こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。 11月8日に行われたアメリカ大統領選挙において、共和党候補のドナルド・トランプ氏が当選しました。今回の大統領選では、アメリカをはじめ、世界各国のメディアは民主党候補のヒラリー・クリントン氏の当選を予想していたため、この結果は大反響を呼びました。 ■メディアに洗脳されない中国国民 一方、中国メディアは比較的中立的な立場で大統領選を報道していましたが、大多数の中国人にとって、トランプ氏の勝利は想定内でした。彼らがメディア報道に“洗脳”されなかった理由は、商業的な意味合いでリベラル、平和主義的な報道を行うことが多い資本主義国家のメディアに比べ、中国メディアは、政府の都合のため誇張・捏造された情報を毎日のように報道しています。そのため、多くの中国人がメディア報道に対し、懐疑的になっているのです。 新聞、テレビなどアメリカの主要メディア27のうち、トランプ支持を表明したのはわずか2つだったそうです。トランプ氏はその事実を知り、自身のTwitterに「不公平だ!」と書き込みましたが、僕自身も報道の偏向性を感じました。中でも、中国人の僕にとって一番容認できない記事は、3月24日付のニュースサイト「ニューヨーク・タイムズ」中国語版に掲載されたものです。記事のタイトルは「なぜ、中国人がトランプ氏を支持しているのか?」。トランプ氏の提唱するイスラム教徒弾圧や中国の海洋進出に触れ、トランプ氏の政策は中国にとって都合がいい、という内容が書かれていました。確かにこれらの一部は事実ですが、中国版Twitter「微博」上に「川普粉糸団」というトランプ氏のファンコミュニティが存在することに言及し、「毛沢東を崇拝する中国人は、同じく独裁的なトランプを支持している」と、毛沢東の体にトランプ氏の顔を合成した写真を掲載しました。 しかし、「川普粉糸団」の参加者は、不法入国者の強制送還などトランプ氏の「法治精神の貫徹」に共感しているのであり、独裁的な面を支持しているわけではありません。しかも彼らは、欧米風の民主主義、いわゆる「普世価値観」(普遍的な価値観)を支持する人が大半です。そのため、ニューヨーク・タイムズの記事内容に多くの中国人が反発し、サイトのコメント投稿欄には「トランプ氏は民主、法治の理念を貫徹する素晴らしい人物だ」「アメリカの左派層は社会主義を浸透させ、自国を蝕んでいる。(トランプ氏を)中国共産党と比較するなんて、侮辱だ」「トランプ氏を毛沢東に例えることは、公衆への信用をなくす行為」などと批判的な書き込みが殺到しました。 ■ある意味、中立的な機関メディア 僕自身はトランプ氏が当選した後、アメリカのメディアは彼に対する認識を改めると思ったのですが、全米各地で反トランプデモが発生していることや、大統領選後に株価が暴落したことを大々的に報道するなど、スタンスをまったく変えませんでした。日本や香港のメディアも、大半がアメリカに追従したような報道を繰り返しており、僕は失望しました。そんな中、中国メディア「鳳凰衛視」が「日本の安倍首相がトランプ氏と急いで会談する真意は?」「アメリカの内向化で、日本の防衛体制に不安が」「トランプ氏は日本に核兵器保有を容認したが(その後、否定)、被爆国の日本国民は許さないだろう」という中立、客観的な記事を掲載しました。 僕自身は、「米軍基地撤退」を掲げるトランプ氏の大統領就任をきっかけに、日本国憲法9条第2項「目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」を削除し、自衛隊を国防軍化するべきだと思います。仮に本当にアメリカ軍が撤退した場合、日本の国防は瀬戸際を迎えます。今回の大統領選は、日本がアメリカ依存の防衛体制から脱却を図るきっかけとなるかもしれません。 防衛体制の変革が必須になっているにもかかわらず、憲法改正を訴える主要メディアはごく一部です。日本のみなさんは報道をうのみにするのではなく、自身が正しいと思う主義主張を選ぶべきです。そのためには、中国人のメディアに対する懐疑的な姿勢は、ある意味、参考になると思います。 ◆「チャイナめった斬り」過去記事はこちらから
●そん・こうぶん 中華人民共和国浙江省杭州市出身の31歳。中国の表現規制に反発するために執筆活動を続けるプロ漫画家。著書に、『中国のヤバい正体』『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)、『中国人による反中共論』(青林堂)、『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)がある。 <https://twitter.com/sun_koubun>










