
『水曜日のダウンタウン』TBSテレビ
「ドラマで当たっているわけでも、なんでもない。バラエティやから言うて、ものすごいおもろいことを言うわけでもないし」
ベッキー不倫疑惑騒動を受け、上沼恵美子が発言したこの「ベッキータレント評価」が話題を呼んでいる。上沼の言い分もわからないではないが、一方で、こんな思いも頭をもたげる。
「今のタレントって、みんなそうなんじゃないの?」と。
上沼は「したたかさ」と表現していたが、昨今のタレントに求められるのは、具体的なスキルよりも「処世術」であり「関係性」だ。結果、視聴者には伝わりにくいバーター出演や、事務所の力関係に“配慮”した「キャスティングありき」の番組づくりにつながってしまう。
だから、今のテレビはつまらない、とも評される。
くしくも、ベッキー問題と同タイミングでメディアをにぎわせたSMAP騒動でも、「事務所の威光」があらためて露呈した。いい加減、こうした事務所の力関係、人間関係に重きを置くテレビ業界、番組づくりにはシビアな目が向けられていいはずだ。
それはつまり、より「企画主導の番組づくり」にウェイトシフトしていく、ということ。その際、鍵を握るのが「誰がつくっているのか」という視点だ。実際、最近話題に上る番組は、決まって「テレビ局員」の存在が前に出ているものばかり。ここにこそ、光明があるはずなのだ。
パッと思いつくだけでも……、
日本テレビの古立善之(『世界の果てまでイッテQ!』『月曜から夜ふかし』)
テレビ朝日の加地倫三(『アメトーーク!』『ロンドンハーツ』)
テレビ東京の佐久間宣行(『ゴッドタン』『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』)
TBSの藤井健太郎(『水曜日のダウンタウン』『クイズ☆正解は一年後』)
フジテレビの竹内誠(『IPPONグランプリ』『THE MANZAI』『ワイドナショー』)
などなど。
彼らに加え、20代でもフジテレビ『人生のパイセンTV』の“マイアミ・ケータ”こと萩原啓太、テレビ朝日『しくじり先生』で題字まで書いてしまっている北野貴章などが、ここにきて一気に注目度を高めている。
もちろん、テレビ局員が名物だ、出たがり人間だ、という番組は、これまでにも数多くあった。たとえば、日本テレビ『電波少年』の土屋敏男。そして、フジテレビであれば『オレたちひょうきん族』をはじめ、明石家さんまの番組には欠かせない“デタガリ恵介”こと三宅恵介。とんねるずが散々ネタにした“ダーイシ”こと石田弘と、“小港さん”こと港浩一。90年代以降なら『夢で逢えたら』『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』『笑う犬の生活』などを手がけた吉田正樹や『めちゃ×2イケてるッ!』の片岡飛鳥。
だが、彼らはかなり特異な例。同時期に大勢のテレビ局員が話題に上ることは少なく、また、そのほとんどがフジテレビ発、という一極(局)集中型だった。
それが一転、各局で同時多発的に、テレビ局員の名前で番組が注目されるようになってきたのが、ここ最近の傾向だ。テレビ局の危機、が叫ばれる今だからこそ、その身内から既存の番組をぶち壊して新しい価値を生み出す担い手が出てきている、と見なすこともできるだろう。
この流れを的確に捉えているのが、千原ジュニアだ。ジュニアは3月、舞台『6人のテレビ局員と1人の千原ジュニア』を開催する。
「6人のテレビ局員」とは、末弘奉央(NHK『超絶 凄ワザ!』)、内田秀実(日本テレビ『ヒルナンデス!』)、そして前述した加地倫三(テレビ朝日)、藤井健太郎(TBS)、佐久間宣行(テレビ東京)、竹内誠(フジテレビ)という面々だ。
この企画は、2006年2月に開催した放送作家たちにすべて委ねる舞台『6人の放送作家と1人の千原ジュニア』の第2弾となる。放送作家の面白さを打ち出そうとした前回を経て、今回は「テレビ局員」こそが時代の先端である、というジュニアの嗅覚は見事だ。
彼らを先頭に、事務所でもタレントパワーでもなく、テレビを面白くするのは制作スタッフなのだ、という気概を取り戻してほしい。
SMAP騒動の折、ネット上では「花屋の店先に並んだ花はどれもみんな世界にひとつだけの花だけど、一番偉いのは『花屋』なんだよ」というツイートが大いに拡散された。言い得て妙なたとえではあるが、同時にこうも言える。「そもそも、花屋があるビルがみすぼらしければ人は寄ってこない」。
規格外のテレビ局員を改革の旗頭として、つい立ち寄りたくなるテナントビルを築き上げてもらいたい。
(文=オグマナオト)