
撮影=尾藤能暢
今年、5年ぶりに復活する漫才頂上決戦『M-1グランプリ』。参加3,472組で決勝の舞台に立てるのはわずか9組。そして結成15年目にして、2005年以来10年ぶり2度目の決勝進出を果たしたのが、タイムマシーン3号だ。客にはウケるのに、漫才コンテストはことごとく敗退。その理由を探し求め、2年前にはアップフロントから太田プロへ移籍もした。その経歴から「ガラパゴス芸人」と称される彼らが、M-1ラストイヤーに懸ける思いとは――。
関太(以下、関) 遅れちゃってすみません……ちょっとパチンコ打ってたもんで。
――いやいや、その松葉杖は……ぎっくり腰とか?
山本浩司(以下、山本) あれだろ? 「CRヘルニア」打ってたんだろ。確変ぎっくり腰引いちゃったんなら、しょうがない。
――(笑)。とにもかくにも、M-1決勝進出おめでとうございます。
関・山本 ありがとうございます!
――ネット上では「タイムマシーンがドカンと行ってくれたら、夢がある」という声が多いんですよ。
関 マジですか。その人に会いて~!
――ですので、ここはサイゾーが取材に行かなくてどうすると。今日はM-1への意気込みと、その波瀾万丈な芸人人生を語っていただきたいと思います。
山本 なにせ、今まさに波瀾万丈ですからね。決勝直前にぎっくり腰って、どういうことだという。
関 いや、決勝が近いじゃないですか。だからいつもより、いっぱいうがいしてたんですね。風邪だけはひかないようにと。ものすごいうがいをしていて、「ぺっ」ってした瞬間にグキッときました。
山本 ヘッドバンギングみたいなうがいしてたんでしょうね。
関 それが昨日の朝だったので、まだ当日ではなかったというのが唯一の救いというか。
――だいぶ痛みますか?
関 今日、太めの注射を2本ほど打ったので、大丈夫です。
山本 昨日は「ちょっと腰いてぇな」くらいだったんですよ。でも今日、営業先に10時入りだったんですけど来なくて、11時、12時……14時の本番ギリギリくらいに松葉杖を両方こうやって、『ライオンキング』みたいにしてやってきた。
関 『ライオンキング』のキリンと同じ方式のつき方で。
山本 「あぁ、M-1終わったな」と思いましたよ。
関 治療に専念するため、辞退と。
山本 出ばやしに松葉杖つきながら登場するとか、ないでしょ。
関 持ち時間、30秒削んなきゃだなぁ。
山本 2~3日でなんとかなると言われているので、まぁよかったです。
――なにせ、10年ぶり2回目の決勝ですから。決勝進出が決まった時のお気持ちは、いかがでしたか? エゴサしまくったと聞きましたが。
山本 正直ウケたんですよ、準決勝。2人で「おい、ウケたよな」って話してて。決勝進出がかなわなくても、今いるこの場所を最大限に楽しもうと。本番から発表まで1~2時間くらい時間があって、ほかのコンビがご飯を食べに行ってる中、俺たちだけ楽屋閉め切ってずっとエゴサーチ(笑)。「タイムマシーン3号」「タイマ」「タイム3号」いろいろ調べました。みんな「一番面白かった」「(決勝)行くんじゃない?」ってつぶやいていてくれて。
関 これで落ちたら、しょうがないかと。

■「客にウケても、審査員にウケない」
山本 ご存じの通り、僕らって、わかりやすいネタが多いんですよ。キャラクター重視だったり、内容も万人にウケる形の。一方で、審査員ウケというか、玄人ウケがあまりないコンビだったりするんですよ。
――そうなんですか?
山本 M-1の都市伝説として、「ウケた上位8組じゃない」っていうのがありまして。8種類の漫才が決勝に行くと。
――ほかのコンビと、かぶらないということですね。
山本 ウケたけど、ベタな3組からは1組だけ、シュール1組、キャラ1組……みたいな。もちろん都市伝説ですよ。
――まぁ、番組ですから。
関 長年(決勝まで)行けなかったのもあって、いろいろ考えちゃうんですよ。
山本 そうなってくると、僕らはウケ枠、お客さん盛り上がり枠ではあると思うんですけど、もっとウケる人が毎年出てきてて、その枠で一番取るのは難しかった。僕らは手数打ってわかりやすくベタな感じで……という漫才だったので。それが10年及ばなかった理由ですね。
関 正直、その間も迷っていたんですよ。デブだけを押していいのか。ボケツッコミを変えたこともありますし。
山本 05年に出たときは、あまり振るわない結果だったんですけど、審査員の渡辺正行さんから「デブネタ1本じゃ、なかなかキツいね」って言われて、僕らがそれまでやってきた翼をもがれました。どうしよう……と地べたでいろんなこと探したんですけど、それこそ、しゃべくりにしてみたりコントやってみたり、両方ボケもやってみましたし。でも結局、時代を追いかけるような漫才しかしてなくて、やっぱりガーンと行く人はやりたいことをやっていて、それに時代が追いついてくるっていう感じなんです。でも僕らは、ずっと先端をちょっと後ろで追いかけていただけだった。
――なるほど。
山本 言ってみれば、あの05年の決勝で、当時の東京芸人の夢が断たれたんです。東京のベタな漫才がM-1ではダメだと。僕らだけではなく、東京芸人みんなの漫才への向き合い方が変わってしまった。オンリーワンを目指すようになり、ハマカーン、オードリーと、自分たちにしかできないものを見つけ出したコンビが抜けていきました。
関 僕らは、それを見つけられなかったっていう話なんですけど。
山本 でも、またここでベタでもいけるってなると、面白いですよね。俺らもう、コンテスト関係は全部ダメだろうと思ってたから。
――それは、どこかで吹っ切ったんですか?
山本 原点回帰じゃないけど、「尖ってるやつには勝てないや」という大事なことに気づきました(笑)。だって、我々2人はおかしくないんですもん。中流階級に育ちましたし、典型的な核家族でしたし。
関 軽自動車もありました。
山本 そうなんですよ。
関 犬もいたなぁ。
山本 でも、ぶっ飛んだ母親なんていなかった!
関 そんな2人が、おかしなことをしなきゃいけないわけですから。
山本 じゃあこれ、もう無理だと。尖った笑いは。ウケる人だけにウケればいいっていう笑いじゃなくて、みんな笑ってほしいなっていう考えに変わりまして。それって結局、もともとやってたことと変わらなかったんですけど。
――また同じところに戻ってきたわけですね。
山本 そのタイミングと、M-1の傾向と対策がたまたま合致したのが今回だったのかなっていう。我々「皆既日食」って呼んでますけど。
関 どんな漫才がいいのかとか迷っているうちは、ダメなんでしょうね。今年はもう、腹積もりはしっかりしてたんで。
――自分たちがいいと思うことをやろうと。

■転機となった、太田プロへの移籍
関 あと太田プロさんに入って、先輩からいろいろなアドバイスをもらえたことも大きかったです。「ウケるんだから、ウケればいいんだよ」と。
――2年前に太田プロ所属になって、その前はアップフロント(※モーニング娘。ほかが所属)でしたよね。やっぱり、環境は変わりましたか?
山本 ぜんっぜん違いますね。「早くお笑いでトップ取れるよ」って言われて入った事務所で、僕らお山の大将でした。ただ、その山が盛り塩みたいな山で。
関 初日にトップだったね(笑)。
山本 願書出したら、トップだった。
関 だから、ほかの芸人さんたちの生き方とは、ちょっと違ったと思うんですよね。
――お笑いの先輩もいなかった?
山本 いないです。兵藤ゆきさんが、唯一の友達でしたから。
――ゆき姐!!
関 たまにアドバイスくれるのが、堀内孝雄さんとか。
――……堀内さんは、どういうアドバイスを?
山本 「ありがとうございました」を、もっとちゃんと言いなさいとか。「サンキュー!!」から来てるんでしょうね。そういう環境から、ダチョウ倶楽部さん、有吉弘行さん、土田晃之さん、劇団ひとりさん……ですよ。僕ら太田プロに入って「できないこと」を知りました。あまりに才能ある人ばかりがいるから。このジャンルは、この人にはかなわない、じゃあこっちか……とか。
――そういうことは、わかったほうがいいんですか?
山本 全部行けるんじゃないかという希望よりも、これからはあきらめていく作業なんじゃないかっていう気もして。可能性がないことを知っていく。ダチョウさんにはなれない、有吉さんにはなれない、土田さんにも劇団さんにも……。
関 (片岡)鶴太郎さんは?
山本 ……イケんじゃないすか?
関 一番やめろ、バカ。
山本 筆さえいただければ。
――前事務所に13年、太田プロさんに2年……。
関 ホント、ガラパゴス芸人です。独自の進化を遂げてきました。
――でも、タイムマシーンさんは前事務所時代、NHK『爆笑オンエアバトル』の数少ない満点芸人だったわけですよ。
山本 オンバトっていうのは、僕らの中ですごく大きいウェイトを占めていました。いい悪いとか全然わからなかったし、それで仕事もらっていたのは確かなんですけど、オンバトの満点というのは「100人に嫌われなかっただけ」という結論に達したんですよね……。
――というのは?
山本 100人が面白いって思ったわけじゃなくて、100人が嫌じゃないっていう判断での満点。できるだけ嫌われないようにしての満点だったんです。
関 すごい媚びてたんですよね、たぶん。
山本 オンバトで落ちた芸人さんが、どんどん違う大会で活躍し始めるんです。それを見て、「ちょっと待てよ」と。うちらお客さんにはウケてるけど、先輩やテレビを作っている人たちには受け入れられてないんだなって。どの世界もそうだと思うんですけど、賛否が出ないとダメなんですよ。
関 そこで迷いだすと、ウケていても「ウケるのがダメなのか」とか考えだしちゃう。
――でも、そこで腐らずに15年やるって、すごいことだと思います。
関 太田に来て「芸人さんって、面白い人ばっかりだな」って当たり前のことがわかって、わかったからこそ、ネタに関してはシンプルに考えようって思えました。M-1は、ラストイヤーということもありますし。

■敗者復活で一番来てほしくないのは、トレンディエンジェル
――8番目という出場順は、いかがですか?
山本 非常に良かったと思います。
関 今回、本当ざっくり2つに分かれてるというか、ニューカマー的な芸人が前半で、そこそこいってるのが後半で(笑)。
山本 後半、怒涛の仕上げに入っている(笑)。
関 ニス塗って終わりの段階。
――今回の決勝進出者の中で、要注意コンビは?
山本 すごく似ているコンビがいないので、どちらかというと敗者復活組が怖い。
――敗者復活、来てほしくないのは?
山本 それはもう、トレンディエンジェルです。コンプレックスで明るい感じが、僕ら似てるんで。勢いもあるし。もちろんナイツも怖いですけど、敗者復活は技よりもパッションのほうが怖いです。
――じゃあ、このコンビには負けたくない! というのは?
山本 やっぱり東京勢ですね。メイプル(超合金)、馬鹿よ(貴方は)……ハライチさんは、芸能人なんでいいです。
関 ハライチさんは、たぶんピーターさんのパーティーに行ってると思うんですよ。
山本 熱海のな。
――(笑)。考えてみたら、05年って、ほとんど関西勢の年じゃなかったですか?
関 すごかったですよ。僕ら以外、みんな吉本さんで。楽屋の、でんがなまんがなが強すぎて。
――決勝の楽屋は、独特の雰囲気でしたか?
山本 ピリピリしてましたね。営業とかだったら、もっとしゃべってもらえたと思うんですけど。唯一、ブラマヨ吉田(敬)さんだけが話しかけてくれました。
関 ああ、優しいなって。吉田さんも孤独だったのかもしれない(笑)。
山本 それに比べて、今回の準決勝の楽屋の和気あいあいさ。僕ら、メイプル、馬鹿よ、さらば(青春の光)。不貞をはたらいたやつだけ、ちゃんと落ちましたからね(笑)。
関 神様って、いるみたいですね。
山本 さらばだって、めっちゃウケてたんですよ。天才ですよ。
関 いやぁ、漫才畑に来てほしくない。
――すべてが、05年の時とは違ったんですね。
山本 あの時は、『進め!電波少年』(日本テレビ系)じゃないけど、目隠しされて連れて行かれたという感じでした。
関 後悔も手ごたえもない。味のないメレンゲをずっと食べていたような。
山本 「05年に出たのがスゴイよ」って、過去ばっかり褒められて。
関 それ以降、決勝に出ていないということは、あの時を超えられてないっていうことなんですよ。今は、過去の自分にリベンジしたい。自分に腹立つときありますもん。
――これから、どんな芸人を目指しますか?
関 昔ほどは、野心だけじゃないと思うんですよね。こういうのはダメかもしれないんですけど、この仕事を続けていけたらなと。その中でM-1という、今までやってきたことの証しは必要だと思うんですけど。だってそんな、クイズ番組出たいとか、そんなそんな……。今もう一杯、お茶が欲しいくらいしかないです。
山本 でも、こんなコンビが1組くらいいても、いいですよね? ぎっくり腰で決勝行くコンビがいても。
関 あ、そうそう言い忘れたんだけど、おまえさ、決勝当日痛み止めの座薬、入れてくれる?
山本 ……い、入れる。それで頑張れるなら、ケツでもなんでも入れてやる!!
(取材・文=西澤千央)
●「タイムマシーン3号単独ライブ2016~肉~」
2016年1月30日(土)18:30開場 19:00開演
2016年1月31日(日)17:30開場 18:00開演
会場:東京・新宿シアターモリエール
出演:タイムマシーン3号
料金:前売2500円 当日3000円(整理番号付自由席)
カンフェティにて12月1日(火)発売(TEL:0120-240-540 / 平日10:00~18:00)
問合せ:太田プロダクションFC(TEL:03-3359-6263 / 平日12:00~18:00)