イザという時のために覚えておきたい、お役立ち「仕置人マンガ」5作

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 日刊サイゾーの読者層って、どんな人が多いのでしょうか? やっぱりサラリーマンが多いんでしょうか。それならば、話は早いです。人生の酸いも甘いも知っているサラリーマンなら誰しも、「コイツいつか殺(や)ってやる」なんて思ってしまうムカつくヤツが一人や二人、いるんじゃないかと思います。上司だとか取引先だとかね、あと生意気な後輩とかいけすかない同期とか、セクハラ扱いするOLとか……挙げればキリがないことでしょう。  そんな皆様のお役に立つのが「仕置人」。こんなご時世ですから、ムカつくヤツは仕置人に依頼してチャチャッと成敗してしまいたい……。というわけで、今回はイザという時のために覚えておきたい、お役立ち「仕置人マンガ」特集です。  そもそも「仕置人」ってなんだよ、という方も多いと思います。仕置人というのは文字通り「お仕置き」をする人たちのことで、時代劇ドラマの『必殺仕置人』に由来しています。仕置人も、金を払って依頼すればどんな相手も懲らしめてくれるタイプや、義憤にかられて法で裁けない悪をやっつけるタイプなどさまざまです。  では「仕置人マンガ」は、『ゴルゴ13』とか『シティーハンター』みたいなヒットマン、殺し屋マンガとはどう違うのかといえば、広義では同じジャンルといえるでしょう。ただし、仕置人のほうがもっと情緒的というか、敵の倒し方に美学があって、ヘンテコな技を使うのが特徴です。また昼間は料理人だったり、ソムリエだったり、アイドルだったりと、普通の職業に就いていることが多いため、タイトルが「夜の●●」とか「闇の●●」などとなりがちです。 ■『夜の料理人』(著:たがわ靖之/芳文社コミックス)
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 主人公は、新宿歌舞伎町でちょっと腕の立つ小料理屋を営む主人公の半次郎。しかし、その裏の稼業は、食えねえネタも料理する「夜の料理人」。法では裁けない小悪党共を、包丁一本で闇へ葬る仕置人なのです。決して、夜食を作る人ではありません。    お仕置きパターンはだいたい決まっており、小料理屋「半次郎」で常連客(たいていホステス)が、小悪党(たいていセクハラオヤジとかホスト)にひどい目に遭わされ困っていると愚痴っているシーンから始まります。半次郎がそれを聞いて激怒。「俺に任せな!」。そして、その夜「夜の料理人」に変身。小悪党を成敗してくれます。  ちなみに「夜の料理人」というだけあって、悪党を成敗するための技の数々に料理技法っぽい名前がついています。 「人間つぼ抜き」……悪党の口の中に長い棒を2本突き刺し、棒をグリッとひねることで内臓をグチャグチャにする、危険極まりない技。本来は魚の焼き物などで見た目を壊さずに内臓を抜き取る技ですが、その料理技法が悪党の成敗にも生きているというわけです。 「鯛の三枚おろし」……悪党の肩と腰と足の付け根の3カ所に空手チョップを食らわして関節を外し、文字通り三枚におろした状態で相手の身動きをとれなくする技。お魚同様、悪党の下ごしらえも完了だ! 「美女巻きずし」……色仕掛けで男をだまし自殺に追い込む極悪女は、ぬか漬けの状態にして、海苔巻きに仕上げます。巻いたまましばらく寝かせておくと、あら不思議! 自慢のナイスバディが漬物のようにシワシワに! もう悪事もできません。  クックパッドもビックリ! とんだシェフがいたものですね。 ■『シオン~闇のソムリエ~』(作:宮崎信二 画:内山まもる/ニチブンコミックス)
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 夜の料理人がいれば、闇のソムリエもいる……。ということで、お客様に「黒いワイン」を提供するソムリエのマンガが『シオン~闇のソムリエ~』です。  ソムリエの提供する黒いワインを飲めば、客の「黒い願い」がかなう――。そんなウワサがはびこる舞台は、これまた歌舞伎町です。どんだけ仕置人がいるんでしょうか、歌舞伎町という街は。依頼人から依頼を受けた闇のソムリエ「シオン」が、ソムリエナイフで悪党の喉笛をかっ切って暗殺。その血こそが、依頼人に提供する「黒いワイン」なのです。えらい物騒なワインですね。  注意したいのは依頼方法です。背後から近寄ってきた闇のソムリエ「シオン」に「ご注文は赤でございますか? 白でございますか? それともロゼで?」と聞かれたら、必ず「…黒(ノワール)を頼む」と答えなければなりません。  こんな茶番をこなして、ようやく依頼できるのです。しかし「シオン」が話し掛けている時に、決して後ろを振り向いてはいけません。振り向いた瞬間、必殺のソムリエナイフで喉笛をかっ切られます。すげー、めんどくさいルール。ちなみに、依頼料は1回100万円。破格ですね!(いろんな意味で) ■『闇のレオタード』(著:滝沢忍/ゴラク・コミックス)
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 仕置人業界は、意外と女性の比率が高いです。ウーマノミクスというやつでしょうか。新体操部の女子高生だって、お仕置きしちゃいます! 女子高生のお仕置きなら、むしろご褒美ではないのか? というMっ気の旺盛な読者もいるかもしれませんが、ナメてかかるとえらい目に遭いますよ。  主人公は、新体操部に所属する女子高生アリサ。夜は闇金融の社長とか、連続レイプ魔とか、悪徳商法の元締めとか、ボッタクリ風俗の店長などの、女の敵を懲らしめる女仕置人に変身します。変身後の格好はなんと、レオタードを着て額に星形のシールを貼っただけというシンプルなもの。普通に考えると素性がバレバレなようですが、そこはマンガなのでバレません。  武器は、先が矢尻のようなものでできていて殺傷能力バツグンの改造リボンや、素材が鋼鉄でできた改造こん棒です。いずれも、新体操部になくてはならないマストアイテムですよね。材質が普通じゃないですけど。  ちなみに、悪党を倒すときの決めゼリフは「この世から去世奈落(サヨナラ)しなっ!!」です。全然ご褒美じゃないですね。 ■『白衣のアマゾネス』(作:粕谷秀夫 画:いしわた周一/プレイコミックエクストラ)
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 仕置人マンガの場合、一人で果敢に悪に立ち向かうパターンが多いのですが、『白衣のアマゾネス』の場合は組織の力で悪を倒します。しかも、ただの組織じゃありません。屈強な女医と看護師たち……通称アマゾネス軍団です。  主人公は迦楼羅(かるら)クリニックの院長である女医、迦楼羅聖湖(かるらせいこ)。一度彼女の怒りに触れる悪党が見つかれば、夜には救急車に乗った屈強な白衣の看護師軍団が悪党のアジトに乗り込み、悪党をボッコボコに。ヤクザの組事務所も、一夜にして壊滅してしまいます。さらに、その後がすごい。 「あんたたちは私の病院に強制入院よ!!」 「治療費はあんたらの全財産! わかったわね!!」  ボコボコにされた悪党は、迦楼羅クリニックに強制入院の上、治療費として全財産が没収されるという、ものすごいビジネスモデルです(マッチポンプともいう)。このマンガを読むと、「白衣の天使」という言葉の概念が根本から覆されます。 ■『アイドルK』(作:工藤かずや 画:峰岸とおる/ぶんか社)
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 仕置人業界には、なんとアイドルもいます。昼間はテレビやラジオで引っ張りだこの人気女子高生アイドル鷲尾圭。しかし知られざる夜の顔は、法で裁けぬ悪を討つ謎の仕置人Kというこのマンガ。つまり、昼はアイカツ、夜はアイ殺(サツ)というわけなのです。ブラック企業顔負けのハードワークですね。  武器は、指ぬきグローブの中から飛び出す仕込み針。アクターズスクール仕込み(?)の素早い動きで一瞬にして悪党の額を貫き、絶命させます。握手会に行ったら刺されそうで怖いですね。  ちなみにKに依頼するには、「ボン・マリ」という喫茶店のマスターに、殺ってほしい相手とその事情を伝える必要があります。すると、鷲尾圭のマネジャー経由でアイドル仕置人Kが始動するというわけです。マネジャーまでグルっていうのもすごいですね。どんな事務所だよ。 ***  というわけで、イザという時に依頼したい「仕置人マンガ」をご紹介してみましたが、いかがだったでしょうか? 劇画の世界では、仕置人設定のマンガは数え切れないほどたくさんあります。メジャーどころでは『ブラック・エンジェルズ』、このほかにも『“殺意”ドクター蘭丸』『女仕置人ゼブラ』『女お仕置き人M』などなど、探せばあなたのニーズにピッタリの仕置人がきっと見つかることでしょう! (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

飯島愛が歴史を超えて大活躍! 幻のお色気ファンタジーマンガ『タイムトラベラー愛』

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『タイムトラベラー愛3 艶姿・ニンジャガール編』(GSガイズ)
 2008年に亡くなられた飯島愛さん。ご存じの通り、AV出身のタレントとして最も成功した一人です。現在もブログにファンのコメントが投稿され続けるなど、そのカリスマ性は色あせません。  テレビタレントとしてバラエティ番組にひっぱりだこだった時代の飯島さんはAV出演歴を公にしたがらなかったようですが、自伝『プラトニック・セックス』(小学館)ではあらためてカミングアウトしています。  実は、そんな飯島さんが主人公のマンガがかつて存在していました。その名も『タイムトラベラー愛』という作品です。学研から発売されていた漫画誌「コミックガイズ」に連載され、単行本全3巻が刊行されています。ちなみに「コミックガイズ」のキャッチフレーズは「男が発火するコミック誌!!」でした。「科学と学習」の学研とは思えない、煽り方ですね。  内容は、飯島さんが過去へ未来へとタイムトラベルをするという、タレントマンガとしては異例のファンタジー路線です。しかも、AV女優からタレントへの転身期に当たる1994年の作品ということで、セクシー度も全開の内容になっています。  ストーリーをご紹介しましょう。人気絶頂のアイドル、愛ちゃんが、海でのグラビア撮影中にマネジャー見習いの梅原、カメラマン助手の竹中、新米編集の松田という松竹梅トリオとともに洞窟内に迷い込み、UFOのような形の石像に不思議なネックレスがかかっているのを発見。愛ちゃんは大喜びでそのネックレスを首にかけるのですが、実はそのネックレスは、誘淫パワーで周囲の男たちを悶々とさせる魔力を持っており、愛ちゃんがエクスタシーを感じるとタイムトラベルしてしまうという、ものすごい代物なのでした。エクスタシーでタイムトラベル、すごくダイナミックな設定ですね。  ネックレスの力により発情モードになった松竹梅トリオに襲われ、エクスタシーを感じちゃった愛ちゃんは、松竹梅もろとも古代エジプトにタイムトラベル。そこにはなんと……絶世の美女クレオパトラがいたのでした。  「えーまだ処女なのーっ!?」などと、クレオパトラと女子会のようなトークを交わす愛ちゃん。実にほのぼのしたシーンです。クレオパトラって、女王なのにとっても気さくな人なんですね。そんなクレオパトラに求婚するも、相手にされず悩んでいる男がいました。その名はジュリアス・シーザー。  クレオパトラに相手にされず落ち込むシーザーを、優しく励ます愛ちゃん。 「世界の王がそんなことでぴーぴー泣かないの! いざとなったらこの愛ちゃんが一肌脱いであげっから」  愛ちゃんが「ひと肌脱ぐ」って言うと、妙にリアルです。  慰められたシーザーは、すっかり愛ちゃんを気に入り、「クレオパトラの代わりに女王にならないか」と口説きます。それを聞いた愛ちゃん、突然シーザーを亀甲縛りした上、ムチで叩いたりローソク垂らしたり、犬のカッコをさせて靴をなめさせたりと大ハッスル。そうです、完全に女王様の意味を勘違いしています。ローマの英雄の亀甲縛り姿……歴史の教科書には載らないお宝ショットです。  最終的には、愛ちゃんとのペットプレイで犬にさせられた姿がカワイイということで、クレオパトラがシーザーに惚れ込み、2人は結ばれたのでした。そう、エジプトの歴史を作った恋のキューピッドは愛ちゃんだったのです。歴史の教科書では決して語られない真実が、ここにあります。  そうこうしているうちに、古代エジプトの民衆たちに取り囲まれ、襲われてしまう愛ちゃん。まあ、エジプト中をTバック姿で歩いてたら、そうなりますわな……。再びエクスタシーを感じて、タイムトラベルしてしまうのです。  その次にタイムトラベルしたのは、18世紀フランス革命の時代です。ナポレオンがイギリスの艦隊にビビッて負けを認める寸前だったのですが、愛ちゃんがナポレオンを煽って大砲を撃ち込ませたことにより、逆転勝利します。まさに勝利の女神。愛ちゃんがいなければ、フランス皇帝ナポレオンの存在はありませんでした。  ナポレオンとエッチした勢いで、再びタイムトラベルした愛ちゃん。次の舞台は13世紀のモンゴル。フビライ・ハンとマルコ・ポーロが活躍した時代です。ここでも愛ちゃんがいなければ黄金の国ジパングの発見や東方見聞録が生まれなかったとか、フビライが元寇で二度にわたって日本を攻めたのは愛ちゃんに会いたかったためだったとか、歴史に深刻な影響を与えまくっています。  16世紀のイタリアではレオナルド・ダ・ビンチが登場。実はモナリザのモデルは愛ちゃんだった! という衝撃の事実。確かに、モナリザって巨乳ですもんね。ルーブル美術館に飾られている絵が実は飯島愛だと思うと、胸が熱くなります。  この『タイムトラベラー愛』は三部構成になっており、単行本2巻では「セクシーパイレーツ編」ということで未来の世界にタイムトラベルします。温暖化により地球上のほとんどが海になってしまった世界で、『ワンピース』よろしく海賊たちとちょっとエッチな海上バトルを繰り広げます。  単行本3巻の「艶姿!ニンジャガール編」では再び過去にタイムトラベルし、徳川家康が天下統一を目指す戦国時代で、セクシーくノ一として活躍します。最終的には、まさかの飯島愛型巨大ロボットも登場し、ワケがわからない展開に。  というわけでいろんな意味で、伝説のタレントマンガ『タイムトラベラー愛』をご紹介しました。飯島さんいわく「『タイムボカン』シリーズにインスパイアされた作品」とのこと。確かに、タイムトラベルしまくってるあたりは『タイムボカン』シリーズぽいですが、露出度がドロンジョ様をゆうに超えているあたりは、さすが元Tバックの女王です。いかに、当時の飯島さんの人気が高かったかを象徴するような作品といえますね。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

黄泉の世界から蘇ったバブル広告マンが不況の日本をアツくする『ジェット上司』

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『ジェット上司』(ながしま超助/双葉社)
 消費税法改正による値上げ、円安による値上げ、牛丼が300円から380円に値上げ……値上げ値上げのアゲノミクスなニュースを聞くたびに、日本国民の悲痛な叫びが聞こえてきます。  しかしウン十円、ウン百円の値上げぐらい屁でもねえ、金ならいくらでもあるんだ! そんな豪気な日本人が闊歩する時代がありました。そう、1980年代後半から1990年代初頭にかけてのバブル景気の頃です。あの頃のアホみたいな明るさと空回り気味の元気こそ、憔悴し切った今の日本に必要なのではないでしょうか?  今回ご紹介するマンガ『ジェット上司』こそ、まさに混迷する不況日本における処方箋であり、バブル景気の頃の日本の、バカみたいな明るさを無理やり体感させてくれる劇薬ともいえる作品なのです。  『ジェット上司』の主人公は斉藤誠。大手広告代理店「弁通」の若手社員であり、CMクリエーターを目指す23歳の青年です。両親が他界したため、高校生の妹を一人で養っている頑張り屋でもあります。しかし、時は平成不況まっただ中、誠の勤める弁通も、業績は下降の一途をたどっている状況でした。大手クライアントであるアメリカ最大手のスーパーマーケットチェーン「ボルマート」の女社長には足元を見られて広告費を半額に値切られるなど、苦しい状況に追い込まれていました。  そんな中、突然ボルマートの女社長が絶叫します。 「オウ、クレイジー!?」 「オーマイガーッ!!」  女社長のパイオツを後ろから揉みしだきながら、豪快に登場したうさん臭いチョビヒゲ男。その名は「浅野W」。11年前に事故で死んだと思われていた伝説の広告マンが突如、現世に蘇ったのです。  実は、この男は伝説のスマイケル・ジャクソン湾岸100万人ライブを実現させたり、科学万博を企画してテーマパークブームの仕掛け人として活躍するなど、バブル絶頂期に弁通を業界トップに押し上げた男だったのです。  浅野Wに揉みしだかれた女社長は、なぜか「コノ不況下デモ日本ノ男ニコレダケ迫力ガアルナンテ見ナオシタヨ」「サッキノ宣伝戦略、予算倍増デタノムヨ」などと心変わり。浅野Wが登場して、いきなり弁通のピンチを救ったのでした。さすが、伝説の広告マンですね。女社長のほうも、パイオツ揉みしだかれて心変わりする意味がまったく分かりませんが、とにかくスゴい。これが、バブルが生み出すパワーなのです。  それにしても、「浅野W」って、あからさまに本名じゃなさそう、かつバブル臭漂う名前です。ちなみに、88年に放映されたトレンディドラマ『抱きしめたい!』(フジテレビ系)では浅野ゆう子と浅野温子の2大女優が主演を務め、「W浅野」というバブルを象徴する流行語を生み出しましたが、本作品とはまったく関係ありません。  華々しい復活を果たして浅野Wは、弁通に本格復帰。しかも、なぜか誠の上司になったのです。しかしこの浅野Wという男、思考回路が完全にバブルの頃で停止しており、セリフにいちいちバブル臭漂っています。 「よーし、今夜はみんなでジュリアナ行くかー!」 「俺の極秘プロジェクトで何億倍にもして返してやる!」 「日本を再び世界のトップに押し上げてやる!!」 「知らない女の乳を揉む時も上司の許可をとれーッ!」  さらに、自分の執務室に噴水を設置したり、キャバクラで毎晩数十万円使って経費で落とそうとしたり、CMタレントに「僕は死にましぇーん」とセリフを言わせたり、ランバダを踊らせたり……とにかくバブリーです。ランバダ、懐かしすぎますね。踊ったことある人にとっては、結構な黒歴史なんじゃないでしょうか。  そんな感じで奇跡の復活を果たしたものの、現代のセンスとズレまくった企画がことごとく失敗。社内からの信頼が揺るぎかけていたその時、ついに浅野Wが温めていた超極秘スーパープロジェクトが始動します。そのプロジェクトの内容とは、ズバリ…… 「サッカーワールドカップを日本に招聘すること」  ……そう、浅野Wは、02年にワールドカップが日韓共同開催されていたことを知らなかったのです。  極秘プロジェクトが勘違いで終わった上、膨大なプロジェクト費をほとんどキャバクラ通いで浪費、さらにスマイケル・ジャクソンの来日や科学万博もよく調べてみると、浅野Wの実績ではなかったことがバレ、浅野Wは弁通をリストラ。誠の家に居候として転がり込むことになります。  弁通をクビになってしまった浅野Wは、面接での横柄な態度が災いしてどこの会社にも再就職できず、自ら巨乳ウェイトレスだらけのラーメン屋「巨乳ラーメン浅野屋」開業を目指して近所のラーメン行列店「ラーメン伝説」にバイトとして弟子入りすることにします。そこからは完全にラーメン修業マンガになってしまいます。バブリーな広告代理店マンガだと思っていたら、実はラーメン起業マンガだったとは……。まさかの、斜め上の展開です。  浅野Wは「ラーメン伝説」弟子入り2日目にもかかわらず、独立したいからスープ作りを教えろと店長にすごんだり、女性客のパイオツを揉みしだいたり、店内で勝手に巨乳ウェイトレスオーディションを開いたりと、ムチャクチャな仕事ぶりで何度もクビになりかけますが、最終的には童貞だった店長を巨乳ギャルの色じかけで洗脳。巨乳ラーメンの開業にこぎつけます。それにしてもひどい……。マンガとはいえ、これほどひどい起業ストーリーはなかなかありませんね。  そんなテキトーすぎる巨乳ラーメン「浅野屋」が、まさかの大当たり。全国チェーン展開で浅野Wは社長として再びビジネスの世界に舞い戻ってきます。しかし、これからという矢先に再び事故に遭い、この世を去ってしまいます。  ラストシーンでは浅野Wが広告代理店時代の部下、誠へ一流のCMクリエーターになるためのメッセージを残します。それはズバリ…… 「巨乳を好きになれ!」 ……最後の最後まで、ムチャクチャな内容でした。  こんな感じで前半はバブル全開な広告代理店マンガ、後半はラーメン起業ストーリーとなっている作品ですが、前半後半とも巨乳推しなところだけは終始一貫しています。もしかしたら、日本の復興は巨乳ギャルにかかっているという、浅野Wからのメッセージなのかもしれません(違う気もするけど)。  というわけで、日本の景気回復を願って、バブル時代のいい意味でのアホっぽさ全開のマンガ『ジェット上司』を紹介してみました。ちなみに浅野Wの本名……つまりWと呼ばれる本当の理由が、ラーメン起業編で明らかにされています。ほぼ皆無だと思いますが、もし気になるという奇特な方がいらっしゃいましたら、一度作品を読んでみてはいかがでしょうか? きっと「そんなくっだらねー理由かよ!」「読んで損した!!」と言いたくなること請け合いです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

このいじめがスゴい! 『聲の形』だけじゃない、壮絶「いじめマンガ」の世界

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『聲の形』(大今良時/講談社)
 毎年、年末に宝島社から発売されるムック本「このマンガがすごい!」。ここで1位にランキングされるマンガは事実上、マンガ読みたちにその年最も面白いと評価されているマンガだといえます。  昨年末に発売された「このマンガがすごい!2015」では、オトコ編第1位が『聲(こえ)の形』、オンナ編第1位が『ちーちゃんはちょっと足りない』でした。  『聲の形』は、作品序盤の先天性聴覚障害を持つ女の子、西宮硝子をめぐる壮絶ないじめシーンがかなりインパクトのある作品です。主人公の石田将也やクラスメイトが、硝子が耳につけている補聴器を引きちぎったり、硝子がコミュニケーションを取るために持っている筆談ノートを池に投げ捨てたり……そして、池に沈んだノートをびしょ濡れになって探す硝子のかわいそうな姿。もちろんいじめのシーンだけではなく、その後の硝子と将也の意外な展開や感動的なラストシーンが評価されている作品でもあります。  ところで、衝撃的ないじめのシーンが掲載されているマンガは過去にもいくつか存在しています。今回はそんな「いじめマンガ」をご紹介しましょう。 ■『元気やでっ』(土屋守、次原隆二、山本純二/集英社)
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『元気やでっ』
 この作品は、1995年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で掲載された、いじめをテーマとしたマンガです。当時「いじめ」が社会問題になっていたこと、実体験を元に描かれたリアルな内容だったこと、そして何よりも「ジャンプ」というメジャー誌に掲載されたことで多くの少年少女が目にすることになり、“伝説のいじめマンガ”と呼ばれるようになったのです。  舞台は中学校。おとなしそう、逆らわなさそうという理由でクラスメイトの女子グループにパシリにされていた少女、佐伯幸子(さっちん)。そんなさっちんが次第にパシリからいじめに遭うようになり、どんどんエスカレートしていくというもの。パシリといじめって、紙一重ですよね。非常によくありそうな構図です。  お茶にふりかけを入れられたり、上履きを水の入ったバケツに投げ込まれたり、生徒手帳は盗まれていたずら書きをされ、黒板には教師とホテルに行ったなどとあることないこと書かれ、学校を休んだら机の上に花瓶が置かれ……と、まさに王道いじめが炸裂します。  この作品は『わたしのいじめられ日記』(青弓社)という、実際の中学生のいじめの記録を元に描かれたマンガであり、内容の生々しさ、リアルさが読者の胸を締めつけます。生徒のいじめもさることながら、事なかれ主義でいじめを見て見ぬふりをする先生の態度も、いじめ問題の根深さを象徴しています。  作中に出てくる担任・上沼先生が、いじめられているさっちんに冷たく繰り出す「いじめフェイス」は、まさにいじめ界のクイーンといっても過言ではなく、顔面から漂うネガティブさがハンパじゃありません。一見の価値ありです。 ■『ライフ』(すえのぶけいこ/講談社)
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『ライフ』
 いじめがテーマのマンガといえば、すえのぶけいこ先生の『ライフ』を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか? 単行本全20巻、07年に北乃きい主演でドラマ化もされています。 勉強苦手の主人公、椎葉歩(アユム)は親友で秀才の篠塚夕子(しーちゃん)と同じ高校に行きたいために頑張って受験勉強を始めたところ、成績が急上昇。志望校には自分だけ受かって親友のしーちゃんが落ちてしまうという最悪の展開になり、友情関係が崩壊。そのトラウマでリストカットを覚えてしまうという、冒頭からダウナーな展開のマンガです。  受験のトラウマを抱えつつ、孤独な高校生活を送っていた歩に声をかけてくれたクラスの中心的存在、安西愛海(マナ)と親友関係になり、明るい高校生活の兆しが見えてきます。しかし、彼氏命だったマナが彼氏に別れ話を切り出され、ショックで踏切自殺を図ってしまいます。歩によって事なきを得たものの、メンヘラモードに入ってしまったマナを助けようと、マナの彼氏にヨリを戻すように説得する歩。しかし、それが裏目となって、マナに寝取られ疑惑をかけられます。そして、親友だったはずのマナとその仲間グループから壮絶ないじめを受けることになってしまうという、やることなすこと裏目に出まくる女子高生、歩が卑劣ないじめに立ち向かっていくストーリーです。親友だと思っていた友達が、些細なきっかけで突然自分をいじめる敵に回ってしまう、これも人間関係の難しさですよね。  『ライフ』はいじめに立ち向かう少女がテーマのマンガで、女子特有の陰湿ないじめのシーンが、それはもう壮絶です。自殺未遂とかレイプとか、近年少女マンガでマストとなっている展開がしっかり盛り込まれております。  作中に出てくるリストカットシーンの多さが、また驚異的です。落ち込んだ時には迷わずリスカ、ちょっと気分転換にリスカ、三度の飯よりリスカ……。たまにリストカットをしてない時は、コンパスで手首を刺していたりと、とにかく手首がヤバい。思わず、手首をさすりながら読んでしまうマンガです。 ■『ミスミソウ』(押切蓮介/ぶんか社)
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『ミスミソウ』
 今回ご紹介するマンガの中でも、最も精神的にくる、後味の悪さがハンパないダウナー系いじめマンガの最右翼『ミスミソウ』。作者は『ハイスコアガール』でも有名な押切蓮介先生です。押切先生といえば、薄幸の美少女キャラを描かせたら当代一ですから、いじめがテーマのマンガを描くのは、ある意味、必然かもしれません。  主人公の野咲春花は父の転勤の都合で、過疎化が進行して廃校予定の大津馬中学校に転校してきました。しかし閉鎖的な環境で、都会からの転校生を受け入れられないクラスメイトから陰湿ないじめを受けるようになります。さらに、気が弱い担任の先生も生徒に逆らうことができず、学級崩壊状態へ。  初めは家族に心配をかけまいといじめの事実をひた隠しにする春花ですが、次第にエスカレートしていき、ついにはクラスメイトにより家に放火され、家族を失ってしまうという最悪の悲劇が訪れます。もはや、いじめとか言ってるレベルじゃない、超ヘヴィな展開です。  実際のところ、いじめのシーンはストーリー的には前フリ的な感じで、中盤以降は春花による残忍な復讐劇が中心となっており、殺人鬼となった春花無双な展開がメインとなっていきます。マンガのジャンル的にもサイコホラーという扱いなのですが、閉鎖社会におけるいじめ、家族への危害、そして新しいいじめの対象を生み出さなければ自分がいじめられるといういじめの多重構造を描いているという点では、いじめマンガとしても見逃せない部分があります。 ■『イジメをぶっ飛ばせ!!』(もとはしまさひで/共同プレス)
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『イジメをぶっ飛ばせ!!』
 いじめマンガの中でも最も異色といえるマンガが『イジメをぶっ飛ばせ!!』です。『ヤンキー烈風隊』『コンポラ先生』などのヤンキーマンガの大御所、もとはしまさひで先生が社会問題となっているいじめの実態に正面から挑んだ長編描き下ろし作品。97年の作品ですので、『元気やでっ』の2年後ぐらいに描かれています。  主人公の探偵・日乃本正義が、日本のいじめ問題の原因を探り、その解決法を提言するという内容。いじめマンガといえば、いじめられっ子の視点から描かれることが多い中で、異色の内容となっています。で、主人公の探偵・日乃本、ビックリするぐらい愛国心に満ちあふれた名前ですけど、見た目は完全にヤンキー。さすがもとはし先生。探偵だろうがなんだろうが、主人公はリーゼントでキメるのが基本のようです。ただ、どっちかというと、お前はルックス的にいじめてる側じゃないのかっていう……。  ツッパリ探偵がいじめ問題を解決するという設定はものすごくぶっ飛んでる感じがしますが、ストーリーはこういう感じです。日乃本の中学時代の後輩、永作が探偵の依頼に来ます。依頼内容は、息子が学校でいじめられているようなので調査してほしいというもの。そして、いじめの調査をするうちに、実は日本の社会構造がいじめを生み出しているということに気づいていきます。ズバリいじめの最大の原因は、日本の団塊世代にあるという衝撃の結論に! これは予想の斜め上の展開でした。  さらにイギリス、ノルウェー、スウェーデン等、諸外国におけるいじめ問題と日本のいじめ問題の比較、そして日本の教育制度改革に向けての提言。最後にはいじめ問題の舞台となった学校の教頭先生がブチ切れて爆弾発言。 「しつけもできてない……箸も持てないようなガキ供のめんどうを何から何まで見てられるか!!」  教師側の本音をぶちまけるいじめマンガというのも、ほかに類を見ないですね。  主人公のヤンキー探偵も「安心して子供を預けられる公立校を作ればイジメは消えるのです!!」など、要所要所ですごく良いこと言ってるのですが、どうしても、お前が言うな感が拭えないところがシュールです。ヤンキー探偵が力ずくでいじめを解決するマンガかと思っていたら、本格的すぎるいじめ研究・考察が始まって予想の斜め上を行く展開となる、ものすごいマンガです。 ■『いじめ』(五十嵐かおる/小学館)
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『いじめ』
 最後にご紹介するのは、どストレートすぎるタイトルの『いじめ』という少女マンガです。この作品は「ちゃお」(小学館)で不定期連載されているもので、小中学校で起こるさまざまなケースのいじめが1話完結方式でマンガになっています。単行本も現在10冊出ており、『いじめ』の後につけられるサブタイトルがなかなか強烈です。 いじめ~ひとりぼっちの戦い~ いじめ~生き地獄からの脱出~ いじめ~見えない悪意~ いじめ~勇気をください~ いじめ~静かな監獄~ いじめ~叶わない望み~ いじめ~凍りついた教室~  「生き地獄からの脱出」とか、「静かな監獄」とか……サスペンス映画のタイトルとしてそのまま使えそうなものばかりです。しかし、いじめを受けている本人からしたら、まさしくそのような心境なのでしょう。  『いじめ』シリーズは1話完結のため、実際に起こりそうないろいろなタイプのいじめがマンガとして紹介されていて、まさにいじめ事典といっても過言ではありません。  例えば、いじめられっ子を助けたら今度は自分がいじめられたり、部活でカッコいい先輩(男子)のお気に入りになった途端に部活内で露骨にいじめられたり、クラスメイトに万引きを強要されて拒否したらいじめられたりなどなど……確かに身近にありそうな事例ばかりです。ただしこのマンガは毎回、最後はいじめから立ち直ってハッピーエンドになるアッパー系いじめマンガなので、読後感がいいのが救いです。やっぱり小学生読者が多い「ちゃお」だけに、内容はポジティブじゃないといけないですよね。  また、脱いじめの啓蒙として単行本内にさまざまコラムがあって、これがまた実に必読な感じです。 「万引きは、とっても卑怯な犯罪だよ!」 「万引きに誘われたらはっきりと断ろう!」  など、万引きに誘われた時の断り方などもバッチリ載っています。知らないうちに誰かをいじめているかもしれない読者のための「いじめチェックシート」などもあります。こんなの全国民がやるべきですよね。そのほかにも、悩んでいるときの相談先として政府のいじめ相談ダイヤル、警視庁少年課や弁護士会の電話番号まで載っていて非常に実践的。まさに「本気の脱いじめマンガ」です。 ***  というわけで、いじめマンガ特集いかがでしたでしょうか? ダウナー系からアッパー系、さらに斜め上の展開系まで、さまざまなタイプのものがあることが分かりますね。特に「ちゃお」の『いじめ』は、お子さんがいる家庭では、ぜひ読んでおいたほうがいいんじゃないでしょうか。  ちなみに、いじめマンガは連続して一気に読むと精神的にかなりダメージを食らうので、まとめ読みはしないほうがいいと思います。しばらく寝つきが悪くなりますよ。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

「そんな偶然あるわけねーだろ!」突っ込まずにはいられない、伝説の超ご都合主義ラブコメ『くおん…』

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『くおん...1』
 「週刊少年ジャンプ」(集英社)の黄金期といえば諸説ありますが、一般的には1984年に発行部数が400万部を突破してから94年ごろまでといわれています。当時のヒット作の多くは、いわゆるジャンプ三原則といわれる「友情・努力・勝利」の方程式に則ったものが多く、このルールに反する作品は比較的短命になる傾向にありました。  このルールを適用しづらいラブコメは、ジャンプにおいて最も生き残ることが難しいカテゴリーだったのです。『きまぐれオレンジ☆ロード』は、ジャンプのラブコメの中では大ヒット作といえますが、主人公が超能力を使える+ちょっとエッチ、という、ある意味“ジャンプらしいギミック”が際立つラブコメ作品であったこともまた事実です。  そして時は86年。『北斗の拳』『ドラゴンボール』『キャプテン翼』『キン肉マン』『魁!!男塾』『聖闘士星矢』『シティーハンター』といったジャンプの黄金期を彩るモンスター作品が連載陣に並び、定価もまだわずか170円だった頃に、ジャンプ読者のごく一部だけに熱狂的なファンを生むことになる伝説的なラブコメが連載開始されるのです。その名は『くおん...』という作品。『タッチ』『みゆき』のあだち充先生のマンガを思わせるような男子と女子による正統派の三角関係ラブコメで、そこには超能力もバトルもエッチもありません。ジャンプ連載作品の中では、異色の雰囲気を放っておりました。  この『くおん...』ですが、実は11話で終了しており、本来であれば読者の記憶に残らない打ち切りマンガとして扱われるところなのですが、そのあんまりすぎる設定が一部のジャンプ読者にとてつもないインパクトを与えたのです。 <この街には14歳になる二人の“まこと”がいます。ひとりは男の子で久遠真(くおんまこと)、もうひとりは女の子で香瀬麻琴(こうせまこと)。そして奇しくもこの二人はお隣同士で幼なじみ。>  ストーリーはこのように始まります。ここまでなら単なる偶然、それほど不自然ではない設定です。あだち充先生のマンガにだって、バンバン出てきそうです。  しかし偶然にも、久遠真は幼いころに母親を亡くしており、父に育てられていました。また香瀬麻琴は幼いころに父親を亡くしているため、母親に育てられていたのです。つまりどちらも親子2人暮らしの生活をしていました。この辺から、確率的には天文学的なことになってきます。  そして死んだお父さんが忘れられない麻琴の悲しいエピソードなどを経て、突然真の父親が麻琴の母親にプロポーズ! 麻琴の母親もそれを受け入れて結婚し てしまったため、2人の「久遠まこと」が一つ屋根の下に誕生したのです。こ、これはなんという偶然!  それまでに2人の親同士が付き合っていたような描写は一切なかったので、読者もそれはもうビックリ仰天です。まるで視聴率ひと桁台の月9ドラマのようなダイナミックなショートカットぶり。そして、一気にラブがコメり出すのです。  麻琴は、普段は真を叩いたり殴ったりしてツンデレぶりを発揮していますが、実際は真のことが好きだったのです。一方、真は学園のマドンナ理乃ちゃんに首ったけで、麻琴の気持ちにはまったく気がつきません。そんな悶々とした状況の中で一つ屋根の下の兄妹になってしまい、好きとは言えない関係に……。どうですか、実によくできたラブコメになってきたと思いませんか?  天文学的な確率の偶然は、まだ続きます。久遠家の隣に、ある一家が引っ越してきます。その家のイケメン少年の名は紅御悠矢(くおんゆうや)。これが意味することが分かりますでしょうか? つまり、ほぼ同一エリア内が「くおん」姓だらけになったのです。どこの村社会ですか、ここは。  この悠矢は真と麻琴が通う学校の同級生となります。イケメンであり、なおかつサッカーも天才的にうまく、女子にモテモテの悠矢は、学園のマドンナ理乃ちゃんを口説こうと接近。つまり、真の恋敵としてレギュラー登場するようになるのです。いやぁ、実にラブがコメッてますねえ……。  この三角関係は理乃ちゃんと真の両想いにより決着するのですが、敗れたイケメン悠矢は、今度は麻琴にちょっかいを出し始め、“自分の妹に、何ちょっかい出してんだ”と心配する真が、次第に麻琴の気持ちに気づいていくという……抜け出せない泥沼のような展開となっていきます。春風のように爽やかな絵柄で、昼ドラのような複雑な人間関係、度重なる天文学的な偶然、加えてほんのちょっとの思い出補正……これらの要素が奇跡的な融合を果たし、知る人ぞ知る伝説のラブコメへと昇華した作品、それが『くおん…』なのです。  ちなみに『くおん…』は、川島博幸先生の名義で出している初期の単行本全2巻と、鷹城冴貴と改名した後の愛蔵版の2種類が存在しますが、川島先生名義の単行本1巻の表紙に描かれている女の子(たぶん麻琴)がボブ・マーリーを凌駕する勢いの毛髪量でものすごいインパクトがあります。これだけでも一見の価値ありですよ。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

「もうエッチされてもいい!」危険ドラッグよりヤバい、“ドラッグルメ”なマンガ

 今年はたびたび脱法ドラックに関するニュースが世間を騒がせました。いろいろと物議を醸した「危険ドラッグ」という言葉もすっかり定着しましたね。また、中国ではアヘンの原料となるケシの実入りのラーメンを提供して常連客ゲット!→店長逮捕というびっくりニュースもありました。まさに「事実はマンガより奇なり」です。  とはいえ、もちろんマンガの世界だって負けていません。「麻薬入りメニュー」が出てくるマンガって、実は結構あるのです。正確にいうと「麻薬っぽい成分」入りの、食べだしたら止まらなくなるメニューですが、本コラムではこれらのメニューが出てくる、通称「ドラッグルメマンガ」をご紹介したいと思います。
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『包丁人味平』
●『包丁人味平』のブラックカレー  ドラッグルメのルーツ的存在としてあまりにも有名なのが、ビッグ錠先生のマンガ『包丁人味平』のカレー戦争シリーズで登場する、カレー将軍・鼻田香作の作る「ブラックカレー」です。  鼻田香作は6,000種類のスパイスを嗅ぎ分けることができる恐るべきカレー職人で、その鋭い嗅覚を保護するために、普段は鼻の部分だけに黒いマスクをつけています。その結果として、奈良公園にいる鹿っぽい見た目になっているんですが、ブラックカレーの恐ろしいところは、食べた人の感想は決まって「なんだか変な味」「コールタール食べてるみたい」と、決して褒められたものではないのに、気が付くと背景がドローンとなり表情はポワーンとして、再びフラフラと店の中に入って行ってはブラックカレーを注文してしまうのです。  この恐るべきブラックカレーの秘密ですが、鼻田香作がスパイスを調合しまくっているうちに、いつの間にか麻薬に近い成分になってしまっていたというもの。まったく恐ろしいカレーがあるもんですね。危険カレー、ダメ。絶対。
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『口裂け女あらわる!―昭和怪奇伝説』
●『黒い清涼飲料水』のおじさんコーラ  続いてご紹介するのは、ホラーマンガ作家の呪みちる先生の描く短編『黒い清涼飲料水』に出てくる通称「おじさんコーラ」です。  少女が夏休みのプールの帰り道に通りかかる公園で、アイスボックスに50円のコーラを詰めて売りに来るおじさんがいました。毎日毎日「おじさんコーラ」を買って飲んでいると、いつしかほかのジュースがまずくて飲めなくなり、一度おじさんコーラの味を思い出すと飲みたくて飲みたくてどうしようもなくなるという、禁断症状が現れるようになります。  初めは50円で売られていたおじさんコーラは、100円、200円、300円と次第に値段が上がっていき、お金が払えなくなった女の子たちはおじさんのエッチな要求と引き換えにコーラを買うようになっていきました。最初は拒んでいた少女も「もうエッチされてもいい」などと言いだす状況になったのです。  この話は、それだけでは終わりません。いつしか時は過ぎ、おじさんコーラの話はただの都市伝説となった頃、大人になった少女が飲料会社で不思議なおじさんコーラの味を思い出して作った商品が「Zコーラ」。そして「Zコーラ」は一度飲んだら病みつきになる空前のヒット商品となったのですが、実はその病みつきになる秘密の成分として、コーラの中にはなんと……人間のアレが入っていたのです(ギャー!)。というホラーマンガです。まったく恐ろしいコーラがあるもんですね。危険コーラ、ダメ。絶対。
chukaichiban.jpg『中華一番!』
●『中華一番!』のケシの実入りイカスミビーフン  13歳の少年中華料理人マオが活躍するマンガ『中華一番!』にも、ドラッグルメなメニューが出てきます。「広州料理界の魔女」チェリンさんが作る、真っ黒いイカスミビーフンがそれです。  チェリンさんは登場シーンからして火薬で食材を爆破したり、主人公マオの首のツボにこっそり鍼を打ち込んで味覚を失わせたりと、さすが魔女と言わんばかりのアウトローな行動を取るキャラでしたが、出来上がった料理もやはりヤバかった!  イカスミビーフン食べた人たちの背景がドヨーンとまだらになって「な、なんだこれは」「止まらぬ」「お……恐ろしく後を引く味だ!!」とガツガツと食べまくります。そこへ試食したマオが「チェリンさんは料理人として絶対やっちゃいけないことをやったんだ!!」「この料理には禁断の調味料が使ってあるんだ!」とブチギレます。  そうです、このイカスミビーフンに「ケシの実」が大量に使われていたのです!……って、試食して速攻で分かるマオ(13)も、実は結構なジャンキーなんじゃないかという疑惑がありますが、マンガではそこには一切触れられていません。まったく恐ろしいビーフンがあるもんですね。危険ビーフン、ダメ。絶対。
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『魔人探偵脳噛ネウロ』
●『魔人探偵脳噛ネウロ』のドーピングコンソメスープ  グルメマンガではありませんが、「魔人探偵脳噛ネウロ」に出てきたドーピングコンソメスープも、ドラッグ入りメニューとして有名です。  ドーピングコンソメスープは、成功を呼ぶレストラン「シュプリームS」の至郎田(しろた)正影シェフが生み出した究極のメニューです。レシピも、実にアウトデラックス。  鴨肉、チコリ、アスパラガス、ヴィネガー、塩、レモン皮、モリーユ、ポルト酒、砂糖、ハーブ・スパイス11種、コカイン、ヘロイン、覚せい剤、モルヒネ、ペンタゾシン、ステロイド系テストステロン、ヒト成長ホルモンhGH……後半は、ダイレクトに薬剤名が記載されてます。もう清々しいほどに真っ黒です。  これらの数えきれない食材・薬物を精密なバランスで配合し、特殊な味付けを施して煮込むこと七日七晩!! 血液や尿からは決して検出されず、なおかつすべての薬物の効果も数倍、血管から注入る(たべる)ことでさらに数倍!! これがドーピングコンソメスープだ!!……血管から注入って、それもうコンソメスープじゃなくていいじゃん。  ちなみに、コンソメスープを血管から注入(たべ)た至郎田シェフは、筋肉ムキムキの超人ハルクみたいなバケモノになっちゃいます。危険コンソメスープ、ダメ。絶対。(しつこい)
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『鉄鍋のジャン!』
●『鉄鍋のジャン!』の幻覚キノコ入りスープ  最後にご紹介するのは、やはり中華料理のマンガで『鉄鍋のジャン!』。このマンガほど、ドラッグルメ度が高いマンガもなかなかありません。  全日本中華料理人選手権大会で主人公のジャンが審査員に振る舞ったキノコスープが、実は二種類のキノコをブレンドして幻覚興奮成分を発生させたマジックマッシュルームスープなのでした。当初、審査員は「まあまあだ」「なかなかですな」という評価で、採点も10点満点中5点とか6点とか平凡なものでしたが、しばらくした後、審査員たちが瞳孔の開ききった目で「す……すまんがやっぱりもう一度、もう一度味見をしたい」「ぱふぅ」などと言いながらスープを飲み干し「10点満点で100点ぐらいすばらしい」「1万点いや5万点と書いてやる!」などとわけのわからないことを言い始めます。ていうか、なんで5万点。逆に中途半端だろ……。  『鉄鍋のジャン!』は、この幻覚キノコ入りスープ以外にも危険なメニューが多数出てきます。食べると体がピクピクして動けなくなるケシの実入り麻婆豆腐が出てきたり、食べると脳内麻薬物質エンドフィンを分泌させる子羊のローストが出てきたりして、まさに無法地帯。ドラッグルメの王者と呼ぶにふさわしい存在なのです。  というわけで、皆さんの人生に決して役に立つことのない、危険ドラッグよりヤバいドラッグルメマンガの世界をご紹介しました。ちなみに日本では、アンパンの上にケシの実が乗っているやつがありますが、あのケシの実は体に無害で安全なものらしいですよ。安全安心にドラッグルメしたければ、アンパンがオススメですね! (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

反日マンガの仮面をかぶった壮大な釣り!? 日本で唯一のテコンドーマンガ『テコンダー朴』

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『テコンダー朴』(晋遊舎)
 格闘技をテーマとしたマンガの題材といえば、すぐに思いつくのは空手、拳法、ボクシング、プロレス、総合格闘技といったところでしょうか。日本の国技、相撲のマンガもあるといえばありますが、ちょっとキワモノ感が強いです。平松伸二先生の『どす恋ジゴロ』なんて、実際の相撲のシーンよりもベッドで夜の大相撲をやってるシーンのほうが多いぐらいです。  ところで、お隣韓国の国技「テコンドー」をテーマとした珍しいマンガが存在するのはご存じでしょうか? しかも、日本の雑誌に掲載された日本人向けのマンガであるという、異色すぎる存在。その名も『テコンダー朴』です。  『テコンダー朴』の最大の特徴は、韓国の国技としてのテコンドーを扱ったマンガであると同時に、強烈な反日メッセージを盛り込んだマンガでもあるところです。主人公のテコンドー使いの青年、朴星日(パク・スンイル)が、邪悪で卑怯なチョッパリ(日本人野郎)をブチのめすシーンというのが、この作品の肝となっています。  なにしろ、マンガ内に出てくる日本人がことごとく卑劣なクズ野郎なのです。このマンガを読む限り、日本人はブチのめされてもしょうがない奴らの集まりです。 「薄汚ねえ在日野郎はさっさと韓国に帰って犬でも食ってろよ!」 「在日刈りだぁ?」 「汚ねえ朝鮮■落をブッ潰してやる!!さっさと日本から出て行きやがれー」  こんなセリフを吐きながら韓国屋台料理の店を破壊したり、在日韓国人の女子どもを容赦なく襲う日本人たち。うわぁ……日本人クズすぎる! 日本人って、こんな『北斗の拳』のモヒカン族みたいな国民性だったのか。最悪ですね!!  そんな憎き日本人に、朴の怒りのテコンドー奥義が炸裂します。両手を合わせて人差し指で相手を鋭く突く、その必殺技の名は「重根(チュングン)」。この重根は、伊藤博文を撃ち倒した韓国の英雄、安重根の拳銃をイメージした技(型)です。決してカンチョーではありません。そのほかにもいろいろとテコンドーの奥義が出てきますが、どれもこれもすごいです。 「奉昌(ボンチャン)」昭和天皇に手榴弾を投げつけた韓国の独立運動家、李奉昌をモチーフにした技 「統一(トンイル)」テコンドー最終奥義とされる南北朝鮮の統一の決意をあらわしている技  ……などなど。蹴り技イメージの強いテコンドーのイメージを覆す手技の数々が登場します。このうち、「重根」「統一」は日本国際テコンドー協会でも紹介されている実在のテコンドー型となっています。抗日のシンボル的存在である安重根をモチーフにしたり、南北朝鮮の統一を願った奥義があるとは、なんて政治的意味合いの強い格闘技なんでしょうか……。美女と毎晩夜の千秋楽を迎えまくってる日本の国技マンガとは、シリアスさが全然違いますね。  ちなみに作品中では、テコンドーは5000年の歴史があり、空手、柔道、剣道、相撲などあらゆる日本の格闘技が韓国起源であるとか、金剛力士像はテコンドー武芸者の姿がモチーフになっているなど、日本人なら確実に衝撃を受けそうな起源アピールも盛り込まれております。5000年の歴史を誇っているわりに奥義の名前が「重根」とか「統一」って、えらく現代的な気もしますけど。  本作品の主人公、朴星日の本当の目的は、朴の父親のテコンドー道場を道場破りによって潰した日本人格闘家、覇皇(はおう)を倒すことにあります。この覇皇という男がまた「大東亜共栄拳」なる、身もフタもない感じの名称の必殺技を使う男なのです。それにしても、自分で覇皇って名乗るなんて、なかなかの中二病ですね。  ストーリーは、朴が宿敵である覇皇と闘うことができる格闘技トーナメントの出場権を手に入れる第3話で最高潮の盛り上がりを見せるのですが、それ以降のストーリーは掲載誌である「スレッド」(晋遊舎)が休刊(事実上の廃刊)になったため、お蔵入りとなってしまいました。  実は、この「スレッド」が創刊された2007年は、03年以降に盛り上がった『冬ソナ』ブームや韓流ブームのアンチテーゼとして2ちゃんねるを中心に嫌韓ムーブメントが起こった年で、インターネット上で「嫌韓流」「ネット右翼」「売国奴」などのキーワードが使われるようになったのもこの時期です。「スレッド」もそれに迎合するように、嫌韓流をあおるような記事が多数掲載されている雑誌でした。  つまり、作品だけを読むと、表面的には反日マンガあるように見える『テコンダー朴』ですが、ありえないほど反日的な内容にすることで日本人読者の嫌韓をあおる目的があった可能性が高いのです。作品が途中で終わっているので、真相は闇の中なのですが。  そういうややこしい事情がある『テコンダー朴』ですが、貴重なテコンドーマンガであることには変わりはなく、その無慈悲な反日っぷりも含めて、純粋に面白い作品になっています。この先の展開が気になるところですが、いま再びこの作品を世の中に出したら、せっかく寝た子を起こすようなエラい事態になりそうなので、おそらく永遠に封印されることになるのでしょう。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

ガチで硬派なロリコンマンガ『あんどろトリオ』に見る、昭和のポジティブ変態

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『あんどろトリオ』(秋田書店)
 マンガの世界では、「ロリコン」という言葉はほとんど見かけなくなりました。しかし、美少女が出てくるマンガは減るどころか、むしろ商業的には活況の一途をたどっています。それはなぜか? おそらくは、2000年以降急速に普及した「萌え」という概念が、「ロリコン」というネガティブワードの隠れみのの役割を果たしているからではないでしょうか。「ロリコン」は、常に変態や犯罪などのネガティブイメージがつきまといますが、「萌え」だとマイルドな語感で、サブカルな香りすら漂います。「ロリコンは死んだほうがいいけど、萌え系はちょっとオシャレだよねー」みたいな。これは言葉のマジックですね。  1982年(昭和57年)から「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)に連載されていた内山亜紀先生の作品『あんどろトリオ』は、昭和の作品らしく萌えマンガとは一線を画した純度100%の正統派「ロリコンマンガ」であるといえます。まさに、真のロリコンを追い求める、硬派のためのロリコンマンガといっていいでしょう。  内山先生はロリコン漫画家の筆頭として多数の作品を世に送り出していますが、『あんどろトリオ』は「週刊少年チャンピオン」という超メジャー少年誌に堂々と、合法的に掲載されていたというのが文化的価値の高いところです。  内山先生の描く少女は、現代の萌えマンガ特有のデフォルメされたアニメ絵とは異なり、大人びた顔立ちに幼児体型をミックスしたような昭和の香りを感じさせる美少女です。いま見ると、尋常じゃない背徳感と不健全さが漂っています。プロも納得するガチのロリコンというのは、こういうものなんだろうなと思わせられるものがあります。  では、『あんどろトリオ』はどんな作品なのでしょうか? ひとことで言うと、女の子が毎回パンツを脱がされるマンガです。実にシンプル。読者の欲望にダイレクトに応えているマンガといえます。  これだけだと作品紹介としてあんまりなので、もう少し詳しく説明しますと、主人公は「つかさ」という小学生風の女の子です。つかさちゃんはデフォルトでパンツが見える上にどのアングルから見てもパンツが見えるという、ちょっとどういう構造になっているのかよくわからない服を着ています。つまり、ほぼ全ページにわたって常にパンツが描かれています。内山先生のパンツへの執念を感じさせますね。  つかさちゃんの取り巻きには、「センパイ」「少年」というキャラクターがおり、3人合わせて「あんどろトリオ」を形成しています。一方で、つかさちゃんのパンツを狙う「紅ガイコツ団」という変態軍団や「イヤラッシー」という変態犬も登場します。イヤラッシー……変態犬にはこれ以上ないほどに、ピッタリの名前です。  つかさちゃんのパンツを狙う「紅ガイコツ団」をガードするために、センパイがいろんなアイテムを発明するのですが、味方であるセンパイも変態なので、結局パンツが見えることには変わらないという変態の多重構造になっています。  ちなみに、センパイがどのくらい変態なのかと言いますと、自分の家がパンツの形をしています。なんというか、インジケーター振り切ってる感じの変態ですね。  そもそも昭和のエッチマンガの特徴として、自ら変態だと公言してはばからないポジティブ変態なキャラが結構登場していました。「変態ですが、何か?」みたいな。それに対して現代の萌えマンガは、どちらかと言うと、一見女子に興味がなさそうな草食系男子がハプニングでエッチなトラブルに巻き込まれるみたいな設定が多い気がします。男らしい凛とした態度の変態は、昭和時代のほうが多かったということですね。  話がそれましたが、センパイがつかさちゃんのために発明したアイテムであるチカン撃退用のパンツ、通称「ニャンコパンツ」はパンツに描かれている猫のプリントに触れると「なめ猫」が飛び出すという仕掛けになっています。このパンツから立体物が飛び出してくる描写は、マンガ誌上類を見ないブッ飛んだ表現と言えます。  この飛び出すパンツにはさまざまなバージョンがあり、かわいい赤ちゃん猫が飛び出すパターンや、おっかない番長が飛び出すバージョンもあります。そのほかにも、尿意をもよおすと股間から卵が生まれるパンツなどもあり、まったくもって意味が分かりません。  さらに、パンツだけではワンパターンと見たか、途中からパンツに変わってオムツの出現回数も増えてきます。素人目には、正直言って何も変わっていないのに等しいのですが、もしかしたらその道のプロが見れば、パンツとオムツは全然別物なのかもしれません。  これだけパンツだオムツだと毎回少女が脱がされているマンガがメジャー誌で掲載されていたというのは、いかに規制が緩い時代とはいえ驚くべき現象ですが、上も下もちゃんと隠すべき部分は巧妙に隠されており、この辺は少年誌掲載マンガとしてのギリギリの良心を感じます。まあ、ギリギリアウトって感じですけど。  というわけで、最近のヌルい萌えマンガに辟易していた古きよき変態の皆様には、ぜひ『あんどろトリオ』をお読みになっていただき、昭和のエロスが醸し出す背徳感を感じ取っていただきたいと思う所存です。読み終わる頃にはきっと、人様に迷惑をかけない一皮むけた硬派の変態になっていることでしょう。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)

伝説の打ち切りマンガ『男坂』が30年ぶりに連載再開! 待ち受けるのは天上界か、それとも……

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『男坂4』(集英社)
 こんにちは。じゃまおくんです。普段は「BLACK徒然草」(http://ablackleaf.com/)というブログで、世の中に埋もれる愛すべきマイナーマンガの紹介をしているんですが、このたび日刊サイゾーで連載を始めることになりました。  今年、マンガ界に激震が走ったニュースといえば、なんといっても打ち切りマンガのレジェンド『男坂』の連載再開でしょう。マンガ界の先人たちは、こんな言葉を残しています。<『男坂』を読まずして、打ち切りマンガを語るなかれ>と。そもそも皆さんの人生で打ち切りマンガについて語らねばならないケースはほぼないと思うのですが、本コラムにおいては状況が違います。これから幾多のマイナーマンガや打ち切りマンガを紹介していくであろう、まさに登り始めたばかりのマンガ坂において、その原点ともいえる名作『男坂』を紹介しておかなければ、一歩たりとも先に進めないのであります。  というわけで、1980年代に「週刊少年ジャンプ」(集英社)を愛読していた人たちなら知らない人はいないであろう伝説の作品『男坂』ですが、作者はかの『聖闘士星矢』を生んだ車田正美先生です。その車田先生が構想に10年以上かけ、「俺はこいつを描きたいために、漫画屋になったんだ!!」と言い切るほどの意気込みで開始した作品なのです。  伝説となった有名な打ち切りシーンは、Google画像検索で『男坂』と検索すれば山ほど出てきます。それは「オレはようやくのぼりはじめたばかりだからな、このはてしなく遠い男坂をよ…」というセリフに、極太毛筆フォントで「未完」という文字をデデーンと残した壮絶なものでした。打ち切りのことを「未完」と言い換えるポジティブさが、当時としてはものすごく斬新だったのです。  しかし、星の数ほどある打ち切りマンガの中で、なぜこの『男坂』だけがレジェンドなのでしょうか? もちろん、一朝一夕で打ち切りマンガのレジェンドになれるわけではありません。ちゃんとした理由があるのです。  ストーリーは、九十九里の硬派な中学生、菊川仁義(13歳)がそのケンカの才能を生かして日本各地にいるケンカの強い硬派たちを一堂に結集させ、日本侵略を企む世界各国のマフィアたちと闘う、というものです。硬派というだけあって、作品中に出てくるセリフもとにかく男くさくて、熱い名ゼリフぞろいです。 「男が目指そうとする道は、しょせん坂道でしょう!」 「オレたちは命燃え尽きるその日までかたい契りをもった義兄弟だぜ!!」 「ケンカに負けるようなヤツに男はいねえ!!男はつねに戦士(ウォリアー)であるべきだからだ!!」 「何万べん語っても語り尽くせねえことが、拳一発で分かり合えることもあるんだ!」 「いざっていう時は命をかけても大事なものは守りぬく、闘いぬく! それが硬派だ!!」 などなど、中二病感あふれる熱いセリフの数々。中二病と硬派は、紙一重だったんですね。ちなみに、日本侵略を企む世界各国のマフィアのドンたちも、平均年齢13歳の中学生です。13歳にして数千、数万人の部下を引き連れてマフィアを組織しているのです。僕が13歳の頃なんか、まだチョロQとかで遊んでましたよ。どれだけスケールがデカイか分かりますでしょうか。  ニューヨークのドン・ジャーメィン、イタリアのドン・バレンチノ、フランスのドン・マドモァゼル、スペインのドン・サンホセ、オランダのドン・ルスカ、プエルトリコのドン・ゴメス等々、まるでワールドカップのごとく、次から次へと各国を支配する中学生マフィアのドンたちが紹介されていきます。菊川仁義はそんな世界の脅威に対抗すべく、東日本の各地のボスたちにケンカを売っては傘下に収め、いよいよ北海道を仕切るボスを倒しに行くぞ! というところで、サクッと打ち切り。ちょっ……あれだけページを割いて紹介した世界のドンたちは、まったく出番なしかよ! という、このズッコケ具合。  前フリの段階で目まいがするような壮大なスケール感。広げきってシワひとつないレベルの大風呂敷。張られまくった伏線に次ぐ伏線。そして、それらを一切回収することなく、突然の打ち切り……これらすべての条件がそろっていたからこそのレジェンドなのです。  そういったことを踏まえて、そんなバカな、どうせデマだろうとささやかれつつも、ついに2014年6月、「週プレNEWS」(集英社)でWEB連載が開始されました。連載が再開されただけでもすごいのに、単行本第4巻が30年の時を経て刊行されるという、『ガラスの仮面』もビックリのインターバルっぷりで、ファンの度肝を抜きました。  「そもそも打ち切りネタで有名になった作品を再開させてどうするんだ」「意味ねーじゃねーか」とか辛らつな意見もありますが、そこはやはり語り継がれた名作……4巻の内容も、3巻までとまったく色褪せぬ面白さでした。菊川仁義の好きなアイドルとして紹介されるのが「キョン2」だったりして、時間の経過をまったく感じさせないあたりも素晴らしいです。  ちなみに4巻でも相変わらず北海道のボスと闘っていて、一向に世界のドンたちの姿は見えてきません。30年もの時を経ても、登り始めた『男坂』は、まだまだ果てしなく続くようです。このまま再打ち切りにならないことを祈るばかりですが、もし足掛け30年かけて復活したのにまた打ち切られるのであれば、それはそれで新たなレジェンドになるかもしれませんね。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)