
正式弟子任命の儀式に臨み、師匠に向かってひざまずく浪岡さん
広東省広州市で、同地に伝わる武術流派を学んだ日本人男性が、同派では外国人として初めての伝人(正式弟子)に認定され、拝師(はいし)と呼ばれる儀式に臨んだ。
浪岡大輔さんは北海道出身の35歳で、幼い頃から香港映画の影響で中国武術に興味を持ち、武術を学ぶために大学で中国語を専攻。卒業後、北京への留学を経て広州市を訪れ、働きながら武術を学んでいた。
同市は中国南部の都市だが、彼が学ぶ流派は日本人にもなじみのある太極拳など、中国北方の武術だ。八卦掌、武当拳といった拳術各派と武器術を伝える総合武術で、傅(ふ)姓の武術家が伝えたことから、武当傅家拳(ぶとうふかけん)と呼ばれている。

武当傅家拳三代目当主・振嵩氏の、手取り足取りの指導を受けてきた
師は五虎下江南(北方武術を最初に南に伝えた5人の武術家)のひとり、傅振嵩(ふ・しんすう)直系の孫で、三代目に当たる文龍(ぶんりゅう)氏。香港のアクションスターで、映画『イップ・マン 葉問』に主演したドニー・イェンの母親である麥寶嬋(マク・ボウシム)女史は、文龍氏の父、永輝に学んでおり、文龍氏と麥女史は兄妹弟子、ドニー・イェンは浪岡さんの遠い兄弟子という関係だ。07年から11年までの4年間は、日々、文龍氏からマンツーマンに近い環境で教えを受けていたという。

外国人が中国武術の名跡を継ぐという異例の出来事を、地元紙も報じた
武当傅家拳は広東省、香港などで伝えられたことから、華人の移民で海外に広がり、現在では中国国内よりも、アメリカ、ドイツ、イタリア、オーストラリアなどに入門者が多い。浪岡さんも、将来はアジア圏を離れ、文化としての武術を広く海外に伝えたいという夢を持っている。
「中国武術の歴史は長い。中国語が現地の人と同じレベルで話せること、また文化的・身体的習慣を学ばなければ、本当の意味では理解できない。武術や普段の生活を通して、文龍先生という人自身を学びました」(浪岡さん)。
12年には、当時日本語教師として勤めていた語学学校で同僚だった中国人女性と結婚し、一時帰国。2人の子どもを授かり、実家のある北海道や台湾で生活していたが、今年4月に再び広州へ戻ってきた。足掛け9年、広州を離れていても休まずに練習を重ねていたことが認められ、今回、ほかの兄弟弟子と共に、初代より数えて4代目の伝人となった。
「今後も修行と研究を続け、将来は海外に向けて広め、子どもの世代、孫の世代へとつないでいきたいです」と、夢を語る浪岡さん。
外交の世界では冷え込む日中関係だが、文化面での日中交流は、今なお着実に続いているようだ。