“ドッキリ芸人”小峠&アントニー「TBS藤井健太郎、ハゲ=面白いと思ってる説」

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撮影=尾藤能暢
 世の中に潜むさまざまな「説」を、アカデミックかつシュールかつ執拗に検証する『水曜日のダウンタウン』(TBS系)。斬新な切り口と抜群のくだらなさで確固たる地位を築いたこちらの番組で、たびたびドッキリを仕掛けられているのがこの2人、バイきんぐ・小峠英二とマテンロウ・アントニーである。渦中の芸人にとって、この『水曜日のダウンタウン』は、どのような番組なのだろうか? そして、番組の仕掛け人である演出家・藤井健太郎の素顔とは? DVD6巻「ドッキリSP!」、7巻「松野明美SP!」巻発売記念のスペシャルインタビュー! *** ――小峠さんとアントニーさん……ちょっと不思議な組み合わせですね。 マテンロウ・アントニー(以下、アントニー) 小峠さんとは以前、別の番組で、一緒にずっとドミノ並べてましたよね。 バイきんぐ・小峠英二(以下、小峠) 丸2日間泊まり込みでね。最下層のロケだね。 アントニー 最下層(笑)。もう二度とやりたくない。スタッフさんに「アントニーは手も指もデカくて(こういうのが)苦手なのわかっててオファーしてるから。たくさん先輩に迷惑かけるところ見たいんだよ」って言われて……。本当につらかったです。 小峠 実際、迷惑かけたしね(笑)。最後のほうは、みんな「またアントニーかよ!」ってなってたし。 アントニー 思い出しただけでも胃が痛くなります。夢も、ずっとドミノでしたもん。 小峠 あの後は、しばらくみんなドミノの夢見てたらしいよ。 ――そのドミノのロケに比べたら、『水曜日のダウンタウン』の企画は、だいぶ優しい……? アントニー ジャンルが違いますね。また違うエグさが。こんなこと言ったらあれですけど「いま一番好きな番組が『水曜日のダウンタウン』」っていう人、性格悪そうですよね。 小峠 ちょっと信用できないね。 ――一体全体、ほかの番組と、どういうところが違うのでしょうか? 『水曜日のダウンタウン』は。 小峠 よくもまぁ、こんなに変なこと考えつくよなって思いますね。企画会議とか、どうなってるんだろう? たぶん、めちゃくちゃ出してると思うんですよ、ネタを。それを削って削って残った……って感じじゃないですか? とんでもないアイデアが飛び交ってると思う。 アントニー ボツになった案、見てみたいですよね(笑)。 小峠 「それはマジで死んじゃうね」「あぁ、死ぬね」みたいなやつがあると思うよ。 アントニー 死んじゃうからボツ(笑)。 ――めちゃくちゃオーソドックスなネタも、ボツになってそうですね。「いやいや、こっちでよかったんじゃ……」っていう。 アントニー 「自分の家を開けたら人がいる」(※「『開けたら人がいる』が結局一番怖い説」)って、相当ギリギリだと思うんですよ(笑)。 小峠 カメラ回ってなかったら、普通に犯罪だからね。 アントニー 芸人だったら何やってもいいと思っているのか、とにかくダメですよ。またいつかあるんじゃないかと思うと、おちおち寝てもいられない。AVも見られない。自分の家が自分の家じゃないみたい。住み心地がすごく悪くなりました。
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――テレビのドッキリをかなりの数こなされているお2人でも、やっぱり慣れませんか? アントニー というか、普通の番組のドッキリとは全然違うので。 小峠 異質だね。予告ドッキリとか。「ドッキリをやります」ってことだけ知らせておいて、後で答え合わせをするという。そんなの、見たことも聞いたこともない。斬新な切り口ですよ。 アントニー 『有吉弘行のドッ喜利王』(TBS系)って覚えてます? 藤井(健太郎)さん演出の。自分が大喜利で答えた現象が、後日、本当に起きるというドッキリ。あれとか無茶苦茶ですよ。 小峠 あれ、何やられたの? アントニー 僕は「タクシーに知らない黒人が乗ってくる」(笑)。小峠さんはアレですよね。かみつかれて……。 小峠 そう、「病院で看護師さんがかみついて採血する」(笑)。 アントニー あと、これはドッキリじゃないですけど、やっぱり松野明美さんシリーズはすごい。DVD7巻の「松野明美SP!」に収められているやつ。「未来の自分からの電話信じてるやつ」(※「松野明美、何でも信じる説」)とか、たまらなかった。マジで、日本一ピュアな人なんじゃないですか? 小峠 この前やった、「足に鉄球つけられたことある日本人まだギリいる説」っていうのも、はっきり言って「何それ?」だよね。それを「おお!」と思う? 足に鉄球つけてるやつ「おお!」って思う? アントニー なんないっすね(笑)。 小峠 なんて言ったらいいかな、そう言われればそんなこともあったな、映画のワンシーンで見たことあったなレベルのものを、あんだけ広げるっていうのは……すごいよね。 アントニー 誰が最初にその企画を口にするのか(笑)。マジで勇気要りますよね。「何言ってんの?」ってなりますよね、普通。 小峠 「足に鉄球つけてる人なんですけど……」とか言うわけでしょ。会議とかで(笑)。『クイズ☆タレント名鑑』(同)の松島トモ子さんとかもそう。よく掘り起こしてきたなと思いますよ。よく思いついたな、そのキャスティングっていう(笑)。 アントニー あと、『水曜日のダウンタウン』はタブーに触れることが多い。僕、これは完全にタブーだと思ったのが「事故物件に霊媒師を集めてどんな事故があったか当てる」(※「事故物件 霊能者なら部屋に入るだけで何があったか分かる説」)っていうやつ。 小峠 あったね~。 アントニー 呼ぶまではいいんですよ。それ、全部外すんですよ。ダメでしょ、その人たち、仕事なくなっちゃうでしょ(笑)。面白かったですけど、外したときの霊媒師さんたちの表情が忘れられない。自信満々で「首吊りです」って答えて、正解が「病死」とか。 小峠 俺はね、意外と食べる企画が多くて。相方と2人で、西村は食べ続ける、俺は食べられないっていう企画とか。あと食べ物に名前が入っている有名人と会えばそれが食べられる、それ以外は食べられないっていうやつ。もう、わけがわからない。サンドウィッチマンだったらいいですけど、メイプル超合金でメイプルシロップもらってもね……。 アントニー 結局、どっちが勝ったんでしたっけ? 小峠 あれは俺(食べないほう)が勝った(笑)。最初はスゲェ腹減るんだけど、途中からさ、平気になるんだよね。腹減ったという感覚が底までくると、そこから何も感じなくなる。俺はそれを「空腹の向こう側」と呼んでいる。 アントニー 空腹の向こう側(笑)。
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――『水曜日のダウンタウン』の影響力って、感じますか? アントニー 街中で、ちょっとヤバそうな人に声かけられるようになりました。キャップを目深にかぶってマスクして若干前かがみで歩いている人から、ものすごいちっちゃい声で「……『水曜日のダウンタウン』見てます」って(笑)。支持層が独特……。 小峠 周りの人からしたら、ヤベェやつがヤベェやつに声かけてるように見えるだろうね(笑)。俺はプレゼンテーターのほうで呼んでもらうことも多いんですけど、出るたびに松本(人志)さんが、俺のことを「ちんちん」「ちんちん」言うから、一時期「ちんちん」のウィキペディアに名前載ってたんですよ(笑)。 ――ちんちんのウィキペディア!! 小峠 俺、衝撃のあまりスクショしたよ。ほら。 ――……これ「あなたの探しているちんちんはどれですか?」のページですよね(笑)。 アントニー だから「ウィキペディアを編集する人たち」っていうのが、この番組を見ている層なんですよ。 小峠 まずさ、ちんちんのウィキペディアを探そうっていう時点でイカれてる(笑)。結構面倒くさい作業をしてまで、俺の名前をちんちんのページに載せたい。そんな人たちに支持されている番組ということですね。 ――視聴者が、作り手に引っ張られている(笑)。 小峠 スタジオ行くと、藤井さんがいるわけじゃないですか。何考えてるかわからない目ぇしてるもんな。 アントニー 不気味ですよね。『DEATH NOTE』のLと同じ目をしてる。 小峠 めちゃくちゃ笑うわけでもなく。叩けばなんか出るだろう、あの人(笑)。 アントニー さらに、そこにダウンタウンさんがいらっしゃるわけで。結局、藤井さんがダウンタウンさんをバックにつけて好き勝手やってるっていう構図ですよね。 小峠 確かにね(笑)。まぁでも、結局、芸人冥利に尽きるというか、やっぱりそうやって面白い、斬新なお笑いの企画に参加させていただけるっていうのは名誉なことだよね。 アントニー あんまり自分の努力や能力に限らず面白くしてもらえるので、僕は結構ありがたい。 小峠 ありがたいよね。ポテンシャル以上のものを引き出してもらえるもん。 ――最後に、『水曜日のダウンタウン』には、どんな芸人さんが向いていると思いますか? アントニー それはアレです。丸坊主の芸人(笑)。 小峠 あばれる君、クロちゃん、アントニー、俺……なぜかハゲが多い。 アントニー これはもう、藤井さんの趣味嗜好でしょう。 小峠 あんだけの奇才なのに、「ハゲ=面白い」っていうベタな方程式が、どっかにあるんだろうね(笑)。スーパーベタな。 (取材・文=西澤千央)
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『水曜日のダウンタウン6』
●DVD『水曜日のダウンタウン6』 <ドッキリSP!>どっきりかけられ王、バイきんぐ・小峠英二が大活躍!? ・2014年一番ドッキリにかけられたの俺説 ・2015年一番ドッキリにかけられたの俺説 ・どんなにバレバレのダメドッキリでも芸人ならつい乗っかっちゃう説 ・「お会計はもう頂いております」のやつ、毎食続いたらめちゃくちゃ怖い説 ・逆ドッキリ、逆逆逆くらいまでいくと疑心暗鬼になる説 ・「開けたら人がいる」が結局一番怖い説 【未公開】バイきんぐ小峠への予告ドッキリ未公開集
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『水曜日のダウンタウン7』
●DVD『水曜日のダウンタウン7』 <松野明美SP!>女王、松野明美を超える仕掛け人はいるのか? ・アスリートが仕掛け人のドッキリ、大根すぎて逆に面白いんじゃないか説 ・松野明美を超える大根などいない説 ・有名人の身内、気をつけないと悪いモノマネ芸人にオレオレ詐欺で騙される説 ・モノマネオレオレ電話 第2弾 ・松野明美、何でも信じる説 【未公開】ガチっぷりが伝わる松野明美のオフショット 価格 2,700円(税込) 発売元 TBS/よしもとアール・アンド・シー

「日7戦争」勃発! “負け戦”必至のTBS『クイズ☆スター名鑑』の戦い方

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『クイズ☆スター名鑑』TBSテレビ
 いよいよ“日7戦争”が始まった。  今秋から、日曜午後7時台のテレビは、かつてないほどの激戦区となる。  これまで視聴率的に“絶対王者”に君臨していたのは、日本テレビ系の『ザ!鉄腕!DASH!!』。『笑点』から始まり、『世界の果てまでイッテQ!』『行列のできる法律相談所』へと連なる鉄壁のラインナップは、視聴率を支えるファミリー層に絶大な強さを誇る。  その強力な相手に、単独で応戦してきたのが、テレビ東京系の伊藤隆行による『モヤモヤさまぁ~ず2』だ。  そして、10月からテレビ朝日系では、加地倫三の『アメトーーク!』がゴールデンと深夜の2本立てになって登場。さらに、TBS系では、藤井健太郎による『クイズ☆タレント名鑑』が『クイズ☆スター名鑑』と名前を変えて奇跡の復活。  王者『鉄腕!DASH!!』に、各局のお笑い番組のエーススタッフが挑む、という構図ができあがった。  ちなみにフジテレビでは、やや遅れて11月から古舘伊知郎のバラエティ番組レギュラー復帰作となる『フルタチさん』がスタート。Eテレでは、先日『24時間テレビ』(日本テレビ系)の真裏で、「感動ポルノ」批判で話題を呼んだ『バリバラ』もあるという充実っぷりだ。  この“日7戦争”が開戦となったのが、『アメトーーク!』『スター名鑑』がスタートした10月16日だ。  どちらの番組も初回に弾みをつけようと2時間スペシャルを組む中、迎え撃つ王者・日テレも容赦がない。『鉄腕!DASH!!』と『イッテQ』の合体スペシャル「はじめての交換留学」と題したコラボ企画をぶつけてきたのだ。  一方の『モヤさま』も、2時間半スペシャルで番組アシスタントを務めてきた狩野恵里アナの卒業、そして注目された次期アシスタントの発表という目玉を用意した。 『アメトーーク!』の2時間スペシャルは、「芸人体当たりシミュレーション」と「ついつい食べ過ぎちゃう芸人」という、これまでのゴールデンスペシャルでも鉄板の人気企画。  そんな中、『DASH×イッテQ』や『アメトーーク』よりも数分早く、18時55分に放送が開始された『スター名鑑』。ここはその数分で少しでも視聴者をくぎづけにし、奪いたいところ。そこで『スター名鑑』が投入したのは、まさかのベン・ジョンソンだった。  どう見ても、数字を持っているとは言い難いドーピング男である。この不可解ともいえる人選のオープニング。しかし、『クイズ☆タレント名鑑』ファンは歓喜した。 『スター名鑑』の前身は、前述の通り『クイズ☆タレント名鑑』だ。約4年半前にあえなく終了したが、ファンからは熱烈な支持を受けた番組だ。  2010年8月からレギュラー放送が始まり、「日本一下世話なクイズ&バラエティ」を自称したこの番組は、「クイズ」を隠れみのに、隅々まで悪意をまぶし、悪ふざけの限りを尽くした。この『クイズ☆タレント名鑑』が日曜夜8時という完全なるゴールデンタイムに放送されていること自体が、それだけで「今もテレビは面白い!」と胸を張れるものだった。  だが、ファンの熱狂とは裏腹に、視聴率は決して高いわけではなかったため、正直言って、番組ファンもいつ誰かの逆鱗に触れて終わってもおかしくないと思っていた。  そして、2012年1月。ついに終了が発表された。  その“大役”を結果的に担ったのが、ベン・ジョンソンだったのだ。230メートル先の本殿を目指して一斉に男たちが走りだし、先着3名だけが「福男」の称号を得られ、「福」が訪れるという「福男選び」。  番組では「福男チャンス」と題して、山田勝己、ダンテ・カーヴァー、そしてベン・ジョンソンという3人の刺客を「福男選び」に送り込んだ。クイズ優勝チームが賞品獲得を懸けて、誰が「福男」になるかを当てるクイズ企画だった。  しかし、あえなく3人は「福男」となることができなかった。 「3人のふがいない走りにより、2012年の『タレント名鑑』に福が舞い込むことはなかった」  そんなナレーションとともに、『タレント名鑑』の終了が発表されたのだ。 「ベン・ジョンソンのせいで……」 というテロップ付きで。 「打ち切り」の発表にまで、笑いと悪意をねじ込む徹底っぷり。そこに『タレント名鑑』の神髄があった。  だから、復活スペシャルのオープニングは、ベン・ジョンソンでなければならなかったのだ。  こうした『タレント名鑑』や、終了から復活までの4年間で藤井が手掛けた『テベ・コンヒーロ』や『Kiss My Fake』などから継承された“ネタ”が、本編でも随所に登場。もちろんこれらは、長く番組を見れば見るほど気づき、楽しめるものだ。だが、それに気づかなくても、ちゃんと面白い。  藤井は自著『悪意とこだわりの演出術』(双葉社)の中で「『わからなくても成立するけど、わかったらもっと面白い』要素がありつつ、その中に引用やオマージュが多く入っているのが僕の作りの好み」と書いている。また、「気づかなくても楽しめるけど、気づけば気づいた人にだけ楽しめるモノを用意しておく。そんな奥行きのようなモノを少し意識しています」とも明かしている。 『スター名鑑』は、まさにその「奥行き」が深い番組だ。  今のバラエティ番組の主流は、“親切さ”最優先。「ながら見」でも途中から見ても、視聴者が理解できるようにきめ細かい工夫がされている。もちろん、それは視聴者を楽しませるという観点でも、視聴率を獲るという観点でも正しいアプローチだろう。  だが、そればかりではつまらない。  毎週見ていないと置いていかれるから、食い入るように見る。そんな番組こそ、僕たちは見たいのだ。ベン・ジョンソンが福男にリベンジしても、早坂好恵の名前がやたら出てきても、ボビー・オロゴンが米俵を抱えて走っても、クイズなのに「予約」がある、意味不明なシステムがあっても、視聴率は上がらないだろう。犯罪者や前科者の名前が頻出したり、気まずい空気の不穏で怖い映像を流しても、クレームのリスクが高まるだけかもしれない。だけど、ここでしか味わえない面白さがあふれている。  本来、バラエティ番組は、「面白さ」こそが最優先されるべきものだったはずだ。視聴率的には“負け戦”かもしれない。けれど、だからこそ「面白さ」だけを追求するのが『スター名鑑』の戦い方だ。  終了から4年半。前フリは十分すぎるほど効いている。  いよいよ、面白いだけの“クソ番組”が帰ってきた! (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

「日7戦争」勃発! “負け戦”必至のTBS『クイズ☆スター名鑑』の戦い方

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『クイズ☆スター名鑑』TBSテレビ
 いよいよ“日7戦争”が始まった。  今秋から、日曜午後7時台のテレビは、かつてないほどの激戦区となる。  これまで視聴率的に“絶対王者”に君臨していたのは、日本テレビ系の『ザ!鉄腕!DASH!!』。『笑点』から始まり、『世界の果てまでイッテQ!』『行列のできる法律相談所』へと連なる鉄壁のラインナップは、視聴率を支えるファミリー層に絶大な強さを誇る。  その強力な相手に、単独で応戦してきたのが、テレビ東京系の伊藤隆行による『モヤモヤさまぁ~ず2』だ。  そして、10月からテレビ朝日系では、加地倫三の『アメトーーク!』がゴールデンと深夜の2本立てになって登場。さらに、TBS系では、藤井健太郎による『クイズ☆タレント名鑑』が『クイズ☆スター名鑑』と名前を変えて奇跡の復活。  王者『鉄腕!DASH!!』に、各局のお笑い番組のエーススタッフが挑む、という構図ができあがった。  ちなみにフジテレビでは、やや遅れて11月から古舘伊知郎のバラエティ番組レギュラー復帰作となる『フルタチさん』がスタート。Eテレでは、先日『24時間テレビ』(日本テレビ系)の真裏で、「感動ポルノ」批判で話題を呼んだ『バリバラ』もあるという充実っぷりだ。  この“日7戦争”が開戦となったのが、『アメトーーク!』『スター名鑑』がスタートした10月16日だ。  どちらの番組も初回に弾みをつけようと2時間スペシャルを組む中、迎え撃つ王者・日テレも容赦がない。『鉄腕!DASH!!』と『イッテQ』の合体スペシャル「はじめての交換留学」と題したコラボ企画をぶつけてきたのだ。  一方の『モヤさま』も、2時間半スペシャルで番組アシスタントを務めてきた狩野恵里アナの卒業、そして注目された次期アシスタントの発表という目玉を用意した。 『アメトーーク!』の2時間スペシャルは、「芸人体当たりシミュレーション」と「ついつい食べ過ぎちゃう芸人」という、これまでのゴールデンスペシャルでも鉄板の人気企画。  そんな中、『DASH×イッテQ』や『アメトーーク』よりも数分早く、18時55分に放送が開始された『スター名鑑』。ここはその数分で少しでも視聴者をくぎづけにし、奪いたいところ。そこで『スター名鑑』が投入したのは、まさかのベン・ジョンソンだった。  どう見ても、数字を持っているとは言い難いドーピング男である。この不可解ともいえる人選のオープニング。しかし、『クイズ☆タレント名鑑』ファンは歓喜した。 『スター名鑑』の前身は、前述の通り『クイズ☆タレント名鑑』だ。約4年半前にあえなく終了したが、ファンからは熱烈な支持を受けた番組だ。  2010年8月からレギュラー放送が始まり、「日本一下世話なクイズ&バラエティ」を自称したこの番組は、「クイズ」を隠れみのに、隅々まで悪意をまぶし、悪ふざけの限りを尽くした。この『クイズ☆タレント名鑑』が日曜夜8時という完全なるゴールデンタイムに放送されていること自体が、それだけで「今もテレビは面白い!」と胸を張れるものだった。  だが、ファンの熱狂とは裏腹に、視聴率は決して高いわけではなかったため、正直言って、番組ファンもいつ誰かの逆鱗に触れて終わってもおかしくないと思っていた。  そして、2012年1月。ついに終了が発表された。  その“大役”を結果的に担ったのが、ベン・ジョンソンだったのだ。230メートル先の本殿を目指して一斉に男たちが走りだし、先着3名だけが「福男」の称号を得られ、「福」が訪れるという「福男選び」。  番組では「福男チャンス」と題して、山田勝己、ダンテ・カーヴァー、そしてベン・ジョンソンという3人の刺客を「福男選び」に送り込んだ。クイズ優勝チームが賞品獲得を懸けて、誰が「福男」になるかを当てるクイズ企画だった。  しかし、あえなく3人は「福男」となることができなかった。 「3人のふがいない走りにより、2012年の『タレント名鑑』に福が舞い込むことはなかった」  そんなナレーションとともに、『タレント名鑑』の終了が発表されたのだ。 「ベン・ジョンソンのせいで……」 というテロップ付きで。 「打ち切り」の発表にまで、笑いと悪意をねじ込む徹底っぷり。そこに『タレント名鑑』の神髄があった。  だから、復活スペシャルのオープニングは、ベン・ジョンソンでなければならなかったのだ。  こうした『タレント名鑑』や、終了から復活までの4年間で藤井が手掛けた『テベ・コンヒーロ』や『Kiss My Fake』などから継承された“ネタ”が、本編でも随所に登場。もちろんこれらは、長く番組を見れば見るほど気づき、楽しめるものだ。だが、それに気づかなくても、ちゃんと面白い。  藤井は自著『悪意とこだわりの演出術』(双葉社)の中で「『わからなくても成立するけど、わかったらもっと面白い』要素がありつつ、その中に引用やオマージュが多く入っているのが僕の作りの好み」と書いている。また、「気づかなくても楽しめるけど、気づけば気づいた人にだけ楽しめるモノを用意しておく。そんな奥行きのようなモノを少し意識しています」とも明かしている。 『スター名鑑』は、まさにその「奥行き」が深い番組だ。  今のバラエティ番組の主流は、“親切さ”最優先。「ながら見」でも途中から見ても、視聴者が理解できるようにきめ細かい工夫がされている。もちろん、それは視聴者を楽しませるという観点でも、視聴率を獲るという観点でも正しいアプローチだろう。  だが、そればかりではつまらない。  毎週見ていないと置いていかれるから、食い入るように見る。そんな番組こそ、僕たちは見たいのだ。ベン・ジョンソンが福男にリベンジしても、早坂好恵の名前がやたら出てきても、ボビー・オロゴンが米俵を抱えて走っても、クイズなのに「予約」がある、意味不明なシステムがあっても、視聴率は上がらないだろう。犯罪者や前科者の名前が頻出したり、気まずい空気の不穏で怖い映像を流しても、クレームのリスクが高まるだけかもしれない。だけど、ここでしか味わえない面白さがあふれている。  本来、バラエティ番組は、「面白さ」こそが最優先されるべきものだったはずだ。視聴率的には“負け戦”かもしれない。けれど、だからこそ「面白さ」だけを追求するのが『スター名鑑』の戦い方だ。  終了から4年半。前フリは十分すぎるほど効いている。  いよいよ、面白いだけの“クソ番組”が帰ってきた! (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

地獄のような空気が漂う『水曜日のダウソタウソ』に見る、藤井健太郎「地獄の軍団」の真髄

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『水曜日のダウンタウン』TBSテレビ
「若林は、歌ヘタくそやもんね」 「そうなんですよ、すごい透明感あるなと思って。隣に“奇跡の歌声”いますからね」  そうオードリー若林正恭が振ると、すかさずハリセンボン近藤春菜がお決まりのフレーズを言う。 「いや、スーザン・ボイルじゃねーわ!」  さらに、宮川大輔が「あれ、ギターは?」と追随。 「いや、サンボマスターでもねーわ!」  そのやりとりに「あははは」と笑う浜田雅功。あえてキョトン顔をする松本人志。  そして、松本が口を開く。 「浜田のそっくりさんが、浜田の嫁に電話するとかはどう? 『こいつ、女いるで』って」 「やめろ! そこは……そこはアカン言うてるやろ!」  すごむ浜田に、松本が「よかった、この距離で」と、大げさにおびえる。その姿に、浜田が「ニャハハハ」と笑う。  文字で見ると、よく見る鉄板のやりとりだ。  だが、実際の映像では、猛烈に違和感がある。“間”がなんだかおかしく、流れが悪いから、地獄のような空気が漂っている。  なぜなら、それを演じているのがすべて、モノマネ芸人だからだ。  これは、9月21日放送の『水曜日のダウソタウソ』(TBS系)の一幕。『水曜日のダウンタウン』ではない。「ダウソタウソ」だ。ラテ欄には「今日は『水曜日のダウンタウン』は休止で……『水曜日のダウソタウソ』をお送りします」とある。番組名が変わっているので、録画機によっては毎週録画の設定も解除されてしまう。総合演出・藤井健太郎率いる「地獄の軍団」(番組で、出演者らにそう呼ばれている)は、視聴者を、いや録画機までも混乱に陥れる“いたずら”を仕掛けてきたのだ。  司会はもちろん、ダウンタウンのそっくりさんのダウソタウソ。プレゼンターには、宮川大輔のそっくりさんの宮川大好。パネラーには、若林や近藤、キャイ~ンウド鈴木、そして松田聖子のそっくりさんが並ぶ。オープニング曲なども、なんだかいつもとテンポや曲調がアレンジされている(ちなみに音楽担当はPUNPEE「パンピー」だが、今回のエンドロールではちゃんと「パソピー」とクレジットされていた。細かい!)。番組のロゴも、ちょっとだけ変わっている。  番組全体に、絶妙なパチもん感が漂っている。喩えるなら、中国のディズニーランドそっくりなテーマパーク「石景山遊楽園」を見ているときの居心地の悪さだ。  番組の流れは“本家”と同じ。プレゼンターがある“説”を提唱し、それをVTRで検証する。  この日、宮川大好が提唱した説は「水曜日のダウンタウン モノマネ芸人に頼りすぎ説」である。  そこから、検証VTRとして、「有名人の身内 気をつけないと悪いモノマネ芸人に オレオレ詐欺でだまされる説」「野球モノマネ芸人 リアルにバッティングうまい説」「歌うま外国人なら日本人アーティストのモノマネもうまい説」、そして謎の感動を呼ぶ名作「ものまねショーに本人がそっくりさんとして出ても、意外と気づかれない説」など、過去に『水曜日のダウンタウン』でモノマネ芸人が登場した説を振り返っていく。  もう、お気づきだろう。    これは、説立証に見せかけた『水曜日のダウンタウン』の総集編である。  番組改編期などには、多くのバラエティ番組が総集編を放送する。出演者やスタッフを休ませる、という意味合いもあるのだろう。だから、普通の番組であれば、ただ過去のVTRを再編集して流すだけだ。気の利いた番組でも、それに出演者のコメントを挟んだり、後日談を挿入したりする程度だろう。  総集編である以上、その番組の中で面白かったシーンがまとめられているので、一定の面白さは保証される。視聴者としても、見逃した面白いシーンを見られるというメリットがあるから、そういうもんだと思って別に文句は言わない。  だが、『水曜日のダウンタウン』は、ただの総集編で終わらせようとはしないのだ。それは、今回に限らない。  たとえば、同局の人気番組『ランク王国』とコラボレーションし、ダウンタウンがパジャマ姿で『ランク王国』の看板キャラ「ラルフ」と“共演”。お決まりのフレーズで、VTRフリなどを行ったりもした(ちなみに番組では、それ以前に「ランク王国のテーマどうでもよすぎる説」を提唱し、番組をイジっている)。  また、別の回では「パー子の笑い声を足したらVTR3割増しで面白くなる説」を提唱。「ロメロスペシャル相手の協力なくして成立しない説」や「大友康平普通にも歌える説」などの、過去の名作VTRに林家パー子のあの笑い声を足すという暴挙。途中から、その笑い声にも、ある仕掛けがあったことが明かされるという遊びまで。確かに、3割増しに、というか、別の意味でも面白いVTRに仕上がっていた。  前述のように、総集編なんて手を抜こうと思えばいくらでも手を抜ける。だが、逆に工夫をしようと思えばいくらでも工夫できてしまうものだ。でも、そんな工夫、普通の番組はやらない。やらなくてもいいことだからだ。けれど、普通はやらないからこそ、それをやったら目立つ。ほかの番組との差別化ができる。  思えば『水曜日のダウンタウン』は、いつもそういったこだわりが細部まで行き届いている番組だ。隙あらば、ふざけてやろう。それも、ほかの番組とは違う切り口で、と。  それこそが、「地獄の軍団」と呼ばれる藤井健太郎チームの真髄だ。  そうした番組の精神が総集編にも、いや総集編だからこそ如実に表れているのだ。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

TBSバラエティ好調の立役者・藤井健太郎に訊く「サンプリング世代のテレビの作り方」

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撮影=尾藤能暢
 ちょっぴり下世話、ほどよい悪意、わかりやすさと深さの両立……。好調をキープするTBSバラエティの中心にいる男、藤井健太郎。『クイズ☆タレント名鑑』『水曜日のダウンタウン』『クイズ☆正解は一年後』など多くの人気番組を手がける彼が、このたび初の著書『悪意とこだわりの演出術』(双葉社)を上梓した。「日本のバラエティ界を担う若手ディレクターの雄」などと書かれるのを一番嫌がりそうな彼に、あえて聞いてきました。「今のテレビって、どうなんですか?」 *** ――本書の中に「100人が1面白いと感じたことと、1人が100面白いと感じたことには同じ価値がある」とあって、藤井さんの番組の根底にあるものはこれだよなぁと、勝手に納得してしまいました。 藤井健太郎(以下、藤井) 面積論でいったら、一緒ですよね。どっちをよしとするかは人それぞれだし、テレビ局の商売としては広く浅くのほうがいいのかもしれないけど、有料のコンテンツは“少ないところからたくさん取る”というほうへ移ってきていますよね。みんなが共通で楽しめるものが少なくなっているから。目指すべきはもちろん、多くの人に面白いと思ってもらうことですけど、現状では僕らが得意とする方法でどれだけ面積を広げられるか、ですよね。僕はどちらかというと、広く浅く楽しめるものより、狭く深く……のほうが得意なのかも。とはいえテレビなので、狭くなりすぎることはない。あまりに狭かったら視聴率も取れなくて、自然淘汰されていくので。 ――今テレビマンたちは、「視聴率」というものを、どのように捉えているのでしょうか? 藤井 もちろん、みんな視聴率で動いていますよ。制作の中心にあることは否めない。ただ一方で、商売としてはCMが売れればいいわけじゃないですか。だから、たとえ視聴率が取れていても、あまりに見ている層がお年寄りに偏っていると、意外とCMは売れなかったりする。視聴率とCMの売れ行きは、完全なイコールではないんですよ。そこに矛盾が出てきているのは確か。まぁ、そのうち変わってくるとは思いますが、今のところは視聴率が唯一の指標ではあるので「視聴率なんて関係ない」っていうのは、やっぱり違うかなと。それを成立させながら、その枠の中で何をやるのか、ですよね。 ――「自分がトップで作っている番組より、誰かの下についた番組のほうが、視聴率がいい」とも書かれていました(笑)。 藤井 もうちょっと色が薄まったほうが、幅広く受け入れられるいい感じのやつができるんでしょう(笑)。とはいえ、自分は、自分が面白いと思う番組を作りたいわけで。 ――藤井色を120%出したくなっちゃう。 藤井 出したくなるっていうより、気になっちゃうんですよ。「こうしたい」というより「これがイヤだ」のほうが強い。これイヤだ、これ気になる……ってやっていくと、結局自分っぽいものが残る。 ――それで、編集なども、すべてご自身がやるということにつながっているんですね。ものすごい作業量なのでは? 藤井 めちゃめちゃ働いてますね(笑)。でも、誰かに「やれ」と言われたわけじゃなく、自分が気になるから、だけなんですよ。自己満足なんで、仕方ない。人が書いたナレーションも“てにをは”とかが気になって細かいところを直しだしたら、「あとはやっとくわ」って、自分で書いてしまう。ほら、ペンだこありますから。 ――おお! 藤井 手書きかい! っていうのもあるんですけど(笑)。 ――あと、すごく気になった箇所があったんですけど…… 藤井 なんでしょう? ――「正直、テレビ業界の人はダサイ人が多いです」という。 藤井 そこか……これ、詳しく言わないとダメですか?(笑) ――ぜひ……。
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藤井 広告代理店系のダサイ感じってあるじゃないですか。チャラいノリの“ヨイショ~”みたいな。そういう部分とクリエイティビティって、本当は離れているはずのものなのに、テレビ局って意外と近かったりする。そういうノリの人が、作り手に混ざり込んでいる。特に昔は、そちら側の人のほうが多かった気がするんですよ。あとは……見た目とかも。テレビって、途端に洒落てないですよね。ほかのいろいろなカルチャーと比べて。そう思わないですか? ――ちょっと、マッチョな感じのイメージはあります。 藤井 そうですね。わかりやすさ、とっつきやすさに特化したメディアなので、そっちに特化していった過程で忘れられていったものはあると思います。 ――繊細さ、とか。 藤井 ビジュアル面のセンスとか、ビジュアルだけじゃなく、表現そのものがダサかったり。 ――たとえば、ネットなどでひとしきりはやったものが、少し遅れてテレビで取り上げられたりしますよね。そういう「時差」は、少しダサいような気がします。 藤井 昔はまだ人々が情報にたどり着く手段が少なかったからよかったかもしれないけど、なんでも入ってくる時代に、後追いでやるのは、なかなか厳しいところがある。速さの競争には勝てないけど、テレビには拡散力をはじめ、優位なところもあるんだから、もっと堂々と言っちゃえばいいと思うんですよ。「これTwitterではやったやつです」って。自分の手柄みたいに言うから、かっこ悪い。 ――藤井さんの番組は、そのあたりがすごく正直だなぁと思います。 藤井 なんていうか、そういうことに関する世間とテレビの温度感が開いてしまっているところはあると思います。別にウソついちゃいけないとは思わないですけど、その温度感の読み違えがあると、よくないんだろうなと。だって、正直に言ってくれたほうが、見ているほうは気持ちいいじゃないですか。 ――スカッとします。 藤井 テレビが上から言ってる感じがね。腹の中見せない、偉そうな感じにつながる部分なんじゃないですかね。 ――一方で、視聴者のほうもあら探しというか、素直に楽しんでいないような。藤井さんは「視聴者のレベルを下げないようにするのも役目のひとつなのかな……」と書かれていましたが。 藤井 視聴者に、合わせすぎないことでしょうか。常に「こんなものもあるよ」と提示していく、みんながまだ見たことないものを見せるほうが大事じゃないかと思います。 ――普段は、どうやって企画を考えているんですか? 藤井 僕の場合、ほとんど今まであったものの組み合わせです。ゼロからひらめく、発明みたいなものはほとんどない。この要素とこの要素をくっつけたら……って。テレビを中心に、テレビ以外の分野からも引っ張ってきて。その組み合わせ方によって、新しいもののように見せているだけだと思います。 ――もともと、バラエティ番組は好きだったんですか? 藤井 そうですね、小さい頃からよく見てました。 ――どういう見方を? 藤井 普通ですよ(笑)。そりゃそうでしょ。
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――でも、小さい頃のエピソードを読むと、当時から視点がユニークだなぁと。 藤井 あまり、かわいくない子どもですよね(笑)。 ――小さい頃のエピソードも手掛けられた番組も含めて、この本のタイトル『悪意とこだわりの演出術』の“悪意”という言葉は、藤井演出にぴったりの言葉だと。“毒舌”ではなく、“悪意”。 藤井 “毒舌”ってワードも、もう古臭いですよね。そういう温度感だと思います。ただ、“悪意”っていう言葉が好きなわけでもないんです。勝手に周りが言うだけで。番組でもよく出てきますけど、自分としては、わりと無自覚なんですよ。笑いへのアプローチの仕方として、わざと悪く言う手法が得意ってことなんだと思います。 ――「こだわり」という部分でも、藤井さんは誰も気づかないような細かいところにも仕掛けを入れてきますよね。 藤井 本にも書きましたけど、わかんなきゃダメな作りにならないようにはしてます。知らない人は、ただ普通に気づかず通り過ぎてくれるような。 ――わからない人を置いてけぼりにするようなやり方ではなく。 藤井 「わかる人だけついてこい」はエゴだと思うので、別にそういうつもりでもないし。「わかる人にはわかる人用に、細かいところまで作っていますよ」が基本。 ――いわゆる「テレ東的なもの」が至高……みたいな風潮も、今は少しズレてきていますよね。 藤井 テレビって、脱線メインになっちゃうと、意外と面白くないと思うんです。きちんとしたレールがあった上で、脱線するから面白い。僕の好みは、わりとしっかりスタートがあって、結論がある、最終的に答えが出るもの。その間で、どれくらい遊べるか。 ――いまTBSのバラエティ番組は非常に好調ですが、藤井さんは、その理由はどんなところにあると思いますか? 藤井 なんですかね。企画の中身が、正当に評価されるようになっている気はしますね。僕の立場で偉そうに言うのもなんなんですが。上の人たちが、面白いものにちゃんと価値を見いだすようなジャッジの仕方をしてくれている。そして、その感覚が、(視聴者と)そんなにズレてないということじゃないでしょうか。 ――フジテレビのバラエティに元気がないのは、そういう要因もあるのでしょうか? 藤井 う~ん。これは僕個人の感覚ですけど、おそらくどんどん目先の数字にとらわれて、とりあえず数字が取れそうな、しかも、あまりフジテレビが得意じゃないことに手を出して、さらに泥沼にハマっていっている感じはしますね。 ――悪循環ですね。 藤井 余裕があるときは、ちょっとくらい数字が悪くても、中身が良ければいいかってなるんですけどね。『オモクリ監督 ~O-Creator's TV show~』が終わったのは象徴的だった気がします。数字はよくなかったけど、フジテレビらしくて、とても面白い番組でした。ああいう番組は一定量続けておかないと、そういうものを作るノウハウすらなくなってしまう。
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藤井健太郎 著『悪意とこだわりの演出術』(双葉社刊/1400円+税)
――得意じゃないことというのは、「猫番組」ですか? 藤井 別に猫限定じゃないです(笑)。ただ、猫が大好きな人が作れば、いい猫番組になると思うんですけど。「いま一番取れそうなのは猫だ!」っていって、付け焼き刃でやっても、うまくいかないんじゃないですかね。 ――たとえば、藤井さんに憧れた若いディレクターが藤井さん的な番組を作りだしたら、どう思われますか? 藤井 よくないなとは思いますよ。そもそも、人それぞれ得意なものが違いますから。自分に向いてることをやらないと。僕だけではないですけど、ちょっとくさすようなナレーションとか編集の仕方が、うっすら業界ではやってる感じもあるじゃないですか。で、安易にマネして、スゲエヘタなやつとかがありますから。 ――明らかにやりすぎてしまってるやつとか……。 藤井 それはきっと、本人が得意じゃないからですよ。形とか仕組みはいろいろ取り入れてもいいと思いますけど、本質的な部分はね、やっぱり人それぞれなんで。 ――センスって、磨けるものだと思いますか? 藤井 どうなんですかねぇ……ただ、センスがない人は、センスが関係ないものをやればいいんだとは思う。苦手なことは、無理にやらなくていいんじゃないかなぁ。テレビは特にある種チーム戦でもあるので、たとえばデザイン的なものが苦手なら、それを得意な人に任せればいいわけだし。そういうチームを組織できるプロデューサー、っていう戦い方もありますからね。 ――藤井さんが今のテレビに感じる魅力は、なんでしょう? 藤井 深くは、なってるんじゃないですか。成熟というか。昔の番組は大味ですもん。今のほうが、圧倒的にこまやかにはなってる。それはテレビに限らずかもしれないけど。 ――逆に問題点があるとすれば? 藤井 面白い番組の絶対数が多くないことかな。 ――二極化されている? 藤井 う~ん。一方では「いかにチャンネルを止めるか」っていう作業がいまだに続いているわけで、しかも、それがお年寄り中心になってきたから、タチが悪いところもある。昔よりもね。そういうテクニック……“見続けさせる”テクニックに特化した番組も、たくさんある。どの瞬間も、何かが引っ張られているという作り。何かが発表されたら、次の何かが隠されてる。いつ見ても何かを待ってる状態を作るという手法には、すごいものがありますよね。それもルール(視聴率)が変われば廃れていくのかもしれませんけど。そう考えると、今は過渡期なのかもしれませんね。 (取材・文=西澤千央)

「誰が出ているか」から「誰がつくっているか」で見る時代に――テレビを面白くする“規格外”局員たち

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『水曜日のダウンタウン』TBSテレビ
「ドラマで当たっているわけでも、なんでもない。バラエティやから言うて、ものすごいおもろいことを言うわけでもないし」  ベッキー不倫疑惑騒動を受け、上沼恵美子が発言したこの「ベッキータレント評価」が話題を呼んでいる。上沼の言い分もわからないではないが、一方で、こんな思いも頭をもたげる。 「今のタレントって、みんなそうなんじゃないの?」と。  上沼は「したたかさ」と表現していたが、昨今のタレントに求められるのは、具体的なスキルよりも「処世術」であり「関係性」だ。結果、視聴者には伝わりにくいバーター出演や、事務所の力関係に“配慮”した「キャスティングありき」の番組づくりにつながってしまう。  だから、今のテレビはつまらない、とも評される。  くしくも、ベッキー問題と同タイミングでメディアをにぎわせたSMAP騒動でも、「事務所の威光」があらためて露呈した。いい加減、こうした事務所の力関係、人間関係に重きを置くテレビ業界、番組づくりにはシビアな目が向けられていいはずだ。  それはつまり、より「企画主導の番組づくり」にウェイトシフトしていく、ということ。その際、鍵を握るのが「誰がつくっているのか」という視点だ。実際、最近話題に上る番組は、決まって「テレビ局員」の存在が前に出ているものばかり。ここにこそ、光明があるはずなのだ。  パッと思いつくだけでも……、 日本テレビの古立善之(『世界の果てまでイッテQ!』『月曜から夜ふかし』) テレビ朝日の加地倫三(『アメトーーク!』『ロンドンハーツ』) テレビ東京の佐久間宣行(『ゴッドタン』『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』) TBSの藤井健太郎(『水曜日のダウンタウン』『クイズ☆正解は一年後』) フジテレビの竹内誠(『IPPONグランプリ』『THE MANZAI』『ワイドナショー』) などなど。  彼らに加え、20代でもフジテレビ『人生のパイセンTV』の“マイアミ・ケータ”こと萩原啓太、テレビ朝日『しくじり先生』で題字まで書いてしまっている北野貴章などが、ここにきて一気に注目度を高めている。  もちろん、テレビ局員が名物だ、出たがり人間だ、という番組は、これまでにも数多くあった。たとえば、日本テレビ『電波少年』の土屋敏男。そして、フジテレビであれば『オレたちひょうきん族』をはじめ、明石家さんまの番組には欠かせない“デタガリ恵介”こと三宅恵介。とんねるずが散々ネタにした“ダーイシ”こと石田弘と、“小港さん”こと港浩一。90年代以降なら『夢で逢えたら』『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』『笑う犬の生活』などを手がけた吉田正樹や『めちゃ×2イケてるッ!』の片岡飛鳥。  だが、彼らはかなり特異な例。同時期に大勢のテレビ局員が話題に上ることは少なく、また、そのほとんどがフジテレビ発、という一極(局)集中型だった。  それが一転、各局で同時多発的に、テレビ局員の名前で番組が注目されるようになってきたのが、ここ最近の傾向だ。テレビ局の危機、が叫ばれる今だからこそ、その身内から既存の番組をぶち壊して新しい価値を生み出す担い手が出てきている、と見なすこともできるだろう。  この流れを的確に捉えているのが、千原ジュニアだ。ジュニアは3月、舞台『6人のテレビ局員と1人の千原ジュニア』を開催する。 「6人のテレビ局員」とは、末弘奉央(NHK『超絶 凄ワザ!』)、内田秀実(日本テレビ『ヒルナンデス!』)、そして前述した加地倫三(テレビ朝日)、藤井健太郎(TBS)、佐久間宣行(テレビ東京)、竹内誠(フジテレビ)という面々だ。  この企画は、2006年2月に開催した放送作家たちにすべて委ねる舞台『6人の放送作家と1人の千原ジュニア』の第2弾となる。放送作家の面白さを打ち出そうとした前回を経て、今回は「テレビ局員」こそが時代の先端である、というジュニアの嗅覚は見事だ。  彼らを先頭に、事務所でもタレントパワーでもなく、テレビを面白くするのは制作スタッフなのだ、という気概を取り戻してほしい。  SMAP騒動の折、ネット上では「花屋の店先に並んだ花はどれもみんな世界にひとつだけの花だけど、一番偉いのは『花屋』なんだよ」というツイートが大いに拡散された。言い得て妙なたとえではあるが、同時にこうも言える。「そもそも、花屋があるビルがみすぼらしければ人は寄ってこない」。  規格外のテレビ局員を改革の旗頭として、つい立ち寄りたくなるテナントビルを築き上げてもらいたい。 (文=オグマナオト)