赤塚不二夫先生の生誕80周年記念作として、大人になった現代版『おそ松くん』のアニメ、『おそ松さん』(テレビ東京系)が10月から放送されていますが、皆さんはご覧になりましたか? 六つ子が全員ニートでハローワーク通いをしていたり、声優がことごとくイケメンだったり、あまりのブラックさに、1話目がお蔵入りになったりと、何かと話題に事欠かないアニメ作品で、すでに、2016年からの第2クールの放送も決まっているとか。とにかく、すごい勢いです。 今回は、そんな『おそ松さん』ファンなら必読の『ニャロメのおもしろ性教室』(角川書店)をご紹介しましょう。本作は赤塚先生が手がけた学習マンガシリーズのひとつで、ほかにも『ニャロメのおもしろ数学教室』『ニャロメのおもしろ宇宙論』などが出版されています。学習マンガでありながら、赤塚キャラのシュールさと随所にちりばめられたギャグで、小難しい内容を、まるで『天才』バカボンを読んでるかのように楽しく学べてしまうという、実に画期的な学習本。もちろん『ニャロメのおもしろ性教室』も、基本的にはマジメに性を考える本になっています。あくまでも、基本的に……なのですが。 本シリーズは作品の枠を超えて、赤塚キャラがオールキャストで登場するのが魅力です。バカボンやバカボンパパはもちろん、ひみつのアッコちゃん、ウナギイヌやイヤミ、チビ太、おまわりさんなどのサブキャラ、そしてもちろん、おそ松くんも登場しています。 バカボンがニャロメ先生に勃起や性病について教わったかと思えば、SMやスワッピング、ゴム&革フェチといった、学習マンガでそこまでやらなくていいだろ! というレベルまで紹介されています。さすが赤塚先生、単なる学習マンガとは一味も二味も違う内容になっています。 なんといっても、本作品最大の被害者は、ひみつのアッコちゃんです。紅一点として、ありとあらゆる赤塚キャラからセクハラされまくり。 女性の体の紹介のために全裸にさせられたり、おそ松くんにボインタッチされたり、バカボンに「子どもをつくろう」と言われたり、チビ太に処女膜の話を振られたり……。もはや、同情したくなるレベルです。 そして、おそ松くんはといえば、思春期の多感な男の子としての役回りが課せられており、男子特有の現象がおそ松くんの体に起こります。 朝起きると、パンツの中に白い液体がベットリとついているおそ松くん。おそ松くんの体に、いったい何が起こったというのでしょうか!? ここでズバリ、ニャロメ先生のマジメな解説です。 「これを射精というニャロメ!」 そうです。おそ松くんは、この作品で初めて射精というものを知ったのです。初めての射精の瞬間をネタにされるギャグマンガの主人公って、なかなかレアですよね。 また、おそ松くんが木登りをしたり、鉄棒や相撲をやっている時に刺激されて思わず射精してしまった現象については……。 「これを遺精(いせい)というニャロメ!」 これまた、ニャロメ先生の明快な解説です。なるほど、相撲を取る時は要注意なんですね! とにかく、おそ松くんが作品中で射精したり遺精したりと、本当の意味で「お粗末」な感じになっていくわけです。 「避妊」を解説する章では、おそ松くんのパパが、若気の至りで子どもを6人もつくったことで経済的に苦しく、後悔しているという、おそらく『おそ松くん』ファンが一番見たくなかったリアルなシーンが描かれています。 「なんて馬鹿なセックスをしてしまったんだろう…」 「妊娠しても、人工中絶しときゃよかった」 おそ松くんのパパの、現実的すぎるこのセリフ……。いろんな意味でブルーになりますね。「人工中絶」とか、もはやおそ松くんという作品の存在意義に関わる問題です。もし実行していたら、当然『おそ松さん』も存在し得なかったわけですからね。 そんな生々しい話の流れから、避妊の大切さについての話に展開するわけですが、ここでは性教育のお約束、コンドームの着け方についてイラスト付きで解説されています。ちなみに、イボ付きコンドームは使っても意味がないんだそうです。割と大きなお世話ですね。 そのほか、ラブドールを通して性の未来について語ったりとか、とにかく子ども向け学習マンガとは思えないレベルの解説がふんだんに盛り込まれている『ニャロメのおもしろ性教室』。ぜひ、『おそ松さん』鑑賞のお供に読んでみてはいかがでしょうか? (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『ニャロメのおもしろ性教室』(角川書店)
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“ニルヴァーナ・トリップ”からバトルまで 読み手を選ぶ、異色のサウナマンガ『フィンランド・サガ』
「いつだってそう、真実はサウナでつぶやかれる」 今年もいよいよ、さむ~い冬がやって来ます。この季節、温泉や銭湯もいいですけど、体を芯から温めるんだったら、なんといってもサウナじゃないでしょうか。 スーパー銭湯や健康ランドには、必ずといっていいほどサウナが常設されています。それほどまでに、サウナ人口は多いのです。しかし「サウナなんか使ったことない」「熱いし、息苦しいし、いったい誰が得するんだよ、あんなもの」と思っている人もまた、結構多いのではないでしょうか。 今回はそんな、ハマる人とハマらない人がくっきりと分かれてしまう「サウナ」をテーマにしたマンガをご紹介します。 みなさんは、『サ道』(パルコ)という本をご存じでしょうか? 漫画家であり、「コップのフチ子」の発案者であり、そして日本初のサウナ大使でもあるタナカカツキ先生による、サウナエッセイ&マンガです。 『サ道』は、サウナの魅力をまだ知らない人をサウナジャンキーの道へと誘う、入門書といえます。サウナと水風呂の交互のセッションワークを繰り返すことにより、突然ありえないほどの気持ちいい状態、「ニルヴァーナ状態」が訪れるという衝撃的な内容が紹介されています。そう、みんなが苦手なあの水風呂こそ、サウナトリップの秘密! というわけです。さらに現在、「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で『マンガ サ道』というコミカライズ作品が月イチ連載されており、サウナブームが静かに、そして確実に訪れているといっていいでしょう。 この『サ道』こそ、日本で唯一のサウナマンガかと思われたのですが、実はもうひとつ、サウナをテーマにしたマンガが存在していました。その名も『フィンランド・サガ』。 『サ道』がサウナのイメージアップをテーマにしているのに対し、『フィンランド・サガ』はもっとストイックで、サウナの「殺伐とした感じ」や「重苦しい雰囲気」が表現されている作品です。 主人公は“プロサウナチャンピオン”本庄丈一郎。この時点で、すでに突っ込みどころ満載なのですが、全裸にフェイスタオル、そして肩にはチャンピオンベルトといういでたちで登場する、マンガの主人公としてはあまりにも斬新なキャラクターです。本庄は悩める現代人の相談役として、あるいは「耐えなければいけないことだらけ」な日常のストーリーテラーとして、サウナの中で語り続けます。圧巻なのは、あまりに誇大なサウナ名言の数々。 「ライフ・イズ・サウナ」 「私の流している汗は…スパンコールなんかじゃない…」 「耐える姿は現代人のフォークロア(民間伝承)」 「耐えることで人とつながる…それがプロサウナ」 「サウナの本質はグローバルコミュニケーション」 「いつだってそう、真実はサウナでつぶやかれる」 「サウナだけが世界を変える」 「君はレストランへ行くのに弁当を持っていくのか? 荷物はいらない…ただ脱ぎ捨てるだけ、それがサウナだ…」 などなど、次から次へと繰り出される意味深なポエム。ここまでいくと、名言というより、迷言レベルです。 こんな感じで、初めは人生相談スタイルだったのですが、何を思ったか、単行本2巻からは唐突に、サウナバトルへ突入。参加国78カ国、世界一のサウニストを決める地下サウナバトルが開催されます。日本代表は、もちろん本庄。ロサンゼルスからやってきた強豪サウニスト「J.D.」と一騎打ちをします。 サウナの世界大会って、いったいどんなスゴいバトルなのかと思うかもしれませんが、“我慢できなくなってサウナから退場したら負け”という、実に単純明快なシステムです。ただし、プロ同士の戦いですから、サウナ内での高度な駆け引きが勝敗を分けます。 常に清く正しい潔癖なサウナスタイルを誇るJ.D.に対し、本庄は幼い頃に好きだった女の子と遊園地でデートした挙げ句に失敗して微妙な空気になった話など、切ない話てんこ盛りでJ.D.のメンタルに揺さぶりをかけます。……全然高度な駆け引きじゃないですね。酔っぱらいの居酒屋トークに近いものがあります。 3巻では、さらに新展開。若者たちの恋愛三角関係にサウナチャンピオンが割り込んできて、状況がさらにややこしくなるという、予想の斜め上を行くストーリーになっています。正直、舞台がサウナである必然性があまりありません。 全体的に「なんだコレ!?」感がスゴいのですが、無理やりサウナに結びつける独特の世界観は、ほかのマンガでは味わえません。読み手を選ぶかなりの異色作であると同時に、ハマる人はハマる、まさしくサウナのようなマンガといえましょう。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『フィンランド・サガ』(吉田貴司/モーニング KC)
“ニルヴァーナ・トリップ”からバトルまで 読み手を選ぶ、異色のサウナマンガ『フィンランド・サガ』
「いつだってそう、真実はサウナでつぶやかれる」 今年もいよいよ、さむ~い冬がやって来ます。この季節、温泉や銭湯もいいですけど、体を芯から温めるんだったら、なんといってもサウナじゃないでしょうか。 スーパー銭湯や健康ランドには、必ずといっていいほどサウナが常設されています。それほどまでに、サウナ人口は多いのです。しかし「サウナなんか使ったことない」「熱いし、息苦しいし、いったい誰が得するんだよ、あんなもの」と思っている人もまた、結構多いのではないでしょうか。 今回はそんな、ハマる人とハマらない人がくっきりと分かれてしまう「サウナ」をテーマにしたマンガをご紹介します。 みなさんは、『サ道』(パルコ)という本をご存じでしょうか? 漫画家であり、「コップのフチ子」の発案者であり、そして日本初のサウナ大使でもあるタナカカツキ先生による、サウナエッセイ&マンガです。 『サ道』は、サウナの魅力をまだ知らない人をサウナジャンキーの道へと誘う、入門書といえます。サウナと水風呂の交互のセッションワークを繰り返すことにより、突然ありえないほどの気持ちいい状態、「ニルヴァーナ状態」が訪れるという衝撃的な内容が紹介されています。そう、みんなが苦手なあの水風呂こそ、サウナトリップの秘密! というわけです。さらに現在、「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で『マンガ サ道』というコミカライズ作品が月イチ連載されており、サウナブームが静かに、そして確実に訪れているといっていいでしょう。 この『サ道』こそ、日本で唯一のサウナマンガかと思われたのですが、実はもうひとつ、サウナをテーマにしたマンガが存在していました。その名も『フィンランド・サガ』。 『サ道』がサウナのイメージアップをテーマにしているのに対し、『フィンランド・サガ』はもっとストイックで、サウナの「殺伐とした感じ」や「重苦しい雰囲気」が表現されている作品です。 主人公は“プロサウナチャンピオン”本庄丈一郎。この時点で、すでに突っ込みどころ満載なのですが、全裸にフェイスタオル、そして肩にはチャンピオンベルトといういでたちで登場する、マンガの主人公としてはあまりにも斬新なキャラクターです。本庄は悩める現代人の相談役として、あるいは「耐えなければいけないことだらけ」な日常のストーリーテラーとして、サウナの中で語り続けます。圧巻なのは、あまりに誇大なサウナ名言の数々。 「ライフ・イズ・サウナ」 「私の流している汗は…スパンコールなんかじゃない…」 「耐える姿は現代人のフォークロア(民間伝承)」 「耐えることで人とつながる…それがプロサウナ」 「サウナの本質はグローバルコミュニケーション」 「いつだってそう、真実はサウナでつぶやかれる」 「サウナだけが世界を変える」 「君はレストランへ行くのに弁当を持っていくのか? 荷物はいらない…ただ脱ぎ捨てるだけ、それがサウナだ…」 などなど、次から次へと繰り出される意味深なポエム。ここまでいくと、名言というより、迷言レベルです。 こんな感じで、初めは人生相談スタイルだったのですが、何を思ったか、単行本2巻からは唐突に、サウナバトルへ突入。参加国78カ国、世界一のサウニストを決める地下サウナバトルが開催されます。日本代表は、もちろん本庄。ロサンゼルスからやってきた強豪サウニスト「J.D.」と一騎打ちをします。 サウナの世界大会って、いったいどんなスゴいバトルなのかと思うかもしれませんが、“我慢できなくなってサウナから退場したら負け”という、実に単純明快なシステムです。ただし、プロ同士の戦いですから、サウナ内での高度な駆け引きが勝敗を分けます。 常に清く正しい潔癖なサウナスタイルを誇るJ.D.に対し、本庄は幼い頃に好きだった女の子と遊園地でデートした挙げ句に失敗して微妙な空気になった話など、切ない話てんこ盛りでJ.D.のメンタルに揺さぶりをかけます。……全然高度な駆け引きじゃないですね。酔っぱらいの居酒屋トークに近いものがあります。 3巻では、さらに新展開。若者たちの恋愛三角関係にサウナチャンピオンが割り込んできて、状況がさらにややこしくなるという、予想の斜め上を行くストーリーになっています。正直、舞台がサウナである必然性があまりありません。 全体的に「なんだコレ!?」感がスゴいのですが、無理やりサウナに結びつける独特の世界観は、ほかのマンガでは味わえません。読み手を選ぶかなりの異色作であると同時に、ハマる人はハマる、まさしくサウナのようなマンガといえましょう。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『フィンランド・サガ』(吉田貴司/モーニング KC)
グダグダすぎる主人公を反面教師に! 全国の浪人生に贈る、予備校生マンガ『冬物語』
予備校は受験勉強するところ? いえいえ……恋をするところです! 皆さんは、予備校に通ってましたか? 最近は少子化で、すっかり予備校の存在感は薄れており、目立っているのは「今でしょ!」の林修先生ぐらいですが、1970~90年代前半までは大学受験バブル。大学行くなら浪人して当たり前という、予備校天国の時代でした。かくいう僕も、かつては予備校で浪人生をしてました。 予備校といえば、その代名詞ともいえるのが駿台予備学校、河合塾、代々木ゼミナールのいわゆる3大予備校。「生徒の駿台、机の河合、講師の代ゼミ」なんて言われてました。いま思うと、「机の河合」って、扱いがヒドすぎますね。 そんな浪人、予備校ブームの最中に生まれた『冬物語』というマンガがあります。浪人して予備校に通う受験生たちの、まさしく「冬」な心境を描いた作品です。主人公の森川光は大学入試で、ことごとく不合格。残るはスベり止めに受けた「八千代商科大学」のみという状況。 「バーカ! あそこ(八千代商科大学)落ちたら人間やめるよ!」 「そーよ、あそこならだいじょーぶよ! あんなとこ小学生だって受かるわよ!」 「大学生っても、あそこじゃなあ…」 これぞまさに「Fラン大学」といった趣ですが、光はなんと、その「八千代商科大学」すら不合格。つまり小学生以下、人間やめろ状態です。付き合っていた彼女の和美ちゃん(専修大合格)にはあきれられた挙げ句にフラれ、どん底冬状態で浪人生活がスタートします。 この作品の見どころはなんといっても、主人公・光のすさまじいばかりの優柔不断さ、川の流れのようによどみなく流れていく意志の弱さにあるといえましょう。 浪人が決定し、通い始めた予備校、山の手ゼミナール(代ゼミがモデル)では、なんと「東大専科コース」に申し込む光。Fラン大学すら落ちた男が、なぜに東大専科コースを……? 実は、予備校で見かけたかわいい女の子(ヒロインの雨宮しおり)が東大専科コースに申し込んでいるのを見て、ついフラフラと、うっかり申し込んでしまったのです。なんだコイツは!? いきなりダメすぎる!! 当然、東大レベルの授業に、まったくついていけない光。模試の成績も赤点だらけ。さすがに、しおりちゃんにも心配されてしまいます。もちろん東大を受ける学力がないのは、本人が一番わかっているんです。でも、でも……! 「好きなコがいるんだよ…東大…東大目指してる好きなコが…だから…」 ドサクサに紛れて、しおりちゃんに遠回しな告白をする光。しかし、対するしおりちゃんは、それに気がつくどころか……。 「あたしも…光くんと同じなの…好きな人いるの! 東大に…」 告ったと思ったら返す刀で速攻轟沈。そう、しおりちゃんは、東大に入った彼氏を追いかけて一生懸命勉強している一途な女の子だったのでした。 しおりちゃんに脈がないことが判明したので、さっさと東大専科コースをやめればいいのですが、しおりちゃんに未練タラタラの光。いつまでもクヨクヨして、やめるやめないで悩み続け、ついに私大文系コースへの変更を申し出た時には単行本1巻のラストシーンでした。ここまでほとんど勉強せず。ダメだこりゃ!! 単行本2巻では、やっと夢から覚めた光。私大文系コースで目標を日東駒専に定め、再スタートを切ったのですが……。光の前に、新たなヒロインが登場。その名も、倉橋奈緒子。 天真爛漫で積極的なキャラクターながら、青学、中央を蹴って一貫して慶応を狙う才女です。この奈緒子がダメ男好きなのかなんなのかわかりませんが、光をひと目で気に入り、ちょっかい出しまくり。予備校そっちのけで映画に誘ったり、家に呼んだりと誘惑し、しまいにはキスまでしちゃいます。もともと意志の弱い光、これは勉強どころではありません。 これだけでも十分浪人生としてヤバい状況なのですが、奈緒子の一途な思いを裏切るように、しおりちゃんへの未練が再燃。勉強はできないくせに、恋愛だけはイッチョマエの恋多き予備校生として進化しています。 そんなこんなで迎えた、受験シーズン。一年浪人したその成果は……現役の時に落ちた「八千代商科大学」だけ合格! まあ、一応の成果はあったようです。親御さんも一安心です。 そのまま八千代商科大学でキャンパスライフを送るものの、やっぱり納得できない光。勉強できないくせに、プライドだけは一人前。親に黙って勝手に休学届を出して、再び予備校へ舞い戻ってきます。そう、二浪目突入です。しかし、ほどなくして休学がバレ、家族会議に。弟もこれから受験なのに、二浪させるお金なんてないとカーちゃんが泣いてます。身につまされるシーンです。 弟「俺、大学行く気ねーからさ。ま、がんばってよ」 父「金のことは心配するな、ボーナスとかその他にも多少は貯えあるから」 弟はともかく、父ちゃんのセリフ、明らかにムリしてます。 親を泣かせてまで選んだ二浪の道は、まさに修羅の道。今度こそ心を入れ替えて勉強を……と決意したところ、同じく東大に合格できず二浪目に突入したしおりちゃんと予備校で再会。再び、泥沼のノー勉強ライフへ……。 そんな感じで光のダメっぷりにイライラしたり、俺はさすがにこんなにヒドくなかったわーとか安堵しながら読むのが、この『冬物語』のたしなみ方ではないかと思うのです。 マンガではありえないほど情けなく見える光ですが、実はリアルな予備校生のひとつの姿だともいえます。中学・高校と違い、予備校生は基本的に時間の制約がないため、好きな時に好きなだけ勉強できる代わりに、自己管理ができないと、どんどん落ちていきます。誘惑に負けない意志の強さが求められるんです。 ちょっと最近サボり気味でヤバいなと思っている受験生の皆さんには、ぜひ『冬物語』を読んでいただき、勉強しなかったらコイツみたいになっちゃう! と光を反面教師にしつつ、頑張るのがオススメですよ! (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『冬物語』(原秀則/ヤングサンデーコミックス)
元祖“出会い系”のいかがわしき世界……伝説のスケベマンガ『テレクラの秘密』
みなさんは「テレクラ」って、知ってますか? いまやすっかり死語同然になってしまいましたが、1980年代から1990年代にかけて、テレフォンクラブ略して「テレクラ」というお店が繁華街にはたくさんありました。今聞いても、いかがわしくあやしい、なんともいえない響きがたまりません。 「テレクラ」は、いわゆる風俗の一業態。インターネットが普及するまで興隆していた出会い系システムです。基本的には狭い個室に電話とかティッシュが置いてあるだけで、男性がその個室でひたすら女性からかかってくる電話を待つというもの。電話で男女の会話が盛り上がり、交渉が成立すれば、電話を介したチョメチョメ(死語)やら、店外でのニャンニャン(これも死語)などに発展する可能性もあります。 そんな「テレクラ」の世界にどっぷりとハマり、人生をテレクラに捧げ、テレクラマンガという一大ジャンルを築き上げた伝説の漫画家がいます。その名も成田アキラ先生。そして、その成田先生が内外タイムスで連載していた日本初のテレクラマンガが、今回ご紹介する『テレクラの秘密』です。 成田先生こそ、まさしく「スケベマンガの帝王」と呼ぶにふさわしい存在です。この場合、エロマンガでもエッチマンガでもなく、「スケベマンガ」であるというところがポイント。なにしろ成田作品は、漂いまくるオヤジ臭に加え、淡々としたタッチがやけにリアルなギャグテイストになっているのです。やはりこれは、紛れもなく「スケベ」なのであります。 『テレクラの秘密』は、基本的に成田先生自身がテレクラに入店し、電話越しでひたすら女性客と会話。外で会う約束を取りつけられたら、待ち合わせからホテルに連れ込んでエッチするまでの一連のオトコとオンナの駆け引きや、その顛末を体験マンガにしています。 仕事でスケベできるなんて、うらやましい! と思うかもしれません。もちろん若くてかわいいOLや、美人な人妻が来れば超ラッキーですが、当然ながら、そんなにうまい話ばかりではありません。超デブスなオバサンや、性欲ありまくりのお婆ちゃん、手を出したら一発アウトの未成年や性病持ち、ヤクザの情婦に至るまで、あらゆるトラップだらけの中、テレクラで出会ったオンナはどんなにブサイクでもとりあえず口説いてラブホに連れ込もうとする成田先生のテレクラにかけるプロ根性は、ある種の悟りの境地に達しているといえます。 「ボクはこの数十年、かけっこで全力疾走をしたことがない。しかし、いい女とセックスする時は全力を尽くしてする。息切れし、心臓が破裂しそうになってもする。やっている時、これで死んでもいいような気になる。全くボクはどうしようもないスケベだ」 「愛のあるセックスでは決してない。原始的で粗暴で、けもののようなセックス、格闘技セックスなのだ」 「ボクにはヘンなクセがあって、女性が歓んでくれればくたばるまでやってやろーじゃないかという気持ちになる。こうなると、もう耐久レースの観を呈してくる。すでに肉体的快感はなく、頭はモウロウとして、ただ惰性的、自虐的持続があるのみ」 作品中、こんな数々の名言まで残しています。まさに、道を極めた者のみが語ることのできるテレクラ名言。 作品終盤では、テレクラの全国行脚を敢行。北海道、盛岡、仙台、新潟、松本、京都、福岡、鹿児島、沖縄など各地のテレクラに赴いては、現地のオンナとエッチすることに命を懸けます。例えば沖縄では、男勝りのすごいパワーでカニバサミを仕掛け、身動き取れない状態でエッチするオンナが登場。 「これが沖縄の女だ、これがー。来たかいがあった!」 などと、エッチしながら感無量の表情の成田先生。いや、沖縄の女の人が、みんなこんなじゃないと思うんですけど……。 そんなわけで『テレクラの秘密』は、単なるドスケベマンガだと思ったら大違い。最後まで読むと、成田先生のストイックなまでにテレクラ道を追求する姿に感動すら覚える作品だったのでした。まあ結局、ドスケベマンガであることに変わりはないんですが。 成田先生は漫画家でありながら、自らのホームページを「漫画家成田アキラコミュニティーサイト出会い情報館」(http://www.akiragirl.com/top.html)と銘打ち、オトコとオンナの出会いをプロデュースする伝道師としても活躍。さらに、御歳70を迎える現在でも、ブログをガンガン更新されています。しかも「週刊アサヒ芸能」(徳間書店)で、『成田アキラの性感マン遊 女体の旅GTR』などという、むしろ若い時よりも絶倫じゃねーか、というようなタイトルの連載で活躍されております。いやはや、スゴいです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『テレクラの秘密』(成田アキラ/スケール)
いったい何がイカンのか!? タイムリーな社会派ギャンブルマンガ 『野球賭博』
いま、プロ野球選手の野球賭博問題が世間をにぎわせています。野球賭博といえば、有名なところでは1969年の黒い霧事件、そして2010年の大相撲野球賭博問題があります。特に2010年は多くの力士や親方が処分され、まさしく角界に激震が走った事件であり、記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。そのわずか5年後に、再びプロ野球界で野球賭博問題が発覚するとは、この問題の根の深さを表しています。 そんなスポーツ界を揺るがす野球賭博問題ですが、いったい何が問題なのか? 一般的には、あんまりなじみがないですよね。正直、僕もよく知りません。しかし、そんな疑問を解決するマンガが存在するのです。その名もズバリ『野球賭博』というマンガです。まさに、このタイミングで紹介するにふさわしい作品と呼べるのではないでしょうか。 ちなみに、野球賭博の話が出てくるマンガは『ラストイニング』や『ラストニュース』『白竜』『名門!第三野球部』などがあります。しかし、いずれも、あくまで作品のほんの一部で取り上げているだけです。「野球賭博」そのものをフィーチャーしたマンガというのは、おそらく本作だけだと思われます。いかにもマンガにするニーズがなさそうですから、当然といえば当然ですが、とにかく大変異質な存在です。 実際、単行本の表紙からして、すごく異質です。どこが異質かというと、真っ赤なのです! 表紙が真っ赤なだけならまだしも、表紙に描かれているオッサンのサングラスの中まで赤いという、尋常じゃないセンスです。まるで、内容がレッドゾーンであることを物語っているかのようです。 『野球賭博』は、実は野球をテーマにした劇画短編集なのですが、プロ野球や高校野球で1軍に上がれないまま落ちぶれていった日陰男たちの悲哀をテーマにしています。普通の野球選手がテーマのマンガではなく、「落ちぶれた野球選手」専門のマンガです。すごいコンセプトですよね。 たとえば、第1話は、ドラフト5位でスターズ(明らかに巨人がモデル)に入団したもののフォーム改造で肘を壊し、結局1軍に上がることができずに解雇になった滝田という男の物語です。 球団の無理な投球フォーム改造のせいで人生を狂わされたことを恨んでいる滝田は、なんとハンク・アーロンの755本塁打の記録にあと1本と迫ったスターズの剛選手(明らかに王貞治氏がモデル) を誘拐するという暴挙に出ます。そして身代金1億円を奪い取った挙げ句、剛選手を殺してしまおうという計画です。100%逆恨みですね。 剛選手誘拐の一報を聞いた刑事たちは…… 「畜生! なんてことしやがる。明日の中日戦には来々軒の上カツ丼がかかってるってぇのに!」 なんと、剛選手が記録達成するかどうかでカツ丼を賭けていた模様。 結局、最終的には逃走中に警察によって銃で撃たれて殺されてしまう滝田。世にも悲惨なお話です。この話をまとめると、次のようになります。 プロ野球入団→球団による投球フォーム改造→肘を壊す→2軍でくすぶり続けた後、引退→テレビに出てるスター選手に嫉妬→その選手を誘拐→全国に指名手配→警察に銃で撃たれて死亡 プロ野球選手として大成できなかった末路が銃殺という、なんという転落人生……。こんな感じで、日の当たらない野球選手たちの切ない話が盛りだくさんなわけですが、やはりメインとなるのは第2話の野球賭博ネタの話です。タイトルは「ハンディ師竜二」。 主人公はタイトルの通り、ハンディ師の東竜二という男です。野球賭博にはハンディ師と呼ばれる、野球の試合に独自のハンディを設定して賭けを盛り上げるための仕掛け人が存在します。 ハンディ師の竜二は、現在はヤクザですが、元プロ野球選手で関西一の凄腕のハンディ師と呼ばれています。 「竜二、明日のハンディは何点や」 「パイレーツに2.5点やな!(くわっ)」 みたいな感じの会話でハンディが設定されます。たとえばジャイアンツVSタイガースの試合で、絶好調のタイガースが圧倒的大差で勝利すると思われる場合は、ハンディ師はタイガースに2.5のハンディを課します。その場合、実際の試合でタイガースが2点差で勝ったとしても、賭けの世界では負けとなります。 ちなみに、0.5というのは、実際の試合が引き分けに終わった場合でも白黒をはっきりさせるために設定されています。こうやって、ハンディ師のさじ加減で、実際には大差がつきそうな試合でも緊迫感を煽ることができるのです。そのためハンディ師は、元プロ野球選手のような相当プロ野球に詳しい人物がやるのです。 ……って、やたらルールを詳しく書いちゃってますが、よい子のみんなはくれぐれもやらないように! さて、そんな凄腕のハンディ師竜二ですが、客の挑発に乗って「八百長賭博」に手を出してしまいます。実際のプロ野球選手を脅迫するなどして、勝敗に関わるような八百長をさせてしまう行為です。 目をつけたのはパイレーツのエース投手、尾形。実は、竜二とは甲子園時代のライバルでした。尾形投手は、なんと4日連続登板をするなど超人的な活躍をしていたのですが、実はドラッグの「スピード」をやってギンギンになって投げていたのでした。それに気づいた竜二は登板前にスピードを飲む瞬間をカメラで撮影し、それをネタに脅迫したのです。そもそも、試合中にドラッグやってるエースってのも、かなりありえない感じですが……。 しかし、今でも野球を愛しており、高校時代ライバルだった尾形を苦しめたことに良心の呵責を覚えた竜二は、もう八百長はしないと誓うのです。ところが、八百長賭博がめちゃくちゃ儲かることを知った組長たちは、竜二にもっと尾形に八百長をやらせるように命令します。抵抗した竜二は組と仲間割れ……。 腹をドスで刺されながらも球場に駆けつけ、試合中に苦悩している尾形の目の前でネガを焼き捨てる竜二。 「尾形、これであんたは自由の身や! もう何も恐れることはないで!」 「いいんだな、力いっぱい投げていいんだな、東」 野球を愛するひとりの男として、最後の良心が働いたのです。しかしその後、組からの刺客に刺され、力尽きてしまう竜二。 「歓声や…大歓声や、わ、わしは帰って来たんや、この歓声の中に…」 なぜか最後はちょっと泣ける話ふうになっていますけど、八百長賭博を始めたのは竜二本人ですので、どう考えても自業自得です。しかも、自分が歓声の中に帰って来たとか言ってるのも明らかに勘違いですし。 というわけで野球賭博に関わったがために、悲惨な末路を迎えてしまったハンディ師竜二の話でした。繰り返しますが、こんな悲惨な末路が待っていますので、賭博にはくれぐれも手を出さないように! あなたの人生が登録抹消されても知りませんよ!『野球賭博』(谷あく斗、村岡栄一/芳文社)
パクリ度ゼロ! デザイン業界激震の独創的すぎるファッションマンガ『こっとん鉄丸』
東京五輪のエンブレム騒動以来、いろいろと激震が走っているデザイン業界。“この素晴らしいアートも、実はパクリなんじゃないか”と疑心暗鬼になる、悲しい風潮になってきちゃっていますよね。 とりわけファッション・アパレル業界では、そういうパクッたパクられたのトラブルは顕著のようで、どこぞのファストファッションブランドがシャネルをパクッただの、エルメスとそっくりだの、ボタンの数が違うだけだの、そっくりなようだけど素材が違うから別物だのと複雑怪奇な様相を呈しています。 しかし、今回ご紹介する『こっとん鉄丸』では、まったくその心配がありません! どう考えても完全オリジナル、独創的すぎてドン引き! 誰もパクろうとする気すら起こらないレベルに達しているデザインが次から次へと飛び出してきます。パクッて当たり前の今の時代に強烈なメッセージを投げつけてくる、オリジナリティあふれるマンガなのです。 『こっとん鉄丸』は1987年から「週刊少年サンデー」(小学館)で連載された、少年誌としては珍しいファッションデザイナーマンガです。一見、少年マンガでファッションを語られてもあまりニーズがなさそうですが、バトルの要素を巧みに取り入れ、しっかり少年マンガとして成立させています。 主人公の山田鉄丸は、世界一のファッションデザイナーを目指す少年。原宿を舞台に、いろんな有名ショップや悪徳デザイナーに難癖をつけてファッション勝負を挑みます。他人様のファッションに文句をつけて勝負を挑むぐらいですから、主人公の鉄丸は相当なファッションセンスを持っているに違いありません。いったいどんなおしゃれボーイが主人公なのか? 鉄丸のファッションは、スウェットに横並びにプリントされた巨大な2つのチェック柄の胸ポケット。ズボンにも胸ポケットと同様のチェック柄の巨大膝パットがあてがわれ、ズボンの裾はしっかりとソックスの中にインしているという、独創的すぎる服装。こんなの、パリコレでも見たことありません。 オシャレなのかダサいのか判断がつかない(というか、世間一般的な感覚だと超ダサい)謎ファッションに身を包んだ鉄丸が、原宿で大暴れ。道行く原宿の若者のファッションに、いきなりイチャもんをつけ始めます。 鉄丸「ははーん。これからナンパしに行くんだね?」 若者「そんなの、お前の知ったことかよ!」 鉄丸「ぷぷぷっ! 悪いけどそのまんまじゃ、誰も寄ってこないかもね」 初対面なのに失敬すぎるセリフを放ちつつ、いきなり若者のコーディネートをし始める鉄丸。 鉄丸「ほいっ、できあがり!!」 …じゃじゃーん 鉄丸「ジーンズのすそは絶対ロールアップしたほうがいいよ!」 若者の友達「へーっ! なかなかいいじゃん。カッコよくなったぜ!」 若者「そ、そうか…」 鉄丸のドヤ顔で繰り出されるファッションアドバイス。確かに、ファッションのトレンドは時代とともに変わるもの。今まさに2015年、一回りしてロールアップがカッコいい時代が来つつあります。でもそれを踏まえた上でも、やっぱり全体としては実に微妙な感じに仕上がっております。これはパクれない! さらに、このマンガはお役立ちファッションマンガ的な側面があり、鉄丸のファッションアドバイスコーナーがちょいちょい挟まれています。参考のために、いくつかご紹介しましょう。 ・国旗のプリントが今年のトレンド ・麻のジャケットはツータックのチノパンと合わせるのがオシャレ ・素足にスニーカーを履くことを強く推奨 ・いつもの服に「ワッペン」をつけるだけでオシャレ服に などなど、さらに解けにくい靴ひもの通し方、モテるネクタイの結び方、デニムの色の落とし方、靴を買ったらまず防水スプレーをしろ、いま持っている服のボタンを付け替えるだけで途端にオシャレに、等々の明日から使える実践的アドバイスてんこ盛り。実践的なのに、なぜか真似したくないオシャレアドバイスが満載です。 ファッションバトルのハイライトはなんといっても、「ルフォーレ原宿」のショップ出店権をかけて有名ブランド「ヒューマンズ」とジャケット対決をするストーリー。それぞれのブランドのジャケット100着を先に完売したほうが勝ちという単純明快なルールとなっています。 鉄丸と敵対する有名ブランドのパーソ……もといヒューマンズは、ソ連からの直送ルートで格安の麻を手に入れ、普通なら4万円は下らないジャケットを1万5,000円で売るという戦略です。そう、価格のリーズナブルさも勝負のポイントなのです。 一方、鉄丸は麻のコストに頭を悩ませます。そこに妙案が!「コーヒーの麻袋を使えば、タダ同然じゃないか!」えー! 何言ってんの、コイツ? しかも、麻袋にプリントされたコーヒーのロゴをデザインとしてそのまま利用。 「このスタンプって世界各地のものでしょ? 見てるだけでも夢があるじゃない?」 どう考えても間違った方向のポジティブさで、トントン拍子に話が進んでいきます。 そして、最後はボタンの選定です。コーヒーの麻袋にベストマッチなラフなボタンとは……? 「これだぁ、これだよ!」 なんと、コカ・コーラのフタをボタンにする鉄丸。いや、それはさすがにラフすぎでは? あまりにも貧乏くさ…… 「遊び心満点ね!」 ……ものすごいポジティブさで、ついに鉄丸の麻ジャケットが完成しました。コーヒー豆の麻袋のジャケットにコーラのフタのボタン。そして、着心地を重視して虫取り網の網を裏地に使うというナイス工夫! これでなんと1,000円という、GUもビックリの低価格を実現! ヒューマンズの1万5,000円に対し、1,000円。価格差が歴然すぎます。しかも、センスには定評のある鉄丸デザイン。ジャケット勝負は(デザインではなく)圧倒的価格差で、見事鉄丸が勝利したのでした。 そのほかの対決も、鉄丸の先鋭的すぎるデザインにより負け知らず。さすが世界一のファッションデザイナーを目指すだけのことはあります。 そんなわけで、ユニクロもギャップもしまむらもブッ飛ぶ、超ファッショナブルなマンガ『こっとん鉄丸』。みなさんもぜひ本書を読んで、モテるファッションのコツをマスターしてください。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)『こっとん鉄丸』(あおきてつお/小学館)
君は粘土のために死ねるか? 老後に備えて読んでおきたい「陶芸マンガ特集」
サラリーマンが定年退職後にやりがちな趣味といえば、そば打ちと陶芸ですよね。どちらも、ある種の男のロマンを感じさせる職人的世界であり、サラリーマン時代に成し得なかったことにチャレンジしてみたいというその気持ちはわからないでもありません。 しかし、そばはともかく、陶芸なんて地味すぎて絶対マンガのテーマにならないだろうと思っていませんか? 実は、陶芸マンガって、結構あるんです。しかも、どいつもこいつも「粘土」に対する執念がハンパなくて、文字通り粘土に命を懸けている奴らばかりです。今回は老後に備えて読んでおきたい、熱い陶芸マンガを4作品集めてみました。
■『緋が走る』(原作:ジョー指月、作画:あおきてつお) 陶芸マンガの中では、おそらく一番有名な作品。単行本が全15巻出ているだけでなく、『美咲の器―それからの緋が走る』という続編も単行本で9巻出ています。よくぞ、陶芸だけでここまでネタが引っ張れるものだ! と感心せざるを得ません。
陶芸といえば男の世界、という先入観を覆し、主人公に女性を据えたところもポイントです。『夏子の酒』とか『ソムリエール』などと同様の手法ですね。 タイトルの通り、陶芸の最高芸術といわれながらもかつて誰も再現できなかった、朱よりも赤く炎より深い色「緋色」の器を作ることが作品のテーマです。主人公・松本美咲は、「緋色(ひいろ)」の器を作ることに陶芸家生命を懸けた父の遺志を継ぎ、女子大生からいきなり陶芸家にジョブチェンジします。 ただ、女子大生がいきなり陶芸家を目指すという設定なので、前半はひたすら地道に修業。土を運んだり、掘り起こしたり、こねまくったりするシーンが続きます。泥だらけで、画的にはとにかく地味。地味ながらグイグイ引き込まれるのは、父娘二代にわたって命懸けで「緋色」を追い求めるというテーマが壮絶すぎるからにほかなりません。
■『ハルカの陶』(原作:ディスク・ふらい、作画:西崎泰正) こちらも主人公は女子です。OLの小山はるかが、陶芸展で見た備前焼の大皿に感銘を受け、会社を辞めていきなり大皿の作家のもとへ弟子入りしに行くという話です。設定からもわかる通り、『緋が走る』に比べると悲壮感薄めです。というか「陶芸=命懸け」なマンガが多すぎて、こういうライトな設定が逆に斬新という不思議なジャンルになのです。 単行本は3巻出ており、1巻では土を練っているシーンがメイン、2巻ではロクロを回しているシーンがメイン、最終巻となる3巻ではようやっと窯に火が入って……という、これまたひたすら下積みばかりのマンガです。地味なのは陶芸マンガの宿命なので致し方ありません。かわいい女の子が主人公というのが救いです。 ちなみに『緋が走る』は萩焼がテーマとなっており、一見イメージがかぶりそうな2作品ですが、ちゃんと棲み分けされています。
■『流れ陶二郎 けんか窯』(原作:遠崎史朗、作画:ビッグ錠) 職人バトルマンガの大家・ビッグ錠先生と『アストロ球団』の原作者・遠崎史朗先生のコンビが送り出す陶芸マンガ。タイトルからも想像がつく通り、陶芸バトルマンガであり、リアルさを追求していた上記2作品とはブッ飛び度が段違いとなっています。 主人公の流陶二郎は凄腕の「渡り焼き物師」。渡り焼き物師とは日本全国を渡り歩き、数百万円とも数千万円ともいわれる法外な報酬を受け取って焼き物を焼き、日本各地のピンチに陥った窯元を救うという、助っ人陶芸家です。いわば「陶芸版ブラック・ジャック」みたいな感じです。さすがに陶芸バトルマンガだけあって、陶二郎の常軌を逸した行動が、これでもかと言わんばかりに炸裂。 時価数百万円の茶碗をいきなりで手で叩き割り、その破片をポリポリと食べ始めます。「釉薬は柞灰(いすばい)ですね…」などと、破片を食べることで土や塗料などの陶器の成分をズバリ当ててしまう陶二郎。そこまでしなくても、人に聞けばいいだけのことだと思うのですが、陶芸バトルでは、まずは周りの度肝を抜くことが大切なのです。 萩焼編では陶芸バトルで勝つために、燃えさかる窯の中に直接飛び込んで釉薬を吹き付けるという新製法に挑みます。ちなみに窯は、最高で1400度になるらしいんですが、そんなところに飛び込んで大丈夫なんでしょうか? 答えはノー。当然、全身黒焦げになります。あらかじめ用意をしていた水をかけまくって一命をとりとめますが、文字通り命懸けの陶芸バトル。 瀬戸焼編ではなんと、処女の初潮の血を土に練り込んだという幻の乙女茶碗が登場。芸術のためならばタブーも侵すという、狂気な側面が垣間見られますね。この幻の乙女茶碗を処女の初潮の血を使わずになんとか現代に蘇らせようとする陶二郎と、コンピューター解析で処女の初潮の血と同じ成分を作り、再現しようとする科学者とのバトルになります。 丹波焼編では、エジプトのピラミッドの内部で発見された壺がどうも丹波焼の壺にそっくりなので、それを証明したいというワケのわからない依頼により、ピラミッドの壺とそっくり同じ物を丹波焼で作らされるハメになる陶二郎。ここでは、ライバルの渡り焼き物師「窯神」が登場。 なんとこの話では、渡り焼き物師同士の裏窯勝負に恐ろしい掟があることが発覚。敗れた者は二度と粘土練りができないよう、己の指を打ち砕かなければならないらしいのです。恐ろしい掟ですね。何が恐ろしいって、どう考えても掟が後付けくさいところです。
■『陶炎』(原作:原田大輝、作画:はしもとみつお) こちらも、男が主人公の陶芸マンガです。主人公・浜田陶太は、表向きは「自由窯」という窯の主人で、陶芸教室なんかも開催しちゃっているほのぼの系陶芸家ですが、裏の顔は数千万円の報酬で陶芸にまつわるあらゆる揉め事を解決する「裏陶工師」なのです。渡り焼き物師といい裏陶工師といい、とにかく一癖も二癖もある裏稼業っぽい陶芸家が出てくるのがメンズ陶芸マンガの特徴です。 こちらの作品でも、800度の窯の中に飛び込んで全身黒焦げになってみたり、時価数億円の器を叩き割ったり、贋作を作って本物とすり替えたり等々、おおよそ陶芸マンガに期待される陶芸アクションがちりばめられた作品です。さらに焼き物を作って殺人事件を解決してみたりと、陶芸家のスキルを超えるハイスペックぶりを発揮。単行本全2巻ですが、なかなか見応えのある作品となっています。 *** というわけで、とにかくストイック、とにかく粘土ラブな陶芸マンガの世界をご紹介しました。これらの作品を読んじゃうと、老後にのんびり陶芸でもやろうかな……なんて甘っちょろい考えは吹っ飛んでしまうかもしれません。どうせ陶芸を始めるなら、800度の窯に飛び込むぐらいの覚悟で臨みたいものです。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)
クドい! めんどくさい! 暑苦しい! この夏オススメの「こだわる男マンガ」4選
例年にも増して猛暑日が続く2015年夏ですが、エコ冷房、クールビズ全然意味なし! マンガ読みのみなさんにおかれましては、エアコンをガンガン効かせた部屋に引きこもるのが、この夏を快適に過ごす最も正しいやり方であることは言うまでもありません。 しかし、古来より暑い夏こそ、あえて熱いお茶を飲んだほうが暑さが引くなんていわれていますね。実はマンガもそれと同じ。暑い時ほど読むマンガも暑苦しくてクドいやつのほうが、暑気払いに向いているんです。 そこで今回は、この夏にぜひ読んでほしい、クドくて、暑苦しくて、めんどくさい、マンガのジャンル「こだわる男マンガ」をご紹介したいと思います。そんなマンガのジャンル聞いたことないと思う方も多いかもしれません。それはそうでしょう。ついさっき僕が作りましたから。でも、昨今「やたらとこだわる男が登場するマンガ」がウケていることは事実なのです。 例えば、ドラマ化された『孤独のグルメ』や『食の軍師』、あるいは最近単行本化されてスマッシュヒットしている『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』、これらのマンガはみんな「こだわる男」がテーマです。どうやら今の世の中、こだわる男たちが求められていることは間違いなさそうです。 というわけで、この夏にチャレンジしてほしいおすすめ「こだわる男マンガ」を4作品ご紹介しましょう。
■『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』(著:清野とおる/ワイドKC モーニング) 『東京都北区赤羽』の清野とおる先生が講談社の「モーニング・ツー」で現在連載中のマンガが『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』です。文字通り、あることにこだわっている「おこだわり」な人たちが毎回紹介されるのですが、その「おこだわり」がどれも一癖あるヤバいやつばかりです。少しだけ紹介しておきますと、 ・ポテトサラダを割り箸でねぶるように食べ続ける男 ・マンションのベランダで生活することにこだわる男 ・さけるチーズをいかに極細に裂くかにこだわる男 ・喫茶店で、あえて「アイスミルク」を頼む男 などなど……客観的に見て、ほんっとにどうでもいいこだわりばかり。でも、それがいい。こだわりがしょーもなければしょーもないほど、内容が反比例して面白くなっているのです。しかもなぜか、この「おこだわり」を自分でも真似してみたくなるのです。僕もこのマンガを読んで、実際にシャノアールでアイスミルクを頼みましたからね。これは、北区赤羽という土地を一大ギャグタウンに変えてしまった「清野とおるマジック」といえるかもしれません。
■『ネイチャージモン』(著:刃森尊、原案:寺門ジモン/ヤンマガKCスペシャル) ご存じ、ダチョウ倶楽部の寺門ジモンこと「ネイチャージモン」の奇行っぷりを大胆にフィーチャリングしたルポマンガです。本やテレビなどで、肉へのこだわりがハンパでないことはすでに有名ですが、マンガで読むと、あらためてそのこだわりが尋常ではないというのがわかります。ちなみに単行本表紙の暑苦しさは、「こだわり男」マンガの中でも最凶レベルとなっております。 例えば、ネイチャージモンが東京一の焼き肉屋「スタミナ苑」で焼き肉を食べるために、以下のような儀式をします。 1.事前に30分以上筋トレをする。 2.徒歩で3時間半歩いて店に行く。 3.開店の2時間前から店の前で待つ。 4.待っている際は背中でオーラを出し、店のマスターにプレッシャーを掛ける。 焼き肉食べるだけなのに、すごくウザい! それも、ケタ外れのウザさです。そのほかにも…… ・牛肉が好きすぎて、家畜商の免許を取って松阪牛のセリに参加する。 ・世界最古のステーキを求めてイタリアに行く。 ・世界一のステーキを食べに、日帰りでニューヨークに行く。 などなど、規格外すぎる肉へのこだわりが満載。 また、肉以外にもオオクワガタへのこだわりもすごいです。というかこのマンガ、ほぼ肉とクワガタのことしか描いていません。それなのに単行本9巻も出ているんですから、いろいろ狂っていますよね。
■『ダンドリくん』(著:泉昌之) 『ダンドリくん』は『食の軍師』と同じ、泉昌之先生(泉晴紀先生と久住昌之先生の合作名)の作品です。基本的に泉昌之先生の作品はすべて、画がクドくて説明がウザいギャグマンガばかりなのですが、この『ダンドリくん』はそんな中でもとりわけウザく、そんなウザさを嗜むために生まれてきたようなマンガといえます。 主人公のダンドリくんは、日常生活におけるダンドリに異常にこだわり、いかに日々を合理的に過ごすかばかりを考えている男です。要するに、すごくめんどくさいヤツなのです。 例えば、朝起きて顔を洗って歯を磨く、そして朝食へという早朝の一連の行為も、ダンドリくんにかかれば、まったく逆の順番になります。飯を食って、歯を磨いて、顔を洗う。そうすれば、最後に顔を拭くだけで全部終了。ムダがありません。 さらに、トイレのドアを開けっぱなしにしてテレビを見ることで、朝の情報収集と用便が同時にできるという合理的アイデアも紹介してくれます。確かに合理的だけど、人としてはどうなんでしょうか……。 このように、役に立つような立たないような、大きなお世話のようなダンドリ流ライフハックが次々と紹介されていきます。 ファッションについても、一家言あります。ダンドリくんの推奨する究極ファッションアイテムはズバリ、ベスト(チョッキ)です! ベストだと冬の暑い日にも脱がなくて大丈夫、夏の寒い日は着ていて大助かり。つまり、冬も夏もいちいち脱ぎ着せずに着っぱなしでいい。そんなハイブリッドさがベストの素晴らしさです。 またベストだと、着る時セーターのように、下のシャツがまくれ上がらないように袖を押さえておいたりするような必要もありません。注射打つ時もいちいち脱がなくてもいいし……ってダンドリくんのベスト推しがウザすぎる!! こういった比較的どうでもよいことを、いちいちドヤ顔で解説してくるマンガなのですが、ダンドリにこだわりすぎるあまり、かえって非効率になっているダンドリくんを嘲笑ってあげるのが、このマンガの正しい楽しみ方です。
■『それはエノキダ!』(著:須賀原洋行/モーニングワイドコミックス) 「こだわる男マンガ」の中でも、あらゆるジャンルに異常なこだわりを見せる、オールマイティにウザいマンガが『それはエノキダ!』という作品。 主人公は、物事がキッチリしていないと我慢できない神経質な男「榎田君」。物事がキッチリしていると「キモチE」、キッチリしてないと「キモチ悪い」というのが口癖です。 例えば、エレベーターでは「閉」ボタンを押して出て行く。一見よくある光景ですが、榎田君の場合、あらゆるエレベーターの機種でスムーズに「閉」が押せるように日頃から訓練を積んでおり、ボタンがドアの右にあろうが左にあろうが目をつむったまま「閉」が押せます。 異常に物持ちがいいのも特徴。何かについていた輪ゴム、ケーブルなどを束ねている針金ビニール、クリーニングに出すとついてくるハンガー、刺し身についているワサビや納豆についているカラシなどを生まれてこの方、ずっと捨てずに取ってあり、タンスは4段とも輪ゴムでいっぱい、冷蔵庫の中はワサビやら魚の容器のしょう油だらけ。断捨離の思想とは対極にいる男です。 オーディオへのこだわりも尋常ではありません。 ・ケヤキの無垢材やギリシャ産ラムスキンを使った、36万円最高級ヘッドホンを購入。 ・アンプやスピーカーの振動を抑えるための重しとして、鉛の板80kg・6万8,000円分を購入。 ・銅線の純度が99.99997%、1mあたり10万円のスピーカーケーブルを使用。 など、こだわりのためなら金に糸目をつけない恐るべきピュアオーディオぶりを発揮。 ト○タのハイブリッドカー「プリ○ス」を購入した時の話もかなりヤバいです。 ・徹底的に上り坂を避け、常に下り坂を走り続けるため、目的地にたどり着けない。 ・真夏でもエアコンをつけず、後部座席に巨大な氷を置いて走行。 ・燃費にいい高速道路を使うため、インターチェンジの近くに家を引っ越す。 などなど、究極の燃費走行を極めんとする、クレイジーなハイブリッドカーマニアたちが登場します。明らかにこだわっている方向性がおかしいです。 こんな感じのマンガなので、ページ内が説明、ウンチクだらけで1ページあたりの文字数がものすごく多くて、読んでいるとクラクラしてくる上級者向けの「こだわる男マンガ」です。 *** というわけで、クドい、めんどくさい、暑苦しい、でもそこがいい、この夏オススメの「こだわる男マンガ」をご紹介してみましたが、いかがだったでしょうか? どのマンガもあきれるほどにクドく、実生活で役に立たない知識であふれています。なんの対策もせずにいきなり読むと、暑苦しくて本当に熱中症になってしまう可能性もありますので、よく水分をとって、涼しいところで読むことをオススメします。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)
かわいすぎて悶絶! おっさんたちをキュンキュンさせる「もちる女子」って?
皆さんは、「いくえみ男子」という言葉をご存じでしょうか? マンガ家・いくえみ綾先生の作品に出てくる男子キャラクターたちのことで、いわゆるイケメンとは違う、塩顔で痩せ形、唇は薄め、オシャレすぎず飾りすぎず等身大。だけど、身近にいそうでいない。草食系なようで、実は肉食なロールキャベツ男子……ってどんな男子なのかサッパリ想像がつきませんね。とにかく、いくえみ綾先生の描く男子は女子を胸キュンさせてやまないのです。いくえみ男子だけを特集した『いくえみ男子スタイルBOOK』(集英社)なんてムック本まで出ているほど、もはや確固たるブランドを確立しているといえます。 少女マンガ界には「いくえみ男子」がいるのに、少年マンガ・青年マンガの世界には「○○女子」は存在しないのでしょうか? 残念ながら「いくえみ男子」ほど確固たるブランドを確立したキーワードはなさそうです。そんな中で今、新たに提唱したい「○○女子」があります。それは、星里もちる先生の作品に出てくる女子キャラクター、すなわち「もちる女子」であります。 星里先生のマンガに出てくる女子キャラクターは、いわゆる萌えマンガのかわいさとは系統が異なる、万人に愛されるかわいさを持っています。そんなかわいい女子たちが、冴えない主人公に惚れるというのが星里マンガのお決まりのパターン。しかも二股、三股あり、ハーレム設定ありと、男のロマンがトゥーマッチに盛り込まれています。僕たちがこの冴えない主人公に自分を投影させてしまった瞬間、胸のキュンキュンが止まらない“もちるワールド”が始まってしまうのです。 もちる女子のタイプは、多岐にわたります。癒やし系・ドジッ娘・不思議ちゃん・妹系・お姉さん系・ツンデレ系、ロングヘアーにショートヘアー、幼なじみから会社の後輩まで、我々ミドルエイジ男子が惚れがちな、あらゆる女子タイプが登場します。しかも、そのほぼすべてのキャラクターがかわいく魅力的。今回は、そんな「もちる女子」登場作品の中から、特にキュンキュンできるおすすめ作品をご紹介します。
■『りびんぐゲーム』 星里先生の代表作といえば、『りびんぐゲーム』を思い浮かべる人も多いでしょう。主人公は、中小企業ナミフクDMサービスのちょっと冴えない若手社員、不破雷蔵(ふわ・らいぞう)。 雷蔵の職場、ナミフクDMサービスはオフィス移転に失敗し、急遽主人公雷蔵のアパートの部屋を無理やりオフィスにすることに。雷蔵は、自分の生活空間を会社に占領されてしまいます。 この時点ですでにありえない展開なのですが、さらに中卒15歳の女の子、氷山一角(ひやま・いずみ)が雷蔵の後輩として入社。このいずみこそ、同僚であり、後輩であり、妹的存在でもあり、恋人でもある、我々男子の理想を詰め込んだ「もちる女子」なのです。 いずみは、15歳のため自分一人ではアパートを借りることもできず、やむを得ず会社……つまり、雷蔵の家に住み込むことになります。冴えないサラリーマンが自分に好意を持つ15歳の女の子と一つ屋根の下で同居、しかも顔はあどけないくせに大人顔負けのエッチなカラダを装備しているという……なんという淫行スレスレの展開でしょうか。 2人きりのシーンでは、「先輩、あたしのこと、嫌いですか? それとも……なんとも思ってませんか?」などの年上殺しのセリフが次々飛び出す、うらやまけしからん展開がひたすら続きます。もし自分が雷蔵の立場だったら……手を出さずに我慢できるのか? 16歳になったら、手を出してもいいのか? 等々、男子読者の妄想は無限に広がっていくのです。自分、40代ですけど、胸キュンいいすか?
■『夢かもしんない』 こちらは、星里版『ゴースト』とでも言うべきラブコメ作品です。主人公、加勢晴夫は妻子持ちですが、ワーカホリック気味で家族を顧みないため、夫婦仲は冷め始めています。 日々の生活にお疲れな加勢の前に突然現れた幽霊の女の子、夢野すみれ。すみれはなぜか加勢の前にだけ現れ、仕事も家庭もうまく行っていない加勢を「ハッピーにしてあげる」と明るく励ましてくれます。そんなすみれの正体は、若くして亡くなった人気アイドルだったのでした。 さらに、加勢は会社の後輩、佐藤ひろみ(癒やし系)に慕われ、「今日は一人に……しないで下さい……」なんて先輩殺しのセリフを繰り出された結果、不倫関係になってしまいます。でも、不倫のシーンすらも爽やかで全然ドロドロしてないあたりが、星里先生の手腕を感じます。 果たして、このまま加勢の家庭は壊れてしまうのか? そして、すみれが加勢の前に現れた目的とは!? 妻と、娘と、会社の後輩と、アイドルの幽霊。つまり、3人+1ゴーストの女子たちに囲まれて、いろいろヤキモキしちゃうラブコメです。
■『オムライス』 一つ屋根の下、美女に囲まれて生活したい、そんな男のロマンであるハーレム状態をついに実現してしまったマンガ、それがこの『オムライス』です。 主人公・今井光は、ワケありのバツイチ無職青年。そして、登場する女子たちは今井珠子(歯科医)、羽子(アーティスト系)、葉子(女子大生)、緑(不思議ちゃん)という美人四姉妹。 無職で生活に困窮していた光は、ひょんなことから同じ今井姓というだけの理由で、今井四姉妹の住む家に居候することになります。マンガとはいえ、ここまで豪快かつ無理やりなハーレム設定は、なかなかお目にかかれません。 光は、今井四姉妹の四女、緑(不思議ちゃん系)と恋仲になるのですが、途中から光の元嫁、稲森はるなが光のことが忘れられず押しかけ、元女房として今井家に居候するようになり、緑とはるなの奇妙な三角関係が勃発。 結果として、女子5人の中に男1人というハーレム状態、それって、どう考えてもエロゲの設定だろといわんばかりのカオスさで、これまたうらやまけしからんのですが、一つ屋根の下に男女が入り乱れる異常な雑居状態でもごく普通にラブコメを展開してしまうのが星里作品の特徴であり、「住宅ラブコメ」の伝道師といわれるゆえんでもあります。
■『ルナハイツ』 『オムライス』で実現した男の夢、ハーレム状態をさらにパワーアップさせたのが、この『ルナハイツ』です。 主人公は、婚約者・友美によって一方的に婚約破棄された男、南條隼人。南條は新婚生活を送るために購入した一軒家を、ローンの支払いのために女子寮として会社に提供することになります。しかし、家主である南條は男一人、その女子寮(ルナハイツ)に同居することになるのです。 今風にいえば、シェアハウスってことなんでしょうけど、やっぱり女子の中に男一人というのが普通のシェアハウスとは根本的に違うところです。ハーレムシェアハウスです。いやー、ありえない。でもうらやましい…・・・。なぜこんな夢設定を毎回考えつくんでしょうか。 同居する女子寮メンバーは大月窓明(おおつき・まどり)、日高りん、茅ヶ崎裕子、土屋重子の4人。この中で、ヒロインのまどり(サバサバ系)と、りん(ロリ系)が南條をめぐって三角関係に。さらに南條を振った元婚約者・友美が浮気相手との子を宿した妊婦姿で登場。普通に考えると、どのツラ下げて……って感じなのですが、なんと友美も同居してしまいます。ここまでいくと、カオスすぎて胸キュンどころではありません。 *** そんな感じで、男のロマンをこれでもかといわんばかりに過積載したモテ設定。読後感のいい、ほのぼのストーリー。そして、なんといっても、ほぼ全員がかわいい「もちる女子」……。星里先生の作品は、今宵もおじさんをキュンキュンさせてやまないのです。おじさんおじさん言ってますが、青年誌の掲載作品が多いというだけで、おじさん以外でももちろん楽しめますよ。 (文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん<http://ablackleaf.com/>)





















