一泊380円!? 大阪・十三の激安ラブホ「ホテル サンパチ」に潜入!

sanpachi1
 大阪市淀川区十三。梅田から阪急電車で5分ほどの街である。飲食店やキャバレーなどが立ち並ぶ歓楽街で、駅の南側にはラブホテル街がある。  僕はよく十三に飲みに行くことがあり、ぶらぶら歩いているうちに、気づけばそのラブホテル街に足を踏み入れていたりするのだが、中でもひときわ目立つのが「激安ホテル サンパチ」だ。  看板には「世界初 212号室限定 ロングタイム ご宿泊380円」とある。「サンパチ」だから380円。その理屈は理解するとして、380円で宿泊できるというのは、あまりにも安すぎる(※料金は、すべて税別)。
sanpachi2
 しかも、380円で宿泊できるのが「212号室」限定だというのも、裏に何か事情がありそうだ。もしかして、幽霊が出るとか!?  ということで、「激安ホテル サンパチ」に、その安さのワケを聞いてきた。  取材に応じてくれたのは、「激安ホテル サンパチ」の支配人・中村徹平さん。少しコワモテだが、話しだすと笑顔の優しい、穏やかな人だった。
sanpachi3
――あの、380円で泊まれる部屋があるという看板を見たのですが、あれは本当なんでしょうか? 「本当です。オールタイム380円で、フリータイム、宿泊どれでも380円です」  ちなみに、「ショートタイム」は90分間の利用、「休憩」は3時間の利用、「フリータイム」は朝5時から深夜24時までの最大19時間、「宿泊」は20時から翌昼12時まで最大16時間、あるいは深夜1時から翌昼12時までの最大11時間となっており、利用したい時間に応じてユーザーが好きに選べるシステム。つまり、「フリータイム」の時間帯で利用すれば、380円で最大19時間滞在できるというわけだ。 ――安いですね! でも、なぜなんですか? 「やはり、いろいろなお客様にご利用いただきたい、という思いからですね。売り上げ的には赤字ですけど(笑)。お客様に喜んでもらえればいい、という方針なんですよ。380円の部屋狙いのお客様が、“空いてないから別の部屋にしよう”っていうことも、ほとんどないですからね(苦笑)。380円狙いの方は、たいてい380円の部屋だけが目的なんで。その代わり、おかげさまで名前は売れてます。十三では有名なほうだと思いますよ」 ――ちなみに、なんでまた“380円”なんですか? 「当ホテルは2012年から営業しているんですが、もともと“サンパチ”という名前を付けた時から380円の部屋を作ろうと考えていたんです。おつまみも飲み物も全品280円の居酒屋さんがあって、それにヒントを得たんです」 ――そんなところからヒントを得るなんて……。あの、212号室だけが380円だということなんですが、その理由は……? 「特に理由はありません。あまりほかと変わらない、平均的な部屋になっています」 ――えっ! これといった理由はないんですか? 何か、言えないような事情は……。 「よく言われるんですよ。『事故物件じゃないの?』とか。逆にそういうことがあったほうが、話題になっていいんちゃうかっていうぐらいで、心霊現象とかね。いっそ、何か出てほしいです。座敷わらしとか(笑)。ほかによく聞かれるのは『テレビがないんじゃないか?』とか『シャワーがないんじゃないか?』とか。ちょっと確かめてみますか?」  というわけで、実際に380円で借りられる212号室を見せてもらった。こちらが212号室のドア。思い切って開けてみると……。
sanpachi4
 ダブルベッドが奥に置かれており、その手前には革張りのソファ。ベッドと反対側に大きなテレビが設置され、テレビ台を兼ねた棚に電子レンジや冷蔵庫、電気ポットが収納されている。スペース的に少しコンパクトに感じる部屋ではあるが、確かに別段変わったところはない。
sanpachi5
「普通でしょ? びっくりするぐらい普通なんです」
sanpachi6
sanpachi7
 お風呂は少し狭い感じがしたが、シャワーももちろんあった。
sanpachi8
 これより狭い部屋で、5,000円ぐらいするビジネスホテルを何回も利用した記憶がある。タオルや歯ブラシなどアメニティも一般的なホテル同様で、ドライヤーやカーラーなども、もちろん備え付けられている。
sanpachi9
 バストイレは別で、トイレは温水洗浄便座付き。どこまでも普通の部屋である。ドアに貼られた避難時用の案内板を見ると、212号室はほかの部屋よりほんの少しだけ狭いようだ。
sanpachi10
 さて今一度、中村さんにお話を聞いてみよう。 ――本当に普通の部屋でした。これで380円となると、競争率がすごいんじゃないですか? 「はい、競争率はハンパないですよ。宿泊で利用される方もいれば、休憩で3時間という方もいるんで、空いているかどうかは、その時のタイミング次第なんですよ。部屋が空くまで待ちたいというお客さんもいるんですけど、それはご遠慮いだたいています。 ――じゃあやはり、かなり運が良くないと利用できないですね。 「でも、サンパチのTwitterアカウント(https://twitter.com/sanpachi_jyuso)で『もうすぐ空きそう』とか『今空いてます』とか、書いてるんですよ。電話での空き状況の確認はお断りしているので、Twitterをマメに見てもらうのが212号室をご利用いただく近道かもしれません」 ――なるほど、ホテルサンパチのTwitterフォローしておきます! ちなみに、こちらのホテルを利用できるのは、男女のカップルだけですか? 「いやいや、当ホテルのご利用は、お一人でもいいですし、男性同士でも女性同士でもいいですし、どなたでも可能です。ただ、212号室だけは、男女のカップル様でのご利用を推奨させていただいています。受付のパネルを見れば、212号室が空いてるかどうかわかるので、気軽に見に来てください」
sanpachi11
――212号室を利用できた人は、やはりみなさん大喜びのリアクションで帰っていかれますか? 「そうですね。みなさま満足してくれていると思います。中には、380円だと知らずに利用される方もいるんですよ。以前、会計時に380円という価格を聞いて、フロントのスタッフが会計を間違ってると思ったのか、料金を置いてササッと逃げていく方がいました(笑)」 ――まさか、正規の料金だとは思わなかったんでしょうね。212号室に限らず、全室ともフードが1品380円なんですね。スパゲティやカレー、ラーメンとか。 「そういうところまで徹底しているんです。『中途半端なことはしたくない、やるんだったらとことんやる』というのが弊社の方針ですから。部屋料金も、サンパチという名前で3,800円だったら、安いかもしれんけど、それでは普通だと。380円なら、誰にも真似できないだろうという。まあ、いい意味で、ぶっ飛んでます(笑)」 ――そのほかの部屋も、3,800円(平日の深夜1時から翌昼12時まで)で宿泊できるし、212号室を除いても十分安い気がしますけど、やはりそのぶっ飛び具合が素晴らしいですね。ちなみに、212号室のほかに、変わったお部屋はあるんですか? 「変わった部屋……ありますよ。お客様のリクエストから生まれた部屋が……。気になります?」 ――気になります! 「見てみますか!」  というわけで中村さんが案内してくれたのが、401号室だ。ドアを開けると、先ほどの212号室とは打って変わって、シックなムードの部屋である。壁は赤、柱は黒で統一され、ベッドの脇には赤いロープで縛られた裸像が置かれている。
sanpachi12
――これは……!
sanpachi13
「SMプレイルームです(笑)。実は十三はSM嬢さんの巣なんです。SM嬢さんが大勢働かれていて、この部屋はSM嬢さんに監修してもらって作った部屋なんです。ほら、これ」  黒い梁に、何カ所もフックのような金具が取り付けられている。
sanpachi14
「このフックは初心者用で、プロはもう直接、梁ですわ。すごく丈夫な梁なんです」  どのように利用するのかは想像するしかないが、とにかく頑丈な梁だそうだ。 「しかもこの部屋、SMを理解した一級建築士が設計した、完璧な部屋なんです。完成するまでに、近所のSM嬢さん20人ぐらいに見に来てもらって意見をもらいまして」 ――「SMを理解した一級建築士」、なかなか耳に馴染みのないフレーズです 「お客様がこんな部屋があったらなと思う部屋を提供したいというのが当社の方針です!」  中村さんによれば、「激安ホテルサンパチ」には401号室を含め、3つの“プレイルーム”が存在し、それぞれ、その道の方々に愛用されているという。  思った以上にいろいろと奥深かった「激安ホテルサンパチ」、大阪・十三にお越しの際は、ぜひのぞいてみてはいかがでしょうか? (取材・文=スズキナオ) ●「激安ホテルサンパチ」 http://osaka-jyuso-rabuho-sanpachi.com/ 所在地:大阪市淀川区十三本町1-18-21

実は紙じゃなかった! 投票箱の中で自然に開く「投票用紙」、その原理とは?

senkyo01.jpg
 7月10日は参議院選挙。今回から選挙権年齢が「満20歳以上」から「満18歳以上」に引き下げられたことが話題になっている。これによって有権者数は約240万人増え、全体では約1億660万人となる。  そこで心配になるのが、開票スピード。仮に投票率が50%としても、膨大な数の投票用紙が各地の投票箱に入れられることになる。  しかし、安心してほしい。現在の投票用紙は折りたたんだ状態から投票箱の中で自然に開くため、開票作業の効率化に大きく寄与している。さらに、候補者の名前を読み取る機器や枚数を数える計数機の進化も著しい。  この選挙システムを全面的にバックアップするのが、株式会社ムサシ(東京都中央区)。そもそも、折りたたんだ紙がなぜ自然に開くのか? 担当者に聞いてみた。
senkyo02.jpg
「正式な商品名称は『テラック投票用紙BPコート110』で、1989年に弊社が発売しました。主原料は元の形状に戻る性質を持つポリプロピレンという樹脂で、正確にはフィルムの一種なんです」(広報室長・篠沢康之さん、以下同)  なんと、あの投票用紙は紙ではなかったのだ。とはいえ、開発に取り掛かったのは80年。完成までに、実に9年もの時間を費やしたそうだ。 「表面に鉛筆で文字が書けるようにする、計数機のローラーとの摩擦係数を調整して用紙が滑らないようにする。この2つが、開発時の大きな壁でした」
senkyo03.jpg
投票用紙読取分類機CRS-VA
 発売当初は各地方自治体に商品案内を行い、地方選挙への導入を進めた。やがて国政選挙にも採用され、最後に2012年の衆議院選挙で沖縄県が導入した時点で、ようやく全国47都道府県を制覇したという。  なお、使用済みの投票用紙は専門の業者が粉砕し、ペットボトルやプラスチック製品などにリサイクルされている。  さらに、投票用紙に書かれた手書き文字を読み取って候補者別、政党別に高速分類する機器のスピードは毎分660枚。また、分類された投票用紙を毎分1,500枚の超高速で計数しながら、「二つ折れ」や「二重送り」などの異常票は自動的に排除する機器なども、ムサシは販売している。  こうした技術革新が投票用紙の開票スピードを格段にアップさせ、当確速報の迅速化に大きく貢献しているのだ。  だからって、グシャグシャにしちゃダメだぞ! (取材・文=石原たきび)

ドムドムハンバーガー全店制覇を目指す謎の集団「ドム連」とは?【後編】

domdom5
■前編はこちらから■ドム連の全メンバーが認める名店「水無瀬FC店」へ  看板を指さして、けんちんさんが言う。 「『ハンバーガードムドム』と、『ハンバーガー』が先に来る順序で表記されているのは珍しいんですよ。一時期、その表記を採用していたことがあるんです」
domdom6
「このモーニングセットも貴重です。オープン時間が早い店舗でしか実施できないという事情もあって、全国で数店舗しかやっていないんです」
domdom7
「あとこれ、毎月行われる商店街の催しに、ドムドムも出店しているんです。そういうところがすごくいいでしょう?」
domdom8
と、早速いろいろ教えていただきつつ店内へ。土曜の昼時であったが、店内にはゆったりしたムードが流れていて、新聞を読みながらゆっくりコーヒーを飲んでご老人がポカポカと暖かい陽射しを浴びている姿が印象的だった。  この「水無瀬FC店」では、ほかの店舗にはない貴重なメニューを食べることができ、実に驚きの品があったりもするのだが、諸事情により、そちらについてはドム連の公式サイト(http://domrenjp.wix.com/domren)で確認していただきたい。  メニューの中から、気になった「春巻き(チーズポテト味)」を食べてみた。
domdom9
 チーズポテト味の春巻き!? こちら、今年3月から始まった新メニューだそうで、ドムドムの攻めの姿勢を垣間見ることができる。サクッとした歯ごたえとチーズのまろやかな味わいのバランスが素晴らしく、すごくおいしかった。  けんちんさんは、ドムドムのハンバーガーの中でも特に人気の高い「甘辛チキンバーガー」をチョイス。
domdom10
 この「水無瀬FC店」では、貴重な「アイスクリーム」が食べられるという。アイスクリームって、普通では? と思うかもしれないが、ほかのドムドムハンバーガーではソフトクリームを販売しているのだが、水無瀬FC店にはソフトクリームを作る機械がなく、代わりにアイスクリームを提供しているのだとか。
domdom11
 そんな細かいポイントまで見逃さないけんちんさんがおいしそうにアイスクリームを食べる姿を見て、ドム連の底知れなさを感じた。
domdom12
 そんなけんちんさんのご紹介で、今回特別に水無瀬FC店店長の大西美紀子さんにお話を聞くことができた。
domdom13
――このお店は、いつから営業しているのですか? 大西さん 30年前(1986年)からですね。もともと、このお店の半分の敷地でファンシーショップ(!)をやっていたんですよ。ある時、隣のテナントがたまたま一般公募物件になったんです。“絶対、当たらんわ”と思ったんですけど、ダメもとで抽選に行ってみたら、ウソみたいに当たりまして。そこで、レンタルビデオかハンバーガーショップをやろうと思って調べたら、ドムドムハンバーガーならフランチャイズで営業できると。また、ドムドムハンバーガーは本部のフォローも手厚いと聞いていましたんで、それでやることにしたんです。 ――クジ運がすべての始まりだったんですね。 大西さん 最初は客席もない店舗だったんですけど、その後、隣のファンシーショップを閉め、ブチ抜いてこの広さになったんです。 ――それからこれまで、順調にやってこられたんですか? 大西さん それはもう、いろいろありましたけどね。大手のチェーンが近くに店舗を出して、お客さんが減った時期があったりね。ただこの店が駅前で立地条件がよかったのも幸いしまして、なんとかなりました。 ――ちなみに、ドムドムハンバーガーはお店によって個性があって面白いと聞いたんですが、例えば提供するメニューはお店側で決めたりはできないですよね? 大西さん もちろんフランチャイズなので、できないんです。ただ、現場にしかわからないことがあるんですよね。お客さんの好みとか、何を求めていらっしゃるかとか。そこに合わせて、できる限り努力するようにしています。  ――商店街の催しなどにも、積極的に参加されていますよね? 大西さん 商店街でやりましょうと決めたことにはやっぱりきちんと参加して、地域の方々に喜んでもらいたいですからね。コーヒーやフラッペを出したり、娘がほかの屋台を手伝ったりね。子どもさんにも、喜んでもらいたいですから。 ――地域の方々と密接に関わっているんですね。 大西さん 長いことやってますからね。いつもお客さんに助けられているんですよ。イスが傷んできて取り替えないとならなくなったら、リサイクル業をしているお客さんから安く譲ってもらったりね。あと、この前、自動ドアが壊れてしまってね、今は手動ドアになってるんですけど。常連のお客さんが「俺が取っ手つけたるわ」って、開けやすくしてくれたりね。子どもの頃から知ってるお客さんなんですけどね。とにかく全部お客さん頼みですわ。この店も……いつ辞めるかわからないですけど(笑)、まあ元気な限り続けていきたいと思ってます。 ***  大西店長のお話を聞いていると、この人柄の良さがお店の居心地の良さを生み出しているとともに、ドムドムハンバーガーの経営方針はとても柔軟でいいなと思った。  アットホームな雰囲気がたまらないドムドムハンバーガー、そして、そんなドムドムを追い求めるドム連に共感できたなら、ぜひみなさんも「食べ支え」してみては? 都内には「イオン赤羽北本通り店」「マルエツ大泉学園店」「小平店」がある。電車に乗ればあっという間だろう。ドムドムにしかないキュートでゆるい魅力を、みんなで守っていこうではないか! (取材・文=スズキナオ) ※記事の中で紹介しているメニューに関しては時期により内容が変わる場合がありますのでご了承ください。 ドムドム連合協会公式サイト <http://domrenjp.wix.com/domren> <取材協力> ドムドムハンバーガー 水無瀬FC店 住所:大阪府三島郡島本町江川2-13-1-113 営業時間:営業時間:9:00~20:00 定休日:毎週火曜日(祝日除く)

ドムドムハンバーガー全店制覇を目指す謎の集団「ドム連」とは?【前編】

domdoma
「ドムドムハンバーガー」というファストフードチェーンの名を聞くと「ああ、あの象のマークのでしょ?あったあった! 懐かしい……」と、遠い目をする人が実に多い。  しかし、「ドムドムハンバーガー」は今もなお、日本各地に存在するのだ。  確かに、全盛期である1980年代には全国に400以上もあった店舗が、2016年6月現在で69店舗と、その数を減少させている。だが、現在も営業中の店舗は、地域の方々に愛されながら、ほかのチェーンにはないどこかアットホームな雰囲気を大切にしつつ、いつでもわれわれにドアを開いて待っていてくれる。  そんな「ドムドムハンバーガー」の全国各地の店舗をリストアップし、全店制覇を目指して活動している団体がある。「ドムドム連合協会」、通称「ドム連」がそれだ。  今回、ドム連のメンバーに「ドムドムハンバーガー」の魅力や、活動内容など、気になることを片っ端から聞いてみた。  インタビューに応じてくださったのは、けんちんさん、UCさんのお2人。 ――ドム連は、どんなメンバーで構成されているのですか? けんちんさん 私と、UCさん、逢根あまみさん、おだ犬さんの4人です。それぞれほかに専門分野を持っていて、私は団地、その中でも特に市街地住宅が好きで、全国の給水塔を巡っているUCさんと「チーム4.5畳」という団地愛好家サークルで活動しています。逢根あまみさん、おだ犬さんは、ご夫婦で昭和遺産的なラブホテルの取材をされています。
domdom0b
――いきなり情報量がすごいです! それぞれに特殊なジャンルを研究されている4人が、どうしてドム連を結成することになったのですか? UCさん 給水塔の写真を撮るために日本のいろいろな地域へ出かけていたんですが、2012年頃、撮影の合間に、近くにあったドムドムに立ち寄ったのがきっかけになって、徐々にその面白さに気づいていったんです。そうしているうちに、店舗数がだんだんと減ってきていることがわかって。それでもその頃は、まだ93店舗あったんですが……。「ドムドムを残していかなければ!」と思って、全国のドムドムをリストアップしてマッピングした『ドムドムハンバーガーマップ(https://www.google.com/maps/d/viewer?mid=1lahnYG4G6J-NFKmpcD3ZXJsGGrE&hl=en_US)』を自分のブログにアップしまして、それが4年ほど前だったんですが、そのマップがなぜか昨年になって突然爆発的に拡散されたんですよ」
domdom1
――私もそのマップをTwitterで偶然見て、「ドムドムって、今これだけなんだな、行っておかなきゃ」と思ったのを覚えています。 UCさん ドムドムはお店によって個性があって、細かいところが違っていたりして、よく見ていくと面白いんですよ。それでけんちんさんにドムドムの面白さを力説したんですけど、最初は全然乗り気じゃなくて(笑)。 けんちんさん 初めは面白さがわからなくて、お店に行っても無表情でハンバーガーを食べているだけでした。ただ、そんな時に、ちょうど知り合ったばっかりの逢根さんが昔ドムドムでアルバイトしていたことがわかって、2人をつなげるためにドムドムについて下調べをしていたら、私も一気にハマってしまったんです。それが今年の1月ぐらいで、そこからどんどん盛り上がり、逢根さんの旦那さんのおだ犬さんと一緒に、4人でドム連を結成することになったんです。 ――ドム連は、どんな活動をしているのですか? けんちんさん みんなで集まってドムドムに行くことはあまりなくて、個人個人が各地のドムドムに行って、報告し合うのがメインですね。ドム連のサイトがあるので、そっちに情報を集約したりとか。あとはTwitterに『#ドムさんぽ』というハッシュタグを作っているんですが、それをドム連以外にもみなさんが「どこどこのドムドムに行ったよ」などとツイートするのに使ってもらったり。ドムドムって、一つひとつの店の違いがわかってくると、本当に面白いんです。今はメンバーの中で私が一番、ドムドム研究に力を入れていますね。年内に全店制覇したいと思っています! ――成功を祈っています! ちなみに、ドムドムの各店ごとに、具体的にはどのような違いがあるものなのですか? けんちんさん もうね、メニューが違うんですよ。その店でしか出してないメニューがあったりするんですよ。和歌山の海南FC店と大阪の津之江FC店では「バターコーン」という、ほかの店舗では出していないメニューがありますし。
domdom2
「ドムドムクレープ」を提供している店としていない店があったり。あと和歌山のグルメシティ田辺FC店では、「セットガチャガチャ」「サイドメニューガチャガチャ」というのがお店に設置されていて、運でメニューが決まる仕組みになっていたりするんです。すごくないですか!?
domdom3
domdom4
UCさん 特にフランチャイズ店ではゆるい部分というか、お店側の判断に任されている部分があって、そこが面白いんです。 けんちんさん あと、神奈川の横須賀市には2店舗ドムドムがあるんですけど、これがなんと2店とも同じショッピングモールの同じ階に入っているんですよ。同じフロアに、2つドムドムがあるんです。直営売り場とショッピングセンターのそれぞれのフードコートにあるのが理由ですが、そういうゆるさも面白い。  ……と、こうして話を聞いた私だったが、ドムドムの魅力とドム連の活動について知っているのは、まだほんのさわりの部分だけだ。そこで、けんちんさんにご案内いただき、ドム連の全メンバーが“名店”との賛辞を惜しまない「水無瀬FC店」に実際に行ってみることにした。 (後編に続く/取材・文=スズキナオ) ※記事の中で紹介しているメニューに関しては時期により内容が変わる場合がありますのでご了承ください。 ●ドムドム連合協会公式サイト <http://domrenjp.wix.com/domren

遊廓や売春関連の書籍ばっかり復刊する「カストリ出版」ってなんだ?

kasutori01
カストリ出版が販売する書籍の一部
「全国260箇所の遊廓を収録した奇書『全国遊廓案内』!!」「今から60年前に刊行された色街ガイドブック、『全国女性街ガイド』を完全復刻!!」「800ページ超180ヶ所の大著 全国の花街・遊廓・私娼窟を紹介」……これらはみな「カストリ出版」という、現在進行形で活動中の出版社によって販売されている書籍の紹介文である。  花街や遊廓というと遠い昔の話に感じたり、今もあるのかもしれないけど、表立った情報の極端に少ないタブーなテーマに思えたり、どちらにしても日常とは縁遠い世界であるような気がする。都市伝説に近い感覚。  しかし、カストリ出版が作っている本を手に取ってパラパラめくると、幻のようなものに感じていた世界が、ある時代までは確実に日本全国に無数に存在し、そこに多くの人々が行き交っていたことをゾワッとリアルに感じる。圧倒的な情報量に頭がぼーっとしてきつつも、面白すぎて読むのがやめられない。  例えば、昭和4年発行の『全国遊廓案内』では、日本各地の遊廓の妓楼・娼妓の数、サービスにかかる料金等が500ページ近くにわたって書きつづられているし、昭和30年発行の『全国女性街ガイド』はさらに生々しく、どこの地方の芸者はどんな性格で、どんなふうに遊ぶのがおすすめで、というような情報を著者が情感たっぷりに語り続ける。知らない世界をのぞき見ているような気分だ。  カストリ出版は、遊廓や色街といったものに関する書籍を復刻・販売する出版社で、扱っているものはどれも稀少本として、市場では当たり前のように数万円以上の価格で取引されているものばかり。面白い試みだと思いながら……なぜこのような狭いテーマに絞って活動しているのか、またどんな人がやっているのか? 代表者である渡辺豪さんに話を聞いた ――カストリ出版は、何人ぐらいでやられているのでしょうか? 「基本的には私ひとりです。一部外注でお手伝いしてもらっていますが、ほぼひとりでやっています」 ――そうなんですか! 個人出版社ということなんですね。 「カストリ出版は、2014年末からスタートして、現在までに10タイトルほどをリリースしています。私自身、遊廓や赤線(1946~58年の間に、半公認で売春が行われていた地域。警察が地図上の該当エリアを赤い線で囲ったことに由来)というテーマが大好きで、遊廓跡を調査してブログを書いていたので『好きなことを仕事にした』と言ってしまえば身もフタもないのですが、多少なりとも考えたところがあるとすれば、『遊廓の情報を残したい』というのが復刻しようと思った理由ですね」 ――具体的には、どのような本を復刻されているのでしょうか? 「私が最初に復刻した『全国女性街ガイド』という本は、古書マニアの中では3~5万円前後の値段で取引されている稀少本です。しかも、5万円出せばいつでも買えるというものではなく、まれに市場に出て、やっとその価格で買えるというものです。中身は売春防止法直前に全国の売春街350カ所あまりを取材して書かれたという、とんでもない本です。また、終戦直後に大変な勢いで生まれた『カストリ雑誌』の中から、売春街に関する記事を選り抜きした本なども出版しています」
kasutor02
戦後の一時期には、約1,000種類も存在したというカストリ雑誌
――復刻にあたっての作業というのは、どのように行っているのでしょうか? 「文章はすべて手で打ち直して、テキストデータにしています。当時の書籍は活字が物理的に欠けていたり、印刷から半世紀、ヘタしたら1世紀近くたっていて不鮮明なので、一度データ化して、イチから作り直しています。写真・図版は1点ずつスキャンしています。テキストのデータ化は、かなりキツイです(笑)。写経のような感覚ですかね。先頃出した『全国花街めぐり』は800ページ以上ある大作なので、半年ほどかかってしまいました」
kasutor03
『全国花街めぐり』の原著。市場では数万円の価格がつく
kasutor04
各地の花街の人気芸者などの写真も多数
――カストリ出版の書籍は、パッと見ると高額なものも多いですが(例えば『全国女性街ガイド』は1冊5,400円)、そういった地道な作業の末に復刊されていることを思うと、決して高くはないかもしれませんね。 「5万円の本では、中身がどれほど良くても情報が行き渡りません。古本で買うよりはずっと安く、そしていつでも買えるようにすれば、遊廓・赤線について興味を持った方が調査していく上で有用な情報の提供になると思っています。また、原著をそのまま復刻するのではなく、関連する稀少な資料を付録として収録したりと、『原著以上の価値がある本』を目指しています」 ――カストリ出版の本の中で、特に初心者向けにおすすめなものはありますか? 「『全国遊廓案内』ですね。北から南まで、果ては外地まで、全国各地の遊廓が記載されていて、おそらく皆さんの地元の欄にも遊廓を見つけることができるんじゃないでしょうか? 著者が不明という謎に包まれた本ですが、新しい発見のある、興味の尽きない本です」 ――どんな人がカストリ出版の本を買うのですか? 「驚いたのですが、半分ぐらいが女性のようです。内容的には、女性にとってはこれまでタブー的なところが強かったものだと思いますが、時代が下ったこともあって、素直に自分の興味を表明できる環境になっているのかもしれません」 ――カストリ出版が掲げるテーマは、内容としてはタブーな部分というか、今の法に照らせば違法になりますし、なんというか、難しいですよね 「遊廓や売春の是非については、皆さんそれぞれ思うところがあって当然だと思います。ただ、今はできるだけ多くの情報を後世に伝えるほうが重要じゃないかと思っています。すでに遊廓や赤線は(一部の地域を残して)制度そのものが消滅しているから、今このタイミングで是非判断することにあまり意義を感じません。遊廓建築の多くは、ここ数年、これまでにないスピードで取り壊されているようです。直感的には今後10年ぐらいで、遊廓建築の多くが消滅していくのではないかと思っています。タブーだからと、なかったことにするのではなく、ありのままの情報を残していくことにこそ価値があると思います」 ――今後の展望は? 「現在は遊廓・赤線を専門に本を出していますが、それ以外のテーマも手掛けたいですね。遊廓や赤線は、落語・絵画・文芸・音楽・着物・工芸など、日本のさまざまな文化に影響を与えてきました。そういった遊廓周辺のテーマも、相当面白いと思います。また、赤線建築をモチーフにした服飾雑貨や、当時の洋服を着たパンパンガール人形なども作ってみたいと真面目に考えています(笑)。こういったテーマに興味のあるクリエイターの方は、ぜひご連絡いただきたいです。コラボ募集中です!」 ***  渡辺さんは30代後半と予想以上にお若く、過去の日本に確かに存在した物事をポジティブな視点で未来につなげていく柔らかな視点と熱い気概を感じた。また、個人でここまでできるのかー! と、新しい出版のあり方としても、とても刺激的だった。カストリ出版の今後の動向が楽しみだ! (取材・文=スズキナオ) ●カストリ出版 https://kastoripub.stores.jp/

遊廓や売春関連の書籍ばっかり復刊する「カストリ出版」ってなんだ?

kasutori01
カストリ出版が販売する書籍の一部
「全国260箇所の遊廓を収録した奇書『全国遊廓案内』!!」「今から60年前に刊行された色街ガイドブック、『全国女性街ガイド』を完全復刻!!」「800ページ超180ヶ所の大著 全国の花街・遊廓・私娼窟を紹介」……これらはみな「カストリ出版」という、現在進行形で活動中の出版社によって販売されている書籍の紹介文である。  花街や遊廓というと遠い昔の話に感じたり、今もあるのかもしれないけど、表立った情報の極端に少ないタブーなテーマに思えたり、どちらにしても日常とは縁遠い世界であるような気がする。都市伝説に近い感覚。  しかし、カストリ出版が作っている本を手に取ってパラパラめくると、幻のようなものに感じていた世界が、ある時代までは確実に日本全国に無数に存在し、そこに多くの人々が行き交っていたことをゾワッとリアルに感じる。圧倒的な情報量に頭がぼーっとしてきつつも、面白すぎて読むのがやめられない。  例えば、昭和4年発行の『全国遊廓案内』では、日本各地の遊廓の妓楼・娼妓の数、サービスにかかる料金等が500ページ近くにわたって書きつづられているし、昭和30年発行の『全国女性街ガイド』はさらに生々しく、どこの地方の芸者はどんな性格で、どんなふうに遊ぶのがおすすめで、というような情報を著者が情感たっぷりに語り続ける。知らない世界をのぞき見ているような気分だ。  カストリ出版は、遊廓や色街といったものに関する書籍を復刻・販売する出版社で、扱っているものはどれも稀少本として、市場では当たり前のように数万円以上の価格で取引されているものばかり。面白い試みだと思いながら……なぜこのような狭いテーマに絞って活動しているのか、またどんな人がやっているのか? 代表者である渡辺豪さんに話を聞いた ――カストリ出版は、何人ぐらいでやられているのでしょうか? 「基本的には私ひとりです。一部外注でお手伝いしてもらっていますが、ほぼひとりでやっています」 ――そうなんですか! 個人出版社ということなんですね。 「カストリ出版は、2014年末からスタートして、現在までに10タイトルほどをリリースしています。私自身、遊廓や赤線(1946~58年の間に、半公認で売春が行われていた地域。警察が地図上の該当エリアを赤い線で囲ったことに由来)というテーマが大好きで、遊廓跡を調査してブログを書いていたので『好きなことを仕事にした』と言ってしまえば身もフタもないのですが、多少なりとも考えたところがあるとすれば、『遊廓の情報を残したい』というのが復刻しようと思った理由ですね」 ――具体的には、どのような本を復刻されているのでしょうか? 「私が最初に復刻した『全国女性街ガイド』という本は、古書マニアの中では3~5万円前後の値段で取引されている稀少本です。しかも、5万円出せばいつでも買えるというものではなく、まれに市場に出て、やっとその価格で買えるというものです。中身は売春防止法直前に全国の売春街350カ所あまりを取材して書かれたという、とんでもない本です。また、終戦直後に大変な勢いで生まれた『カストリ雑誌』の中から、売春街に関する記事を選り抜きした本なども出版しています」
kasutor02
戦後の一時期には、約1,000種類も存在したというカストリ雑誌
――復刻にあたっての作業というのは、どのように行っているのでしょうか? 「文章はすべて手で打ち直して、テキストデータにしています。当時の書籍は活字が物理的に欠けていたり、印刷から半世紀、ヘタしたら1世紀近くたっていて不鮮明なので、一度データ化して、イチから作り直しています。写真・図版は1点ずつスキャンしています。テキストのデータ化は、かなりキツイです(笑)。写経のような感覚ですかね。先頃出した『全国花街めぐり』は800ページ以上ある大作なので、半年ほどかかってしまいました」
kasutor03
『全国花街めぐり』の原著。市場では数万円の価格がつく
kasutor04
各地の花街の人気芸者などの写真も多数
――カストリ出版の書籍は、パッと見ると高額なものも多いですが(例えば『全国女性街ガイド』は1冊5,400円)、そういった地道な作業の末に復刊されていることを思うと、決して高くはないかもしれませんね。 「5万円の本では、中身がどれほど良くても情報が行き渡りません。古本で買うよりはずっと安く、そしていつでも買えるようにすれば、遊廓・赤線について興味を持った方が調査していく上で有用な情報の提供になると思っています。また、原著をそのまま復刻するのではなく、関連する稀少な資料を付録として収録したりと、『原著以上の価値がある本』を目指しています」 ――カストリ出版の本の中で、特に初心者向けにおすすめなものはありますか? 「『全国遊廓案内』ですね。北から南まで、果ては外地まで、全国各地の遊廓が記載されていて、おそらく皆さんの地元の欄にも遊廓を見つけることができるんじゃないでしょうか? 著者が不明という謎に包まれた本ですが、新しい発見のある、興味の尽きない本です」 ――どんな人がカストリ出版の本を買うのですか? 「驚いたのですが、半分ぐらいが女性のようです。内容的には、女性にとってはこれまでタブー的なところが強かったものだと思いますが、時代が下ったこともあって、素直に自分の興味を表明できる環境になっているのかもしれません」 ――カストリ出版が掲げるテーマは、内容としてはタブーな部分というか、今の法に照らせば違法になりますし、なんというか、難しいですよね 「遊廓や売春の是非については、皆さんそれぞれ思うところがあって当然だと思います。ただ、今はできるだけ多くの情報を後世に伝えるほうが重要じゃないかと思っています。すでに遊廓や赤線は(一部の地域を残して)制度そのものが消滅しているから、今このタイミングで是非判断することにあまり意義を感じません。遊廓建築の多くは、ここ数年、これまでにないスピードで取り壊されているようです。直感的には今後10年ぐらいで、遊廓建築の多くが消滅していくのではないかと思っています。タブーだからと、なかったことにするのではなく、ありのままの情報を残していくことにこそ価値があると思います」 ――今後の展望は? 「現在は遊廓・赤線を専門に本を出していますが、それ以外のテーマも手掛けたいですね。遊廓や赤線は、落語・絵画・文芸・音楽・着物・工芸など、日本のさまざまな文化に影響を与えてきました。そういった遊廓周辺のテーマも、相当面白いと思います。また、赤線建築をモチーフにした服飾雑貨や、当時の洋服を着たパンパンガール人形なども作ってみたいと真面目に考えています(笑)。こういったテーマに興味のあるクリエイターの方は、ぜひご連絡いただきたいです。コラボ募集中です!」 ***  渡辺さんは30代後半と予想以上にお若く、過去の日本に確かに存在した物事をポジティブな視点で未来につなげていく柔らかな視点と熱い気概を感じた。また、個人でここまでできるのかー! と、新しい出版のあり方としても、とても刺激的だった。カストリ出版の今後の動向が楽しみだ! (取材・文=スズキナオ) ●カストリ出版 https://kastoripub.stores.jp/

「蛾は“愛らしい方”」蛾に心酔するアーティスト【蛾売りおじさん】って!?

ga01
 筆者が働いている大阪・中津の「シカク」という書店で、あるイベントのチラシを目にした。表には暗い月夜に羽ばたく毒々しい「蛾」。裏を見ると「蛾売りおじさん個展」とあり、開催日や会場の案内が記されている。どうやら「蛾売りおじさん」という人物の個展案内らしい。そして、そこにはこんな一文が。 「蛾売りおじさんは、蛾の刺繍ブローチや絵画作品を制作しています。蛾の印象向上に努めて参ります」 「蛾の印象向上」に努めているというところにただならぬ迫力を感じて調べてみると、ご本人のTwitterアカウントが見つかった。そこには驚くほど精巧に蛾を模した作品の数々が画像付きで紹介されていて、目を引かれつつ、直視するのが怖いほどだった。おそらく大多数の人と同じく、私は蛾が苦手である……。
ga02
 とはいえ、「蛾売りおじさん」とはいったいどんな人物なのか、気になって仕方がない。そこで、思い切って話を聞いてみることにした。ちなみに「おじさん」と名乗ってはいても、ご本人は20代後半の女性である! ――いつ頃から「蛾売りおじさん」として活動しているのですか? 蛾売りおじさん(以下、おじさん) 4年前のことです。友人にプレゼントするため、蛾ブローチを作ったのがきっかけでした。蛾と布の相性がとてもよく、自分で言うのもなんですが、とてもかわいらしいものができたんです! その友人の勧めもあって、当時通っていた大学の学祭で売ろうということになり、制作を始めました。 ――なぜ「蛾売りおじさん」なのですか? おじさん 数年前に、ヒゲにハマっていた時期がありまして……。『世界ヒゲ選手権』という大会で、世界各国の、ヒゲにとてつもなく深いこだわりを持った人たちの姿を見たのがきっかけでした。その影響で、イベント参加時に付けヒゲをしたいと思いまして、その理由付けとして、おじさんを名乗ることになったんです。 ――なるほど、ヒゲありきの「おじさん」だったんですね。それにしても、「蛾ブローチ」の羽の模様はすごく精巧にできていますが、これはどのように作られているのでしょうか? おじさん ひと針ひと針、手刺繍で制作しています。本物の蛾も、透明の翅を土台に鱗粉が一粒一粒乗っかって、、あの精巧で美しい模様を作っているんですが、鱗粉を糸に置き換えるようなイメージで制作しています。
ga03
――そもそも、蛾に魅入られるきっかけって、なんだったんですか? おじさん もともとは芋虫好きだったのですが、ある時、大きめの蛾に出会って、そのモフモフとした胴体、黒くてクリクリとした瞳、うさ耳のような櫛形触覚、高級絨毯のような美しい翅……! そのすべてに、一目惚れのごとくぞっこんに惚れ込んでしまいました。インターネットや図鑑などで調べていくと、ますます興味が湧き、明かりに集まる蛾を求めて、夜中のコンビニ巡りを始めました。住んでいたところが山に近いこともあり、写真で見てアイドルのように感じていた方たちにぞくぞくと出会うことができて、より一層のめり込んでいきました。
ga04
――蛾を目当てに、夜のコンビニに来ている人がいるとは思いませんでした! 私は蛾が苦手なのですが、同じ意見の人が多いかと思います。そんな世の中をどう思われますか? おじさん 蝶が苦手という人はあまりいないのに、蛾が苦手という人が多いことを不思議に思っています。おそらく、よく知らないことが一番の要因だと思います。「毒がありそう……」とか「鱗粉をまき散らす」など、ネガティブな印象をよく聞きます。でも、実際のところ毒を持っている方はほんの一握りで、ほとんどの方に毒はありません。また、蝶に比べて蛾に鱗粉が多いのは夜に活動するからで、夜は昼に比べて温度が低いため、熱を逃がさないようにしているのだと思います。寒い日に、毛皮のコートをまとうようなものではないでしょうか。予想外のほうに飛んでくるのを怖がる人もいるようですが、実際は飛ぶのがへたっぴな「どじっこさん」なんです。
ga05
――蛾のことを「どじっこさん」と思って見たことがなかったので、新鮮です。蝶より蛾のほうがお好きなのですか? おじさん 蝶も好きですが、蛾のほうに、より魅力を感じます。蛾は日本だけでも6,000種以上いるといわれるくらい、種類が豊富です。蝶は250種類ほどで、むしろ蛾の種類の中に蝶が入っているようなものです。種類が多いこともあって、身近で出会う可能性が高いのも魅力のひとつだと思っています。しかも、蛾は飛ぶのが苦手なためか、一度止まるとじーっとしていまして、観察したい放題なのもいいです。
ga06
ga07
――どうしても、蛾をじっと観察するのに、まだ抵抗が……。「蛾売りおじさん」の作品を購入されるのは、蛾が大好きな人ばかりですか? おじさん どちらもいらっしゃいます。蛾がお好きな人はこだわりどころをわかっていただける人が多いですし、実物は苦手でも、制作物としてなら平気だとおっしゃる人もいらっしゃいます。作品をきっかけに、本物の蛾に対しても愛着を感じてくださる人もいらっしゃって、そのような報告を聞くと大変うれしく感じます。
ga08
――最近、イチ押しの蛾はいたりしますか? おじさん 個展のDMにも起用しているのですが、「イボタガ」という方をとても特別に思っています。シックなブラウンを基調とした複雑で精巧な模様は大変美しく、初めてお会いした日を忘れることができません……。最近気になっている方は「フユシャク」の仲間です。冬は虫が少なくなるシーズンですが、蛾にはシーズンオフはありません。冬には冬の蛾がいるのです! ぽってりとしたおなかが大変愛らしい方なんです。これからシーズンなので、お会いできるとうれしいです。 ――「蛾売りおじさん」としての目標や夢などは、ありますでしょうか? おじさん 負のイメージを持たれがちな方たちですが、知ってみると、とても魅力的で素敵な方々です。少しでも、蛾の良さを知っていただけるきっかけを作れたならうれしいです。蛾の印象が向上するよう励んで参ります。たくさんの種類がいるので、一種類でも多くの方を作れたらいいなぁと思います。
ga09
※中央の「猫蛾」は蛾売りおじさんの創作蛾
***  蛾売りおじさんは、蛾のことを「愛らしい方」と呼ぶ。「繊細に織られたマントに毛皮の首巻きや手袋をまとっている蛾のデザインは、まるで紳士淑女のようなのです。高貴な方々のように感じてしまい、なんだか呼び捨てできないんです」と語るところからも、その愛の強さがうかがえる。蛾売りおじさんの個展情報をTwitterの公式アカウントやブログでチェックして、蛾嫌いを克服しに行ってみませんか! (文=スズキナオ http://roujin.pico2culture.jp/蛾売りおじさん - Twitter <https://twitter.com/higenogauri> ガブログ <http://blog.goo.ne.jp/higenogauri>

お年寄りのライフスタイルをオシャレに紹介する、フリーペーパー「鶴と亀」がすごい

 とある書店で配布されていたフリーペーパーを、なんの気なく手に取って驚いた。ページをめくってもめくっても、お年寄りの写真ばかり。
tsurukame01.JPG
tsurukame02.JPG
 いったいこれはなんなんだ!?   フリーペーパーの名は「鶴と亀」。2015年9月現在で、第4号までが発行されている。長野県飯山市を拠点にしたフリーペーパーで、写真のお年寄りたちも飯山市近辺の方々のようである。どの写真もみんなイキイキと写っている。庭仕事をしているところや銭湯に入っているところなど、生活感あふれる場面ばかりなのが面白い。
tsurukame03.jpg
 巻頭に記載された「地方にいるイケてるじいちゃん、イケてるばあちゃんをスタイリッシュに発信。」という言葉通り、あくまで誌面作りはおしゃれ。表紙をパッと見るに「ストリート系のZINEかな?」と思ってしまうようなデザインである。  果たして、このような冊子を作っているのはどんな人なんだろうか? 取材を申し込んだところ、代表者の小林直博氏が電話インタビューに応じてくれた。 *** ――「鶴と亀」は他に類のないテーマのフリーペーパーだと思うのですが、何名ぐらいで制作されているのでしょうか? 「僕と兄の2人で作っています。2人とも飯山から一度東京に出ていて、そこでいろいろなフリーペーパーに出会い、いつか何か作りたいと考えていました。飯山に戻ってきて、やるなら地方にしかできないこと、都会に負けないものをテーマにしたいなと。僕らは子どもの頃からすごい“おばあちゃん子”だったのもあって、こういうテーマになりました。遊び相手も、おばあちゃんでしたし。ちなみに、おばあちゃんは、今まで出た全号に登場しています。4号だと、整体院で寝てる写真ですね」
tsurukame04.jpg
――誌面のデザインなどがとにかくおしゃれな感じで、クオリティもすごく高いと思うんですが、出版関係のお仕事をされていたんでしょうか? 「いや、2人ともまったくの素人です。僕はカメラが趣味だったんで、写真は以前から日常的に撮っていたんですけど。2人とも今は別の仕事をしつつ、『鶴と亀』を作っています」 ――ちなみに、お2人の年齢は? 「僕が24歳で、兄が27歳ですね。第1号を作ったときは、僕はまだ大学に行っていました」 ――若い! 「鶴と亀」は、企画も面白いですよね。第3号ではお年寄りが服用している薬が見開きでドーンと載っていたり、第4号ではお年寄りのファッションを若い人が取り入れているコーナーがありました。
tsurukame05.JPG
「じいちゃんばあちゃんにとっては当たり前の日常なんだけど、よく考えたら面白いものを紹介できたらいいなと思っています」
tsurukame06.JPG
「ちなみに、あのラッパーがかぶっている帽子は『ひさ江ハット』っていうんです。うちのおばあちゃんが『ひさ江』という名前で、よく着てるカッパがあって、その柄がすごくいいからなんとかして自分も身に着けたいと思って、それで思いついた企画です。カッパの柄をスキャンして、布用のプリンターで転写して作った帽子です」 ――手が込んでますね! 自然体のお年寄りの写真がたくさん載っていますが、取材対象はどのようにして探すんですか? 「中には知り合いの方もいるんですが、ほとんどは散歩していていいなと思ったら声をかける感じですね。最初は『今日は草刈りですか?』とか世間話から。でも、基本的にはみなさん嫌がりますね。恥ずかしがられます。僕らが取材している地域は観光客が特別来るような場所でもないので、みなさん取材慣れしていないというか。最初の頃は断られたらすぐあきらめてたんですけど、出来上がった本を見せたりすると、“こんな本になるならいいよ”という感じで撮らせてくれることもあります。最近では、断られても、もう少し押せば撮らせてもらえるなとか、わかるようになってきましたね」
tsurukame07.jpg
――撮影していて、印象的だったお年寄りはいますか? 「第1号に、ズボンのチャックを全開にしてるおじいちゃんの写真があるんですけど、その写真が面白いっていうことで『鶴と亀』の認知度がかなり上がったので、そのおじいちゃんは特に印象的でしたね。92~93歳で、そういうスタイルというか、普段からチャック全開らしいんです。写真も、すんなり撮らせてくれました」
tsurukame08.jpg
「あとは、第4号でも紹介しているんですが、肛門科に来たおじいちゃんが肛門のことを『糞切り包丁の調子が悪い』って言っていて、それは衝撃でしたね。お年寄りは、そういうパンチラインをたくさん持っているので面白いです」 ――「糞切り包丁」! すごいフレーズですね。それにしても、これだけ質の高いフリーペーパーで、失礼ですが、採算は取れているんでしょうか? 「東京や地元の長野でフリーペーパーを作ってる人から『やるなら赤字覚悟だよ』って言われていたんで、最初から利益を出そうとかは思っていなかったですね。現在は、地元の企業さんが面白がって広告費を出してくれているおかげで赤字にはなっていなくて、トントンという感じです。黒字ではないですが、面白いことをやれて、すごくありがたいと思っています」
tsurukame09.jpg
――「鶴と亀」の今後の展開について、何か考えていることはありますか? 「まだまだ試してみたい企画があるので、自分たちの負担にならない程度に続けていきたいですね。今は1万部作っているんですが、おかげさまで設置場所も増えて、冊数が足りなくなっているような感じです。とりあえず、1年に2冊出すのを目標にしているので、そんなペースでやっていきたいです。ほかの地方のお年寄りを撮影して、飯山のお年寄りと比べてみたりしたいですね」 ***  小林さんによれば、飯山は四季が非常にはっきりしていて、夏は暑く、冬は豪雪が降るという「厳しい場所」だという。そんな土地柄だからこそ、タフでワイルドに自分のスタイルを貫くお年寄りが多いのかもしれない。そんなお年寄りの魅力をスタイリッシュに伝えてくれる「鶴と亀」を、今後も応援していきたい! (文=スズキナオ http://roujin.pico2culture.jp/●「鶴と亀」 <http://www.fp-tsurutokame.com/>

現役最高齢!? 92歳のおじいさんが営む、自宅系古書屋「青空書房」に潜入

 大阪市北区浪花町、天神橋筋商店街にほど近い住宅街の路地裏にひっそりとたたずむ古書店がある。大通りに置かれた看板には「ホッとする路地のなかの古書店 青空書房」の文字。
aozora01
 看板に従って進んだ先は、見ての通りの細い路地。
aozora02
 ちょっと躊躇しつつ、「営業中」とあるのでのぞいてみる。
aozora03
 入って右手に本がぎっしりと並んだスペースがあり、靴を脱いで上がるスタイル。
aozora04
 お店に入るというより、人の家にお邪魔するといった感じである。  部屋の中は、書棚からその前の床まで所狭しと本が並んでいる。
aozora05
 この店の店主は坂本健一さん。1923年生まれ、92歳のおじいさんである。
aozora06
 出征していた坂本さんは終戦後間もない1946年から闇市で古本を売り始めた。少年の頃から本の虫だったという坂本さんにとって、古書店はまさに天職だったのだろう。翌47年には、大阪の天満に「青空書房」を開業。以来、67年間にわたってお店を営んできた。  天五中崎通商店街に移転した「青空書房」は、坂本さんの体力的な問題もあり、2013年12月をもって惜しまれつつ閉店した。しかし、翌年になって自宅の一部を使う形で営業を再開し、今に至るという。 「大阪でも関東でも、一代で現役でやってる古書屋では一番古いかもしれません」とニッコリ笑う坂本さんに、なぜ一度お店を閉めつつも営業を再開されたのかを聞いてみると、 「私は本人間で、とにかく読書が好きなんです。せやからねぇ、やはり死ぬまで本に囲まれていたいんです。愛しい本と一緒にいたい。この家は私の生まれた場所なんです。そしてここが終の棲家ですねぇ」  自宅ながら、在庫は2,000冊近いという。 「ここは通りに面していないから、通りがかりの人は来ないです。本屋は通りがかりの人が来てこそのものなんやけど、ありがたいことに私のファンだという人が一日に何人か来てくれます。中にはお帰りになった後、玄関を見たら本を置いていってくれる人もいてます」 「青空書房」は作家にも愛されてきた店で、筒井康隆や山本一力といった小説家は古くからの常連客であり、坂本さんに言わせれば「親類同然」の関係なのだとか。 「ありがたいことでねえ。お店をやってたら、人と人とのめぐり合いがあるんです。筒井さんや山本さんとも、身分関係なく、人間として関係させてもらっています」  今でも5冊ほどの小説を同時に読んでいるという坂本さん。その読書歴の中からおすすめを教えてもらうと、 「私は文学が中心ですけどねぇ、ずっと好きで読んでいるのは『古事記』。あとは、時代物で山本周五郎、藤沢周平、池波正太郎はずーっと好きです。田辺聖子さんの本も好きです。外国文学は、最近ご無沙汰ですけど」  特に池波正太郎の小説には、思い入れが深いという。 「池波さんの文学は、悪人の中にも善があって、正しいやつにも心の隅にしょうもない悪がある、それをきちんと見て描いているんです。池波さんは若い頃に好き放題して、よう遊んでたそうです。そやから人間がわかるんだと思いますねぇ。小説は弱い人、そして何をやってもうまくいかない人のためにあるんだと私は思うんです」 「青空書房」の店内には、坂本さんの手による味わい深い絵や文字が壁の至るところに貼られている。その多くは「食事や通院などでお店をちょっとの時間空けます」といった、お客さんへのメッセージ。
aozora07
aozora08
 絵も字もとてもかわいらしい。以前は毎週の定休日を知らせるポスターをその都度描いており、それらのポスターを集めた本も出版されている。 「本は人間にとって水分みたいなもの。体の70%が水だというように、生きていく上で欠かせないものだと思います。人間、成果主義や効率主義を求めたら失うものがたくさんあるんです。それに気づかせてくれるのが読書です。政治家を見ていても、悪いけど、幼い子どもみたいに席を取り合っているようにしか見えないです。本を読んでお互いをいたわる気持ちを学んでないんだと思いますね」  そう語る坂本さんの生き生きとした表情に、こっちまで元気づけられるようなひとときだった。
aozora09
(文=スズキナオ http://roujin.pico2culture.jp/●「青空書房」 住所:大阪府大阪市北区浪花町4-24 営業時間:11:00~18:00 定休日:木曜、日曜

観光地でよく見かけた「パチモンTシャツ」は絶滅したのか

pachi00.jpg
イメージ画像
 缶コーヒー「BOSS」のキャラクターが坊主頭になっていて、ロゴが「BOZU」になっている。はたまた、「PUMA」のシンボルマークが熊のシルエットになっていて、文字が「KUMA」になっている。そういったパロディTシャツを観光地の土産物店の店頭で見かけることがある。ダジャレの勢いのみで作られたと思われるパチもんTシャツ。  見かけはするものの、あまりにバカバカしくて、「ああいうのずっと昔からあるけど誰が買うんだ……」と思いつつ、通り過ぎてきた。しかし最近ふと、自分がそういったパチもんTシャツを長い間目にしてないことに気がついた。ひょっとして絶滅したのか? そんな予感にいても立ってもいられなくなり、早速調査に乗り出した。  まずやってきたのは、東京・浅草の仲見世通り。パチもんTシャツが売られていそうな土産物店というと、この辺りが真っ先に思い浮かんだ。  さまざまなTシャツが店頭に並んでいるが、そのどれもが日の丸や浮世絵をあしらったような「和」を打ち出したものばかり。外国人観光客向けのラインナップになっているのだろうが、BOZUはどうした!  ようやくパチTを取り扱っている店舗を発見。
pachi01.JPG
 ジャイアント馬場をモチーフにしたものや、NOVAうさぎっぽいイラストで「SOVA」とか、ネタの時計がどこかのタイミングで止まっている感じである。辺りを歩き回るも、収穫はこの一店のみという状況。  慌てて東京タワーを目指す。東京タワーの2階には古き良き雑多な雰囲気の土産物店が立ち並ぶ一角があり、たまにのぞいてみると楽しい。  しかし、ここでもパチT取扱い店舗はたった一店。Tシャツを扱う店舗は多数あるものの、並ぶ商品のどれもが浅草同様、「JAPAN」とか「絆」などの文字がデカデカと書かれた「和」テイストのもの。さらに上野の「アメ横」周辺も探したが、同様の状況。少なくとも、ここ東京ではパチもんTシャツは絶滅の危機に瀕しているのかもしれない。  次に、筆者の住まいのある大阪に戻り、ファッションショップが立ち並ぶ「アメリカ村」近辺をうろついたり、通天閣付近の土産物店を片っ端からめぐったりした。が、ここでもパチTが売られている店を見つけることはできなかった。  修学旅行生が集まる場所で売られているような印象があったので、京都の嵐山へも足を伸ばした。JR嵯峨嵐山駅近くのお店なら、過去に確実にパチTを見かけた記憶がある。が、やはりここでも和柄Tシャツ、「嵐」と書いた漢字Tシャツなどは多数見かけるものの、求めているパチもん系は皆無。  「パチもんTシャツを売る店は姿を消した」と自分の中で結論付けてから数カ月、まったく別の用事で訪れた沖縄で衝撃的な光景を目にした。那覇市のメインストリート「国際通り」周辺が、パチもんTシャツだらけなのである! しかも「BOZU」式の見慣れた品ではなく、沖縄の名物を上手に取り入れたオリジナルの品ばかり。
pachi02.jpg
 目にしたものの中から、グッときたTシャツBEST5を紹介したい。 第5位「monster goya」
pachi03.jpg
 強引にゴーヤを打ち出してくるところに、勢いを感じる。元ネタ再現度はかなり高く、ロゴのデザインなども細部まで凝っていて、結構苦労したんじゃないかなと思わせる。 第4位「Red Buta」
pachi04.jpg
 今度は、こっちのエナジードリンクネタ。沖縄といえば、美味な「豚肉」。それを堂々と誇る一枚である。ほぼ同じデザインで、「Bad Buta」と書いてあるTシャツも見かけた。 第3位「amedas」
pachi05.jpg
 亜熱帯気候で雨の多い沖縄・那覇ゆえのデザインだろうか。過剰な装飾を避け、少しだけ降らせている雨に洗練すら感じるではないか。ちなみに隣に見える「OCOSHITE」は、メジャーリーガーのイチロー選手が愛用していることでも話題になった人気の品。 第2位「NANKLE NIKE」
pachi06.jpg
 ぜひ声に出してみてほしい!「なんくるないき」と。なんだろう、この心地よい響きと脱力感。あまりのしょうもなさに、ちょっと感動すら覚えた。同行者がポカーンと口を開けて「マジで欲しいかも……」とつぶやいていたのが印象的だった。 第1位「Chample」
pachi07.jpg
 「ちゃんぷる」である。デザイン的にはシンプルの極致。遠くから見たらほとんど気づかないほどの完成度である。ロゴ下には「AUTHENTIC OKINAWAN APPAREL(信頼の沖縄ブランド)」とある。堂々たるウソがむしろ爽快なほど。これは欲しい! ***  ここで紹介したほかにもスターバックスネタ、クロネコヤマトネタなど、まだまだ多数のパチもんTシャツが存在した。また、パチ系以外でも、そもそも「おバカなTシャツ」自体が市民権を得ているらしく、前面にデカデカと「私、今物すごいエロいこと考えてます。」と書いてあるTシャツをおそろいで着ている女性の集団とすれ違ったりして笑った。  開放的な風土と、暖かい気候、そして何よりネタになる名物の多さが結びついて生まれた沖縄のパチもんTシャツ。旅のお土産に、ぜひ探し歩いてみてほしい! (文=スズキナオ http://roujin.pico2culture.jp/