似ているのか似ていないのか――7年ぶり2度目の「ヨン様岩」拝観

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ヨン様岩だそうです(掲示されていた観光地図より)。
 渋谷のスクランブルで、あるいは砂漠の真ん中で、偶然ヨン様に出会ったら、韓流ドラマに詳しくない人でも即座に彼とわかるのではないか。  元祖韓流スターとしてあまりに有名すぎる、「ヨン様」ことペ・ヨンジュン(たった今、ワードが「裴勇俊」と一発で変換してくれたので驚いた)。2002年の『冬のソナタ』出演から10年以上たち、メディアへの露出は少なくなったが、今夏の結婚報道でファンが現地に駆けつけるなど、そのカリスマ性は衰えることがない。  そんな世界的スターの名を持つ岩「ヨン様岩」が、ソウル市の郊外・九里(クリ)に存在する。これは、誰かが造った石像などではない。自然そのままの100%岩、それがヨン様岩だ。韓流スターの頂点を極めたヨン様と、素朴すぎる岩のコラボなんて、ちょっと反則ではないか。  ヨン様岩は、標高287メートルの峨嵯山(アチャサン)の山肌に存在する。そのすぐそばには、ヨン様が出演したドラマ『太王四神記』の撮影現場となった「高句麗鍛冶屋村」というテーマパークがあり、ファンは合わせて観光することに。かくいう私も、08年のオープン当時に訪れたことがあり、今回は7年ぶり2度目のヨン様岩拝観となった。  ソウル市内から地下鉄とバスを乗り継ぎ、1時間ほどで高句麗鍛冶屋村へ。ここはドラマ撮影時のセットが保存されており、ヨン様ファンはもちろん、コスプレイヤーが撮影に使っても楽しめそう。ただ、7年前は久石譲作曲のドラマテーマ曲が場内に延々と流れていたものだが、そんな景気のよさは見られなくなってしまった。施設の老朽化も確実に進んでいる。
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ジブリやムーミンの世界に「恨」をミックスしたような撮影セット。
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なお、このテーマパーク内にも、ヨン様岩を確認できるスポットがあるのだが……
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ここからは顔には見えない。てゆうか、木が邪魔で何も見えない。
 高句麗鍛冶屋村の見学をぬるりと終えた後は、いよいよヨン様岩のほうへ。岩が最も顔らしく見える場所へは、登山道を100メートルほど歩く必要がある。周辺には登山ファッションで身を固めたおじさんたちが多いが、そこまで準備しなくても岩拝観には問題ない。  登山口には、さっそくヨン様岩の説明が書かれている。問題の岩は「高句麗鍛冶屋村で撮影された『太王四神記』の主人公に似ているとして『ヨン様岩』とも呼ばれている」とのことだ。
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ここからヨン様岩へ。「峨嵯山の大岩顔」という名も。
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登山道入り口にあった説明(下線筆者)。しかもパワースポットだとのこと。
 ところでここに来るまでも、何度もヨン様岩の写真を見てしまい、すでにおなかいっぱいなのだが、果たしてこの岩、本当にヨン様に似ているのだろうか? ヨン様といえば私などは、眼鏡とマフラーのイメージがあり、岩の写真を見てもいまいち結びつかないのだが、担当者が「似ている」と力説するのだから似ているのだろう。迷いを捨てて、先へと急ぐ。  森に覆われたガチな登山道を歩くこと5分、ついにヨン様岩が登場!
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デッキの向こうに……
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ヨン様岩だ!
 確かに人の顔にそっくりな岩は不思議ではあり、パワースポットといわれるとお得な気もしないでもないが、それだけである。通りがかる登山客も、デッキで少し休んでは、先に進んでいく。  そして実物を前にしても、どのあたりがヨン様に似ているのか、いまいちよくわからない。チェ・ホンマンにも似ている気が……。誰に似ているか悩みつつ見れば見るほど、ただの岩のようにも思えてきた。そこにあった説明文をあらためて読むと、
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「ペ・ヨンジュンに似ているような感じもする」
っておい、いきなり弱気になってどうする。  説明によると、『太王四神記』撮影時に見つかったことが、ヨン様岩と呼ばれる大きな要因のよう(ちなみにヨン様がこの岩を見にここまで来たという情報は、ネットにも見つからない)。まあ、担当者が「似ているような感じもする」と言うのだから、そうなのだろう。  私は7年ぶりにここを訪れたのだが、セット場や看板はどんどん色あせていく一方で(前回訪れた時は、ヨン様岩のデザインがあしらわれたハンカチなど「ヨン様岩グッズ」がテーマパーク内で販売されていたのだが、残念なことに今回は見つからなかった)、ヨン様岩はまったく変わりないことに安心した。さすが、岩である。  そんな岩の姿に、衰えることのないヨン様のカリスマ性を見たような気がした。 ●高句麗鍛冶屋村 住所 京畿道九里市牛尾内キル41(峨川洞316-47) (文・写真=清水2000)

かわいさあまって、生々しさ100倍?「錦江渡り鳥眺望台」

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なんかでっかい鳥さんが。
 韓国は「ゆるキャラ」ではなく「マジキャラ」の国、というのは私の持論だが、今回のスポットも、プロデュースする側は相当に本気である。  日本統治時代の家屋が保存され、観光客を集める群山(クンサン)市。北部に流れる川・錦江(クムガン)は渡り鳥の渡来地として有名であり、その岸辺に2003年に建てられたのが「錦江渡り鳥眺望台」だ。毎年秋になると「群山世界渡り鳥祭り」が開催され、家族連れから鳥を激写したいマニアまで、多くの人が訪れるとか。  鳥を眺め、鳥について学習することを目的とするこのスポット。ソウルから3時間かけて訪れてみたところ、メインとなる青い眺望台は、よくある健全な展望台・博物館という印象だ。一方、渡り鳥に関するオリジナル3D映画を上映したり、誰でも装着できる鳥のかぶり物を設置したり、展望室から見える田んぼが鳥の形に刈られていたりと、鳥への過剰な愛を感じさせる部分がちらほら。  しかし、これもまだイントロダクションだと知るのは後のことである。
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レトロな雰囲気もある展望室。
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鳥のかぶり物をかぶって自由に撮影できる。
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展望室から見える田んぼは、鳥の形に刈り取られていた。大変な労力だ。
 眺望台を下り、鳥のいる公園、卵の形をした孵化体験館などを見学した後は、入り口で見かけたでっかい鳥さんのほうへ。巨大なカモがつぶらな瞳でちょこんと座っている姿は、なかなかキュート。女子の人気を集めそうないいオブジェだなと思い近づいてみたら、なんと入り口があり、中に入れる構造となっている。早速、そちらのほうへ向かってみた。
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口から中に入れるよう。
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えっ?
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あっ……。
 外見と違って、グロい……。実はこの鳥さん、鳥の体内を紹介する「渡り鳥身体探検博物館」となっているのだ。  入り口から目前に広がる光景のうち、中心の赤い管が食道、その奥のピンクの臓器が肺。いくら鳥のすべてを伝えたいからといって、そこまでリアルにしなくても……。わざわざ口から入るという構造も、臨場感をいやに増している。
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入り口の天井部分、くちばしの裏から生々しい。
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肺の間を通って下の階へ。右下に見えるのは心臓と、胃に行く前の食べ物を蓄える臓器「そのう」。
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そのうの中のアーモンドまで忠実に再現。鳥の臓器マニアにはたまらない。
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空に浮くのは宮崎アニメの飛行船? いや、肺だ。肺のまわりについている肉塊は、酸素を貯める「気のう」という臓器(勉強になる!)。
 私が見学している間に、2人の韓国人女子が展示室に入ってきたが、肺のあたりで足を止め、急いで引き返してしまった。外観の印象だけでうかつに入ってしまうと危険だ。  内臓の導くまま奥のほうへ向かうと、腸の先に肛門が現れた。
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肛門から……
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ぷりっと外へ。
 鳥の内部をしっぽり歩いた後の外の空気はとてもさわやかで、深呼吸しながら思わず自分の内臓の動きを確認。生きているってミステリーだなと思った。そして何より、鳥へのあふれる愛を感じさせる素晴らしい博物館であった。  あと、そこら中に吊り下がる肉塊に、1カ月前、安倍首相が安保法案を解説する際に使った、肉塊のようなジオラマを連想したのは私だけではないはずだ。あの放送を目にした韓国の珍スポフリークたちも、錦江渡り鳥眺望台に思いを馳せたのでは、と想像しながらソウル行きの高速バスに乗った。 ●錦江渡り鳥眺望台 住所 群山市聖山面チョルセ路120(聖徳里411-1) 営業時間 10:00~17:00  定休日 なし 料金 大人2,000ウォン HP < http://gmbo.gunsan.go.kr> (文・写真==清水2000)

田園にたたずむ、スーパーリアル建築「進撃の公民館」

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草むらの向こうに見える、テラテラしたおじさんは?
 『人喰猪、公民館襲撃す!』という名の、素朴すぎる韓国怪獣映画がそっち系マニアの間で話題になったことがあるが、こちらは進撃するのが公民館だそうである。  何を言っているのかわからないかもしれないが、2013年ごろから韓国ネット民の間で「進撃の公民館」という愛称で親しまれる建築物があると知り、現場を訪れてみた。もちろんこのネーミングは、韓国でも大人気となった日本の漫画『進撃の巨人』からきている。  その施設は、北朝鮮との分断線がある県・江原道高城郡(カンウォンド・コソングン)内の、土城面桃院里(トソンミョン・トウォンリ)という村に存在する。ソウルからはバスで2時間30分かけて韓国北東部の草束市に移動し、そこからさらにバスを乗り換え、1時間ほど行けば到着するようだ。ところが、いざ草束市に着いてみると、目指す桃院里へのバスは1日に数えるほどしかなく、2時間待ってようやくバスに乗ることができた。行先はかなり辺ぴなところのようで、珍スポトラベラーの私の期待は否応なしに高まる。  バスは海沿いを進んだかと思えば、やがて田んぼに囲まれた田舎道を爆走していた。海岸には鉄条網が張り巡らされ、道路脇には戦車止めのブロック(有事の際にブロックを倒し、道路を塞ぐ)が配置されているのを見ると、北朝鮮が近いことを認識させるが、しかし緊張感はまったくなく、限りなくのんびりとした田園風景が広がっている。  桃院2里のバス停で下車。そこは商店どころか民家の姿もほとんどなく、目前には青々とした山と田畑ばかり。草むらの向こうにテラテラした違和感あるものが見えると思ったら、果たしてそれが「進撃の公民館」であった! 焦る気持ちでそちらに向かうが、道は思った以上に長くて遠い。
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どーん
 なんたるデカさ! 全長は甕を含め16メートルとのことで、もし直立した場合、ガンダム(18m)に引けを取らない大きさといえる。甕の部分に窓があることからわかるように、ただのオブジェではなく内部空間があり、集会などに使えるというのも悩ましい。  何より目を引くのが、そのリアリティだ。マイルドな表情から、年齢を重ねた肌の色、手のシワ、血管、衣服、縄の食い込み具合まで、ちょっと引くほどリアルに表現されている。なお、彼が背負う道具も、本物の木ではなくコンクリだ。  そしてリアルなあまり、むしろ非現実的な建物が、周囲に山と田んぼしかない場所に立っているという、シュールすぎる光景がたまらない。
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iPhoneで大きさを比較。うん、わからない。
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甕を作って売っていた昔の村民の姿をイメージしている。
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横から見ると足先が地面に消えており、SFっぽい。ターミネーターの登場シーンであれば、地面がドーム型にえぐれているところだ。
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おじさんの後ろにあった甕が、2階への入り口となっていた。ただし関係者以外立ち入り禁止とあり、見学は断念。
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全体的にリアルだが、小さい甕を積んだ部分(階段)が強引ではある。
 ネットでは「進撃の公民館(韓国語で直訳するところの村会館)」として名が広まったが、正確には公民館ではなく、地域の広報のために作られた公共施設であることが後に判明している。「進撃の農夫」「進撃の文化センター」という名もよく使われているが、いずれにせよ進撃していることには変わらない。  帰りのバスが20分後の出発で、これを逃したら次のバスを2時間以上待たねばならず、写真だけ撮って急いでバス停へと戻ることに。しかし、その短い時間にも3組ほどの韓国人が自家用車で訪れており(皆おじさんの股間にはさまれる位置で集合写真を撮っていた)、知名度のほどを実感。広報のためという目的は十分に果たしているようだ。  韓国の珍スポを巡りながら、つくづく韓国は「ゆるキャラ」ではなく「マジキャラ」の国だと思っている。全力で造られた本気のキャラクターのみが醸し出す、一分の隙もない直球の脱力感を味わいに、皆もお隣の国へ軽やかに出かけよう。 ●武陵桃院圏域活性化センター 住所 江原郡高城郡土城面城垈路438(桃院里561) (文・写真=清水2000)

「性愛美術館」で追体験する、ラブのさまざまなかたち

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谷間に頭をうずめられる大きさ。右側の緑のキャラクターは、もしや?
 珍スポットに国境はない? 近いようで遠い……ようで行ってみたら意外と近かった、お隣韓国の知られざるB級スポットを発掘する当連載。第1回目は、ソウル随一のカルチャースポット・弘大(ホンデ)地区に、2013年末にオープンしたばかりの「ラブミュージアム」を訪れてみた。    ここ数年、韓国におけるアジア人、特に中国人観光客の存在感は半端ない(2014年の外国人観光客数は、日本で1,340万人、日本より小さい韓国で1,400万人)。それまで地元っ子の遊び場だった弘大も、いまやすっかり外国人観光客の定番観光スポットに変わり、街は多彩な国の人でにぎわうようになった。  そんな弘大のほぼ中心に位置するのが、この「ラブミュージアム」だ。観光案内所でもらった地図を見ながら現場に向かうと、「性愛美術館」という簡体字の看板が。どうやらここも、中国人観光客をターゲットとして見据えているようだ。 その建物にはトリックアートを扱う「トリックアイミュージアム」、氷の彫刻を扱う「アイスミュージアム」等があるのだが、性愛に用のある私は地下1階を目指す。
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古いビルの一角にある
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ミュージアム入り口
 入り口を通過すると早速現れたのが、巨大なおっぱいと、巨大なパンチラ像であった。これはなかなかの迫力だ。ポップながら肉感的でもあり、訪問客へのおもてなしの心が伝わってくる。 レバーを手で回すと、腰をコキコキ動かす人形、のぞき穴のある春画館といった、秘宝館ファンにはおなじみの展示を冷かしながら先に進む。展示はすぐに、イラストや人形を用いてエッチなシーンを再現した作品がメインとなっていくのだが、作者の妄想はどんどん過激に。ピンクの巨大な男性器が、壁を突き破る勢いで白いものをドバッと発射するジオラマは、まさにマグリットの抽象画のよう。ズボンを半分脱いだサンタ姿の男性の目の先には、裸のおっさんの形をした便器があるという、作者の想像力についていけない作品も。  あと、どこかで見たようなキャラクターが、あられもない姿でたびたび登場するのも見どころだ。
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神々しいパンチラ像
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緑のお山に向かってちゅどーん
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奥のおっさんは洋式便器
 これらの展示すべてが直接触ることができたり、顔はめタイプになっていたりと、一緒に写真を撮ることを前提にセッティングされており、奇妙なラブのかたちを追体験できる仕様となっている。  さらに丁寧なことに、ここではこのように撮るべしというサンプルショットが、すべての展示と一緒に掲示されているのが素晴らしい。エッチなシーンに果敢にも挑戦する女性職員の頑張りには、「いや、そこまでやらなくても大丈夫だから!」と声をかけたくなる。  私が訪れたのは平日の夕方だったが、見学客の多くは若い韓国人カップルだった。そしてどのカップルも、サンプルショットと同じように、ノリノリで写真を撮りまくっている。なお、撮影が恥かしい人のために、顔を隠せる「ラブめがね」なるものを受付にて無料で貸し出しているが、それを使っている人はほとんどいなかった。 もちろん、ここに来ようとする人たちだからかもしれないが、男も女も皆、気持ちがいいくらい堂々とポーズをとっている。ひとりでカメラを抱えてカップルの間をうろうろしている私のほうが、よっぽど挙動不審であった。
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左の立て看は、どのように使うのかといえば……

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写真で撮影の仕方を紹介。ちなみに職員の方が着用しているのが、ラブめがね
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どういう状況だ?
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個人的に好きな作品がこれ。こんな豪快さんに私はなりたい
 展示は星座別におすすめの体位を紹介するコーナー、モグラの代わりに性器が飛び出るモグラたたき、男性器をこすって発射する水鉄砲などのゲームコーナーを経てフィニッシュ。正直、展示空間はそれほど大きくない。また比較的きれいにまとまっており、昭和の秘宝館のようなクレイジーさを期待したらがっかりするかもしれない。  しかし女性でも、そして言葉のわからない海外の人でも楽しめる、体験型のポップな展示は、韓国における性の博物館の現在進行形といえるだろう。  もしソウルで言葉の通じない、でもお近づきになりたい素敵な異性と出会うことになったら、ラブミュージアムへの訪問をお勧めする。2人の距離を縮めるのに、言葉なんていらない!(※相手による) ●ラブミュージアム 住所 ソウル市麻浦区弘益路3キル20(西橋洞357-1) 営業時間 9:00~21:00  定休日 なし 料金 大人8,000ウォン HP <http://lovemuseum.co.kr> (文・写真==清水2000)