支持を集める結果になっている。もちろん、しっかり読んでほしい、というクレームもあるが、それ以上に応援姿勢が目立つのだ。稲村の隣に座る野球解説者・高木豊の表情が如実にそれを物語っている。  一方の「かむキャスター」は批判を集め、もう一方は応援される。その差は一体どこにあるのか? 端的に言ってしまえば、対象への愛情・情熱というほかない。  稲村は現在、各球場での始球式行脚が話題だ。そして、投げるたびに球速が増している。つまり、それだけトレーニングに励んでいる、ということ。タレントの始球式、といえば「ノーバン」ネタばかりで飽き飽きしていた中、100キロを超す「本格派」ピッチングを見せてくれるのだから、それだけで応援したくなる視聴者は多い。  また、『CSプロ野球ニュース』以外でも、テレビ東京系『ゴルフの真髄』、文化放送『関根勉のスポパラ』、ニコニコ生放送『話せるスポーツニュース スポヲチ』のアシスタントと、スポーツに特化した存在になっているのも特徴だ。専門性を極めよう、という姿勢もまた好感度を生む。  思い返せば市川も、人気が出たキッカケは鉄道や相撲へのオタクぶり、情熱あふれる語り口だった。だが、『ユアタイム』での市川といえば、コメントを求められても無難にまとめようとして、結果まとまらない……の繰り返しだ。とにかく、「熱量」が伝わってこない。それこそが、「かむ」こと以上の課題なのだ。  もちろん、まだまだ挽回できる機会はあるはずだ。4月29日の放送では「鉄道博物館オープン」のニュースを受けて、鉄道の歴史について熱を込めて語る市川の姿があった。また、別のニュースでマンガ『宇宙兄弟』の「本気の失敗には価値がある」という名言を引用してコメントを述べていたときも、本来のオタクぶりを感じさせるものがあった。あの表情をほかの場面でも見せてくれれば、番組の評価も市川の評価もまた変わってくるのではないだろうか?  だからこそ、5月の『ユアタイム』と市川にはちょっとだけ期待している。大相撲5月場所が、間もなく始まるからだ。野球ニュースでの素っ気ない表情よりも、大相撲を嬉々として語る市川の姿のほうがよっぽど見ていて心地いい。  なんなら毎日、鉄道と大相撲、マンガの話題を中心に据え、その合間にほかのニュースを取り上げるくらいの「アトランダムさ」がないと、市川の本領は発揮できないのではないだろうか? それが果たして、ニュース番組といえるのかはわからないが。 (文=オグマナオト)

「いったい誰のため?」フジ“子役たちの引きつった笑顔”が物語る、野球中継の未来

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さすがの芦田プロも、お手上げ!?
「どうせ野球なんか誰も見ないだろ。だったら番宣しろ。子役でも呼んどけ」  そんな編成の声が聞こえた気がした。4月12日のフジテレビ系「東京ヤクルト対読売ジャイアンツ」中継のことだ。  プロ野球中継は数字が取れない、といわれて久しい。今年の開幕戦(日本テレビでの巨人戦)は珍しく2ケタ(10.4%)を記録したものの、そういった「開幕戦」「優勝決定戦」といったオプションでもつかなければ、なかなか地上波でプロ野球を見ることはできなくなった。  だからこそ、平日のゴールデンで中継してくれるのは野球ファンとしてうれしい限り……のはずなのに、テレビ欄を見て暗澹たる気持ちになった。 「何かが起こるSG東京決戦!超強力S打線と新生・由伸Gが激突!さらにドラマと超合体芦田&寺田心がドキドキリポート」  芦田愛菜、加藤清史郎、寺田心、松田芹香の4名の子役が、17日から始まるドラマ『OUR HOUSE』の番宣のため、神宮球場の最前列に陣取っていた。  実際にテレビに映し出されたこの光景には、本当に胸が締め付けられた。子役たちの「やらされてる感」が半端ないのだ。結局、この日の中継は、誰に向けて作ったものだったのか? 最後までわからなかった。  プロ野球ファンのため? もちろんそれは間違いないが、だとしたら、子役の作り笑顔が何度もインサートされる画面に耐えられるだろうか?   ドラマファンや子役ファンのため? まだ始まってもいないドラマに、どれだけ「集客力」があるのか? そもそも、巨人ファンの芦田愛菜、熱狂的な阪神ファン(しかも、鳥谷シンパ)を自任する加藤清史郎に、ヤクルトユニフォームをまとわせている時点で胸が痛んでしまう。しかも、子役たちは8時以降、画面に映ることは許されない。  ならば、8時以降は、よりマニアックに野球を伝えてくれるのか? と期待しても、特に変化は見られなかった。そして、3回途中から始まった中継が8回途中でサヨウナラ、では、試合の流れも勝敗も堪能できない。  結局、この日の中継は、日本シリーズの放映権を手にするための「義理」「付き合い」としか見えなかった。制作サイドが本気になれない中継を見て、誰が楽しめるのだろうか?  プロ野球は数字が取れない、といっても、それはプロ野球そのものの人気が落ちているというわけではない。観客動員数も、グッズの売り上げも、ファンクラブ会員数も、ここ数年は増加傾向だ。女性ファンだって、各球団の努力で確実に増えている。そんな現状を顧みず、いまだに巨人戦に固執し、中継スタイルも旧態依然としていれば、視聴率など望めるはずもないだろう。  これは何も、フジテレビに限った話ではない。たとえばラジオ中継では4月7日に、NHK第一、TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送の4局がそろって巨人戦を中継する、という出来事があった。ライオンズ戦がなかったとはいえ、「パ・リーグ聞こうぜ」の文化放送まで、いったいなぜ?  10年前ならいざ知らず、これほど「多様性」が叫ばれる時代にあってこの編成は、未来や現在の野球ではなく、過去の栄光しか見ていないから、と言わざるを得ない。  結局、野球中継は数字が取れない、のではない。数字を取るための工夫が足りないのだ。たとえば、メジャーリーグ中継では一般的になりつつある投球や打球情報を細かく解析・可視化する「トラッキングシステム」の活用。今回のフジテレビの野球中継は、日本における「トラッキングシステム」の業界トップ・データスタジアム社がサポートしていたのだから、技術的にはできたはずだ。  データ的なものでは少数のコアなファンにしか訴求できない、というのなら、プロレス的な盛り上げ方をしたっていい。今回であれば、ヤクルトのお騒がせマスコット・つば九郎がトラ党・加藤清史郎君にどんどん横ヤリを入れる、といったことだってできただろう。阪神戦じゃない、と言われようとも、子どもたちの引きつった笑顔を見せられるより、野球ファンであればそっちのほうがよっぽど楽しめるはずだ。 『プロ野球ニュース』(フジテレビ系)の初代キャスターである佐々木信也は、自著『「本番60秒前」の快感』(2009年、ベースボール・マガジン社新書)の中で、「野球演出家」の必要性を訴えている。 《ヒーローインタビューにしてもそうですが、現状の野球界を演出家としての視点で眺めたとき、改善したほうがいいのではないか、と思われるポイントは山ほどあります》  佐々木のこの指摘は、「球場演出」を中心に述べたもの。この本が上梓されて以降、佐々木が期待した通り、野球場の演出方法は急激に進化を遂げている。それが、観客動員やファンクラブ会員数の増加につながっている。  むしろいま必要なのは「野球演出家」ではなく。「野球“中継”演出家」だ。本来それは、番組プロデューサーやディレクターの役割であるはずなのだが……。今のままでは、野球中継に未来はない。 (文=オグマナオト)

フジテレビはやっぱり不安大? ジャニーズ、お笑い、女子アナで勝負をかける各局スポーツ番組事情

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 リオ五輪まであと4カ月。そして、4年後に迫った2020年東京五輪に向けて、今まで以上にスポーツニュースへの需要が伸びると予想されている。当然、各局とも競うようにスポーツ系の新番組を用意。そこで興味深いのが、NHK、日本テレビ、フジテレビにおける三者三様のキャスティングだ。  NHKはジャニーズ、嵐の相葉雅紀。日本テレビはお笑い芸人、くりぃむしちゅーの上田晋也。フジテレビは、月からフリーとなるアナウンサーの加藤綾子。  ジャニーズ、お笑い、女子アナ。生粋のスポーツファンであれば「それだけはヤメテ」となるトップ3そろい踏み、ともいえる状況だが、そのキャスティングの裏にある狙いを見ていきたい。 ■NHKの場合  これまで、スポーツでは硬派を貫いていたNHKも、ついにジャニーズ帝国に陥落か。 嵐の相葉をMCに据え、新番組『グッと!スポーツ』をスタートさせる。旬のアスリートをスタジオに招き、「驚異の技」「強い心」「意外な素顔」など心に“グッと”くるエピソードを味わうスポーツエンタテインメント、だという。  ジャニーズがスポーツ番組でMCを務めるのは今に始まったことではない。ただ、NHKは最後の牙城、といってもよかっただけに衝撃は大きい。  もっとも、NHK側の狙いもよくわかる。スポーツの需要が増えている、といっても、まだまだ「マニア向け」という捉え方をされることも多い。ラグビーにおける五郎丸歩のようなわかりやすいスターでも現れない限り、新規開拓はなかなか難しい。そこで、すでにいるスター(ジャニーズ)の力を借りて、特に女性の目を向けさせたい、という狙いは明白だ。  従来のスポーツファンがうなだれるような番組だけはやめてほしいが、そこはこれまで、最もスポーツと真摯に向き合ってきたNHK。そして『あさイチ』でも見事にV6井ノ原快彦をブレークさせたNHK。スポーツ×ジャニーズのかけ算であっても、うまくやってくれるはず、と信じるしかない。 ■日本テレビの場合  日本テレビ×上田晋也×スポーツ、といえば週末深夜の『Going! Sports&News』。この組み合わせだけなら新しくもなんともないが、今年に入ってさらに、日テレスポーツにおける上田の影響力が増している。  1月からは深夜枠で、まだ無名の若手アスリートを取り上げる『上田晋也の日本メダル話』がスタート。さらに2月からは、BS日テレで民放BS初の障害者スポーツ専門番組『ストロングポイント』が始まり、上田がナレーションを務めている。  今年のリオ五輪どころか2020年までも見据え、若いアスリートと、これから人気も注目度も飛躍的に高まることが予想されるパラスポーツに目をつけた日テレと上田。さすがの先見の明、と感じる一方で気になる点も。すでに『Going!』も7年目に突入したというのに、上田からなかなか“スポーツのにおい”がしないのだ。  それだけ、本業であるバラエティが順調だから、ともいえる。だが、局のスポーツの顔として打ち出したい日テレとして、これでいいのだろうか? ■フジテレビの場合  NHK、日テレ以上に先行きが不安なのが、フジテレビだ。  3月で終了する『すぽると!』に代わって、土日夜の新スポーツ情報番組『スポーツLIFE HERO'S』がスタート。その日曜MCとして抜擢されたのが、4月からフリーとなる加藤綾子アナウンサーだ。  かつて、日本のスポーツニュースのあり方を変えた『プロ野球ニュース』。その流れをくむ『すぽると!』が終了する、という点だけでもスポーツファンにしてみればショックは大きい。それに加えて、後番組のメインMCがスポーツ報道歴のない加藤アナ、という人選では、フジのスポーツに対する姿勢が疑われても仕方がない。  女性という新たなマーケットに目を向けたNHK。将来性と新機軸に目を向けた日テレ。この二局と比較すると、明らかに「番組の意図」「今後の伸び代」が見えにくいのがフジなのだ。  加藤アナに希望があるとすれば、これまでレギュラーだった『めざましテレビ』において、あの三宅正治アナの隣にいた、ということ。『すぽると!』初代MCであり、長年フジアナウンス室の「スポーツ担当部長」を務めたのが三宅アナだ。誰よりもスポーツとスポーツ報道を愛してきた男の薫陶を知らずと受けていてくれればいいのだが。  三宅アナは自著『言葉に魂をこめて』(ワニブックス)の中で、こんな言葉を紹介している。 「アナウンサーはつまらない試合を面白くする事はできない。でも面白い試合をつまらなくする事はできてしまう」  加藤アナにもこの言葉、ちゃんと伝えてくれているのだろうか? (文=オグマナオト)