
日本や欧米を追い越し、世界に先駆けて「フィンテック(ファイナンス・テクノロジー)大国」になった中国。スマホによる決済システムの普及は想像以上で、コンビニやレストランから、日本円で数十円の露店の肉まんまで、アリペイ(支付宝)やWeChatペイ(微信支付)と呼ばれるオンライン決済システムが幅広く利用されている。
そんな中、昨年末あたりから「QRコードを持った物乞い」が出現している。彼らの掲げるQRコードをスキャンして任意の金額を入力すれば、オンラインで送金できるという仕組みだ。当初、上海や北京など大都市で散見されていたが、いまや内陸部の中級都市にも出現し始めているという。
中国メディアなどの報道によると、こうした“ハイテク物乞い”たちは約8,000円~1万円ほど先行投資をして中古スマホを購入。自分のQRコードを印刷して持ち歩き、繁華街などにいる若者に声をかけるのだ。若者たちも物乞いのハイテクぶりを面白がり、気前よくスマホをかざしてお金を恵むのだという。英メディア「IBTimes」(4月24日付)によれば、ある物乞いは1週間に45時間、路上で物乞いをした結果、1時間当たりごとに平均して約240~600円を稼いだという。この物乞いの月収は4,400元(約7万円)ほどになり、これは最低賃金で働く中国の労働者の水準を上回る。

路上の物乞いも、堂々とQRコードを掲げている。コードは自分で印刷したの……?
「暖かくなって、ハイテク物乞いは増えましたね。レストランが店の前にテーブルを出し始めましたから。この前もテラスで食事していたら、連続で5人の物乞いに声をかけられましたが、うち3人はQRコードを持っていました。珍しかったので、100円ほど送金してあげましたが……。あと、よく貧しい子どもが夜、花を一輪ずつテーブルに売りにくるんですが、その子たちも首からQRコードを下げています」(深センに住む日本人貿易商)
いまや中国のネットユーザーは7億人以上といわれているが、実にその6割以上がスマホによるオンライン決済を利用しているという(香港紙「アップルデイリー」4月25日付)。しかし、本サイトでも過去に紹介したように(
参照記事)、援助交際など個人間の売春にもこうしたオンライン決済は使用されており、さらにドラッグの売買にも使用されている。また、親類や友人へのお年玉をオンラインで送る「電子紅包(デジタルお年玉)」機能は、役人や有力者への新たなる“賄賂”になりつつあると指摘されている。

オンライン決済を利用した援交グループも、中国ではいまや普通だ(業者の投稿より)
グレーな商行為を含め、すべて電子化してしまおうという試みは、いかにも中国的なやり方だ。北京駐在の大手紙記者は言う。
「物乞いであれ犯罪者であれ、とにかく金の流れを可視化させることによって、外貨の流出を食い止め、徴税システムを強化しようという狙いが、当局にはあるのでしょう。腐敗役人や富豪による巨額な外貨流出の阻止が第一の目標なので、グレーなビジネスや軽微な違法取引は追跡可能だが追及はしない、という方針だと思われます。現状、フィンテック産業を官民で盛り上げるため、目をつむっているという段階です」
ただし、中国のオンライン決済社会がさらに進めば、あらゆる決済・商行為は当局によって把握され、筒抜けになる。オンライン決済に関しては「日本は中国より遅れている」という意見が散見されるが、プライバシーの観点からいうと、今の日本くらいの普及度がちょうどいいのかもしれない。
(取材・文=金地名津)