
撮影=尾藤能暢
あの伝説のダンス番組『スーパーチャンプル』(中京テレビ)で爆発的な人気を誇り、以後ダンサーとしてはもちろん、振り付け、ショー演出、イベントMC、役者、ダンス講師など多岐にわたり活躍するダンスユニット「エグスプロージョン」。……と、ここまでは通常のダンサーとして珍しいものではないが、なぜかこの2人、ただいま絶賛「芸人枠」で大ブレーク中。歴史上の出来事を、キレのあるダンスとシュールなフレーズでおもしろ動画に仕上げた「踊る授業シリーズ」が中高生の間で人気爆発。おじさんおばさんが今一番知っておくべき芸人……いやダンサー、エグスプロージョンの正体を探る!
――「
本能寺の変」をはじめとした授業シリーズのYouTube再生回数が、とんでもないことになっていると聞きましたが……。
エグスプロージョンまちゃあき(以下、まちゃあき) 「本能寺の変」だけで約1,500万回ですね。いやいや、僕らもワケわからないです。
――しかし、あの『スーパーチャンプル』で初代殿堂入りを果たしたエグスプロージョンが、まさか学ランで「変じゃな~い」しているとは!!
まちゃあき 覚えてます? 僕たち出てたの。
――それがですね……「ひとりでできるもん」さん(元メンバー)のインパクトがすごくて……。
まちゃあき 出た。出た出た。もうあいつとのツアーをやめよう!(笑)
エグスプロージョンおばら(以下、おばら) 昔の嫉妬を持ち込むな!(笑)
まちゃあき でも、あの頃と基本的には変わってないんですよ。見てる人を楽しませたいという部分は変わらない。
おばら 「踊る授業シリーズ」に関していえば、手法は変わっているかもしれない。我々の本気のバキバキのダンス! っていうわけではないのでね。あれは、いかに歴史を面白く、わかりやすく、ダンスはマネしやすくっていう趣旨なので。
まちゃあき (「踊る授業シリーズ」は)発展系なんだと思います。僕らにはいろいろな見せ方があって、ツアーでは直球で真面目なダンスもやっています。でも、たとえば『チャンプル』みたいな番組で授業シリーズをやるのは、勇気が要るんですよ。そこに、YouTubeっていうすごいツールがあって、やりたいことを全部できるじゃん! って思ったんですよ。
おばら ユルくできるし、そこでどんなハズれ方したってダメージはない。だから思い付いたこと全部やっちゃおう、くらいの勢いなんですよ。
――YouTubeは実験の場なんですね。
まちゃあき あともうひとつ大事にしているのは「ローカロリー」ってところですね。
おばら ロケーションもカッチリ決めて、振り付けもパッキパキに合わせてっていうと、ひとつの動画を上げるのにすごく時間がかかってしまう。YouTubeは、継続することに意味があると思うので。
――実際に動画を作るのに、どれくらいの時間がかかるんですか?
まちゃあき そうですね。ローカロリーと言いつつも、いまや授業シリーズは時間のかかるものになってしまってますね。ちなみに新作の「関ヶ原の戦い」は、3週間かかりました。
――一番時間がかかるのは、どの部分ですか?
おばら ダントツで作詞ですね。「授業」とうたっているからには、歴史を伝えなきゃいけないし。わかりやすく今風に簡潔で、なおかつ頭に残るようなフレーズっていうと、かなりハードルも上がるんですよ。
――それ、ダンサーさんのお仕事じゃないですもんね。
まちゃあき そうなんですよね(笑)。でも、大きく「ショー」と考えたら、作詞も含めて、なので。僕たちはショーの演出もしますから。ほかのダンサーさんとはベクトルは違うかもしれませんが、それが僕たちのやり方なのかもしれないです。

■みんな一度は「へんなおじさん」を踊ってる
――作詞に3週間で、ダンスの部分は……。
まちゃあき 1時間(笑)。
おばら 撮影直前にパパッと作る。
まちゃあき だから、曲ができると「俺たちの仕事終わったな」ってなる(笑)。
――時間をかけて作ったものをササッと出すのは、とてもカッコイイと思います。
まちゃあき ヘンな話、ひとつの遊びを見つけて、その遊びのルールを考えてるときが一番面白いんですよね。それをクラスで発表してウケたら、次の遊びを考える、みたいな。
――「本能寺の変」も、そういうノリで出来上がったんですか?
まちゃあき そうですね。ただ、あれには「歴史の魅力を伝えたい」という意外と真面目な思いがありまして(笑)。苦手じゃないですか、特に女性の方は。僕はとても歴史が好きなので、熱く語りだすと、まぁ皆さん困りだすんですよ。
――たまに、飲み屋とかにいますね。
まちゃあき いや、いやいやいや(笑)。
おばら まさにそれですね(笑)。
まちゃあき でもね、日本史をたとえばジャニーズのタレントさんに例えて話し出すと、急に食いつきよくなるんですよ。そういうフィルターを僕らで作ろうと思って、「本能寺の変」なら「シバかれる話」とか、「ハゲ」とか。“人間”的な部分が見えてきたら面白いんじゃないかと。
おばら それまで「織田信長」「明智光秀」っていう歴史上の人名でしかなかったものが、「信長っておっさん」と「光秀っておっさん」という画に切り替わる。そこが大事なのかなって思いますね。
――この動画を見てたくさんの人たちが、“踊ってみた”動画を上げていますよね。
おばら まさにそういうこと! みたいな。何よりマネしてほしくて、簡単な振り付けにしているんですもん。特に日本人には多いと思うんですけど、踊らない理由が「踊れないから」って言うじゃないですか。それはすごくもったいないと思うんです。体を動かすのは楽しいですし。そもそも踊りに、“合ってる”“間違ってる”なんてないんですよ。
まちゃあき みんなの動画を見ると、本当泣きそうになります(笑)。
おばら 振り付けがない部分も一生懸命ノリで体動かしているのとか見るとね、すごいうれしい。テキトーでいいから、わからなくてもいいから、笑顔でワチャワチャ動いているっていうのがダンスの素晴らしいところだと思うので。
まちゃあき 本当は踊れない人なんていないんですよ。だって、誰もが一回は「変なおじさん」やったことあるじゃないですか。
――ありますね……。
まちゃあき あれダンスですよ。自由でいいんですよ。
――じゃあお2人は、“踊ってみた”動画は結構見ているんですね。
おばら かなりの確率で見てます!
まちゃあき いまや、オレらエゴサーチの鬼ですから(笑)。面白いと言ってくださる方もたくさんいるんですが、最近はアンチも増えてきまして、それはそれでいいぞと。リズムネタに対するアンチの流れというのもなんとなくわかるし、「歴史的に見て、これは間違ってる」と言われるのも予想はしてました。
――芸人さんたちの間には今、「リズムネタはあぶない」というスローガンが出回っていますが。
まちゃあき 藤崎マーケットのトキさんが、リズムネタ撲滅運動を展開されております。僕らもトキさんの講座を受けたんですけど。
おばら 「ネタの名で呼ばれ始めたら終わり」とか。僕らだったら「本能寺の変の人だ!」ですかね。

■『チャンプル』後の浮き沈み期を経て……
――ブレークには、一方で「一発屋」と呼ばれかねない怖さもあると思いますが、そのことに関してはどう思われますか?
まちゃあき 僕らの根本はやっぱりダンサーなので、たとえ「本能寺の変」がドカンといってその後急にしぼんだとしても、ほかのアプローチがあるんですよ。授業シリーズは引き出しの中のひとつにすぎませんから。だから、逆に一発屋であったらいいなと思います。
おばら そうじゃないと、それ系のネタにばっかり引っ張られちゃいますからね。僕らはライブツアーを主として活動していて、そもそもYouTubeをやり始めたのもツアーの集客につなげたいからだったんですよ。「本能寺の変」は、その役割を十分に果たしてくれたと思います。
まちゃあき 芸人さんなら「あのネタを超えるものを作らないと」っていうプレッシャーがあるのかもしれません。僕らはありがたいことに、『チャンプル』時代にその経験をさせてもらったんですよ。代表的なネタがあって、それをどうしても超えられない。あのときは本当に病んだよな。
おばら どんなもの作っても、ダメって思っちゃう。あのネタは超えられないって。
まちゃあき 今こうして取り上げてもらえるのは、僕らにとっては「ふた山目」なんです。かつていい時期があって、落ちて、そして今。その浮き沈みがあったから、意外とどっしりいられるんです。「絶対消えるだろ」って言われても「そうでしょうね」って。
おばら 実際、消えてましたし(笑)。
――すみません、先ほどから完全に「芸人」さんとしてお話しされていますが(笑)、そもそもダンサーでよしもと所属は珍しいのではないかと。
まちゃあき 自分たちは、芸能界という“オーバーグラウンド”で勝負できるタレントになりたいという気持ちはずっとありました。『チャンプル』時代には、ありがたいことにたくさんのイベントに出させてもらって、芸人さんやタレントさんたちと共演する機会もたくさんあったのですが、どうしてもダンサーは一段低く扱われてしまう。それがちょっと悔しかったんですよね。面白いダンサーだってたくさんいるのに、言葉悪いですけど、踊ってればいいじゃん、踊ったらポイ捨て、みたいな。それを変えるには、自分らのエンタテインメントの幅をもっと広げないとと思いました。しゃべりはもちろん、面白さも演技力も。ちょうどそんな時期に事務所がなくなってしまって、そこで以前からつながりがあったよしもとさんに声をかけてもらったんです。
おばら 学びたかったもののすべてが、よしもとにあったんですよ。ダンス関係、音楽関係のだけの事務所だったら絶対にできないことをやらせてもらえる。芸人さんと一緒にトークライブを作るとか。ダンサーとして固まっていた脳みそをほぐしてくれた気がします。
――芸人さんと交流することも増えましたか?
まちゃあき かなり増えました。でも、最初は難しかったですね。僕らはよしもと入ってすごくうれしいけど、芸人さんの中にはよく思ってない人もいるんじゃないかって怖さもありましたし。
おばら 一緒にライブをやらせてもらったりしながら、段々と僕らのことをわかってもらえるようになったと思います。「関ヶ原の戦い」の最後の「ちょうどええ」も2丁拳銃さんに直接お願いしました。使ってもいいでしょうかと。
まちゃあき 笑いながら「ええに決まっとるやないか」って言ってくれましたけど。今じゃ「よしもとを一番うまく使ってるダンサー」って言われております(笑)。
――中学校の授業にダンスが取り入れられたり、子どもたちの将来の夢で「ダンサー」と答える子が増えたり、日本のダンス文化もだいぶ変化してきたのではないでしょうか。
まちゃあき エグザイル兄さんをはじめとした偉大な諸先輩方が土壌を作ってくださって、その上に僕ら若手は……若手でもないんですけど、踊らせてもらってるだけなんですよね。だから、僕らは僕らなりのフィルターを通して、フィル、フィルターで合ってる?(小声)
おばら 急に声小っちゃくなったな。大丈夫だよフィルターだよ。
まちゃあき 相方~
――フィルターを通して(笑)
まちゃあき 僕らのフィルターを通して、ダンスの面白さを伝えていきたいです。僕らみたいなダンスが好きだっていう子たちもいると思うから。
おばら 表現が正しいかわかりませんが、おバカなダンサーが増えたらいいなとは思います。もっともっといろいろな人がいていいんですよ。日本には素晴らしいダンサーがたくさんいるのに、就職を理由に大半の人がやめてしまう。もったいないなと思います。
■目標は嵐!?
――ダンサーとして生き残るために必要な資質とは、どんなものだと思いますか?
まちゃあき 技術を突き詰めるのもひとつですし、振り付けの妙を理解する生き方もあります。ひとりでできるもんのようにショーダンサーとして引っ張りだこの人もいる。それこそ、知名度も技術もそこそこだけど、ただただマネジメントがうまくて売れてる人も中にはいます。逆にうまいのに仕事ない人も。
おばら どの業界も同じなんじゃないでしょうか。うまいとかヘタだとかだけじゃない何か。
まちゃあき 何がしたいか、何を伝えたいかがブレないことが大事なんだと思う。
――エグスプロージョンは、これからどんな方向へ向かっていくのでしょうか?
まちゃあき 僕たちは毎年ライブツアーをやっているんですけど、ダンサーの可能性として「こんなデカいところでもライブできるんだぞ」っていうことに挑戦したいです。デカいこと言えば、国立競技場とか。生意気なんですけど……嵐さんのように。
――おお!!
おばら あと、ダンスの面白さを伝えることが僕らの義務で使命だと思っているので、ダンス番組はやりたいですね。
まちゃあき 僕らがよしもとで学ばせてもらったエンタテインメントの要素を生かせるような番組ができたら……夢ですね。
おばら 志半ばでダンスをやめてしまう大きな要因って、将来の具体的な絵が見えないこともあると思うんですよ。プロのダンサーってどんな人たち? っていう。だからこそ僕らは「エグスプロージョンみたいになりたい」って言われるような位置にいかなきゃいけない。やっぱり「スター」にならなきゃダメなんですよ。
まちゃあき スターはシンボルですから。日本のサッカーを中田英寿が変え、日本の野球を野茂英雄が変えてくれたように。
――ダンサー界の野茂英雄に!
おばら 野茂になって、嵐のようなステージを国立競技場でって、もうわけがわからない……。
(取材・文=西澤千央)
●エグスプロージョン「踊る授業シリーズ」
iTunes・レコチョクで配信中
レコチョク
<http://recochoku.com/y0/egsprosion_sp/>
iTunes
<https://itunes.apple.com/jp/album/yongru-shou-yeshirizu-ep/id1015827240>
●EDISON presents エグスプロージョン×ひとりでできるもん
LIVE TOUR 2015 カメレオン
8月9日(日) あるあるYY劇場
8月14日(金) 名古屋Electric Lady Land
8月15日(土) 心斎橋VARON
8月21日(金) 渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
●オフィシャルHP
<http://egu-dekirumon.jp/>