
AV出演強要問題をはじめ、大手プロダクション関係者が労働者派遣法違反で逮捕されたり、キャンプ場での AV撮影をめぐり大手メーカー関係者らが摘発されるなど、大きく揺れ動いているAV業界。
そんな一連のAV騒動をルポした書籍『モザイクの向こう側』(双葉社)の著者である井川楊枝と、暴露系グラビアアイドルとして活躍する吉沢さりぃが、AVの諸問題について対談した。グラドルの目に、これらの問題は、一体どのように映っているのだろうか?
■気の弱い子は、強要されると断れない
井川 吉沢さんのコラムは、以前から拝読していました。今度、彩図社から文庫本を出版されるんですね。おめでとうございます。
吉沢 ありがとうございます! 『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』(11月18日発売)というタイトルで、自身初の著書です。
井川 吉沢さんは以前、日刊サイゾーのコラムでも書かれていましたけど(
参照記事)、1本目のイメージDVDをめぐって、モメにモメたんですよね。撮影当日、初めて台本を渡され、極小ビキニでバナナを舐めさせられたり、マッサージ器を使わされたり、乳首の魚拓を取られたとか。
吉沢 ええ。このときは撮影2日目で、トイレに行くふりをして脱走を企てたんです。でも、ディレクターに追いかけられて、泣きわめきました(笑)。
井川 グラビアの現場でも、いま騒がれているようなAV出演強要って、わりとあるんでしょうか?
吉沢 やっぱりありますね。例えば、女の子が「バナナは舐めたくない」って、マネジャーに言ったとしますよね。でも、マネジャーと制作側は裏で「ここまでやる」って決めておいて、マネジャーがわざと現場に来ないことがあるんですよ。それで、だまし討ちというか、逃げ場をなくして撮影することがあります。
井川 女の子はマネジャーに相談しようがないから、断りにくいですよね。
吉沢 そうですね。私なら断るんですけど、そうすると現場の空気が悪くなるんです。だから、気の弱い子とかだと、仕方なく折れちゃうでしょうね。でも一回、撮られちゃうと、その映像がいつどこで使われるかわからないから。
井川 元地方局のアナウンサーのMさんは、大学時代、AVだと聞かされず、街中で声をかけられ、飴を舐めさせられたとのことでした。撮影後、「この映像は使わないでください」って制作側に頼み込んだらしいのですが、結局使われてしまった。ましてや、契約を結んでしまったら、いくらお願いしても映像は使われると思ったほうがいいでしょうね。
吉沢 グラビアの強要ケースだと、制作側と事務所がグルのケースもあれば、事務所が勝手に「この子は、ここまでできます」って言っちゃったりすることもあります。それで制作側はできるものだと思い込んでいるけど、いざ撮影になると、女の子は聞いていなくて泣きだしちゃう。「マネジャーは現場にいないし、どうしよう……」みたいな。そういうときは、制作側も女の子も、どちらも被害者なのかなあと思います。
井川 なぜ、そういうケースが起こるのでしょうか?
吉沢 事務所のマネジャーは通常、固定給プラス歩合という給与体系なんですけど、DVDって、まとまったお金として入ってくるから、大きいんですよ。それで、なんとか決めなきゃいけないというので、あれもできるし、これもできるってしって吹聴しちゃうんだと思います。

『モザイクの向こう側』(双葉社)
■着エロからAVに行くのは、よくわかる
井川 吉沢さんは1本目のDVDでモメた際、「発売を取りやめるんだったら、200万円払え」って言われたそうですね。
吉沢 はい。結局、仕上がった作品を見てみたら、自分が思っていたほどエグくなかったんで、200万円も払うのはバカバカしいと思い、取りやめはしなかったんですけど(笑)。AVだったら、だいぶこの額も異なりますよね。
井川 1本のキャンセル料だと、似たようなものでしょうか。スタジオ代とかスタッフのギャラとか、賠償額は50~200万ぐらいの間だと思いますよ。ですが、AVの場合、単体の複数本契約というものがあります。国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」が報告した被害事例の中には、2,460万円の賠償金を請求されたケースがありました。これは、10本契約を結んだ単体の子が、1本目を撮り終えた後に「もう出演できない」っていう話になったみたいです。そこで、事務所側は、もしも残りの9本を撮っていたらこれぐらい稼げていたはずだということで、その料金を賠償金に加算したんです。
吉沢 ケタ違いですね。そんなに請求されたら、途中で嫌だと思っても逃げられないですよ。グラビアだと、10本契約なんてまずありません。人気のある子で、よくて2~3本ですね。
井川 そうですよね。ちなみに吉沢さんって、AVに誘われたことはあるんですか? 2008年に芸能人専門AVメーカーのMUTEKIが発足して以降、着エロアイドルがAV出演を口説かれるケースが増えましたが。
吉沢 私も誘われましたね。そのときは、「次にDVDを出すのであれば、乳首ポチとかやらないといけない」って言われ、それでグラビアが嫌になって、フリーになった頃だったんです。そしたら、DVDのプロデューサーから「こういう話があるんだけど」って、MUTEKIの提案をされたんです。1本1,000万円で、プロデューサーが仲介料として100万円抜くから、900万円という話でした。結局、怖気づいちゃって出なかったんですけど。
井川 いやあ、芸能人の冠が付くと額が違いますね! 今は単体のトップクラスが1本300万円程度じゃないかな。仮に事務所と折半だと、本人の取り分は150万円ということになりますね。
吉沢 私、着エロアイドルの女の子がAVに行くのは、すごいわかるんですよ。結局、着エロDVDでも、エグいことさせられるわけじゃないですか。ソーセージに練乳をかけたやつを舐めるとか。ローター使ってオナニーとか。下のアングルから撮影されて、腰を振っているから騎上位みたいな感じで撮られるとか。やっているうちに、むなしくなるんですよ。これなら、AVのほうがキレイなんじゃないかなって。AVのほうがお金もかけられている分、ジャケットもキレイに作られるし。それに、今は恵比寿マスカッツみたいに、AV女優がアイドル化しているから。
井川 その気持ちはわかります。着エロからAVに転身した子は何人かインタビューしましたけど、みんな、「AVに行って、こんなにチヤホヤされるとは思わなかった」って言うんですよね。ファンが爆発的に増えて、Twitterのフォロワー数も2,000ぐらいだったのが、数カ月で2万人を超えてしまったりとか。
吉沢 着エロのDVDを買う人って、今はすごくコアな存在なんですよね。あまり雑誌にパブが載ることもないし、DVDを買いに行っても、すごい端に着エロコーナーみたいなのがある感じで。DVDも今、1,000本売れたらヒットという感じで、300~500本程度でも次出せるというぐらいの規模なんです。
井川 やっぱり、AVの市場規模は、だいぶ大きいですよ。AVが売れない時代とはいっても、大手メーカーだと発売の初月で1,000本はクリアしておかないと話にならないって感じですし。
吉沢 今の若い子だと、グラビアアイドルよりAVに出たいっていう子のほうが多いんじゃないですか? AV女優になってお金をいっぱいもらって、恵比寿マスカッツに入りたいって。
井川 金銭面に加え、世間に認知されるという点でいうと、確かに着エロアイドルより、AV女優のほうがいいと思います。だから、スカウトマンも「タレントやってレッスン料を払うぐらいなら、AVやったほうがいいよ」って、芸能志望の子を誘うんですよ。ただ、ここで問題があります。AVの地位って、この10年ぐらいの間に急速に上がったんですけど、今回の警察の摘発でもわかるように、法的にはビミョーなところにあるんです。モザイクの向こう側では本番をやっていないっていう、ごまかしの上で成立しているジャンルですしね。この法的なところをクリアしてあげないと、日本のAVはグレーなビジネスのままです。あと、恵比寿マスカッツとかの例外はあるけど、基本的に地上波だと「裸をやってる子はダメ」ってなっちゃうし、CMは余計に取りにくい。そこそこのスポンサーが付いている、規模の大きな映画も同様です。だから、タレント志望の女の子の中は、AVに出て有名になるはずだったのに、逆に思うように活動できないっていうジレンマに陥っちゃうんですね。AV関係者が、芸能志望の子に対して、そういうリスクを説明しないで誘うのはよくない。
吉沢 難しいところですね。
井川 昔の女性は、AVは風俗みたいなものだと割り切ってやっていたけど、時代は移り変わってきています。いまAVは、立ち位置が曖昧になっている業界で、だからこそ、こうした強要の被害が起こっているのかなと思いますね。
●「AV出演強要問題」に揺れる業界を徹底取材!
『モザイクの向こう側』
井川楊枝 著
双葉社 刊
1400円+税