
撮影=後藤秀二
新加勢大周として一世を風靡した、“筋肉タレント”の坂本一生を覚えているだろうか? 鍛え抜かれた筋肉と白い歯が光るさわやかな笑顔がトレードマークだった彼が、便利屋に転身し、ビジネスマンとして大成功を収めているという。そこで、そんな彼の現在を探るべく、取材を試みた。
――相変わらず、いいカラダしてますね!
坂本一生(以下、坂本) デビュー当時からタンクトップだったんで、それが似合うようなカラダをキープしてます。年々、パワーアップしてるんじゃないかな。元祖筋肉タレントとしてのプライドもあるし、いつ仕事が来てもいいようにね。鍛えてなかったら、そこらへんを歩いてる、ただのおっさんと変わらないし。今いろいろと筋肉タレントがいるけれど、やっぱり黒いタンクトップが似合うのは、俺だと思ってます!
――現在は、便利屋のお仕事がメインなんですか?
坂本 少し前は、芸能界がメインで、この仕事は副業的な感じでやっていたんですが、今ではすっかり逆転しましたね。芸能は仕事が来たらやる、という感じです。
――そもそも、どうして便利屋に……?
坂本 芸能界という世界にいて、いい時期もありましたし、チヤホヤもされてきました。その後、仕事が減って働かなければならない状況になり、トラックの運転手やとび職、レストラン店長など、さまざまな仕事をしてきましたが、どれも長続きせず、転々としていたんです。将来について悩んでいた時に、たまたま茨城の友達のところに遊びに行ったんですが、そこで東日本大震災に遭い、帰るに帰れず、着る物も食べる物なく困っていたところ、地元の人にいろいろと助けてもらって。そのお礼として、一週間ほど瓦礫の撤去や家の中の片付けの手伝いをしたりしました。僕は昔から世話好きというか、困っている人を放っておけない性格なので、その体験がきっかけで人の役に立つ仕事をしたいなと思うようになり、たまたま知り合いが便利屋を始めるというので、僕も加わったんです。
――「便利屋!お助け本舗」は、わずか2年半で全国130店舗を構えるほど、急成長しているそうですね。
坂本 ありがたいことに開業当初から依頼をたくさんいただき、世の中にはこんなに困りごとを抱えている人が多くいるんだなあ、と思ったくらいです。
――便利屋って、どんな仕事なんですか?
坂本 日本中に困っている人がたくさんいるじゃないですか? それを“よかった”に変える仕事です。特に高齢者や女性からの依頼が多いのですが、「便利屋=夫や家族の代理」みたいなイメージかな。
――本当に、どんな依頼でも引き受けてくれるんですか?
坂本 法に触れないことなら、なんでもやります。ただ以前、男性から“ホテルの一室で水着撮影をさせてほしい”という依頼があったんですが、さすがにそれは断りました(笑)。芸能人としての僕に仕事を依頼するなら、1時間3150円~じゃ安いでしょ? それなりのギャラを払ってもらわないと(笑)。

――時間内であれば、いくつかまとめて仕事をお願いしてもいいんですか?
坂本 うちは1時間3150円+出張費2100円、計5250円が基本料金ですが、50分で依頼が終わって、残り10分で何か別のことをしてくれ、というのもOKですよ。
――どんな依頼が多いんですか?
坂本 季節ごとに変わってきますが、この時期は掃除とか不要品処分、引っ越しのお手伝いなどが多いですね。高齢者の方からは電球交換や荷物の移動、買い物の代行、庭の手入れ。女性の方からは、家具の組み立てやAV機器の配線、重い荷物の移動などが多いですね。
――これまでに受けた、変わった依頼は?
坂本 食品会社からの依頼で、24時間、提供する食べ物・飲み物を残さず食べ、1時間ごとに体重を量ってほしいという依頼がありました。結果、腹はパンパンで5kg太りました(笑)。また、20年間ためた小銭を銀行に持って行くのを手伝ってほしいという依頼で、梅酒のビン27個分、重さ100kg超の小銭を運んだこともありました。両替するのに丸1日かかり、銀行の人もあきれていましたね。それから、母国語しかしゃべれないアフリカ人を空港に迎えに行くという依頼もありましたね。地下鉄の音におびえて走って逃げようとするわ、電車内で大声で歌いだすわ、公園に連れて行けば鳩を追い掛け回すわ、八百屋のりんごを勝手に取って食べるわで、向こうもすべてが驚きなんだろうけど、こっちはもっとビックリで大変でした……。。
――便利屋をテーマにした、三浦しをんさんの小説『まほろ駅前多田便利軒』(文藝春秋)が映画化・ドラマ化され、便利屋という職業の認知度も高まっていますが、このストーリーのように、依頼の本筋から外れて、依頼者のプライベートにも踏み込むこともあるんですか?
坂本 基本的にはプライベートなことには首を突っ込みませんが、悩み相談というか、おじいちゃんおばあちゃんの雑談を聞くことはありますね。3年前に亡くなった奥さんの墓の掃除をしてほしいと独り暮らしのおじいさんから頼まれたことがあったんですが、現地に行ってみると墓はすでにきれいに掃除されていて、おじいさん宛てに書かれた手紙が置かれていました。それをおじいさんに渡すと、手紙を読み、すすり泣いていました。事情を聞くと、10年前に勘当し、音信不通になっていた娘さんからの手紙だった、なんてこともありましたね。こんなドラマみたいなこと本当にあるんだと。
――便利屋という仕事の魅力って、どんなところですか?
坂本 人助けをして、笑顔で感謝されることですかね。腰の曲がったおばあちゃんがさらに腰を曲げながら「ありがとう、ありがとう」と言ってくれるので、とてもやりがいがあります。依頼内容、場所、時間も毎回違って刺激があるので、そういう意味では芸能界に似ているところもあるかな。なにより、大好きな肉体労働だってところが大きいです。僕の天職ですね。
(取材・文=編集部)
●「便利屋!お助け本舗」
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