【山本直樹=森山塔】が語るエロマンガ「"規制"で楽をするのは編集者のほう!」

――「サイゾーpremium」最新記事をご紹介!!  発売中のサイゾー12月号の特集記事は「カネと欲望のマンガ業界」。「ゴー宣」の小林よしのり氏や山本直樹の現役マンガ家インタビューや、大物作家の裏話に花が咲いた「ジャンプ作家アシスタント座談会」、はてはサイゾー恒例の「このエロ劇画がヤバい!2013」、「BL出版社に聞く、深化しすぎたBLエロ表現」などなど、マンガ業界を多角的に考察しています。その中から、今回はマンガ家山本直樹氏のインタビュー記事をお届け! ■今回のピックアップ記事 『【山本直樹=森山塔】が語るエロマンガ「"規制"で楽をするのは編集者のほう!」』(2013年12月号特集『カネと欲望のマンガ業界』より) ――現在「イブニング」で連載中の『レッド』の作者、山本直樹がエロマンガ家であることは、多くの人が知るところだろう。しかし、昨今は、過去のエロマンガ家としての活動を隠して、一般誌でヒット作を描く作家は珍しくない。そんな、成人コミックと一般コミックの狭間で揺れる作家たちの思いと、規制が厳しくなる昨今におけるエロマンガのタブーを山本氏に聞いた。
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(写真/磯部昭子 A/M)
 現在「イブニング」(講談社)で、連合赤軍事件を題材にした『レッド』を連載中の山本直樹。同作で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞する作家でありながら、森山塔・塔山森名義で成人向けマンガを執筆し、1991年に『BLUE』で東京都条例初の有害コミック指定を受け、2008年には『堀田』3巻が同じく有害コミックに指定されるなど、タブーに挑むような作風でも多くの支持を集めている。そんな山本氏は、どんどん規制が厳しくなる一方のマンガ界の現状をどのように見ているのだろうか――。 ――やはり、作品によって山本直樹と森山塔の名義の使い分けを? 山本直樹(以下、山本) ペンネームを使い分けてたほうがかっこいいかなって思ってね(笑)。「ピンクハウス」(日本出版社)っていう自販機本から森山塔でデビューして、すぐに「ジャストコミック」(光文社)でも山本直樹名義で描き始めたので、ほとんど同時進行だったんですよ。そのうち、忙しくなって使い分けなくなっちゃったし。今は、山本名義で人格統一してます。 ――山本先生以外にも、もともとエロマンガを描いていて、青年誌や少年誌に連載を持つマンガ家は多いですよね。『お慕い申し上げます』の朔ユキ蔵さんや、『めだかボックス』(共に集英社)の暁月あきらさんとか。『花のズボラ飯』(秋田書店)の水沢悦子(うさくん)さん、『食戟のソーマ』(集英社)の佐伯俊(tosh)さんのように、元エロマンガ家だということを公にしていない人もいますが、山本先生はそこはオープンですよね。 山本 出自を隠しても、結局今の時代だったらすぐにバレるでしょう。さすがに「週刊少年ジャンプ」(集英社)の作家になるなら隠そうかと思うんだろうけど、僕の場合青年誌だから、まったく抵抗がないし、出版社に名前を隠せと言われたこともないですよ。 ――過去に、有害コミック指定を受けていらっしゃいますが、名義を統一してしまうと、その辺りも言い逃れができなくなるなど、弊害もありそうですが……。 山本 いやあ、関係ないですよ。僕の場合は有害コミック指定で2回怒られてますけど、メディア芸術祭でマンガ部門優秀賞もらって1回褒めてもらってますから。バランスがいいかなと思っています。親戚にもデカい顔できますし(笑)。 ――とはいえ、今も「マンガ・エロティクス・エフ」で、また怒られそうな少年少女のエロマンガ『分校の人たち』を描いていますが、内容に規制がかかったりしないですか? 山本 最近描いてないけど、昔連載をしていた小学館からは時々言われてましたね。学校の制服を着てエロいことをするのは避けてくれ、とか。だから野球のユニフォームを着せてエロいことさせたけど。 ――でも、『分校の人たち』って明らかに未成年ですよね? 山本 作中では小学生とも中学生とも明言してないですよ。僕の出身地の北海道にも北海道教育大学函館校って分校があるし、大学生かもしれないじゃないですか。 ――なるほど……(笑)。 山本 でも、未成年の子だって、実際はエロいこといっぱいしてるよね。 ――はっきり未成年とわかる作品では有害コミック指定も受けていらっしゃいますが、どう思われました? つづきはコチラから。 「サイゾーpremium」ではこれからも果敢に業界のタブーに斬り込んでいきます!】『ゴー宣』小林よしのり「文春報道が真実ならば わしは河西智美を糾弾する!」『NARUTO』作者はいい人すぎて"給料高額事件"が勃発?…「週刊少年ジャンプ」アシスタント座談会【吉木りさ】『進撃の巨人』 エヴァを初めて観て以来の衝撃、これぞ次世代の少年マンガ!
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「人は死ぬし、死んだ後には何もない」クリスチャンになれなかった山本直樹の信念

【ハピズムより】
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都条例で「不健全図書」指定を受けた
『堀田』(太田出版)の3巻
(前編はこちら) ――前編は、誰もがいつ踏み外してもおかしくない「日常」についてお話いただきましたが、『堀田』【1】はかなり日常を踏み外している感じがしますよね。 山本 『堀田』は、どこまでデタラメができるのかを実験してみたんです。でも、なかなか難しいですね。人はあまり無意味には耐えられないと思いました。 ――2巻から3巻にかけて描かれる、高校生同士のエスカレートする性行為を読んでいると、山本先生は“物語の人”なんだなあと感じました。 山本 そうですね。大学時代、授業はだいたいつまらなかったけれど、宗教研究という授業だけは面白かったんです。田島照久さんという、中世のキリスト教神秘主義【註1】の研究をしている先生で、錬金術【註2】やタロットやカバラについて、歴史的視点で教えてくれました。例えば、心理学者のユングも錬金術について書いていて、その材料は人間の心の比喩だというんです。錬金術は硬い/柔らかいっていう全く逆の材料を一緒に錬成するんですが、それは相対する感情や宗教を混ぜ合わせることで新しい何か生みだすという物語の例えになっているんです。また、タロットにも、昔からある普遍的な物語のパターンが込められているそうです。そういうものを知っておくとマンガに使えるだろうと思ってたので、宗教研究の授業は面白く受けられましたね。  やっぱり、そうやって面白い物語を描きたくてマンガ家になったから、物語の意味からは逃れられないんだと思います。その中でどれだけ端っこにいけるのかとか、どれだけ遊べるかとか、今はそんなことを考えながらやっていますね。 ――『レッド』はノンフィクションですが、今まで以上に強い物語性がありますよね。そもそも連合赤軍に興味を持ったきっかけはなんだったんですか? 山本 オウムの一連の騒動があった後、何か似たような事件が昔あったなと思ったんです。それで、思い当たった人たちの本をむさぼるように読みました。東アジア反日武装戦線の人たちの本や、立花隆の『中核VS革マル』(講談社文庫)を読んだら面白くて。特に連合赤軍事件については、前半は犯罪青春モノ、後半は山岳残酷モノという、その落差がすごかった。これをぜひマンガにしてみたいと思ったんです。基本的に僕は、失敗した人たちの話が好きなんですね。成功した人たちの成功談は、読んでいて癪だから(笑)。 ――連動赤軍とオウム真理教との共通性を、どんなところに感じたんですか?

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公園デビューも連合赤軍もオウムもみんな同じ――山本直樹が描いた閉鎖された社会

【ハピズムより】
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『レッド』(講談社)最新刊
 真っ白な紙の上に新たな世界を創造していくマンガ家たち……そんな彼らに、作品づくりを通して体験したスピリチュアルな世界や、作品に込められた思いについて話を聞く当連載。すっかり久しぶりとなってしまった(!)第2回は、「イブニング」(講談社)にて連載中の『レッド』【1】が好評な山本直樹先生にご登場いただきました。これまで、“本業”であるエロマンガを活動の主体としながらも、1996年に映画化され、家族のあり方に迫った『ありがとう』(小学館)【2】や、新興宗教を題材とした『ビリーバーズ』(復刊ドットコム)【3】など、独自の視点で社会問題を取り上げてきた山本先生に、中学生時代の信仰の話から、オウム真理教に興味を持った経緯まで、お話をうかがってきました。 ――このインタビューは、マンガ家の方にご自身のスピリチュアル体験や信仰について語っていただいているのですが、山本先生はなにかそういったものは……。 山本直樹(以下、山本) ないんですよね。全くない(笑)。 ――とはいえ、ご自身の作品では新興宗教が登場することも多く、現在連載中の『レッド』も、ある種宗教に似た暴走するイデオロギーを描かれていますよね? 山本 実は僕、中二まではクリスチャンだったんです。函館近くの田舎町で育って、田舎な分、逆に新しいもの好きでした。年に1回、町に外国人の宣教師がやって来て、大きなテント張って「天幕集会」っていう宣教をやるんです。そこできれいなカードやグッズなんかをくれるのがうれしくて、町の教会にも通い始めました。あと、最初にいた先生が女の人で、すごくきれいだったんだよね。でも、今思うとかなり原理主義っぽい感じの人で、「共産主義者は悪魔の手先!」なんて言ったり、進化論を否定したりする人だったんですけど……。で、その後に来たのは若い男の先生で、「キリストとその弟子も、原始共産制みたいなものだからねえ」なんて言っていて、随分いいかげんなもんでしたよ。とりあえず、聖書も3回くらいは通読しました。ほとんどがつまらないけど、時々面白いところがあってね。 ――先生の作品に宗教が出てくるのも、そのころの記憶が影響しているんでしょうか? 山本 まあ、幼少期にそんな現場に通っていたら、少なからず影響は受けているでしょうね。実際、欧米の映画を見ると、キリスト教文化が透けて見えたり、「この人がこういうふうに動くのは、聖書のあの節からきているんだろうな」なんてことに気づいたりするので、今でも影響はあると思います。でもそこで免疫ができちゃったから、それ以降、信仰心みたいなものを持ったことは一切ないんですよね。 ――例えば、『ありがとう』では「ニコニコ人生センター」という、その後の『ビリーバーズ』の設定でも使われる宗教団体が登場します。『ありがとう』の開始がオウム事件直前の1994年末でしたが、新宗教をマンガのネタとして扱うのがかなり早かったですよね。

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