“にわか”なアルコ&ピースが『勇者ああああ』で伝える「ゲームで遊ぶ楽しさ」

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『勇者ああああ』テレビ東京
 テレビのバラエティ番組の系譜のひとつとして脈々と続いているジャンルが、「ゲーム情報番組」である。  ファミコン発売以降に登場し、新作のゲームを紹介する番組で、その多くはゲーム会社がスポンサーになっている。番組の性質上、当然ゲームファンに向けたものだ。だから、ゲームファン以外が目にすることは基本的にはない。  だが一方で、古くは『大竹まことのただいま!PCランド』(テレビ東京系)をはじめ、「ゲーム情報番組」とは名ばかりで、それを隠れみのにお笑い要素をふんだんに取り込んだ、もはや「お笑い番組」と呼ぶべき番組も少なくなかった。最低限、新作ゲーム情報を入れれば、あとはゲームに関係あろうがなかろうがやりたい放題。そんな番組だ。  今年4月から始まった『勇者ああああ』(同/木曜深夜1時35分~)も、その系譜にあるといっていい。サブタイトル通り「ゲーム知識ゼロでもなんとなく見られるゲーム番組」だ。  司会はアルコ&ピース。アルピーといえば、通常の番組では平子祐希が目立っているが、この番組では、自身のラジオ番組同様、奔放に振る舞う酒井健太も負けず劣らずの存在感を放っている。そう、ラジオのような自由さが、アルピーの魅力を最大限引き出しているのだ。  ところで先ほど、「ゲーム情報を隠れみのにゲームとは無関係なお笑い番組の系譜」とこの番組を紹介したが、それは正確ではない。なぜなら、この番組のすべての企画が「ゲーム」を題材にしているからだ。  たとえば「コマンド危機一髪」。これは、アルピーとゲストが、リレー形式でコマンド入力を正確に行っていくというもの。スーパーマラドーナがゲスト出演した回では、『ストリートファイターII』で無抵抗な相手をリュウの「竜巻旋風脚」だけで倒すというミッション。一見簡単そうだが、一発一発リレー形式で行い、コマンド入力をミスして別の技が出てしまった時点で挑戦失敗。連帯責任で、全員に電流が流れるのだ。 「メチャクチャ得意」という武智に対し、田中一彦は「(『ストII』は)持ってたんですけど、いつか友達できたらやろうと思ってたので……」と哀しい思い出を語り、ほとんどやったことがないという。  頼りになる武智を先頭に酒井、平子、田中の順で挑戦する。武智、酒井が順調に成功する中、3人目の平子。慎重にコマンド入力するも、繰り出した技は「巴投げ」。  その瞬間、全員に電流が走る。 「何、変なタイミングでミスってるんですか!」  2回目の挑戦では平子も無事成功。だが、初挑戦となる田中がやはりミス。普通のハイキックを繰り出した。 「俺、リュウのあのキック見たの初めてだわ!」  その後も、平子は巴投げを繰り出し、激高した田中から「デブ、こら!」と罵倒され、まさかの「隠れデブ疑惑」が浮上する始末。その2人が足を引っ張り続け、なかなか成功しない。  それでも制限時間残り3分となった15回目の挑戦で、ついに成功。4人は歓喜した。コマンド入力は決して難しいわけではないが、ちょっとしたタイミングで失敗してしまうもの。実際のゲームではそこを多少ミスしても問題がないため、あらためて正確さを要求されると、普段とは違う力が入る。しかも、電流という連帯責任のプレッシャーもかかる。結果、ゲーム上級者ではない彼らは、失敗を繰り返してしまうのだ。見ている方も、いつしか感情移入し、手に汗を握る。で、達成したときに妙な感動を覚えるのだ。  ほかにも「にわかゲーマー一斉摘発 芸能界ゲーム風紀委員」というコーナーでは、アルピーの2人が「ゲーム風紀委員」となり、ゲームがたいして好きでもないのに、仕事を増やそうとプロフィールに「ゲーム好き」などと書く女性アイドルらをオーディションと称して呼び出し、本当にゲーム好きかを検証する企画。  実際、「にわか」のアイドルたちがほとんど。それを“摘発”し、追い詰めていくのは痛快だが、そこではアルピーの「にわか」っぷりが浮き彫りになることも。だが、それを逆手に取り、翌週の放送ではネットで批判されたと公言し、間違いを訂正し、仰々しく謝罪からスタートするふざけっぷりも面白い。 「ゲーム芸人公開オーディション」では、ゲームに絡んだネタならなんでもOKというハードルの低さから、“にわか”の粗い芸を見せる芸人が大挙出演。かつての『あらびき団』(TBS系)を思わせる雰囲気が心地よい。  こうしたお笑い要素が強い企画だけではなく、ゲーム情報要素の強い企画ももちろんある。そのひとつが「ゲーマーの異常な愛情」。ゲーム愛の強い芸人が登場し、人生で最高の一本を紹介するというものだ。  ここでは、今でもカルト的人気を誇る『リンダキューブ アゲイン』や『鈴木爆発』などが、かなりの時間を割いて紹介された。  先にも触れた通り、アルピーは決してゲームに詳しいわけではない。けれど、ゲームを知らないわけではない。彼らは現在、30代。物心ついたときからファミコンで遊び、ゲームの成長とともに大きくなった世代といっていい。その世代における標準的なゲーム知識とゲーム愛を持っている。  だから、マニアックに振れることもなく、メジャーなものだけを扱うわけでもない。ちょうどいいのだ。“にわか”だからこそ伝えられる面白さがあるのだ。 「ゲーム情報」だけを求めるなら、物足りないかもしれない。けれど、『勇者ああああ』が目指し実現させているのは、きっと「ゲームで遊ぶ楽しさ」を伝えることなのだ。 (文=てれびのスキマ http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

『くりぃむしちゅーのANN』復活、『ゆうゆうワイド』終了……2016年“神回”総決算! ラジオ業界激動の1年を振り返る

cream1220
ニッポン放送『くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン』番組サイトより
 今年、ラジオ業界は激動の1年でした。お昼の帯番組『大沢悠里のゆうゆうワイド』(TBSラジオ)が30年の節目で終了し、後番組として『伊集院光とらじおと』(同)がスタートしました。また、radikoではタイムフリー放送が始まり、放送後1週間以内のラジオ番組であればいつでも放送を聞けるようになり、よりラジオが身近なものになりました。  毎回、ラジオ業界に燦然と輝く“神回”を紹介してきたこのコラムでは、そんな2016年に放送されたラジオ番組から厳選の“ベスト・オブ・神回”を3つ紹介させていただきます。   ■『ニューヨークのオールナイトニッポン0 WHY 悲しき女たちSP』(ニッポン放送、16年10月20日深夜)  偏見ネタや毒のあるネタで、屈指の実力を持つ若手芸人のニューヨークのおふたりが今年4月から放送している番組『ニューヨークのオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)。芸風と同じように偏見ネタを募集するコーナーが多い中、セフレあるあるを募集するコーナー「加藤ミリヤか!」が思いがけない展開を見せます。  “セフレ=尻軽”という方程式をぬぐえない童貞丸出しの常連ハガキ職人たちが苦戦する中、「本当に誰かのセフレなんじゃないか!?」と思うくらい生々しい投稿が複数の女性リスナーから届き、屋敷さんが放送中に泣きそうになるほど盛り上がりをみせます。僕も聞きながら、体験したことのない「悲し笑い」というものがあるんだと知りました。  そして、現在セフレをしている女性をゲストに招き、恋のから騒ぎ方式で話を聞くことに。「私を好きじゃないところ以外全部好き」「駆け引きしたくて、次に電話が来たら一回無視してみようと思うけど、もう2度とかかってこないと思うと出ちゃう」など、その男性への愛ゆえの悲しいエピソードの数々は、深夜ラジオでは感じたことのないタイプの面白さ。  最後までセフレの本質を理解できない童貞リスナーを??りつける、ニューヨークさんのよさも存分に出ている神回でした。 ■『くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン 第160回』(ニッポン放送、16年6月17日深夜)  05年から08年末まで全159回が放送され、深夜ラジオ界では伝説との呼び声高い『くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン』が7年ぶりの復活です。  僕としても、この番組を聞いて芸人を志したので思い入れが深いのですが、芸人仲間にもヘビーリスナーが多く、今やニッポン放送に就職する学生の半数はくりぃむリスナーだそうで、その影響力は計り知れません。また、年の瀬の有楽町に200人を超える番組リスナーが集まった最終回は今でも語り草です。  そんな『くりぃむANN』復活回。有田さんが、あえて第160回としたように、タイムスリップしたかのような懐かしいノリやエピソードが次々と盛り込まれ、番組は進行していきます。当時のリスナーにしかわからないくだりがありつつも、初めて聞いた人も思わず笑ってしまうような放送で、上田さんのキレキレのツッコミも当時のまま。文句なしの神回でした。
alp1220
ニッポン放送『アルコ&ピースのオールナイトニッポン0』番組サイトより
■『アルコ&ピースのオールナイトニッポン0(二期)最終回』(ニッポン放送、16年3月24日深夜)  13年の番組開始以降、リスナーを巻き込んだミニコントや、着地点の見えない企画を軸に置く番組構成でリスナーの心をつかみ、知名度はそこまで高くないにもかかわらず、今でも根強いファンを抱える同番組。  ニッポン放送社内にもファンがいるなど、関係者人気までも獲得。結果、終了の危機をオールナイト史上初のオールナイトニッポン0枠(ANN0枠)への降格という形で切り抜けました。しかし、そのANN0枠でも番組終了のときがやってきます。  最終回で放送された企画は、番組のキラーコンテンツ「アーティストの乱」。もはや何でもありの、リスナーが身内ノリで大暴れできる企画を選んだのです。初めて番組を聞くリスナーに対する酒井さんの「去れ!」の一言がアクセルになり、この番組らしいぶっ飛んだ最終回を聞かせてくれました。  そして、放送中ニッポン放送の前には300人もの番組リスナーが集結。『おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)からレポーターが派遣されるほどの大盛り上がりは、先に触れたように同じくANNで番組を持っていたくりぃむしちゅーさん以来でした。最後は、リスナーによる「アルピー!」コールが有楽町の空に響き、幕を閉じました。  ちなみに、個人的な今年ナンバーワンの神メールは、『アルピーANN0』最終回に60歳男性「平林さん」の「体調がよくなく入院中に、たまたまこの番組の第1回の放送を聞き、笑い過ぎて苦しくなって緊急治療室に入ってしまい、3週放送が聞けませんでした。それからは毎週聞くようになりファンになり、そして番組終了が発表された翌日に退院できました」という投稿でした。不謹慎ながら爆笑してしまいました。心も温まる文句なしのナンバーワンメールです。  現在、ニューヨークさんは毎週木曜深夜27時から、『ニューヨークのオールナイトニッポン0』を引き続き担当中。アルコ&ピースさんは毎週火曜深夜24時から『アルコ&ピースのD.C.GARAGE』(TBSラジオ)で、深夜ラジオ界に返り咲きました。くりぃむしちゅーさんは、テレビを中心に多忙を極める中、熊本大地震で傷ついた地元熊本の復興支援の活動までしています。  では、2017年も神回が聞けると確信しつつ、何卒! 僕からは以上! 暖かくして寝ろよ! (文=菅谷直弘[カカロニ])

『くりぃむしちゅーのANN』復活、『ゆうゆうワイド』終了……2016年“神回”総決算! ラジオ業界激動の1年を振り返る

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ニッポン放送『くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン』番組サイトより
 今年、ラジオ業界は激動の1年でした。お昼の帯番組『大沢悠里のゆうゆうワイド』(TBSラジオ)が30年の節目で終了し、後番組として『伊集院光とらじおと』(同)がスタートしました。また、radikoではタイムフリー放送が始まり、放送後1週間以内のラジオ番組であればいつでも放送を聞けるようになり、よりラジオが身近なものになりました。  毎回、ラジオ業界に燦然と輝く“神回”を紹介してきたこのコラムでは、そんな2016年に放送されたラジオ番組から厳選の“ベスト・オブ・神回”を3つ紹介させていただきます。   ■『ニューヨークのオールナイトニッポン0 WHY 悲しき女たちSP』(ニッポン放送、16年10月20日深夜)  偏見ネタや毒のあるネタで、屈指の実力を持つ若手芸人のニューヨークのおふたりが今年4月から放送している番組『ニューヨークのオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)。芸風と同じように偏見ネタを募集するコーナーが多い中、セフレあるあるを募集するコーナー「加藤ミリヤか!」が思いがけない展開を見せます。  “セフレ=尻軽”という方程式をぬぐえない童貞丸出しの常連ハガキ職人たちが苦戦する中、「本当に誰かのセフレなんじゃないか!?」と思うくらい生々しい投稿が複数の女性リスナーから届き、屋敷さんが放送中に泣きそうになるほど盛り上がりをみせます。僕も聞きながら、体験したことのない「悲し笑い」というものがあるんだと知りました。  そして、現在セフレをしている女性をゲストに招き、恋のから騒ぎ方式で話を聞くことに。「私を好きじゃないところ以外全部好き」「駆け引きしたくて、次に電話が来たら一回無視してみようと思うけど、もう2度とかかってこないと思うと出ちゃう」など、その男性への愛ゆえの悲しいエピソードの数々は、深夜ラジオでは感じたことのないタイプの面白さ。  最後までセフレの本質を理解できない童貞リスナーを??りつける、ニューヨークさんのよさも存分に出ている神回でした。 ■『くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン 第160回』(ニッポン放送、16年6月17日深夜)  05年から08年末まで全159回が放送され、深夜ラジオ界では伝説との呼び声高い『くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン』が7年ぶりの復活です。  僕としても、この番組を聞いて芸人を志したので思い入れが深いのですが、芸人仲間にもヘビーリスナーが多く、今やニッポン放送に就職する学生の半数はくりぃむリスナーだそうで、その影響力は計り知れません。また、年の瀬の有楽町に200人を超える番組リスナーが集まった最終回は今でも語り草です。  そんな『くりぃむANN』復活回。有田さんが、あえて第160回としたように、タイムスリップしたかのような懐かしいノリやエピソードが次々と盛り込まれ、番組は進行していきます。当時のリスナーにしかわからないくだりがありつつも、初めて聞いた人も思わず笑ってしまうような放送で、上田さんのキレキレのツッコミも当時のまま。文句なしの神回でした。
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ニッポン放送『アルコ&ピースのオールナイトニッポン0』番組サイトより
■『アルコ&ピースのオールナイトニッポン0(二期)最終回』(ニッポン放送、16年3月24日深夜)  13年の番組開始以降、リスナーを巻き込んだミニコントや、着地点の見えない企画を軸に置く番組構成でリスナーの心をつかみ、知名度はそこまで高くないにもかかわらず、今でも根強いファンを抱える同番組。  ニッポン放送社内にもファンがいるなど、関係者人気までも獲得。結果、終了の危機をオールナイト史上初のオールナイトニッポン0枠(ANN0枠)への降格という形で切り抜けました。しかし、そのANN0枠でも番組終了のときがやってきます。  最終回で放送された企画は、番組のキラーコンテンツ「アーティストの乱」。もはや何でもありの、リスナーが身内ノリで大暴れできる企画を選んだのです。初めて番組を聞くリスナーに対する酒井さんの「去れ!」の一言がアクセルになり、この番組らしいぶっ飛んだ最終回を聞かせてくれました。  そして、放送中ニッポン放送の前には300人もの番組リスナーが集結。『おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)からレポーターが派遣されるほどの大盛り上がりは、先に触れたように同じくANNで番組を持っていたくりぃむしちゅーさん以来でした。最後は、リスナーによる「アルピー!」コールが有楽町の空に響き、幕を閉じました。  ちなみに、個人的な今年ナンバーワンの神メールは、『アルピーANN0』最終回に60歳男性「平林さん」の「体調がよくなく入院中に、たまたまこの番組の第1回の放送を聞き、笑い過ぎて苦しくなって緊急治療室に入ってしまい、3週放送が聞けませんでした。それからは毎週聞くようになりファンになり、そして番組終了が発表された翌日に退院できました」という投稿でした。不謹慎ながら爆笑してしまいました。心も温まる文句なしのナンバーワンメールです。  現在、ニューヨークさんは毎週木曜深夜27時から、『ニューヨークのオールナイトニッポン0』を引き続き担当中。アルコ&ピースさんは毎週火曜深夜24時から『アルコ&ピースのD.C.GARAGE』(TBSラジオ)で、深夜ラジオ界に返り咲きました。くりぃむしちゅーさんは、テレビを中心に多忙を極める中、熊本大地震で傷ついた地元熊本の復興支援の活動までしています。  では、2017年も神回が聞けると確信しつつ、何卒! 僕からは以上! 暖かくして寝ろよ! (文=菅谷直弘[カカロニ])

現実とフィクションが入り混じる“ラジオに捧げた1年間”『明るい夜に出かけて』

akaruinight1129
『明るい夜に出かけて』(新潮社)
 素人でありながら、ネタ投稿という形で自らのセンスを発揮し、ラジオファンはもちろん芸人からも敬意をもって見られる存在、それがハガキ職人。ハガキ職人と呼ばれる人たちは、クソメン(『おぎやはぎのメガネびいき』より)と揶揄されるそのコミュ力のなさや、こじらせ方ゆえに、その卓越したセンスを日常生活で発揮できる人は稀で、そのほとんどが地味な生活を送っています。  そんなハガキ職人に対して、毎週冒険を共にしている仲間かのような感覚を与え、今なお厚い支持を得ている『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』(アルピーANN)。放送開始の2014年4月から、番組終了の2015年3月までの間、さまざまな伝説的企画を生み出し、放送が終了した今でも、ラジオリスナーや芸人内で話題になる“伝説の番組”です。  ラジオリスナーにぜひ読んでもらいたい、佐藤多佳子さんの小説『明るい夜に出かけて』(新潮社)。本書は、『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』の実際の放送に並行して、一人のハガキ職人の一年を描いていく物語です。  先に断っておきますが、この物語は、ラジオをテ題材にした物語にありがちな、パーソナリティがラジオを通じて主人公に応援メッセージを送ったり、人生が交わっていく、といった内容ではまったくありません。  毎週の放送だけが生き甲斐の主人公が、ラジオだけを楽しみに生きていくという内容であり、それこそほとんどのリスナーが共感できるラジオとの“リアル”な関係性なのかもしれません。  ラジオは現実、主人公はフィクション。アルピーANNのように虚構と現実が入り混じったストーリーは、ラジオを聞かない層には賛否両論あるようですが、ラジオリスナーには、登場人物の精神性もラジオとの付き合い方も強く共感できるものであるといえます。  物語の始まりは14年4月、神奈川県横浜市六浦のとあるコンビニで始まります。主人公は、このコンビニでアルバイトする「接触恐怖症」の青年。物語は終始、彼の言葉で語られるのですが、1ページ目から活字が脳内変換されて、アルピーANNの人気コーナー「家族のコーナー」のネタを読む酒井さんの声で浮かび上がってきます。  主人公、富山はハガキ職人という狭いコミュニティでなまじ有名だったがゆえに、ある事件で傷つき、一年限定という条件付きで大学を休学(脱出)して一人暮らしを送っています。  そんな彼のバイト先に、偶然現れた風変わりな女・佐古田。富山は彼女のバッグに、もらうことがアルピーリスナーには最高の栄誉とされるノベルティグッズ「カンバーバッチ」を見つけ、思わず声を上げてしまいます。  ハガキ職人あるある「街でノベルティグッズを見ると、持ち主のラジオネームが気になってしょうがない」状態です。こうして2人が出会い、物語はゆっくりと動き出していきます。  この佐古田に加え、図々しくてデリカシーのない、富山とは違うタイプのコミュ障の永川。敬遠されがちな派手なルックスでありながら、誰とでも嫌味なく仲良くできる鹿沢というバラバラの3人の友人たちとの関わりの中で、富山は少しずつ前を向き、少しずつ自分と向き合っていきます。  しかし、それと同時に彼らに寄り添ってきたアルピーANNに、番組終了の時がやってきます。この重大さは、リスナーにしかわからないかもしれませんね。僕は、放送をリアルタイムで聞いていたので、タイムスリップしたかのようにドキドキしながら一気に読んでしまいました。  これこそが、リスナーのための小説と言われている理由であり、リスナーにおすすめしたい理由なのです。  著者であり、アルピーANNのリスナーだった佐藤多佳子さんが、番組に投稿されるネタメールのように超内輪向けに書いた小説。  やっぱり、リスナーにこそ読んでほしいと思うんです。いわば、この小説はラジオという狭いコミュニティの中で生まれた“家族”の記憶なのですから。 (文=菅谷直弘[カカロニ])

ハライチ、うしろシティ、アルコ&ピースが登場! 若手芸人起用のTBS新番組枠に見る“深夜ラジオの現在地”

ushiro1031
TBSラジオ『うしろシティ 星のギガボディ』番組サイトより
 先月からラジオアプリradikoでタイムフリー放送(直近1週間分の放送をいつでも聴けるという画期的なもの)が始まりました。ラジオはTV録画と違い録音しづらいこともあり、昨今のラジオ離れの一因になっていますが、このサービスのおかげでラジオがより身近なものになりそうですね。今後、ラジオファン層が広がっていくと思うと楽しみです。  広がるといえば、深夜ラジオで最も人気のある放送枠「JUNK」(TBSラジオ、深夜1時から3時の平日帯)の前時間、24時から1時に新たな放送枠が誕生しました。若手芸人を起用し、火曜日に『アルコ&ピースのD.C.GARAGE』、水曜日に『うしろシティ 星のギガボディ』、木曜日に『ハライチのターン』がそれぞれ10月から放送しています。  実はこの時間帯、2008年9月29日から10年4月2日まで「JUNK ZERO」という若手芸人が1時間の番組を担当する放送枠だったのです。今回の改編は、この放送枠の復活といえるのではないでしょうか?  同放送枠では、のちに金曜JUNKを務めることになる『バナナマンのバナナムーン』、現在は木曜JUNKとして放送中の『おぎやはぎのメガネびいき』、現・JUNKサタデー『エレ片のコント太郎』、圧倒的な支持を得ていた『ケンドーコバヤシのテメオコ』、そしてこの枠で唯一、芸人ではないパーソナリティだった、TOKIOの城島茂さんによる『城島茂のどっち派?!』と豪華すぎる顔ぶれでした。  なかでも、『エレ片のコント太郎』は放送開始時から投稿コーナーに特に力を入れ、本人たちもリスナーに大きく依存する番組と公言していました。事実、はがき職人のレベルはとても高かったのですが、それはエレ片の3人のキャラクターの影響が大きかったと思います。  このエレ片や、のちにJUNKに昇格する、おぎやはぎさんやバナナマンさん含め、それぞれが、自分たちの色を出しリスナーとの関係性を作り上げていったJUNK若手枠。さて、先月から放送を開始した3組は、どんな番組を展開していくのでしょうか?
haraiti1031
TBSラジオ『ハライチのターン!』番組サイトより
 JUNK統括プロデューサー宮嵜守史さんの下、土曜深夜に2組で枠を分け合い放送していた番組『デブッタンテ』からの事実上の昇格を果たした、うしろシティさんとハライチさん。  うしろシティさんは阿諏訪さんが番組冒頭にポエムを読み、この阿諏訪さんの“ド痛具合”がリスナーの“ド痛な部分”を引き出したのか、リスナーからもポエムが大量に送られるなど、早くも番組独自の空気感が出始めています。  そして、幼なじみ染コンビのハライチさん。お互いを熟知しているが故のディープな関係性が魅力です。さらにラジオでは、おぎやはぎのお二人に「かっこいい。ロックスターのようなオーラがある」と言わしめた岩井さんの魅力全開です。あまりテレビではお目にかかれない、岩井さんのキレキレトークは必聴です。
aruko1031
TBSラジオ『アルコ&ピース D.C.GARAGE』番組サイトより
 今年4月で終了したオールナイトニッポン(ニッポン放送)枠での番組が伝説的人気を誇った、アルコ&ピースさん。このたび、TBSラジオで深夜ラジオ界に復活を遂げました。平子さんは「あくまでも新番組、続きのつもりでやるなよ」と言いますが、旧知のスタッフで臨む番組には、やはりオールナイトニッポンの匂いがほのかに漂っています。  ラジオを聴いたことのない皆さんもぜひ一度、radikoのタイムフリーでラジオデビューを、そしてリスナーの方は推し番組を増やしてみてはいかがでしょうか? (文=菅谷直弘[カカロニ])

ハライチ、うしろシティ、アルコ&ピースが登場! 若手芸人起用のTBS新番組枠に見る“深夜ラジオの現在地”

ushiro1031
TBSラジオ『うしろシティ 星のギガボディ』番組サイトより
 先月からラジオアプリradikoでタイムフリー放送(直近1週間分の放送をいつでも聴けるという画期的なもの)が始まりました。ラジオはTV録画と違い録音しづらいこともあり、昨今のラジオ離れの一因になっていますが、このサービスのおかげでラジオがより身近なものになりそうですね。今後、ラジオファン層が広がっていくと思うと楽しみです。  広がるといえば、深夜ラジオで最も人気のある放送枠「JUNK」(TBSラジオ、深夜1時から3時の平日帯)の前時間、24時から1時に新たな放送枠が誕生しました。若手芸人を起用し、火曜日に『アルコ&ピースのD.C.GARAGE』、水曜日に『うしろシティ 星のギガボディ』、木曜日に『ハライチのターン』がそれぞれ10月から放送しています。  実はこの時間帯、2008年9月29日から10年4月2日まで「JUNK ZERO」という若手芸人が1時間の番組を担当する放送枠だったのです。今回の改編は、この放送枠の復活といえるのではないでしょうか?  同放送枠では、のちに金曜JUNKを務めることになる『バナナマンのバナナムーン』、現在は木曜JUNKとして放送中の『おぎやはぎのメガネびいき』、現・JUNKサタデー『エレ片のコント太郎』、圧倒的な支持を得ていた『ケンドーコバヤシのテメオコ』、そしてこの枠で唯一、芸人ではないパーソナリティだった、TOKIOの城島茂さんによる『城島茂のどっち派?!』と豪華すぎる顔ぶれでした。  なかでも、『エレ片のコント太郎』は放送開始時から投稿コーナーに特に力を入れ、本人たちもリスナーに大きく依存する番組と公言していました。事実、はがき職人のレベルはとても高かったのですが、それはエレ片の3人のキャラクターの影響が大きかったと思います。  このエレ片や、のちにJUNKに昇格する、おぎやはぎさんやバナナマンさん含め、それぞれが、自分たちの色を出しリスナーとの関係性を作り上げていったJUNK若手枠。さて、先月から放送を開始した3組は、どんな番組を展開していくのでしょうか?
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TBSラジオ『ハライチのターン!』番組サイトより
 JUNK統括プロデューサー宮嵜守史さんの下、土曜深夜に2組で枠を分け合い放送していた番組『デブッタンテ』からの事実上の昇格を果たした、うしろシティさんとハライチさん。  うしろシティさんは阿諏訪さんが番組冒頭にポエムを読み、この阿諏訪さんの“ド痛具合”がリスナーの“ド痛な部分”を引き出したのか、リスナーからもポエムが大量に送られるなど、早くも番組独自の空気感が出始めています。  そして、幼なじみコンビのハライチさん。お互いを熟知しているが故のディープな関係性が魅力です。さらにラジオでは、おぎやはぎのお二人に「かっこいい。ロックスターのようなオーラがある」と言わしめた岩井さんの魅力全開です。あまりテレビではお目にかかれない、岩井さんのキレキレトークは必聴です。
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TBSラジオ『アルコ&ピース D.C.GARAGE』番組サイトより
 今年4月で終了したオールナイトニッポン(ニッポン放送)枠での番組が伝説的人気を誇った、アルコ&ピースさん。このたび、TBSラジオで深夜ラジオ界に復活を遂げました。平子さんは「あくまでも新番組、続きのつもりでやるなよ」と言いますが、旧知のスタッフで臨む番組には、やはりオールナイトニッポンの匂いがほのかに漂っています。  ラジオを聴いたことのない皆さんもぜひ一度、radikoのタイムフリーでラジオデビューを、そしてリスナーの方は推し番組を増やしてみてはいかがでしょうか? (文=菅谷直弘[カカロニ])

悪ノリがすぎる! アルコ&ピースのオールナイトニッポン、伝説の「アーティストの乱」ってナンだ!?

arupi0726
ニッポン放送『アルコ&ピースのオールナイトニッポンZERO』番組サイトより
 お初にお目にかかります。ラジオっ子の菅谷直弘といいます。普段は、カカロニというお笑いコンビで活動している世に大勢いる若手芸人の1人です。  このたび、日刊サイゾーにてラジオ番組で特に面白かった回、いわゆる神回について書かせていただくことになりました。  パーソナリティーを務める憧れの先輩に無礼にならないよう、また愛のない単なる書き起こしだなんて思われないよう尊敬とラジオ愛を総動員して書かせていただきます。  第1回は、僕がここ数年で最もドはまりしたラジオ番組『アルコ&ピースのオールナイトニッポンZERO』、13年7月25日放送の企画「夏歌アーティストの乱」について書きたいと思います。 『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』は、お笑いコンビ・アルコ&ピース(酒井健太、平子祐希)がパーソナリティーを担当するラジオ番組で3度の特番放送ののち、2部の位置付けといえるZERO枠を経て、14年4月4日からオールナイトニッポン1部の枠に昇格。現在でもファンの多いカルト的人気を誇った伝説の番組です。  この番組の特徴は、放送開始からエンディングまでの時間すべて使って、リスナーを巻き込んだミニコントを展開していくことです。この説明だけではうまく伝わらないですかね?  本来こういった“番組独自のノリ”は、毎週放送しているうちに徐々に形成されていくもので、その流れが生まれた回を紹介すれば説明も簡単なのですが、特番時代からすでに「俺たちは中東から狙われている」とか言っていて、もう説明のしようがありません。聞いたことのない方は、基本度の過ぎた悪ノリが軸のラジオだと思ってください。  そんな番組に、この日、番組史上に残るキラーコンテンツが生まれました。それが「アーティストの乱」です。「春歌アーティストの乱」「夏歌アーティストの乱」など、年4回季節が変わるごとに、アーティスト同士による戦いが幕を開け、結果的に最終回でも放送された番組きっての悪ノリ企画です。  今回扱う「夏歌アーティストの乱」は、夏を彩る流行歌を歌うアーティストで誰がケンカ最強なのかを神奈川全域で戦をして決めている最中だから、リスナーから合戦の様子や途中経過を番組に送ってもらうという内容でした。  企画の説明をした平子さんに、酒井さんは「よくわかんないんですけど」と疑問を投げかけ、平子さんも「俺もよくわかんない」と言っていました。当時、熱心に放送を聞き続けていたきた僕ですら「全然、意味わからねぇ」と思ったほど。  酒井さんの言うところの「信長の野望みたいなこと?」っていうのが、一番わかりやすいんですかね? 誰もよくわかってないまま放送はスタートします。  こんな意味不明なテーマにもかかわらず、番組にはたくさんのメールが送られてきました。  ORENGE RANGEの屍の山に、湘南乃風・RED RICEが立っているという目撃情報をはじめ、HYがZeebraを倒したとか、湘南乃風・HAN-KUNがRIP SLYMEにやられた、はたまた、海老名からツイッターを駆使した情報操作で手を汚さず戦ういきものがかり、など。  番組が中盤に差し掛かると、湘南乃風がさらに大暴れ。Zeebraが倒されたことでエミネムがアメリカから来日するが、いきものがかりのサイバー攻撃で入国できないとか、いきものがかりがガラケーだったばかりに、携帯の料金が24億円請求されるなど、もはやカオスです。  このあたりで、アルコ&ピースの2人は我に返り「今日初めて聞いた人どう思うんだろ?」と憂えるのですが、そもそもこの番組が初めてのリスナーに優しかったことなど一切ないので、例外なくこの後も番組は暴走し続けます。  終盤になっても、血で血を洗う戦いは全く終わりに向かう兆しがなく、風呂敷だけが広がり続けていきます。  これちゃんとオチつくのか、と誰もが思った番組終了直前、法螺貝の音が鳴り響き、平子さんから「夏歌アーティスト最強が決定しました」との宣言がありました。  あるリスナーから送られてきたメール「今、森山直太朗が現れて、“夏の終わり”を宣言しました!」が紹介され、森山直太朗の「夏の終わり」が流れるという、鮮やかな着地を遂げるのです。  悪ノリし、筋を無視したメールをリスナーが送りまくった末、わけわからないところに着地をすることが多いこの番組において、指折りに気持ちのいい結末でした。  その後、オールナイトニッポンの枠の放送は15年3月に終了。15年4月からは、古巣のオールナイトニッポンZERO枠に戻り、今年3月に終了しました。最終回の放送内容は、もちろん「春歌アーティストの乱」。僕たち売れない芸人の間でも語り草になるほど、番組終了を惜しむ声がやみません。  さて、アルコ&ピースの2人は現在、テレビを中心に活躍しています。平子さんは、意識高い系のキャラでプチブレーク。ラジオで披露していた酒井さんのヤバさをテレビで見られるように願いつつ、そして、あの2人とまたいつか“悪ノリ”できることを信じて、何卒! (文=菅谷直弘[カカロニ])

悪ノリがすぎる! アルコ&ピースのオールナイトニッポン、伝説の「アーティストの乱」ってナンだ!?

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ニッポン放送『アルコ&ピースのオールナイトニッポンZERO』番組サイトより
 お初にお目にかかります。ラジオっ子の菅谷直弘といいます。普段は、カカロニというお笑いコンビで活動している世に大勢いる若手芸人の1人です。  このたび、日刊サイゾーにてラジオ番組で特に面白かった回、いわゆる神回について書かせていただくことになりました。  パーソナリティーを務める憧れの先輩に無礼にならないよう、また愛のない単なる書き起こしだなんて思われないよう尊敬とラジオ愛を総動員して書かせていただきます。  第1回は、僕がここ数年で最もドはまりしたラジオ番組『アルコ&ピースのオールナイトニッポンZERO』、13年7月25日放送の企画「夏歌アーティストの乱」について書きたいと思います。 『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』は、お笑いコンビ・アルコ&ピース(酒井健太、平子祐希)がパーソナリティーを担当するラジオ番組で3度の特番放送ののち、2部の位置付けといえるZERO枠を経て、14年4月4日からオールナイトニッポン1部の枠に昇格。現在でもファンの多いカルト的人気を誇った伝説の番組です。  この番組の特徴は、放送開始からエンディングまでの時間すべて使って、リスナーを巻き込んだミニコントを展開していくことです。この説明だけではうまく伝わらないですかね?  本来こういった“番組独自のノリ”は、毎週放送しているうちに徐々に形成されていくもので、その流れが生まれた回を紹介すれば説明も簡単なのですが、特番時代からすでに「俺たちは中東から狙われている」とか言っていて、もう説明のしようがありません。聞いたことのない方は、基本度の過ぎた悪ノリが軸のラジオだと思ってください。  そんな番組に、この日、番組史上に残るキラーコンテンツが生まれました。それが「アーティストの乱」です。「春歌アーティストの乱」「夏歌アーティストの乱」など、年4回季節が変わるごとに、アーティスト同士による戦いが幕を開け、結果的に最終回でも放送された番組きっての悪ノリ企画です。  今回扱う「夏歌アーティストの乱」は、夏を彩る流行歌を歌うアーティストで誰がケンカ最強なのかを神奈川全域で戦をして決めている最中だから、リスナーから合戦の様子や途中経過を番組に送ってもらうという内容でした。  企画の説明をした平子さんに、酒井さんは「よくわかんないんですけど」と疑問を投げかけ、平子さんも「俺もよくわかんない」と言っていました。当時、熱心に放送を聞き続けていたきた僕ですら「全然、意味わからねぇ」と思ったほど。  酒井さんの言うところの「信長の野望みたいなこと?」っていうのが、一番わかりやすいんですかね? 誰もよくわかってないまま放送はスタートします。  こんな意味不明なテーマにもかかわらず、番組にはたくさんのメールが送られてきました。  ORENGE RANGEの屍の山に、湘南乃風・RED RICEが立っているという目撃情報をはじめ、HYがZeebraを倒したとか、湘南乃風・HAN-KUNがRIP SLYMEにやられた、はたまた、海老名からツイッターを駆使した情報操作で手を汚さず戦ういきものがかり、など。  番組が中盤に差し掛かると、湘南乃風がさらに大暴れ。Zeebraが倒されたことでエミネムがアメリカから来日するが、いきものがかりのサイバー攻撃で入国できないとか、いきものがかりがガラケーだったばかりに、携帯の料金が24億円請求されるなど、もはやカオスです。  このあたりで、アルコ&ピースの2人は我に返り「今日初めて聞いた人どう思うんだろ?」と憂えるのですが、そもそもこの番組が初めてのリスナーに優しかったことなど一切ないので、例外なくこの後も番組は暴走し続けます。  終盤になっても、血で血を洗う戦いは全く終わりに向かう兆しがなく、風呂敷だけが広がり続けていきます。  これちゃんとオチつくのか、と誰もが思った番組終了直前、法螺貝の音が鳴り響き、平子さんから「夏歌アーティスト最強が決定しました」との宣言がありました。  あるリスナーから送られてきたメール「今、森山直太朗が現れて、“夏の終わり”を宣言しました!」が紹介され、森山直太朗の「夏の終わり」が流れるという、鮮やかな着地を遂げるのです。  悪ノリし、筋を無視したメールをリスナーが送りまくった末、わけわからないところに着地をすることが多いこの番組において、指折りに気持ちのいい結末でした。  その後、オールナイトニッポンの枠の放送は15年3月に終了。15年4月からは、古巣のオールナイトニッポンZERO枠に戻り、今年3月に終了しました。最終回の放送内容は、もちろん「春歌アーティストの乱」。僕たち売れない芸人の間でも語り草になるほど、番組終了を惜しむ声がやみません。  さて、アルコ&ピースの2人は現在、テレビを中心に活躍しています。平子さんは、意識高い系のキャラでプチブレーク。ラジオで披露していた酒井さんのヤバさをテレビで見られるように願いつつ、そして、あの2人とまたいつか“悪ノリ”できることを信じて、何卒! (文=菅谷直弘[カカロニ])

アルコ&ピース これが“脱臼型漫才”の最終形!? あの『忍者ネタ』は、なぜ伝説となったのか

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『博愛』(アニプレックス)
 お笑い界では、一度世に出てからその後もずっと語り継がれる「伝説のネタ」というものがある。今からちょうど1年前の『THE MANZAI 2012』の決勝でアルコ&ピースが演じた「忍者」のネタも、間違いなくその1つに数えられるだろう。その年の大会で優勝したのはハマカーンだったが、視聴者や観客に最も強烈なインパクトを与えたのは、アルコ&ピースのほうだったかもしれない。  忍者のネタの基本的な構造はシンプルだ。漫才の冒頭、酒井健太が「僕、忍者になって巻物取りに行きたいなと思ってて。平子(祐希)さん、城の門番やってよ」と相方に話を切り出す。一般的な漫才の流れでは、この提案に平子が同意して、2人の漫才内コントが始まるはずの場面だ。  ところが、それを聞いた平子は軽蔑したような表情を浮かべて「じゃあ、お笑いやめろよ」と切り返す。大方の予想を裏切って、平子は酒井の言葉を文字通りに解釈して、芸人の道を捨てて忍者になろうとする酒井にくどくどと説教を始める。  要するに、ここで彼らが演じていたのは、あるべき漫才の流れをわざと崩すことで笑いを誘う「脱臼型漫才」だ。漫才を正常な状態から脱臼させることで、新たな形の漫才を生み出すことに成功したのだ。  このアイデアは、普段あまりお笑いに接していない人には、非常に斬新で画期的に見えるかもしれない。だが、それは必ずしも正しくはない。  お笑いネタを数多く見てきたお笑い愛好家やネタを作っているプロの立場から見れば、ここでアルコ&ピースがやったこと自体は、決して目新しいことではない。  漫才の中でコントに入るふりをして入らないとか、コントに入ること自体に異を唱えるというのは、実は多くの人がすぐに思いつくありふれたアイデアにすぎない。むしろ、自分たちの漫才の形をあれこれ模索している若手芸人ならば、一度は通る道だと言ってもいいほどだ。発想そのものは別に珍しくはない。アルコ&ピースの漫才の独創性は、最初のアイデア自体ではなく、それ以外の部分にある。  第一に、キーワード選びの妙。この漫才では、酒井を責め立てる平子が「忍者になって巻物取りに行く」というフレーズを繰り返すたびに、大きな笑いが生まれる。「忍者」「巻物」という言葉の響きが持つ純粋な面白みが見事に抽出されている。さらに、同じキーワードを何度も繰り返すことで笑いが増幅していく。「忍者」というマジックワードを見つけたことで、この漫才は神がかり的に面白いものになった。  第二に、構成の巧みさ。この漫才で注目すべき点は、平子が本気で「酒井は忍者になりたがっている」と思っているということだ。彼はあくまでも酒井の立場を尊重しながら、今は芸人として大事な時期だから忍者になるべきではない、と主張する。さらに、「巻物取りに行くことでメシ食えてる忍者なんてほんの一握りだぞ。そんな甘い世界じゃないよ」というとどめの一言が放たれる。忍者という転職先を真剣に検討した上で否定している様子が、何とも言えずおかしい。  忍者になりたがる酒井に対して、「なれるわけないだろ」「今の時代に忍者なんて存在しないよ」などと簡単に否定してしまったら、このネタはここまでの深みを得られなかっただろう。この漫才の演じ手である平子にとって、忍者とは現実的な職業の1つでなければいけない。平子がそれを受け入れているからこそ、現実とも非現実ともつかない奇妙な会話劇として、この漫才が輝きを放つことになるのだ。  そしてもちろん、反則スレスレのこの漫才を成立させている最大の要因は、2人の演技力の高さだ。芝居がうまいからこそ、表情や言葉の1つ1つに説得力があり、それが笑いに直結する。コントを専門にしている彼らには、漫才を1つの芝居として演じきる力が備わっているのだ。  伝説のネタで強烈なインパクトを残した彼らは、そこから快進撃を続けた。2013年4月には『笑っていいとも!』(フジテレビ)のレギュラーに選ばれ、『アルコ&ピースのオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)も始まった。2013年は間違いなく、アルコ&ピースにとって飛躍の1年となった。  漫才の中で平子が発した「巻物取りに行くことでメシ食えてる忍者なんてほんの一握りだぞ」というせりふは、「テレビやライブに出るだけでメシ食えてる芸人なんてほんの一握りだぞ」という厳しい現実を反映している。現実の香りがする非現実的な「脱臼型漫才」で伝説を作ったアルコ&ピースは、忍者のように見る者を煙に巻いて笑いを取り続けているのだ。 (お笑い評論家・ラリー遠田)