
映画『僕だけがいない街』(ワーナー・ブラザーズ)
映画『僕だけがいない街』が19日に公開され、全国週末興行成績で初登場2位(興行通信社、以下同)を記録。同日公開の『ちはやふる 上の句』が4位ということで、好スタートを切った格好。
原作は三部けいによる同タイトルのマンガで、各出版社などが主催するマンガランキングの常連でも知られる人気作。過去に戻る「リバイバル」という自分でもコントロールできない能力を持つ売れない漫画家・藤沼悟(29歳)を主人公に、悟の少年時代に起きた女児連続誘拐殺人事件に迫るSFミステリー。2016年1月からはアニメも放送中。
実写版で主人公・悟を演じるのは、人気映画俳優にして大の酒好き競馬好きで知られる藤原竜也。相変わらず酒ヤケっぽいガラガラ声も健在だが、少し弱々しいアラサー男性を演じさせたら右に出るものはいないだろう。今回もその特性をいかんなく発揮している。何者かに母親(石田ゆり子)を殺され、その罪を着せられて警察から逃げる中「リバイバル」で小学生時代に戻る。母親を殺したのは女児連続誘拐殺人事件の真犯人で、偶然犯人に遭遇する中で母が真相に気づきその口封じをされた。犯人の正体を突き止めれば母親が助かると思い、小学生の悟は動き出す。
そんな悟を支える女子高生・愛梨を演じるのが、CMにドラマに大人気の有村架純……なのだが、正直この映画では演技の拙さが目についたようなそうでもないような。本人の名誉のためにいうなら、今回は演技が足りないように見えてしまう明確な理由があるのだが、それは後述する。愛梨はピザ屋で一緒に働く悟が好きなのか、よくちょっかいを出している。悟が母親殺害の容疑者となっても悟の無実を信じていろいろと手助けをし、逆に犯人に目をつけられて危険な目に。後にリバイバルする悟の心のよりどころといえる。
少年時代の舞台は北海道。ここでの悟は中川翼くんという少年が演じているが、見た人の多くは「最近の子役は上手やのお」と思うことだろう。安心して見ていられるし、物語の雰囲気も崩さない。
悟が通う小学校の教師・八代学を演じるのは及川光博。歳を食って以前の「王子様」風ではなくなったが、その分教師役はマッチしていたといえる。作中でもキーとなるキャラクターだけに、このキャストは成功だったのでは。
そして、悟の同級生で女児連続誘拐殺人事件の被害者の1人、雛月加代。この加代を救えるかどうかが悟の未来を変えるか否かを左右するというストーリー展開。加代は母親に虐待を受けており、暗くクラスでも浮いた存在だった。「一人っきり」の女児を狙うのが犯人の手口で、それに合致したのが加代というわけである。
で、ここが「有村架純の演技が足りない」気がする要因である。この加代を演じたのが子役・鈴木梨央ちゃんだが、とにかく演技がハンパじゃない。現在放送中の朝ドラ『あさが来た』(NHK)でも「演技が上手すぎる」と話題になったが、ここでもその実力を発揮。虐待を受ける女児という難しい役どころにピタリとはまり、表情も変えず涙するところなんかこっちが泣いてしまいそうだ。少年時代の悟と加代が「クリスマスツリー」を眺める場面は必見。有村の演技は残念ながらこれ以下といった印象だった。
ストーリーとしては「原作の早送り」「後半の展開が急ぎすぎ」「ツッコミどころが多い」など不評もあるが、原作を知らない人なら十分に楽しめるのではないか。シリアスで不気味な空気感もしっかり出ているし、筆者が見ている時は近くの女性客が何人かすすり泣いていた。悟が迎える“結末”と“真相”から目が離せない。
見どころは藤原竜也と子役をふくめ十分。一見の価値ありである。
(文=しねまっ子DERAちゃん)