
『ドローンの衝撃』(扶桑社新書)
4月に起こった、首相官邸ドローン落下事件を覚えているだろうか?
ネガティブな事例であったためか、同事件はドローンの名を日本で広く知らしめる契機となった。あれから約3カ月。ドローンという言葉は、一般に広く定着したかのように見える。現在、日本ではドローンに対する世論が二分されている。ドローンを商業や趣味に積極的に採用しようという企業や個人が増えつつある一方で、自治体を中心に飛行制限・禁止するための議論が活発に行われている。イノベーションか、規制か――。これまで世界を変えてきたテクノロジー同様、ドローンもまた、メリットとデメリットを推し量られながら、社会における立ち位置を見定められているという状況にある。
扶桑社新書『ドローンの衝撃』では、ドローンとは何かという問いに始まり、日本および世界の関連市場の規模や関係者の声を解説していく。また、その未来の展望についても、荒削りではあるがブループリントを提示していく。
特に注視したいのが、ドローンを取り巻いた議論を日本国内の視点だけではなく、国際的な視点から俯瞰している点だろう。ドローン市場は、日本単独で存在するものではない。本書は、ドローンの開発、流通、そしてシェア争いがすでに激しく繰り広げられ始めているということを指摘しつつ、各国のプレイヤーたちの声を拾い、その全体像の一端を解き明かそうとする。また同時に、日本が無人飛行機の分野で優れた歴史を持つことや、世界のライバルと比べて優位な点を持つことについても、関係者へのインタビューで明らかにしていく。
また、同書には、以下のような問いが提起されている。
「ドローンの未来に必要なのは世論の同意」
「ドローンはロボットと人間の共生の第一幕を開く」
この2つの問いは、最近のドローンの現場で盛んに叫ばれているテーゼである。
現在、ロボット関連市場が世界経済における新たな投資先として注目されているものの、商業用に広く普及・利用することが難しいという問題点を抱えている。ここにはさまざまな問題があるのだが、ひとえにリスクや人間への影響がまだ定かではないという点、言い換えれば、人間とロッボトのあるべき関係がまだはっきりしていないという要因が大きい。本書では、そういう状況を打開し、ロボットと人間の共生の先鞭となる存在としてドローンに注目する。
またそれは、ロボット大国として名高い日本の未来にも少なからず影響するのではないかと、本書は指摘する。日本のロボット市場は現在約6,000億円といわれているが、安倍政権は「今年はロボット革命元年だ」とし、ロボット産業の振興を経済政策の目玉のひとつとして据えている。15年1月に最終的にまとめられた「ロボット新戦略」では、2020年までに4倍の2兆4,000億円まで市場を拡大することを目標に掲げた。
日本が、ロボット大国としてさらなる発展を遂げるか否か。ドローンの市場、法制度、そして世論がどのように変遷していくかが、その未来を占うひとつの試金石となりそうである。
なお、同書は技術を解説した専門書ではない。どちらかというと、ビジネスの全体を俯瞰しようという意図がある。そのため、ちまたで話題になっているドローン関連市場の現在地に興味がある方々にとって、有益な新書になるはずである。