
デビュー4年目を迎え、徳間ジャパンに移籍したアーバンギャルドが今月18日に3rdアルバム『鬱くしい国』をリリースする。
2011年にユニバーサルJよりシングル「スカート革命」でメジャーデビュー。ガーリーかつ病的な世界観で10代の女性層を中心に支持を集めた彼ら。これまでに『メンタルヘルズ』『ガイガーカウンターカルチャー』の2枚のアルバムと、ベストアルバム『恋と革命とアーバンギャルド』を発表し、本作ではレーベルを移籍。新たなサポートメンバーを迎えて新境地に挑戦している。
──まずはニューアルバムのリリースおめでとうございます。徳間ジャパンに移籍して最初のアルバムですが、手応えはいかがでしょうか?
浜崎容子(Vocal 以下浜崎) めちゃくちゃあります。今回初めて、レコーディングにディレクターが付きっきりで見てくださって、一曲のうちにたくさんのことをいろいろ試すことができました。録音のシステムとかレコーディングの環境とか、以前よりも上に行けたし、何よりよかったと思うのは、新しいナイフを取り出せたというか、アーバンギャルドの鋭さが新しい形で見えたことです。アーバンギャルドって、そっち行くのかなって思ったらこっちだったみたいな、そんな作品になっているんじゃないかなって思っています。
松永天馬(Vocal 以下松永) 前作の『ガイガーカウンターカルチャー』は現代社会を網羅するようなアルバムだったんですけど、そこからさらに突き詰めて、丸ごと日本をテーマにしようと思ったんです。サウンド面ではバンド感を増しつつも、世界的に台頭してきているEDMや日本独自のボカロ、アイドルソングに対するアーバンギャルドからの回答のような作品になっています。バンドというものをベーシックに置きながら、いろんな音楽の遊び方をするスタンスは、インディーズで初めて出したアルバム『少女は二度死ぬ』(2008年)の頃に近いです。ある意味、それを今の自分たちの力でアップデートしたような作品になったと思います。
──今回、ユニバーサルJを離れて徳間ジャパンからのリリースになりましたが、レコード会社移籍の理由はなんだったんでしょうか?
松永 ちょうど、ユニバーサルJでベストアルバム(2013年6月)を出した時に、契約が一段落したんです。その後、いろいろな方に相談していく中で、徳間ジャパンさんにお願いしますということになりました。
──移籍する不安なんかはありましたか? 契約を終えて次が決まるまでの間とか、いろいろと落ち着かない時期だったりしたのでは?
松永 移籍の話が出た頃、ちょうど「ジャパン・エキスポ2013」のためにフランスに行ったり、戻ってきて全国ツアーをやっていた時期で、それほどでもなかったですね。結構忙しくて、ツアーのことで頭がいっぱいでした。

──ユニバーサル時代の活動を今振り返ると、どんな状況だったんでしょうか?
松永 やはり、それまでと環境が大きく変化した時期でしたね。今までアーバンギャルドを見る機会がなかった人たちにも見てもらえる機会が増えましたし、リリースもたくさんさせてもらえました。何よりも海外に進出するきっかけを作ってくださったのがユニバーサルJで、そういう意味ですごく感謝しています。でも、僕らは音楽性もファン層もちょっと特殊なバンドで、ユニバーサルJとしてはどう売っていくか、すごく難しかったでしょうね。正直、アーバンギャルドをどう扱っていいのかわからない部分があったと思います。
浜崎 音楽的な環境でいえば、きちんとしたスタジオでレコーディングさせてもらえて、感動しました。インディーズの頃はできなかったこともできるようになり、メジャーに行った手応えも感じました。周囲のいろいろな方の協力も得られて、音楽的な幅がすごく広がったと思います。でも、数字の面に関しては、アーバンギャルドは結構普通のアーティストさんだと知らないような裏方の内情のようなものまでメンバーが知ってしまって、新たなプレッシャーがやってきたという感じもありました。スタッフさんがお金のことだったり、数字のこととかを全部話してくれて、結果を出さなきゃっていうような焦りを持ったんです。でも、メジャーに行くと、みんなこれと戦っているのかと思う半面、ほかのアーティストさんと話した時、そんな話全然知らないというギャップもあったりして、いろいろ知りすぎたりしていることがしんどくなる時がありました。
──瀬々さんや鍵山さんはどうでしたか? ヴォーカルの2人に対して、それぞれギターやドラムの立場から。
瀬々信(Guitar 以下、瀬々) 僕もすごく手応えは感じましたね。それまで自分たちだけで作っていた作品のチームが大きくなって、レコーディング環境も変わり、大きな進展があったと思います。チームが大きくなることについては、そういうことに慣れていなかったので、それに対して右往左往するということも多々ありました。どれだけ多くの人たちが関わっているのかということも、最初は全然わかりませんでしたし。でも、最近になってようやく自由に動けるようになってきました。立ち振る舞い方がメジャーと合ってきたというところなんでしょうね。
鍵山喬一(Drums 以下、鍵山) 自分も個人的にはすごく手応えがあったし、楽しかったですよ。
──鍵山さんはちょうどメジャーデビューのタイミングで、正式にアーバンギャルドのメンバーとして加入されました。当時の心境は、どんな感じだったんですか?
鍵山 実は、最初はアーバンギャルドにあんまり入りたくはなかったんです(笑)。インディーズ時代から有名なバンドというのはもちろん知っていましたし、それまでに別のバンドで対バンをしたり、サポートで入ったりしてよく知っていたんですけど、あるイベントで対バンをした時に、楽屋で大げんかをしていて、「うわーっ」て思ったことがあったんです。ステージ直前なのにいがみ合っていて、仲が悪いのかなって思って。その後もしばらくそういうイメージが強かったので、入るのは嫌でした(笑)。もちろん、今ではそういう部分も、バンドの音楽に対しての真剣さという意味できちんと理解できるようになりましたし、加入した結果、すごく楽しんでやれていますよ。

──移籍した徳間ジャパンについてですが、どんな印象でしょうか?
松永 徳間ジャパンのカラーはアーバンギャルドと近い部分があると思っています。今回の作品には大槻ケンヂさんにも参加していただきましたけど、筋肉少女帯も同じ徳間ジャパン。アーバンギャルドが来るべくして来たレーベルかもしれない(笑)。
浜崎 私たちはバンドとして自分たちがかっこいいとか、これがすごくいいと思うっていう作品を作り続けていけたらなって、いつも考えているんです。今回徳間さんとやらせていただいて、それができると感じましたし、「これがアーバンギャルドだ」じゃないけれど、そういうものを追求し続ける姿勢さえ見失わなければ、どこへ移籍しても、自ずと道が見えてくるんじゃないかなって思っています。
──レーベルが変わったことや、サポートメンバーが加わったことで、新作について変化を恐れるファンもいるかもしれません。
浜崎 それは私たちに限らず、いろんなアーティストさんやバンドが直面する問題ですね。
松永 逆説的な言い方ですが、コンセプチュアルなものがコンセプチュアルであり続けるためには、あまり凝り固まったイメージを持たないほうがいいと思っています。常に風が吹いていて、その風の音に耳を澄ませていられる、その風の強さや冷たさを感じられる状況にしていないと成り立っていかないんじゃないかと思うんです。なぜならアーバンギャルドはやっぱり、時代であるとか現代であるとか、その少し先にあるものを常に見据えているんです。それを内にとどめておいてはいけない、常に路上に出しておかないといけないと思っているので、変化については、それはもう楽しんでくださいとしか言えないですね。もしくは怒ってくださいとか。
──反対にバンドとして、ここは絶対に変えたくないものというのはあるんですか?
松永 自分の作りたいものを作るということが、僕の中では変わらないポリシーですね。自分の作りたいものが結果的に今までのアーバンギャルドを変えたとしても、僕の中でつじつまが合ってればそれは作ります。納得のできないものをこれまでも作ってきたことはないですし、これからも作りません。
浜崎 私は自分がアーバンギャルドのボーカルになった時から思ってることですけど、「アーバンギャルドって、なんか面白そうだぞ」っていう気持ちを自分の中でずっと持ち続けたいと思っています。そこを変えたくないですね。そこがなくなってしまったら、自分はもうやること終わっちゃったなって思う瞬間なのかもしれないって。
瀬々 僕はアーバンギャルドの詞の世界ですね。思想は変わってもいいかもしれないけど、その世界観は変えちゃいけないと思っています。それプラス個人的にはテクノに対して、ギターは派手にやるというのも変えたくないですね。(笑)。
鍵山 僕はライブをし続けたいです。

──今回、レコード会社やメンバーの変化などがあった中で、ニューアルバムを制作したわけですが、レコーディングでは苦労などありましたか?
瀬々 苦労はいろいろとありましたね。一番はやっぱりギターのアレンジとレコーディングだったんですけど、もうひとつ、作品の生みの苦しみというのもありました。やっぱりいいものを作ろうと考えているので、その生みの苦しみというのが今回わりと大きめだったんじゃないかと。
浜崎 最後の最後まで納得いきたかったから、みんなで何度も何度も話し合って作ったんです。
松永 最初にミックスした曲を最終的にアレンジし直して、さらにリミックスしたりね。こだわって作れたと思います。
鍵山 周囲の方の協力もありがたかったですよ。サポートメンバーの方含め、いい先輩をたくさん持ったなと。
松永 今回たくさんのサポートミュージシャンが参加してくださって、外部の血が入りました。でもどんなに外部の血が導入されても、アーバンギャルドはアーバンギャルドだったという結論にはなっているんじゃないかな。
──ジャケットには、現代美術家の会田誠さんの作品『群娘図’97』の一部が使用されています。このチョイスについては、どういう意図だったんでしょう?
松永 僕の十代の時の思い入れが反映されたジャケットです。会田さんの絵を中学生の時に見て、一番衝撃を受けた作品が『群娘図’97』で、おそらく1997年当時の渋谷とかにいそうな女子高生を描いたものだと思うんですけど、それが一周回って今、新しいなと。あと、会田さんがTwitterでつぶやかれていて衝撃を受けたんですけど、この作品を描いたのが17年前で、当時生まれた子たちが今ちょうど17歳でJKになっていると。その事実が、僕の中ではつじつまが合っているように感じられて……。
──先ほどお話のあった大槻ケンヂさんですが、収録曲の「戦争を知りたい子供たち」に語りで参加しています。
松永 大槻さんとのレコーディングは、僕と大槻さんが「詩のボクシング」のような、『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)みたいなことをしたら面白いんじゃないかというアイデアから始まって、結果的にスタジオにマイクを立ててドアを隔てて対面式にしゃべるというスタイルでやりました。息もぴったりで、大槻さんも楽しんでくださったと思います。筋少の曲の中によく入る語りのようなものを、ぜひ自分たちの作品の中にも取り入れたいと思ったんです。

──アーバンギャルドと筋肉少女帯は以前も一緒にライブをしたりしていますが、7月から予定されているアーバンギャルドの全国ツアーに大槻さんが飛び入り参加なんてことはあるんでしょうか?
松永 それ実現できたら面白いですね(笑)。まだ何も決めていませんが。
──7月からは再び全国ツアーが始まります。ライブへ向けての意気込みなどもお聞かせください。
松永 今回のアルバムはとにかく音で遊んだアルバムなので、これをどうライブで演奏していくかを試行錯誤していきたいですね。アーバンギャルドはアイドルとバンドのどちらの側面も持っている、あるいは、ニコ動系とも近い側面を持っている新しいタイプのグループだと思っているので、その良さを出していけたらいいなと思っています。あと、どのジャンルにも属さないエンタテインメントを作っていけたらと。
鍵山 今回のアルバムは、結構どうやってライブするのかなっていうのが自分でも、ほかのメンバーも楽しみだと思うので、それをどう再現するのか楽しみにしていてください。
瀬々 今まで以上にギターのフィーチャーされた曲が多いので、まずはパワーアップしたギターを聴きにこいと(笑)。あとは、新しい楽曲をどうやって演奏するのか楽しみにしていてほしいですね。
浜崎 アーバンギャルドのライブってこうだよねっていうのがきっとあると思うので、それをいい意味で裏切っていけるよう、新しいものをみなさんに届けられたらいいなって思ってます。いろいろとありましたけど、今は自分たちの活動に迷いはないです。
4人プラスサポートメンバー、スタッフのみんなで、去年一年、アーバンギャルドというチームはいったいなんなのかということをよく考えていたりもしたんですけど、考える中で、必ずしも全員が同じ考えでなくちゃならないということはないと学べました。ただひとつ絶対みんなの中で同じだなというものが、いい音楽とかいいものを届けたい、いいライブがしたい、いい作品を作りたいとか、その部分があればいいんじゃないかと。そこの部分さえブレなければ、アーバンギャルドというチームがこれからもっともっと一丸となってやっていけるんじゃないかと思っています。
(取材・文=名鹿祥史)
アーバンギャルド公式ホームページ
http://urbangarde.net/