
『3月のライオン 11巻』(白泉社)
同じ道を歩んでしまわないか、不安になるのも仕方がない。
羽海野チカによるマンガ『3月のライオン』(白泉社)の実写映画化およびテレビアニメ化が決定したことが、25日に発売された「ヤングアニマル」(同)にて発表になった。
『3月のライオン』は、15歳で将棋のプロ棋士になった孤独な少年・桐山零(きりやま れい)を軸に、厳しい将棋の世界や、彼を見つめる川本3姉妹など周囲の人々と関わる中で成長していくストーリー。羽海野作品独特の高水準な心理描写やストーリー展開から高い人気を誇り、第4回マンガ大賞2011や2014年の第18回手塚治虫文化賞マンガ大賞など数多くの賞も受賞している作品だ。
アニメ化や実写化が積極的に行われる昨今を考えれば、すでに連載開始から8年が経過し、映像にしやすい舞台設定だったことからも、同作品の実写化・アニメ化に関して「意外と遅かった」という感想は多いだろう。逆にいえば、制作側としても“満を持して”の発表だったのかもしれない。
アニメ・実写化作品としては極めて珍しい「成功前提の作品」とも考えられる同作だが、原作者である羽海野チカの作品に関しては、「決して予断は許されない」というのが記者の論調だ。
「羽海野チカといえば、多くのファンを虜にした恋愛マンガ『ハチミツとクローバー』(集英社)でしょう。美術大学を舞台にしたこの青春群像劇は、若者の心の揺れや恋愛などの情感を見事に表現し、非常に完成度の高い作品として各方面から絶賛されました。辛口コメントも多い『BSマンガ夜話』(NHK)でも手放しで賛辞が送られたほどですからね。ただ、この作品の実写映画・ドラマはいずれもヒットには結びつくことなく、辛うじてアニメは“成功”といわれたものの、マンガの評価に比べれば寂しい限りでした。コマとコマの間に登場人物の葛藤や思いを挟み、繊細な心理描写を描くのが羽海野作品の特徴ですが、実写やアニメではその特徴を形にするのが難しいんでしょうね」(映画記者)
完成度が高すぎるがゆえの悩みということか。『3月のライオン』に関しても、それは同様だという。
「『3月のライオン』もファンの評価は非常に高い作品で、心理描写も変わらず冴え渡っています。特に実写化に関しては、将棋シーンの際に登場人物の頭の中で展開されるイメージ(炎や光など)をどう表現するのか。場合によってはものすごくチープな映像になる可能性がありますからね。今後キャスティングなども続々と発表されますが、ファンはその発表ごとに一喜一憂することになるでしょう」(同)
作品の良さを保ちつつ、マンガから良質な“映像作品”へと昇華させるのは決して簡単な作業ではなく、それが極めて完成度が高い作品ならなおさらである。『3月のライオン』は、制作陣としても極限まで企画を練り上げなければならない作品ということだ。