衝撃! 高麗ホテルでショートケーキを注文したら……

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 今でこそ、北朝鮮都市部のレストランでは先進国に劣らないレベルの食事ができるようになりましたが、10年以上前はメニュー上の品ぞろえと実情は大きく異なっていました。  2001年ごろに訪朝した時のことです。平壌市内の日本料理店でトンカツを注文したものの、「味」がまったくしない。海外で食べる和食といえば、どこもこんなものですが、せめて口直しにと、デザートを食べに行くことにしました。  向かったのは、宿泊中の高麗ホテル最上階のレストラン。メニューには、ドリンクをはじめ、チヂミなどの軽食からステーキまである中、我々4人中3人は無難にアイスクリームを選びましたが、残る1人は「ショートケーキ」を注文しました。まだまだ北の食糧事情は十分とはいえなかった当時、ケーキといえど実物があるのか疑わしい面もありましたが、本人は「どうしてもケーキが食べたい」と譲りませんでした。  ちなみに、北のアイスは20年以上前から、訪朝者の間で「北はアイスと冷麺だけはうまい」といわれるほどの名物。人気商品だけに作り置きしてあるのか、アイスはものの数分で出てきましたが、ケーキだけはいつまでたっても来ない。従業員を呼び止め、「まだですか?」と聞いても、無愛想にあしらわれるばかり。それから半刻後、ついぞ従業員が白い布をかけた銀盆を掲げて、早足で私たちのテーブルへ向かってきました。そのただならぬ様子に、一体どんなケーキが来るのかと見守っていると……。 従業員「チャーヨ!(ほらよ)」  従業員が銀盆から白布を取り、テーブルにスパーンと勢いよく置いたものはこちら。
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 我々が高麗ホテル1階の売店で大量に買い込んでは、部屋で夜な夜なかじっていた「ヤンヤンつけボー」(明治製菓・日本円で約100円)でした。  いろいろと言いたいところをあえてのみ込み、従業員にやんわりと問いただしました。 我々「すいません、これってケーキですか?」 従業員「ケーキですが?」 我々「あ、はい、わかりました」  それ以上追及せず、封を開け、無表情でヤンヤンを食べ始める友人。まさか本当にケーキを注文する客がいるとは思わず、1階の売店に出向いてそれらしきものを探した結果、ヤンヤンを調達したのでしょうか。普通に「品切れです」と言えばいいものを……。さらに、お会計では日本円で約300円も取られ、二重の衝撃を受けたのでした。ちなみに、アイスクリームは50円でした。    しかし、個人的には北朝鮮のこうした斜め上、いや、がむしゃらなホスピタリティは嫌いではありません。  最近、初めて訪朝するという人が周りに増えて、いろいろと相談を受けるのですが、北の観光事業従事者の仕事熱心さを語ることで、その不安を払拭してあげているつもりです。  今回はヨタ話になってしまいましたが、現在は品数も豊富で、日本食から洋食までまんべんなく楽しめるようになったようです。 ●やす・やどろく ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

B型が一番人気!? 医者も認める、北朝鮮版「血液型性格診断」

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さすがに今回、血液型に関連する画像を用意するのは困難でした。その代わり、血の滴るような北朝鮮のレバ刺し画像でご勘弁ください。やがてこれが血肉となり……(苦しい)。
 こんにちは。突然ですが、商談や合コンなどで間が持たなくなったとき、大活躍するのが「血液型占い」という、愚にもつかない問答ではないでしょうか。  A型と言ったら「あー、確かにそう見えるぅ!」、O型と言っても「あー、確かにそんな感じぃ」……って、あれ? もはや一緒じゃね? と各自が心の中でツッコミを入れつつ行う、あの至極日本的コミュニケーション作法です。  私は毎度、AB型と勝手に決めつけられるのですが、「違う」と言うと「うそだ! ゼッッッタイうそ!」と血相を変えて糾弾されるのが常です。朝鮮大学校時代、飲み会で泥酔した教授からも「お前は絶対にAB型だ! そうに決まってる!」と朝まで責め立てられたのがトラウマになっています。試しにAB型をググッてみますと「変人」「二重人格」「理解され難い」と散々な言われようでした。ちなみに私はO型です。  ということで、今回は北朝鮮版「血液型性格診断」の話です。  この存在を知ったきっかけは、本連載第3回(http://www.cyzo.com/2014/11/post_19508.html)で私が伏せった際、付き添ってくれていた看護師と女性案内員の雑談でした。2人のそばで眠るまでもなく目を閉じ、じっとしていると「あんたはB型だからね」という言葉が耳に入ったのです。 「今、B型とおっしゃいましたよね?」 「そうよ。血液型の話よ」 「朝鮮の人も血液型を気にするんですか?」 「気にするわよ」  北朝鮮でも血液型別性格診断があるというのも驚きでしたが、日本では何かと「自己中」「ルーズ」というイメージで忌み嫌われるB型が女性案内員の説明によると、北朝鮮では一番人気だというのです。一方、最も不人気なのはA型だとか。  私は彼女の言葉を検証すべく、その後、北朝鮮人民と顔を合わせるたび、不審がられつつも「何型ですか?」とコッソリ聞いて回りましたが、やはりB型人気は不動。10人ほどに聞いた結果、以下のコメントが得られたのでした。 B型 「話が面白い」 「楽天的で朗らか」 「機転が利く」 「応用力がある」  特に「話の面白さ」には複数の人が重点を置いていました。  一方、A型については 「話がつまらない」 「暗い」 「仕事しかできない」 「頭が固い」 と、ボロクソ。O型については「鷹揚」、AB型は「そもそも、会ったことがない」でした。  この血液型性格診断、在日の帰国者が広めたわけでもなく、自然発生的なものだそうです。女性案内員いわく、「医師さえも認めている」とのこと。各血液型の分析は日本と差がないにもかかわらず、評価が正反対になる点に、大げさではありますが、今後の日朝関係の勘所が隠されているような気がしてなりません。  ちなみに韓国ではどうか?  韓国の有名リサーチ会社「ギャラップ」が2012年に行った調査結果によると、血液型別に性格の違いがあると信じる人々(19歳以上の男女1501名中994名)の間で最も人気があるのはO型(46.5%)。その理由は「性格が円満」「活発」であること。B型(13.4%)は「気前がいい」が主な理由でした。さらに「自分自身と最も相性のいい血液型」もO型がトップ(46.5%)、B型を選んだ人はA型(19.9%)に次ぐ12.8%でした。  B型を選んだ割合が少ないですが、O型とは相性がいいと言われるだけに、お次は南北両首脳の血液型が気になります。  韓国の調査機関と、私ごときの野良調査の結果を比べるべくもありませんが、同一民族内で好みの血液型が分かれるのは興味深い事実ですね。もしくは南北合同で、きちんと調査を行ったら意外と合致するのかもしれません。  その場合、私のようなAB型扱いされるO型でも認めてくれるのかという点が不安要素ではありますが……。 ●やす・やどろく ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

「フクシマ怖い!」北朝鮮人も放射能にビビる!?

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オバちゃんたちの弁当。意外と、すごくおいしかったです
 こんにちは。先月、東日本大震災から4年を迎えましたが、地震については北朝鮮でも情報は伝わっていまして、その後の訪朝ではちらほらそんな話も出ました。とはいえ、朝鮮半島においては地震が日常的ではないため、原発事故などの副次的災害にまで話が及ぶことはまずありませんでした。    むしろ韓国などは、李明博前大統領が「日本を反面教師に」と言及し、2030年までに国内に40基建設を提示、中東にも積極的に輸出するなど、さらに強気で原発推進を続けています。取材で韓国の原発をいくつか訪れたことがあるのですが、某原発の担当者が「我が国は地震も津波もなく、何より日本とは炉型が違うため安全である」と強調していたのが思い出されます。  なにせ<原発が安全であること>を示す児童向けの啓蒙漫画に、 「うわー、地震だ! ふう……原発の下まで逃げてきたから、もう安心だ」 という日本では到底考えられない場面があり、そのイケイケぶりを見て取れます。  とはいえ、韓国でも原発ムラ問題、原発関係の汚職や、IAEA(国際原子力機関)基準では事故レベルの不具合が多発したにもかかわらず隠蔽されていたことが発覚するなど、天災よりも「人災」が事故を起こしかねない状態といえます。韓国国民も特に福島原発事故以来、原発には敏感になっており、北朝鮮の人々も例外ではないようです。  平壌から列車で中国の丹東まで行った時の話です。  丹東までは、およそ6時間。車内では暇を持て余し、退屈そうにしている人民が大半の中、隣の部屋から歓声が響きました。 「ウヒョッーーーー!」 「ガッハッハッハ」  のぞき込むと、50~60代とおぼしき北朝鮮のオバちゃんたちが、ずいぶんと楽しそうにトランプ遊びに熱中していたのでした。せっかくの機会なので、同行者らに「あそこと交流しないか」と提案すると、なんと一瞬にして断られてしまい、仕方なく1人で乗り込むことに。私はビールと朝鮮人民の酒の友(?)・乾燥タラを携え、若干の不安を覚えながらも声をかけました。もし拒絶されたら、素直に引き返すつもりでした。
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いざ出陣!
私「ア、ア、アニョハセヨっす」  オバちゃんたちの手が止まり、視線が一斉に集中。あ、やっぱり変だったかな……と後悔すると、意外にも気さくな反応が返ってきました。 「おおー、こっち座んなさい」  オバちゃんたちはだいぶ旅慣れており、素性は語りませんでしたが、事情通によると「中国へ向かう列車内には、中国の朝鮮レストランの労働者なども多い」とのこと。トランプ遊びで一喜一憂するリアクション、いきなりキムチを取り出す姿、会話のノリ、声が無駄にデカい点などが韓国のオバちゃんのそれとまったく同じで、さすが同じ民族であると実感しました。というより、国籍にかかわらず、オバちゃんはもはやオバちゃんという固有種なのかもしれません。  弁当をおすそ分けしてもらったり、ルールのよくわからないトランプ遊びに混ぜてもらい、「弱いね」などとからかわれていると、1人のオバちゃんが問いかけてきました。 「ところであんた、日本から来たんだったら、フクシマは今どうなっているんだい?」 すると、ほかのオバちゃんたちも次々とたたみかけてきました。 「朝鮮にも放射能が来ているんじゃないのかい? 怖いよ」 「日本人は、それで病気にならなかったのかい?」  私は原発に詳しいわけではありませんが、彼女たちを安心させるため、このように軽口を叩きました。 「大丈夫。フクシマは太平洋側です。放射能は太平洋に向かって流れており、朝鮮には来ていません。むしろアメリカに向かって飛んでいるのです、ご安心ください!」 「な~んだ。そうなの、ヒャッヒャッヒャ」  しかし、間髪入れず 「でも南朝鮮の原発もガタがきていて、細かい事故が多発しているみたいです。あまり報道されませんが」 と話すと、水を打ったように静まり返りました。 「……」  地続きである韓国原発についてはさすがにシャレにならないのか、無表情で絶句するオバちゃんたち。乗車疲れか、私の話のせいなのか、オバちゃんたちの口数は徐々に減り、やがて1人、2人と居眠りを始めました。  朝鮮もさんざん核実験や宇宙開発を行っているとはいえ、やはり身近に放射能が迫るのは怖いようですね。そりゃそうだろ……というお話でした。 ●やす・やどろく ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

意外にシンプルでフランク!? ゴチャゴチャ悩んだら……「北朝鮮の人に人生相談」のススメ

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 こんにちは。今回は「北朝鮮の人に人生相談をしたらどうなるか」という話をしたいと思います。同じ相談内容であっても、相談する人のお国柄によっては、まったく違う解釈による答えが返ってきますよね。同じ国籍ですら千差万別なのですから、当然ですね。では、それが北朝鮮の人だった場合、どうなるのか――。 【相談内容1】 「好きな人ができません」 回答 「好きな人ができないのは、情熱的に生きていないからだと思う。熱く生きていれば、いずれは現れると思う」(20代女性) 【相談内容2】 Q「お金が貯まりません」 A「なぜだ? 何に使っているのだ」 Q「いろいろと……。まず、携帯電話料金がかかります。その他保険、税金、家賃、交通費、交際費、通信費、光熱費、親への仕送りなどもろもろ」 A「よくわからんが、それで何が不満なのだ?」 Q「先ほどのは必要経費ですが、そのほかにいろいろとかかるんです。例えば月に500円払うと情報サイトの記事が読み放題だったり、ネットで漫画が読めるのでその基本料金、あと月額3,000円程度でビデオが見放題だったりするサービスがあるんです。とかいって、まあほとんど利用する機会がないんですけどね。あと突然の交際費だったり、服飾費、書籍代とか。あっ、あと“今月は○万円残ってるから、旅行申し込んだりセミナー受けちゃおっかな”とか」 A「その、基本料金なんちゃらというのがよくわからない。サービス内容もなんだかよく理解できないが、そこまで必要なのか? さらに、ほとんど使っていないのであれば無駄ではないか。交際費っていうのは、飲み代か? セミナーというのは、何を習うのか知らないが、それをしないと生活が苦しくなるのか? 本当は自分でわかっているじゃないか。金の使い方は思想の反映だ。お前には無駄な思想があるのだ。日常が、不必要な概念で埋め尽くされているのだ。本当に必要なものには、逆にめったに金を使うことはないのだ。それは金で解決できないからだ」(40代男性) 【相談内容3】 「付き合っている人がいたのですが、別れました」 回答 「もともと合っていなかったということだ。結婚までいかずに別れたということは、付き合ったうちに入らない」(50代男性) 【相談内容4】 「北朝鮮に来てから体の調子がずっと悪いです」 回答 「普段からちゃんと食わないからだ。我が国の女を見ろ。よく見たら、みんな足腰がゴツくて小太りだろ。お前は痩せすぎだ」(40代男性)  お次は、少し長くなりますが、個人的な話です。私にはどうしても行きたい国がありましたが、北朝鮮パスポートでは通常入国ができませんでした。入国には難民申請並みに大量の身元証明書類が必要で、その要件にも巧妙なトラップがかかっており、そろえるのは事実上不可能に近いというものでした。    それでも挑戦するのであれば、試算で10万円以上の費用が必要と出たのですが、反骨精神に火がついた私は、要求された通りすべての書類を気合でそろえました。ちなみに、精神を軽く病むのでオススメしません。ですが、結果は2回にわたりNO。その上「二度とビザを申請するな」とまで言われてしまったのでした……。  通常はそこで心が折れるところですが、そこまで拒絶されると、逆に泳いででも入国してやりたい気持ちが暴走し、勝利条件を「何がなんでも入国」に設定した私はうわ言のように「入国、入国、さっさと入国……」とつぶやくようになっていました。ここらへんはウソですけど。  そこで登場した選択肢が、日本国籍の取得または韓国パスポートの取得だったわけです。日本国籍取得はさておき、私の場合は本籍地が朝鮮半島の最北であり、その上、韓国側の親族とは縁がなく、当時は渡航したこともなかったので抵抗感を禁じ得ませんでした。それで長期間かけて日本人、同胞問わず、たくさんの人に相談しました。 「世界には、もっとひどい立場の難民がいる」 「そんなこと言ったら、三都主(アレサンドロ)やハーフナー・マイクはどうなる」 「サウスだろうがノースだろうが、外国から見たら区別がつかない」 「人生は短い。自己実現のために国籍を変えるのは罪ではない。ましてや、北か南かだけの差だというのに」  結局、決定打になったのは、「分断されているうちはどっちも正式な国とは言えないから、どっちでもよい」という身内の言葉でした。  とはいえ、心情的には簡単に割り切れるものでもなく、その後もゴチャゴチャと悩んでいました。ほかにも某国入国管理局とのやりとりなど、書き切れないエピソードがありますが、今回の趣旨とは無関係なので割愛します。  そこで訪朝時、バーで一緒に飲んでいた案内員に、その一部始終を話しました。北朝鮮の人は私のようなケースにどう反応するのか試してみたい気持ちと、話すことでなんらかの理解を得たいという気持ちが半々でした。すると早速、同席していた在日コリアンのテレビ局員(※生まれながらの韓国籍者)が「お前、そんなことで変えるなんて、どうかしてるな。この裏切り者!」という趣旨のことを言ってきましたが、案内員の一声で話は終了しました。 案内員「えっ、別にいいじゃん。そういうのは」  まさかの一言スルー。人生相談というより、私の単なるこだわりの吐露でしたが、北朝鮮当局の人にそう言われたおかげで心が少し軽くなったような気がしたのは確かです。韓国籍を奨励しているわけではないでしょうが、私の語りぶりが面倒くさくて早く終わらせたかったのかもしれません。  「仕事上、そうせざるを得ない人がいるのも理解してる」「気持ちが大事だから」とも言っていましたが、私が長い間、夜も眠れないほど悩んだのは一体なんだったのかと、少し拍子抜けしました……。ほかの案内員も同様のことを言っていたので、次回機会があれば、彼らの国家と国籍観について深く聞いてみたいと思います。  以上、北朝鮮版人生相談でした。もっと込み入った相談がしたいという方は、次回訪朝できた場合に聞いてみたいと思いますので、ご連絡ください。怒られない範囲で聞いてきます。人選はランダムになります。 ●やす・やどろく ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

モランボン楽団だけじゃない! 北朝鮮のイケメン芸能人予備軍を直撃

 こんにちは。  北朝鮮の芸能人といえば、とかく話題に上るのがモランボン楽団の姉ちゃんたちですが、男性若手スターの存在も忘れてはなりません。  特に男性芸能人は「若ければいいってもんじゃない」(平壌市23歳女性)、「わかりやすいイケメンが好まれるわけではない」(同20歳女性)といい、実力や醸し出す雰囲気が重視される傾向があります。  でも、やはり若いイケメンは全女性と一部男性の宝。北朝鮮はもったいぶってないで、どんどん世に出してほしいですね! そんなわけで、私の乏しいストックの中から何人かピックアップしてみました。  10年ほど前、平壌映画撮影所のセットで見かけた俳優。北朝鮮の加勢大周(古っ!)と呼ばれているとかいないとか。
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小さい写真しかなくてすいません。
 個性派俳優ともいうべき若手実力派、リ・リョンフン。そのソフトな佇まいは、まるで“北朝鮮初”のオネエ系タレント?
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 そんな中でもイチオシなのが、北朝鮮のイケメン芸能人予備軍。芸術、芸能、科学技術などに特化した英才教育機関「金星学院」の舞踏家養成コースに通う、チェ・インソン君(仮名)です。
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 ウホッ いい男!
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インソン君(当時14歳)と、私の顔のデカさの対比をご覧ください。
 金星学院は、北朝鮮では誰もがその名を聞いてのけぞるほどの名門校。才能と実力を兼ね備えた人材の中でもさらに一部の者しか入学が許されず、東大よりも入学が難しいとされる、東京芸術大学さながらの狭き門です。  インソン君の場合、中学校の授業中、男子生徒の視察に訪れたスカウトマンがそのイケメンぶりに惚れ込み、「You、ちょっと立ってみて」とご指名。その場で「明日から金星学院に来ちゃいなよ」と命じたという、まさにシンデレラボーイなのです。  しかしいくらなんでも、国を挙げたエリート養成機関に顔だけでぶち込むほど無茶が利くわけでありません。インソン君の場合は、事前にしっかり選考過程を経た上での「You、来ちゃいなよ」だったか、その後に認められたかのいずれかだと思われます。いずれにしろ、なかなかアクロバティックな話です。後者の場合、たまたま居合わせただけで沖縄アクターズスクール校長にスカウトされて特待生になった安室奈美恵のようですね。    インソン君の夢は、国立芸術団に入団することだといいます。 「国立芸術団に入れば海外公演でロシアやヨーロッパにも行けるというので……特に行ってみたい国はフランスですね。フランスでは同性婚が合法だというから、ちょっと見てみたいんです」  なぜ彼が同性婚にこだわるのかはさておき、たくさんの才能がしのぎを削る群雄割拠の金星学院。ギルドホール(英国の名門演劇学院)で「顔だけ」と言われて腐ったオーランド・ブルームを見習わないよう、頑張ってほしいと思います!
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 選ばれし男性芸能人予備軍たちの貴重なオフショット。さすが芸能人の卵、美意識が高いのか人民服は着ません。しかしこの路線をやりすぎると、韓国ヤクザ映画のようになるので気をつけていただきたいです。
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 ちなみに北朝鮮では、17歳から飲酒OK。マイクを持ってる君、顔赤いぞ! ●やす・やどろく ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

無慈悲な料理本『有名な平壌料理』のメニューを作ってみた【牛足の煮こごり】編

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 冷麺を「粉から打て」と指示するなどでおなじみ、無慈悲な北朝鮮料理本『有名な平壌料理』から作ってみた! シリーズ第2弾です。  今回は、「牛足の煮こごり」に挑戦してみたいと思います。  この料理は韓国ではあまり食べたことがなく、北朝鮮の宴会でしばしば見かけます。出てくること自体が珍しいので、おそらく主に祝いの席や慶事の料理ではないかと思われます。  ゼリーの中にいろいろな薬味が入っていて、健康に良さそうですが、本によると「味が素朴で栄養価が高く、さまざまな薬効成分が入っているため健康長寿に良いです」とのこと。そ、そんなにすごい料理なのか……?  材料は以下の通り。 牛足 1kg テール肉 400g アキレス 100g すね肉 500g タン 300g ネギ 3g ニンニク 15g 塩 10g こしょう 2g 錦糸卵 10g しいたけ 10g 糸唐辛子 2g 松の実の粉 5g 辛酢味噌 60g  多いよ!   調理はとりあえず、肉を煮込むところから始めます。
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 まず、肉を全種類用意するのに骨が折れました。意外と一つの店で買うことができない。アキレスと牛足はハナ◯サにもなかったので、わざわざ韓国食材店まで行って調達しました。分量は適当です。 「1. 牛足は割り、テールは切ってタン、すね肉、アキレスとともにさっと湯搔いてよく洗った後に強火で煮込む」  「割る」とかサラッと書いてありますが、硬ッ!! 真ん中に骨があるので、包丁がまったく入りません。早速、無慈悲な指示に応えることはできませんでした。
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 全部ぶち込み、サッと湯通し。
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 茹で汁を捨てます。
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「2. 煮え始めたら火を弱め、ゆっくりと煮立てながら脂と泡を取り除き、フタを閉めてやわらかくなるまで煮込む」  アクや脂を取り除きながら、さらに3時間ほどコトコトと煮込みます。圧力鍋なら、もっと短縮できるんでしょうが……。
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「3.肉が煮えた順に取り出し、骨を取り除いたら、刻みネギとニンニク、塩、こしょうで味付けをし、茹で汁は布でこして味付けをする」  煮立った肉を引き上げ、骨を取り除きます。あんなに硬かった肉がゼラチン状になり、骨がスルッと抜けるのが気持ちよいです。
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 茹で汁の味付けの仕方がよくわからないので、とりあえずしょうゆとだし汁を混ぜておきました。適当……。 「4.鍋の中に、切った肉と味付けした茹で汁を6:4の比率で入れ、もう一煮立ちさせてから冷ます」 「5.ほぼ冷めたところに錦糸卵、しいたけ、糸唐辛子、ネギ、松の実の粉を混ぜて容器に入れ、冷蔵庫で6時間ほど冷まし固めた後、長方形に切って皿に置き、辛酢味噌と一緒に出す」
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 この時、煮こごり素人の私は失敗しました。  「これ、ほとんど水だけど、後で本当に固まるのかな……?」と不安になり、ダッシュで粉ゼラチンを買ってきて5袋すべてをザシャーーーッ! とブチ込んだのです。ざっくりすぎるレシピの説明からして、アキレス100gで固まると主張している点に疑心暗鬼となった私。それが後に弊害を生むとは……。  とりあえず、プラスチック容器に詰めて冷やすこと数時間。それらしい物体が誕生!
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 できたぜ!
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 なんだかんだで、形にはなりました。しかし、なんか見本と比べて、身が詰まりすぎじゃね? という感じも否めません。もうちょっと見本みたいに透明感がほしかったんですが。
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 食べてみると、「硬っ! なんじゃこりゃ!」。  そう、あの時ビビッて入れた粉ゼラチンが、ガチガチの大仕事をしてらっしゃったのです。そりゃもう、グミキャンディ並みの硬さでございました。ゼラチンを加えた分、相応の水を加えていれば、程よい硬さと透明感を醸し出すことができていたでしょう。ついでに、脂分も凝縮されたせいか、一切れ食べただけで胃もたれがしてしまいました。  しかし、味は決してマズくはなく、先輩に差し入れたところ、いつもはケチを付けられるはずが、今回はそこまでボロクソに言われませんでした。  それにしても、日本でもこれだけ手間がかかるなら、北朝鮮ではなおさら、機会を逃したら一生食えないというレベルのレア料理なのかもしれません。そのほか、これを上回る無慈悲な料理がめじろ押しなので、今後も無理のない範囲でチャレンジしていきたいと思います。 ●やす・やどろく ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

厚底靴にハイヒール、ミニスカートまで! 北朝鮮“ファッションの自由化”が加速中!?

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平壌で見かけた女性。中国のファストファッションのような雰囲気
 北朝鮮はまだまだエボラによる鎖国が続く状況ですが、今回は北朝鮮における、特に女性のファッションの流行についてお話ししたいと思います。  昨今、北朝鮮の男子大学生は全員、金正恩第一書記と同じ髪形にしなければならないといった報道があるなど、北朝鮮では人民の髪形や服装から、何から何まで当局が口を出すというイメージがあると思いますが、それは事実ではありません。  確かに過去、美容院に「女性はパーマをあてなければならない」という金正日総書記の「教示集」が置いてあったり、90年代には女性はズボンをはいてはならないなどの決まりがありましたが、昨今では自然発生的に流行が生まれては廃れるのを繰り返しているようです。ここ数年では、中国製品の影響も多く受けているようです。  ここ数年は「アムラー」のような厚底靴がはやりましたが、昨夏にはすでに消え去り、ハイヒールが主流となっていました。また、膝丈のミニスカートも容認され始めました。ただ、あまりに露出が多かったり、「風紀を乱すような」場合は当局より指導が入り、以後禁止されます。
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ヘビ皮模様(右)のような思い切ったアイテムも
 やはり流行の発信源には「ファッションリーダー」がいるようで、第一書記の夫人である李雪主氏を筆頭に、モランボン楽団のスター歌手や映画女優、世界大会で好成績を残しているスポーツ選手のファッションを真似しているようです。昨年9月に行われた「年度ファッションショー」では、そのような最先端のテイストが集約されていましたが、高麗航空の中で見かけた女性もこのような感じでした。  こうした女性たちの目まぐるしいファッションの変遷は、意識の変化と関係しています。北朝鮮の婚姻率は日本に比べると断然高く、女性は基本的に20代前半、遅くとも30歳までには結婚しますが、昨今では晩婚化が進んでおり、「男の世話で苦労させられるくらいなら、独身でいたほうがいい」と娘に助言する母親も増えています。というのも、“国民総共働き”で専業主婦が存在しないにもかかわらず、家事育児のほとんどを女性に課せられる風潮が根強いため、自分と同じ苦労をさせたくないという親心のようです。 「家事育児は、“慈しむ性”である女性が担当すべき」と話す女性幹部もいましたが、本音はツラそうでした。そのような古き女性性からの解放を目指す動きと、ファッションの開放が比例しているのかもしれません。  ちなみに私も結婚適齢期に差し掛かっているため、訪朝するたびに人民たち(赤の他人含む)から「その年で未婚とはこれいかに」などと無理問答を食らっており、そろそろ発狂しそうなので、次回までには結婚しておかなければと思っています。 ●やす・やどろく ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

チョソンマニア感涙!? 最新「北朝鮮製ブランド品」事情

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 こんにちは。北朝鮮ライターの安宿緑です。世間では、アメリカ VS 北朝鮮のサイバー戦争が繰り広げられているとかで相変わらず物騒ですが、引き続きユルめにチョソントークをしていきたいと思います。    昨年10月、私の友人が中国・丹東で行われた「第三回中朝商品展覧交易会」の場に参加してきました。読んで字のごとく、中国と朝鮮の商社によるビジネス展示会です。  韓国では「ガラガラだった」と報じられていましたが、友人いわく「それはウソ。韓国メディアは、開催前日の設営の様子だけ映して帰っていった」とのこと。日本でも特に報じられていませんが、貿易会社をはじめとする60社以上の北朝鮮企業が参加し、盛況だったようです。
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   朝鮮の貿易会社の男性。参加者は皆、商談や名刺交換で忙しくしていたとのこと。  最近では北朝鮮でもファッションショーが行われたとか、ミニスカがはやっているとか近代化の波が訪れているわけですが、写真の男性の背景を見てもわかる通り、朝鮮企業ブースでは自国で企画・生産された「北朝鮮ブランド」の服飾品やカバンも数多く展示されていたということでした。  北朝鮮発のブランドといえば、ひと昔前から、布製の手芸品が主体となった「URINARA」(ウリナラ)がよく知られています。北朝鮮が誇る土産物屋の目玉商品でありつつ、「おかんアート」のような素朴な点が持ち味でした。
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 現物がないのでイメージ。実物は、このような品物に「URINARA」のロゴが付いてます  そして、数ある製品の中で友人が買ってきてくれたのはコチラ。
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 大きさ比較のために、ライターを置きました    このボストンバッグ、素材に関しては輸入と思われますが、れっきとした、北朝鮮ブランドの一つだそうな。大きいほうの朝鮮語は、「オッケドンム」と書かれており、直訳では「肩を並べる友」、意訳すると「竹馬の友」といったところ。その下には「朝鮮賞明貿易総会社」とあります。    言っておきますが、これは決して貿易会社のノベルティグッズなどではありません。つまり「ブランドの名前はオッケドンムじゃ。企画したんはワシらの会社じゃ」と、まんま書いてあるというわけです。 「ハローキティby サンリオ」  みたいなものですかね。  友人はこのセンスに一目惚れし、ほかはそっちのけで即購入したということ。確かにチョソンマニア(※北朝鮮愛好家)が涙を流して喜びそうです。朝鮮人民の実直さ、世間ずれしてなさも十二分にうかがい知れます。  しかし私は、こういうのはチョソンの今後のためにも厳しく対処していきたい。正直、これはどうなのかと。ブランド名をプリントするにしても、もうちょっとなんとかならなかったんでしょうか? 書体とか……。百歩譲って、朝鮮語を読めない人にはオシャレかもしれませんが、「MADE IN D.P.R KOREA」が悪目立ちしている感じです。  ちなみに、チョソンマニアの友人らは私に平壌の絵葉書や各種バッジなどを押し付けてくるのですが、それは大阪人に通天閣の置物をあげるかのごとく無意味です。とはいえ、以前は私も、朝鮮人民に対し前述の「URINARA」を買いそろえてあげたことがあり、その時浴びた冷ややかな視線は忘れられません。なぜ人は、喉元を過ぎると自らも同じ愚行を犯すのでしょうか。  話がそれましたが、製品を見ていきましょう。  中身は結構、大容量。荷物をたくさん入れられそうです。なかなか縫製がしっかりしており、ほころびなどは見受けられません。ジッパーに青いラインをあしらっているのはオシャレです。
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 持ち手のアクセサリも手を抜かず、自社のネーム入り。
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 底面の滑り止めも付いており、形は一般的なスポーツバッグと比べて遜色ありません。
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   そして何より、表面の破壊的センスとは裏腹に芸が細かいのが取っ手の紐。ブランド名がそれぞれ朝鮮語と英語で織り込まれているのですが、労働新聞のタイトルと似た書体で、まさに朝鮮! という感じ。こういうのを前面に出せよと。
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 ちなみに見えにくいですが、英語のほうはなぜか「アッケドンム」になってます。サムソンをサムスンと読ませているのと同じですかね。  この通り、見えないところではいい仕事をするのに、見えるところで台なしにしているのが北朝鮮らしい感じです。  ただ、持ってみると意外と手になじみました。
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 スポーティな場面でヒョイと担げて……
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   電車の中でも自然です。  まさに「肩を並べる友」のブランド名にふさわしいこの一体感、日本で使っても違和感なし! 私自身は浮いているにしても、少なくともカバンは溶け込んでいると思われます。韓国人の多い新大久保では、いろいろと物議を醸しそうですが……。  気になるのは底板がない点と、荷物を限界まで入れたことを想定した場合、持ち運びに不安を感じる点でしょうか。気になる値段は100元(約1,940円)で、可もなく不可もなくといった感じです。  というわけで、今年もあらゆる意味でチョソンブランドに注目していきたいと思います。 ●やす・やどろく ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

無慈悲な料理本『有名な平壌料理』のメニューを作ってみた【油揚げ辛味噌いなり】編

 こんにちは。北朝鮮ライターの安宿緑です。  最近、自宅の本棚を整理していたら、以前、北朝鮮で買った冊子を発見しました。
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 北朝鮮の料理レシピ本『有名な平壌料理』。  いったいどんなメニューが載っているのかといえば、トップバッターはやはり平壌冷麺。北朝鮮といえばコレ、といって過言ではありません。説明には「人民が祝祭日、休日に楽しむ平壌特産料理」とあります。
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 しかし……。
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 材料に、「そば粉」という文字が。  つまり麺から打て、と。いやいや、ご冗談を……。あるいは、平壌ではイタリアのように一家に一台、ヌードルメーカーでも置いてあるんでしょうか? そんな話は、一度も聞いたことがありません。その他のメニューも、すべからく無慈悲な難易度で、庶民には到底対応できないと思われる内容に仕上がっておりました。この頑張りすぎな感じ、幼き頃の授業参観に張り切りすぎて、司忍みたいな風貌で現れた私の父を思い出させます。関係ないのですが……。  しかし、ここまでで皆さんの脳裏によぎっている言葉はただ一つ、 「そもそも庶民は食えてんのかよ?」  だと思います。  もちろん地域格差はありますが、参考までに平壌の中流家庭の食卓がこちら。
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 一番手前の、油揚げに包まれた謎メニューは人民がやたらと推してきたのですが、ギトギトな見た目に引いてしまい、結局、箸をつけられませんでした。韓国にも「ユブチョバプ」という、いなり寿司のようなものがありますが、それとは似て非なるものの気がしました。どちらかというと、日朝折衷な感じがします。  今回は腕慣らしとして、この「油揚げ辛味噌いなり」(勝手に命名)を見よう見まねで作ってみたいと思います。  まずは赤い部分の、ヤンニョムソースを作ります。 唐辛子 適当 長ネギ 1/2本 リンゴ 1/4個 にんにく 2個 生姜 1片 もち粉 大さじ1杯 ハチミツ 大さじ4杯 イカの塩辛 1/2袋(アミの塩辛でも)  ヤンニョムは作る人によって少しずつレシピが変わるといわれますが、こちらは基本の材料です。実は、私は北朝鮮料理を作ったことがまったくと言っていいほどなく、クックパッドで必死に検索しました。どんなものでもキムチを入れれば、なんちゃって北朝鮮料理になりますからね。粘りを出すためのもち粉がないので、今回は上新粉で代用。
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 それらを全部フードプロセッサーにぶっ込んで、スイッチオン!
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 完成です。見た目に青が欲しい人は、青ネギを後から刻んで加えるといいと思います。
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 お次に、私はパリっとしたほうが好きなので、油揚げをごま油で焼く。
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 同じくご飯も、ごま油で軽く炒めます。
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 油揚げは三角形に切り分け、ご飯が入る形にします。
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 ご飯をややキツめに詰めて、ヤンニョムを入れる。粘りがあるので、載せるだけでも大丈夫なようです。
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 はい、出来上がり。所要時間10分! どうでしょうか? 色と盛り付けは、オリジナルのほうがいいですね……。やはり、青ネギを加えればよかったです。
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 さて、気になるお味のほうは……。ルームメイトに試食してもらうと、「なかなかおいしい! サッパリしていて、韓国のとなんとなく違う」との感想。おそらく、適当なヤンニョムのおかげかもしれません。  私も一口食べてみたところ、自分で言うのもなんですが、美味でした。ヤンニョムの香味と爽やかさが、油揚げのギトギト感を打ち消しています。見た目ほど、くどくありません。  余ったヤンニョムは、ラーメンやサラダに転用しましょう。今回は、旬の生牡蠣(生食用)を漬け込んで、牡蠣キムチにします。
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 以上、北朝鮮の庶民の食卓を再現してみました。  今後も定期的に、無慈悲な料理本『有名な平壌料理』のレシピにチャレンジしていきたいと思います。 ●やす・やどろく ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

死も覚悟するほどの腹痛を治した、北朝鮮“奇跡の”鍼治療「100本のぶっとい針が……」

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ホテル内の医療施設で注射。看護師さんは美人でした。
 こんにちは。北朝鮮ライター(北朝鮮リア充研究家)の安宿緑です。  前々回(2010年11月)の訪朝で、私は病気になってしまいました。連日、立っていられないほどの激しい腹痛に見舞われ、下痢が止まらず、食事もすべて戻してしまう状態。これでは取材どころか、外出もできない。病状は日に日に悪化し、もはや日本に戻ることすら危うくなっていきました。  そのためホテル内の病院にかかり、そこで錠剤投与を5回ほど、その他栄養補給として注射、点滴など複数回の治療を受けました。海外医療保険に入らずに来てしまったため金額におびえましたが、幸い北朝鮮は無償医療のため、治療費を請求されることはありませんでした。
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自室でまで点滴を受けるありさま。
   とはいえ、どれもこれもまったく効かず。点滴なんて、ホテルの部屋に来てもらってまで打ったんですけどね。それでも、なんとか歩けるようになるまでは回復しましたが、発作的な胃痛はどうしようもなく、痛みが再発しないように祈るしかない状態でした。  そんな中、ある一般人が住むマンションを訪問させてもらうことになりました。依然、体調は万全ではなく、トイレと居間を往復するばかりで、ついにはその場で倒れ込んでしまいました。  住人たちの「一体こいつは何をしに来たんだ?」という空気が突き刺さり、さらに内臓がキリキリ痛みました。  「このまま北朝鮮で死ぬのかな……」とボンヤリと天井を見つめていると、シャレにならない状況だということを悟ってくれたのか、住人たちは即座に医師を連れてきてくれました。  北朝鮮では基本的に、マンション1棟につき一人は医師が居住しなければならないという規則があるとのことで、運良く隣の隣に医師が住んでいたのです。 ペク医師「薬も点滴もダメだったのか? うーん……」  私を診察したペク医師は少し悩んだ後、「じゃあ、これしかないな」と言って、カバンの中から直径1ミリはあろうかと思われる、ぶっとい鍼を出してきました。もはや言葉を発する気力もなかった私は、不気味に光る針先を、もうどうにでもなれという思いで見つめました。  ペク医師は手際よく、鍼を私のヘソ周りと、胃腸のツボが集中しているといわれる膝に刺していきました。その数、およそ100本。  針山のようになった腹と膝を見ながら、私はポツリとつぶやきました。 「いま、地震が起きたらどうしよう」  すると、私を見下ろしていた面々が一斉に笑いました。 「朝鮮では地震なんてないよ」  地震の少ない朝鮮半島、少なくとも皆が生きてきた間には地震を経験したことはないそうです。きちんと調べてみないとわかりませんが、過去100年間まともな地震は起きていないとも。 「日本ではしょっちゅう地震が起きています」と私が言うと、「怖い。絶対に住みたくない」と、皆一様につぶやいていました。  まあ一説では、北朝鮮の聖山・白頭山噴火間近といわれているので、もうすぐ地震どころじゃ済まなくなるんでしょうけどね。  その晩は、そのままマンションで夜を明かしました。  そして翌日。なんと、胃腸が痛くない! 下痢もない! むしろ食欲が止まらず、出されたご飯をモリモリと食べる私。絶好調でした。何をしても取れなかった痛みが、鍼で何事もなかったように消えるとは……。  ホテルへ戻るとき、どうしてもお礼を言いたかった私はペク医師を連れてきてもらい、マンションをバックに一緒に写真を撮りたいとお願いしました。命の恩人が住むマンションですからね。日本に戻ったらその写真を手に、思い出話をするつもりでした。  私のカメラは充電が切れてしまったので、住人に撮影と現像を頼みました。  しかし後日、マンションを訪ねて写真を受け取ると……。
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 なんだか、キラッキラまぶしいんですけど……?  見ての通り、背景がマスゲーム会場に差し替わっていたのです。「アリラン公演」をイメージしたものだそうですが、よくある観光地のプリクラのような強引さです。 私「ちょ……この背景はないでしょ! マンションをバックにしたから意味があったのに!」 住人「何言ってるの! アリラン公演をイメージした、栄えある背景なのよ。一番人気なの」  そうか、そう来たか……。そういえば、現像所に「背景タイプA」とか「背景タイプB」とか選べる欄がありました。ご丁寧にも一番人気の「背景タイプ:アリラン」を選んでくださったのですね。いや、ある意味素敵だとは思いますが、被写体が我々であるという点が問題です。  ともあれ、ペク医師のおかげで無事日本に戻ることができました。本当に感謝です。
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 ちなみに、こちらはペク医師が開発されたという注射薬「アトロクソフィリス」。いわくEUにも輸出されているそうですが、個人的にはペク医師の鍼のほうが効きそうな気もします。               ●やす・やどろく ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>